Ⅲ 教育情報通信ネットワークの管理運用 1 教育情報通信ネットワークの管理運用の在り方 (1) スクールネットの管理運用 平成14年11月,スクールネットの運用開始式が行われ,ネットワークの運用が始められた。 スクールネットの運用に当たっては,附属情報処理教育センター内にデータセンターを設置 し,運用管理を具体化している。 データセンターの目的は,教育の情報化の推進,安全で快適なIT環境の提供,有益な教 育情報の提供,各公立学校の教育活動への支援であり,スクールネットの安全性及び信頼性 の維持及び向上である。 データセンターの業務は,保守管理業務,ヘルプデスク業務及びサポートセンター業務に 分けられる。附属情報処理教育センターは,民間委託の業者との連携を図り,スクールネッ トの維持管理にかかわるサポートセンター業務を担当している。なお,データセンターの業 務のうち,保守管理業務とヘルプデスク業務は,技術的に専門的な業務であることから民間 委託としている。 (2) データセンターの業務 ① 保守管理業務 データセンターの保守管理業務は,スクールネットに関するサーバを始めとするハードウ ェアの保守と,光ファイバなどの通信機器の保守である。データセンター内の情報機器に障 害が発生することを防止し,スクールネットのシステムが安定して稼動できるように保守を 行うことにある。また,データセンターと道立学校及び各教育機関等との光ファイバの接続 を安定化させ,各学校に設置されているインターネットの接続装置であるNATトラバーサ ルルータにリモートアクセスして,ネットワーク障害に対応している。 安全性を確保する観点から,ネットワークの通信記録などを管理したり,利用者データの バックアップをして,スクールネットの利用者がコンピュータウィルスや不正アクセスによ る被害を未然に防いでいる。 ② ヘルプデスク業務 データセンターのヘルプデスク業務は,スクールネットの操作等に関する問い合わせを受 け回答する業務,スクールネット利用に関する技術的な支援をする業務,及びネットワーク 機器が故障した場合などの申告を受け付けする業務などである。受付時間は,平日午前9時 から午後10時まで,土曜日,日曜日や祝祭日も午前9時から午後5時30分まで,民間委託の 専門の担当者が常駐し,電話,メール,及びFAXで受け付けており,定時制の日課や,学 校が平日以外にスクールネットを利用する場合にも対応している。 ③ サポートセンター業務 ア サポートセンターの現状 スクールネットの維持管理にかかわる業務であるサポートセンター業務は,附属情報処理 教育センターが担当し,スクールネットの利用方法やトラブルに対して指導や助言などを行 ‑ 7 ‑ っている。 イ サポートセンター業務の内容 (ア) スクールネットを活用するための業務 データセンターは,スクールネットを活用するための業務として,Webページのフィル タリングの設定,ホームページやメーリングリストの開設を行うなど,道立学校及び各教育 機関等からの要請に応えている。 また,研修講座の講義や各学校が行事の様子をインターネット向けに映像配信したり,動 画教材をオンデマンド配信したりするなど,スクールネットの利用者が映像による情報発信 を活発に行うことができるよう,マニュアルを作成したり機器を貸し出している。 (イ) ネットワークの障害等運用に関する業務 ネットワークの障害等運用に関する業務として,システム更新などにより,スクールネッ トの機能の一部分及びシステム全体を停止する場合や,コンピュータウィルスへの対策が生 じた場合,利用者に連絡するなど,学校との連携を図っている。 (ウ) 教材データベースの管理運用に関する業務 教材データベースの管理運用に関する業務として,平成16年度から市町村立の高校や小中 学校に対して,メール機能とコミュニケーション機能,及び学習用教材検索など,スクール ネットの機能の一部分を開放するための準備をしている。 また,教員による自作の教育用コンテンツ作成についての支援も行っている。 (エ) 教育用ポータルサイトの運営に関する業務 教育用ポータルサイトの運営に関する業務として,メール機能や,コミュニケーション機 能など,教育用ポータルサイトの利用状況の管理を行っている。 また,道立学校のホームページ作成支援や,リンク集の作成などホームページを管理する 業務を行っている。 教育用ポータルサイトには,多くの機能があり,利用者が簡単に各機能を利用できるよう に,マニュアルを作成し,教育用ポータルサイトの文書共有に一括して掲載している。 スクールネットの利用マニュアルの一覧と ,「オンライン研修のマニュアル」は図Ⅲ−1 のようになっている。 (オ) ヘルプデスク(教育相談)業務 データセンターは,サポートセンター業務のヘルプデスク機能として,学校の教育活動へ の支援やスクールネットの情報教育に関する質問や相談を受け付けている。 学校がスクールネットを活用した学校行事の映像配信や校内研修をする場合の支援活動を したり,その際必要となる物品の貸し出しを行ったりしている。 (カ) その他 最新の情報技術や情報教育の資料の収集と提供として,毎月行われる定例システム運用会 議用の資料や,ヘルプデスク業務の内容をまとめ,スクールネットの活用状況の把握に役立 てている。 ‑ 8 ‑ 図Ⅲ−1 スクールネットの利用マニュアル一覧と「オンライン研修」のマニュアル 電子メール( 受信箱・ 送信箱・ メール作成) 1 電子メールを始める 2 受信箱を開く 3 受信メールを削除・移動する 4 受信メールを見る 5 新規メールを作る 6 送信箱を見る 電子メール( アドレス帳) 1 新規にグループを作成する 2 登録しているグループを削除する 3 登録しているグループ名を変更する 4 新規にメールアドレスを登録する 5 登録しているメールアドレスを削除する 6 登録しているメールアドレスを変更する 7 メールアドレスを一括登録する(インポート) 8 メールアドレスファイルを書き出す(エキスポート) 電子メール( メール設定・ 整理) 1 メールの設定 (1) 基本設定を操作する (2) 受信フォルダを作る (3) 受信フォルダを開く (4) 受信フォルダ名を変更する (5) 受信フォルダ名を削除する 2 メールの整理 (1) 受信メールの振り分け規則を設定する (2) 規則の内容を変更する (3) 規則の優先順位を変更する (4) 規則を削除する 掲示板 1 掲示板を使う 2 読みたい掲示板を探す 3 投稿記事を読む 4 掲示板に投稿する 5 投稿記事を修正・削除する 6 新たに掲示板を作成する 7 掲示板を編集する 電子会議 1 電子会議を使う 2 参加する電子会議室を探す 3 投稿記事に対して発言する 4 電子会議室に新しく記事を投稿する 5 投稿記事や発言を削除する 6 新しく電子会議室を作成する 7 電子会議室を編集する ビデオチャット 1 カメラを使ったビデオコミュニケーションを利用するには 2 ビデオチャットを使う 3 ビデオチャットルームの一覧を見る 4 ビデオチャットルームへ入室する 5 ビデオチャットルームの表示画面 ビデオ会議 1 カメラを使ったビデオコミュニケーションを利用するには 2 ビデオ会議を使う 3 ビデオ会議室一覧を見る 4 ビデオ会議室を予約する 5 ビデオ会議の画面表示を見る 6 共有した資料を表示する 7 共有資料を登録する オンライン研修(講義予約登録編) 1 オンライン研修を使う 2 講義の一覧を見る 3 講義を予約する 4 講義予約を変更する 5 講義予約を取り消す オンライン授業 1 カメラを使ったビデオコミュニケーションを利用するには 2 オンライン授業を始める 3 教室一覧を見る 4 教室を予約する 5 教室へ入室する 6 講師校の画面を見る 7 参加校の画面を見る チャット 1 チャットを使う 2 参加するチャットルームを選択する 3 チャットルームに入室する 4 発言を書き込む 5 チャットを終了する 6 新たなチャットルームを開設する 7 チャットルームの設定を変更する ‑ 9 ‑ (3) 学校の業務 ① スクールネットの管理運用 道立学校や各教育機関の所属長は,「教育情報通信ネットワーク管理運用要綱」に基づき, 学校管理運用責任者として学校におけるスクールネットの管理運用を行うことになっている。 