第1章 組織づくりとスケジュール管理

第1章
組織づくりとスケジュール管理
1. 組織委員会······································································································· 2
2. 各種委員会······································································································· 6
3. 事務局················································································································ 8
4. パートナーとしてのPCO················································································ 9
5. 準備スケジュールの作成··············································································· 11
6. 組織委員会の解散 ························································································· 12
第1章
組織づくりとスケジュール管理
1
組織委員会(Organizing Committee)
国際会議の組織委員会は、会議の準備および運営に関する最高意思決定機関である。国際本部との連絡、準備
および運営に関する重要事項の審議と決定、全体進行管理などを行う。(会議によっては、実行委員会や開催委員会
といった名称を使用する場合もある。)
(1)
組織委員会の役割
国際会議の準備および運営に関する重要事項について審議し決定する。国際会議の準備における最終的な決定
権を持つ。
<組織委員会にて検討・決定すべき、考えられる主な重要事項>
・ 収支予算(収入と支出のバランス、項目と内容)の検討
・ 予算案の決定、必要に応じた改訂
・ 会議参加登録料の決定
・ その他、会議全般に関する重要事項の審議と決定
なお、委員会での審議事項については、議事録(案)を事務局が作成し、次回の会合で内容を確認したうえで、記
録として保管する。
【参考】
学会などの国際会議においては、共同主催団体として、日本学術会議(Science Council of Japan)の名前が入る場合もある。
申請方法等詳細については、日本学術会議へ問い合わせをすること。(日本学術会議 http://www.scj.go.jp)
(2)
組織委員会の設置
国際会議の開催にあたって、日本への誘致活動を行ってきた準備委員会を改組して組織委員会を作る。通常は、
誘致のために組織した準備委員会に関わった人たちの中から発起人を選ぶ。学会や協会の代表者である理事長が
発起人となる場合も多い。この発起人を中心として、組織委員会に入ってほしいメンバーを人選する。人選にあたって
は、主催する組織を中心に、出身母体や勤務先など今後の準備に役立つようバランスを考えて行う。
このようにして選んだ方々に、組織委員への就任依頼状を送る。本人からの承諾書を書面でいただき、事務局にて
保管する。承諾をいただいた委員には、委嘱状を発行する。
(3)
組織委員会の構成
組織委員会は、「委員長(会長)」を中心として、「副委員長(副会長)」、「事務局長(又は事務総長)」、「委員」などで
構成する。実際、組織委員会は10~20人程度で構成されることが多い。あまりに大人数だと、委員会の場で実質的な
検討ができなくなってしまうため、この位の人数が適当なようである。
しかしながら大型会議などの場合は、やむを得ずそれ以上の人数になる場合も多々ある。その場合には、実質的な
討議ができる場として各小委員会等から構成される「組織委員会(実行委員会)」を結成する場合もある。
組織委員会の構成にあたっては、様々な分野の方々に委員就任を依頼することになる。依頼した委員が、非常に多
