6312 フロイント産業

(株)日本ベル投資研究所
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ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
6312 フロイント産業
~医薬品製剤用の造粒・コーティング機械で、世界の最先端を走る~
2015 年 5 月 8 日
ジャスダック
ポイント
・中期計画の 1 年目は、製剤機械の受注は好調に拡大したが、医薬品メーカーの都合によ
る納期遅れや、新製品開発に伴う開発コストなどが増加して、減益を余儀なくされた。受
注環境は良好で、国内ジェネリックメーカーからは、新規受注が相次いでいる。よって、
2016 年 2 月期の業績は、経常利益で 1450 百万円(前年度比+16%)と浮上してこよう。
・当社は、製剤技術をキーテクノロジーに、薬の錠剤・顆粒剤を作る時の製剤機械とその
添加剤である化成品の両方を手掛けるユニークな企業である。技術開発に優れ、錠剤を作
る造粒・コーティング装置では国内で 70%近いシェアを有し、グローバルにみても欧州の
グラット社、ゲア社と並んで世界 3 強の地位にある。
・2015 年 2 月期にスタートした中期 3 ヵ年計画では、製品開発と市場開拓に力を入れて
いる。製剤を連続して生産するシステムのコンセプト製品を発表しており、受注に結び付
けようとしている。また、新製品の錠剤印刷機械タブレックスは、品質性能の向上に取り
組んでおり、今期中に第 2 世代の新製品が出てくるので、受注拡大が見込めよう。
・海外市場の拡大では、海外売上比率を現在の 25%から 40%に上げようとしている。イ
ンドなど新興市場に合った製剤コーティング機械や、欧州でのジェネリック製薬市場向け
装置や高度製剤技術の応用など新しい分野を開拓していく方針である。
・米国子会社のフロイント‐ベクターは北米、南米の他、欧州、中近東もテリトリーとし、
現地に合った製品づくりで、日本のフロイント産業と分業しながら、連携も深めている。
アイオワ州にある生産拠点の能力も 1 月に 1.6 倍に拡張した。また、ミラノに開設したテ
スト施設をベースに、旧東欧諸国及び中近東も含めたエリアを一段と開拓できよう。
・今回の 3 カ年計画では、世界トップクラスをめざし、独創的な製剤技術を活かした研究
開発型企業として、売上高 230 億円、営業利益 23 億円、売上高営業利益率 10%を目指す。
計画目標の達成にはもう一段の海外市場開拓が必要であるが、2017 年 2 月期の業績は過
去のピーク利益は更新し、ROE も 9%台に上昇してくるので、株式市場での評価も早晩見
直されてこよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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目 次
1.特色
医薬品用製剤機械の独自開発で発展
2.強み
日本では圧倒的 No.1、世界でも 3 強の 1 社
3.中期経営方針
4.当面の業績
5.企業評価
中期3ヵ年計画では海外市場の開拓を一段と強化
受注は好調、来期はピーク利益更新へ
海外市場の拡大と利益率の向上が鍵
企業レーティング B
株価(15 年 5 月 7 日) 1311 円
PBR 1.03 倍
時価総額 121 億円 (9.2 百万株)
ROE 7.6%
PER 13.2 倍
配当利回り 2.3%
(百万円、円)
決算期
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
2008.2
13104
931
1021
943
109.4
15.0
2009.2
13478
958
1056
619
71.8
15.0
2010.2
12943
970
951
563
65.4
15.0
2011.2
13257
680
698
516
60.0
15.0
2012.2
15236
1065
1123
608
70.6
15.0
2013.2
16396
1470
1618
765
88.8
20.0
2014.2
17616
1286
1341
787
91.4
25.0
2015.2
17424
1150
1249
695
80.7
30.0
2016.2(予)
18900
1400
1450
850
98.6
30.0
2017.2(予)
21700
1900
1950
1150
133.4
35.0
(15.2 ベース)
総資産 17277 百万円
純資産 11180 百万円
自己資本比率 63.6%
BPS 1274.4 円
(注)ROE、PER、配当利回りは 2016.2 期予想ベース。2009 年 6 月に 1:2 の株式分割を実
施。それ以前の EPS、配当は修正ベース。2015.2 期の配当は 50 周年記念配 5.0 円を含む。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の
可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要す
る、D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
医薬品用製剤機械の独自開発で発展
医薬品用製剤機械と添加剤が主力
薬の錠剤を作る時の造粒・コーティング装置(機械)と医薬品添加剤等(化成品)の双
方を主力製品としている。
この分野で機械とそこで使う化成品の 2 つを手がけているのは、
世界でも当社だけである。
その関係は、ペン(機械)とインク(化成品)の役割に長く例えられてきた。この例えを最
近は発展させている。①機械や化成品というプロダクト(ハード)と、②それを創り出す
テクノロジー(ソフト)
、という 2 つの見方である。当社のコア・テクノロジーは製品を作
り出す技術開発力にある。この製剤技術そのものをビジネスにしようという研究・開発が、
現在アイルランドを拠点に進行中である。
機械とは製剤機械で、薬の主成分に補助剤(添加剤)を加えて、錠剤の飲みやすさなど製
剤機能を作り出すための装置である。液状のドリンク剤ではなく、経口固形剤を作る。世
の中の薬のうち、半分は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの固形剤タイプである。
医薬品メーカーや食品メーカーが自分で薬を製造している場合もあれば、それらの製造
を外部に委託(アウトソーシング)している場合もある。いずれの場合でも、当社の製剤
機械が使われている可能性が高い。
機械事業には、フロイント産業本体のほかに、フロイント-ベクター(米国)、フロイント・
