日本ベル投資研究所 IRアナリストレポート 2014年2月期

(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
6312 フロイント産業
~医薬品製剤用の造粒・コーティング機械で、世界の最先端を走る~
2013 年 8 月 2 日
ジャスダック
ポイント
・新製品の開発に一段と力が入っている。7 月に 50 周年記念モデル製品の 1 つが発表さ
れた。直打用賦形剤(医薬品添加剤)で、健康食品用サプリメントに有用である。また、
新たに製品ラインアップに加わった錠剤印刷装置(TABREX)は、世界でもユニークな方式
で素の錠剤にそのまま印刷できるので、何の薬かが識別でき、誤飲防止に結び付く。
・中期 3 カ年計画の 3 年目に当たる今 2014 年 2 月期は、目標の営業利益 20 億円がほぼ
射程に入り、引き続きピーク利益を更新しよう。機械部門で医薬品製剤用の新製品ハイ
コーターFZ が、その生産性の圧倒的高さが評価され好調である。海外での市場開拓も進
んでいる。化成品部門では、健康食品の大型受託の第 2 弾も大きく伸長しよう。DDS(ド
ラッグデリバリーシステム)タイプの当社の製剤技術が高く評価されていることによる。
・当社は、製剤技術をキーテクノロジーに薬の錠剤・顆粒剤を作る時の製剤機械とその
添加剤である化成品の両方を手掛けるユニークな企業である。技術開発に優れ、錠剤を
作る造粒・コーティング装置では、国内で 70%近いシェアを有し、グローバルにみても
欧州のグラット社、ゲア社と並んで世界 3 強の地位にある。
・2012 年度の海外の売上比率は 22%であった。米国のフロイント‐ベクター社は欧州、
南米、中近東もテリトリーとしており、現地にあった製品づくりで、日本のフロイント
産業とうまく分業している。アジア展開は日本の本社からマーケティングしながらも、
米国子会社との連携を活かし、成果を上げてこよう。インドでの販売代理店の見直しも
注目される。アイルランドのフロイントファーマテック社は、製剤技術の開発でまだ先
行投資期にあるが、順調に前進しており、将来のロイヤリティ収入が期待できそうだ。
・2014 年 2 月期(創業 50 周年)を最終年度とする中期 3 カ年計画「ビジョン 50」では、
世界トップクラスの製剤機械、添加剤メーカーへ飛躍するための基盤強化に力を入れて
いる。次の 3 カ年計画の策定では、海外市場をどこまで拡大できるかにかかっている。
独創的な製剤技術を活かした研究開発型企業として、売上高営業利益率の次の目標は 15%
を目指すことになろう。そうなれば当社の企業価値は ROE の向上とともに、株式市場で
さらに見直されていこう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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目
次
1.特色
医薬品用製剤機械の独自開発で発展
2.強み
日本では圧倒的 No.1、世界でも 3 強の 1 社
3.中期経営方針
4.当面の業績
5.企業評価
第 5 次中期計画「ビジョン 50」はほぼ達成へ
最高益の更新が続き、利益率も向上
次期中期計画では、海外市場の拡大と利益率の向上が鍵
企業レーティング B
株価(13 年 8 月 1 日) 1674 円
PBR
1.50 倍
時価総額 154 億円 (9.2 百万株)
ROE 11.1%
PER
13.5 倍
配当利回り 1.5%
(百万円、円)
決算期
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
2006.2
11368
583
662
308
33.3
10.0
2007.2
11539
615
640
403
46.7
10.0
2008.2
13104
931
1021
943
109.4
15.0
2009.2
13478
958
1056
619
71.8
15.0
2010.2
12943
970
951
563
65.4
15.0
2011.2
13257
680
698
516
60.0
15.0
2012.2
15236
1065
1123
608
70.6
15.0
2013.2
16396
1470
1618
765
88.8
20.0
2014.2(予)
19200
1950
2000
1070
124.1
25.0
2015.2(予)
20700
2200
2250
1200
139.2
25.0
(13.5 ベース)
総資産 15199 百万円
BPS
純資産 9602 百万円
自己資本比率 62.3%
1113.7 円
(注)ROE、PER、配当利回りは 2013.2 期予想ベース。
2009 年 6 月に 1:2 の株式分割を実施。それ以前の EPS、配当は修正ベース。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の
可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要す
る、D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
医薬品用製剤機械の独自開発で発展
医薬品用製剤機械と添加剤が主力
当社は機械と化成品を手掛けている。機械とは製剤機械で、薬の主成分に補助剤(添加剤)
を加えて、錠剤の飲みやすさなど製剤機能を作り出すための装置である。液状のドリンク
剤ではなく、経口固形剤を作る。世の中の薬のうち、半分は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、
散剤などの固形剤タイプである。
医薬品メーカーや食品メーカーが自分で薬を製造している場合もあれば、それらの製造
を外部に委託して(アウトソーシング)している場合もある。いずれの場合でも、当社の
製剤機械が使われている可能性が高い。
機械事業には、フロイント産業本体のほかに、フロイント-ベクター社(米国)、フロイン
ト・ターボ社が関わる。フロイント-ベクター社は、北米、中南米、欧州などをカバーする。
フロイント・ターボ社は 3 年前に買収し、化粧品やトナー用など、医薬品以外の産業機械
分野を手掛けている。機械部門では、コーティング用で国内シェア 70%を有し、世界でも 3
強の地位にいる。
化成品では、添加剤、品質保持剤、栄養補助食品を手掛けている。添加剤は薬の錠剤や
粉末において、その薬の主成分(1~3%)に添加する無害の副材料で、乳糖、でんぷんな
ど、糖類から作られる。食品品質保持剤では、半生菓子(バウムクーヘン)などによく使
われるエタノールの蒸散剤で、細菌の発生を遮って、防腐化する。
フロイント産業の事業内容
(%)
特 色
売 上 営業利益
構成比 構成比
機械部門
60.5
65.9
医薬品関連
83
医薬品、食品、ファインケミカル用
産業関連
17
造粒、コーティング装置の製造販売。
小計
100
コーティング装置の国内シェア70%、世界第3位
化成品部門
39.5
34.1
医薬品添加剤
32
医薬品添加剤、食品品質保持剤、
食品品質保持剤
29
栄養補助食品の製造販売。
健康食品他
39
GMP(薬事法などに基づく医薬品の製造品質
小計
100
管理基準)対応の設備で生産。
2013.2期
品質保持剤、栄養補助食品分野にも展開
この製剤機械は食品分野にも使われている。健康食品は大きな発展をみせており、新し
いビジネスモデルもできつつある。例えば食品メーカーや生活用品メーカーなどは通販(通
信販売)に限って健康食品を展開しており、こうした健康食品、サプリメントのタブレッ
トを作るに当っても、当社の機械装置が使われている他、最近では製剤技術も活かされて
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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る。
薬品とサプリメントの違いは、医薬品とされる主成分の含有にある。主成分の違いのほ
かは、構造的に類似するものである。
加えて、当社は食品の品質保持剤も作っている。例えば、バウムクーヘン、カステラな
ど半生菓子の鮮度を保つためのものである。腐るというのは、酸化することである。酸化
を防ぐには、酸素に触れないようにすればよい。防腐には 2 つの方式があって、1 つが脱酸
素剤を使う方法で、もう1つがアルコール(エタノール)蒸散剤を使う方法である。脱酸
素剤を使うと、スポンジケーキがパサパサになるという食感への影響がある。このような
場合は、シリカにアルコールを染み込ませておき、それを袋に入れておくアルコール蒸散