忙で委員会やその他ミーティングにほとんど出席できない、組織委員会の人数がふくらみすぎて実質的な討議ができ
ない、といったような事態を避けるため、実質的に動いていただける方を選ぶようにする。
組織委員会活動などのために職場を空ける必要がある委員には、職場の長に組織委員長名でお願い状を送る等
の配慮が必要となる場合もある。また、組織委員会のメンバーには、各小委員会の長として、具体的な準備活動を担当
していただく。
-2-
第1章
組織づくりとスケジュール管理
組織委員会全体構成図<大型会議の例>
組織委員会(実行委員会)
プログラム
委員会
広報委員会
募金委員会
財務委員会
事務局
展示委員会
組織委員会全体構成図<中・小型会議の例>(最小構成)
組織委員会(実行委員会)
事務局
(4)
募金委員会
運営委員会
組織委員長
組織委員会のメンバーの互選で委員長(会長)を選出する。組織委員長は会議の顔となるだけに、できるだけその
分野での日本における第一人者であり、かつ世界的にも日本を代表する人物を選びたい。学会・協会の場合は、理事
長や理事長が推薦する理事といった役員が組織委員長となる場合が多い。
この委員長のリーダーシップのもと、会議の準備・運営をすすめていくことになる。委員長にはできるだけ有能で信
頼のおける責任感の強い人を選びたい。また、会議の準備・運営および財務基盤をかためるために、関係各所に広い
ネットワークをもち、必要に応じて影響力を行使することのできる人物が望ましい。委員長の人選が会議の成否を分け
るといっても過言ではない。
ただし、ビジネス関係の会議や産業界の会議などでは、当該業界の筆頭会社の代表者が委員長となる場合が多く、
細かな判断まで行うことは非常に難しい。また会社の代表者である会長や社長が組織委員長となった場合、会長(社
長)の任期についても留意したい。
例えば委員長が倒れたときや不在といったもしもの場合に代行する者として、副委員長を決めておく。
事務局を統括する事務総長も決めておいたほうがよい。事務局は組織委員会の事務全般だけでなく、国際会議の
準備全般を行う。位置付けとしては組織委員会の下に置くことが多い。
国際会議によっては、国際組織との連携や海外の有力メンバーの助言・インプットを会議の準備に活かすことを目
的として、国際諮問委員会(International Advisory Committee)や顧問をおく場合もある。
(5)
顧問
学会・協会の前・元理事長、国際本部の役員、当該分野の功労者には、顧問就任を依頼し、会議の準備のすすめ
方など適宜アドバイスをいただく。
(6)
組織委員会規約
組織委員会の発足にあたっては、組織委員会の役割や位置付けについて規定した「組織委員会規約」を定めること
が一般的である。この規約で委員長や副委員長の選び方や役割、その職務権限、組織委員会として活動する期間な
どを定める。(4頁参照)
-3-
第1章
組織づくりとスケジュール管理
【参考】 組織委員会規約
第○回○○○○○○大会
組織委員会運営規約
(目
的)
第1条
第○回○○○○○○大会(以下「大会」という。)を日本で開催するにあたり、関係機関の協力体制の下に、大会開催の準
備・運営について協議し、業務の円滑な処理をはかるため、臨時組織として大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)
を設置する。
(運
営)
第2条
(任
組織委員会の運営は、この規定の定めるところによる。
務)
第3条
組織委員会は大会の準備、運営及び関連諸行等に関し次の業務を行う。
(1) 大会の計画概要の作成。
(2) 大会の実施計画の作成。
(3) 決定された大会の実施計画の実施。
(4) 大会参加者からの参加費の徴収。
(5) (3)号及び(4)号に関わる経費の管理。
(6) その他前記各号に付随する業務。
(委員の委嘱)
第4条
組織委員は、第○回○○○○○○大会準備委員会委員長の指名により委嘱する。
委員の任期は、委嘱を受けた日から、大会開催に係わる事業終了の日までとする。
(構
成)
第5条
1. 組織委員会の構成は次のとおりとする。
委員長
1名
副委員長
1名
幹事
若干名
委員
若干名
2. 委員長は委員の互選によりこれを定め、副委員長は委員の中から委員長が指名する。
