文書改善の事例(3):外食チェーンはシステム産業

文書改善の事例(3):外食チェーンはシステム産業
以下の文章では、外食産業の情報システム化の事例を紹介しています。
外食チェーンは情報システム産業である
外食産業の業績は情報システム化とその活用の度合いに深い関係がある。収益を伸ば
している会社は、情報ネットワークの構築と活用に熱心だ。M社のグローバル・パーチ
ェシング体制は、国際間に情報通信ネットワークを構築したものといえる。
M社はさらに店舗にPOSシステムを設置し、本社、食材業者を含めてネットワーク
化して、自動発注を行っている。店舗指導員はノートパソコンでデータベースから必要
な情報を引き出して店舗指導に活かす。情報共有、電子メール、さまざまな決済と多く
の場面でパソコンを使用する機会も多い。
ファミレスチェーンのS社も情報活用にきわめて熱心だ。S社は情報システムを自社
のニーズに徹底的に合わせるために大きな努力を払っている。その一つがシステム構築
の担当者にマネジャー経験者を選んでいること。店舗運営の実状や情報ニーズに精通し
ているからだ。さらにソフトだけでなくハードも自社開発を行っている。普通はソフト
のみを開発するものだが、それでは不十分と判断したためだ。これも徹底的に自社ニー
ズへの適合を追及する姿勢である。
牛丼のF社はお客が券売機で食券を買うと、即座にその情報が厨房に流れる「ディス
パッチ・システム」を導入した。お客に料理を提供する時間をより一層短縮するためで
ある。
ピザ宅配チェーンでは業界こぞって情報システム化が進んでいる。ピザ宅配は地域の
顧客情報を入手しやすい。受注時には必ず住所、氏名、電話番号を聞くためだ。それら
をもとにオーダー履歴を入力し、地域別の傾向を分析して、効率的にチラシを配布でき
る。このような情報は店舗のスケジュール作りにも活かされる。時間単位の売上をもと
にさまざまな条件を加味して、きめ細かなシフト体制を考えるのだ。
こういった文書は業界レポートなどでよく見かけます。試しにこれを階層型箇条書きにして
みましょう(次ページへ)
。
©アイデアクラフト 2004
本書の一部または全部の無断転載を禁じます
http://www.ideacraft.jp
階層型箇条書きの例
外食チェーンは情報システム産業である
M社の情報システム化事例
・ グローバル・パーチェシング体制
・ 店舗にPOSシステム、本社、食材業者をネットワーク化し自動発注
・ 店舗指導員はノートパソコンでデータベースから情報入手
・ 情報共有、電子メール、決済等
S社の情報システム化事例
・ 大原則:ニーズにマッチしないシステムは無意味
・ マネジャー経験者をシステム構築担当に任命
店舗運営の実状、情報ニーズに精通
・ ハードウェアも自社開発
ソフトだけでは不十分と判断
F社の情報システム化事例
・ ディスパッチ・システム
発券情報を厨房に即時伝達
料理提供の所要時間を短縮
ピザ宅配チェーン業界の情報システム化事例
・ ピザ宅配業界は情報システム化が普及
・ 顧客情報を入手しやすい
注文時に住所、氏名、電話番号を聞くため
・ 活用方法
オーダー歴を入力
地域傾向を分析してチラシを配布
店舗の作業スケジュール立案
簡単なプレゼンテーションなら、こんな階層型箇条書きのスライドでも間に合います。
しかし、こうしてみると「M社、S社、F社・・・」と個別の事例を紹介しているだけで、
大局的・構造的な観点がありません。
外食産業のビジネスを構造的にとらえてみると、大局的な観点が見えてきます。それが次ペ
ージのチャートです。
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外食産業の情報システム化の領域
食材業者
サプライチェーンの形成
本部業務の効率化
本
部
店舗指導業務の効率化
店
舗
店舗オペレーションの効率化
顧
客
マーケティングと
イールド・マネジメント
まず、外食チェーンという産業を、食材業者、本部、店舗、顧客という4階層でとらえます。
その上で原文で紹介されている情報システム化の事例を見ると、4階層のどの範囲に働くか
によって大まかな分類ができることに気がつきます。
たとえばM社の「POS~自動発注」は店舗から本部はもとより食材業者までまたがって機
能しています。これはサプライチェーンの一種と考えることができるでしょうから「サプライ
チェーンの形成」と評しておきます。
同じM社でも「情報共有、電子メール、決済等」というのは「本部業務の効率化」と考えた
ほうがよいでしょう。また、「店舗指導員がデータベースから情報入手」の項は、本部と店舗
にまたがった「店舗指導業務の効率化」であると考えます。
F社の事例はどうでしょうか。これはひとつの店内に閉じたオペレーションの改善をしてい
るものと考えられるため、
「店舗オペレーションの効率化」と考えます。
ピザ宅配チェーンでは、「顧客情報」が出てきました。顧客情報を活用してマーケティング
やイールド・マネジメントを行っているわけです。そのため、顧客と店舗にまたがった範囲で
の情報活用であると考えられます。
このように、うまく構造化を行うと、
「外食産業の抽象的なモデル」を頭の中に描いた上で、
それを具体的な事例と結びつけることで、非常によく説明できるようになります。
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