医用画像表示モニタの品質管理に関するガイドライン 「JESRA X-0093-2005」の使用経験 山形大学医学部附属病院 放射線部 ○藤村 雅彦 鈴木 隆二 (Masahiko Fujimura) (Ryuji Suzuki) 江口 陽一 (Youiti Eguchi) 【目的】 今回、我々はモニタ品質管理ガイドラインと高精細5M液晶モニタを使用する機会を得ることが出来た。 そこで、医用画像表示モニタの品質管理に関するガイドライン「JESRA X-0093-2005」に則った品質管理ソフ トとテストツールを使用し、接触型輝度計と望遠型輝度計で測定、そして若干の経験と知見を得たので報 告する。 【JESRA X-0093-2005】 「JESRA X-0093-2005」とはどのようなものかというと、医療機関でモノクロ画像を表示して読影を行うモニ タの品質管理に関するガイドラインで、JIRA規格として2005年8月に発行されたものである。他の団体、IEC (国際電気標準会議)やAAPM(米国医学物理士会)で作成された規格やガイドラインを国内の医療現場で 無理なく運用できるようなっている。ガイドラインの内容はモニタの評価方法と基準をまとめたもので受入試 験と不変性試験で構成、受入試験には目視試験と輝度計を使う測定試験がある。測定試験の内容は、「輝 度均一性・最高輝度・輝度比・コントラスト応答・色度」があり、測定の値により判定基準を管理グレード1と2 に分けている。(Table.1) Table 1 「JESRA X-0093-2005」のガイドライン 判定 分類 方法 仕様 仕様 全体評価 グレースケール 幾何学的歪み :CRTのみ 目視 解像度 :CRTのみ テストパターン 測定器 基準臨床画像 判定基準 グレード1 グレード2 ≧1k×1k 16段階のパッチの輝度差が明瞭に判別できること。 5%95%パッチが見えること。 基準臨床画像の判定箇所が問題なく見えること。 TG18-QC 滑らかな単調連続表示であること。 TG18-QC TG18-QC TG18-QC 画面全体が確認できて直線性が保たれていること。 X/Yのアスペクト比が適切なこと。 0≦Cx≦4 ナイキストラインが見えること。 TG18-UNL80 アーチファクト 輝度均一性 TG18-QC TG18-UNL80 コントラスト 応答 測定 最大輝度 TG18-LN アーチファクトが確認できないこと。 ≦30 18ポイントのκδ|% ≧170 ≧100 Lmax|cd/m {(Lmax1-Lmax2) ÷Lmax2}×100|% Lmax÷Lmin|- ≧250 TG18-UNL80 フリッカー クロストーク ビデオアーチファクト カラーアーチファクト :CRTのみ {(Lmax-Lmin)÷ (Lmax+Lmin)}×200|% ≦±30 ≧100 マルチ医用モニタ偏差 ≦0.01 2 {(u'1-u'2)2+(v'1-v'2)2}1/2|- 画面内偏差≦0.01 色度 Cxスコア|- ≦±15 マルチ医用モニタ偏差≦10 輝度比 確認項目 計算式|単位 解像度|pixel - {(u'm1-u'm2)2 +(v'm1-v'm2)2}1/2|- 【使用機器】 モニタ品質管理ソフトウェア :Radi CS GX2 (NANAO) QAガイドラインテストツール :JIRAのホームページよりダウンロード (JIRA) 接触型輝度計 :EIZO GX Grayscale Sensor (NANAO) 望遠方輝度計 :LS-100 (ミノルタ) モノクロ液晶モニタ :RadiForce G51 (NANAO) 尚、モノクロ液晶モニタはグレード1の管理下にあるもの使用した。 【特徴】 モニタ品質管理ソフトウェアは、管理ソフト付属のCDよりインストールをして使用する。USBあるいはシリア ルケーブルを用いることで管理ソフトと輝度計を接続できオンラインで 測定できる。そのため、測定もソフトのガイドに沿って行うことでほぼ自 動で結果表示・レポート作成まで行える。