ターボが関わる。フロイント-ベクターは、北米、中南米、欧州、中近東などをカバーする。
フロイント・ターボは 5 年前に買収し、化粧品やトナー用など、医薬品以外の産業機械分
野を手掛けている。機械部門では、造粒・コーティング用で国内シェア 70%を有し、世界で
も 3 強の地位にいる。
化成品では、添加剤、品質保持剤、栄養補助食品を手掛けている。添加剤は薬の錠剤や
粉末において、その薬の主成分(1~3%)に添加する無害の副材料で、乳糖、でんぷんな
ど糖類から作られる。食品品質保持剤では、半生菓子(バウムクーヘン)などによく使わ
れるエタノールの蒸散剤で、細菌の発生を遮って腐敗を防止する。
フロイント産業の事業内容
(%)
売上構成比
営業利益構成比
特 色
2013.2 2014.2 2015.2 2013.2 2014.2 2015.2
機械部門
60.5
医薬品関連
83
産業関連
17
小計
100
化成品部門
39.5
医薬品添加剤
32
食品品質保持剤
29
新規食品(健康食品他)
39
小計
100
62.5
88
12
100
37.5
30
29
41
100
62.8
91
9
100
37.2
33
30
37
100
65.9
76.6
70.0
・医薬品、食品、ファインケミカル用
・造粒、コーティング装置の製造販売。
・コーティング装置の国内シェア70%、世界第3位
34.1
23.4
30.0
・医薬品添加剤、食品品質保持剤、
・栄養補助食品の製造販売。
・GMP(薬事法などに基づく医薬品の製造品質
管理基準)対応の設備で生産。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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品質保持剤、栄養補助食品分野にも展開
この製剤技術、装置は食品分野にも使われている。健康食品は大きな発展をみせており、
新しいビジネスモデルもできつつある。例えば食品メーカーや生活用品メーカーなどは通
販(通信販売)に限って健康食品を展開しており、こうした健康食品、サプリメントのタ
ブレットを作るに当っても、当社の機械装置が使われている他、最近では製剤技術も活か
されている。薬品とサプリメントの違いは、医薬品とされる主成分の含有にある。主成分
の違いのほかは、構造的に類似するものである。
加えて、当社は食品の品質保持剤も作っている。例えば、バウムクーヘン、カステラな
ど半生菓子の鮮度を保つためのものである。腐るというのは、酸化することである。酸化
を防ぐには、酸素に触れないようにすればよい。防腐には 2 つの方式があって、1 つが脱酸
素剤を使う方法で、もう1つがアルコール(エタノール)蒸散剤を使う方法である。脱酸
素剤を使うと、スポンジケーキがパサパサになるという食感への影響がある。
このような場合は、シリカにアルコールを染み込ませておき、それを袋に入れておくア
ルコール蒸散剤の方がよい。これで真菌(カビ)の発生を防ぐ。当社はこのアルコール蒸
散剤を手掛けている。当社がパイオニアで、1977~78 年に開発したものである。子会社の
フロイント化成は化成品事業に属し、この品質保持剤を生産していたが、2014 年 3 月に本
体に吸収合併し、生産拠点も埼玉県浦和から浜松に移して新体制を整えた。
食品品質保持剤の国内市場は、
脱酸素剤が 200 億円市場、
エタノール系が 30 億円市場で、
バウムクーヘンなどに使われるしっとり系の保持剤の規模は大きくないが、当社はここで
強みを発揮している。エタノール系は当社が先行開発して市場を作ってきたので、現在で
もシェアは 5 割を超える。一方、脱酸素系へも品揃えの一貫として参入している。
フロイント産業の主要製品
機械事業
化成品事業
・造粒装置
フローコーター
(流動層造粒コーティング装置)
フローコーター高速造粒モデル
(流動層造粒乾燥コーティング装置)
グラニュフォーマー
(連続造粒装置)
・コーティング装置
ハイコーターモデルFZ
(全自動糖衣フィルムコーティング装置)
・錠剤印刷装置
タブレックス(TABREX)
・シームレスミニカプセル
スフェレックス
・粉砕機
Vターボ
(注)DDS:ドラッグデリバリーシステム
・医薬品添加剤
直打用マンニトール・乳糖、
球形顆粒、
吸着剤、固形化剤、流動化剤
・食品品質保持剤
食品添加剤
食品品質保持剤
・栄養補助食品
シームレスミニカプセル
DDS対応
AQシェラック、サプリメント、
コエンザイムQ10、ラクトフェリン
ビフィズス菌
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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浜松の技術開発拠点で独自開発
当社の核は、浜松の「技術開発研究所」にある。
“創造力で未来を拓く”を経営理念とし、
独創的な開発の源がここにある。この部門では 30 数名が研究開発に従事しており、製剤機
械、添加剤、品質保持剤の 3 つの分野を手掛けている。
製剤機械では粉体、造粒・コーティング加工技術をベースに、医薬品はもちろんそれ以
外の業種でも使える R&D(研究開発)を行っている。添加剤では、国内医薬品向けではなく、
グローバルに対応する独自の R&D も展開している。また、品質保持剤や健康食品向けも重
視している。
浜松の技術開発拠点は通常の R&D センターというだけではない。すでに知的財産権(特
許・商標)は 300 件以上有しているが、実際に開発した設備、機械が置いてあるので、顧
客はここにきて試作品の作成やテストを製造前に試すことができる。新しい薬や食品関連
において、機械の使い方、応用のノウハウも習得することができる。当社としては、こう
した施策を通して、マーケティングとともに、次への改良へも結び付けることができる。
創業 50 年、伏島社長がグローバル経営を指揮
当社は 2014 年 4 月に創業 50 周年を迎えた。1964 年、伏島靖豊氏(77 歳)が創業した。創
業者の父の会社は、工業用ゴム製品の加工品を手掛けていた。自身は早大の商学部の頃に
医薬品業界は利益率が高いという印象を受けた。
仲間が商社などに就職する中で、自分は家業を継ぐことにしたが、ゴムとは違う分野に
展開できないかと考えた。大学卒業後、父のゴム加工品会社に身をおきながら、起業を考
えていた。高校の同級生が大手製薬会社で働いており、彼のところに行ってみると、薬を
ピンセットとスプレーで作っていた。これをもっと自動化したらよいのではないかと発想
し、1963 年の暮れに 1 号機を開発した。原理は錠剤にスプレーガンで液体を噴きかけ、そ
れをドライヤーで乾燥させるというものである。現在のコーティング(被膜)である。
