アニメ産業と教育の連携事業 - 練馬アニメーションサイト

練馬区「アニメ産業と教育の連携事業」
平成23年度推進報告書
平成24年3月
練 馬 区
はじめに
日本のアニメーション(以下、「アニメ」という。)発祥の地であり、アニメ関連企業最大
の集積地である練馬区では、平成21年1月に「練馬区地域共存型アニメ産業集積活性
化計画」を策定し、平成21年度から23年度までの3年間、「アニメ産業と教育の連携事
業」を推進してきました。
平成21年度には、学識経験者、アニメ事業者、区関係職員などによる検討会議を発
足させ、アニメ産業と教育との連携のあり方について検討を行い、子供たちの「ココロ」と
「チカラ」を育む教育実践のプランを作成しました。
さらに平成22年度には、新たに小中学校の教員をメンバーに加えて小学校や中学校
でどのような授業を行うことができるかの検討を行い、実際に授業を実施しました。
そして平成23年度、小中学校計10校でアニメに関する授業を多様な形態で実施し、
教員向け教育プログラム紹介冊子(ティーチャーズガイド)を作成することができました。
この3年間、練馬区において文字通り「アニメ産業と教育の連携」が進み、アニメに携
わる専門の方々と学校、教師、子供たちとが大いにかかわり合いをもつことができました。
アニメの魅力、表現の力、協力すること、アニメに携わって働くこと等々、多くのことを子
供たちが経験し、学び、身につけてくれています。ご協力くださった皆様に、心から感謝
申し上げます。
今後は、この3年間の成果にもとづき、さらにアニメ産業と教育の連携が進み、子供た
ちのすこやかな成長につながる教育実践が練馬区に根付いて、アニメ発祥の地にふさ
わしい地域文化が豊かに発展していくことを期待しています。
平成24年3月
アニメ産業と教育の連携事業 検討会議
監修 藤川大祐
(千葉大学教育学部教授)
<目次>
1 これまでの取組の概略····························································· 1
(1)平成21年度の活動と成果··················································· 1
(2)平成22年度の活動と成果··················································· 2
2 平成23年度の達成目標 ·························································· 3
3 検討会議の開催 ···································································· 4
(1)目的 ············································································· 4
4
5
6
7
(2)会議の開催概要 ······························································ 4
(3)会議の検討状況 ······························································ 4
(4)検討会議委員名簿 ··························································· 6
小中学校における検証授業の実施 ············································· 7
(1)実施校決定の経緯 ··························································· 7
(2)授業実施について ···························································· 7
学校における取組の成果 ······················································· 11
教育課程におけるプログラム活用の効果 ···································· 16
