全文PDF - 感染症学雑誌 ONLINE JOURNAL

19
総
説
分子医真菌学の新展開
― Cryptococcus neoformasns 研究を中心にして―
千葉大学真菌医学研究センター分子機能研究部門機能形態分野
川
本
進
Key words : Cryptococcus neoformans , Candida albicans , Aspergillus fumigatus ,
Pathogenic Fungi, Molecular Medical Mycology
要
旨
2003 年春,「ヒトゲノムの解読完了」が全世界的に宣言されたことに象徴されるように,医学生物学の研
究は「ゲノムプロジェクト」の時代からいわゆる「ポストゲノム」「ポストシークエンス」の時代に入り,
分子レベルの研究はプロテオミクス解析などにその中心が移りつつある.病原性真菌の研究分野においても
「分子医真菌学」の分野が切り開かれつつあり,本稿では,2005 年,全ゲノム解読完了が報告され,また,
筆者がその研究に関わる病原性酵母 Cryptococcus neoformans の研究を中心にしてその新たな時代に急展開し
つつある分子医真菌学の息吹を紹介する.
〔感染症誌
はじめに
80:19∼26,2006〕
代謝産物「メタボローム」
,糖質「グライコーム」な
Watson & Crick の「DNA 二重らせん構造」の発
どの語も生まれ,それらの分野も開拓されつつあり
表からちょうど 50 年目に当たる 2003 年 4 月 14 日,
(Table 1),Genomics,Proteomicsなどの網羅的分
「ヒトゲノムの解読完了」が高らかに宣言され,医学
子情報を予防や治療につなげる医療応用として「オ
生物学研究は「ゲノム解読」の時代から「ポストゲノ
ミックス(Omics)医療」も提唱されはじめている.
ム」「ポストシークエンス」の時代に入った.ヒトを
字数の限られる本稿では,分子医真菌学及びその周
始め,研究対象である各モデル生物で「全ゲノム配列
辺の最近の動きなどを概括的に記述,紹介し,更に詳
の網羅的な解読は完了したが,そのゲノムから発現さ
細を知りたい場合には,各々についての情報ソースと
れる mRNA,タンパク質,またタンパク質間相互の
して,原著論文等を参照していただきたい.また,各
関係はどうなっているのか」を解明することに次の分
病原真菌のうち,筆者がその研究に関わっている
子レベル研究の中心が移りつつある.実際に,「ゲノ
Cryptococcus neoformans を中心とすること,及び,今
ム」「ゲノミクス」という語よりも「プロテオーム」「プ
日の IT 社会の膨大な情報の渦の中で,筆者の「独断
ロテオミクス」という語の方がより頻繁に聞かれる気
と偏見」で特に筆者が興味を持つ事項を選ばせていた
さえするこの頃である.その主役は「タンパク質」で
だく点は御容赦いただきたい.本稿が,分子医真菌学
あり,「タンパク質の構造,機能,相互関係」
の研究,
関連分野について,読者の情報ソースとして役立つこ
例えば,「構造プロテオミクス」としての構造生物学
とがあれば,筆者の望外の喜びである.
や「機能プロテオミクス」としてのタンパク質分子機
ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム解析
能解析などがその中心課題となりつつある.各実験生
真核生物として他の生物種に先駆けてその全ゲノム
物の全ゲノム配列が明らかになり,網羅的な分子的解
解読が完了したのは,出芽酵母 Saccharomyces(S.