機械にはもともと興味があったので、知り合いの鉄工所で作ってもらった。フィルムコ
ーティング剤は信越化学から購入した。それをその友人に見せたら、かなりの出来である
と評価された。翌年の 1964 年(昭和 39 年)に、伏島氏と友人の本山示氏(元大手製薬会
社、後に当社専務取締役)の 2 人で、フロイント(ドイツ語で「友だち」
)産業を創業した。
伏島氏は 25 歳で試作機を作り、26 歳で創業したのである。この 1 号機、2 号機がとんと
ん拍子で売れたので、事業の立ち上げは順調であった。フィルムコーティングマシン FM2
型(二人の頭文字をとって F、M とした)は製薬会社に売れた。安すぎると言われたので、
価格を 2 倍にしたら、それでも売れた。自動フィルムコーティング機械を開発し、同時に
コーティング液の生産も始めた。1 号機が売れたので、会社は初年度から黒字になった。以
来、機械と化成品の 2 本柱経営を続けてきた。
当時伯父がコピアの社長であった。彼から複写機のビジネスのコツは、湿式コピアマシ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ーンに付随する消耗品で稼ぐという点を示唆され、コーティング用のフィルム液も自社で
手掛けることにした。当時、この有機溶媒は色がポイントで、他社にまねできない被膜技
術とともに販売は拡大し、稼ぎ頭となった。
当社のスタートは錠剤のコーティングにあった。液体に可塑剤を処方して膜がやわらか
くなるようにした。この液体と機械で特許をとり、製剤機械は米国でも特許をとった。
伏島氏は創業者であり、堀前社長は創業者夫人の弟である。そして、2012 年 3 月に伏島
巖氏(長男)が社長に就任した。伏島巖社長は 1969 年生まれで、現在 45 歳。米国の芸術大
学(Coe College)で音楽を学び、若い時から海外経験を積んできた。97 年、28 歳の時に当
社に入社した。海外など国際部門の業務が長かったが、社長就任までに機械本部長と化成
品本部長を経て現在に至っている。
創業者とコーポレートガバナンス
5 月の株主総会で、伏島氏は代表取締役会長から取締役ファウンダーに異動する。現社長
は 2012 年から既に社長を務めており、海外子会社との連携などグローバル展開に力を発揮
している。ファウンダーは、製品開発について独自の慧眼を発揮してきたので、この点に
おいてはこれからもアドバイスをすることになろう。伏島靖豊氏は 77 歳、開発にかける情
熱はいまでも溢れている。いくつものアイデアをかかえて、現場に発破をかけている。
コーポレートガバナンスでは社外取締役を 2 名入れる予定である。候補の真鍋氏は公認
会計士であり、中竹氏は早大のラグビー部の監督を経て、日本ラグビー協会のマネージン
グディレクターである。外部の視点で、経営を監督して行くという点において意義がある。
創業者は、いつまでも創業者である。社内での役割は変わるが、創業者精神をいかに受
け継いでいくかという点では、これからも重要な役割を果たしていくことになろう。
フロイント産業の地域別売上高
中南米
(百万円、%)
アジア等
合計
(海外計)
日本
北米
欧州
2013.2 売上高 12800
[構成比] [78.1]
948
[5.8]
772
[4.7]
1875
[11.4]
15236 [3596]
[100.0] [21.9]
2014.2 売上高 13233
[構成比] [75.1]
1503
[8.5]
701
[4.0]
2177
[12.4]
17616 [4382]
[100.0] [24.9]
2015.2 売上高 13056
1599
450
1071
[構成比] [74.9]
[9.2]
[2.6]
[6.1]
(注)2015.2期より中南米とアジア等その他を分けて表示
1246
[7.2]
17424 [4367]
[100.0] [25.1]
米国フロイン-トベクター社がもう1つの軸
フロイント‐ベクターは、アイオア州に自前の工場を持って製剤機械を生産・販売して
いる。日本のフロイント産業本体とは互いに技術交流をし、スプレーガンなど一部の部品
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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は日本から輸入しているが、基本的には独自の製品を開発し生産している。
現在グループの社員は約 370 名である。このうち親会社に 200 人、米国の子会社フロイ
ント- ベクターに 120 人、フロイント・ターボに 40 人といった構成である。
フロイントは、1966 年に米国に代理店を作った。翌年には機械を携えて海外の大手製薬
企業にキャラバンをした。自動コーティング機械は好評であった。機械の革新は続き、有
機溶媒に代わって水が使えるようになり、しかも乾燥スピードが 3 倍になるような新型機
械を開発した。
このハイコーターのパテント(特許)は申請済みだったので、ライセンス契約をした。
1979 年に米国のベクター社と提携し、その後子会社化した。ベクター社はアイオア州シー
ダーラビッツに本拠地があり、造粒、コーティングの機械を製造販売している。北米、南
米、欧州、中近東をテリトリーとしている。当社とベクターとの間に製品の直接的取引は
ないので、互いにかなり独立していた。
このベクター社を 97 年に子会社化した。ベクターの大株主は創業者の伏島氏をよく知っ
ており、信頼できる経営者として、株を譲渡してくれた。ベクター社は当社のライセンス
を活かしながら、米国に合った機械に仕上げて業績をあげた。
国状の違いに合わせて、機械の強度を上げる、オペレーション(機械操作)を両持ちから
片持ちにする、ドキュメントを作るなど、米国のビジネス慣行に合わせた。さらに米国は
もちろん、ここから欧州や南米にもインターナショナルビジネスを広げていった。
現在、伏島社長がフロイント‐ベクター社の CEO であり、2014 年 2 月期から前スティー
ブ・ジェンセン COO に代わって、技術担当である久保田雅明氏が COO を務めている。フロ
イント・ベクターのマネジメントについては、社長と財務は日本人、営業と技術は現地の
アメリカ人である。二人とも伏島社長と同世代で、コミュニケーションはよくできている。
フロイント産業の主要グループ会社
(国内)
フロイント産業
(海外)
(機械部門)
(機械部門)
フロイント・ターボ
フロイント‐ベクター
産業用粉粒体機械
Freuind-Vector Corp.
医薬品用造粒・コーティング装置
(化成品部門)
フロイントファーマテック
Freund Pharmatec LTD.