3. 委員長は組織委員会を代表し、その所轄事項について総括する。
4. 副委員長は委員長を補佐し、委員長が不在のとき、または委員長に事故のあるときはその職務を代行する。
5. 組織委員会は必要に応じ、委員長が招集する。
(会議の成立と議事の決定)
第6条
組織委員会を開くには委員の三分の一以上の出席(委任状提出者含む)があることを要する。議事の決定は出席委員の
過半数の賛成を要する。
(募金委員会)
第7条
組織委員会のもとに第○回○○○○○○大会募金委員会を設ける。募金委員会の構成、運営等は準備委員会が別に定
める規則による。
(専門部会)
第8条
1. 組織委員会は、その任務を分担させるためプログラム部会、財務部会、総務部会、その他必要な専門部会を設けることができ
る。
2. 専門部会の構成は次のとおりとする。
部会長
1名
部員
若干名
-4-
第1章
組織づくりとスケジュール管理
3. 専門部会の部会長及び部員は、組織委員会及びその他の関係者から組織委員長が委嘱する。
4. 専門部会は、その分担する事項について必要に応じ幹事を置くことができる。
5. 専門部会は、その分担する事項について審議し、必要に応じて組織委員会に報告し、承認を求めるものとする。
6. 専門部会の分掌は別に定める。
(事務打ち合わせ会)
第9条
組織委員会の円滑な運営を計るため、組織委員会内に幹事会を設けることができる。
(事 務 局)
第10条 組織委員会の諸事務を行うため組織委員会内に事務局を置く。
(解
散)
第11条 組織委員会は、大会に係わる事務終了をもって解散する。
(改
正)
第12条 本規則の改正は、本委員会の承認を必要とする。
(施
行)
第13条 本規則は2010年3月1日から施行する。
(7)
組織委員会の位置付け
国際会議における組織委員会の役割や位置付けについては、次の二通りの考え方がある。
ひとつは、組織委員会が国際会議の主催者となる場合である。この場合は、名目も実態も、この組織委員会が国際
会議の主催者としての任を担うこととなる。組織委員会は国際会議の準備・運営のために臨時に組織された団体であ
り、会議終了とともに解散する。
もうひとつは、学会や協会など既存の組織が国際会議の主催者になる場合である。この場合は、会議の準備・運営
を具体的に計画し遂行する担当機関として、組織委員会をその団体の内部に設置することとなる。
(8)
国際団体本部と組織委員会との役割分担
組織委員会が円滑に活動するためには国際本部との協力関係が不可欠である。国際本部と受け入れ側の組織委
員会とが、お互いの仕事が何であるのかを明確に認識し、互いに密接に協力することによって国際会議の準備・運営
がスムーズに運び、会議の成功につながる。多くの国際本部がこの役割分担についてのガイドラインを発行し、受け入
れ国への運営の指針を示しているので、主催者は準備開始前に入手し、よく研究することが望まれる。このガイドライン
は国際会議の誘致の際、ロビーイングやビッドペーパー作成にも極めて有効な資料となるので、誘致活動を始めるとき
にも事前に入手するとよい。
以下にこのガイドライン(役割分担)の典型例を示す。
国際本部の役割
・ 基本的なタイムテーブルの作成
・ プログラム内容への助言あるいは決定
・ 予算の方針提示と了承
組織委員会の役割
・ 国際本部とのコミュニケーション、報告
・ 予算管理
・ 会場の準備運営
・ 会期前、会期中の印刷物の作成
・ 会期中スタッフの手配
・ 技術見学ツアーの手配
・ 通訳者、翻訳者の手配
・ 広報宣伝活動
・ 商業・技術展示の基本方針の提示
・ 印刷出版物とその発送に関する指針の提示
・ 広報基本方針の提示
・
・
・
・
・
・
・
-5-
登録受付実務
社交行事の手配
宿泊手配
プレス対応
警備安全対策
商業・技術展示運営
次回開催国のプロモーション活動への協力
第1章
(9)
組織づくりとスケジュール管理
組織委員会と実行委員会(運営委員会や幹事会)
通常、組織委員会は各関係団体や組織などのトップの方々を集めたものとなり、なかなか実際に活動を行うのが難
しい場合がある。そのような場合に、下部組織として実行委員会(運営委員会(Steering Committee)や幹事会
(Executive Committee)という名称もあり)を設置することがある。
