テキスト(サンプル) 第2章

第2章 仕訳・勘定記入
第
1
1
節
勘定
勘定とは
勘定とは
かんじょう
簿記では、簿記上の取引を記録していくが、具体的には「
「 勘 定 」を用いて記録・集計する。
勘定とは、取引を記録・集計する単位であり、取引
取引を
取引を簿記の
簿記の5要素について
要素について、
について、その増加
その増加(
増加(発生)
発生)と
減少(
減少(取消)
取消)を左右に
左右に対照表示する。
対照表示
そして、勘定は、簿記の5要素の具体的名称である「
「勘定科目」
各勘定科目の
勘定科目」ごとに設定
ごとに設定され、各勘定科目
設定
各勘定科目の残
かりかた
かしかた
高金額を
「 借方」、右側のことを「
「 貸方」という。
高金額を表示するものである。勘定では、左側のことを「
表示
≪ 現金勘定の
現金勘定のイメージ ≫
< 重要ポイント!!
!! >
勘定の左側・・・借方
勘定の右側・・・貸方
≪ 現金勘定の
現金勘定の具体例 ≫
-20-
第2章 仕訳・勘定記入
2
勘定記入の
勘定記入の原則
各勘定への記入においては、簿記
簿記の
簿記の5要素ごとに
要素ごとに、
ごとに、増加(
増加(発生)
発生)と減少(
減少(取消)
取消)を左右のどちらに
左右のどちらに
記入するのかが
貸借対照表
記入するのかが決
するのかが決まっている。具体的には、財務諸表である貸借
まっている
貸借対照表と
対照表と損益計算書に
損益計算書に計上される
計上される側
される側
(ホームポジション側
勘定記入の
ホームポジション側)に増加(
増加(発生)
発生)を記入することになる。これを勘定記入
記入
勘定記入の原則という。
原則
< 重要ポイント!!
!! >
各勘定の増加(発生)は、貸借対照表と損益計算書のホームポジション側に記入する。
-21-
第2章 仕訳・勘定記入
例題2-1
以下の各勘定の(1)~(10)に、各勘定の増加(発生)が記入される場合は「+」を、減少(取消)が
記入される場合は「-」の符号を埋めなさい。
資
(借方)
産
(1)
(貸方)
(借方)
(2)
(借方)
資
本
(5)
費
(貸方)
用
(9)
(貸方)
(3)
(借方)
(6)
(借方)
負 債
(4)
収 益
(貸方)
(7)
(8)
(貸方)
(10)
解答欄
解
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(9)
(10)
答
(1)
+
(2)
-
(3)
-
(4)
+
(5)
-
(6)
+
(7)
-
(8)
+
(9)
+
(10)
-
-22-
第2章 仕訳・勘定記入
第
1
2
節
取引の8要素
取引の
取引の8要素とは
要素とは
簿記では、取引を資産
資産・
資産・負債・
負債・資本(
資本(純資産)
純資産)・収益・
収益・費用といった
費用といった簿記
といった簿記の
簿記の5要素に
要素に分け,勘定を
勘定を用
いて記録
資産・
いて記録を行っていくが、具体的には、資産
記録
資産・負債・
負債・資本(
資本(純資産)
純資産)の増減と
増減と収益・
収益・費用の
費用の発生という
「取引の
取引の8要素」
要素」に分けて記録を行う。
≪ 取引の
取引の8要素 ≫
資産の増加(+)
資産の減少(-)
収益の発生(+)
負債の増加(+)
負債の減少(-)
費用の発生(+)
資本(純資産)の増加(+) 資本(純資産)の減少(-)
2
取引の
取引の8要素の
要素の組合せ
組合せ
簿記上の取引は、以下の「
「取引の
「取
取引の8要素の
要素の組合せ
組合せ」によって表現されることになる。これは、「
引を2面的に
面的に捉える」
える」こと(複式簿記)を意味している。
≪ 取引の
取引の8要素の
要素の組合せ
組合せ ≫
借方側
貸方側
資産の増加
資産の減少
負債の減少
負債の増加
資本の減少
資本の増加
費用の発生
収益の発生
※ 点線の組合せはあまり発生しない取引である。
-23-
第2章 仕訳・勘定記入
≪ 取引の
取引の8要素の
要素の組合せの
組合せの具体例
せの具体例 ① ≫
< 重要ポイント!!
