留学最終報告(北京联合大学旅游学院) 文化学部 3 回生 古林樹子 8 月 29 日、北京に到着したのは夜の 20 時すぎでした。空港に降り立つと、まず空気の汚さ に驚きました。出口が分からず、人の波についていくと、とても優しそうな男性が「高知県立大 学」と書いたプレートをもって出迎えてくれました。北京へ向かう日が近づくにつれ中国の反日 報道は激化していきましたが、それと相反して「面白い時に留学できる」と興奮していました。 留学して一ヶ月ほどすると、外にあまり出ないようにと大学側から注意を受けたり、予定して いた上海への旅行は「責任を負えない」と旅行会社の人に断られました。しかし日本の報道 の様子を聞いた時は驚きました。「何か違う」と思いました。デモの日、確かに近くのイトーヨー カドーは閉まり、大使館の前も大勢のデモ行進をする人で溢れかえっていたといいます。あの 頃タクシーに乗る時は韓国人のふりをしていたし、大きな声で日本語を話すことも控えました。 けれども普通に生活はしていたし、中国人の友達とも交流していたし、時期がすぎれば収ま るだろうなというスタンスでした。当然、私が日本人だというと嫌な顔をする人もいました。だけ どその分、「私達が守るから。大丈夫?外に出ちゃだめだよ。あと半年の辛抱だから!」と声 をかけてくれる中国人の先生や友達、寮母さん達がありがたくて、嬉しくて、涙が込み上げて くることもありました。あるブロガーの方は「あの時実際に中国にいた日本人で中国を嫌いに なったという人は意外と少ないのではないか」とおっしゃっていましたが、私がその中の一人 だと思います。 反日モードが高まる中、一人のアメリカ人留学生とスーパーに買い物に行った時のことです。 いつも電光掲示板をギラギラとさせている美容院にも赤い垂れ幕がつき、「日本人接客お断 り」と書かれていました。日本人のそれらしく私もその話題には触れない。しかしそれを見たア メリカ人が「文句を言いに行こう!」と美容院に向かって歩きだすのです。「こうゆうことは良く ない!嫌いだ!」と本当に私の手をとるので、必死で止めました。反応の正直さと、まっすぐ な意思表示に楽しませてもらうことばかりでしたが、この時は冷や汗をかかずにはいられませ んでした。また、金曜日の夜は、アメリカ人留学生の部屋から音楽が流れるのが当たり前に なっていました。それは私もその他の留学生も黙認していましたが、ある日夜中に廊下で騒 いでいたので自分の部屋に帰るように注意しました。その前日も彼らが廊下で水タバコをした せいで、私の部屋に煙や匂いが充満し、私はとても腹が立っていたのです。その日は、お風 呂に乱入してきたりと、ふざけるのも度がすぎていたので、「音楽も消してくれ」と強く主張しま した。アメリカ人留学生も私もヒートアップしてきて、大喧嘩になってしまいました。仲裁に入っ てくれたのは北朝鮮の男の子で、泣いている私を部屋まで送ってくれました。泣きながらベト ナム人の女の子に「世界ではアメリカがヒーローで、北朝鮮が悪者だけど、私にとっては逆だ わ」と、その日は夜まで話を聞いてもらいました。「今はお酒を飲んでいるし、今日は世界女性 デーだから、みんないい気持ちなんだ。話をしたいなら明日にしてくれよ。」泣いている私を見 て不憫に思ったのかそう言ってくれたアメリカ人ですが、次の日もその次の日もその件につい て話し合うことはありませんでした。あとで聞くところによると、世界女性デーは日本ではメジ ャーではありませんが、彼らにとっては祝うべき祝日でした。 文化の違いがあると、何が正解か分からなくなる時があります。でもぶれないスタンダード が自分の中にしっかりと根を生やしていないと、それこそ大変な事になってしまうと思います。 私は最後まで、「寮にいても、留学生でも、外国人でも、中国にいるのだから、中国の文化に 寄り添っていきていくべきだ」と考えていました。銀行では、英語を話す欧米人は中国語を話 す日本人より優遇されます。「ここは中国なのにどうして?」何度もそう思うことがありました。 日本にいる中国人の方は、とても流暢な日本語を話すのに差別されることがあります。おかし なことに、英語で道案内を聞く欧米の方は、憧れをもって歓迎されます。中国にいるのなら、 中国の文化を理解するべきだし、中国語をしっかりと身につけるべきです。それが相手にたい する礼儀で、相手を尊重することになるからです。と思いつつ、このような考え方も私が「日本 人」であるからで、妥協しなければいけない日もやがていつかは来るのだろうなぁと。でもきっ とそれは良い事で、また新しい扉が開けることを意味するのだと思います。そんな素敵な日が また訪れることを、今から楽しみにしています。 北京の広東料理屋にて留学生と 国慶節、北京の正陽門(通称「前門」)にて留学生と
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