学校管理運用責任者は,学校内にスクールネットの活用に関する規程を定め,スクールネ ットの管理運用の担当者として取扱責任者を置くことになっている。スクールネットの利用 にかかわる事項を協議する情報教育委員会を設けることになっている。 ② 安全なインターネット環境を確保する管理運用 データセンターは,インターネットにある有害情報に対して,全ての学校に同一のフィル タリングを適用し,適切に除去している。学校の授業及び教育活動で,様々な情報を有効に 利用できるように,15種類のフィルタリング設定から選択できるようになっている。 さらに,URLを指定することにより,特定のWebページに対して,フィルタリングの 設定をしたり,設定を解除したりすることも可能となっている。各学校は,データセンター に「フィルタリング設定申請書」を出すことにより,学校のフィルタリング設定を変更する ことができる。 図Ⅲ−2は,スクールネットで利用しているフィルタリングの種類である。網掛けの部分 は,データセンターが全ての学校に共通して規制している内容である。 図Ⅲ−2 ③ フィルタリングの種類 1.ユーザ設定 1 11.ショッピング 21.成人嗜好 2.違法行為 12.プロキシ・キャッシュ 22.カルト 3.薬物 13.ウェブチャット 23.ライフスタイル 4.反社会的 14.掲示板 24.スポーツ 5.アダルト 15.ダウンロード 25.旅行 6.ハッカー 16.ウェブメール 26.一般娯楽 7.出会い 17.メールマガジン 27.宗教 8.金融 18.職探し 28.政治・政党 9.ギャンブル 19.アブノーマル 29.話題 10.ゲーム 20.懸賞 30.その他 個人情報の保護 学校は,個人情報を保護し,人権に配慮した情報の取扱いに努めることが大切である。児 童生徒の個人情報については ,「教育情報通信ネットワーク管理運用要綱 」,「教育情報通信 ネットワークの利用に係る個人情報保護のガイドライン 」,「北海道個人情報保護条例」など の規程を遵守することが大切である。 学校が個人情報を発信する場合は,個人の権利を侵害するおそれがなく,かつ,校長が認 め,当該する児童生徒の事前の同意と保護者の同意を得ることが必要になっている。児童生 ‑ 10 ‑ 徒がネットワークを利用する場合には,教職員は著作権保護等へ配慮するなど,ネットワー ク利用上のモラルに関することを指導する必要がある。 「北海道教育情報通信ネットワーク管理運用」においては,次の図Ⅲ−3のように,個人 情報の保護と人権への配慮について規定している。 図Ⅲ−3 北海道教育情報通信ネットワーク管理運用要綱(抜粋) 第2条(2) 幼児児童生徒,保護者,職員等の個人情報の保護及び人権に配慮すること。 第6条(1) 人権,著作権等に十分配慮するなど,情報活用上の基本的モラルに留意する こと。 (2) 幼児児童生徒が情報を発信する場合は,教職員の指導のもとに行うこと。 (3) 教育上不適切な情報の受信については,アクセス管理ソフトウェア等の利用 により適切に管理すること。 (個人情報の保護) 第8条 ネットワークの管理運用に当たっては,生涯学習部長が定める個人情報保護の ガイドラインに基づき,個人情報の保護に努めなければならない。 (情報及びシステムの保護) 第14条(1) 幼児児童生徒,職員等の個人情報や学校事務に関するデータを処理する校内 LAN及びコンピュータで,個人情報が他に流出するおそれがあるものはネッ トワークに接続しないこと。 (4) 取扱責任者の管理運用 ① 学校の取扱責任者の役割 校長は,スクールネットの取扱責任者として数名を置くことができるようになっている。 取扱責任者は,データセンターとの連携を図り,スクールネットの活用に関する管理運用に 当たることになっている。取扱責任者はスクールネットを有効に活用する推進役であり,ネ ットワークの安全性を確保して運用に当たっている。