今後の展開について····························································· 18
(1)「ティーチャーズガイド」「リーフレット」による普及・告知 ·············· 18
(2)教員ネットワークの広がり支援 ············································ 19
(3)講師派遣に関する産業界のネットワーク構築、
授業のサポート役の発掘 ················································· 19
※注)本報告書内に記載されている名称・所属・肩書きなどは全て平成24年3月現在のものです。
1 これまでの取組の概略
ここでは、本年度の報告の前提として、平成21年度から現在までの取組、またどのような
成果を引き継ぐ活動だったのかを整理する。
(1)平成21年度の活動と成果
持続可能な事業実施計画策定に向け、先行事例および実態調査の実施を行い、これら
調査を検討材料としながら、事業目標の検討を行った。事業目標の検討にあたっては、産
業界・教育関係者など多様な立場から検討を行い、共通目標として「練馬の子供たちにどう
なってほしいと願うのか」を議論してきた。
子供たちの「生きる力」を育むために実施することを基本的な目的とし、子供たちが「アニ
メを活用した学習を通じて、『夢に向かってやり遂げる“ココロ”と“チカラ”を手に入れる』こと」
を目標とした。さらに、夢にむかってやり遂げるために、子供たちに手に入れてほしい「“ココ
ロ”と“チカラ”」として「仲間と助け合う」「練馬から世界へ羽ばたく」「想像する、創造する」の
3点を掲げ、事業の目標とした。この目標をもとに、ベースとなる基本教育プログラムの作成
を行った。
【子供たちへのメッセージ】
1
(2)平成22年度の活動と成果
平成21年に検討してきた事業目標をもとに、さらに練馬区のアニメのもつ価値を「アニメ
産業のもつ価値・誇り」「文化としてのアニメの価値」の2点から再整理を行った。学校におけ
る学習活動の実態をふまえながら、教育効果の側面からの検討を行い、教員にも理解しや
すい方向性を見いだしてきた。
また、平成21年度に作成した基本教育プログラムを活用しながら、小学校2校・中学校1
校において検証授業を実施した(詳細は「アニメ産業と教育の連携事業」実証実験実施報
告書(平成23年3月)参照のこと)。「キャリア教育としての効果」「地域への誇りと愛着心を育
てる効果」「地域産業としてアニメ産業を理解する効果」を確認することができた。これらの検
証授業を通し、アニメを活用した教育プログラムが具体的にどのような学習効果を生み出す
のかについて、検討会議委員間で共通理解を得ることができただけでなく、効果を実感する
ことができたと言える。
プログラム・教材の制作を進めるとともに、教育プログラムの実施にあたっての課題の抽出
を多方面から行い、以下のような課題が明らかになった。
①講師
協力できる人材が限られることが予想される。目的やカリキュラムに応じた講師を手
配できる準備を整える必要がある。
②機材
アニメ制作も含めた教育プログラムの実施に必要な機材の準備が必要である。
また、使用する教員・支援人材に対しての講習会等の必要性が見えてきている。
③実施体制
産業界と学校をつなぐコーディネート機能の整備、授業実施にあたって教員をサ
ポートできる人材・体制の整備が必要である。
④授業内容(設計)
対象(児童・生徒)にあわせ、子供にとっての「アニメとの接点」を考え工夫をしなが
ら設計する必要がある。
2
2 平成23年度の達成目標
平成21年度・22年度の取組から得られた成果と課題をもとに、平成23年度は、アニメ産
業界の協力を得つつ、子供たちの一番近くにいる教員を軸としながら、教育プログラムを展
開・運営できる状態をめざし活動を行った。
具体的には、平成23年度事業終了時に、以下のような状態になっていることを目標とし
た。
①多くの学校・教員が教育プログラムの意義を理解し、興味をもつこと。
②子供たちにとって学習効果の高い教育プログラムを実施していること。
③授業を運営する教員サポートのためにすべきことがあきらかになっていること。
上記のような目標のもと、具体的な実施内容として以下の取組を行った。