微小粒をキーテクノロジーとした新製剤開発
(注)フロイント化成(食品品質保持剤)は2014年3月に本体に吸収合併
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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現在、ベクター社の株式について 90.9%はフロイント産業が持ち、9.1%を同社創業者が
持っている。フロイント・インターナショナル(FIL)は、ベクターを買収する時に作った
中間持株会社である。子会社化した時点でもフロイント‐ベクターの業績は順調であり、
経営に問題があったわけではない。現在、フロイント・ベクターにとって南米市場は重要
である。ベクターの売上の約 3 割が南米であり、その大半がブラジルである。
グループ企業の業績
フロイント産業(単体)
フロイント‐ベクター
フロイント化成
フロイント・ターボ
フロイントファーマテック
2011.2
2012.2
2013.2
2014.2
2015.2
2011.2
2012.2
2013.2
2014.2
2015.2
2011.2
2012.2
2013.2
2014.2
ー
2011.2
2012.2
2013.2
2014.2
2015.2
2011.2
2012.2
2013.2
2014.2
2015.2
(百万円、%)
売上高 営業利益
同率
10669
495
4.9
12248
839
6.8
13506
1350
10.0
13694
1241
9.1
13364
1126
8.4
2757
112
4.0
2812
277
9.9
2943
147
5.0
3892
169
4.3
3905
291
7.5
1395
21
1.5
1336
4
0.3
1295
-11
-0.8
1405
33
2.3
ー ー ー
561
63
11.2
930
15
1.6
1022
81
7.9
782
-8
-1.0
999
-12
-1.2
0
-67 ー
0
-131 ー
0
-134 ー
0
-188 ー
6
-190 ー
(注)フロイント・ターボは2010年6月にM&A
フロイント化成は2014年3月にフロイント産業へ吸収合併
フロイントファーマテックの赤字拡大はユーロ安の影響
グループ力の強化
1980 年に大川原製作所と業務提携した。大川原製作所は、機械の製造を担当しているア
ウトソーシング先の 1 つである。かつてはかなりのウエイトを占めていたが、現在はアウ
トソーシング先を 6 社に分散している。その中でもシェアの高い提携先である。
フロイント化成は品質保持剤を生産し、販売は親会社を通していた。1977~78 年頃に、
アルコール錠剤系の品質保持剤に参入した。この会社は 2014 年 3 月に、経営効率化に向け
て、本体に吸収合併した。
機械では、5 年前にターボ工業を 4.0 億円で買収した。ここは粉体機械のメーカーで、特
許も有する。このフロイント・ターボは、同社の創業者の後継者問題もあり、当社と連携
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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することにした。年商 9 億円程度であったが、機械部門に入った。粉体を作る装置メーカ
ーであるが、当社とは分野が異なり、工業用の粉体や食品用、特に硬質系の紛体装置を得
意とする。
2.強み 日本では圧倒的 No.1、世界でも 3 強の 1 社
製剤機械と化成品を両輪とするのは世界でもユニーク
当社の機械と化成品は互いに補完的である。製剤機械に、化成品としての賦形剤を入れ
て、薬や食品としての固形剤が出来上がる。薬の中の錠剤に関する生産プロセスをみると、
粉砕・分級→混合→造粒→乾燥・整粒→打錠→コーティング→印刷機、という流れである。
この中で、当社は粉砕・分級機、造粒機、乾燥機、コーティング機、錠剤印刷機などを手
掛けている。
これらの機械はかなりニッチな分野であり、その中で当社は知的財産権を 300 件ほど所
有している。大手製薬企業の製薬プロセスのスペック(仕様)も熟知している。したがって、
こうした分野に大手の機械メーカーはなかなか入ってこられない。
世界の機械メーカーの中で、同業他社という点では、グローバルに見てドイツの GLATT
(グラット、未上場)
、デンマークの GEA(ゲア、未上場)
、当社が 3 強というところである。
ドイツの製剤企業は合従連衡が進んで大分集約され、マネシティ、ローラン、ヒュッテリ
ンがこれに続く。ゲア(GEA)社は打錠機も生産しているが、当社は手掛けておらず、日本
では菊水製作所、畑鉄工所など、別の企業が専門に作っている。
日本では当社がトップで、パウレック(未上場)が第 2 位である。パウレックはグラッ
ト(GLATT)と技術提携している。日本でのシェアは当社が 3 分の 2 以上、パウレックが 3 分
の 1 というレベルである。
国内市場においては、2 番手のパウレックとの競合がある。海外企業とのライセンスを活
かして、低価格攻勢をかけてくる面もある。これに対して、高付加価値化、高ブランド化
をいかに強化していくかが問われる。会社としては、低価格競争に引き込まれないように、
価格政策をリードしようとしている。
北米ではフロイント‐ベクター社が業界 3 位という地位にあり、今後のグローバル展開
にはフロイント‐ベクターが鍵を握ることになる。
医薬品の添加剤という点で、信越化学がトップ、2 位が旭化成、3 位が三和化学工業で、
当社は 5 位以内につけている。
専門分野で世界と戦う
当社は、日本、米国、アイルランドに拠点を持ち、世界で戦っている。日本での競合相
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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手であるパウレックはグラット社と提携し、輸入代理店であると同時にメーカーとして、
自社の生産機能をもっている。
国内市場においては、2 番手のパウレックとの競合がある。海外企業とのライセンスを活
かして、低価格攻勢をかけてくる面もある。これに対して、高付加価値化、高ブランド化
をいかに強化していくかが問われる。会社としては、低価格競争に引き込まれないように、
価格政策をリードしようとしている。
造粒、コーティングでは当社が強い。パウレック(グラット)やゲア(日本拠点)は、
国内でのメンテナンス、サービス体制という点で、当社には追い付けない、24~48 時間以