)cer-
析,すなわち,ゲノムからの転写産物 mRNA 総体「ト
evisiae についてである.歴史的に見ても,生化学,分
ランスクリプトーム」及び翻訳産物タンパク質総体「プ
子遺伝学など多くの研究分野で,まず最初に本酵母を
ロテオーム」
解析が精力的に進められつつある.一方,
研究対象生物にして新たな事実が発見され,知見が蓄
タンパク質間相互作用などの「インタラクトーム」
,
積され,その後,ヒトをはじめとする哺乳類など他生
別刷請求先:(〒260―8673)千葉市中央区亥鼻1―8―1
千葉大学真菌医学研究センター
川本
平成18年 1 月20日
物を対象とする研究に発展していったのと同様に,真
進
核細胞として,1996 年,まず最初にこの単細胞生物
20
川本
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e1 網羅的,大量包括的な分子情報と研究体系
進
cans , Cr. neoformasns , A. fumigatus など各病原真菌
について活用されつつある.例えば,マクロファージ
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ク リ プ ト ー ム 解 析 が C. albicans 5), Cr. neoformasns 6)
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で相次いで報告されている.一方,病原真菌のプロテ
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に貪食された時の遺伝子発現変化などの比較トランス
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オーム解析も始まっており,今後,大量包括的なタン
パク質解析手法の活用が期待されている.例えば C.
albicans のプロテオーム解析を用いて得られた知見は
すでに数多く報告されており7)8), Cr. neoformasns な
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ど病原真菌の研究も,私達の研究グループはじめ,こ
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れらのゲノムワイドな最先端の分子生物学的手法を駆
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使した,まさに「ポストゲノム」「ポストシークエン
ス」の時代に入りつつある9)∼12).病原真菌についての
について全ゲノム解読が完了した.そして当然ながら
プロテオーム解析が,既に膨大な知見が蓄積している
各研究生物の先頭を切って,このモデル酵母につい
モ デ ル 酵 母 S. cerevisiae の ゲ ノ ム・ト ラ ン ス ク リ プ
て,網羅的なトランスクリプトーム解析,プロテオー
トーム・プロテオームの分子データも参照し,多くの
ム解析,更にはタンパク質・タンパク質(あるいはタ
分子情報の得られる有効な解析手法であることは碓実
ンパク質・DNA)相互作用解析である「インタラク
である.ポストゲノム時代の強力な研究戦略として,
トーム」など,いわゆる,ポストゲノム,ポストシー
プロテオーム解析による網羅的タンパク質研究は病原
ケンスの諸研究も盛んに行われつつある.真核生物の
真 菌 の 分 子 系 統 分 類・臨 床 分 子 診 断,病 原 因 子 の
ゲノム解析については,その後,線虫 Caenorhabditis
探索・同定・解析,更には,生存必須遺伝子の探索・
(C.)elegans,ショウジョウバエ,シロイヌナズナ,
同定,それをターゲットとした活性阻害物質スクリー
ヒ ト,分 裂 酵 母 Schizosaccharomyces(Sch.
)pombe 等
ニング「ゲノム・プロテオーム創薬」への発展も期待
が続いた.そのような背景の元,近年,病原性真菌に
できる.今後,真菌医学にそれら先端手法を積極的に
ついてもそのゲノム解読が精力的に進められ,2004
取り入れ発展させて行くことが更に強く望まれる.
年,病原真菌としては初めて,Candida(C.) albicans
1)
細胞周期制御の解析(Cr. neoformans)
についてその全ゲノム解読完了が報告された.その解
筆者の現在所属する千葉大学真菌医学研究センター
析 に よ る と, C. albicans の ゲ ノ ム で 確 認 さ れ た
分子機能研究部門機能形態分野の前教授,竹尾漢治博
6419 ORFのうち,ヒト,出芽酵母 S. cerevisiae,分裂
士の研究グループ(筆者を含む)は Cr. neoformans の
酵母 Sch. pombe , C. albicans とで比較した場合,4 生
細胞周期制御の特徴をモデル酵母 S. cerevisiae のそれ
物種に共通に見出される ORF は 3027
ORF,他の 3
と比較考察し13), Cr. neoformans には S. cerevisiae のそ
生物種のどれにも見出されず,C. albicans に特異的に
れとは異なった特異な細胞周期制御機構の存在するこ
存在するのは,1426 ORF であるという(Fig. 1)
.ま
と を 見 出 し,そ の 細 胞 周 期 制 御 機 構 の 中 心 分 子
2)
た,2004 年 Candida glabrata , Candida famata(Debar-
Cdc 2814)など関連分子を Cr. neoformans より既に遺伝
2)
,2005 年 Cryptococcus(Cr.)neoforryomyces hansenii)
子クローニングして,現在,引き続きその制御調節機
mans 3),Aspergillus(A.)fumigatus 4)の 各 病 原 真 菌 に
構を分子レベルで解析しつつある.本グループの研究
ついて,相次いで全ゲノム解析の完了が報告された.
