SESSION 4 プラスアルファの魔法 受け取る報酬以上のことをすれば、 いずれそれよりはるかに 大きい見返りを受け取ることができる。 SESSION 4 プラスアルファの魔法 プラスアルファの哲学 プラスアルファの魔法は、深い意味を持っています。ここではまず、この先で述べることのすべてに共通する1つの哲学、すなわち「プラスアルフ ァの哲学」とでも言ったものをお話しましょう。 ここにある行動があるとします。これを仮にNという記号で表すとしましょう。このNは、「人から与えられた仕事」「つまらないのであまりやりたく ない作業」などの意味も含みます。実はこのプラスアルファの哲学は、このような場合に、とりわけ大きな力をあらわすのです。 つまりこういうことです。まずNがあって、それにプラスアルファの魔法をほどこす……と、どうなるでしょう。数式化すると以下のようになります。 N+α さて、このNというのは、これまでの話からすると、他人の命令、あるいはあまりやる気のしない行動などを指します。そして、α(アルファ)は「あ なた自身の自発的行動」をいみします。ここでは「N+α」としてありますが、「N×α」〔正確にはN×(+α)〕「N÷α」〔正確にはN÷(+α)〕でも よいのです。しかし「N-α」だけはいけません。 こうして、Nにプラスアルファの要素を加え、あるいは掛け合わせると、答えは「他人の命令を取り入れたあなた自身の自発的行動」ということに なるのです。あるいは「あまりやる気のしない行動を中に包み込んだ、あなた自身の自発的行動」ということになるのです。つまり、このプラスアル ファというのは、ほかから与えられた行為、行動、あるいは気のすすまない行為をあなた自身の自発的な行動に変えてしまう力を持っているので す。あらゆるモティベーション技法の中で、このプラスアルファの哲学はもっとも優れたものです。 図式化すると、ここに「他人の命令」という球体があるとします。これはあまりモティベートがわきません。つまりヤル気が出ないわけです。しかし この球体の全体を「プラスアルファ」という考えですっぽりおおったらどうでしょうか。もうこれはどこから見ても、あなたの自覚的行動の何ものでも ありません。 プラスアルファ プラスアルファ =自分の自発的行動 =充ちたりた行動 他人の命令 やる気のしない行動 さて、それでは以下にプラスアルファの一般的用例を述べてみることにしましょう。 プラスアルファの魔法 あなたが人々から受けた親切や奉仕に対し、それに値する親切や奉仕を行うことはあなたにとっても、素晴らしい出来事をもたらしてくれます。 これは投資なのです。この投資は複利となって大きく育つでしょう。 献身や奉仕は、必ず本人のところへ帰ってくるのです。 献身と奉仕の精神を持って生きることは、人生に豊かな実りをもたらしてくれます。 大きな見返りもその一つですが、あなたの人格に対する信頼も増大します。またあなた自身の積極的な心構えが持続する、という点でも大いに 意義があります。 献身や奉仕に対して開かれる世界は無限であり、それがさらに力強い勇気や自身をあなたにもたらし、意欲や活力を呼び起こすのです。 この問題は、このプログラムの1セッションだけで扱うには、大きすぎる問題かもしれません。しかし、このプラスアルファの魔法をここで述べるこ とは、それ以上に大切な、そして重要なことなのです。 プラスアルファの魔法とは、本当の強さや豊かさを求めて、「1マイル余分に進む」ということです。言い換えれば、「あなたにもたらされるサービ ス以上の、より良いサービスを相手に与える」ということです。 1マイル余分に進むということで、願望や目標を達成した人々の事例は無数にあります。 いくつかの事例によって明らかにされる教訓や思考法をノウハウとして身につけ、あなたの人生に活かせば、あなた自身、驚くほどの素晴らし い経験をすることができます。 これからその事例を紹介します。彼らの心構えを、ぜひあなたもつかんでください。 コスコブは、コネティカット州グリニッジの高級住宅街です。そのコスコブでスティーブ・メクセリーは、テレビ販売とサービス、ビデオ・レンタルを 業務とするコスコブ・テレビ販売会社を経営しています。テレビは高価なコンソール型から、車に搭載できる小型ポターブルまで、さまざまな機種 が売場の通路にまではみ出していました。もう一方のコーナーは、レンタル・ビデオの欄になっています。 このコスコブは、ニューヨークでも最高の金持ちが、マンハッタンの混雑を避けて移ってくる地区でしたが、一角には、スタンフォードの低所得者 向けの住宅団地もあります。どちらもメクセリーの店の顧客でした。米国で一番の金持ちと、一番の低所得者の両方が客になっているわけです。 彼は高価な新型テレビを金持ちに売り、その下取り品を修理して低所得者に売っていました。 メクセリーは、この2つのグループを決して差別することはありませんでした。どの客にも温かく親切に、親しみのあるサービスと品質の良い商 品を提供していました。その商品の中には、彼自身が90日間の保障をする中古品も含まれています。 彼はときどき、ある女性客のことを思い出します。 彼女は、スタンフォードの団地に住んでいました。あるとき彼女が買った中古テレビが、保障期間の90日を2日過ぎたときに壊れてしまいまし た。ルールだけで判断すれば、彼は同情だけしていればいいということになります。客がどうしても修理したいというなら、有料ということになるわ けです。 しかし、メクセリーはそのようなことはしませんでした。彼は黙ってそのテレビを引き取り、別の中古テレビを無料で交換をしてやったのです。女 性客は喜んで帰っていきました。すると翌日から数日間、同じ団地から4人の新規の客が中古のテレビを買いに来たのです。最初の女性客が友 人全部に「コスコブ・テレビ販売会社の親切な男」のことを話したからです。メクセリーは、プラスアルファの魔法を行ったのです。 「私の商売では、口コミによる宣伝は印刷した広告よりもずっと効果があります。一人の客の扱いかたが良くても悪くても、その客の友人知人全 部に伝わります。ですから私は、間違っていないと思うことを全部の客にしています。公正に正直に対応し、誠意を示しています。そうすれば、い つの間にかこの店は、人々がやってきて買いたくなる店だという評判が立ちます。実際に商売はうまくいっていますし、そのことが私の生活を楽し いものにしてくれています」。 と、メクセリーは話しています。 これこそが、プラスアルファの魔法の効果なのです。プラスアルファの魔法というのは、「支払われた金額以上の、より良いサービスをすること」 です。メクセリーのような態度こそが客を再び店にやって来させ、さらには友人を連れて来させるのです。あなたがビジネスパースンなどの、組織 の人ならば、そういう態度をとれば、上司や同僚たちがあなたを頼りにするようになります。そのことがあなたの一生に、昇進につぐ昇進の喜びを 味あわせてくれることにもなるのです。 エドウィン・バーンズはある日、エジソンの助手になることを決意しました。 彼の決意は熱烈なものであり、行動へと駆り立てずにはおかないものでした。 バーンズは当時、エジソンのもとへ旅立つための旅費にさえ事欠く有様でしたが、ある日彼は妻に「私は貨物列車に乗ってエジソンのもとへ行く つもりだ」と胸の内を明かしました。 妻は言いました。「貨物列車だなんて。あなたが浮浪者に見えたら、エジソンは相手にしてくれないわよ、きっと」 「彼が僕をどう思おうと、そんなことは問題じゃない。大切なことは、僕が彼のために何ができるのか、ということなんだ」とバーンズは言いまし た。 この会話の中に示されている考えが、おわかりになりますか? 「見知らぬ人に時間か金銭か寝床を提供した者は、自分自身の人生を祝福したもの同然である。なぜなら、それは必ず報われるからだ」という 言葉があります。 エドウィン・バーンズは、トーマス・エジソンに恩義を施すつもりだったのです。 彼は貨物列車に乗ってニュージャージーへ行き、直ちにエジソンの研究所に向かいました。そのときの彼は、よれよれの、油とすすとほこりだら けの服を着て、ぼろぼろのカバンを一つ手にさげたかっこうでした。彼はエジソンの研究所に着くと、こう言いました。 「エジソン氏に会いたいのです」。 「どんなご用件でしょうか?」 秘書が対応に出てきました。 「私はバーンズと申します。エジソン氏のパートナーになる男です」。 「残念ですが、今日はエジソンには面会の約束はございません。それにパートナーのお話など全然聞いておりませんが……?」。 「あなたはご存知ないでしょうが、私にはわかっているのです。今ここに、こうして現れているのが何よりの証拠です。」。 2人の会話は研究室の外にいた人々の注目を集め、人垣ができていました。 汚らしい格好の男が、大胆にも有名なエジソンのパートナーになるのだ、と言ってさわいでいる姿は、人々の好奇心を大いに刺激しました。バ ーンズの背後には、嘲笑が渦巻いていました。 しかし彼は、この嘲笑を無視してもう一度秘書に向かって自分の目標を話しました。彼女はついに折れ、いくぶん皮肉まじりの口調でこう言いま した。 「それではできる限りのご協力をさせていただきます。あなたの将来のパートナーに向かって、会うつもりがあるかどうか尋ねてみましょう」。 そしてエジソンのオフィスへ向かう途中振り向きざまに彼女は、 「ところであなたは、パートナーになるとおっしゃいましたが、どのレベルのパートナーをお望みなのですか?」 「肩書きなど、問題ではありません」とバーンズは答えました。 しばらくすると彼女が戻って来ました。 「エジソンがお会いになるそうです」。 こうしてバーンズは、待望のトーマス・エジソンに会うことができました。 それから30分経ちましたが何も起こりません。45分経っても何も起こりませんでした。そして1時間経ったとき、事務所の人々も心配になり、成 り行きを見るために、そのうちの1人を研究室に行かせてみることにしました。 研究室のドアを開けると、バーンズは腰をかがめて資料室の床をみがいているところでした。 しかしながら、事態は順調に進んでいるようでした。事務所の人々も、それぞれ自分のデスクに戻りましたが、ちょうどその時、エジソンが資料 室へやって来てバーンズにこう言いました。 「お若いの、床の掃除にはだいぶ手間取っているようだね」。 臆することなくバーンズは、ていねいな口調で答えました。 「ミスター・エジソン、あなたが電球を発明したときにも、いささか時間がかかったと記憶しています。 実用に耐えうるようなフィラメントを見つけ出すまでに、1万回以上の実験をなさったと聞いております。 しかしあなたは、成功するまであきらめませんでした」。 「その通りだよ、君。全くその通りだ」。 