剤の方がよい。これで真菌(カビ)の発生を防ぐ。当社はこのアルコール蒸散剤を手掛け
ている。当社がパイオニアで、1977~78 年に開発したものである。フロイント化成は化成
品事業に属し、品質保持剤を生産している。
フロイント産業の主要製品
機械事業
化成品事業
・コーティング装置
ハイコーターモデルFZ
(全自動糖衣フィルム
コーティング装置)
・医薬品添加剤
直打用マンニトール・乳糖、
球形顆粒、
吸着剤、固形化剤、流動化剤
・シームレスミニカプセル
スフェレックス
・食品品質保持剤
食品添加剤
食品品質保持剤
・造粒装置
フローコーター
(流動層造粒
コーティング装置)
・栄養補助食品
シームレスミニカプセル
DDS対応
AQシェラック、サプリメント、
コエンザイムQ10、ラクトフェリン
ビフィズス菌
(注)DDS:ドラッグデリバリーシステム
浜松の技術開発研究所で独自開発
当社の核は浜松にある「技術開発研究所」である。経営理念は、
“創造力で未来を拓く”
であるが、
独創的な開発の源がここにある。
この研究所では 30 数名が研究に従事している。
製剤機械、添加剤、品質保持剤の 3 つの分野を手掛けている。
製剤機械では粉体、造粒・コーティング加工技術をベースに、医薬品はもちろんそれ以
外の業種でも使える R&D(研究開発)を行っている。添加剤では、国内医薬品向けではなく、
グローバルに対応する独自の R&D も展開している。健康食品向けも重視している。
品質保持剤では、新しいアルコール蒸散剤を開発している。単純にいえば、酸素(O2)
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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を吸って、アルコールを出してくれれば、品質保持力は大幅にアップする、というタイプ
である。
浜松の技術開発研究所は通常の R&D センターというだけではない。すでに知的財産権(特
許・商標)は 300 件以上有しているが、実際に開発した設備、機械が置いてあるので、顧
客はここにきて試作品の作成やテストを製造前に試すことができる。新しい薬や食品関連
において、機械の使い方、応用のノウハウも習得することができる。当社としては、こう
した施策を通して、マーケティングとともに、次への改良へも結び付けることができる。
伏島会長が創業し、2 代目にバトンタッチ
当社は 1964 年、現会長の伏島靖豊氏が創業した。伏島会長が起業した時の経緯が興味深
い。父の会社は工業用ゴム製品の加工品を手掛けていた。自身は早大の商学部に入って、
証券の勉強をして株を買ったこともあった。その頃に医薬品業界は利益率が高いという印
象を受けた。
仲間が商社などに就職する中で、自分は家業を継ぐことにしたが、ゴムとは違う分野に
展開できないかと考えた。早大商学部を卒業後、父のゴム加工品会社に身をおきながら、
起業を考えていた。高校の同級生が大手製薬会社で働いており、彼のところに行ってみる
と、薬をピンセットとスプレーで作っていた。これをもっと自動化したらよいのではない
かと発想し、1963 年の暮れに 1 号機を開発した。原理は錠剤にスプレーガンで液体を噴き
かけ、それをドライヤーで乾燥させるというものである。
機械にはもともと興味があったので、知り合いの鉄工所で作ってもらった。フィルムコ
ーティング剤は信越化学から購入した。それをその友人に見せたら、かなりの出来である
と評価された。翌年の 1964 年(昭和 39 年)に、伏島氏と友人の本山示氏(元大手製薬会
社、後に当社専務取締役)の 2 人で、フロイント(ドイツ語で「友だち」)産業を創業した。
伏島氏は 25 歳で試作機を作り、26 歳で創業したのである。この 1 号機、2 号機がとんと
ん拍子で売れたので、事業の立ち上げは順調であった。フィルムコーティングマシン FM2
型(二人の頭文字をとって、F、M とした)は製薬会社に売れた。安すぎると言われたので、
価格を 2 倍にしたら、それでも売れたと伏島会長は言う。その時までに自動フィルムコー
ティング機械を開発し、同時にコーティング液も始めた。1 号機が売れたので、会社は初年
度から黒字になった。以来、機械と化成品の 2 本柱経営を続けてきた。
当時伯父がコピアの社長であった。彼から複写機のビジネスのコツである湿式コピアマ
シーンに付随する消耗品で稼ぐという点を示唆され、コーティング用のフィルム液も自社
で手掛けることにした。当時、この有機溶媒は色がポイントで、他社にまねできない被膜
技術とともに販売は拡大し、稼ぎ頭となった。
当社のスタートは錠剤のコーティングにあった。液体に可塑剤を処方して膜がやわらか
くなるようにした。この液体と機械で特許をとり、製剤機械は米国でも特許をとった。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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伏島会長は創業者であり、堀前社長は会長夫人の弟である。そして、2012 年 3 月から会
長の長男が社長に就任した。
伏島巖社長は 1969 年生まれで、現在 43 歳。米国の芸術大学(Coe College)で音楽を学び、
若い時から海外経験を積んできた。97 年、28 歳の時に当社に入社した。海外など国際部門
の業務が長かったが、直近までは機械事業本部の経営責任者(本部長)をしていた。現在は、
社長兼化成品本部長である。
フロイント産業の主要グループ会社
(国内)
フロイント産業
(海外)
(機械部門)
(機械部門)
フロイント・ターボ
フロイント‐ベクター
産業用粉粒体機械
Freuind-Vector Corp.
医薬品用造粒・コーティング装置
(化成品部門)
(化成品部門)
フロイントファーマテック
Freund Pharmatec LTD.
微小粒をキーテクノロジーとした新製剤開発
フロイント化成
食品品質保持剤
米国フロイン-トベクター社がもう1つの軸
現在グループの社員は 340 人程度である。このうち親会社に 170 人、米国の子会社フロ
イント- ベクターに 110 人、あとはフロイント化成、フロイント・ターボに半々といった
構成である。
1966 年に米国に代理店を作った。翌年には機械を携えて大手製薬企業にキャラバンをし
た。自動コーティング機械は好評であった。
機械の革新は続き、有機溶媒に代わって水が使えるようになり、しかも乾燥スピードが 3
倍になるような新型機械を開発した。このハイコーターのパテント(特許)は申請済みだ
ったので、ライセンス契約をした。1979 年に米国のベクター社と提携し、その後子会社化
した。ベクター社はアイオア州シーダーラビッツに本拠地があり、造粒、コーティングの
機械を製造販売している。北米、南米、欧州、中近東をテリトリーとしている。当社とフ
ロイント‐ベクターとの間に製品の直接的取引はないので、互いにかなり独立していた。
このベクター社を 97 年に子会社化した。
ベクターの大株主は伏島会長をよく知っており、
信頼できる経営者として、株を譲渡してくれた。ベクター社は、アイオアの田舎にある。
ここで、当社のライセンスを活かしながら、米国に合った機械に仕上げて業績をあげてき
た。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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フロイント産業の地域別売上高
2013.2期
日本
売上高
(構成比)
12800
78.1
北米
948
5.8
欧州
アジア・南米等
772
4.7
(百万円、%)
合計
(海外)
1875
11.4
15236 [3596]
100.0 [21.9]
国状の違いに合わせて、機械の強度を上げる、オペレーション(機械操作)を両持ちから
片持ちにする、ドキュメントを作るなど、米国のビジネス慣行に合わせた。さらに米国は
もちろん、ここから欧州や南米にもインターナショナルビジネスを広げていった。
2012 年 1 月には、ベクター社の社名に、フロイントを付け、フロイント‐ベクター社と
した。経営の自立性は認めていたが、グローバル展開に当って、もっと本社との連携を深
めた方がよいと判断し、社名変更をシンボルとした。
伏島会長がフロイント‐ベクター社の CEO であり、今期から前スティーブ・ジェンセン
COO に代わって、技術担当である久保田雅明が COO を務めている。日本からは、財務担当、
技術担当のトップが出向き連携を強めている。
現在、ベクター社の株式について 90.2%はフロイント産業が持ち、9.8%を同社創業者が