から Cr. neoformans の細胞周期制御は,単純な真核生
ここ数年の間に,これらの代表的な病原真菌が相次い
物のモデル S. cerevisiae のそれとは以下のようにその
で「ポストゲノム」「ポストシークエンス」の時代に
様子の異なることが分かっている.すなわち, S. cer-
入りつつあることになり,各真菌のゲノム情報を基盤
evisiae の細胞周期開始の,いわゆる,“スタート”は
とした網羅的なトランスクリプトーム解析,プロテ
強力でいわば細胞周期制御は融通がきかない一方,Cr.
オーム解析などを積極的に活用した分子研究が,それ
neoformans の細胞周期制御は S. cerevisiae のそれとは
らの病原因子の解析や抗真菌剤の開発なども視野に入
異なりフレキシブルである.そして,細胞周期制御の
れて,精力的に進みはじめている.
鍵酵素であるサイクリン依存性キナーゼ CDC 28!
cdc
また,各病原真菌の全ゲノム解読完了を受けて,ゲ
2 ホモログ(または Cdk 1)遺伝子のクローニングを
ノムからの転写産物の網羅的な解析,すなわち,トラ
Cr. neoformans より行い,その性質を詳細に調べた.
ンスクリプトーム解析が,DNA マイクロアレイや
たとえば,サイクリンとの結合部位とされる,いわゆ
DNA チップを用いて精力的に進んでおり, C. albi-
る「PSTAIRE モチーフ」部位は,ほとんどすべての
感染症学雑誌 第80巻 第 1 号
分子医真菌学の新展開
Fi
g.1 Ca
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d
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nsの ORF解析(文献 1より改変.詳
細は本文参照.)
21
に脳髄膜炎を起こして生命を脅かす.本菌には α 交
配型と a 交配型の一倍体細胞が関わる限定された有性
生殖サイクルがあるが,環境内や臨床的に採取された
分離株の大部分は α 型であり a 型はほとんど見出さ
れず,以前から本菌での不思議な現象として知られて
来た24).しかるに今回,α 型株のみで子実体形成を行
う際,複相化や減数分裂といった交配に特徴的な現象
が起こることが報告され,これを説明しうる知見とし
て注目を集めている.
クオラムセンシング機構―cell-to-cell シグナル伝達
機構(C. albicans)
細菌の情報伝達機構として,いわゆる「クオラムセ
ンシング」と呼ばれる機構が見出され,細菌学,感染
症学などの分野で最も注目されているトピックスのひ
とつである25).細菌は環境における自身の密度を適確
生物種の Cdk 1 に共通している保存性の極めて高い
に感知し,その濃度変化に応じて病原因子遺伝子の発
部位であるが,本菌の Cdk 1 で は Alanine が Serine
現を巧妙に制御している.クオラムセンシング機構は
に置き換わっている相同モチーフが見いだされた.こ
菌と菌との情報伝達を介した遺伝子発現制御機構であ
れまでに線虫 C. elegans,細胞性粘菌タマホコリカビ
り,「単細胞生物である細菌がお互いに情報伝達して
Dictyostelium discoideum,
原虫リーシュマニア Leishma-
いる」ことは極めて興味深い現象の発見であった.そ
nia major の相当遺伝子では完全には保存されていな
して,本機構はグラム陽性菌,陰性菌また,球菌,桿
い「PSTAIRE モチーフ」が見出されており(Fig. 2)
,
菌ともに存在し,ある種の菌にしか作用しない autoin-
Cr. neoformans の本遺伝子はその第 4 例ということが
ducer(細菌の産出するホルモン様物質)と多くの菌
でき,本菌の Cdc 28!
cdc 2 分子の特異性を示すと言
に広く作用する autoinducer の存在が明らかになって
うことが出来る.