とエジソンは言いました。 床掃除に取り組む姿勢と快活さが認められ、バーンズはエジソンの研究所に“便利屋”として雇われたのです。 それから数年、彼はいくつかの小さな仕事に従事しましたが、エジソンのパートナーになると公言した手前もあり、どんな小さなチャンスも逃さな いつもりで、日々努力を怠りませんでした。下積みも毎日にも、はじめに立てた目標を忘れるようなことはありませんでした。心の中では常に彼 は、エジソンのパートナーであり、現在の仕事もそのためのステップアップなのです。希望が実現される日が来れば、彼の役割ははるかに重大な ものになるでしょう。 床をみがくことも、窓をきれいにすることも、すべてはその日のための修行です。 下積みに耐えながら、彼はチャンスが来るのを待ちました。 チャンスがいつ、どんなかたちで訪れるかは誰にもわかりません。もちろんバーンズ本人にもわかりませんでした。しかし彼は、いつチャンスが 訪れてもいいように、常に注意していました。 ある日のこと、彼はたまたまセールスパースンたちが会議をしている部屋にいました。彼らは、エジソンが新たに開発した装置をどうやって売る か話し合っていたのです。その装置は、世界で最初の、人間の声を録音し再生できる装置でした。振動板と、すずのメッキをした銅の筒、そして それをまわすハンドルから成っており、ブリキの箱にそれらが配置されていたので、この装置は“ブリキの速記者”と呼ばれていました。 振動板に連結した針を、銅の筒に軽くあてて、ハンドルをまわしながら振動板にむかってしゃべると、振動板が振動します。そうすると針も動い て、すばやく筒にみぞが刻まれます。 再生するときは、筒に針をあてて、ハンドルをまわしながら振動板に耳をあてます。そうすると、かすかに再生音が聞こえてくる、というもので す。再生は5回か6回まで可能でした。 会議は“ブリキの速記者”の販売促進のために、エジソンによって召集されたものです。“ブリキの速記者”のあだ名の通り、エジソンはこれを速 記のかわりにならないものか、と考えたのでした。 その会議は3日間続きましたが、セールスパースンは誰ひとりとして、その新製品を売りたい、とは言い出しません。 会社の役員や重役と言った人々が、そんな機器を買うとは思えなかったのです。 「ブロンドの女性を1人雇うかわりに、この機器を買おう、などという社長なんか、いませんよ」。 と、1人のセールスパースンは言いました。 そのとき「私にその機器を売らせてください。必ず売って見せます」。 と言う声が部屋の中に響きわたりました。バーンズです。 「できるものならやってみたらいい」。 セールスパースンたちは、反対もあらわにバーンズに向かってそう言いました。 機器は、18kgの重さがあり、当然のことですが、現在のテープレコーダーに比べるとなにもかも比較にならないものでした。 しかし当時のことです。バーンズはそれを持ってニューヨークへ行き、ブロードウェイを行ったり来たりしながらようやく1台を売りました。 そして月末までに7台を売ったとき、研究所に戻ってその7台の注文書をエジソンの机の上に置きました。 「この注文書をご覧ください。この機器は確かに売れるということを注文書が証明しています。あとはただ、この新製品を国中に普及させるだけ です」。 それに対しエジソンは、次のように言って、握手を求めました。 「バーンズ君、君がはじめてここに来て、私のパートナーになると宣言したとき、私以外のすべての者が君を笑った。 しかし今、君を笑う者は1人もいない。よきパートナーとなった君に、心からお祝いを言おう」。 『エジソンによって作られ、バーンズによって売られる』 というキャッチフレーズが生まれたのもそのときです。エジソンのその機器は、こうしてアメリカ中を席巻したのです。 バーンズは、ねばり強さと自主努力の精神で成功しました。 しかも彼は、心身の自由を最大限に確保できるよう、自分の仕事を組み立てていたのです。 どんな資質が、バーンズをエジソンのパートナーにしたのでしょうか? エジソンは、自分のために働いてくれる何千人という人材を持っていましたが、真のパートナーと呼べる人物はいませんでした。しかもバーンズ のように、エジソンとかかわりをもつことで大富豪になった人物は1人もいません。 やはりバーンズには、他人にはない“何か”があったのです。その中でとりわけ重要なのは、プラスアルファの努力です。 もしあなたが、以上に述べた話の中からバーンズの成功の秘密を発見し、それをあなたの願望や目標に応用すれば、あなたも間違いなく成功 するでしょう。 人々の注目や好意を集めるのは、あなた次第です。が、それは、他人にこびを売るようなことではありません。 最大の奉仕や献身を行う人には、最大のチャンスが訪れるのです。 もうひとつのエピソード これはロサンジェルス出身のある保険のセールスパースンの物語です。 何年か前、平均よりやや上位にいた彼は、売り上げの新記録を作るようなことはありませんでしたが、つつましやかな生計を立て、少しずつ預 金を増やすような生活をしていました。 ところがある日、そんな彼が投資に失敗し、少しずつ築いてきた財産をすべて失い、ドン底に落ちてしまいました。 しかしそれは、決して“不運な投資”ではありませんでした。むしろ“幸運な投資”と呼んだほうがよいかもしれません。 一般に大きな損失をこうむった場合、たいていの人はそれで人生を失ってしまいますが、ときにはそうした大きな試練を乗り越えて大成する人 物もいるのです。 ドン底から立ち上がろうとした彼は、PMAプログラムと出会います。 そして“プラスアルファの魔法”のセッションで、与えられた奉仕に対してはそれ以上の奉仕や献身で報いるということを学んだとき、目の覚める ような気持ちになりました。 お金や財産は失ってしまいましたが、真の豊かさに気がついたのです。 彼はただちに、解決できない問題で苦しんでいる人々の役に立つことを思い立ち、実行に移しました。 最初に出会ったのは、カリフォルニアの砂漠に金鉱を探しにきている青年でした。時間と費用を費やし、金鉱を夢みて懸命に努力したようです が、ついに金鉱は発見できず、カリフォルニアに不毛の荒野で、飢えに苦しんでいたのです。 そこでこのセールスーパースンは、慈善団体のように、この飢えに苦しむ青年の救済に乗り出しました。 彼は青年を家に招き、食べ物を与え、勇気づけ、そして最後には地方の航空会社を見つけてやりました。 自分よりも不幸な人間を助ける機会があまりにも早くやって来たため、彼は、自分には疫病神でもとりついているのではないか、と思ったほど です。 しかしこれは、彼にとって人柄や人格を試される一つの試練だったのです。 あなたにも、同じような試練がやって来るかもしれません。素質や脳力と共に、人間性や人柄といった個人のすべてが試される日が、やって来 るかもしれません。しかしそれを恐れてはいけません。それはむしろ自分に与えられた一つの特権であり、内なる自分の強さや豊かさを証明する 最大のチャンスなのです。 もしあなたが、その試練に対して積極的な心構えで臨むなら、すべての逆境は、それと同等かそれ以上の利益をあなたにもたらすでしょう。 保険のセールスパースンは、見事に試練を耐え抜き、逆境を成功へと転化しました。 その日を境に、彼の人生は一変しました。まるで魔法のように彼の売り上げは上昇し、常に高い水準を保つようになり、いまだかつて記載したこ とのないような高額の保険契約書に、自ら記入することになりました。 どうしてそうなったのでしょうか? セールスパースンの紹介によって航空機工場に就職した金鉱探しの青年は、その職務に励みました。 彼はその会社で、労働時間の短縮と生産の合理化を成功させ、会社は生産工程の省力化で特許を取ることができました。 こうして青年は、経営者に好評をもって迎えられるようになり、機が熱するのを待って、かつての保険のセールスパースンに恩返しすることにな ります。 彼は社長の同行を求めた上で、その恩人のロサンジェルスの保険会社をおとずれ、会社の役員を対象とする5万ドルの保険契約を結んだので す。 間もなく、この保険のセールスパースンの元には保険契約を結んだ人たちの友人や仲間が訪れるようになり、保険加入についての、彼のアド バイスを求めるようになりました。保険業は順調に伸びて行き、ついに彼は念願の目標を達成することができました。『MDRT(ミリオン・ダラー・ラ ウンド・テーブル=100万ドルの円卓会議)』の終身会員となったのです。MDRTは、3年連続で年間100万ドル以上の生命保険を売り上げたもの にのみ与えられる栄誉であり、すべての保険のセールスパースンの目標でした。 “プラスアルファの努力をする”ノウハウに共鳴し、その教えに従って生きるようになってから6年、彼はその年の最初の4ヶ月で200万ドル以上の 生命保険の契約を果たしました。 その活躍の程は国中に広まり、ついに生命保険業界の会長にまで選出されるまでになりました。彼は、会員の圧倒的な支持を受けて再選され た唯一の会長です。 ほとんどの人が自分の業績だけに目を奪われている中で、彼は自分の競争相手にさえ、セールスの方法を教えたのです。 その成功の秘密を、彼はよろこんで人々に伝えました。謙虚な気持ちと、単純かつ効果的なノウハウに支えられた彼の成功の秘密は、何といっ ても“プラスアルファの魔法”の中にあるのです。 積極的な心構えを持った4人の人物 “プラスアルファの魔法”が項を奏するためには、時間がかかることもあります。あるいはまったく徒労に終わることも覚悟しなければなりませ ん。 大手の鉄道会社で働いていた4人の男性は、それぞれがこの教訓を充分にかみしめるような体験をしました。 彼らは、PMAプログラムを職場で取り上げ、生産性向上と品質管理に役立てようとして会議や学習会を組織し、その課題に積極的に取り組 み、それを職務時間外に、完全に彼ら4人の自発的な行為として行いました。 彼らの“給与以上の働き”によってそのセクションにおける事故は40%も減少し、会社は数百万ドルの経費を節約することができました。 しかし、好事魔多しです。嫉妬とねたみの醜い影が、頭をもたげはじめていました。社内の一派が、彼らの業績をねたんで、彼らを傷つける計 画が進行していたのです。 この醜い計画は功を奏し、ある日のこと、グループの指導的立場にあった青年は会社から突然呼び出しを受け、解雇を言い渡されてしまったの です。 そのとき彼は、「私に関する限り、“プラスアルファの魔法”はまったく効き目がなかった……」ということもできたはずですが、あくまでもPMAプロ グラムの教えを忠実に守り、否定的な考えに落ち込むことはありませんでした。 彼はこの一時的な敗北を積極的な心構えで受け入れ、新しい別の目標を求めました。 