(1)実行項目を推進する会議体として「検討会議」の設置
(2)検証授業の実施
(3)活動の広報
(教育指導課との連携による研修会の開催、練馬アニメーションサイトでの報告など)
(4)「ティーチャーズガイド」「リーフレット」の作成・配布
次頁より、今年度の取組についての成果と課題について述べる。
3
3 検討会議の開催
事業運営にあたり、学識経験者、アニメ事業者・関係者、小中学校教員、区関係職員等
により構成する「アニメ産業と教育の連携事業検討会議」を、2回開催した。
(1)目的
アニメ産業の専門家である区内のアニメ事業者・関係者、教育現場の実践者である教員、
学識経験者により構成される「練馬区アニメ産業と教育の連携事業検討会議」を設置し、教
育プログラム(教材・ツール)の具体的な活用方法および、今後の継続的な運営基盤づくり
に関しての提言を行うこと。
(2)会議の開催概要
第一回
開催日時
場所
平成23年
6月27日(月)
15:00~17:00
練馬区役所
本庁舎19階
1903 会議室
検討内容
1. 開会挨拶
2. 出席者紹介
3. 事業概要
4. 今年度事業についての検討
5. 意見交換
平成24年
2月20日(月)
15:00~17:00
練馬区役所
本庁舎5階
庁議室
第二回
1. 開会挨拶
2.今年度活動内容の報告
−検証授業実施報告
3.ティーチャーズガイドについて
の意見交換
4.事業の成果と今後の展望に
ついての意見交換
(3)会議の検討状況
①第一回検討会議
今年度は検討委員のメンバーが一部新しくなったため、はじめに平成21年度、22年度の
振り返りを行い、成果と課題を確認した。その後、3カ年での取組の最終年度として、今年度
の事業計画を共有し、意見交換を行った。実際に昨年度授業を行った教員の感想から、教
育プログラムとして学校・教員に興味をもってもらうためには、アニメ産業に関わる方を講師
に迎えて研修授業を行う機会や、アニメを活用した学習を実際に研究授業として公開する
機会を設けることが必要である、という意見が出るなど、アニメ産業界と教育現場の相互理
解を深める場の必要性が見出せた。
4
②第二回検討会議
第二回では、今年度10校で実施してきた小・中学校でのアニメを活用した学習の内容を
振り返った上で、授業に関わった教員やアニメ産業界の講師を中心に、成果と課題の共有
を行った。また、昨年度の検証授業と比較した成果が報告された。
その後、今年度の検証授業を踏まえ作成した教員向け教育プログラム紹介冊子(ティー
チャーズガイド)の内容を共有し、意見交換を行った。委員からは、検証授業で撮影した映
像の活用や、ワークシートの提示の方法など、多様な意見が出た。また、授業を実施する際
の備品の必要性や、授業の組み立てのアイデアなど、ガイドの内容に限らず、アニメを活用
した学習をより広げていくための建設的な意見が多数寄せられた。
一方、今後に向けての課題として、アニメ産業界においては講師の確保・拡大のやり方、
学校・教員においても、アニメ産業に関しての知識・スキルの醸成の必要性などの課題が挙
げられた。アニメ産業界・学校双方にとって、できる限り負荷が少なく、かつ効果の高い形で
の運営が今後は求められることが確認された。
最後に今年度の報告の骨子をもとに、来年度はティーチャーズガイドをより普及させること、
講師派遣に関する産業界のネットワーク構築や授業サポート役の発掘を進めていくことなど、
来年度に向けての取組等を共有して会議を終了した。
5
(4)検討会議委員名簿(順不同、敬称略)
(平成24年3月現在)
氏名
所属等
藤川 大祐
千葉大学教育学部 教授
齊藤 裕人
日本大学芸術学部映画学科 教授
高柳
練馬区立石神井東小学校 校長
誠
宮林 伸之
練馬区立大泉第四小学校 主幹教諭
藤江 恵子
練馬区立関町北小学校 主任教諭
内村 弘毅
練馬区立大泉東小学校 教諭
晴佐久 和彦
練馬区立光が丘第四中学校 校長
黒田 一三
練馬区立大泉第二中学校 副校長
近藤 智春
練馬区立旭丘中学校 教諭
大出 幸夫
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
石黒
竜
練馬アニメーション協議会 代表幹事
株式会社動画工房 代表取締役
吉岡
修
練馬アニメーション協議会 顧問
遊佐 かずしげ
阿部
学