持っている。フロイント・インターナショナル(FIL)は、ベクターを買収する時に作った
中間持株会社である。子会社化した時点でもフロイント‐ベクターの業績は順調であり、
経営に問題があったわけではない。
グループ企業の業績
売上高
(百万円、%)
営業利益
同率
フロイント産業(単体)
2011.2
2012.2
2013.2
10669
12248
13506
495
839
1350
4.9
6.8
10.0
フロイント‐ベクター
2011.2
2012.2
2013.2
2757
2812
2943
112
277
147
4.0
9.9
5.0
フロイント化成
2011.2
2012.2
2013.2
1395
1336
1295
21
4
-11
1.5
0.3
-0.8
フロイント・ターボ
2011.2
2012.2
2013.2
561
930
1022
63
15
81
11.2
1.6
7.9
フロイントファーマテック
2011.2
0
2012.2
0
2013.2
0
(注)フロイント・ターボは2010年6月にM&A
-67 ー
-131 ー
-134 ー
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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グループ力の強化
1980 年に大川原製作所と業務提携した。大川原製作所は、機械の製造を担当しているア
ウトソーシング先の 1 つである。かつてはかなりのウエイトを占めていたが、現在はアウ
トソーシング先を 6 社に分散している。その中でもシェアの高い提携先である。
フロイント化成は品質保持剤を生産し、販売は親会社を通している。1977~78 年頃に、
アルコール錠剤系の品質保持剤に参入した。
機械では、3 年前にターボ工業を 4.0 億円で買収した。ここは粉体機械のメーカーで、特
許も有する。このフロイント・ターボは、同社の創業者の後継者問題もあり、当社と連携
することにした。年商 9 億円程度であったが、機械部門に入った。粉体を作る装置メーカ
ーであるが、当社とは分野が異なり、工業用の粉体や食品用、特に硬質系の紛体装置を得
意とする。
なお、大阪事業所は機械と化成品の販売を担当しており、名古屋営業所は品質保持剤の
販売を担当している。
2.強み
日本では圧倒的 No.1、世界でも 3 強の 1 社
製剤機械と化成品を両輪とするのは世界でもユニーク
当社の機械と化成品は、ペンとインクのようにお互いに補完的である。製剤機械に、化
成品としての賦形剤を入れて、薬や食品としての固形剤が出来上がる。この分野で、両方
を手掛けている会社は世界にない。
薬の中の錠剤に関する生産プロセスをみると、混合機→造粒機→乾燥機→打錠機→コー
ティング機、という流れである。この中で、当社は造粒機、乾燥機、コーティング機を手
掛けている。
これらの機械はかなりニッチな分野であり、その中で当社は知的財産権を 300 件ほど所
有している。大手製薬企業の製薬プロセスのスペック(仕様)も熟知している。したがって、
こうした分野に大手の機械メーカーは中々入ってこない。
世界の機械メーカーの中で、同業他社という点では、グローバルに見てドイツの GLATT
(未上場)
、デンマークの GEA(未上場)
、当社が 3 強というところである。ドイツの製剤企
業は合従連衡が進んで大分集約され、マネシティ、ローラン、ヒュッテリンがこれに続く。
添加剤では、旭化成、信越化学、日本ソーダ、BASF などがある。ゲア(GEA)社は打錠機
も生産しているが、当社は手掛けておらず、日本では菊水製作所、畑鉄工所など、別の企
業が専門に作っている。
日本では当社がトップで、パウレック(未上場)が第 2 位である。パウレックはグラッ
ト(GLATT)と技術提携している。日本でのシェアは当社が 3 分の 2 以上、パウレックが 3 分
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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(株)日本ベル投資研究所
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の 1 というレベルである。
北米ではフロイント‐ベクター社が業界 3 位という地位にあり、
今後のグローバル展開にはフロイント‐ベクターが鍵を握ることになる。
化成品では、医薬品への添加剤という点で、信越化学がトップ、2 位が旭化成、3 位が三
和化学工業で、当社は 4 位につけている。
フロイント産業の主要拠点
☆フロイント産業 技術開発研究所
・研究開発型企業として、最先端の製品開発に注力
・顧客に試作、アプリケーションテストを提供
・内外で300件以上のパテント(知的財産)を所有
☆フロイントファーマテック
・球形状顆粒(表面積が少なく、膜厚制御が容易)と
シームレスミニカプセルの独自技術を応用して、欧州で
DDS(ドラッグデリバリーシステム)製剤技術を開発中
・2011年7月にGMPの承認を取得
☆フロイント‐ベクター
・フロイント産業本体の開発力に、米国の設計力、製造力を
融合して、現地適応型の新製品を開発
☆フロイント・ターボ
・フロイント産業本体の造粒、コーティング技術と、旧ターボ
社の粉砕・分級技術を相互補完して、新しい粉体加工
技術へ展開
専門分野で世界と戦う
当社は、日本、米国、アイルランドに拠点を持ち、世界で戦っている。日本での競合相
手であるパウレックはグラット社と提携し、輸入代理店であると同時にメーカーとして、
自社の生産機能をもっている。粉体関係の機械メーカーでは、ホソカワミクロンやダルト
ンなどがあるが、いずれも医薬品分野は手掛けておらず、むしろ当社が一部ユーザーとな
っている。
造粒、コーティングでは当社が圧倒的に強い。パウレック(グラット)やゲア(日本拠
点)は、国内でのメンテナンス、サービス体制という点で、当社には追い付けない、24~
48 時間以内にサービスするという体制は十分とれないからである。
一方、欧州にいくと、グラット、ゲアは手強い。当社のアイルランドは研究開発型の拠
点で、機械販売のビジネスは米国のフロイント‐ベクター社から攻めている。
米国の子会社フロイント‐ベクター社は、リーマンショック後北米ビジネスは落ち込ん
だが、ここにきて回復してきている。ブラジルなど南米が市場として伸びているので、米
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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国からブラジルも攻めている。
なお、かつてフロイント‐ベクター社は米国に VPS(ベクター・ファーマシューティカル・
サービス)という治験の受託を行う会社をもっていた。しかし、分野が異なるので、2007
年にこの会社を日本の CRO のトップであるシミックに売却した。それがシミック CRO USA
となっている。
先端の製剤技術開発で先行 ~ 微粒子コーティングとコンテイメント
コーティング剤は最初の開発から、5~6 世代目になっているが、それぞれの世代で基本
特許を持っている。コーティングの品質の良さは乾燥能力にかかっている。表面をきれい
にみせるには、エタノール系の有機溶媒を使う方が水より蒸発しやすいので効果的である。
しかし、コストと環境への影響から水溶剤に変わり、水に溶けやすい溶剤である水性シェ
ラックとして用途が広がった。
今主流なのは、微粒子コーティングである。100 ミクロン(0.1 ㎜)の粒子にコーティン
グをすると、口の中で水なしで溶けても苦味が出ずに飲み込むことができる。300 ミクロン
以上になるとザラザラ感が残る。微粒子コーティングはコストが高くなるので、普及には
時間がかかるとみられるが、有望な技術である。
さらにこれから大事になるのは、薬のコンテイメント(封込め、containment)である。
薬は薬理活性が強いので、作業する人の安全を守る必要がある。薬剤が大気中に出ないよ
うに封じ込めるのである。まだスタートしたばかりであるが、まずは臨床試験用の薬を作
る設備に入っていこう。ここで危ないものは、生産設備の段階でもコンテイメントされる
ことになろう。コンテイメントは、①初期の実験レベル、②臨床レベル、③生産レベルで、
それぞれ重要になってくる。
米国とアイルランドをベースにグローバル展開
伏島会長は、もう 1 つの夢を実現すべく手を打った。2010 年に設立したアイルランドの
フロイントファーマテック社である。欧州で製剤技術をロイヤリティビジネスとして展開