管理運用の内容は,スクールネットの 操作と利用条件の最適化,学校内の利用者管理,コンピュータウィルスの駆除などである。 例えば,平成 15 年8月中旬から9月に発生したコンピュータウィルス(Blaster)の蔓延に 対応して,取扱責任者はデータセンターと連携し,コンピュータウィルスの感染対策や駆除 処理に大きな役割を果たした。 取扱責任者の役割は ,「教育情報通信ネットワーク利用に関する学校管理者用ガイドライ ン」に定められており,主な役割は図Ⅲ−4のようになっている。 ‑ 11 ‑ 図Ⅲ−4 ガイドラインに定められている取扱責任者の役割(抜粋) 教育情報通信ネットワークに関する学校管理者用ガイドライン 第3条 ( 1 ) ネットワークの有効活用を推進する責務を負い,ネットワークのセキュリティを確保 することに努める。 ( 3 ) 利用者の秘密を厳守し,ネットワークで使用するデータの改ざんや持ち出しを防止す るものとする。 ( 4 ) ネットワークに接続するパソコンのコンピュータウィルス対策ソフトのパターンファ イルが,常に最新状態になっていることを確認するものとする。 ( 5 ) 新入生のデータ登録処理や,卒業年度の変更処理など生徒のデータ変更にともなう更 処理を 速やかに行うものとする。 ( 6 ) 教職員の新採用,転出,退職処理など職員データ変更にともなう更新処理を速やかに 行うものとする。 ( 8 ) 各種機能の操作や,利用者の詳細設定を行い,ユーザが安全,かつ快適にネットワー クを利用できるようにする。 ② スクールネットの利用条件の設定 スクールネットの初期画面の機能選択メニューは児童生徒,教職員及び取扱責任者によっ て個別化されている。教職員と取扱責任者のログイン後の初期画面は,図Ⅲ−5のように異 なる機能選択メニューとなっている。 図Ⅲ−5 教職員と取扱責任者の初期画面の違い 取扱責任者 の機能 教職員メニュー画面 取扱責任者メニュー画面 ‑ 12 ‑ スクールネットの機能は,利用条件の詳細を学校が選択して設定できるようになっている。 取扱責任者は,各種機能を児童生徒の実態や教育活動の内容に合わせて設定を変更して活用 できるようになっている。 各種機能や利用方法の設定変更可能な項目は,図Ⅲ−6のようになっている。 図Ⅲ−6 各種機能の項目と操作 ‑ 13 ‑ ③ 取扱責任者が操作できる内容 取扱責任者が行う設定変更の操作内容は,年度当初の児童生徒に関するユーザ登録,教職 員のユーザ管理の確認,情報活用に関する通常の業務などがある。取扱責任者の主な業務は, 図Ⅲ−7のようになっている。 図Ⅲ−7 取扱責任者の業務 取扱責任者の業務は,情報モラルの指導とコンピュータウィルス対応などが重要になると 考えられる。インターネットの電子掲示板などに生徒が不適切な書き込みをする事例も見ら れることから,取扱責任者は情報教育の実態を把握し,スクールネットの「文書共有」から 情報モラルに関する資料を検索して活用するなどきめ細かな指導が日常的に行われることが 必要である。 学校内のコンピュータウィルス駆除の業務が徐々に増加している。学校では取扱責任者を 中心として,校内のコンピュータに,コンピュータウィルスに対応できる修正プログラムの 適用や,コンピュータウィルス対策ソフトウェアのウィルス定義ファイルの更新などの作業 を,能率よく組織的に行うことが必要になっている。 ④ 情報化を推進する取扱責任者の役割 スクールネットの情報通信に使われる光ファイバは,校内LANまたはコンピュータ教室 のコンピュータに接続されている。このため,学校においては校内LANの通信経路やケー ブルの接続などについての情報を整理して保存することが重要になっている。 学校の通信経路とスクールネットの接続を明らかにして,通信障害やハードウェア障害に 適切に対応することが大切である。学校の取扱責任者は,学校内のコンピュータとスクール ネットの接続についての資料を整理し,障害時に活用できるように準備する必要がある。