内にサービスするという体制は十分とれないからである。
一方、欧州にいくと、グラット、ゲアは手強い。当社のアイルランドは研究開発型の拠
点で、機械販売のビジネスは米国のフロイント‐ベクター社から攻めている。
米国の子会社フロイント‐ベクター社は、2008 年のリーマンショック後北米ビジネスが
落ち込んだが、ここにきて回復してきている。ブラジルなど南米が市場として伸びている
ので、米国からブラジルも攻めている。
粉体関係の機械メーカーでは、ホソカワミクロンやダルトンなどがあるが、いずれも医
薬品分野は手掛けておらず、むしろ当社が一部ユーザーとなっている。
薬の錠剤生産工程と当社の主力分野
(プロセス)
(機械装置)
(主力製品)
原薬
粉砕・分級
粉砕機・分級機
混合・練合
造粒
造粒装置
乾燥・整粒
乾燥装置
打錠
コーティング
コーティング装置
ターボミル
(高速微粉砕)
ターボスクリーナー
(高効率ふるい分け)
グラニュマイト
(新型スプレーガンで粒度分布がシャープ)
フローコーター (流動層乾燥装置にスプレーシステムをドッキング)
CFグラニュレーター
(徐放製剤、健康食品のコーティングに最適)
ハイコーターFZ
(生産性が30%アップ)
錠剤
印刷
錠剤印刷装置
タブレックス
(素錠、口錠(口腔内崩壊錠)への印刷を初実現
梱包
技術開発拠点で新製品を開発
浜松の研究開発生産部門には、研究棟 1 つと生産棟 2 つがある。主要製品の 1 つである
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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フローコーター(流動層造粒コーティング装置)は、1 台で均一な混合から造粒、コーティ
ング、乾燥までの工程を連続して行うことができる。造粒は、粉末から粒(つぶ)を作る
工程である。医薬品の有効成分である原薬化合物と、その機能をコントロールする添加剤
を所定の比率で混合し、粒子形状に加工する。フローコーターは、浮遊した状態にスプレ
ーガンで霧を吹きかけるようにして、粒を大きくし、その上でコーティングしていく。実
際の生産は、大川原製作所などに委託している。
大型製品のハイコーターFZ(全自動糖衣フィルムコーティング装置)は、短時間で効率
よく錠剤や錠菓の表面に、均一で滑らかな被膜を形成する画期的な装置である。コーティ
ングは、錠剤の表面に機能性皮膜を形成する。錠剤表面に、薬物が体内で溶け出る状態を
コントロールする。また、薬の苦味を閉じ込めるマスキングの効果も有する。コーティン
グには、高分子素材を被覆するフィルムコーティングと糖類を被覆するシュガーコーティ
ングなどがある。
このハイコーターFZ は、従来の機種に比べて、①熱風の熱効率を上げて乾燥力をアップ
させた、②拡販混合の効率を高めた、③スプレーガンの性能を上げて拡散の分布を広く均
一になるようにした。これで、同業他社にはできない画期的な装置となった。
スフェレックス(シームレスミニカプセル製造装置)は、固体ではなく液体をベースに
錠剤を作っていく。液体の表面張力を利用して真球の粒にして、それを連続的に生産する。
まわりは硬くて、中は液体となっており、カプセルに入っている状態を作り出す。直径で 1
~7 ㎜の液体をゼラチンで包み、グリセリン(油脂)中を落とすように上から下へ流してい
く。それを乾燥させると、シームレス(繋ぎ目のない)ミニカプセルとなる。世界でも数
社しかできない技術である。
コンテインメント(封込め)技術は、欧米で先行した技術であるが、国内ニーズに沿っ
た独自開発を行い、日本発のコンテインメント技術として 2013 年の伸井賞(製剤技術開発
への功績)を受賞した。
食品用の直打賦形剤(添加剤)として、マルチトールグラニューとイソマルトグラニュ
ーを開発した。直接打錠して錠剤が生産できてば効率がよい。これまで、直打に適した流
動性、成形性のよい造粒品がなかったが、今回それに適した造粒品が開発できた。
双方とも流動性がよく、打錠時の安定度が高い。マルチトールグラニューの錠剤は、吸
湿による硬度低下がほとんど見られない。イソマルトグラニューは、成形性の低い錠剤(例
えばグルコサミン)を直打して、容易に調整できるという特長を持つ。
新興国向け製剤機械のプロトタイプも完成させた。最新のハイコーターFZ の機能を必要
なものだけにして、新興国向けのオリジナルを作った。日本で求められるきめ細やかさを
見直して、現地で必要な機能に絞って設計を見直し、価格も廉価にした。どこまで新興国
各国のニーズに合い、競争力を発揮するか。もう一段の工夫が必要である。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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フロイント産業の主要拠点
☆フロイント産業 浜松技術開発研究所(日本)
・研究開発型企業として、最先端の製品開発に注力
・顧客に試作、アプリケーションテストを提供
・内外で300件以上のパテント(知的財産)を所有
☆フロイント・ターボ(日本)
・フロイント産業本体の造粒、コーティング技術と、旧ターボ
社の粉砕・分級技術を相互補完して、新しい粉体加工
技術へ展開
・フロイント‐ベクターとの連携も強化
☆フロイント‐ベクター(米国)
・フロイント産業本体の開発力に、米国の設計力、製造力を
融合して、現地適応型の新製品を開発
・中南米、欧州へも展開
☆フロイントファーマテック(アイルランド)
・球形状顆粒(表面積が少なく、膜厚制御が容易)と
シームレスミニカプセルの独自技術を応用して、欧州で
DDS(ドラッグデリバリーシステム)製剤技術を開発中
・2011年7月にGMPの承認を取得
製剤技術で世界トップクラス
浜松の化成品本部の工場では、球状顆粒を作っている。丸くするのは当社のコア技術で
ある。球形にするのは、徐放性(徐々に溶けて、効果を長持ちさせる)を保つように工夫
するのに役立つ。
医薬品の添加剤は、砂糖を主原料として、これに薬物を被覆し、その上に皮膜を作る。
核はグラニュー糖で正八面体である。雪だるま式に丸く大きくしていく。
球状顆粒の大きさは、710~850 ミクロン(マイクロメートル)、500~710、355~500、200、
100 といろいろある。300 ミクロン以下になると、水なしでザラザラ感もなく服用できる口
腔内崩壊錠に適している。かねてより市場から求められていた硬さと溶けやすさのバラン