する。現在日本人 3 人、現地採用 10 数人の規模である。
フロントファーマテック社は、シームレスミニカプセルを軸に、微小粒をキーテクノロ
ジーとした新製剤の開発をしている。基本技術は日本から移転し、それを昇華した新製剤
技術を開発中である。ライセンスで稼ぐこと、機械を販売することもあるが、会長の夢は
欧州の製薬企業から薬を作ってくれという要請がくることである。錠剤成分の 95%以上は添
加剤で、本当の薬の部分は 10mg と極めて少ないものである。製薬分野における縁の下の力
持ちとして、製剤ノウハウビジネスそのものに入ることを狙っている。
当社の機械売上げの 30%が米国フロイント‐ベクター社のものである。基本設計は統一し
ているが、欧米向けのスペック(仕様)で現地生産している。錠剤においては、キズやバ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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リの定義も違う。日本のユーザーは薬に対してもきめ細やかさを要求するが、海外ではさ
ほどでもない。また、日本では工事付きで機械の受注を受けるが、米国では工事なしとい
うのが普通である。フロイント‐ベクター社は欧米で競合 10 社と戦っている。
製剤技術で世界トップクラス
浜松の化成品本部の工場では、球状顆粒を作っている。丸くするのは当社のコア技術で
ある。球形にするのは、徐放性(徐々に溶けて、効果を長持ちさせる)を保つように工夫
するのに役立つ。
医薬品の添加剤は、砂糖を主原料として、これに薬物を被覆し、その上に皮膜を作る。
核はグラニュー糖で正八面体である。雪だるま式に丸く大きくしていく。
球状顆粒の大きさは、710~850 ミクロン(マイクロメートル)、500~710、355~500、200、
100 といろいろある。300 ミクロン以下になると、水なしでザラザラ感もなく服用できる。
これとは別に、乳糖に結晶セルロースを加えて使う方法もある。乳糖は槍の形をしてお
り、カロリーが低く価格も安い。核がないから薬が絡み易く、形も小さくできる。当社が
研究して先行的に実用化した。
乳糖は今、最も使われている。世界では、DFE フォンテラエクスペアレンスが医薬品用乳
糖のトップ企業で、当社もそこから輸入している。
高齢化が進むと、錠剤のニーズが増えてくる。しかも微小径にする方が飲み易くなり、
薬効が長持ちする徐放性も求められる。これに合った製剤作りが、ますます必要になって
くる。本来でいえば、核はいらない。いかに上手く丸くできるかがポイントである。この
丸くする技術は、実は職人技であって、当社はこの分野で世界トップクラスである。
乳糖にセルロースを入れるのは、セルロースが糊の役割を果たしている。この糊がなく
て、乳糖 100%でも造剤ができる技術ももっており、その受注も受けている。糊と反応しな
いように薬物を使用することもあるからだ。
3.中期経営計画
第 5 次中期計画「ビジョン 50」はほぼ達成へ
今期は創業 50 周年
ビジョン 50(VISION 50)は、2014 年 4 月に創業 50 周年を迎えるので、それに向けた第 5
次中期 3 カ年計画(2012.2~2014.2)である。
医薬品において、カプセルや錠剤が伸びていく。ジェネリックが成長しており、国内に
おいても海外においてもチャンスが広がっている。2014 年 2 月期には売上高 200 億円、営
業利益 20 億円を目指している。1 年目は売上高 152 億円、営業利益 10.6 億円、2 年目は売
上高 164 億円、営業利益 14.7 億円と好調であった。3 年目である今期に売上高 200 億円、
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営業利益 20 億円まで伸ばせるかどうか。かなりストレッチする必要はあったが、営業利益
20 億円の達成はほぼ見えつつある。
機械部門で、ジェネリック向けが伸びている。また、コンテイメント(封じ込め)の機
械も新薬メーカーに伸びている。これは、毒性の高い新薬が製造プロセスにおいて外部に
もれないように厳密に封じ込めておき、作業する人々を守ることのできる機械装置である。
フロイント・ターボ社の乾式造粒機も市場を広げている。
新製品の開発にも力を入れている。フロイント‐ベクター社のグローバル化を加速する。
フロイント・ターボ社は粉砕技術に独自のものを持つので、今後フロイント本体とのシナ
ジーを一層追求していく。また、フロイント・ターボ社の製品をこれまでは国内だけの取
り扱いであったが、フロイント‐ベクター社と連携して、欧米展開を図る。
化成品部門では、アジア市場の開拓に力を入れている。日本の医薬品メーカーの海外展
開に加え、海外の医薬品メーカーが日本への輸出を拡大しようと動いている。日本の市場
に入るには、日本のユーザーに合った薬に仕上げる必要があり、当社の機械、化成品も必
要になってくる。
3 つの重点課題 ~ これから登場する 50 周年記念モデル製品に期待
今期の重点課題は 3 つある。第 1 はグローバル展開である。米国のフロイント‐ベクタ
ー社は南米に展開して実績を上げているが、今期は欧州の市場開拓に一段と力を入れる。
そのためにミラノにラボを設置した。また、フロイント・ターボ社のケミカル装置も導入
して、米国市場での新規開拓に取り組む。
第 2 は、ファインケミカル機械の市場開拓である。フロイント・ターボ社はファインケ
ミカル製品が得意である。化粧品、トナー、リチウムイオン電池関連の原料に使われる。
分級器はふるい、造粒機は粉を固める、混式粉砕機はミクロン単位へ細かくし、乾式粉砕
機は粉インクを作ったりする。ミクロンからナノへの粉粒加工である。その中で、米国の
フロイント・ベクター社は、ターボスクリーナー(分級器)の販売をスタートさせる。
第 3 は、新製品の開発である。創業 50 周年を迎えるが、50 周年記念モデルを出すべく力
を入れている。1 つの例として、新規の DDS システムが注目できる。これはビフィズス菌を
1つのカプセルに閉じ込め、腸まで届けるという仕組みである。ビフィズス菌は一般に胃・
小腸などの消化管に弱く、胃で死滅しまっては意味がない。大腸まで届いて溶けるカプセ
ルを作ることが、製剤技術で実現した。50 周年へ向けて、このような新しい剤型に対応す
る装置、新興国向け装置の開発が浜松で進んでいる。
売上高営業利益率 10%が目標
現在は第 5 次の中期計画が走っている。2014 年 2 月期で売上高 200 億円、営業利益 20 億
円、売上高営業利益 10%を目指している。2014 年 2 月期は当社の創業 50 周年に当たる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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そこで、中期計画を「ビジョン 50」と名付けている。
売上高 200 億円の時点の機械と化成品の売上高は 3:2 くらいの割合で、機械部門の売上
高 120 億円、営業利益 14 億円(全社的管理経費控除後ベース)、化成品部門の売上高 80 億
円、営業利益 6 億円程度が 1 つの目途となろう。営業利益が 20 億円になると、ROE で 12%
程度を達成できるので、投資家にとっての魅力も大きく高まってくる。
中期経営計画 VISION-50 ・2014年2月期(創業50周年)に、売上高200億円、営業利益20億円を達成
・世界市場でリーディング製剤機械・添加剤メーカーへ飛躍するために、
①既存事業の拡大、②新規事業への参入、③グローバル戦略を強化する
・機械部門で既に実施した施策
ジェネリック(後発医薬品)メーカーとの関係強化
コンテイメント(封込め)需要への提案
新製品オプティミル(低-中粘度湿式粉砕機)の投入
・化成品部門で既に実施した施策
フロイントファーマのGMP承認取得
新製品が好調
製剤コーティング機械のハイコーターモデル FZ(全自動糖衣フィルムコーティング装置)
が、新製品として好調である。売上高の 2 割程度を占めるようになった。
製薬企業は一度機械が入ると、同じものを使おうとする傾向がある。使い慣れたものを
好むからだ。その意味で、1 号機を販売することがとりわけ重要である。上場上位 3 社をは
じめとする大手のジェネリックメーカーの投資が活発であるが、ここでも当社は納入実績
を上げている。
また、品質保持剤の新しい用途開発も期待できる。和菓子に使える保持剤を発売した。3
年後に年商 5 億円を狙っている。
グローバルな市場開拓
