山形県高等学校ハンドボール部実態調査 ― 部活動普及・強化を目指して ― ハンドボール専門部 山形県立新庄神室産業高等学校 笹 原 智 也 1 はじめに ハンドボールとは、1チーム7人、縦 20m横 40mのコートで前後半 30 分で試合を行い、相手より多くの 得点を奪い合うスポーツである。サッカーとバスケットボールを合わせたスポーツとよく言われるが、サッ カーよりも多く点数が入るスピード感と、バスケットボールよりも身体接触が認められているという激しさ を持ち合わせたスポーツである。ヨーロッパにおいては、サッカーに並ぶ人気スポーツであり、2011 年に行 われた世界選手権男子決勝のフランス対デンマーク戦において、ハンドボール発祥の地でもあるデンマーク では、人口約 546 万人の内、約 267 万人が生中継を視聴していたというデータもあるほどである。日本にお けるハンドボールの認識はまだまだ低く、マイナースポーツの位置づけである。 山形県内の高校においては一昨年チーム数を増やし現在、男子13校、女子6校で活動している。小中学 校からの経験者が少なく高校入学後に始める生徒が大部分である。以前は経験者のほとんどが最北地区に集 中加入していたが、近年では村山地区へ経験者の加入が増加している。少子化の影響もあり、各校で運動部 の縮小も呼びかけられている中、新入部員の獲得も難しい状況となっている。 ハンドボールという競技の普及・強化を推進する上でも現状を把握し、今後の活動のあり方について、方 向性を見いだすため、今回、県内各校の指導者・部員の実態調査を実施した。 2 研究方法 (1)調査方法 アンケート (2)調査対象 山形県高等学校ハンドボール加盟校 部 顧 員 問 495 名 19 名 (3)実施期間 平成 25 年 10 月 16 日 (4)調査内容 以下記述の設問による ~ 11 月 2 日 ―1― 3 結果と考察 顧問アンケートより (1)調査結果 ◆過去5年間の部員数の推移(各年度の3年生含む)(人) 【男子】 【女子】 ◆新入部員の経験者数(人) ◆現在指導している顧問人数(人) ◆現在指導しているコーチ人数(人) ◆経験者(顧問)の割合(%) ―2― ◆1週間の練習日数 【平日体育館】 【平日ハンドボールコート】 【休日体育館】 【休日ハンドボールコート】 ◆1日の練習時間(平日・休日) 男 子 女 子 平 日 2.8 時間 2.8 時間 休 日 3.6 時間 3.5 時間 ◆1 年間の合計日数(実施校) 県内遠征 男 子 女 県外遠征 子 男 子 女 子 実施校数 7 校 2 校 7校 4校 年間平均日数 11.1 日 3.0 日 14.0 日 8.0 日 ◆1 年間の合宿日数(実施校) 県内合宿 男 子 女 県外合宿 子 男 子 女 子 実施校数 3校 3校 4校 3校 年間平均日数 4.7 日 5 日 9.3 日 10.7 日 ◆1年間の通しての試合数(練習試合等・紅白戦含む) ―3― (2)考 察 過去5年間の部員数推移から村山地区の男子を中心に若干の増加傾向である。今年度経験者の新入部員に ついては男女とも全て村山地区への入部となっており、過去最北地区に多くの経験者が入部していた状況と は逆転している。顧問数に関しては各校概ね2名体制で活動しており顧問の経験者数は5年前に比べ割合は 減少しているものの人数は若干増えている。練習については体育館での練習を確保するためか、2部練習(グ ランド練習の後体育館など)を取り入れている学校も増えてきており、平日3時間、休日4時間の練習を行っ ている学校が大部分である。遠征、合宿については半数以上の学校が県外での活動を実施しており県外への 意識の高まりが強くなっていることがうかがえる。公式戦、紅白戦等の試合回数については、年間平均、男 子 90.4 試合、女子 42.3 試合であった。全体で 100 試合を超える学校が5校もあり、ますます意識が東北や 全国に向けられているように感じられた。 生徒アンケートより (1)調査結果 ◆中学校時代の部活動(%) 【男子】 【女子】 ◆ハンドボール認知度(%) ―4― ◆入部の動機(%) ◆部活動に求めていること(%) ◆活動していての感想(%) ◆学習との両立で苦労していること(%) ◆好きな練習メニュー(%) ◆嫌いな練習メニュー(%) ◆初心者が多い環境での苦労(%) ◆ハンドボールという競技について(%) ―5― ◆ハンドボールをプレーして難しい点(%) (2)考 察 近年、大崎電気の宮崎大輔選手の活躍もあり、メディア等で取り上げられる機会も増えてきたことから、 ハンドボールという競技の認知度は決して低くない。その影響からか、入部の動機が部活動紹介以前に既に 決まっているといった生徒も少なくないように感じられる。日頃の活動全般については目的意識をしっかり と持ち充実した活動をしている生徒が多く特筆したいところである。ハンドボールという競技に関しては、 『指導者がいなく何が正しいプレーなのか分からない』や、 『教えてくれる人がいないためルールが分からな い』といった記述が多く、生徒の要求に指導者が応えきれていない状況も感じ取ることができた。 記述アンケートの内容に関してはできる限り項目におこしグラフ化したため実際の状況とはそぐわない場 合も考えられるが概況はつかめたように思われる。日頃の活動を通して生徒が感じている事の意識理解に役 立てていただければと思う。 4 ま と め 今回の調査により山形県内の各校ハンドボールの実態がある程度把握できたように思う。ヨーロッパでは メジャーな競技として扱われるが、日本ではまだまだマイナーな競技であり、全国的に高校から始める生徒 も多く本県も例外ではない。また県内では少子化の影響から学校の統廃合も進む中、部員の確保もさること ながら部活動の存続という問題を抱える学校も出てきているようである。そうした中、部員数を少しずつ増 やしている事は非常に喜ばしい事である。しかしながら顧問になり、はじめてハンドボールを経験する指導 者もまだまだ多い。これまでの傾向が続き、今後も部員が増え続けてくれることはとても望ましい事ではあ るが、生徒の要求に応えていくための、指導者の質的向上も急務であり課題は山積みと言える。 生徒アンケートの記述から、 『ハンドボールという競技がもっとメジャーな競技になってほしい』と願って いる生徒も少なくない。部活動の普及・強化には、そうした生徒が将来指導者となり戻ってくる事で、高校 のみならず小学校、中学校も含めた本県のハンドボールを支えてもらう必要もあると考える。 東北大会、全国大会等で成績を残すことはもちろん大事なことである。しかし、その結果が継続できる環 境づくりも大切である。そのための土台作りが、今後は大切な要素のひとつであると考察する。 最後に今回の調査にご協力いただいた各高校のハンドボール指導者の方々、各高校のハンドボール部員の 諸君に感謝申し上げ、本研究を今後の山形県ハンドボール指導に生かしていただければ幸いです。 ―6―
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