練馬アニメーション協議会 幹事
有限会社メビウス・トーン 代表取締役
NPO 法人企業教育研究会 理事
市野 敬介
NPO 法人企業教育研究会 事務局長
吉田 裕典
東京大学大学院 教育学研究科 博士課程
古川 卓也
練馬区教育委員会事務局 学校教育部教育指導課 指導主事
米
練馬区産業地域振興部 商工観光課長
芳久
6
4 小中学校における検証授業の実施
(1)実施校決定の経緯
6月に区立小中学校のニーズ・意向を把握するためのアンケートを実施し、本事業および
アニメを活用した教育プログラムに興味のある学校を中心に授業の実施校を決定した。
(2)授業実施について
小学校7校、中学校3校において取組が行われた。それぞれの学校に関する実施概要は
以下のとおりである。また、これらの授業実施にあたっては、ワーキンググループ(事務局の
他、検討委員の中から NPO 法人企業教育研究会メンバーが参加)においてプログラム案・
教材の調整を行った。
①小学校
【総合的な学習の時間】
学校名
石神井東小学校(校長:高柳誠先生)
日時
平成23年10月28日(金)〜12月19日(月)
担当教員
壷坂憲司先生、山岡恭子先生
科目
総合的な学習の時間
講師
有原誠治氏(元・虫プロダクション)
学年
6年生
人数
47名
授業の
ねらい
●練馬のアニメ産業の実態や仕事の内容を学ぶことを通して、地域の中
心的な産業であるアニメ産業やアニメーション作りへの興味・関心をもつ。
●プロから教えてもらった内容(対象を丁寧に観察する・発信する意識をも
つ、動きを通して感情を伝える)を活用し、友達と協力しながらアニメーショ
ン制作を行う。
●アニメーションを制作する経験や講師の生き方を通じて、自らの生き方
時間数
25時間
について考える。
※授業を通して完成したアニメ作品はアヌシー市へ届けられた。
学校名
富士見台小学校(校長:阿部澄子先生)
日時
平成23年11月12日(土)
担当教員
熊田慈子先生
科目
総合的な学習の時間
講師
青山充氏(東映アニメーション)
学年
6年生
人数
120名
授業の
●練馬のアニメ産業の実態や仕事の内容を学ぶことを通して、地域の働
ねらい
く人の気持ちや仕事への誇りの部分に触れる。
●練馬という地域を知ることや産業を知ることで自分が将来どのように関
わっていくのかを考えさせるきっかけにする。
7
時間数
1時間(45分)
学校名
東京学芸大学付属大泉小学校(校長:柴田義晴先生)
日時
平成23年10月25日(火)~平成24年1月27日(金)
担当教員
大出幸夫先生
科目
総合的な学習の時間
講師
遊佐かずしげ氏(メビウス・トーン)
平松岳史氏(動画工房)
学年
4~5年生
人数
22名
時間数
22時間
●4年生と5年生が一つのチームとなって、お互いに協力しながら自分た
授業の
ちの活動を作り、進めていく。
ねらい
●学校以外の人との関わり、その人から学びながら活動を作っていく。
●比較やかかわりを通して、自分なりの考えや感想を持ち、グローバルな
視野で、自己の生き方への考えを深めていく。
※授業を通して完成したアニメ作品はアヌシー市へ届けられた。
【図画工作】
学校名
関町北小学校(校長:大野泰弘先生)
日時
平成23年11月29日(火)~12月15日(木)
担当教員
藤江恵子先生
科目
図画工作
講師
遊佐かずしげ氏(メビウス・トーン)
学年
6年生
人数
99名
授業の
ねらい
●アニメに関わるプロの仕事を通して、自らの生き方について考える。
●自ら簡単なアニメを作り、作る楽しさを体験する。
●他のグループが作成した作品との違いを鑑賞する。
時間数
8時間
【クラブ活動】
学校名
田柄第二小学校(校長:富澤素子先生)
日時
平成24年3月5日(月)
担当教員
杉山省子先生
科目
クラブ活動(マンガ゙読書)
講師
平松岳史氏(動画工房)
学年
4〜6年生
人数
37名
授業の
ねらい
①プロ・スペシャリストに出会うことで「ホンモノの仕事」の凄さを実感。
②「作ること」のおもしろさを感じる。
③地元「練馬区」のアニメ産業の価値を知る。
8
時間数
1時間(45分)
学校名
大泉東小学校(校長:阿部卓先生)
日時
平成23年10月17日(月)~12月5日(月)
担当教員
内村弘毅先生
科目
クラブ活動(まんが)
講師
遊佐かずしげ氏(メビウス・トーン)
学年