グローバルな市場開拓という点では、世界的にジェネリックが伸びていく。発展途上国
においても、当社のハイエンドの製剤機械に対する需要は増えてくる。日本には製薬関連
企業が 2000 社ほどあるが、中国には 5000 社(うち 200 社が上場企業)、インドには 2 万社
(うち 100 社が FDA 対象)の関連企業がある。清潔で精度の高い工場を作ろうとすると、
当社の出番が増えてくる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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アジア市場の広がり
アジアでは韓国、中国、インド、台湾が主力であるが、トルコ、インドネシアも市場に
なってきた。営業は日本から展開しているが、製品は日本製もあれば、米国フロイント‐
ベクター社製もあるという状況で、ニーズに合わせている。例えば、製剤機械はステンレ
ス製であるが、日本規格の SUS304 がよいという顧客もいれば、米国の 316 規格がよいとい
う場合もある。アジアでは米国規格に合ったものがほしいという場合も多いので、米国フ
ロイント‐ベクター社を活かして、アジア市場を攻めようというのは、当社の大きな強み
となっている。
添加剤のアジア展開については、韓国、中国、インドで力を入れていく。ケミカルに強
い企業と組んで、特殊なもので攻めていく方針だ。
インドについては、日本の製品そのままではなく、現地のニーズに合ったもう少し安い
製品も工夫していく。すでに開発済みの旧モデルをベースにその機能を利用して低価格製
品を作るという方法もあろう。
インドは代理店の変更を行っていたこともあって、前期のビジネスは低調であった。今
期以降、有力の代理店が軌道に乗ってくれれば拡大の余地は広がろう。
研究開発型のファブレスを志向
薬の錠剤作りにおいて、それを作る機械と薬の添加剤の双方を手掛けている。世界でも
ペン(機械)とインク(添加剤)の両方をビジネスにしているのは当社だけである。それ
ぞれのノウハウをうまく活かせるので、それが強みである。顧客も当社の研究所にきて直
接テストを行うほどである。製剤の最適化が的確にできるのである。
当社は、工場を持たないファブレスを指向しているので、基本的に大型の設備投資はい
らない。コアの生産設備は自前でしっかり保有するが、機械も化成品も協力工場にアウト
ソーシング(外注)しているものが多い。
シームレスミニカプセルが立ち上がる
当社が世界で最先端を走るシームレスミニカプセル製造装置(商品名スフェレックス)が
ビジネスになってきた。この装置は、当社でのみ生産している。欧州のフロイントファー
マテックが現地で、この装置の主用途である「微小粒をキーテクノロジーにした新製剤の
開発」の事業化を目論んでいる。スフェレックスは液剤をカプセル化するもので、従来注
射等で処方されていた薬剤の経口剤化を目指すものである。
欧州のフロイントファーマテックは、まだ年間 1 億円強の赤字であるが、順調な進展を
みせている。新しい剤形のノウハウを蓄積しており、ロイヤリティで稼ぐことを基本とし
つつ、機械に販売に結びつけ、ひいては製剤の受託に入っていくことも可能である。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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アイルランドでは製剤技術のビジネス化を目指す
フロイントファーマテックは、DDS の利用に向けて、2 つの特定の物質に絞って製剤化の
R&D を進めている。今期はまだ売上げは見込めないが、将来はロイヤリティ収入と機械の販
売に結び付く可能性があるので注目したい。
アイルランドに作った子会社では、日本で機械や原料(添加剤)を売ってきたノウハウを
活かして、新しいビジネスをやろうとしている。製剤の技術、ノウハウを売っていこうと
いうものである。
アイルランドのフロイントファーマテック社は、2010 年 1 月に設立された。製剤技術の
欧州拠点で、5 つの物質に対して製剤技術の特許を出願している。基本は日本で開発した技
術であるが、日本での特許出願はしていない。ノウハウとして社内に保持してきた製剤技
術を欧州でビジネス化しようという戦略である。
2010.12 期以来、実質 3 年を経てまだ赤字であるが、技術ノウハウで収益化を図ろうとし
ている。現在年間の赤字額は 1 億円強であるが、先行投資を続けている。
ここでは、新しい製材技術を売っていく。例えば、1 日 3 回飲む薬を 1 回で済むような薬
に仕上げるノンパレル(球型)のミニカプセルを活用して、それを実現しようとしている。
それを製造する機械を販売してもよいし、そのテクノロジー供与して、薬ができたらロイ
ヤリティをもらうという方式もありうる。機械は当社及びフロイント‐ベクター社が提供
し、ロイヤリティはアイルランドの子会社に入るという形になる。
米国の子会社フロイント- ベクター社との連携
フロイン‐トベクター社の 2012 年 12 月期の業績はよくなかった。売上げがやや伸びた
にもかかわらず大幅に減益になったのは、採算のよい米国内が落ちて、輸出が中南米向け
に伸びたからである。米国の製薬メーカーが製造を海外に移しており、それにつれて当社
の機械の仕向地も北米から中南米に移りつつある。中南米は販売代理店を使っているので、
その分だけマージンも低くなる。この傾向は今期も続こう。
フロイント‐ベクターは、日本と欧米、アジアのユーザーニーズの違うところを上手く
カバーして展開できる。グローバル展開では、米国の子会社フロイント‐ベクター社が大
きな存在となっている。日本スペックはきめ細かく、薬の見た目もきれいであることが求
められる。米国では様相が少し異なる。米国に合った薬が作れるようにフロイント‐ベク
ター社は独自に対応しており、米国バージョンを作っている。
今後、フロイント‐ベクター社とのシナジー(相乗効果)をいかに高めるかが課題であ
る。既に技術のトップに日本人を送り込んでおり、技術交流を深めようとしている。また、
営業担当も送って連携を図っている。米国の創業者ジェリー・ザラドニック社長(74 歳)
、
が同社の株を所有している。年に 3 回(アイオワ、ハワイ、東京で)
、取締役会を催してい
る。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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新興国に出ていくには、フロイント‐ベクター社のよさと日本製のよさを上手く取り入
れていくことが必要である。アジア展開に当っては、現地でのスペックが必要である。そ
のための拠点も必要で、すでに中国ではスタートしている。
インド、中国を攻めるにあたってはアフターサービスで日本的なきめ細かさで対応し、
それで差別化し、フロイントブランドを作っていく方針である。
当社にしかないミニカプセルを作る機械は、インドでも強みを発揮できる。これは次世
代型の薬を作るのに有効である。実際、アジアでもフロイント- ベクター社の製品を売る
機会が増えつつある。
フロイント‐ベクター社は 2012 年創業 40 周年を迎えた。1972 年に創業し、97 年に子会
社化し、2011 年に現社名に変更した。ここの機械のコントロールパネル(制御盤)は、COMPY
(コンピュ)Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと発展して、現在は COMPY Ⅳまできている。この COMPY Ⅳ の日
本語バージョンを浜松の研究所におき、日本でも応用できるようにした。また、米国では、
COMPY Ⅴの発売も予定しており、米国工場の増設も計画中だ。
フロイント‐ベクター社の利益率が低いようにみえるが、これは南米など海外の売上高
が増えると利益率が下がるからだ。海外は代理店を使っているので、その分相対的に収益
性が低い。安定した需要が見込める地域では、今後直販の仕組み導入も検討していく方針
だ。
機械部門の地域別売上高
日本
北米・南米
欧州・アフリカ
中東・アジア
合計
2011.2
4914
1953
594
631
8094
2012.2
5870
2206
844
662
9582
(構成比) (伸び率)
61.3
(+19.4)
23.0
(+12.9)
8.8
(+42.0)
6.9
(+4.9)
100.0
(+18.4)
2013.2
6384
1758
769
1003
9914
(百万円、%)
(構成比) (伸び率)
64.4
(+8.8)
17.7
(-20.3)
7.8
(-8.9)
10.1
(+51.5)