挫折の原因となった障害物を、新たな踏み石に転化する道を模索し始めたのです。 彼は気づきませんでしたが、試練が訪れたとき、“プラスアルファの魔法”は青年にあるものをプレゼントする準備をしていたのです。 別の会社の役員は、彼が給与以上の働きをする人物であることを知り、解雇された時よりも良い地位と待遇で彼を迎えることを計画していまし た。 そして彼が解雇されたことを知るとすぐにその計画を実行に移し、青年を州立鉄道委員会に配属したのです。 新しい地位と大きな力が彼に与えたことは言うまでもありません。 プラスアルファの努力をする生き方は、必ず報われるものです。心のあり方を誠実に見つめるなら、それはあなたにとって不動の行動ノウハウ になるでしょう。 プラスアルファの努力は様々なメリットをあなたにもたらしますが、ことさら、その道徳的な価値ゆえに、この生き方を身につけることをお勧めし ます。報酬への期待や将来の約束のためではなく、人間としてのよりよき精神を保持するうえでも、あなたはこうした生き方をすべきです。 プラスアルファの努力をする生き方は、決してあなたを裏切ることはありません。 そうした生き方をしようとするあなたのエンスージアズムや誠実さに比例して、それはあなたに報いるものです。 試練の20年 次に私、ナポレオン・ヒルの体験を、お話したいと思います。 私は若い頃、著名な成功者の記事を雑誌に書いて生活していました。 アンドリュー・カーネギーと会ったのは、私が25歳のときで、弟と共にワシントンにあるジョージタウン法律大学への入学が決まった時でした。 そのときはただ雑誌の取材のためだけにカーネギーの豪邸を尋ねた私ですが、成功のノウハウの確立とその普及のための研究を彼から委任 されたことで、私の運命は大きく変わりました。 カーネギーは、世界の鋼鉄王といわれた人物でしたが、私が会ったときは、すでに6年前に実業界を引退し、社会事業に余生をささげていまし た。彼と最初に会ったときの彼の言葉は今でも忘れません。 「成功するにはルールというものがある。誰でもその通りにすれば、必ず成功するのに、大多数の人は、そのルールを知らずに、ゼロからはじ めている。これは時間と労力の無駄というものだ。成功のルールを普及するということは世の人々にとって大変意義あることだとは思わないか ね?」 それから20年、カーネギーからの1セントの援助もなしに、私は成功のノウハウの解明と確立にすべてを捧げて来ました。 ワシントンに戻り、この新しい仕事のことを弟に話すと、そんな馬鹿げた事はやめろ、と言われました。弟の意見は、私の家族や親戚の考えを 代表していましたが、ただ1人継母だけは私の仕事を理解してくれました。彼女は、常に頼りにできる人でした。 家族の反対にもかかわらず、私は成功のノウハウの研究に着手しました。 カーネギーが人類の未来のために残そうとする知的な遺産、「成功のノウハウ」を作り出すことを約束した以上、それは当然のことです。 しかしその仕事は、私の脳力をはるかに越えるものでした。仕事をやり遂げるには、自分自身を高めることがどうしても必要でした。 カーネギーは、著名人たちへの紹介状を書くことで私を助けてくれましたが、その最初の人物は当時40歳代なかばの、無名だったヘンリー・フ ォードでした。デトロイトに彼をたずねた私は、なぜカーネギーがフォードの将来性をかっているのか、大変疑問に思ったものです。どうしてカーネ ギーがフォードを評価するのか?それが私には、理解できませんでした。 そこで出発点に立ち帰り、自分の仕事の性質と見通しについて考えてみました。 その結果まず第一に気づいたことは、著名人やカーネギーの友人たちの一人ひとりをモティベート、つまり動機づけているノウハウを推論した り、逆にそのノウハウが実際に成功を生み出しているか否かを結論づける前に、まずは成功を目指して生きている人間を充分に知るということで した。 あるノウハウを人間にあてはめたり、人間からそのノウハウを引き出す前に、現実に生きている人間をじっくりと観察すべきだ、と痛感したので す。もちろん、ここで言うノウハウとは成功に関するノウハウのことです。 しかし成功者となった人々も、自分たちの行動や考え方を支えるノウハウには気づかないことが多いものです。 彼らは皆、偉大な信念の持ち主であり、決意の人であり、忍耐の人であり、そしてはっきりとした願望や目標を持つ人たちですから、常に奉仕の 精神を忘れることはありません。しかも運命の女神を味方につけるためには、これ以外の方法はないのですから、彼らの奉仕は熱烈なものにな らざるを得ません。 私の仕事は、彼らの人生の中から成功の哲学を導き出すことでしたが、未経験の若者にとってその仕事は、大変難しいことでした。本人でさえ 自覚していない成功の秘密を探り出し、それを体系化するのですから。 ある人は私に言いました。 「なぜあなたは、この問題に20年などという膨大な時間をかけたんですか?」 私は答えました。 「成功には周期があります。私が調査した人々の周期が完了し、成功を支える哲学を論理的に検証するためには、どうしても20年が必要だっ たのです」。 アンドリュー・カーネギーが私に直接教えてくれた成功の秘訣、そしてそれをもとに、成功者から話を聴くうちに徐々に明確な形をあらわしてきた 成功のノウハウ、これはカーネギーの信念の正しさを裏づけるものばかりでした。 それらのノウハウに基づいて計画的に行動を起こす人物を、私は観察したかったのですが、そこから生じる行動と結果を評価し結論を下すため には、その行動を全過程にわたって観察し、結果が表われるまで忍耐強く見守る必要がありました。 プラスアルファの努力をすることを身につけると、あなたの脳力は十二分に引き出される! 人生においては、あることを成そうとする場合、その計画・立案から最終的な結論が出されるまでに、長い時間がかかるものです。 彼らは皆、大博打を打っていました。そこで私は彼らの手の内をのぞきこみ、ゲームの進行をしっかりと把握しておく必要があったのです。 私には、その仕事と同時に妻と子供を養う責任がありました。身内や親戚に反対され白眼視されたのも、無理からぬところです。自分の生活と 家庭に捧げる20年を、そっくりそのまま私は1セントの得にもならないと思っていたことに費やしていたのです。 しかしそれもまた“プラスアルファの努力”そのものでした。私は自分が受けた奉仕以上に人々に尽くしましたが、残念ながら私の身内や親戚の 人には、それが理解できなかったのです。 成功のノウハウの確立に没頭している間、私はこの理論を自分自身に適用してみました。その結果セールスパースンの研修や養成に成功し、 生活費の心配はなくなりました。 私が養成した保険のセールスパースンの中には彼らにとって最高の名誉である『MDRT(100万ドルの円卓会議)』の会員になった人もたくさん います。 一方、後継者やアシスタントを養成し、私の研究をさらに発展させることにも力を注ぎましたが、こちらの方はとても高くつきました。 身内や親戚の反対、限られた収入と次第にかさんでいく出費に苦しみながら、それでもなおかつ前向きな心構えを維持することは、つらいこと でした。 もちろん家族は、常に反対していたわけではなく、時には応援してくれることもありました。しかし、この私をかくも長い間支え続けたものは、いつ か必ず、現在の仕事を誇りに思える日がやってくる、という自分自身の確信でした。 私は心の中で、願望や目標の実現を願い続けました。炎が弱くなり、消えそうになることもありましたが、そんなときは全身の力をふり絞り炎を 赤々と燃やし続けたものです。 厳しい局面を乗り越え、努力の結果を見届けようと考え続けたのも、あの無限の叡智に対する信頼があったからです。 成功のノウハウの誕生にまつわる“生みの苦しみ”についてお話しするのも、このプログラムが生きた経験や現実の中から生まれたものである ことを、理解していただきたいからです。 「20年間遠回りをし、辛苦に耐えたことに見返りはありましたか?」 そう聞かれれば、私の答えは明白です。 私が生まれ育ったヴァージニアの山奥は貧しい世界でした。そして密造酒とガラガラへびと、まるでロミオとジュリエットのような家同士の反目が 土地の3大名物だったのです。 もしあの素晴らしい継母にめぐり会うことがなければ、そして彼女が“プラスアルファの努力”をする生き方を授けてくれなければ、私は一生、ヴ ァージニアの山奥からは出られなかったでしょう。 “プラスアルファの魔法”は、今日の自由な社会で、誰でも身につけられる特権の一つです。 それは私たちにチャンスを与え、人々や社会からの協力を約束してくれます。 「サクセス・ストーリー」が始まるのはそこからです。 もし私が、成功ための17のノウハウのうち、どれかひとつを選ぶとしたら、この“プラスアルファの魔法”を選びます。 私自身を、周囲の人々にとってかけがえのない存在にしてくれたのは、まさにこのノウハウがあったからです。 辞書で“かけがえのない”という言葉を調べ、その意味を暗誦して下さい。 もしあなたが大きな人間になりたいと思うのでしたら、実際にあなた自身が多くの人々にとって“かけがえのない”存在にならなければなりませ ん。 そのためには、人や社会に奉仕と貢献をすることです。そうすればあなたは、“かけがえのない人間”となり、あなたが与える以上の奉仕と貢献 を得ることができます。 アンドリュー・カーネギーの物語 私が、プラスアルファの努力をすることの意義についてカーネギーに尋ねたとき、彼は次のように答えました。 「私が所有するすべての富と、事業によって得た利益の一切は、このノウハウの賜物であると断言できる」と。 そして人生最大の転機となった、ある事件について話してくれました。 若いころ、彼は仕事を終えてから無線の勉強をするようになりました。 それは実際に無線機のキーをたたいて覚えるという意味での勉強でしたが、すぐに仕事に役立つような資格や特技というわけではありません でした。 しかしこの余分な、つまりプラスアルファの努力が、ペンシルベニア鉄道監督の目に触れ、彼はただちに助手兼通信士として採用されました。 ある日の朝、カーネギーが事務所へ出勤すると、列車事故で大騒ぎになっていました。 操車係は半狂乱になって監督をさがし出し、その指示を受けようとしていましたが見つかりません。そこでカーネギーは監督への伝言をたのま れ、監督の家にかけつけましたが、監督は家を出た後でした。 カーネギーが大博打を打ったのは、その時です。彼は自分のすべてを賭けて大決断を下したのです。 監督とは常日頃から親しくしていたカーネギーは、この状況下で監督がどうするかを知っていました。また、鉄道の厳格な規則が、越権行為を 絶対に許さないものであることも心得ていました。しかし一刻を争う事態のもとでは、何よりも決断が求められます。 