道明三保子 藤田栄子

道明三保子
今日、街を歩く女性が未婚か既婚かを見
をすることが、数多くの言語が話される多
分けるのはひどくむずかしい。その点、民
民族国家の国民統合のために役立つと考
族衣装は女性が未婚か既婚かをしめす標識
えられたからだ。この他にも、二また式の
といってもよく、インドのサリーは既婚の
着方や、布はしを右肩から前に垂らす着方
女性が着るものとされている。一方、未婚
がある。布はし部分はパッルーとよばれ装
の女性は、膝下丈で頭からかぶる貫頭型ド
飾が最も美しい部分で、初対面の客や姑に
レス(カミーズ)にゆったりしたパンツ(サ
対するつつしみとしてヴェールにしたり、
ルワール)を組み合わせたパンジャブ・ス
作業の際は腰にはさんで動きやすいように
ーツが一般的である。もともと、インドと
する。
パキスタンの北部にまたがるパンジャブ地
西北地方には、ガガラ(スカート)にオ
方の人々や、肌を出すことをつつしむムス
ダニ(ヴェール)をかぶるスタイルが多く
リム ( イスラム教徒 ) の衣服であった。活
見られる。写真の花むこはターバンに洋服
動しやすいパンツ形式なので、最近、外で
スタイル、花嫁はガガラとオダニの組み合
働く若い既婚女性にも、このスタイルをす
わせにさらに婚礼用の赤いヴェールをかぶ
る人が多くなったという。友人のインド人
る。花嫁の右にサリー、左にパンジャブ・
によれば、
「ただし、ご主人の了解を得た
スーツの女性がみられる。このようにイン
上でのことよ」という。
ドの民族衣装にはサリー以外にもさまざま
サリーの着方は、布はしを左肩にかけ背
な形式があり、色あざやかでひらひらと動
中にたらすのが最も一般的で、この着方は
きが美しく、刺繍や型染め、絞りなど装飾
1947 年のインド独立以後ナショナル・スタ
豊かな各地独特の民族衣装を観察するの
イルとして意識的に広められた。同じ着方
も、インド旅行の楽しみのひとつである。
花嫁と花むこ ラジャスターン州(インド)
どうみょう
みほこ
文化女子大学教授。東京大学人文科学研究科大学院修
士課程修了。アジア染織史・服飾史を専攻し、アジア
各地を現地調査。現在放送大学で『アジアの風土と服
飾文化』の講座を担当。
藤田栄子
ふじた
えいこ
1970 年生まれ。2001 年〜 03 年古都ルアンパバーンに青年海
外協力隊員として滞在し、ラオス王宮博物館で保存資料の写真
技術指導に従事。2004 年 11 月写真展「ラオスタイル」開催。
った着方をします。多少太っても自在に着
キュッと結び、そのまま水浴びをします。
続けることができる優れものなのです。自
水浴び場が外にある為にシンが欠かせませ
転車にも乗れるし、しゃがんで座っても下
ん。友人の女性は家の中にシャワーがあっ
着が見える心配もありません。しかしお尻
て誰にも見られないのにシンをまいてお風
の部分が着物と同様にタイト(このライン
呂に入ります。理由を聞くと「自分の裸が
ラオスは日本と地理的に近いインドシナ
が美しい)な為、下着の線が出るのは気に
自分で恥かしい」と。私はこんな気持ちを
にありながらあまり知られていない国では
なるようでした。思うことは日本人の女性
持つ彼女が好きでたまりません。
ないでしょうか。しかしそこは気温以上に
と同じです。見た目は着物の腰から下にそ
着物の由来は知りませんが源は同じだと
人々が温かく、生活にすんなりと浸透して
っくりですが、着物より足さばきが快適で
思いました。ラオスでは衣服だけでなく食
いくことができる場所でした。その一つと
す。学生は紺を基調とした色のシンをはき、
文化、生活のさまざまな部分で、日本でも
してシンのお話をします。
職場の女性も皆シンをはいて仕事をし、お
見たことがある光景を目にし、自分がアジ
ラオス新年 ルー族の正装
祝いの席等では絹地で豪華なものを着ます。
ア人のひとりであるということをより強く
をはきます。ウエストの2倍はある筒状の
色や柄も種類が多く、
つい買いすぎてしまう
感じたのでした。時折見せるちょっぴり
布で、その中にすっぽりと入ります。次に
のが魅力と言うか魔力かもしれません。
恥かしがりやな女性たちの姿は心を揺さぶ
ラオスの女性はシンという巻きスカート
自分のウエストの所で1か所留め、余った
また水浴びをする時は専用のシン(木綿
布を前側に折り返してもう一度止めるとい
生地で薄手の素材)を使います。胸の上で
り、私にとってラオスは「故郷の次に帰る
場所」になったのです。
ACCUニュース No.348 2005.3
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