第5回 「読書が人生を広げる②」(2012.6) 前回のコラムでは、『読書は

第5回 「読書が人生を広げる②」
(2012.6)
前回のコラムでは、『読書は子どもの「語彙力」「情報処理能力」「想像力」を伸ばすことがで
きる。』という話をさせてもらいました。今回は個人レベルの話ではなく、『読書と国力』をテー
マに書きたいと思います。読書と国力…、いささか話が大きくなりすぎだと感じる方もいるかもし
れません。しかし、実はこのふたつは密接に関係しているのです。
分かりやすいニュース解説でおなじみの、池上彰さん。池上さんは著書の中で、次のように述べ
ています。少々長いですが、引用させてもらいます。
「私なりの「その国が発展するかどうかの見方」を、お教えしましょう。それは町に大きな書店が
あり、そこに若者が大勢いるかどうかなのです。もう9年前になりますが、ベトナム、ラオス、タ
イなどの東南アジアを取材で回ったことがあります。ベトナムのホーチミン市には大きな書店があ
って、若者たちが大勢、本を探していました。夏の真昼のみやげもの店にはあまりお客さんは来ま
せんから、みやげものの店で働く若者は店番をしながら一生懸命に本を読んでいました。ほかの東
南アジアの国々の人はたいてい昼寝をしているのに、ベトナム人は違う。「この国は発展するだろ
うな」と予感したものです。(中略)初めて海外に行ったら、書店がどれだけあるか、そこにどん
な人がいるかを観察するといいと思います。中国の北京にも巨大な書店がどんどんできてきていて、
参考書のコーナーには大勢の人が、それこそ‘‘群がる’’という描写がふさわしいほどの混みよ
うでした。」(「知らないと恥をかく世界の大問題」より)
読書をする若者が多いほど、その国は発展する。日本ではそんな意識を持っている人は多くない
かもしれません。しかし、実は今日の日本の繁栄も、この読書の力が関係しています。
日本では通勤・通学の電車内を見渡すと、読書をしている人は珍しくありません。しかし、外国
人は、この光景を見ると「日本人はなんて勤勉なのだ」と感嘆の声をあげるそうです。「日本の経
済発展の要因は、日本人の電車内でも本を読む勤勉さであるのではないか。」こう感じたのは台湾
政府。何と台湾では、日本人を見習って、国を挙げて「電車内では読書をしましょう」キャンペー
ンをしたこともあるそうです。なんでも台湾の電車では、
「みなさん、電車では読書をしましょう」
という車内アナウンスがながれていたこともあったとか…。いやいや、びっくりですね。
私たち日本人からすると、見慣れた光景である電車内の読書。読書をしている人も、「勉強して
いるんだ」と意識している人は少ないでしょう。しかし、それが国力のアップにつながっていると
感じていないのは、実は日本人だけなのですね。
ただ残念なのは、最近は電車内で読書をしている人の割合が減っていること。多くの人は、携帯
電話をいじったり、ポータブルゲームをしていたり…。時代の変化なのでしょうが、それは日本人
の素晴らしい部分がまたひとつ失われてきているということなのかもしれませんね。
次回も、読書についての話は続きます。