そこでカーネギーは、監督の名において、事故の復旧と交通の回復を命令したのです。しかしその行為は、彼自身だけではなく、監督をも重大 な立場に立たせるであろうことは充分に理解していたので、事故処理後報告書と共に辞表を書き、それを監督の机の上に置きました。 2、3時間後、カーネギーは自分が提出したはずの辞表を受け取りました。そこには、「辞表は認めない」と監督自身の肉筆で書かれていまし た。 数日後、監督はカーネギーに向かって改めてこう言いました。 「決して成功しない人間には、二つのタイプがある。一つは言われたことをしない人間。もう一つは何もできない人間だ」 事件は、これで一件落着となりましたが、数年後、カーネギーは充分に報われることになります。 カーネギー自身は、後に次のように語っています。 「必要な場合、与えられた枠を越えて行動する勇気、そして要求以上の働きをすることは大変素晴らしいことである。このようにして正義を貫き、 困難に立ち向かうことは尊いことである。 ただし、プラスアルファの努力が素晴らしいのは、その決断や判断が正しい場合に限られている。判断にはくれぐれも細心の注意と熟慮が必要 だ。 プラスアルファの努力は、最も信頼できる事実に焦点を合わせて、そして自分の力を深く吟味したうえで行うべきである」 カーネギーはまた、こうも述べています。 「ある証券会社の口座担当の若い社員は、指定された銘柄以外の株を売買し、相当の利益を挙げたが、彼は解雇された。 理由は、その行為が明らかに逸脱であったからで、会社の立場からすれば、越権行為以外の何物でもない」。 カーネギー自身の事業においては、彼が定めたルールは、社員が会社の方針や指示に忠実に従った場合には、結果のいかんを問わずその 社員を支持する、というものでした。もしその社員が自分の判断で行動した場合には、彼は行動の結果に対して全責任を負わなければなりませ んでした。 ここで若き日のカーネギーの人生を変えた、あの鉄道事故の顛末についてお話しましょう。 事件から数年後、カーネギーが投資家を集めて鉄鋼事業を始めようとしたとき、カーネギーの信用を保証したのが、あの監督だったのです。彼 は投資家を納得させるために、危機に際してカーネギーが下した適確で迅速な決断を、説いてくれたのです。 あなたが他人との関係で、プラスアルファの努力をしようとするとき、その結果があらわれるまでの所要時間を知ることはできません。 一つの単純な事件が、人生の転換点となってドラマを一気にクライマックスへと押し上げてしまうこともあります。 私がプラスアルファの努力をすることの意義を強調するのは、そのためです。人生の幸運と成功によってこれ以上の準備はないのです。 最大多数に奉仕する者こそ、真の成功者である 次にお話する者こそ、真の成功者である 次にお話しする物語は、とても重要です。 明確な願望や目標によって活性化された心と、進んでプラスアルファの努力をしようとする精神が、いかにして困難を打開し、自己実現を達成 するのかを示す好例であるからです。 ナポレオン・ヒル・プログラムを活用している中の1人に、人口10万人の都市に勧めるある地方公務員がいました。 彼は難しい試験に合格し、地方公共事業部門の副部長の職に就きました。そして最大の保護と最小の危険を保障する"お役所”という名の厚 い堀の中で、ぬるま湯につかったような生活をしていました。 とはいえ、安定した生活の代償として賃金の最高限度額が決められ、上昇のチャンスもほとんどありません。 つまり安全で確実ではあっても、ダイナミックスやドラマはひとつもないような生活を、彼は送っていたのです。 ナポレオン・ヒル・プログラムを活用するにあたり、彼が吐露した心情は”カキ(牡蠣)とワシ(鷲)”の話を彷彿とさせるものです。 カキは、固い殻におおわれていて、その内部は天国のようなものです。 外界で繰り広げられている熾烈な生存競争など、まるで別世界の出来事です。 食物は海中をただよい、カキの口もとへ運ばれてくるのですから、それを待っていて口に入れさえすれば良いのです。 一方、ワシは獲物を捕らえるのに都合のよい岩山の峰に、巣を作ります。ワシの毎日は、風雨や雪との戦いであり、厳しい生存競争の連続で す。 その鋭い目つき、強い翼、敏捷な動きや嗅覚のすべては、ワシが生きるには必要不可欠なものです。 彼は私に、保護された袋小路の中で、自分がカキのようになっていると語り、ワシのようになりたいのだ、とその希望を打ち明けてくれました。 自らの意思で、人生を転換させようとすることは、素晴らしいことです! プラスアルファの努力をするという考えに触れたとき、彼の頭脳が活性化されたことは明らかです。 彼はこの戦術の背後にある戦略をただちに理解し、それを殻を打ち破るために使おうと決意しました。 彼は、もう一度大海原へと船出することを決意したのです。 翌日、オフィスに出勤した彼が一番はじめに考えたことは、人々に奉仕することでした。 カキの殻を破るための第一歩、というわけです。 もしあなたが公正な態度で人々に接すれば、献身や奉仕は必ず、感謝されることでしょう。 しかしそこに打算や下心があれば、人々はあなたの計算に乗ることはありません。 その点、彼はどのように振舞ったのでしょうか? まずはじめに彼は、前向きで積極的な心構えを持つように心がけ、微笑を絶やさないようにしました。 彼の微笑みは、決して作り笑いではなく、内面から発せられたものでしたから、周囲の受けも良く、大いに彼を助けることになりました。 そして訪れるチャンスは絶対に逃すまいと、常に心にとどめていると、そのチャンスは思いがけない方法でやってきました。 ある日彼は、上司がラジオ番組のことを電話で話しているのを聞きました。それは地方自治体の公共事業を紹介するために、放送局が自治体 の責任者を集めて製作している15分番組のことで、スポンサーは自治体の各セクションの持ち回りになっていました。 彼は上司の電話から、次は電気水道課の制作・提供によって番組が作られることを知りました。 上司はまだ、誰がどんな番組を作るのか?そのアウトラインさえ決めかねている様子で、プロのシナリオライターに依頼するようなことも取り沙 汰されていましたが、その経費をまかなう予算がないので困っているようすです。 そのとき、即座に彼は自分の求めているチャンスを発見しました。 彼は上司にこう言いました。 「私はこれまでに何度かシナリオライターの養成講座を受け、脚本の勉強を続けてきました。その台本を、どうか私に書かせてください。もちろ ん無償です。けっしてプロと同じものは書けないかもしれませんが、業務の内容や電気水道課のことにも精通していますから、必ず良いものを書 いて見せます」。 彼の申し出は確信に満ちており、その態度も非常に積極的であったため、上司は彼にその仕事をやらせてみようと決心しました。 彼はただちに台本を書き始め、その仕事に精魂を傾けました。そしていったん書き終えた台本は友人の専門家に見てもらい、その結果、大変 素晴らしい台本が出来たのです。 彼の台本によって作られた番組は、大成功を収め、かつてないほどの反響がありました。 彼は別の台本を依頼され、その後も依頼は後を断ちませんでした。そして気がついたら週のうち20時間を、台本書きに費やしていましたが、そ れは彼にとっては何よりも幸福な時間だったのです。 けれども彼は、事務所では物笑いのタネになっていました。 彼が自分自身の時間をさいて台本を書いていることは誰もが知っていましたが、それを全く無給でしていることに、同僚や仲間たちの嘲笑が集 中したのです。 「ただで台本を書くなんて、本当にお人好しね」。 「支払ってもらうべきだ。原稿用紙だってただじゃないんだぞ」。 これが平均的かつ典型的な反応でした。世の中には、これと似たような話がたくさんあります。 「それは私の仕事じゃない」。 「そこまでするほど、給料をたくさんもらってはいない」。 「タダで働くほど馬鹿じゃない」。 「もらった給与の範囲内で仕事をするまでのことさ」。 ただ1人だけ、彼の真意を理解している人物が事務所にもいました。 その人は言いました。 「あの番組が市民にどんな影響を与えているのか、それは私にはわからない。が、少なくともあなたにとっては大きな効果をもたらすことは間違 いないでしょう。いい仕事を続けて下さい。きっと大きな成功が待っているでしょう」。 "プラスアルファの努力”をすることの成果は、彼の場合はまず、その台本がラジオ局の局長の目に止まったことでした。 局長は市長に掛け合い、彼を番組担当の責任者に昇進させ、番組を永続して流すことを考えていました。 しかし、残念ながらそのアイディアは実現しませんでした。自治体には、そこまでやれるだけの予算がなかったのです。 その後、彼が巻き起こした旋風もおさまったかにみえた頃、新しい事態が生じました。 彼の行動と業績が、市長に認められたのです。市長は、彼を役立てようと考え、その機をうかがっていました。 もちろん彼自身は、市長に注目されていたことは知りませんでしたが、積極的な心構えを維持して"プラスアルファの努力”を心掛けていました。 ある日のこと、彼は市長室に呼ばれ、月額200ドルの昇給を条件に、新しい仕事を提示されました。 "袋小路を脱出するためにプラスアルファの努力をする”。彼はこの原則(ノウハウ)を充分に理解し、しっかりと身につけていたので、実に見事 なプラスアルファの魔法を引き出すことができました。 彼は今、さらに大きな願望や目標に向かって新たなプラスアルファの努力をしているところです。 "プラスアルファの魔法”のノウハウは、すべてのナポレオン・ヒル・プログラムにおける重要な戦略です。 プラスアルファの努力を実践することは、頭の中で理解することとは違って、常に行動が伴うからです。 それは実践的なノウハウです。あなたの活動が実践的なノウハウに支えられるとき、あなたの行動は確実な代償をもたらすでしょう。 世間の冗談が、プラスアルファの魔法のフタを開けた話 アンドリュー・カーネギーは、彼が好んで用いる、"プラスアルファの魔法”について、次のような実例を私、ナポレオン・ヒルに語ってくれたことが あります。 「以前に、新聞記事で、こんな話を見つけたんだ。1人の警官が町を巡回中に、小さな機械工場に、夜遅く、灯りがついているのを見かけた。そ の工場では夜勤がないことを知っていた警官は、経営者に電話をかけてみた。経営者も、夜勤はないのでおかしい、というので2人で工場に行っ てみた。そこに、何があったと思うかね?」 警官と経営者が、あかりのついている小部屋で見つけたのは、熱心に作業をしていた1人の若い従業員でした。彼は腕をみがこうと、毎晩工場 にきていたのです。そのうち、そうすることが習慣になってしまっていたのです。