!! >
取引は、取引の8要素の組合せとして2面的に捉えることができる。
-24-
第2章 仕訳・勘定記入
≪ 取引の
取引の8要素の
要素の組合せの
組合せの具体例
せの具体例 ② ≫
-25-
第2章 仕訳・勘定記入
例題2-2
以下の取引につき、勘定記入を行い、期末貸借対照表、損益計算書を作成しなさい。
(1)期首に、1,000,000円を出資し、会社を設立して、銀行から500,000円を借入れた。
(2)商品600,000円を現金で仕入れた。
(3)上記商品を1,200,000円で販売し、現金を受け入れた。
(4)給料を200,000円現金で支払った。
なお、勘定科目は、現金、借入金、資本金、売上原価、売上、給料のいずれかを使用すること。
解答欄
現金
借入金
資本金
売上原価
売上
給料
-26-
第2章 仕訳・勘定記入
期末貸借対照表
資産
金額
(
(単位:円)
負債及び純資産
) (
金額
) (
) (
)
(
) (
)
(
)
(
)
繰越利益剰余金
(
)
損益計算書
費用
金額
解
収益
(
) (
) (
(
) (
)
(
)
(
)
当期純利益
(単位:円)
金額
) (
)
(
)
答
現金
借入金
(1)
1,000,000 (2)
600,000
(1)
500,000 (4)
200,000
(3)
(1)
1,200,000
資本金
(1)
売上原価
1,000,000
(2)
売上
(3)
600,000
給料
1,200,000
(4)
-27-
200,000
500,000
第2章 仕訳・勘定記入
期末貸借対照表
資産
(現
金額
金)
(
(単位:円)
負債及び純資産
1,900,000 ) (借
入
金)
(
500,000 )
(資
本
金)
(
1,000,000 )
(
400,000 )
(
1,900,000 )
繰越利益剰余金
(
金額
1,900,000 )
損益計算書
費用
金額
収益
(売 上 原 価)
(
600,000 )
(給
(
200,000 )
(
400,000 )
(
1,200,000 )
料)
当期純利益
(単位:円)
(売
金額
上)
(
1,200,000 )
(
1,200,000 )
【問題を解く手順】
1.貸借対照表と損益計算書の雛形を書く。
2.取引の8要素の組合せを判断する。
3.勘定の左側(借方)と右側(貸方)に2面的に記録する
4.勘定の残高金額から貸借対照表と損益計算書を作成する。
解 説
(1)1,000,000円を出資
資産(現 金)の増加・・・現金勘定の借方に記入
資本(資本金)の増加・・・資本金勘定の貸方に記入
(1)500,000円を借入れ
資産(現 金)の増加・・・現金勘定の借方に記入
負債(借入金)の増加・・・借入金勘定の貸方に記入
(2) 費用(売上原価)の発生・・・売上原価勘定の借方に記入
資産(現 金)の減少・・・現金勘定の貸方に記入
(3) 資産(現
収益(売
金)の増加・・・現金勘定の借方に記入
上)の発生・・・売上勘定の貸方に記入
(4) 費用(給
料)の発生・・・給料勘定の借方に記入
資産(現
金)の減少・・・現金勘定の貸方に記入
-28-
第2章 仕訳・勘定記入
第
1
3
節
仕訳
仕訳とは
仕訳とは
仕訳とは、取引を各勘定に記入するために、取引を借方要素と貸方要素に分ける一連の準備手続を
しわけ
いう。取引は、勘定に集計されるが、勘定
勘定への
「仕訳」という準備手続を
勘定への記入
への記入を
記入を正確に
正確に行うために、「
うため
行うのである。
≪ 取引から
取引から財務諸表
から財務諸表の
財務諸表の作成までの
作成までの流
までの流れ ≫
2
仕訳の
仕訳の順序
仕訳は、以下の順序で行うことになる。商品を1,000円で販売し,現金で回収した取引について考
えていくことにする。
(1) 5要素の選択
発生した取引が、簿記
簿記の
資産・
簿記の5要素である、資産
要素
資産・負債・
負債・資本(
資本(純資産)
純資産)・収益・
収益・費用のいずれに関係
費用
する取引かを判断する。
『資産』
『収益』
資産』(現金)と『
収益』(売上)
(2) 借方と貸方の決定
(1)で選択した5要素の増減を、取引
取引の
取引の8要素から
要素から選択
から選択する。
選択
『資産の
『収益の
資産の増加』
増加』と『
収益の発生』
発生』
-29-
第2章 仕訳・勘定記入
(3) 借方と貸方に該当する勘定科目名を付す
取引の8要素の組合せに伴って、左側(借方)の項目と右側(貸方)の項目に区別し、仕訳として、
表現する。
現
(借方)現
金
(貸方)売
売
上
(4) 金額の決定
(借方)現
金
1,000 円 (貸方)売
上
1,000 円
< 重要ポイント!!
!! >
仕訳を行う場合、取引
取引の
取引の8要素の
要素の組合せ
組合せを考える。
第
4
節
1
転記
転記とは
転記とは
てんき
転記とは、仕訳
仕訳した
仕訳した取引
した取引を
取引を勘定に
勘定に移すことをいう。仕訳で借方の勘定科目は,当該勘定の借方に転
すこと
記し、貸方の勘定科目は、当該勘定の貸方に転記する。
≪ 転記の
転記のイメージ ≫
-30-
第2章 仕訳・勘定記入
2
転記の
転記のルール
(1) 原則
勘定には、日付
日付、
日付、相手科目、
相手科目、金額を記入する。
≪ 転記の
転記の原則 ≫
勘
定
日付・
日付・相手科目・
相手科目・金額
≪ 転記の
転記の具体例 ≫
< 重要ポイント!!