実行委員会は、具体的に作業を分担して行うことがその趣旨である。各関係団体・組織の関係部門責任者や、組織
委員で具体的に動ける方に実行委員になっていただき、実行委員会での審議や役割を分担する。
【参考】
組織委員会は、「重要な判断をすみやかに行える組織」として、効率的に機能しなければならない。しかしながらなかなかうまくいかな
い場合が多い。その対策として、実質的な審議や活動を行う機関として、実行委員会を設置する考えがでてきた。
・ 組織委員会の下に実行委員会(あるいは運営委員会や幹事会)を置く。構成メンバーは組織委員長、事務局長はじめ各委員会
の委員長などとし、人数をできるだけ絞る。
・ 「組織委員会」は、国際会議の準備開始から会議終了まで、極力開催数を減らす。組織委員会は、主として経過報告を行い、承
認を得る場として位置付ける。
・ 実行委員会は、実質的な審議や活動を行う場とする。
・ 実行委員会は2~3ヶ月に1回、会期が近づいてきたら1ヶ月に1回などの頻度で行い、必要な審議が遅れないよう、適時開催す
る。
・ 良いPCO(Professional Congress Organizer)を選ぶなど充実した事務局体制を構築する。
組織委員会が実質的に機能して準備をすすめられるようであれば、実行委員会を設置する必要はない。
2
(1)
各種委員会(Committees)
組織委員会と委員会
組織委員会のもとに、プログラムや財務などの主要準備項目を担当する委員会を設置する。委員会の委員長は、組
織委員会のメンバーがなり、準備の進捗状況を組織委員会の会合にて報告する。また組織委員会で決まった準備方
針を委員会に伝え、具体的な準備に反映する。
組織委員会は、最終的な意思決定、国際本部との連絡、全体的な業務の統括を行い、具体的な準備業務は各委
員会が分担して行う。
組織委員会といった場合、この各委員会のメンバーを含めた全体をさすことが多い。
(2)
委員会の種類
主な項目だけでも10項目程度の委員会を作る必要がある〔下記2-(5)参照〕。もちろん、会議の内容や規模、準備
体制などにより、委員会の数をまとめることもできる。国際会議によって、必要な委員会を検討して構成を決める。
最小の構成では、運営委員会とプログラム委員会で行うこともある。運営委員会は会場使用計画から旅行・宿泊な
ど、会議の準備・運営にかかる全般を担当する。プログラム委員会は会議のプログラム作りを担当する。
会議の準備・運営に関し、募金など外部からの資金調達が必要な場合は、募金委員会を別途設置する。
(3)
委員会の予算措置
各委員会を設置するにあたり、検討する必要があるのが、各委員会の予算措置である。
ひとつは、各委員会に予算を持たせて、委員会の管理・監督のもとで、事業を推進する考え方。もうひとつは、各委
員会で事業を推進するが、予算はすべて事務局が管理して行うという考え方である。事務局がしっかりとしている場合
は、後者のほうが全体の統制をとりやすい。
(4)
委員会の活動記録
委員会の活動記録として、会合の議事録を残すようにする。
-6-
第1章
(5)
組織づくりとスケジュール管理
委員会の例
委員会の名称、委員の人数、種類については会議の規模や性質によって異なるため、どんな委員会を設置するか
をよく検討する。一般的には次のような分掌の委員会を設置する。
①財務委員会⇒
財務、会計に関するすべての業務
〔第2章 予算作成と収支管理〕
予算案の作成と検討、必要に応じての見直し/収入計画(資金調達)の作成/資金の受け入れと管理/支出計画の
作成、および諸経費支出の帳簿管理/キャッシュフローチャートの作成/決算報告書の作成
②募金委員会⇒
募金に関するすべての業務
〔第3章 募金活動〕
募金活動計画の作成/募金趣意書、募金規定の作成/募金依頼先一覧表の作成/課税優遇措置(免税措置)に関
する手続き/募金活動の実施/礼状の発送、募金状況の管理
③広報委員会⇒
広報・PRに関するすべての業務
〔第4章 会議参加者募集・広報〕
国内外に向けた広報計画の作成と実施/ロゴ、レターヘッドやポスター等の作成/学会誌への告知掲載依頼、有力
国際雑誌への広告掲載/関連会議でのPR活動の計画と実施/サーキュラー(Circular)の制作(一次、二次)/サー