経営者は彼に残業料を支払っていませんでしたが、それは彼が 一度も請求したことがなかったからです。 カーネギーが話を続けました。 「新聞記事には、この若い従業員を皮肉るような調子で書いてあったんだ。しかし、結局は、工場経営者を皮肉る結果になってしまった。なぜっ て、私がその従業員を今の2倍の給料を支払うから、うちへきてみないか、と誘ったんだからね。彼は、私の見込み通りの男だった。すぐ、工場長 に昇進して、給料は倍ではなく、4倍になった。もし彼が、現在のように積極的な姿勢をつらぬくのなら、彼はまもなく、最高のエンジニアになるだ ろう」。 そしてカーネギーはこうしめくくりました。 「会社に奉仕しようとする人々を抑えつけることはできない。ちょうどコルクが水に浮かぶように、彼らも自分たちの仕事や天職の上にまっすぐ に浮かび上がってくるのだ」。 この話とは全く逆のケースがあります。ある労働者が、経営者に申し立て、工場に日曜出勤をしました。4週続けて日曜出勤をしたので、超過勤 務時間の半分の請求書を出しました。ところが、会社はそれを受け付けてくれませんでした。 それはまちがっている、とあなたは思うでしょうか?それとも、当然のことだ、と思うでしょうか? 工場に1人だけ出勤して機械を動かすと、たいていの場合、経費は大変高いものについてしまいます。カーネギーに引き抜かれた若者はその ことを知っていたようです。だから、彼は自発的残業の報酬をまったく請求しなかったのです。しかし、この労働者は、それを知らなかったようで す。 いずれにしても、この労働者は、積極的な心構えと奉仕の精神が欠けていました。 大切なことは、"よろこんで”"自分からすすんで”"与えられる以上の奉仕”を行うことです。 すぐに、見返りや報酬を期待するようでは、成功はあり得ないのです。 あなたにその気持ちと意欲があるなら、成功の秘訣をプログラムの中からつかみ取ることは決して難しいことではありません。 大自然が行っているプラスアルファの努力 あえて1マイル余分に進むこと、つまり「プラスアルファの努力」について、さらに詳しく検討しましょう。 それには、自然界の出来事を観察するのが一番です。 自然界ではプラスアルファの努力が当然の世界で、最短距離を、最短時間で走ろう、というような法則はありません。 たとえば自然は、生物の種を常に多すぎるくらい作り出します。"ちょうど良いだけの数”などはあり得ません。 あらゆる不測の事態にそなえて、何があっても子孫を残そう、というわけです。 名もない小さな昆虫でも、道ばたの雑草でもやっていることを、人間はしません。「どうせ無駄になるんだから……」「どうなるかわからないような ことは、やっても意味がないよ……」 それを受け入れるか、あるいは拒否するか、人間の意思と判断が問われるところです。そして、この選択がその人の人生の大きな別れ道にな るのです。一方は成功への道に、そしてもう一方は失敗者への道につながっています。 あなたは、どうして花は美しいのだ、と思いますか? 花は、自分自身の美しさを感じとる目を持ちません。よいかおりをかぐための鼻もありません。 しかし、それは自然が仕組んだすばらしい「1マイル余分」です。昆虫たちは美しい花の色や、甘い蜜の香りに誘われて花を次々に訪問して、花 の受精をたすけることは、誰でも知っていることです。 花が昆虫をよろこばせるように、人間が他人をよろこばすことは、不自然でしょうか。人が、自分のためにではなく、他人のために努力をするの は、不自然でしょうか? 花と昆虫は、お互いに意識はしていませんが、相手を喜ばせることで、種の繁栄を維持しています。 ただ、相手を喜ばせただけの結果に終わることもあるかもしれません。しかし、大自然は、「どうせ無駄になるんだから……といって、手は抜か ないのです。 もう少し、大自然が私たちに教えてくれるものを見てみましょう。 ここに、大自然の2つの法則があります。1つは「代償の法則」です。もう1つは、「利益増加の法則」です。 農民は、作物を得るために畑を耕します。そして、種を蒔き、花が開いて実を結ぶのを待ちます。 畑を耕す、ということは重労働です。ところが、そのためにどれだけ汗を出しても、そのための報酬、というものはありません。彼は、自分のため にではなく、作物のために働いたのです。 しかし、そこに作物の種を蒔けば、作物は、太陽の光を受けて成長し、実を結んで、農民にそれを与えます。 与えたら、必ず与えられる……これが「代償の法則」です。 そして、もう一つの法則が働きます。 農民が大地に与えたものは一粒の種であっても、大地から与えられる時は、数十倍、数百倍になっています。これが、「利益増加の法則」です。 大地は深く、より耕すほど、ゆたかな実りを約束してくれることは、農民でなくても、だれでも知っていることです。それは、大地に対する奉仕の 代償です。惜しみなくそそがれた努力に対して、自然は常に報酬を支払います。 花と蜜蜂のように、私たちの社会も、好意と信頼を交換することで、さまざまな利益を生み出します。 人々の信頼を得るには、時間をかけてコツコツと信用を積みあげてゆくのが、普通の方法です。しかし、もし花と蜜蜂のように、正当な方法で、 即座に好意と信頼を交換することができたら、それは素晴らしいことです。相手の信用を借りて商売を生かすこともできます。 これは、銀行でお金を借りて商売をするよりも、はるかに利益の上がる取引なのです。 エジソンのパートナーになったエドウィン・バーンズは、エジソンが発明した商品を売りさばくことで、エジソンを財政面で大きく助けました。それ によって、彼もまた、巨額の富を築くわけですが、彼の富の源泉になったのは、次々に現れる新製品を売りさばく販売網でした。その販売網は、 「プラスアルファの魔法」「代償の法則」「利益増加の法則」が、フルに使われて、築かれたものです。 バーンズは、好意を交換する、という考え方を身につけるまでは、富を手に入れることはできませんでした。 彼は、顧客を訪問しても、新製品を無理に売り込もうとはしませんでした。常に、顧客が今一番必要としているものは何かを、会話の中からさぐ り出すよう努力しました。バーンズが自分で取り扱っていない事務機や、タイプライターが必要な顧客には、他社の信用のおけるセールスパース ンたちを紹介しました。 一方、バーンズから顧客を紹介してもらったセールスパースンたちは、エジソン社の新製品を買いそうな自分の顧客を、バーンズに紹介しまし た。そういうわけで、バーンズの顧客リストや販売網は、短時間のあいだに、たいへん大きく、価値のあるものになったのです。 バーンズは、エジソン社の新製品を買ってくれそうな顧客のところよりも、自分が訪問することで、顧客が喜んでくれるようなところへ、まず足を 運んだのです。 これはバーンズにとっては、大変効率のよい仕事になりました。彼を億万長者へと押し上げたのも、花と蜜蜂にも似た共存、共栄のノウハウだ ったのです。 もし、あなたがバーンズのように成功を望むなら、あなたが無条件で従わなければならない法則やノウハウが何であるかは、お分かりになった と思います。そこで、私たちが学者のように研究をしたり、評論家のような態度をとるのではなく、まず実践することなのです。 たとえば、"作用と反作用の法則”は、すべての物理現象の中で確認することができます。 自然の予算は常に均衡が保たれていて、一方に傾く、ということがありません。それはプラスとマイナス、昼と夜、暑さと寒さ、夏と冬、善と悪、 上と下、成功と失敗などです。 振り子は、前方に揺られれば必ず同じ分だけ後方にも動きます。 そして同じことが、人間関係や人間の努力にもあてはまるのです。 「蒔いた種は、刈り取らねばならない」 どんな種を蒔くのか?それが大切です。 すべての種は、その中味に応じた実をつけるからです。 次に"プラスアルファの努力”結果、一体どのようにしてあなたは代償を受け取ればよいのか、その方法について考えて見ましょう。 動物も人間と同じように食物や住みかを必要としますが、社会的な労働や組織された生産は、人間だけのものです。 人間は、自分たちの望むような形、方法で自然と大地の恵みを利用することができます。人間は、自らの思考やアイディアを、現実化すること ができるのです。 人間は大自然の作品であり、自分で決断を下す力を持ち、思考をコントロールする脳力を与えられています。 そしてこの特権を自発的に行使することによって、無限の叡智へと近づいて行くのです。 この事実は、人間は自分の願望や目標を達成するために、大自然のあらゆる力を利用できる、ということを示しています。 他方、もし人間がプラスアルファのノウハウに従い、生命の法則と調和を保つならば、様々な特権を得ることができます。 受け取る以上に与えることの意義 「一マイル余分に進む」ことのメリットは、何よりもまず、収穫が増大することです。畑に蒔いた種のように、たった一粒の麦からたくさんの麦が取 れるのです。 それは人間の土台作りにも当てはまることで、もしあなたが、プラスアルファの努力によって奉仕や貢献をすれば、それは確実に増大し、10 倍、100倍にもなるでしょう。 時には、チャンスや出会い、という形で見返りがあるかもしれません。 「利益増加の法則」と共に「利益減少の法則」というのがあります。もしあなたが、いやいやながら奉仕をしたり、下心があってそうする場合に は、見返りは決して多くはならず、むしろ減ってしまうかもしれません。 "利益増加の法則”を理解するには、チャールズ・シュワッブの人生を知るのが一番です。のちに、カーネギーのあとを継いで、USスチールの 社長になるシュワッブは、鉄道線路の工夫をしていた時に、カーネギーから直接スカウトされたのです。チャールズ・シュワッブは、アンドリュー・カ ーネギーの製鉄会社の日雇いから再スタートしました。 働きだしたころ、彼は特にめだつようなところもなく、頭角を表す、というほどのことはありませんでした。しかしいつも明るく真面目で、あらゆる 人々と友達になれる人柄が、彼の最大の長所で、それを活かし、人々のために尽くしました。それも2歩、3歩と進んで尽くし、いつも明るい笑い に包まれていました。 チャールズ・シュワッブはカーネギーの王国で出世し、やがてナンバー2の地位まで昇りました。給料も仕事に見合うだけの高給でしたが、カー ネギーはシュワッブの奉仕の精神に対しては、その何十倍もの報酬で報いたのです。 見返りや報酬を求めないからこそ、信じられないような見返りが与えられる、この逆説を理解してください! 真の奉仕とは、そういうものです。 ここで再び、カーネギーが教えてくれた話を紹介しましょう。見知らぬ者同士の間にもこのノウハウが働き、思わぬ結果をもたらすこと示していま す。 ある雨の日の午後、年配の婦人が1人、ピッツバーグにあるデパートの回転ドアを押して、店内に入ってきました。