!! >
勘定には、日付
日付・
日付・相手科目・
相手科目・金額を記入する。
-31-
第2章 仕訳・勘定記入
例題2-3
次の取引について、仕訳・勘定記入を行いなさい。
(1)現金20,000円を元入れして営業を開始した。
(2)取引銀行から現金10,000円を借入れた。
(3)取引銀行へ現金3,000円を返済した。
(4)家賃2,000円を現金で受け取った。
(5)交通費600円を現金で支払った。
解答欄
<仕
訳>
(1) (借方)
(貸方)
(2) (借方)
(貸方)
(3) (借方)
(貸方)
(4) (借方)
(貸方)
(5) (借方)
(貸方)
<勘定への転記>
(借方)
(借方)
現
金
交通費
(貸方)
(貸方)
(借方)
借入金
(貸方)
(借方)
資本金
(貸方)
(借方)
受取家賃
(貸方)
-32-
第2章 仕訳・勘定記入
解
答
<仕
訳>
(1) (借方) 現
金
20,000 (貸方) 資
本
金
20,000
(2) (借方) 現
金
10,000 (貸方) 借
入
金
10,000
金
3,000 (貸方) 現
金
3,000
金
2,000 (貸方) 受 取 家 賃
2,000
(3) (借方) 借
入
(4) (借方) 現
(5) (借方) 交
通
費
600 (貸方) 現
金
600
<勘定への転記>
(借方)
現
(1)資本金 20,000
金
(貸方)
(3)借入金13,000
(2)借入金 10,000
(5)交通費
(4)受取家賃
(借方)
(5)現 金
(借方)
借入金
(貸方)
(3)現 金 3,000
(2)現 金 10,000
600
2,000
交通費
600
(貸方)
(借方)
資本金
(貸方)
(1)現 金 20,000
(借方)
受取家賃
(貸方)
(4)現 金 2,000
解 説
1.取引の8要素の組合せを判断する。
(1) 資産(現 金)の増加
資本(資本金)の増加
(2) 資産(現 金)の増加
・・・現金勘定の借方に転記
・・・資本金勘定の貸方に転記
・・・現金勘定の借方に転記
負債(借入金)の増加
・・・借入金勘定の貸方に転記
(3) 負債(借入金)の減少
・・・借入金勘定の借方に転記
資産(現 金)の減少
・・・現金勘定の貸方に転記
(4) 資産(現 金)の増加
・・・現金勘定の借方に転記
収益(受取家賃)の発生
(5) 費用(交通費)の発生
資産(現 金)の減少
・・・受取家賃勘定の貸方に転記
・・・交通費勘定の借方に転記
・・・現金勘定の貸方に転記
2.取引ごとに、仕訳と勘定への転記までは同時に行う。
-33-
第2章 仕訳・勘定記入
(2) 例外
しょくち
仕訳において相手科目
相手科目が
「諸口」と記
相手科目が複数存在する場合には、相手科目を記入する代わりに、「
複数存在
入する。その他の記入方法は、原則と同様である。
≪ 転記の
転記の例外 ≫
4月5日に商品を1,500円で販売し,代金のうち1,000円は現金で回収し,残額は掛けとした。
4/5(借方)現
4/5( 〃 )売
掛
金
1,000
金
500
現 金
4/5 売上
上
1,500
売 上
1,000
4/5
売掛金
4/5 売上
(貸方)売
500
-34-
諸口
1,500
第2章 仕訳・勘定記入
例題2-4
次の取引について、仕訳・勘定記入を行いなさい。
(1)平成×年1月3日に取引銀行から現金1,000円を借入れた。
(2)平成×年1月15日に商品3,000円を販売し、代金のうち500円は現金で受け取り、残額は掛けと
した。
解答欄
<仕
訳>
(1) (借方)
(貸方)
(2) (借方)
(貸方)
<勘定への転記>
(借方)
現
金
(貸方)
(借方)
売 上
(貸方)
(借方)
売掛金
(貸方)
(借方)
借入金
(貸方)
解
答
<仕
訳>
(1) (借方)
現
金
1,000 (貸方)
借
(2) (借方)
現
金
500 (貸方)
売
( 〃 )
売
掛
金
入
金
1,000
上
3,000
2,500
<勘定への転記>
(借方)
1/3 借入金
現
1,000
金
(貸方)
(借方)
売 上
(貸方)
1/15 諸 口 3,000
1/15 売 上
500
(借方)
売掛金
1/15 売 上 2,500
(貸方)
(借方)
借入金
(貸方)
1/3 現 金 1,000
-35-
第2章 仕訳・勘定記入
解 説
1.取引の8要素の組合せを判断する。
(1) 資産(現 金)の増加
負債(借入金)の増加
(2) 資産(現 金)の増加
・・・現金勘定の借方に転記
・・・借入金勘定の貸方に転記
・・・現金勘定の借方に転記
資産(売掛金)の増加
・・・売掛金勘定の借方に転記
収益(売 上)の発生
・・・売上勘定の貸方に転記
2.取引ごとに、仕訳と勘定への転記までは同時に行う。
3.仕訳において、相手勘定科目が複数存在する場合には、「諸口」と記入して、転記する。
-36-