学 校が管理運用する情報の例は,図Ⅲ−8のようなものがある。 ‑ 14 ‑ 図Ⅲ−8 スクールネットの管理運用に役立つ情報の例 サーバの管理者権限のパス ワード サーバの各種設定を行う上で最も基本となるもの。不明な場合は,全てのプログラムを最初からイ ンストールし直さないと復旧できないケースもある。 スイッチングハブの設定 特にL3スイッチでは,特定のパケットを通過させないなどの設定がなされている場合が多く,設 定した業者の記録などはとても重要な情報である。 DHCP,デフォルトゲー トウエイ,NATルータな どのIPアドレス これらのIPアドレスは,ネットワークの接続設定で基幹となるため,参照されることも多く,特 に重要な情報である。 IPアドレス体系 校内の機器に割り当てているIPアドレスは,コンピュータウィルス発生の際の機器の特定や,故 障の切り分けなどに重要な情報となる。 校内LANの導入時に作成されている場合が多く,後に機器を付け足した時に加筆していくことが 大切である。 ⑤ 学校の情報化と取扱責任者の役割 学校の取扱責任者の役割は,固定的なものではなく,スクールネットの運用の変更などに 伴い変わることが予想される。従って,取扱責任者とデータセンターは,日常的に連携を図 り,協力してスクールネットの活用や,障害等に対応することが大切である。 学校の情報化の進展に応じて,様々な新しい知識や技術が,ネットワーク活用に必要とな り,取扱責任者は,日々の管理運用に加えて,ネットワークに関する知識や技術について研 修を深め,学校の情報化について適切に対応することが期待されている。学校内においては, 図Ⅲ−9のようなコンピュータやネットワークに関するテーマで研修を行うことが必要にな っている。 図Ⅲ−9 学校の情報化を進めるために必要とされる知識や技能 ・ 校内LANの仕組みや設定変更にかかわる知識・技術 ・ 情報機器の機能をバランスよく活用するためのネットワークの設定や,接続 を継続的に行うために必要とされる知識・技術 2 ・ ネットワーク用OSの運用や機能設定に関する知識 ・ 学校の業務に関し,LANを活用して整理,省力化する知識・能力 ・ 教育用コンテンツの開発を図り,授業に活用する知識・技術 教育情報通信ネットワークの充実 (1) 教育用ポータルサイトとしての活用 教育用ポータルサイトは,教材情報の提供をはじめ,教育に関する様々な情報の玄関口と しての機能を果たしている。代表的な教育用ポータルサイトは ,「教育情報ナショナルセン ター(NICER)」で,学習者や教育関係者を対象として,豊富な教育情報を提供している。 提供する情報は,幼児・小学生,中学・高校生及び大学生・社会人などに分類されている。 教育関係者を対象とする情報についても,教育に関する情報が区分されて提供される仕組み となっている。 スクールネットは,教育用ポータルサイトの機能として,イントラネット内で利用できる 電子メール,コミュニケーション,学習用教材検索,図書資料検索などがある。学習用教材 ‑ 15 ‑ 検索機能は,教科等の指導で活用できる教材データベースである。教職員が自作の教材をス クールネットの教材データベースに登録することにより,学校間における教材の共有化が図 られ,教職員が教材の用途を考えて,実際の授業で活用することができる。 現在,北海道立教育研究所は,すべての教職員がコンピュータやスクールネットを用いて, 教育用コンテンツを十分活用した「わかる授業」を行うことができるように教材の計画的な 研究開発を行い,教育の情報化を推進している。この推進事業は ,「教育用コンテンツ活用 推進協議会」である。今後,スクールネットの教育用コンテンツの充実を図るとともに,よ り工夫された教育用のリンク集を整備することによって,児童生徒及び教職員が活発に利用 できるようにすることが課題となっている。 (2) eラーニングの展望 ① eラーニングの推進 「e‑Japan重点計画」では,ITを活用した遠隔教育の推進が必要であることが示されて いる。