キュラー発送先の検討、情報の収集/報道関係者への広報計画および実施/プレスリリース(Press Release)の作
成、記者会見の計画・実施/会期中のプレスルームの設置
④登録委員会⇒
登録に関するすべての業務
〔第5章 登録〕
参加申込書の作成・発送/参加者の受付および受付台帳の保管/登録申込状況の把握/登録の推進/参加者リス
トの作成/コングレスバッグの作成/登録デスクの設置、運営管理/会期中の一般案内業務
⑤プログラム委員会⇒
会議のプログラムに関するすべての業務
〔第6章 プログラム参照〕
プログラムに関する基本方針の作成(トピックス、方向性など)/内容、日程、重要講演者の選定/プログラムに関する
本部との打合せ/演題募集の作成、アブストラクト(Abstract)の受付および査読/応募演題の採否決定/プログラム
の編成/座長(Chair)の依頼/翻訳者、通訳者、速記者等の手配/通訳者用資料の準備
⑥会場委員会⇒
会場全般に関する業務
〔第7章 会場〕
会場(展示場含む)使用計画の作成/会場の予約/会場の付帯設備・備品/映像・PC機器等の配置計画/掲示
板・表示板類の設置計画、原稿の作成/要員配置計画の作成/会場要員の確保と教育/会場運営マニュアルの作
成
⑦宿泊・旅行委員会⇒
宿泊・旅行に関するすべての業務
〔第8章 宿泊〕
使用ホテルの検討、および予約/宿泊料金の交渉、決定/指定旅行代理店(Official Travel Agent)の選定/旅行代
理店およびホテルとの連絡調整/会期前・会期中・会期後の各種旅行の企画/会期中の旅行デスクの設置
⑧行事・接遇委員会⇒
社交行事・接遇に関するすべての業務
〔第9章 開会式・社交行事〕
開会式・閉会式の計画と実施/各種レセプション(Reception)の計画と実施/同伴者プログラム(Accompanying
Persons’ Program)の計画と実施/レセプションデスクおよび同伴者プログラムデスクの設置/輸送計画の作成および
準備/CIQ(Customs税関、Immigration入国管理、Quarantine検疫)および関係機関との調整
⑨展示委員会⇒
展示に関するすべての業務
〔第10章 展示会〕
展示に関する全体計画および設営/出展の勧誘/小間の割り当てプラン作成/出展者および出展物に関する案内
書作成/出展物の保管・警備/展示会開会式の企画/展示会としての予算作成、管理
-7-
第1章
組織づくりとスケジュール管理
⑩総務委員会⇒
他の委員会に属さない業務
本部役員および招待者に関する調整/関係の官公庁、機関および諸団体との調整/総務・庶務関係の全般
要は各委員会が効率よく作業を行えるように仕事を分担することである。10の委員会をすべて設置する必要がある
わけではない。いくつかの委員会を合同して置いてもよい。
大規模な会議では上記以外の委員会を設置する場合がある。海外からの参加者に旅費補助を行うスカラシップ委
員会や、国際団体などとの調整を行う渉外委員会などの例がある。
旅行や宿泊、輸送を扱う宿泊・旅行委員会では、指定旅行代理店(Official Travel Agent)を早めに決めておき、必
要に応じて委員会の会合に出席してもらってもよい。
3
事務局(Secretariat)
組織委員会が発足したら、直ちに事務局を設置し、会議準備のための実務作業をスタートさせる。事務局は、すべ
ての問い合わせや資料が集まる情報の集約ポイントであり、蓄積する機関でもある。事務局が会議の準備状況を把握
している形をとることが重要である。
(1)
事務局の役割
委員会のスタート時には、委員への依頼状の発送、承諾書の保管、委嘱状の発送、委員の住所録の作成と更新を
行う。
各委員会が動き出してからは、予算管理、スケジュール管理(進行管理)をはじめ、委員会会合の会場おさえ、茶菓
の手配、委員会の開催通知、出欠の確認、委員会議案、議事資料のまとめ、議事録の作成、各種議事資料の保管、
委員会での旅費の支払い、問合せ対応の窓口を担当する。
サーキュラーが発行され、参加登録や論文申込みの受け付けが始まってからは、登録受付、論文受付、寄附金受
付など全ての問合せ対応や受付の業務を行わなければならない。これらの国際会議の準備事務は、かなりの業務量と
なる。有能な人員を必要数、前もって確保することに留意することが必要である。