100.0
(+3.4)
フロイント・ターボの製品を欧米へ
次なる展開も進行中だ。フロイント・ターボ製品の欧米進出、ベクターの北米・南米以
外へのグローバル展開、化成品のアジア市場の開拓などが動き始めた。ターボ社製品の欧
米展開については、現在、米国のベクター社での生産、販売について準備が進んでいる。
2 年前に 4 億円で買収したフロイント・ターボ社はうまくいっている。営業のシナジーが
出て、
売上高は年間 10 億円に乗せ、
セグメントの利益率も 10%は出せるようになってきた。
次の M&A にも対応できるように準備はしている。現状では 10 億円程度の内部資金は使え
るが、それ以上の規模になれば外部ファイナンスが必要になる。自己資本(96 億円)の規模
から見て、20~30 億円の M&A には十分対応できよう。
当社の技術が活きるサプリメント作り
最近のサプリメントでは、当社の造粒、コーティングなど、製剤技術が活きている。同
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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じサプリメントの効能でも、それを吸収しやすい形に均一に整え、高い品質で提供できる
かどうかで効き目も異なってくる。現在の大型の商品が伸びているのに加え、次の商品(DDS
型のサプリメント)もピッチよく立ち上がっている。利益率は自社品の添加剤や品質保持剤
の方が、受託生産のサプリメントよりも高いが、利益貢献度という点では、サプリメント
が貢献している。
受託ビジネスの拡大
化成品では、サプリメント(健康食品)の受託ビジネスが伸びている。サプリメントは既
に 10 種類以上手掛けているが、そのうち大手企業から受けているものがヒットして、規模
が拡大している。当社の強みは製剤技術を持っていることにあり、重要成分に特殊コーテ
ィング技術を応用することで、胃で溶けずに腸まで届けるというようなことができるので
ある。こうした徐放性のコントロール技術に優れている。サプリメントでは新しい動きも
あるので、もう一段拡大する可能性は十分有する。このサプリメントについては、ブーム
の後定着しているので、急減するようなことはない。
DDS に合致した製剤作りが威力を発揮
ビフィズス菌を大腸まで届けるという DDS(ドラッグデリバリーシステム)に合致した製
剤作りでは、特許(本案件はユーザーとの共願)をとっている。有力企業とサプリメント
を開発し、昨年から販売に入り、当社が受注生産を受けている。
製薬メーカーでは同じテクノロジーを有しているが、用途がかなり異なる。ニーズに合
致したサプリメントという点で、この DDS は他の有力物質にも使える。次の展開が大いに
期待できる。
4.当面の業績
最高益の更新が続き、利益率も向上
2012 年 2 月期はハイコーターZが好調
2012 年 2 月期は、売上高 15236 百万円(前年度比+14.9%)
、営業利益 1065 百万円(同+
56.6%)
、経常利益 1123 百万円(同+60.9%)
、当期純利益 608 百万円(同+17.7%)となっ
た。営業利益でピーク利益を更新した。
セグメント別にみると、機械部門ではハイコーターFZ が好調であった。久しぶりのヒッ
ト商品といってよい。フロイント・ターボ社のオプティミル(低-中粘度湿式粉砕機)も順
調に拡大した。フロイント‐ベクター社の営業利益は円ベースでも急拡大した。また、ア
ジア向けも好調であった。為替は、円/ドルレートで前年度が、87.8 円であったのに対して、
2011 年 2 月期は 79.8 円と、10%ほど円高となった。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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化成品では、栄養補助食品(健康食品)が伸びている。これによって、欧州子会社の R&D
費も十分吸収できている。化成品部門に属するフロイントファーマテック社は GMP の承認
を得た。これからビジネスを拡大する可能性が広がってこよう。
バランスシートでは、流動資産が 2293 百万円ほど増えているが、これは通常のビジネス
拡大によるものである。バランスシートをみると、受取手形、売掛金が多いようにみえる。
これは医薬品メーカーとの取引は支払いのサイトが長いためで、長年の商慣行によるもの
である。当社は無借金経営で、財務的な問題はない。
キャシュ・フローでは、営業キャッシュ・フロー1417 百万円に対して、投資キャシュ・
フロー154 百万円であったので、フリー・キャッシュ・フローはかなり増えた。2011 年 2
月期の設備投資が少なかったのは、ややずれこんでいるからである。新しい品質保持剤の
設備や米国での設備増強の微調整の影響である。
業績は海外動向に依存
過去の業績のピークは、2009 年 2 月期の経常利益 10.6 億円であった。この時は売上高
135 億円のうち、海外売上比率が 10~15%ほどあった。海外はマージンが高いので、この
時に最高の業績を上げた。
2008 年 2 月期は、経常利益 10.2 億円に対して、当期純利益が 914 億円ほど出ている。こ
れは、米国に所有していた治験(臨床試験)の子会社を売却したことによる。これによっ
て、売却益が 3 億円ほど出た。この会社は日本の CRO の大手シミックに売却したが、マイ
ノリティとして数%の株式は残してある。
2011 年 2 月期は、大幅減益となった。海外比率が 1 桁まで減った。北米におけるフロイ
ント‐ベクター社の販売悪化が響いた。フロイント・ターボ社の買収には 4.0 億円ほど要
したが、会計上では負ののれん益が 3.0 億円ほど発生した。一方で、2011 年 2 月期は、過
去最高の受注となった。
受注・受注残の動向
(百万円、%)
2013.2
2012.2
機械部門
受注
10135
9280
販売
9582
9914
受注残
5810
5271
化成品部門
受注
2065
2844
販売
5653
6482
受注残
337
546
合計
受注
12200
12125
販売
15236
16396
受注残
6148
5817
(注)カッコ内は前年度比伸び率
(-8.4)
(+3.5)
(-9.3)
(+37.7)
(+14.7)
(+61.8)
(-0.6)
(+7.6)
(-5.4)
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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2013 年 2 月期は北米の不振を十分カバーし、過去最高の利益を達成
2013 年 2 月期は、売上高 16396 百万円(前年度比+7.6%)
、営業利益 1470 百万円(同+
38.0%)
、経常利益 1618 百万円(同+44.1%)、当期純利益 765 百万円(同+25.7%)と史
上最高の業績を達成した。
機械の受注は前年度比-8.5%、受注残も-9.3%と減少したように見えるが、受注のずれ
込みが 8 億円ほどあったので、全く心配はいらない。2013 年 2 月期の 4Q については、や
や慎重なスタンスとなった。一部受注の期ズレや製品の不良対応などもあり、利益は先送
りとなった。この分は今期にはプラスに働こう。
フロイント‐ベクター社の利益が 146 百万円(-46.9%)と大幅減になっているが、これ
は国内販売が減って、中南米向け輸出が増えたことが大きい。海外代理店を使うので販売
手数料がかかる分だけ採算が低いことによる。フロイント・ターボ社は順調に業績が上が
っている。
セグメント別の利益をみると、機械は売上の伸びが小幅にもかかわらず、利益は大きく
伸びた、これはプロダクトミックスの効果と限界利益率が高いことによる。
機械では、ハイコーターFZ をはじめ新製品が伸びた。ハイコーターFZ は、コーティング
機械であるが、スペックが欧米タイプになっている。通常の日本式は、ドラムの中にゆっ
くり風を送って、コーティング剤をスプレーで少しずつ入れて、きれいな表面を作る。こ
れに対して、FZ は風を強くし、スプレーも強力にして、大量生産が高速でできるようにし
た。風とスプレーのバランスを工夫して、薬としてのいいコーティングもできるようにし
た。同じものが半分の時間でできるので、効率が圧倒的に高い。製品としての付加価値も
高いので、当社のヒット商品として収益に貢献している。
セグメント別業績
機械
(伸び率)
化成品
(伸び率)
(百万円、%)
調整額
合計
2012.2
売上高
営業利益