平成15年8月,IT戦略本部は ,「e‑Japan重点計画2003 eラーニングを活用した教 員のIT指導力の向上」を発表している。この中で,教員が必要なITスキル等を学ぶこと ができるeラーニングを活用したネットワーク提供型研修カリキュラムの開発とその活用の 推進について示している。文部科学省は平成15年度より「e−教員プロジェクト」を進めて いる。e−教員プロジェクトは,教員が自由な時間に教科指導に必要なITスキルを高める ことができるように,eラーニングを活用したネットワーク提供型の研修カリキュラムを開 発し,その活用を促している。 eラーニングは,情報技術によるコミュニケーションやネットワークなどを利用した学習 である。学校教育におけるeラーニングのシステムには,次のようなことが求められる。 ア 学習者が主体的に学ぶ学習システムである。 イ 担当教師などによって編集されている教材を利用し,学習者が自主的に進める学習システ ムである。 ウ 学習者への連絡事項,学習者からの質問,学習者相互の情報交換などの円滑なコミュニケ ーション機能を備えており,学習者が双方向に情報を交換できる学習システムである。 ② eラーニングの特徴 eラーニングの特徴としては,次のようなことがあげられる。 ア 主体的に自分の興味・関心や目的に応じて学習を進めることができる。 イ いつでも,どこでも情報機器を利用して学習を進めることができる。 ウ インターネットなどのネットワークの情報を検索して最新の教材を利用できる。 エ 学習者の進度や内容の理解度に応じて学習を進めることができる。 オ インターネットなどを利用して教材提供サイトと双方向で学習を進めることができる。 カ 学習とともに学習履歴が蓄積され,学習履歴や学習進度の確認が容易である。 キ 担当教師などが学習履歴を分析して適切な指導に役立てることができる。 ③ eラーニングの学習形態 現在,eラーニングによる代表的な学習形態は,WBT(Web Based Training)である。 WBTの教材サーバには,静止画や動画などの素材,さらには提示用教材やシミュレーシ ‑ 16 ‑ ョン教材などの学習用教材及び実際の講義などの教育用コンテンツが収められている。この 教材サーバは,ネットワークに接続されていて,インターネットのWebページを閲覧する と同じように,教材サーバに収められた教育用コンテンツをブラウザで検索し,閲覧できる ようになっている。 双方向性や即時性などを基準に分類したeラーニングによる学習形態は,図Ⅲ−10のよう になっている。 図Ⅲ−10 eラーニングの学習形態 (出典 :「eラーニング白書 2001」) WBTの形態は,教材サーバから必要とする情報を学習者に提供するようになっている。 一方では,電子メールや掲示板などの機能を利用して,学習者に対応することができる。学 習者は,学習の進捗状況を理解しながら学習を進め,電子メールなどを利用して質問などを 即座にできる。電子メールを受け取った質問の対応者は,学習履歴などを参考にして,回答 することができる。 他の形態としては,テレビ会議システムを利用したリアルタイムによる学習形態,放送や 衛星通信を利用した一斉講義などがある。 ④ eラーニングとスクールネット スクールネットは,音声,文字,動画などによるeラーニングの学習形態を実現する機能 として ,「ライブ講義とオンライン授業」及び「オンライン研修」がある 。「ライブ講義とオ ンライン授業」は,指導者から学習者への片方向型の学習システムであり ,「オンライン授 業」は,指導者と学習者の双方向型の学習システムである。 スクールネットの現段階においては,eラーニングの特徴である学習者の興味・関心や目 的に応じて学習を進める機能,学習者が自分の学習進度や理解度を認識する機能,学習履歴 の蓄積や検索,確認する機能などが未整備である。これらの機能の拡充については,調査研 究を進め実現に向けて積極的に推進したいと考えている。 ‑ 17 ‑
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