スが最適な口腔内崩壊錠向けの添加剤グラニュトールFを開発した。これにより、新たな
製剤設計のサポートが期待できる。
これとは別に、乳糖に結晶セルロースを加えて使う方法もある。乳糖は槍の形をしてお
り、カロリーが低く価格も安い。核がないから薬が絡み易く、形も小さくできる。当社が
研究して先行的に実用化した。乳糖は今、最も使われている。世界では、欧州の DFE Pharma
が医薬品用乳糖のトップ企業で、当社もそこから輸入している。
高齢化が進むと、錠剤のニーズが増えてくる。しかも微小径にする方が飲み易くなり、
薬効が長持ちする徐放性も求められる。これに合った製剤作りが、ますます必要になって
くる。本来でいえば、核はいらない。いかに上手く丸くできるかがポイントである。この
丸くする技術は、実は職人技であって、当社はこの分野で世界トップクラスである。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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乳糖にセルロースを入れるのは、セルロースが糊の役割を果たしている。この糊がなく
て、乳糖 100%でも造剤ができる技術ももっており、その受注も受けている。糊と反応しな
いように薬物を使用することもあるからだ。
先端の製剤技術開発で先行 ~ 微粒子コーティングとコンテイメント
コーティング剤は最初の開発から、5~6 世代目になっているが、それぞれの世代で基本
特許を持っている。コーティングの品質の良さは乾燥能力にかかっている。表面をきれい
にみせるには、エタノール系の有機溶媒を使う方が水より蒸発しやすいので効果的である。
しかし、コストと環境への影響から水溶剤に変わり、水に溶けやすい溶剤である水性シェ
ラックとして用途が広がった。
今主流なのは、微粒子コーティングである。100 ミクロン(0.1 ㎜)の粒子にコーティン
グをすると、口の中で水なしで溶け、苦味が出ずに飲み込むことができる。300 ミクロン以
上になるとザラザラ感が残る。微粒子コーティングはコストが高くなるので、普及には時
間がかかるとみられるが、有望な技術である。
さらに大事になってきた技術が、薬のコンテイメント(封込め、containment)である。
薬は薬理活性が強いので、作業する人の安全を守る必要がある。薬剤が大気中に出ないよ
うに封じ込めるのである。まだスタートしたばかりであるが、まずは臨床試験用の薬を作
る設備に入っていこう。ここで危ないものは、生産設備の段階でもコンテイメントされる
ことになろう。コンテイメントは、①初期の実験レベル、②臨床レベル、③生産レベルで、
それぞれ重要になってくる。
米国とアイルランドをベースにグローバル展開
米国で求められる製剤機械は、日本と少し異なる。当社の機械売上げの 30%が米国フロイ
ント‐ベクターのものである。基本設計は統一しているが、欧米向けのスペック(仕様)
で現地生産している。錠剤においては、キズやバリの定義も違う。日本のユーザーは薬に
対してもきめ細やかさを要求するが、海外ではさほどでもない。また、日本では工事付き
で機械の受注を受けるが、米国では工事なしというのが普通である。フロイント‐ベクタ
ーは欧米で競合 10 社と戦っている。
伏島氏は、もう 1 つの夢を実現すべく手を打った。2010 年に設立したアイルランドのフ
ロイントファーマテックである。欧州で、製剤技術を R&D の軸に事業展開しようとしてい
る。現在日本人 3 人、現地採用 10 数人の規模である。
フロントファーマテックは、シームレスミニカプセルを軸に、微小粒をキーテクノロジ
ーとした新製剤の開発をしている。基本技術は日本から移転し、それを昇華した新製剤技
術を開発中である。ライセンスで稼ぐこと、機械を販売することもあるが、期待は欧州の
製薬企業から薬の新剤形を作ってくれという要請がくることである。錠剤成分の 95%以上は
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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添加剤で、本当の薬の部分は 10mg と極めて少ないものである。製薬分野における縁の下の
力持ちとして、製剤ノウハウビジネスそのものに入ることを狙っている。
グローバルニッチ企業の 1 社
当社は、2014 年経産省が主催したグローバルニッチトップ企業 100 選に選ばれた。これ
は、①世界シェアと利益の両立、②独創性と自主性、③代替リスクへの対応、④世界シェ
アの持続性において優れている企業が選定の対象となった。機械系の中堅企業としては、
日特エンジニアリング(精密コイル製造用自動巻線機)
、小森コーポレーション(商業用オ
フセット印刷機)、アイダエンジニアリング(サーボ駆動式プレス機)、津田駒工業(ジェ
ット式織り機)などと共に、当社(医薬品、食品向け造粒、コーティング装置)が選ばれ
た。ユニークな存在が認められたのである。
3.中期経営方針
中期3ヵ年計画では海外市場の開拓を一段と強化
内外のジェネリック市場は活況
重点戦略は、1)国内でのジェネリックの設備増強への対応、2)海外での顧客開拓のた
めの足場作りにある。
国内のジェネリック市場は活況である。つれて、当社の機械受注も好調である。ジェネ
リックについて、国の方針として 2018 年 3 月末までに、その使用比率を 60%に上げること
を目標にしているが、今後その比率はさらに上がって行こう。2013 年のジェネリックの錠
剤生産量は年間 430 億個であったが、これがジェネリック比率の上昇も含めて、2018 年の
市場は 730 億個に拡大すると見込まれ、現状より 300 億個分の量的拡大が見込める。
そのために、ジェネリックメーカーでは、増産に向けた工場の新設、増設が続く。つれ
て、当社の機械や化成品(医薬品添加剤)の需要も拡大するものと予想される。また、世
界の医薬品市場をみると、新興国で今後伸びてくるのは、中国、ブラジル、インドである。
ブラジルにはすでに食い込んでいるが、インドをどのように攻めるかは現在の課題である。
中期計画「チェンジ&チャレンジ 2014~2016」
中期計画では、海外売上比率 40%、売上高営業利益率 10%、ROE 8%以上を KPI(重要経
営指標)として掲げている。第 6 次の中期 3 ヵ年計画は、
「チェンジ&チャレンジ 2014~2016
…100 年企業に向けた第 2 の創業」と名付けて、①創造的成長の実現と、②筋肉質な企業体
質への変貌を目指す。
マーケットで伸びるのは、中国、インド、中南米などの新興国である。その前提のもと