(同利益率)
9582
907
9.5
(+18.4)
(+46.3)
5653
470
8.3
(+9.5)
(+20.9)
-1
-312
15236
1065
7.0
売上高
9914
(+3.4)
営業利益
1172
(+29.2)
(同利益率)
11.8
(注)同利益率は、売上高営業利益率
6482
565
8.7
(+14.7)
(+20.2)
ー
-267
16396
1470
9.0
2013.2
化成品では、健康補助食品が+40.8%と大幅に伸びて好調を持続している。化成品は利益
率でみると、医薬品添加剤が最も高く、次が品質保持剤で、健康補助食品は相対的に低い。
しかし、売上げの伸びはサプリメントが高いので、利益増加の貢献度はここに依存してい
る。フロイント化成は、化成品の製造を担当しており、工場の役割なので、利益的にはト
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ントンであってよい。
フロイントファーマは、まだ収入がない。R&D に取り組んでいるので、販管費の分だけ赤
字となった。-134 百万円の赤字である。アイルランドについては GMP をとったが、現在技
術を確立しているところで、いくつかの製剤技術は開発しているが、本格的マーケティン
グはまだ行っていない。インドでも日本の製剤機械を購入してくれている。中国では大半
が漢方である。よって、乾式造粒機が中心である。いずれ西洋薬が増えてくれば、それに
合った薬を作るようになろう。
地域別売上高
2012.2
日本
11794
海外
3442
北米
1512
欧州
841
アジア・南米等
1087
合計
15236
(注)伸び率は前年度比
2013.2
12800
3596
948
772
1875
16396
(百万円、%)
(構成比) (伸び率)
78.1
(+8.5)
21.9
(+4.5)
5.8
(-37.3)
4.7
(-8.2)
11.4
(+72.4)
100.0
(+7.6)
地域別の販売を見ると、北米は落ちているが、受注は回復してきている。国内ではジェ
ネリックメーカーが需要を牽引している。また、新薬に対するコンテイメント(封込め)機
械の需要も増えつつある。海外では新興国の引き合いが増えている。
南米ではプエルトリコ、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、エクアドルなどが好調だ。
欧州ではフランスで大型案件があった。中近東ではトルコが伸びている。アジアでは、韓
国、中国、台湾、インドが伸びている。北米の減少は、フロント-ベクター社の受注案件
の仕向地がメキシコ、プエルトリコの周辺国に偏ったことによる。
特別損失が発生している。これは米国での訴訟に伴う和解金 301 百万円である。一過性
のもので、ビジネスに特に支障はない。特許紛争でしばらく揉めていたが、裁判所の裁定
のもと和解で決着した。特許訴訟は、ベクター社の造粒装置のオプションモジュールに関
するものである。グラット社の米国子会社と 2006 年から係争していた。この特許はすでに
切れているので、今後問題になることはない。
バランスシートは健全で、自己資本比率も 61.4%へ向上した。キャシュ・フローもフリー・
キャッシュ・フローが 408 百万円ほど発生している。研究開発型のファブレス企業を志向
しているので、大型投資は必要ない。
2014 年 2 月期は中期目標の営業利益 20 億円に近づく
2014 年 2 月期の会社計画は、売上高 18500 百万円(前年度比+12.8%)
、営業利益 1750 百
万円(同+19.0%)
、経常利益 1760 百万円(同+8.8%)、当期純利益 950 百万円(同+24.1%)
である。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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今期の会社公表は保守的で固めの数字である。売上高は慎重に、費用については固目に
みている。例えば、中国、韓国については、国家間の不協和音がビジネスにも響いている。
日本からの輸出が抑えられる可能性もある。それでも社内的には、中期計画 3 年目の目標
である同 200 億円、
同 20 億円を達成しようという意気込みであると、
伏島社長は強調する。
セグメント別業績予想
2011.2
2012.2
2013.2
2014.2
(会社計画)
(予)
(予)
12000
8200
3800
1300
13000
9200
4200
1500
1550
12.9
1730
13.3
7200
2200
2100
2900
7700
2300
2200
3200
565
8.7
750
10.4
820
10.6
-312
-267
-350
-350
15236
1065
7.0
16396
1470
9.0
19200
1950
10.2
20700
2200
10.6
機械部門
フロイント単体
フロイント‐ベクター
フロイント・ターボ
8094
4776
2757
561
9582
6595
2799
1093
9914
7024
2983
1022
営業利益
売上高営業利益率
619
7.6
907
9.5
1172
11.8
5163
2064
1962
1136
5653
1948
1892
1812
6482
2041
1889
2552
営業利益
売上高営業利益率
338
6.5
470
8.3
セグメント間調整額
(全社的管理費)
-328
13257
680
5.1
化成品部門
医薬品添加剤
食品品質保持剤
健康食品他
売上高
営業利益
売上高営業利益率
(百万円、%)
2014.2
2015.2
11500
7000
18500
1750
9.5
(注)(会社計画)は公表ベース。(予)アナリスト予想。
今上期の会社計画では減益となるが、これは米国フロイント・ベクター社の受注残が少
ないことによる。下期はよくなるので、十分取り戻すことができよう。現状では売上高の
200 億円は難しいが、営業利益の 20 億円は射程内にあるとみてよい。
新製品のコーティング機械、ハイコーターFZ が好調で、これは今期も続く。化成品では
健康補助食品(サプリメント)の受託が品目を増やしつつ大幅に伸びている。
アジア展開では、中国、韓国が政治的な要素もあり遅れているが、インドでは有力な代
理店への変更に成功した。インド向けには、独自のコーティングマシーンを準備している。
インドスペックである。
今後の規模拡大が見込めよう。
2013 年 2 月期の海外売上比率は 22%
であった。これを今期は 28%まで高めていく計画である。
為替は 95 円/ドルを前提にしている。輸出は円建てなので、直接的影響はないが、円安
で現地での価格競争力は増やす。それと、海外現法の利益を円換算する時にプラスに効く。
フロイントファーマテックについては、2014 年 2 月期も売上げは見込んでいない。現在
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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液状カプセルなど 2 つの開発を手掛けている。ライセンスアウト、ロイヤルティ収入が基
本で、今のところ受託生産までは考えていない。
配当は、配当性向 20%を目途にしている。2013 年 2 月期に 5 円増配して 20 円としたが、
2014 年 2 月期も 5 円増配の 25 円を予定している。
1Q は利益率が向上
2013 年 2 月期の 1Q は、売上高は前年同期比-1.5%であったが、営業利益は同+13.8%と
順調であった。米国のフロイント-ベクター社が計画を下回ったことやインドの新しい代
理店がまだ本格化していないことなどのマイナス要素はあったが、既存分野の採算がよく
なったので、全体としては増益となった。
1Qセグメント別業績
機械
化成品
2012.5(1Q)
売上高
3240
1487
営業利益
419
142
(同利益率)
12.9
9.5
2013.5(1Q)
売上高
3048
1608
営業利益
496
162
(同利益率)
16.3
10.1
(注)同利益率は、売上高営業利益率
(百万円、%)
調整額
合計
ー
-68
4728
494
10.4
ー
-97
4656
562
12.0
米国のフロイント-ベクターについては、1Q に売上げに立つ予定のものが 2Q にずれたの
で、特に問題はない。インドについては、現地に合った製品を今後投入していくので、こ
れ次第である。機械については、受注案件がスムースに進み収益に結びついた、化成品で