会議の開催期間中は、会議の運営本部としてすべての情報を集約する。また各委員の活動の補佐を行う。
会議終了後は、残務整理として、資料や会計の取りまとめを行うことが主たる任務となる。
(2)
事務総長又は事務局長(Secretary General)
事務局スタッフを率いて、国際会議の実際の準備・運営をとりしきり、事務局全般を束ねる。組織委員会委員長、プ
ログラム委員長、募金委員長などとならんで重要な役職である。事務局長ともいう。
(3)
事務局員
各業務を分担して行う。業務の繁閑度に応じて、事務アシスタントやアルバイトを柔軟に使用する体制が望ましい。
(4)
通信手段
事務局専用の電話やFAX番号、Eメールアドレスを確保し、各種印刷物やウェブサイトで案内する。
(5)
ウェブサイト
国際会議専用ウェブサイトのURLを獲得し、ポスターやサーキュラーなどで案内する。ウェブサイトは、会議の開催
告知など広報・PRに活用する。
(6)
開催趣意書の作成
会議の開催計画について概要をまとめたものを開催趣意書(会議説明書などともいう)として作成する。主には、会
議の概略を部外の方に説明する際に用いる。
-8-
第1章
組織づくりとスケジュール管理
内容については、「第3章 募金活動」で説明する「募金趣意書」と重複する部分が多いので、そちらを参照された
い。
(7)
事務局の設置
事務局の設置についてはいくつかの考え方がある。
① 主催団体の事務局を強化して、国際会議事務局とする。
会議を開催するための母体団体等が既にある場合、事務局の人員を増やして、国際会議の事務局とする。こ
の場合は母体団体の中に事務局があるイメージ。
② 既にある母体団体とは別に、国際会議のための事務局を新設する。
人員を新たに採用して、事務局としてスタートする。従来の母体機関に勤務している職員を充当することもあ
る。この場合は母体団体の外部に新たに事務局を設けるイメージ。
③ 会議の事務局機能をPCO(Professional Congress Organizer)に委託する。
この場合はPCOに事務局業務の委託費を支払うことになる。
④ 上記の組み合わせで行う。
団体の事務局の人員を強化するとともに、PCOを選び、登録受付や論文受付、会場設営などの専門業務を委
託する。本体の事務局は、関係省庁や団体などとの対外的な調整や予算管理・資金調達などの重要な業務に
専念する。
(8)
PCOへの事務局業務の委託
ある程度の参加人数が見込め、予算規模が大きくなるような中型・大型の会議では、一部または全部の業務につい
てPCOの協力を得て行う例が多い。上記①、②の場合でも業務の一部をPCOに委託し、進める方法もある。
事務局業務を推進するために必要な人数は、会議の規模や性質によりまったく異なる。しかし、会議開催期日が近
くなるに従って、必要な人員は多くなるのが通例である。必要な人数を見きわめ、適宜に増強することを、予め検討し
準備しておきたい。
また、関係書類の保管や関係者の打合わせ、人員の強化に備えて、事務局はできるだけゆとりのあるスペースを確
保したい。
4
パートナーとしてのPCO
国際会議の誘致や実際の準備運営にPCO(Professional Congress Organizer)をパートナーに選ぶことがある。主催
者が上手にPCOを選ぶことは非常に大切なことである。なぜならばPCOはときには数年間に及ぶ会議の準備期間中
の重要なパートナーであり、多くの重要な仕事を任せる存在であるからである。したがって、適切なPCOを選ぶことが、
会議の成否を決める大きな要素ともなる。PCOは単に国際会議の実務代行者ではなく、会議の専門家でありコンサル
タントである。見積もりや依頼内容について聞きたいことがあれば殆どのPCOは無料で相談に応じてくれるはずである。
PCOには様々な種類の会社がある。その会社の主業務がPCO以外のもの、たとえば、人材派遣、通訳請負、語学
学校経営、旅行、広告・宣伝、印刷・制作、などである会社もあるが、PCO業務そのものが主体業務である専門性の高
い会社を選ぶほうが無難であろう。
(1)
PCOの具体的な仕事
・ 会議誘致
・ サーキュラー、抄録、プログラム等各種印刷物企画制作
・ 会場選定
・ 会場運営計画作成、実行、監理
・ 会議プログラム大枠の企画立案