4~6年生
人数
21名
授業の
ねらい
●アニメーション制作について学んだり、実際に動画を作画したりする。
学校名
大泉北小学校(校長:小島英樹先生)
日時
平成23年11月28日(月)
担当教員
秋山洋子先生
科目
クラブ活動(まんが)
講師
平松岳史氏(動画工房)
学年
4~6年生
人数
33人
授業の
ねらい
①プロ・スペシャリストに出会うことで「ホンモノの仕事」の凄さを実感。
②「作ること」のおもしろさを感じる。
③地元「練馬区」のアニメ産業の価値を知る。
時間数
時間数
4時間+α
1時間(45分)
これらのことを通し、自分たちの描く絵をさらにブラッシュアップしていきた
いと感じ、活動の幅を広げることをめざす。
②中学校
【総合的な学習の時間】
学校名
豊玉中学校(校長:井田宗宏先生)
日時
平成24年2月3日(金)
担当教員
徳原正枝先生
科目
総合的な学習の時間
見学先
東映アニメーション(東大泉)
人数
7名
(職場訪問)
学年
1年生
授業の
ねらい
次年度(中学2年生)で行われる職場体験への布石として、生徒が興味の
ある職場を訪問。見学・働く人への質問を通して職業について理解する。
9
時間数
1.5時間
【部活動】
学校名
開進第三中学校(校長:柳谷貞行先生)
日時
部活動にて制作に取り組む
(講師による授業は未実施)
担当教員
木村裕子先生
科目
美術部
講師
−
学年
1~2年
人数
4名程度
授業の
美術部の活動として部員が協力してアニメを作る。講師が来るまでに、キ
ねらい
ャラクターと動きを決め、原画(色なし)を手分けして描き、「動くアニメのお
もしろさ」を指導してもらうことで、プロの仕事のすごさを実感する。
学校名
田柄中学校(校長:田川敏之先生)
日時
部活動にて制作に取り組む
(講師による授業は平成23年12月9日(金))
担当教員
高村輝美先生
科目
美術部
講師
平松岳史氏(動画工房)
学年
1~2年
人数
11名
授業の
ねらい
美術部の活動として、学校ホームページに掲載できるキャラクターを作
る。講師が来るまでに、キャラクターとその動きを決め、原画(色なし)を手
分けして描き、プロのアニメーターから「動くアニメのおもしろさ」を指導し
てもらうことで、プロの仕事のすごさを実感する。
10
時間数
時間数
―
1時間+
活動4-5回
5 学校における取組の成果
今年度の検証授業実施校を一覧にすると以下の通りである。
ここからわかる成果として、以下の点があげられる。
①実施希望校および関わる教員数の増加
平成22年度の検証授業の実施(3校)の状況を、合同校長会などで報告することなどによ
り、アニメを活用した教育プログラムをより多くの教員に知ってもらい、興味を持ってもらうこと
ができた。また、合計10校という規模で実施できたことにより、関わった教員の数やプログラ
ムの効果を伝える足がかりが増え、事例の蓄積ができた。
②実施科目・ねらいの多様化
実施校数が増えることにより、総合的な学習の時間(主にはキャリア教育)のみならず、図
工・クラブ活動・部活動など、様々な活用パターンが生まれた。また、同一の教育プログラム
であっても、学校の個別ニーズに応じたねらいを設定するなど、授業プログラムの様々な活
用・展開の可能性が見えたと言える。
また、石神井東小学校・東京学芸大学附属大泉小学校では、授業を通して制作したアニ
メ作品をアヌシー市(区とアニメ産業交流協定を締結しているフランスの都市)へ送るなどの
活動が展開され、アニメを題材としながら、国際理解・異文化理解を目的とする教育プログラ
ムの展開の可能性が生まれた。
11
③アニメ制作体験を伴うプログラム実践
ある程度長時間を費やし、児童・生徒が実際にアニメ制作を行うプログラムを実施すること
ができた。このことにより、次年度以降、出来上がった「作品」をこれから実践する教員や児
童生徒が見ることで学習のイメージが具体的となるなど、さらに広く告知できる可能性が生ま
れた。また、アニメ制作体験を伴うプログラムは、児童生徒の学習への意欲喚起、興味関心
を引き出すことができるという学習効果も見えた。
【資料:アンケート結果にみる学習効果】
石神井東小学校(アニメ制作体験プログラムを20時間で実施)および富士見台小学校
(職業に出会うプログラムを1時間で実施)のアンケートの結果から考察する。