は、健康食品の第 2 弾がいいピッチの立ち上がりを見せている。
2Q についても順調にいく方向なので、今期は会社公表を上回って、中期計画の目標であ
る経常利益 20 億円を目指すという展開が十分期待できよう。
地域別売上高
2012.5(1Q) 2013.5(1Q)
日本
3455
3991
北米
288
275
欧州
253
309
中南米・アジア
730
79
合計
4728
4656
(百万円、%)
(構成比) (伸び率)
85.7
(+15.5)
5.9
( -4.4)
6.7
(+22.0)
1.7
(-89.1)
100.0
( -1.5)
50 周年記念モデルと新商材を発表
7 月に 50 周年記念モデル製品と新商材が発表された。1 つは、新商材として、検査機搭
載型の錠剤印刷装置(TABREX)である。素錠剤にそのまま印刷することができる。素錠剤
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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は見た目で区別しにくいが、何の薬かがはっきり識別できるようになり、誤飲の防止に結
び付く。錠剤にコーティングして、その上に印刷するのでは高くなる。素材にそのまま刻
印(プレス)するだけでは、文字は残せるがよく見ないとわからない。今回のこの製品は
大手製薬メーカーと岡部機械工業が開発したものだが、当社が販売の総代理店となった。1
台 2~3 億円の機械で、世界でも最先端なので有望である。
また、50 周年モデルの 1 つとして、直打用賦形剤(化成品の中の医薬品添加剤)である。
高湿度に強いマルチトールグラニューや硬さが高いイソマルトグラニューである。健康食
品用サプリメントにむいている。前者は直接打錠した時に高湿度下でも安定した錠剤を作
ることができ、後者は流動性がよく、高い成形性を有する。これは、浜松の研究所で開発
したもので大いに注目できる。
設備投資と研究開発費
(百万円、%)
2011.2
2012.2
2013.2 2014.2 (予)
設備投資
469
218
221
500
減価償却費
257
264
232
300
研究開発費
355
390
435
500
2.7
2.6
2.7
2.7
売上高R&D費
研究開発型企業としての成長を志向
当社の経営環境は良い。医薬品はジェネリックに向かっており、これに対応するジェネ
リックメーカーの設備投資は拡大が続く。団塊の世代は、健康を維持するために予防に力
を入れ、サプリメントの需要を支える。一方で病気になる人は増えてくるので、医療費抑
制の中でも、薬の量的拡大は続こう。グローバルには新興国で医薬品の需要は拡大する。
先進国でも日本と同じような高齢化はいずれ進行していく。
その中で、当社の製造技術が評価され、市場開拓は進んでいる。日本のフロイント産業
(単体)がテリトリーとするアジアでは、インドで新しい代理店がスタートする。これま
での代理店に比べて、トップクラスの販売力を有する。フロイント‐ベクター社も、中南
米で市場を拡大している。
フロイント・ターボ社の産業用の造粒はナノテクの領域である。化粧品やコピーのトナ
ー、電池の電極など、ニッチな分野で強さを見せている。このテクノロジーをフロイント・
ベクター社で利用し、欧米で製品を売る計画が進んでいる。
欧州では、フロイントファーマテックがマーケティングに入っていく。これまでは技術
の確立、応用に力を入れてきたが、今年からは製剤技術を応用して既存薬の効能を高める
ことや、スペックアウトした薬剤の後活など、当社の技術を活かしたビジネスに力を入れ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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ていく。引き続き赤字で先行投資が続くが、進展は見せている。
当社は研究開発型の企業で、製造についてはアウトソーシングしている。よって、大型
の設備投資は必要ない。それでも一定の設備は所有していくので、新しい設備の対応は必
要である。2014 年 2 月期については、品質保持剤や米国のフロイント‐ベクター社で設備
投資を要する。しかし、資金的には内部資金で賄えるので全く問題ない。なお、設備投資
はずれ込んでおり、2014 年 2 月期が 5 億円の設備投資となろう。
今後の課題は、海外展開のスピードである。フロイント産業のアジア市場開拓、フロイ
ント・ベクター社の欧州市場の拡大、また販売だけでなく、生産拠点につても検討が必要
になろう。
5.企業評価
次期中期計画では、海外市場の拡大と利益率の向上が鍵
グローバルマネジメント力がいかに発揮されるか
今後の中期展開において、内外ともジェネリックに期待している。海外では米国フロイ
ント‐ベクター社の南米拡大が注目される。フロイント‐ベクター社の売上では米国内の
売上よりもインターナショナルの方が上回りつつある。製剤機械中心のビジネスではある
が、今後は産業用や添加剤にもチャンスを作ることが出来る。添加剤は日米欧各国の規制
が厳しいが、その基準を準用できる韓国・台湾などでのビジネスチャンスがある。
癌に使う薬など、主成分は薬としての効果(薬効)が高い分、健常の作業者にも影響があ
りうる。そこで、薬効をシールする製剤機械(コンテイメントスペック)が必要となる。
こうした機械がアジアのジェネリックでも今後必要になってこよう。
今後の展開としては、アウトソーシングも含めて、1)工場の設備稼働率を上げるには、
外部からの受注生産を増やしていく、2)医薬品に限らず、健康食品などの儲かる分野にシ
フトしていく、3)製造プロセスのコストダウンに力を入れる、という点にある。
10 年単位で将来を見ると、癌領域等の新薬が注射剤に変わっていく可能性も高いが、経
口投与で、効き目の長持ちする錠剤へのニーズも一段と高まろう。当社の技術をもってす
ると、医薬品の製造は十分できる。すでにいろいろ引き合いがきて、生産に入っているも
のもある。
次期 3 カ年計画で目指すもの
次の 3 カ年計画に当っては、営業利益率で 15%を目指すことができるかどうかがポイント
である。自己資本比率が高いこともあって、ROE をもう一段高めるには、営業利益率の向上
が不可欠である。海外売上比率を 40%に高める方向の中で、海外の採算を上げること、当社
の独自技術を活かした付加価値商品のプライシングを見直すことも必要になろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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次の 3 カ年計画においても、海外ビジネスを一段と伸ばす。2012 年に従来あった国際本
部を改組して、機械事業本部、化成品事業本部の中に入れた。新社長は海外経験も豊富な
ので、十分期待できる。フロイント‐ベクター社の海外売上げは南米のブラジル、チリ、
アルゼンチンでも伸びており、欧州を入れて、半分以上に達している。アジアについては、
フロイント本体から国内支店と同じ感覚でマーケティングしていく方針である。
中期計画のドライバーとしては、フロイント本体のアジア、ベクター社の南米・中近東
等の新興国での市場拡大、ターボ社の化粧品パウダー等、エンド商品の付加価値が高い分
野への展開、製剤技術を用いたサプリメントの受託なども一段と寄与してくる。いずれに
しても海外拠点の拡充がテーマになってこよう。
海外市場開拓でもう一段の成果が上げられるかどうかにかかっている。この分野で世界
トップクラスの地位に向上させる力はつけるには一定の努力を要するので、企業評価は B
とする。
(企業評価の定義については表紙を参照)
2012 年 11 月に立合外分売を 6 万株ほど行った。小額ではあったが個人投資家の人気は高
かった。1 部上場基準には 2200 人の株主が必要であるが、近づきつつある。
現時点の株価(8/1)でみると、PBR1.50 倍、ROE11.1%、PER13.5 倍、配当利回り 1.5%
である。株価水準は切り上がって、PBR から見ると、マーケットでは一定の評価を受けてい
る。業績がピーク利益を更新し、ROE も 10%を超えてきているので、PBR がさらに見直され
てもよい。今後の業績拡大が実績を持って示されるにつれて、当社の企業価値はマーケッ
トにおいて一段と評価されて行こう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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