・ プレス対応
・ 準備運営計画タイムラインの作成
・ デイリーブレティン発行
・ 収入計画(寄附金、免税、助成金、展示会収入、登録
・ 会期中登録受付
料等)立案
・ 会期中事務局運営管理
-9-
第1章
組織づくりとスケジュール管理
・ 支出予算案の作成
・ 語学要員手配
・ 寄附金、免税措置、助成金申請業務
・ 開会式企画運営
・ 収支管理
・ パーティー、ツアー、同伴者プログラム等社交行事企
画手配
・ 会場折衝
・ 組織委員会案作成
・ 旅行エージェントとの連絡折衝
・ 各種委員会出席、委員会資料準備
・ ネームタッグ、コングレスバッグ、その他参加者への配
布物企画手配
・ 登録事務処理
・ 学術プログラム委員会補佐
・ 看板、ステージ設営
・ 抄録事務処理
・ ガードマン手配
・ 展示会事務局
・ 皇室、VIPに関する各種手配折衝
・ 通訳・同時通訳機器手配
・ 各種官庁との折衝
・ 翻訳
・ オーディオビジュアル機器、IT機器、コピー機等手配
・ ポスターセッション運営
・ テレビ会議
・ チェアパーソン、スピーカーとの連絡通信
(2)
PCO選定の時期
依頼する業務内容にもよるが、誘致や準備段階のできるだけ初期に選定するのが望ましい。中型以上の国際会議
では遅くとも1年半から2年前には決定したい。
(3)
決定の手順と選択基準
① PCOに関する情報収集
JNTO、コンベンションビューロー、会議施設、ホテル等から情報を集める。
② PCOに与えるべき情報
数社から精度の高い見積もりを得て、それらを比較検討する場合には、主催者はできるだけ多くの情報をPCO
に与えることが、非常に大切である。
・ 会議日程概略(全体会議、分科会、パーティー、展示会、ツアーなど)
・ 会議の周期(何年周期)
・ 前回会議の登録料
・ 予想参加者人数(外国人、日本人、同伴者)
・ 前回展示会の規模
・ 前回会議の参加者数
・ 前回会議の印刷物の種類
・ 予想論文数(オーラル、ポスター)
・ 前回会議のセカンドアナウンスメント等
・ 招待スピーカー数
③ PCOに依頼する提出物
・ 見積書
・ 会議実績
・ 会社案内
・ 受注した場合の担当者の会議経験略歴
④ 信頼性の調査
過去の主催者、現在準備進行中の会議主催者、ホテル、会場からの情報をチェックする。
⑤ プレゼンテーション
1社30分程度のプレゼンテーション後、20-30分程度の質疑応答の時間をとる。つぎの点に留意してチェックす
る。
・ 同種、同サイズの会議の運営経験があるか
・ 担当スタッフの経験は十分か
・ 過去のクライアントと法的トラブルはないか
・ 寄附金に関するノウハウと実績はあるか
- 10 -
第1章
・ 登録・論文処理等にITを活用しているか
組織づくりとスケジュール管理
・ 個人情報保護管理の体制
・ 担当スタッフに万一の事態(病気、退職など)が起こったときの対応について
・ 主催者と担当者とのコミュニケーションの具体的な方法について
・ 会社の財務状況は健全か
・ 会社の主業務はなにか
⑥ 最終決定
最終決定前に、できれば会社を訪問し、オフィス内を見せてもらう。会社の雰囲気とともにコンピューター処理の
仕組みなども見る。
5
(1)
準備スケジュールの作成
スケジュール作成の目的
会議の準備スケジュールは、事務局、委員会の役割と、いつごろ何があるのか、そのために何をしなければならない
のかを明確に記述する。各委員会間の連携する部分を明らかにし、関係者が共通の理解をもつために作成する。準
備項目のもれや遅れが生じないよう、委員会、事務局それぞれに準備スケジュールを作成する。
(2)
スケジュール作成のポイント
① 余裕あるスケジュールをたてる。
a. 立ち上げ時期
会議開催の2~3年前。日本開催が決定後、具体的に準備が動き出すまで。主催者として
の枠組み作りをこの時期に行う。
・ 組織作り
国内学会と同時開催することによって、アジア各国からの参加者に日本の高
・ 予算作成
い医療水準を示すことができ、また、日本の若い参加者に、世界に向けて絶
好の発信の機会と友好関係を促進する場を提供することができた。
・ 全体の計画作り
- アジア内視鏡学会2002(ELSA2002) -
b. 準備時期
c.最終調整期
事務局が立ち上がり、各委員会も会合を開いて準備を具体的にすすめる。