何人かの店員は彼女に気づ きましたが、彼女が何も買いそうもないので、だれも声をかけませんでした。しかし、その中の1人の若い店員が、ていねいに話しかけました。 「何か用事がありましたら、ご遠慮なくお申しつけ下さい」。 「いいえ、ただ雨をやむのを待っているだけです」。 彼女がそう答えると、若い店員は、カウンターの後ろから、いすを持ち出してきて婦人を座らせました。雨がやむと、彼は、婦人を出口までエス コートして、馬車をさがしてきて、彼女を乗せました。別れ際に、彼女は、その若い店員に名刺を求めました。 数ヵ月後に、そのデパートの支配人のもとへ、1通の手紙が届きました。それには、イギリスへ行って、お城で使っているような家具や調度品を 一式買いつけてほしい。また、担当は、あの店員にするように、という注文が書いてありました。発注者は、ピッツバーグ一の大金持ちです。支配 人はおどろいて、手紙の差出人の邸にでかけて、注文をもらった礼を言い、買いつけには、別の専門家を派遣したいと頼みました。その若い店 員は、家具の担当ではなかったからです。 しかし、発注者である老婦人は自分の意見をかえませんでした。結局、その若い店員が、スコットランドまで家具を買いつけにゆき、数十万ドル という売り上げを店にもたらしました。その老婦人は、実はカーネギーの母親でした。その若い店員は、このことがきっかけで、カーネギーのパー トナーになる、という幸運にめぐまれます。その発端となったのは、あの雨の日の、彼の礼儀正しい親切心でした。 カーネギーの母親をエスコートした10分間は、彼が仕事でおこなったどんな接客サービスよりも素晴らしい報酬を与えてくれました。 受けた恩を大きくして返すならば、あなたは確実に利益を得ることができるでしょう。しかもそれが習慣になっていれば、すべてが自然に利益を 生み出す方向へ動き始めるのです。 それなりの結果を得るためにも、やはり習慣にしてしまうことが必要です。相手に対する奉仕は、自発的に思いやりの態度で永続的に行い、す ぐに結果を求めるようなことではいけません。 セッション1で述べたように、人生とはあなたの雇い主であり、あなたの仕事や奉仕に対しては、決められた額の報酬を払うでしょう。 そして自然とは、代償なしでは一切のものを与えません。あなたの奉仕と自己犠牲があってはじめて、自然はその豊かな内面を見せるのです。 カーネギーの紹介で、私が成功のノウハウの研究のために、一番最初に会ったのは、若き日のヘンリー・フォードだったことは、最初に述べまし た。彼は、労働者の賃金に、「プラスアルファの法則」「代償の法則」「利益増加の法則」があてはまることを最初に証明した男です。1914年に、 フォードは自分の会社で働く職工たちの給料を、1日8時間労働で、最低5ドルにしました。当時の平均的な給料は、1日9時間労働で、2.7ドル ですから、いかに彼が思い切ったことをしたかわかります。フォードの会社は、1年でつぶれるだろう、と人々はうわさをしました。フォードの共同 経営者だったマルコムソンも、フォードの方針に反対して退社し、フォードは、銀行から借金をして、共同経営者の持株を買い上げなければなりま せんでした。 結果は、皆さんもご存知のように、利益を追求するのではなくまず労働者に与える「プラスアルファの法則」の勝利でした。 だれも、こんな条件の良い職場を失おうとは思いません。職工たちは、自分たちが会社から与えられた以上のものを、会社に与える方法を考え 始めたのです。会社をつぶさないために、すべての従業員が、自発的に猛烈に合理化に取り組みました。予想に反して、一人ひとりの給料は上 がりましたが、会社全体の経費に占める人件費の比率は上がりませんでした。 また、それ以後、およそ25年間という長期間、フォード社は、労働者の高いロイヤリティー、低い欠勤率、ゼロに近い転職率、ゼロの労働争議 で、より高い生産性を確保し、大きな利益を上げ続けることに成功します。会社の利益よりも、労働者の利益を考え、時間あたりで他社の倍、とい う高賃金は「プラスアルファの法則」であり、労働者が、生産性の向上でこれに応じたのは「代償の法則」です。また、長期にわたって会社に大き な利益をもたらせたのは、「利益増加の法則」があてはまります。 ビジネスパースンとして仕事を得たり、収入を確保するためには、最低限、給料に見合うだけの仕事をしなければなりません。経営者は、従業 員が働くことによって上がった実績の中から給料を支払うのです。よく、「給料をもらうから働く」というように誤解している人がいますが、事実は逆 なのです。"働くから、給料をもらえる”のです。フォード社の労働者は、このことをよく理解していたのです。医者や弁護士や音楽家のように、 人々から「先生」と呼ばれている人でも同じことです。彼らは、患者やクライアントにサービスを提供して、はじめて報酬を請求できます。請求され た金額が高すぎる、と思ったら、人々は1度は支払いを承諾しても、2度目は別の「先生」を探すでしょう。 世の中には、最低限のサービスで、最大限の報酬を要求する人たちがいます。それは、大自然の法則に対する、勝つ見込みの無い挑戦だ、と いうことに気がつかなければなりません。これは卵欲しさに、それを生むニワトリを殺してしまうのと同じことです。 給与や賃金の決定権は、誰が握っているのでしょうか?一般的に、それは経営者にある、と思われています。しかし、真実の決定権を、社員自 身が握る方法があります。 "常に報酬以上に働く” "高い明確な願望や目標を持つ” この2枚のカードを握っていれば、賃金の最終決定権は、社員のものです。 「報酬以上に働かなければ、報酬を引き上げることはできない」。 この簡単な言葉の意味を、じっくり考えてください。 次に、「高い明確な願望や目標を持つ」とはどういうことか検討してみましょう。大変残念なことに、働く人の98%は、自分の人生に対して他人 に語るような願望や、目標を持っていません。 そんな人たちは、運命の女神が、毎日、目立たぬように、目の前に蒔いてゆく幸運の種に気がつきません。気がついても、彼らは、その種を拾 って、大地に蒔いて育てようとはしないのです。 成功する人は、幸運の種を見逃しません。その人たちは、毎日仕事のほかに、種を見つけ、拾って、育てる、というプラスアルファの努力を厭い ません。運命の女神は、そのような人にだけ、報酬以上の支払いの用意をするのです。 幸運の種をみつける秘訣が、高い明確な願望や目標を持つということです。あのエドウィン・バーンズのことを思い出してください。運命の女神 はエジソン研究所の中に、毎日、幸運の種を蒔いていたのですが、それを見つけて、育てることのできたのは、エジソンのパートナーになるという 高い目標を持った、バーンズだけだったのです。 奉仕や献身という、常にプラスアルファの努力をする習慣は、やがてあなたを"かけがえのない人間”にします。組織や企業にとって絶対必要 な"かけがえのない人間”になれば、あなたには必ず世間並み以上の報酬が与えられます。 もし、世間並みか、それ以下の報酬なら、あなたは別の場所で、職種や労働条件を選べる立場に立てるでしょう。世の中には、「言われたことだ け」やっていたら、絶対につとまらない仕事がたくさんあります。 企業経営の最高責任者は、すべて、その企業にとって、かけがえのない人たちです。真の経営者は、プラスアルファの努力をするように、自分 自身をトレーニングするものです。彼らはみんな、自分のサラリーは、自分で決めています。あなたも、自分の手で、自分の値段表を作らなけれ ばなりません。 成功する人は、明確な条件で富を要求します。富を得るための、はっきりとした計画を持っているからです。彼は計画を実行に移し、自分が要 求する富と同等以上の奉仕をします。 人生における"代償の法則”とは、富めるものに対しては、富める者の条件で支払いをし、願望や目標を持たない人に対してはそれに応じた支 払いをするのです。運命の女神は、あなたが心の中で願望や目標を描く青写真に呼応し、そこに示されたものと同じ量を、物品や財産という形で 人に与えます。 人生との間に、豊かな関係を築き上げてくれるのは"代償の法則”です。財産や金銭の問題にも有効なこの法則を、否定することはできませ ん。 この法則を理解することは、あなたの生き方を大きく変えるものです。流されるままではいけません! 奉仕や献身をだれよりも熱心に行いながら、貧しい暮らしからぬけ出せない人がいます。それはなぜでしょうか?彼らは正直すぎて、他人に利 用されるままになっているのです。「正直すぎる」ことは、決して「正直」と同じものではありません。人間は、すべての者に対して正直でいるわけ にはいきません。泥棒に財布の隠し場所を教えてはいけません。世間知らずで馬鹿正直な人間を利用してやろう、という悪者は、どこにでもいま す。 悪意を持った他人からあなた自身を守るためには、奉仕や献身が、あなたの目標や願望をめざすゴールに合っているのか、そうでないのかを 見極める努力が必要です。あなたは東へ行きたいのに、馬車を西に向けて走らせては、目的地から遠ざかるばかりです。 シナリオを書くことで、市の有名人になった公務員のことを思い出してください。もし彼が、シナリオを書くのと同じ時間を、公園の清掃のために 献身していたら、人はほめたたえたかもわかりませんが、運命の女神は彼のためにほほえまなかったでしょう。 最大の奉仕をするものは、最大のチャンスを発見する。 ある冬の日の朝、シュワッブの専用列車が系列の鉄鋼会社の駅に着いたとき、ホームで待つ1人の青年と出会いました。鉄鋼会社の速記者で ある彼は、「シュワッブ社長は、きっと何らかの手助けを必要としているのだ」と感じて、列車が来るのを待っていたのです。 シュワッブは、このいつにない歓迎に驚き、ウィリアムズと名乗るその青年に、誰に命じられてここへ来たのか、と尋ねました。青年は、自分の 意思で出迎えたことを告げ、会社に打たれた電報から判断して、シュワッブ社長は何か誰かにやってもらいたいことがあるにちがいない、と考 え、急いでここにやってきたことを知らせました。 シュワッブは、青年の配慮に対して感謝の言葉を述べ、「今日中に何か頼むかもしれない」と言いました。そして実際に頼んだのです!シュワッ ブの専用列車が、ニューヨークへ向けて走り出したとき、青年は列車に同乗していました。 奉仕と献身によって青年は、会社の中で昇進のチャンスをつかみ、最終的には独力で事業を始めるだけの資本を得ました。 彼は最後には、大手薬品会社の社長になったのです。 シュワッブが、秘書に語ったところによれば、青年には速記者としての長所は何ひとつなかったようですが、自発的に行動する性質を備えてい たといいます。 