に、基本戦略を立てている。1)市場伸長に過度に依存しない成長体質の構築、2)グルー
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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プ資源の有効活用による新製品開発の加速、3)海外市場の本格的な取り組み、4)そのた
めの組織改革や人材育成、などに力を入れていく。
中期経営計画 「Change&Challenge 2014~2016」 の骨子 〈数値目標〉
・2016年度に売上高230億円、営業利益23億円(100円/ドル、145円/ユーロ)
〈基本戦略〉
①創造的成長の実現
・市場伸長に過度に依存しない成長体質の構築
・海外市場の本格的取り込み
・グループ資源の有効活用による新製品開発加速と製品力の更なる強化
・製品ラインアップに拡充
②筋肉質な企業体質への変貌
・挑戦的風土の確立と人材育成
・開発及び生産プロセスの更なる改良
・企業価値最大化を図る組織改革(新規事業開拓に特化した専門チーム設置)
・総コスト削減による利益の最大化(フロイント化成の吸収合併)
〈重点施策〉
*グローバル展開
・フロイント‐ベクターは、ミラノでもセンター・ラボを増設し、欧州スマイリー
エリアでの販売を強化 フロイント・ターボの製品取り扱いを開始
・フロイント産業は、インドで代理店を契約、新興国向けプロトタイプを投入
海外での部品生産を検討
*グループ資源の活用
・グローバルに情報を共有し、いち早く市場ニーズを把握
・機械部門、フロイント・ターボ、化成品部門でニーズに合致した新製品の供給
をスピードアップ
*機械部門:グローバル展開の加速と製品開発力の強化
*化成品部門:新製品拡充と電池業界への本格参入
・開発のスピードアップと最低年間1品目の上市
具体的には、フロイント‐ベクターとの連携のよる新製品開発、信越化学と連携するよ
うなオープンイノベーションの推進、浜松技術研究所の開発機能を 3 本部の中に現場化す
る、というような展開である。
グローバル展開では、米国のフロイント‐ベクターがイタリアに販売・テスト拠点を開
設した。欧州のスマイリーエリア(当社の社内呼称)にはジェネリックメーカーが多い。ミ
ラノにユーザーテスト施設を持つことによって、装置購入前のテストで顧客はわざわざ米
国のアイオワまで行かなくてもよい。当社の欧州地域における市場開拓に貢献できよう。
日本からはインドをはじめとする東南アジアの市場開拓に力を入れている。インド向け
製品を送り出したが、いいものなら少し高くてもよいのではないか、という考えからまだ
抜け出せていない。かなりのコスト低減に努め、円安効果もあるが、価格対性能比でみて
まだ現地におけるローカルメーカーとの競争力はまだ十分でない。ロースペック市場での
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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展開に向け、製品開発に力を入れている。
グループ資源の有効活用では、フロイント産業、フロイント-ベクター、フロイント・タ
ーボの 3 社が連携する中で、グローバルに市場のニーズに合致した新製品を開発する。し
かも、そのスピードアップを図る。フロイント・ターボの粉砕・分級技術を、フロイン産
業の造粒・コーティング技術と相互補完させるから、医薬品向けも含めて用途開発を進め
る。また、フロイント産業では、粉砕・分級、造粒、コーティング、印刷(インク)
、とい
った装置事業と委託品添加剤などの化成品事業の連携を一段と深めて、製剤技術をコアコ
ンピタンスとしてユーザーを囲い込んでいく。
機械事業部門では、製品開発力を強化して、グローバル展開を加速する。ジェネリック
用だけでなく、次世代リチウムイオン電池用などの産業用機械も伸ばしていく。また、機
械を販売するだけでなく、メンテナンスや改装などのサービスビジネスも新規事業として
ウエイトを高めていく方向だ。
化成品事業部門では、サプリメント(栄養補助食品)の受託商品に力を入れている。ア
ミノ酸系の新物質を応用したもので、その効能を的確にデリバリーするために、当社の技
術を活かしたものである。品質保持剤では、脱酸素系に参入し、和菓子や麺などニッチな
分野で需要を掘り起こしていく。新事業では信越化学とのコラボなどオープンイノベーシ
ョンを活かして、新製品を開発していく。
中期計画の数値目標では、3 年後の 2017 年 2 月期に売上高 230 億円、営業利益 23 億円を
目指している。売上営業利益率 10%である。内訳では機械部門 142 億円、化成品部門 88 億
円で、海外売上比率は現在の 25%を 40%に持っていく方針である。
市場拡大の鍵は海外にあり、フロイント-ベクターの貢献が重要である。フロイント-ベ
クターは中南米に続き、欧州のスマイリーエリア(EU5 周辺の旧東欧国、トルコなど)を攻
めていく。
中期3カ年計画のKPI(重要経営指標)
2014.2 2015.2
(実績)
売上高
機械
化成品
営業利益
売上高営業利益率
海外売上比率
(注)-は未公表。
176
110
66
12.9
7.3
25
2016.2
2015.2
(億円、%)
2017.2
(実績) (直近公表) (当初計画) ・・・ (計画目標)
174
109
65
11.5
6.6
25
185
130
55
13.5
7.3
-
180
112
68
13.4
7.4
-
230
142
88
23.0
10.0
40
新しい錠剤印刷装置 TABREX(タブレックス)が好評
検査機搭載型の錠剤印刷装置(TABREX)が有望である。これまで技術的難度が高かった
素錠剤にそのまま印刷することができる。素錠剤は見た目で区別しにくいが、何の薬かが
はっきり識別できるようになり、誤飲の防止に結び付く。錠剤にコーティングして、その
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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上に印刷するのでは高くなる。素材にそのまま刻印(プレス)するだけでは、文字は残せ
るがよく見ないとわからない。この製品のベースは大手製薬メーカーと岡部機械工業が開
発したものだが、当社が製剤装置、インク(医薬品添加剤)の技術革新も加えて、素錠に
印刷する装置へと発展させた。世界でも最先端であり有望である。