両校ともに「学習内容への興味・関心がわいた」「練馬のアニメはすごい」の項目について
非常に高い評価を得ていることがわかる。
また、「学習内容への興味・関心がわいた」「アニメに関わる仕事への興味がわいた」に対
する「とてもそう思う」の割合は、昨年度の検証授業実施校に比べ約30%アップしている。
さらに、アニメ制作体験プログラムに取り組んだ石神井東小学校では「アニメを作ってみた
い」の項目が、職業に出会うプログラムを行った富士見台小学校では「アニメーターの仕事
が分かった」「関わる仕事への興味がわいた」の項目がそれぞれ高く、授業のねらいに応じ
た成果が得られたと言える。
<石神井東小学校(総合的な学習の時間・アニメ制作体験プログラム)>
とてもそう思う
まあそう思う
あまりそう思わない
学習内容は興味や関心がわくものであった
84.8%
アニメーターのお仕事がわかった
45.7%
アニメに関わる仕事に興味がわいた
15.2%
50.0%
50.0%
4.3%
39.1%
練馬で作られているアニメはすごいと思った
「働くこと」について考えるきっかけとなった
まったく思わない
8.7%
2.2%
91.3%
23.9%
8.7%
56.5%
もっとアニメを作ってみたいと思った
17.4%
2.2%
87.0%
13.0%
<富士見台小学校(総合的な学習の時間・職業に出会うプログラム)>
と て も そ う 思 う ま あ そ う 思 う あ ま り そ う 思 わ な いま っ た く 思 わ な い
79.2%
学習内容は興味や関心がわくもので あった
82.2%
ア ニメータ ーのお仕事が わか った
ア ニメに関わる仕事に興味 がわ いた
61.4%
もっと ア ニメを作 って み た いと 思 っ た
17.8%
29.7%
6.9%
2.0%
1 5 . 8 %1 . 0 %
83.2%
練馬で 作られて いるア ニメは すご いと 思 った
「 働 く こと 」 について 考 え るき っか けと な った
1 8 . 8 %2 . 0 %
55.4%
48.5%
12
35.6%
36.6%
8.9%
10.94
%. 0 %
<昨年度実施校(2時間でアニメ制作体験も含むプログラムを実施)>
※23年度、その他の学校のアンケート結果
<関町北小学校(図画工作・アニメ制作体験プログラム)>
とてもそう思う
まあそう思う
あまりそう思わない
学習内容は興味や関心がわくもので あった
まったく思わない
79%
アニメーターのお仕事が わか った
20%
77%
アニメに関わる仕事に興味がわいた
22%
37%
52%
練馬で作られているアニメは すご いと思 った
2%
11%
30%
もっとアニメを作 ってみた いと 思った
1%
9%
89%
「働くこと」について考えるきっかけとな った
1%
60%
55%
7%
34%
3%
8%
3%
<大泉東小学校(クラブ活動プログラム(アニメ制作))>
とてもそう思う
まあそう思う
あまりそう思わない
学習内容は興味や関心がわくものであった
55.6%
アニメーターのお仕事がわかった
44.4%
77.8%
アニメに関わる仕事に興味がわいた
22.2%
61.1%
練馬で作られているアニメはすごいと思った
「働くこと」について考えるきっかけとなった
まったく思わない
38.9%
94.4%
22.2%
5.6%
72.2%
もっとアニメを作ってみたいと思った
66.7%
<田柄第二小学校(クラブ活動プログラム(アニメ制作))>
13
5.6%
27.8%
5.6%
<大泉北小学校(クラブ活動プログラム(講師講演))>
<田柄中学校(部活動プログラム(アニメ制作))>
また、検証授業の実施以外に、以下のような取組が生まれ、区内の教員に対して普及・告
知の機会を得ることができた。
名称
小学校部会
開催時期
平成23年
7月19日
内容
検討会議委員および授業実施予定の小学校
教員が集まり、授業の進め方について検討を
行った。
教員向け研修会
平成23年
8月29日
小・中学校教員を対象に、教育プログラム事
例の紹介、模擬授業形式でアニメ制作体験を
行い、アニメそのものの価値や意義に興味を
もってもらう機会とした。
小学校校長会研修会
平成23年
11月15日
当事業の取組状況や教育プログラムの概要説
明を行った。