彼の昇進を可能にしたのは、その性質であり、習慣でした。シュワッブが注目したのも、後年、彼が社長になれたのもそのためです。シュワッブ は習慣のおかげでカーネギーの工場の日雇い労働者から昇進してU.S.スチールの社長になったのです。 奉仕や献身というプラスアルファの努力をする習慣は、あなたをかけがえのない人間にします。あなたが世間並み以上の報酬を要求できるの も、かけがえのない人間であるからです。ここで言う"かけがえのない人間”とは、組織や企業を機能させる上で、絶対的に求められる人間のこと です。 逆に言えば、あなたがある団体や個人にとって、"かけがえのない人間”になるまでは、平均以上の報酬を求めることはできません。ですからあ なたは、自分自身をかけがえのない人間にしなければなりません。 世の中には、パースナル・イニシアティヴや自発的な要素が必要不可欠な職業もあります。自分自身をその他大勢から引き上げ、自分の行動 の値段表を作ることができるのです。 プラスアルファの努力は、あなたの精神的、肉体的な完成を助けるものであり、あなたの自己表現に必要な脳力と技を準備してくれます。プラ スアルファの努力によって、自発的な行動と自己規律が与えられます。"努力と精神は、手を携えて進むのです。” 昨日よりも強くて大きい自分を!そう考えて行動するとき、あなたは確実に成長します。何をするにしても、たとえば、話をしたり、手紙を書いた り、仕事をしたりするときにも、常に向上心がなければなりません。もちろん失敗はありますが、常に昨日よりも今日、と意識して物事に当たること が大切です。たとえ一度でうまく行かなくとも、毎日の積み重ねや繰り返しにより、昨日よりも素晴らしい今日がやってくるでしょう。 「充分に報酬を与えられていない」、「これは私の仕事ではない」というのは、要するに怠惰であるからです。 そうした態度を改めない限り、見返りを望むことはできません。 プラスアルファの努力をすることは、昇進のチャンスをたぐり寄せると共に、失業からあなたを守り、職業や労働条件を選べる立場へと押し上げ てくれます。職を確保することは、働くものにとっては第一の絶対条件ですが、プラスアルファの努力をする習慣は、貧困や不安に対する予防策 であり、競争相手に対する最大の利点となります。 そのうえ、プラスアルファの努力をすることはあなたを引き立たせ、"対照の法則”と呼ばれる、もう一つの利点をもたらします。"対照の法則”と はまわりからあなたを際立たせることを意味します。 自分をアピールするうえで、この利点は大きな武器となるでしょう。 シカゴにある国際的にも有名なデパート、マーシャル・フィールズでは、一時、トップクラスのディスプレイ・デザイナーを雇っていました。彼は"対 照の法則”に精通した、偉大な芸術家でした。あるとき、彼は、ひとつの窓全体にきれいなネクタイを展示し、その真中に鏡を置きました。ショーウ ィンドのネクタイに視線を奪われた通行人は、鏡の中で自分を見つけ、ショーウィンドの美しいネクタイと自分のネクタイを比べ、思わず1本買って しまう、という寸法です。 人間は常に、比較することで異質なものに気づくという性癖を潜在意識の内に持っています。したがって、報酬以上の働きをする人は、それだ けで、大いに際立って見えるのです。 賢明な経営者は、絶対にそういう人物を見逃しません。 実際、目先の利益だけを考えているような経営者だけが、そういう人物に報酬を与えることを控えようとするのです。その結果、優秀な人材は 転職し、自分にふさわしい職や仕事へと移って行ってしまいます。需要と供給の法則は、自然とプラスアルファの努力をする人物を助けにくるの です。天は、そういう人物が不当な扱いを受けることを許さないのです。いずれにしても、優秀な人材の数は常に限られていて、過剰供給される ことはありません。そこで賢明な経営者は、決してあわてることなく、時間をかけて人物の選択と判断をするのです。 対照の法則について一言。大多数の人は、すぐに結果を得ようとしたり、与える前から手に入れようとしますが、それでは、チャンスをつかむこ とはできません。対照の法則はそういう人々の中にあってあえてあなた1人がプラスアルファの努力をするとき、その効果をいかんなく発揮しま す。 すぐに結果を求めることや、相手にばかり奉仕や献身を求めるのは間違っています。今すぐにそういう生き方を改めて、より多くの努力やより多 くの奉仕を人々に与えてください。そうすればあなたには、豊かな人間関係と報酬が与えられるでしょう。 奉仕や献身をすすんで実行することは、積極的で明るい個性を育てます。それは人々に好かれる、大変素晴らしい個性です。周囲に集まる 人々も、きっと素晴らしい男性や女性でしょう。 あなたが優れたパースナリティを持っていれば、自分の望み通りに相手は行動してくれます。どうしてそうなるのでしょうか?その第一歩は、自 分がしてもらいたいと思うことを相手にもしてあげることから始まります。そして相手がすぐに反応しなくても、絶対にあきらめてはいけません。忍 耐強く奉仕を続ければ、いつか必ず期待通りの成果が現れるでしょう。 このことは、相手が経営者の場合には特に重要です。あなたが転職を考えるのは、なすべきことをすべて行った後でも、決して遅くはありませ ん。 プラスアルファの努力を実践し、絶えず最善の努力を続け、"人からこのようにしてもらいたい、と思うことは人にもまたそのようにせよ”と言う黄 金率を実践したにもかかわらず、経営者から何ひとつ反応を得られなかった青年の話があります。彼は内心では転職を決意していましたが不景 気で雇用情勢が悪化したため、転職に踏み切れなかったのです。そこで丸1年、彼は妻と共に生活を切りつめ、2,000ドル以上の預金ができた ところで、かねてからの計画を実行に移しました。 彼は自分で会社を設立し、以前努めていた会社の競争相手になったのです。事業は成功しました。彼は今、始業前に社員と面談し、自分がい かにして事業を始めたかを社員に語っています。 特に新入社員にたいしては、次のように話します。 「もし君に何らかの才能や素質があれば、ここをやめて独立したいと思う日が必ず来るだろう。その日のために、今日から貯金を始めて欲しい。 それは君の独立資金であり、夢の原動力となるだろう」。 経営者を心から尊敬するという点では、これ以上素晴らしい社員の集まりはどこにもありません。 彼らはみな、個人の独立資金を持っていて、常に独立できる状態にあります。しかし、経営者は、彼らのプライドを満足させるだけの報酬を与え ることで、有能な社員を引き止めているのです。 積極的な奉仕や献身は、パースナル・イニシアティヴを開発します。パースナル・イニシアティヴとは、自発的に行動することです。セールス・ス ターターのノウハウです。ものごとはすべて、そこから始まります。大切なことは、物事が起こるのを待つのではなく、自らすすんで事を起こすこと です。 たえず最善の努力を積み重ね、充分な時間をかけたにもかかわらず願望や目標を達成できない場合は、別のコースを選ぶことも考えなければ なりません。 「独立」がそれです。ただし、そのためには、少なくとも3つの条件をクリアしなければなりません。 1つは、あなたが始めようとする職業についての、充分な知識と技術です。 もう1つは、言うまでもありませんが、資金です。 あなたが用意する資金は、銀行からの融資や、親の遺産にたよってはなりません。時間をかけて、コツコツとためてきた貯金がベストです。時 間をかけている間に、あなたは計画を何度も修正するでしょう。資金の総額が少ないので、はじめから手を広げすぎることはありません。それに、 あなたは、あなたのお金の値打ちを、充分知っているはずですから。 3つ目が、実は一番の難問なのです。あなたは、もう1人のあなたの承諾をとりつけなければなりません。事業をいっしょにやってゆく上で、一番 難しいのは、もう1人のあなた、というパートナーと、どのようにして折り合いをつけていくのか、ということです。 もう1人のあなたは、あなたのやろうとしていることに、たえず異議を申し立てて、あなたの計画をぶち壊そうとするものです。あなたが寝ている と、夢の中にまで現れて、クレームをつけます。あなたは、もう一人の自分と正面から向かいあって、自分の願望や目標を伝えて、協力を要請す ることです。もう1人の自分との対話、という有益な経験をするためには、静かな部屋と1枚の鏡があれば、いつでも始められるのです。 何が起ころうとも、あなた自身の道を行くべきです。あなた自身の道とは、プラスアルファの努力をすることです。そして素晴らしい人間となって、 豊かな実りを手にして下さい。あえてプラスアルファの努力をすることで大切な点は、何よりもあなた自身の心構えであり、プラスアルファの努力 をすることが習慣となり、ごく自然に実行できるようになることです。願望や目標を正しく設定し、献身と奉仕を行うとき、それは必ずあなたのとこ ろへ帰ってきます。大成功を収めたある商人は、すべての従業員に向かってこう言いました。 「小包を送るときは、商品だけでなく、自分の心も送りなさい」 自信と確かな自意識を与えてくれるのもプラスアルファの努力であり、奉仕です。自意識とは、反省心と向上心が伴ったあなたの主体的な意識 のことです。 事業をあなた自身で起こそうとする場合のところで述べたように、ここでも同じことが言えますが、一緒に暮らしていく上で一番難しいパートナー はあなた自身かもしれません。そこで、この場合にも、さきほどと同じように「もう1人のあなた」と正面から向かい合い、自分の願望や目標を伝 え、協力を要請するのがよいでしょう。 それは必ず、よい体験になります。もう1人の自分との対話は、深い反省をあなたにもたらすことでしょう。 ここで、ひとつの実話を紹介しましょう。ある時、シカゴにある相談センターに1人の男がやってきました。どうみても、彼は人生の敗残者でした。 彼の目はうつろで、敗北感がただよっていました。肩は生活に打ちのめされて下がっていましたし、足どりは、まるで13階段をあがる死刑囚のよ うでした。 「ここで助けてもらえなかったら、ミシガン湖で人生を終えるつもりだ」と彼は言いました。 しかしそれでも彼には、人間としての値打ちがあったのです。彼の中になんらかの価値があるからこそ、相談センターへ来たのです。カウンセラ ーは、彼の話を聞きました。たしかに彼は困難な状況におかれていました。しかし、カウンセラーの経験によると、もっと困難な状況で戦っている 人たちは、いくらでもいました。問題は、いつもだれかに頼ろうとして、そのたびに裏切られた彼が、すっかりやる気をなくしていることにあるようで した。 カウンセラーは、彼の話を聞き終わると、長い沈黙のあとで席を立ちました。カウンセラーは、来訪者に告げました。 