また、測定パターンの背景 (バックグランド)は最小輝度となっている(Fig.1-A)。一方、QAガイド ラインテストツールはJIRAのホームページより無償でダウンロードして 使用する。輝度計とは接続できずオフラインでの測定となる。測定パタ ( A ) ( B ) ーンを自分で表示させて測定し、結果をExcelにて入力してレポート作 Fig.1 測定パターンの背景 成するという手順である。パターンの背景は80%グレーとなっていて、こ れがバックグランドとなる(Fig.1-B)。 【測定】 測定はガイドラインにもあるように試験結果の再現性を保つため、全暗の状況で行う。接触型輝度計は 直接モニタに貼り付けて使用するため外部光を含まず、取り扱いが簡単でセッテイングが容易にできるが、 望遠型輝度計は外部光を含み、測定では焦点・視野角の調整が必要でセッテイングには手間と時間がか かってしまう。 【測定方法】 測定は①品質管理ソフトと接触型輝度計を使用 したオンライン測定。②品質管理ソフトと望遠鏡輝 度計を使用したオンライン測定。③ダウンロードし たテストツールと望遠型輝度計を使用したオフライ ン測定。④テストツールの測定パターンの背景を マスクし③同様の測定の場合(Fig.2)。以上の4パ ターンそれぞれの測定とそれにかかる所要時間の Fig.2 ツール+マスク/望遠型 計測を行った。 【測定結果】 Table.2 測定結果及び所要時間 ソフト ツール ソフト テスト 判定基準 管理ソフトを使用した測定では、 / / ツール/ +マスク/ 接触型輝度計あるいは望遠型輝度 接触型 望遠型 望遠型 望遠型 グレード1 グレード2 型どちらの場合でも大きな差は見ら 輝度均一性(%) ≦30 15.79 16.27 14.71 12.32 れなかった。ダウンロードしたテスト コントラスト応答(%) -2.52 -2.62 -13.73 -6.14 ≦±15 ≦±30 ツールと望遠型輝度型を使用した オ フ ラ イ ン 測 定 で は 最 小 輝 度 で 最大輝度(cd/m2) 456.24 427.62 429.68 434.90 ≧170 ≧100 1.159 と 高 い 値 と な り 、 輝 度 比 が 2 最小輝度(cd/m ) 0.774 0.788 1.159 0.775 372.8と低い値となった。コントラスト 2 輝度比(cd/m ) 566.28 543.34 372.80 561.20 ≧250 ≧100 応答でも-13.73と判定基準に近い 値となった。黒紙でバックグランドを 測定時間 9分 16分 7分 22分 マスクしたときは、管理ソフト使用時 とほぼ同等な結果となった。測定時間は7分、9分、16分、22分であった。(Table.2) 【まとめ】 管理ソフト使用時の2種類の輝度計、接触型と望遠型での測定結果に大きな差は見られなかった。テスト ツールの測定パターンの背景をマスクしてバックグランドを有と無にした場合では測定結果に大きな差が見 られた。管理ソフトを使用するとテストツールの半分以下の時間で簡単に測定が行えた。 【考察】 ガイドラインの運用は測定環境を一定にすることで、接触型でも望遠型でも適切に品質管理が行えると 考える。そのため測定・判定結果に大きく影響するバックグランドは除いて測定することが望ましいと考えら れる。テストツールの使用は時間と手間がかかることから複数モニタを設置している施設では品質管理ソフ トが有効と思われる。 【参考文献・図書】 1) (社)日本画像医療システム工業会:医用画像表示用モニタの品質管理に関するガイドライン 2) 西 嘉一: モニタの品質規格ガイドライン(JIRA)について INNERVISION 2006.04 3) 市川勝弘 西 嘉一:特集2 画像診断用モニタ徹底研究!虎の巻 Rad Fan Vol.3 No.8
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