14
研究発表会
平成23年
12月19日
石神井東小学校の取組を事例に授業公開お
よび研究発表・事例発表を行った。「研修100
選」に位置付けられたことにより、本事業に関
わる教員だけでなく、区内教員に多くの事例
に触れていただく機会となった。
【資料:授業実施の様子】
講師による授業風景
子供たちがアニメ制作に取り組む様子
子供たちのアニメ制作の過程
15
6 教育課程における教育プログラム活用の効果
今年度、様々な展開パターンでの検証授業の実施ができたため、教育課程における、具
体的なプログラム活用の効果を探ることができた。
今年度の取組より明らかになった、教育プログラム活用の効果は以下のようなものである。
①社会科
授業を実施した学校の児童アンケートでは、「練馬で作られているアニメはすごい」という
項目に対しての高い評価を得ることができた。プロのアニメ関係者による授業に加え、自ら
がアニメ制作を体験することにより、地域の産業についての深い理解を得ることができており、
産業理解として活用できる可能性が見えた。小学校3・4年生社会科における学習素材とし
ての活用も考えられる。
②図画工作・美術
今年度の検証授業の中では、小学校の図画工作での実施があったが、中学校において
も、美術部だけでなく、美術科での実施も検討したいとの声があがっている。アニメを手段と
した表現活動の素材となりうる可能性がある。
③総合的な学習の時間
総合的な学習の時間では、自らの課題を設定する力や問題を解決する力、ものの学び
方・考え方を身につけることが目標として掲げられている。アニメおよびアニメ制作は、総合
的な学習の時間の目標に向けた横断的・総合的・探究的な学習の場として活用できる可能
性を持った学習素材であるといえる。
また、以下のような具体的応用が考えられる。
・
キャリア教育
アニメ産業で働く人と出会うことで、働くことについて考える機会になり、また、職業のひと
つとしてアニメ産業に関わる仕事を知る機会を得ることができるなど、アニメ産業を素材とし
たキャリア教育となりうる。さらにアニメ制作は、職業の疑似体験となるだけでなく、仲間と協
働しながらともに課題解決に取り組むことにもつながる。また、いわゆる出前授業型の展開
だけでなく、職場訪問など、学外の活動にも広げていくことができる。
・
国際理解教育・異文化理解教育
石神井東小学校・東京学芸大学附属大泉小学校では、完成したアニメ作品をアヌシー市
に送ることで交流を図ることができた。アニメという子供たちのもつ共通の表現手段を用いる
ことで、互いの文化を知り、伝え合うことの可能性が見えた。国際的に評価の高い練馬のア
ニメ産業を題材としながら、異文化理解、ひいては自国の文化・産業の理解を促進すること
16
を通して、さまざまな考え方・ものの見方の発見につなげていくことができると考える。
④クラブ・部活動
アニメに興味のある児童・生徒が自発的にアニメ制作に取り組みたいという希望があること
も見いだすことができた。これまで制作してきた各種ツールを提供し、アニメ制作のサポート
を行うことも可能である。
加えて、教育プログラム活用の結果として生まれた作品の発表の場を作ることで、保護
者・地域住民と成果を広く共有していくことができ、また、子供たちにとっても、学校外の
様々な視点からその成果が評価される場があることは、教育プログラムの効果をより高めるこ
とにつながる。
具体的には、以下のような場の提供が考えられる。
①練馬アニメーションサイト(URL:http://www.animation-nerima.jp/)
アニメ産業界の関係者・地域住民との作品の共有のほか、過去の作品をアーカイブして
いくことで、これから教育プログラムを活用しようとする教員・子供たちの意欲・興味を喚起す
ることも考えられる。
②練馬アニメカーニバルなどのアニメイベント
国内外のプロ制作によるアニメ作品が上映されるアニメイベント内において、子供たちの
作品を発表することで、保護者・地域住民のみならず、広くアニメファンの目に触れる機会と
なり、作品を評価してもらえる場となる。
③アヌシー市(フランス)との交流
産業交流協定を結んでいるアヌシー市の子供たちと、作品を通じた交流をすることで、作
品の発表の場になると同時に、アニメ作品を通した国際理解につなげることができる。また、