いる.
ところで,真菌病原因子の多くはタンパク質そのも
クオラムセンシング機構がこれまで最もよく解析さ
の,あるいはタンパク質により合成されたり,またそ
れているのは日和見感染細菌である緑膿菌 Pseudo-
の活性が制御されたりしており,病原性が発揮される
monas aeruginosa についてである.筆者のかつて所属
機構は,遺伝子,タンパク質が主役となって織りなす
した横浜市立大学医学部細菌学教室の奥田研爾教授の
シグナル伝達等の分子機構による.真核細胞の生存に
研究グループは,緑膿菌の病原因子である,
エラスター
必須な,細胞周期制御機構の鍵分子,サイクリン依存
ゼ,アルカリプロテアーゼ等の遺伝子クローニング,
性キナー ゼ Cdc 28!
cdc 2 タ ン パ ク 質 分 子 な ど つ い
機 能 解 析,発 現 制 御 の 研 究 を 精 力 的 に 進 め て 来
て,昆虫細胞・バキュロウイルス発現系15)∼18)などを用
た26)∼28).しかるに,近年,クオラムセンシング機構が
いて S. cerevisiae の本タンパク質分子を大量発現,精
緑膿菌などで見出され,これらの病原性を規定する因
製,結晶化させ構造生物学的手法や酵母 Two-hybrid
子の遺伝子発現制御には本機構が重要な役割を担って
法19)などのタンパク質タンパク質相互作用解析手法な
いることが明らかになっている.そしてそれにとどま
20)
∼22)
.たとえ
らず,驚くべきことに,寄生体としての細菌が宿主と
ば,アミノ酸残基のリン酸化反応により,その立体構
しての生体細胞にも重要なシグナルを送っていること
造と生物機能を変化させる Cdc 28 分子は様々な分
や,細菌のバイオフィルム形成にも関与することな
子,特にサイクリンと結合,解離することにより,そ
ど,病原性との関わりも極めて深いことが言われてい
の基質特異性を変化させて細胞周期を制御しているこ
る.cell-cell interaction,cell-to-cell signaling のひと
となどが詳細に解析されている.今後,Cr. neoformans
つとして脚光を浴びている本機構が,病原性因子の発
どを駆使して詳細な解析が進んでいる
においても Cdc 28 と各サイクリン分子間相互作用の
現制御に関わるだけでなく,バイオフィルム形成との
詳細が明らかにされ,その特徴的な細胞周期制御の分
関連や生体側細胞に作用して炎症,免疫応答にまで関
子機構の解明が期待される.
与している可能性までも指摘され,その分子機構など
ところで,極く最近, Cr. neoformans に見られる同
23)
が近年盛んに研究されている29).
一の交配型同士の有性生殖が明らかとなった .本菌
しかるに最近,驚くべきことに,原核生物である緑
は世界中に分布する病原真菌であり,AIDS 患者など
膿菌など細菌のみならず,真核生物である,病原真菌
平成18年 1 月20日
22
川本
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nsサイクリン依存性キナー
ゼ Cdk1等の「PSTAI
RE」配列(詳細は本文参照)
進
dida tropicalis 等, Candida 属酵母などに炭素源をシグ
ナルとして誘導的に出現,発達する細胞内小器官ペル
オキシゾーム(マイクロボディー)を見い出しその構
造,機能を細胞生物学的,生化学的な研究を精力的に
進めた.また,ペルオキシゾームを世界に先駆けて単
離し,n―アルカン,メタノール代謝系の細胞内局在
性を調べ,ミトコンドリア,細胞質との代謝分担を考
察して,脂肪酸
β 酸化系,グルオキシル酸回路,カ
ルニチン流路系,メタノール酸化系における酵母ペル
オキシゾームの関与を明らかにして来た38)39).