「お話はわかりました。世界中でたった1人、あなたを助けることのできる人物をご紹介しましょう。ただし、その人はたいへん無口ですから、あ なたの方から、何でも相談してください」。 カウンセラーは、来訪者を奥の部屋に案内しました。 男が案内された部屋は、椅子が1つ置いてあるだけの、何もない部屋でした。部屋の奥には、カーテンがかかっています。カウンセラーは、男に 言いました。 「世界中でただひとり、あなたを助けることのできる人を紹介します。彼は絶対あきらめない男です。計画を立て、粘り強く実行します。休息を求 めるよりも、戦うことが好きな男です。彼はいつでも、自分の全脳力を出しきる男です。彼があなたの質問になんと答えるか、よく聞いて下さい」。 カウンセラーはそう言って、カーテンを引きました。現れたのは1枚の大きな鏡でした。そして、そこには男の姿が大きく映っていたのです。彼は ぼう然として声も出ず、ただ自分の姿を見つめるだけでした。 「あなたの納得のゆく解答をもらえるまで、何時間でもかけて下さい。その男は必ずあなたを助ける方法を知っています。相談が終わったら、も う一度、私の席に戻ってください。私もなにか助言できるかもしれませんから……」。 カウンセラーは、そう言って部屋を出て行きました。 長い時間が経ったあと、鏡の部屋のドアがあいて、男がしっかりとした足どりで出てきました。男はカウンセラーに握手を求めて言いました。 「私が間違っていました。もう一度やり直せ、と言われました。その通りにします」。 カウンセラーは、何も助言する必要がないことを知りました。 それから数ヶ月経ったあと、この相談センターに、真新しい服を着た1人の立派な紳士がやってきました。彼はカウンセラーを見つけると、歩み よって握手を求めて言いました。 「私が誰だかおわかりでしょうか?私はあなたによって大きな鏡の中で、もう1人の自分と出合った男です。あなたにお礼が言いたくてやってき ました。受けたご恩を返すために、できることはどんなことでもします。あなたのおかげで、救われました。あなたが私と私の人生を救ったのです。 私はまた以前の豊かな暮らしに戻ることができました。ぜひ、ご恩返しをさせて下さい」。 人々に対して奉仕と献身を身につけることは、あなた自身にとっても実りの多いことなのです。大胆に、そしてあふれるほどの行為を示して下さ い。人々はあなたに感謝し、そしてあなたは報われます。。 「汝自身に対して誠実であれ。 いかなるときにも誠実であれ。 されば汝は、不実のそしりを免れよう」 ウィリアム・シェイクスピア 優柔不断や物事を引き延ばす癖を克服するには、プラスアルファの努力をすることが有効です。物事をぐずぐず引き延ばし、いつまでも放置し ておくことは、成功と縁のない生き方です。 奉仕や献身に熱中し、仕事や相手を愛すれば愛するほど、あなたは積極果敢で行動的な人間になってゆくでしょう。 そしてセッション1で学んだ「願望や目標を明確化する」という点でも、プラスアルファの努力をすることは、その成功に不可欠な要素を発展させ ます。 願望や目標もなく、生活を維持するためだけに働いているうちは、人生の豊かさを手にすることはできません。はっきりとした願望や目標を持 ち、その目標に向かって自己の生活と行動と考え方を準備し、組織すれば、あなたは自分で報酬を決めることができるのです。 生活と職を確保するために、最低限の仕事をするのは当然のことですが、より高い地位と収入を得るためには、より以上の努力と奉仕が必要 です。原因と結果を取り違えてはいけません。地位と収入は、あくまでも結果なのです。 「給与」と「生活に必要な金額」を混合することは、世間全体に行き渡ってしまった誤解の一つです。給与が安い、と不平を言う人の中には、浪 費や経済観念の欠如によって、自ら問題を起こしている人も少なくありません。社会人である以上は、経済学の基本程度は一般常識として身に つけておく必要があります。 いずれにせよ、受け取る以上のものを与えない限り、報酬が増えることはない、というのが経済の鉄則です。 より以上に働き、より以上に与え、そして受け取る、ということはどこまでも自分自身の問題であり、決して他人に強要されるものではありませ ん。豊かで自由な社会を作り上げているのはこの思想であり、この原則(ノウハウ)です。私達はこの権利を、いつまでも大切に守っていかなくて はなりません。 成功のノウハウには、ひとつの公式があります。それは、 Q+Q+MA=C で表すことができます。 この公式は、 与えるサービスの質・・・・・・Quality (クォリティ) プラス 与えるサービスの量・・・・・・・・Quantity (クァンティティ) プラス 私たちの心構え・・・・・・・・・・・・Mental Attitude (メンタル・アティテュード) の合計は あなたの報酬・・・・・・・・・・・・・・Compensation (コンペンセーション) ということです。 ここでいう報酬とは、金銭、またはそれに換算できるものだけを指しているのではありません。それは、あなたの人生を豊かにする、あらゆるも ののことです。 喜び、幸福、調和、精神の啓発、心の平安、積極的な態度、信念、勇気、そしてすべての悲しみさえも、仲間や友人と共有できる脳力のことで す。 私たちは、プラスアルファの努力をすることを学びました。自ら進んで人々に奉仕をし、より多く働き、より多くを与えることは、あなたを成功に導 く、その他の16のノウハウと1本の糸でつながっています。それは、大粒の真珠が17個ならんだ、「成功」と名づけられたネックレスです。プラス アルファの努力をすることが、あなたの人生にとって、どれだけ多くの意味を持っているか理解できるまでくりかえして、このセッションを学んで下 さい。 より多く働き、より多く与えることは、願望や目標を明確にすることで、その実現を早め、信念を貫くことのはげみになります。そして、それはさら に、積極的な心構えと優れたパースナリティを養うのです。 プラスアルファの努力をすることが、どれほど多くの意味を持っているか、その点を理解して下さい。そしてこのノウハウによってもたらされる数 多くの利益をあなたも最大限に活用して下さい。 そしてこの特権の素晴らしい一覧表を見れば、"1マイル余分に進む”ことを控える人はいないはずです。 少なくとも人生の成功に関心を持ち、誠実で、パッションや希望を持つ人なら、この素晴らしい生き方に同意するはずです。 SELF TEST SESSION 4 プラスアルファの魔法 〈part Ⅰ〉 ※このテストはあなた自身の自己テストです。 答えを○で囲むか、記入してください。 1.エドウィン・バーンズがニュージャージー州のトーマス・エジソンに会うために貨物列車に乗ったとき、彼が切望していたのは? 1.実験を手伝ってもらうこと。 2.エジソンの仕事のパートナーとなること。 3.秘書として採用してもらうこと。 4.お金を都合してもらうこと。 2.ナポレオン・ヒルが成功のノウハウに到達することができたのは、彼がアンドリュー・カーネギーを訪れたとき、カーネギーが次のような援助を してくれたからである。 1.気前よく補助金を与えてくれた。 2.研究方法について説明してくれた。 3.重要人物宛に紹介状を書いてくれた。 4.ヒルを研究のアシスタントとして採用してくれた。 3.ナポレオン・ヒルは、成功のノウハウのために資料を収集するという"回り道”をしている間、次の仕事で生活の糧を稼いだ。 1.新聞記事を書いた。 2.成功のノウハウについて説明して回った。 3.生命保険の外交員になった。 4.セールスパースンの訓練係となった。 4.アンドリュー・カーネギーは、鉄道事故が発生したときに下した決断について語った。彼は決断を下し、そして、その後__________ ____。 1.退職届を出した。 2.上司に長距離電話をかけた。 3.事故現場を片付けるため、担当チームを向かわせた。 4.操車場の監督に電報を打ち、援助を求めた。 5.私たちは、2つの重要な法則を知らなくてはならない。それは________と__________。 1.代償の法則 2.適者生存の法則 3.利益増加の法則 4.平均の法則 6."プラスアルファの努力”のノウハウを実現する場合、それは___________とならなければいけない。 1.習慣 2.新たな体験 3.報酬を受け取る方法 4.状況に合わせた修正策 7.それまで以上の仕事をしない限り、現在の報酬以上の_______を期待してはいけない。 1.表彰 2.報酬 3.自己表現 4.人気 8.より多くの奉仕を人々に与えることが習慣になれば、他人とはひと味違った人物として認められる。これを_______の法則という。 1.代償 2.行動 3.対照 4.利益逓減 9.シカゴの精神カウンセラーのオフィスを訪れた失意の人物に施された治療法は? 1.心理テスト 2.仕事の紹介 3.鏡による療法 4."また来るように”と伝える療法 10."プラスアルファの努力”をすることで、_______________という否定的な習慣性を克服できる。 1.報復を恐れる 2.時間を浪費する 3.物事を先延ばしにする 4.平凡である 〈part Ⅱ〉 ※質問をよく読んでお答えください。質問の主旨に関することなら、好きなだけ回答していただいて結構です。 1.プラスアルファの努力をする、という言葉は、あなたにとってどんな意味がありますか? 2.より多くの、より良い奉仕を提供することで得られる報酬とはなんですか? 3.エドウィン・バーンズの物語から何を学ぶことができますか? 4.「代償の法則」と「利益増加の法則」の違いはなんですか? 5.より多くの努力を習慣にすることで得られる利点とは何ですか? 6.「対照の法則」とは何ですか?また周囲の評価を得るには、この法則をどのように活用すればよいでしょうか? 7.Q+Q+MA=C を説明して下さい。 8.あなたは「先延ばし」をどのように定義づけますか? 9.プラスアルファの努力を習慣とするときに、なぜパースナル・イニシアティブが重要となるのですか? 10.速記者だったウィリアムズはどうしてチャールズ・シュワッブと付き合うようになったのですか? ここで、プラスアルファの努力はどのようにして応用されたのでしょうか? 11.このセッションを勉強して、どのようなノウハウや発想を学びましたか? (1)そのノウハウや発想はあなたにとってどのような意味がありますか? (2)そのノウハウや発想をどのように活用するつもりですか? (3)いつ活用するつもりですか? 12.このセッションを勉強したことで、あなたは何を始めますか?
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