アニメ作品を見せる対象が明確になることで、子供たちがプログラムに取り組む動機づけに
もなる。
17
7 今後の展開について
今年度の成果より、平成24年度以降、以下のような取組を行い、さらに活動を広げていく
ことで、将来にわたり、練馬の子供たちに継続的な価値ある学びの場の提供を実現してい
く。
(1)「ティーチャーズガイド」「リーフレット」による普及・告知
今年度、これまでの検証授業を踏まえ教員向け教育プログラム紹介冊子「ティーチャーズ
ガイド」および「リーフレット」を作成し、各学校に配布を行った(ガイドについては各校4部ず
つ、リーフレットは全教員分)。
また、それらの資料および実際の使用教材・ワークシートについては、各学校に配備され
ているグループウェアパソコンにもデータを掲載し、ダウンロード可能とした。
【掲載場所】グループウェア→部門フォルダ→区民生活事業本部→産業経済部
→商工観光課→アニメ産業振興係
平成24年度以降は、これらを活用してプログラムの成果を広く普及・告知することをめざ
す。
「ティーチャーズガイド」概要
◆ねらい
教育プログラムの内容・期待できる効果を紹介し、
「教育課程の中での活用の方法、可能性」「学校で
用意するものや教員のすべきこと」を示す。
◆仕様
A4 判20p
◆内容
−教育プログラムの紹介
−ワークシート・資料の紹介
−プログラム導入までの全体像とスケジュール
−準備物
「リーフレット」概要
◆ねらい
教育プログラムの内容・期待できる効果を
伝え、興味を持てるようにする。
◆仕様
A4 判2p (両面)
18
(2)教員ネットワークの広がり支援
学校・教員に対して本事業および教育プログラムの認知を高め、その効果を実感してもら
うだけでなく、同時に教員の知識向上・スキルの向上も必要である。検討会議においても、
教員自身が練馬のアニメ産業を理解し、体験し、プログラムの効果・楽しさを実感する場の
必要性が指摘された。
今後の展開として、教員研修、教科別部会などの場との連携施策など、教員同士の情報
の共有、プログラムを有効活用するノウハウ共有の場を作ることが求められている。関わる教
員が楽しみながら、かつ、学習効果の高いプログラムのあり方の検討を続けられる仕組みづ
くりをめざす。
(3)講師派遣に関する産業界のネットワーク構築、授業のサポート役の発掘
継続的な実施体制の基盤整備のもう一方として、産業界側から派遣できる講師を確保す
るネットワークを作ることが求められている。アニメ産業界にとって負荷の大きくない方法での
協力体制・ネットワーク構築と同時に、アニメ産業界にとっての取組の意味・位置付けの再定
義といった検討を進め、より多くのアニメ事業者・アニメ関連団体の参画・協力に向けた活動
を推進することが急務である。
また、担当する講師同士の情報共有・ノウハウ共有を推進することで、子供たちにとっても
よりよい学びの場を提供することが可能となる。これまで実施してきた授業から生まれた教
材・ワークシートの他、記録映像などを活用しながら、講師のスキルアップを図っていく。
上記のような課題を受け、平成24年度は新規の教育活動実施校数5校(小中学校合計)
を目標とおき、アニメのもつ文化的価値・教育的価値および教育プログラムの効果を広く普
及していくことをめざす。
※参考
●練馬区長期計画 後期実施計画(平成24~26年度)
26年度目標
23年度末
今後の
実績見込み
必要事業量
アニメ産業と
年度別計画
24年度
25年度
26年度
新規の
合計
新規の
教育の連携事
検証授業実施
教育活動実施
教育活動実施
教育活動実施
教育活動実施
教育活動実施
業の実施
(10校)
(15校)
(5校)
(5校)
(5校)
(15校)
●平成24年度の実施予定
5月頃
平成23年度実施報告書の報告
各学校への平成24年度実施意向調査の実施
7~8月頃 教員向け研修会の実施
9月以降~ 希望校における授業実施
19
練馬区「アニメ産業と教育の連携事業」推進報告書
平成24年3月
練馬区区民生活事業本部産業地域振興部商工観光課
(平成24年4月から産業経済部商工観光課)
練馬区教育委員会事務局学校教育部教育指導課
(平成24年4月から教育振興部教育指導課)
〒176-8501 東京都練馬区豊玉北6丁目12番1号
TEL 03-3993-1111(代表)