しかるに最近,米国のグループが C. albicans の病原
性にはグルオキシル酸回路が必須であることを報告
し40),更にヨーロッパのグループはマクロファージに
貪食されるなどした C. albicans では,上記の脂肪酸
β 酸化系,グルオキシル酸回路,カルニチン流路系等
C. albicans においても同様な現象が存在することが見
のペルオキシゾーム酵素が顕著に誘導されることを明
出され注目されている.真菌におけるクオラムセンシ
らかにし5)41)42), C. albicans ペルオキシゾームと病原性
ングの研究は,2001 年30)31), C. albicans の培養上清中
との関連が示唆されている.なおヒトには存在しない
にクオラムセンシング分子として
Farnesol が発
グルオキシル酸回路酵素はいずれ C. albicans の新創薬
見,単離,精製され注目され始めた.本菌の病原性の
ターゲットになる可能性も期待されている.なお, C.
一つである酵母形から菌糸形への形質変換が菌密度の
albicans のカタラーゼ遺伝子の解析も進められてお
影響を受けることは古くから知られている現象である
り,その遺伝子の破壊株ではその病原性を失うことよ
が,この現象が Farnesol を介したクオラムセンシン
り,本菌カタラーゼはその病原性に関連するとされ
グ機構によるものと報告された.クオラムセンシング
る43)44).また, Cr. neoformans もグルオキシル酸回路
分子 Farnesol は, C. albicans の菌糸形成を阻害する
やペルオキシゾーム酵素を持ち,本菌の病原性との関
とともに,同菌のバイオフィルム形成をも阻害するこ
連が検討されている6)45).
とが見いだされ, C. albicans に見られる,クオラムセ
一方, A. fumigatus には分生子カタラーゼならびに
ンシング現象の cDNA マイクロアレイでのトランス
菌糸カタラーゼの 2 種類のカタラーゼ遺伝子が存在
クリプトーム解析も始まっており32)33),更に Tyrosol
し,それらの遺伝子解析が進められている46).そして
なども C. albicans のクオラムセンシング分子に加えら
分生子カタラーゼならびに菌糸カタラーゼの欠損変異
れている34).また,本機構を介しての「緑膿菌 P. aerug-
株を作成し,表現型ならびに感染実験における病態に
inosa と C. albicans 」と の「細 菌 と 真 菌 と の 相 互 作
ついて検討した結果,菌糸カタラーゼ欠損株のみに親
用35)」や「真菌と真菌との相互作用36)」も言われ, C.
株と比較して持続した病原性の低下が見られ,本菌の
albicans の分泌する Farnesol は A. nidulans , A. fumi-
菌糸カタラーゼは病原性に関連するとされる.侵襲性
gatus にアポトーシスを誘導するという.また, C. al-
アスペルギルス症の成立に関与する本菌の病原因子と
bicans に特徴的に見られる厚膜胞子形成にも深く関わ
しては,菌に由来する組織障害性因子よりも,菌自体
37)
ると言われはじめている .単純真核生物である真菌
を宿主の感染防御機構から防御,回避する因子が重要
に多細胞生物でのホルモン,サイトカインのような因
な働きを担っている可能性が示唆されている.
子が存在することは驚きであり,今後,他の真菌につ
いてはどうなのか,また,同じ物質が種間を越えてど
こまで効くのか,すなわち,Farnesol による
新しい遺伝子機能阻害法 RNAi
植物で見出されていた「RNA 干渉(RNAi,RNA in-
cell-
terference)」という現象が 1998 年,線虫 C. elegans
cell interaction,cell-to-cell signaling の範囲が C. albi-
においても見出され,2 重鎖 RNA を用いて遺伝子発
cans からどこまで広がるのかなど大変興味深く更な
現を翻訳レベルで抑制する方法が新規の動物遺伝子機
る解明が待たれる.
