Science 2008 年3 月 21 日号ハイライト

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Science 2008 年 3 月 21 日号ハイライト
与えることが大きな幸せに
タイタンの隠れた海の存在
潜在意識に働きかける「励ましの言葉」がヒトの行動を促進する
大気中ラジカルの源
Science は米国科学振興協会(AAAS)発行の国際的ジャーナル(週刊)です。以下に記載す
る次号掲載予定論文に関する報道は、解禁日時まで禁止します。
論文を引用される際には出典が Science および AAAS であることを明記してください。
与えることが大きな幸せに
‘Tis Better to Give
新しい研究によれば、われわれは、自分に金を投資するよりも他人に投資する方が幸せを感
じるという。金を多く持っていれば、幸福感が増すと考えがちである。しかし、先進国では
ここ数十年、実質的な所得(購買力に応じて調整される所得)が急増しているにもかかわら
ず、幸福感はおおむね横ばいであることが、複数の研究から示されている。では、われわれ
は自分の可処分所得をどのように使えば、大きな幸福感を得られるのであろうか。Elizabeth
Dunn らは、米国で国民調査を実施し、ボストン地域にある企業で支給されたボーナスへの
社員の反応と使い道を分析した。さらに、心理学科の大学生を対象に研究室で一連の実験を
行い、それらの結果を総合的に検討した。3 つの研究の総合的な結果として、他人に金を投
資した人は自分に投資した人よりも幸福感が大きかったことがわかった。幸福感を増すには、
所定の日にわずか 5 ドル(米ドル)の寄付をするだけで十分であると、研究者らは報告して
いる。
論文番号 22:"Spending Money on Others Promotes Happiness," by E.W. Dunn, L.B. Aknin at The
University of British Columbia in Vancouver, BC, Canada; and M.I. Norton at Harvard Business
School in Boston, MA.
タイタンの隠れた海の存在
Titan May Have Hidden Ocean
カッシーニ・ホイヘンス計画で得られた新しいデータによれば、土星の衛星、タイタンの表
面下には、木星の衛星、エウロパのような海洋が存在する可能性がある。Ralph Lorenz らは、
カッシーニのレーダー観測から得たデータ数年分を解析し、衛星表面のいくつかの地質学的
特徴が、固定された基準点から移動しているのを発見した。これは、衛星の自転速度が一時
的に加速していることを意味する。著者らは、モデリングによりタイタンの濃い大気に吹く
風が、衛星を自転軸に沿って前後に揺さ振っていることを示した。言い換えれば、この大気
は角運動量の交換を通して、小衛星の自転速度を加速させた後、その年の終わりには減速さ
せるように作用している。しかし、このシナリオはタイタンの地殻と核が液体の海洋で分離
されている場合にかぎり起こりえるものだと著者らは述べている。関連した Perspective 記事
では、この研究および今後の観測がどのようにしてタイタンの海の存在の有無を明らかにす
るのかについて議論している。
論文番号 13:"Titan's Rotation Reveals an Internal Ocean and Changing Zonal Winds," by R.D.
Lorenz at Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory in Laurel, MD; B. Stiles, S.J. Ostro,
and S. Hensley at Jet Propulsion Laboratory, California Institute of Technology in Pasadena, CA; R.L.
Kirk at U.S. Geological Survey in Flagstaff, AZ; M. Allison at NASA Goddard Institute for Space
Studies in New York, NY; P.P. del Marmo at Università La Sapienza in Rome, Italy; and J.I. Lunine
at University of Arizona in Tucson, AZ
論文番号 5:"Titan's Hidden Ocean," by C. Sotin at Jet Propulsion Laboratory, California Institute of
Technology in Pasadena, CA; and G. Tobie at Université de Nantes in Nantes, France.
潜在意識に働きかける「励ましの言葉」がヒトの行動を促進する
Subliminal “Pep Talk” Boosts Performance
ある動きを頭の中に描くだけで意識的に体を動かそうとしなくても体は動く、ということは
脳の研究によって既に明らかにされている。Henk Aarts らは、「動け」というメッセージに
加えて潜在意識に働きかける「励ましの言葉」を少し添えると、ヒトは一層努力するように
なることを明らかにした。Aarts らは、「力を込めて」など努力を求める一連の言葉を被験
者に見せ、その後ハンドグリップ試験を実施してその成績を測定した。努力を求める言葉と
共に激励する言葉(「いいぞ!」など)も同時に示された被験者は、努力を求める言葉のみ
の者より、素早く力強くグリップを握ることが明らかにった。この結果から、前向きな言葉
はヒトの意欲を高め、一層の努力を促すものであることがわかったと Brevium で著者らは述
べている。
論文番号 9:"Preparing and Motivating Behavior Outside of Awareness," by H. Aarts, R. Custers,
and H. Marien at Utrecht University in Utrecht, Netherlands.
大気中ラジカルの源
Unexpected Source of Atmospheric Radicals
電子的に帯電した二酸化窒素と水の反応は、地球の低層大気のヒドロキシルラジカル
(OH)の主な源であると新しい研究が示している。Shuping Li らは、ヒドロキシルラジカル
は大気中の汚染物質を浄化する「洗剤」として作用するため、比較的低濃度でも重要な大気
成分であると述べている。これまで、対流圏の OH は、太陽光線が大気中のオゾン分子を壊
すことにより主に生成されると考えられてきた。しかし、Li らは励起された二酸化窒素と水
の反応により、ある条件下では低層大気中の OH の 50%までを生成することが可能である
とした。この知見により、OH および二酸化窒素のラジカルの反応はオゾンの生成率を左右
するため、都市部の大気の質をモデル化するのに影響を及ぼしている可能性があると、Paul
Wennberg および Donald Dabdub は関連する Perspective 記事で述べている。
論文番号 16:"Atmospheric Hydroxyl Radical Production from Electronically Excited NO2 and
H20," by S. Li, J. Matthews, and A. Sinha at University of California, San Diego in La Jolla, CA.
論文番号 4:"Rethinking Ozone Production," by P.O. Wennberg at California Institute of
Technology in Pasadena, CA; D.Dabdub at University of California, Irvine in Irvine, CA.