・ 各種サーキュラーの作成配布時期、論文募集や参加登録受付の開始時期など、道標とな
るものを示す。
・ 関連の国際会議や国内会議の現場は、参加プロモーション活動を行う絶好の機会である。
どのようにPR活動を行うと効果的かなどをよく検討する。
・ プログラムのとりまとめについては、以下のタイミングに留意する。
重要講演などの招待スピーカーの検討・決定/一般の論文募集、査読/プログラム編成
/論文の採否通知
・ 参加登録の早期割引料金の適用期間
・ 参加登録、宿泊申込の事前締切のタイミング
会議の3ヶ月前くらいから会議開催直前まで。全ての業務が同時平行で進む時期である。
前もって必要な作業内容を洗い出しておき、予算や人員措置を講じておかなければならな
い。
② 3つの準備の節目(クリティカルポイント)を明らかにする。
a. セカンドサーキ
セカンドサーキュラーは通常会議開催の1年くらい前に作成し、発送する場合が多い。この
ュラー発送日
なかに、演題募集、参加登録受付、宿泊申込に関する情報を掲載し、申込書類を同封する。
印刷物としてセカンドサーキュラー1冊に、必要情報を整理しまとめる。このタイミングは重
要なポイントである。
アブストラクトの締め切り日は、募集開始からの受付期間、締め切り後の査読とプログラム編
b. ア ブ ス ト ラ ク ト
( 抄 録 ) 提 出 締 成応募者への採否通知など、プログラム全体のタイミングを考えて決める。
応募があった演題数により、だいたいの会議規模も想定できるので重要なポイントとなる。
め切り日
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第1章
組織づくりとスケジュール管理
c. 早 期 登 録 締 め
切り日
登録の早期締め切り日は、応募した論文が採択された方々にとって、充分余裕をもって登
録申込ができること、また関係の学会や団体などから参加申込みを得やすい日程を考慮して
決める。
この締め切り時点での参加申込人数も、会議の全体規模を予測するうえで重要である。会
議当日の各種製作物の数量は、この人数を基礎にして予測し、決定することが多い。
③ 入金、出金のキャッシュフローの観点からも検討する。
各地の自治体、コンベンションビューローや各種助成財団から補助金・助成金をいただく場合、どの年度の募
集に応募するのか、その締め切りはいつなのかなどを調べておく。
また年度毎の収支決算が必要となる場合がある。参加費収入、寄付金収入などのお金が実際に入りだすタイミ
ングと支出する経費額を検討しておく必要がある。
④ 項目間の相関関係を図示する。
各委員会間をまたがって関連する項目については、お互いの関係がわかるよう図示しておく。とくに、セカンド
サーキュラーを作成する際は、横断的に関係することが多い。
⑤ 会議終了後のスケジュールを含める。
会議終了後も、礼状、報告書、論文集の作成や編集、印刷などの業務がある場合が多いし、会計報告も行わ
なければならない。
通例、会議終了後2~3ヵ月は残務整理などの業務が残る。また、報告書や論文集を作る場合、3、4ヵ月から
半年程度かかることも珍しくはない。会議収支の決算は、これらの制作物作成など、すべての業務の完了をもって
行うこととなる。
6
組織委員会の解散
会議終了後、組織委員会はその役目を終え解散するまでに、いくつか重要な仕事を行わなければならない。主に
は、報告書や論文集の作成・決算と関係者へのあいさつである。
これらの業務をすみやかに終了できるよう、予定をたてて仕事をすすめる。組織委員会は、これらの業務を終了した
時点で役目が終わり解散する。解散について、組織委員会規約に記述してある場合はそれに従う。事務局は、組織委
員会が解散するとともにその役割を終えることになる。
関係者へのあいさつまわりは、組織委員長や事務総長、募金委員長など組織委員会の幹部が行う。報告書や記録
ビデオなどは、礼状と一緒に関係先に送付する。
決算については、「第2章 予算作成と収支管理」を参照いただきたい。寄附金や補助金・助成金をいただいた先に
は、収支決算報告書や事業報告書などを提出し、会議の開催結果を報告する。
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