能阻害法として報告された.RNA 干渉とは,いわば
グリオキシル酸回路,カタラーゼ,ペルオキシゾーム
RNA どうしが邪魔しあって働かなくなる現象であ
と病原性
り,その後,2001 年になって,約 20 塩基程度の短い
筆者がかつて所属した京都大学の福井三郎,田中渥
干渉 RNA(siRNA,small interfring RNA)によって
夫,植田充美らの研究グループ(筆者を含む)は Can-
ヒトなど哺乳類を含めた高等真核生物でも同様な現象
感染症学雑誌 第80巻 第 1 号
分子医真菌学の新展開
23
が起こることが報告され,本法を用いて病気の原因と
では得られなかった貴重な情報が各分野で蓄積されつ
なる遺伝子の機能を封じ込めることができれば,医療
つある.GFP 融合タンパク質などを用いて,生きた
は一変すると言われ,核酸医薬品,RNA 医薬品とし
ままの in vivo 細胞内での挙動を調べられるイメージ
ても各方面から注目,期待されている.しかるに,分
ング技術なども日々進歩しており,生物学の各分野の
裂酵母 Sch. pombe そして,
病原真菌 Cr. neoformans
47)
48)
,
研究に飛躍的な進歩をもたらしつつある.今日,医療
A. fumigatus 49)でもこの新しい遺伝子破壊法 RNAi が
の高度化にともない,真菌症の重要性は増すばかりで
適用できることが報告されており,この RNAi 法を用
ある.近年の生命科学の最先端分野「ゲノム科学」「プ
いた解析も進んでいる.本法を用いた RNA 抗真菌薬
ロテオーム科学」「構造生物学」は,分子生物学,遺
の開発も将来に期待したい.
伝子工学,タンパク質科学等の発展上にあり,これら
尚,筆者の所属する研究室において,Cr. neoformans
50)
の新規の優れた細胞周期同調培養法 ,高効率の遺伝
子破壊法51),安全な電子顕微鏡試料調製法52)なども開
先端技術を活用しつつ,今後,本分野の諸研究課題が
解決に向かうことを期待したい.
尚,2005 年 6 月に米国ボストンで開催され,筆者
発されている.
も参加した「第 6 回クリプトコックス・クリプトコッ
線 虫 C. elegans を 用 い た 新 し い 病 原 性 解 析 モ デ ル
クス症国際会議」(6th
( Cr. neoformans )
Cryptococcus
微生物の病原性解析には従来,マウス,ラットなど
の実験動物が多用されて来た.しかし今日,これら実
International Conference on
and Cryptococcosis)において次回
の同国際会議が長崎大学河野茂教授の主催のもと,
2008 年,長崎で開催されることが決まっている.
験動物の使用については制約がかけられる趨勢にある
謝辞:本稿の執筆の機会をいただきました千葉大学真菌
ことから,代替実験法が望まれているが,真菌類の病
医学研究センター亀井克彦教授に心より厚く御礼申し上げ
原性解析にはまだほとんど試みが無い.線虫は,すで
ます.また,本稿中の筆者の関係する研究に関して,筆者
緑膿菌などの病原性の解析モデルとして有用なことが
の前任者である竹尾漢治 前千葉大学教授ほか多くの共同
示されて来た.しかるに近年, Cr. neoformans の病原
研究者の方々に厚く御礼申し上げます.
性解析モデルとして,線虫 C. elegans の利用が試みら
文
献
れ始めている.餌として大腸菌の代わりに本菌を摂食
1)Jones T, Federspiel NA, Chibana H, Dungan J,
させて線虫の,その後の様子を見るという簡便な方法
Kalman S, Magee BB, et al.:The
diploid
genome sequence of Candida albicans . Proc Natl
Acad Sci USA 2004;101:7329―34.
2)Dujon B, Sherman D, Fischer G, Durrens P,
Casaregola S, Lafontaine I, et al.:Genome evolution in yeasts. Nature 2004;430:35―44.
3)Loftus BJ, Fung E, Roncaglia P, Rowley D,
Amedeo P, Bruno D, et al.:The genome of the
basidiomycetous yeast and human pathogen
Cryptococcus neoformans. Science 2005;307:
1321―4.
4)Nierman WC, Pain A, Anderson MJ, Wortman
JR, Kim HS, Arroyo J, et al.:Genomic sequence
of the pathogenic and allergenic filamentous
fungus Aspergillus fumigatus. Nature 2005;438
:1151―6.
5)Lorenz MC, Bender JA, Fink GR:Transcriptional response of Candida albicans upon internalization by macrophages. Eukaryot Cell
2004;3:1076―87.
6)Fan W, Kraus PR, Boily MJ, Heitman J: Cryptococcus neoformans gene expression during
murine macrophage infection. Eukaryot Cell
2005;4:1420―33.
7)Pitarch A, Sanchez M, Nombela C, Gil C:
Analysis of the Candida albicans proteome. I.
Strategies and applications. J Chromatogr B
Analyt Technol Biomed Life Sci 2003;787:
101―28.
による. C. elegans は酵母 Cr. neoformans を摂食する
ことは知られているが,その他の真菌類の摂食性につ
いては知られていない.そして Cr. neoformans につい
て,線虫を用いたこの病原性解析モデルが本菌の病原
性因子探索などに実際に役立つことが示されている
53)
∼55)
.線虫の利用は,低コスト化,動物虐待の軽減な
どの面では大いに期待され,もしもこの病原性解析モ
デルによって, Cr. neoformans など病原真菌の病原性
が調べることが可能なら,大量のマウス実験が必要で
あった抗真菌薬の開発などもはるかにやりやすくな
り,各方面から期待されている.
ま と め
分子生物学の発達を反映した遺伝子工学の爆発的な
進歩は,科学のさまざまな分野のみならず,社会全体
に大きなインパクトを与えているが,基礎生物医学,
臨床医学においても,その重要性は日々,増大してい
る.そしてこの分野において最新の分子生物学的手法
の導入により,格段の進歩を遂げ,各病原真菌につい
て分子的知見が集積されつつある.本稿では,筆者の
属する研究室がその研究に携わって来た Cryptococcus
neoformans を主にして分子医真菌学の新展開の概括を
紹介した.本稿で扱った,分子医真菌学に於ける種々
の研究手法により筆者らの研究も含めて,従来の手法
平成18年 1 月20日
24
8)Pitarch A,
Sanchez M, Nombela C, Gil C:
Analysis of the Candida albicans proteome. II.
Protein information technology on the Net(update 2002). J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 2003;787:129―48.
9)Steen BR, Lian T, Zuyderduyn S, MacDonald
WK, Marra M, Jones SJM, et al.:Temperatureregulated transcription in the pathogenic fungus Cryptococcus neoformans . Genome Res
2002;12:1386―400.
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川本
進
Current Topics in Molecular Medical Mycology
New-Stream Cryptococcus neoformans and Other Pathogenic Fungi Studies
Susumu KAWAMOTO
Division of Ultrastructure and Function, Department of Molecular Function, Research Center for Pathogenic Fungi
and Microbial Toxicoses, Chiba University
Model yeast Saccharomyces cerevisiae and human genome projects have been completed and proteomics
is a major focus in postgenomic and postsequence research in biology and medicine. In 2004, the genome
project on pathogenic yeast Candida albicans was completed, as was the Cryptococcus neoformans genome in
2005. The Aspergillus fumigatus genome project is currently under way. To use molecular data, such as phylogenic analysis, pathogenic factor analysis, and proteomics-based drug discovery!
development, proteome
analysis of pathogenic fungi has been conducted globally. I summarize up-to-date information on new-stream
Cryptococcus neoformans and other pathogenic fungi studies based on molecular medical mycology.
感染症学雑誌 第80巻 第 1 号