印刷機械は 3 台納入して、すでに稼働している。初めての機械なので、いろいろ改善要
求が出ている。そこで、印刷精度検査システムの強化を図って、2G(第 2 世代)モデルを出
す予定である。これが出せれば、今後の受注にかなり結びついてこよう。
新しい錠剤印刷装置は、従来のものに比べ、文字の視認性(見やすさ)が大幅に向上し
た。DOD(ドロップ・オン・デマンド)インクジジェット方式の採用で、従来比較 4 倍の高精
細な印刷ができるようになった。また、錠剤の両面印刷、割線に対応した平行印刷や非割
面に限定した印刷も可能にした。この方式は、現在、特許申請中である。1 台 2~3 億円で、
まだ、開発途上の製品なので初期納入には慎重を期す必要があり、準備に手間も要す。現
在、品質性能の向上に力を入れている。
有望マーケットなので、すでに 7 社が参入しているが、当社の優位性が活きてこよう。
TABLEX の優位性については、インクにある。インクの耐光性が良いのと、カートリッジ式
になっているので、取り扱いやすいという面もある。このカートリッジは、安定収益源に
なる可能性がある。
TABLEX のインクについては、今は黒だけであるが、ユーザーからのカラー化のニーズは
強い。印刷に当たってのカラー化は、研究開発中である。薬としての錠剤に印刷するとい
う点で、そのインクの材質(医薬品添加剤)には十分検討する必要がある。業界の中で、
現在、先陣争いをしている最中である。
革新的な連続造粒装置を開発
製剤における連続生産システムについても、他社とアライアンスを組んで新製品化して
いく方針である。工程ごとのパッチ処理ではなく、造粒、乾燥、打錠、コーティング、印
刷を連続して行う。打錠では他社と組んで、全体のプロセスを作っていく。当社としては、
この連続生産システムをビジネス化したいと開発を急いでいる。連続生産システムは、製
剤工程を化学プラントのように一貫生産体制にもっていこうというものである。
従来のバッチ生産(処理を分けて生産)の代わる連続造粒生産を実現する造粒装置
Granufomer(グラニュフォーマー)のコンセプトモデルを開発し、2014 年 4 月より販売に入
った。造粒、乾燥を連続的に処理できるので、品質や生産効率の向上に寄与する。医薬品
会社にとって、バッチ式生産方式から連続式生産方式への転換は今後のトレンドである。
原料粉末を二軸エクストルーダーでバインダと混練し、ドーム型の垂直整粒機で造粒す
る。粒度分布にバラつきのない造粒品が得られ、それを新規開発したスパイラルドライヤ
ーに連続的に供給され、熱風乾燥した後、サイクロン部で回収する。同業のゲアも連続装
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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置を出しているが、当社も新鋭機で対応する、この分野の連続化はこれから本格化する。
装置の新設や更新時に大いに採用が期待できよう。
グローバルな市場開拓とアジア市場の広がり
インドの市場開拓では、日本の機械とベクターの機械で攻めている。その中で今回、生
産機でベクターの機械の受注が決まった。ベクター製の方が、グローバルスタンダードと
して、インドに合っている面がある。
インドと中国は、市場は大きいが、医薬品メーカーの成熟度はこれから先進国水準に入
る段階であり、コストをはじめ日本から攻めていくにはかなり努力を要する。アジアでは
もっと現地ニーズにあったもの、つまり、品質、アクセス、手頃な価格をさらに追求して
いく必要がある。アジアについては、現地にフロイントの拠点を作ることも課題であり、
フロイント-ベクターとの連携も強化する。
グローバルな市場開拓という点では、世界的にジェネリックが伸びていく。発展途上国
においても、当社のハイエンドの製剤機械に対する需要は増えると見込まれる。日本には
製薬関連企業が 2000 社ほどあるが、中国には 5000 社(うち 200 社が上場企業)、インドに
は 2 万社(うち 100 社が FDA 対象)の関連企業がある。清潔で精度の高い工場を作ろうと
すると、当社の出番が増えてくる可能性が高い。
アジアでは韓国、中国、インド、台湾が主力であるが、トルコ、インドネシアも市場に
なってきた。営業は日本から展開しているが、製品は日本製もあれば、米国フロイント‐
ベクター製もあるという状況で、ニーズに合わせている。
添加剤のアジア展開については、韓国、中国、インドで力を入れていく。ケミカルに強
い企業と組んで、特殊なもので攻めていく方針だ。
ファインケミカル機械の市場開拓
浜松の技術開発研究所で、医薬品のテストが年に 300 回ほど行われているが、産業分野
でも例えば電池(自動車用のリチウムイオン電池などに用いる材料を作る機械)のテストが
増えており、昨年度は 15 件のテストが実施された。
産業機械のフロイント・ターボは、2014 年 6 月に品川事業所を設置し、自前の営業体制
を強化した。生産販売の一体化を図った。フロイント・ターボでは、2014 年 3 月にトップ
マネジメントが交替した。伏島社長が同社の会長になり、ターボ社の製品を取り扱ってい
た商社から渡辺氏を社長に迎えた。販売もフロイントに頼るのではなく、自前の営業部隊
をもつようにした。これによって、収益の回復に向けて、体制は強化された。ターボ社の
製品は産業用を中心とするが、医療品用の粉砕にも利用できるし、実績ももっている。よ
って、当社の医薬品向け錠剤作りの生産プロセス(バリューチェーン)においては、これ
から新たな結びつきを強めていく。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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フロイント・ターボはファインケミカル製品が得意である。化粧品、トナー、リチウム
イオン電池関連の原料に使われる。分級器はふるい、造粒機は粉を固める、混式粉砕機は
ミクロン単位へ細かくし、乾式粉砕機は粉インクを作ったりする。ミクロンからナノへの
粉粒加工である。その中で、米国のフロイント‐ベクターは、ターボスクリーナー(分級
器)の販売を始めた。
アイルランドでは製剤技術のビジネス化を目指す
世界で最先端を走るシームレスミニカプセル製造装置(製品名スフェレックス)は、当社
でのみ生産できる。フロイントファーマテックが、この装置の主用途である「微小粒をキ
ーテクノロジーにした新製剤の開発」の事業化を目論んでいる。スフェレックスは液剤を
カプセル化するもので、従来注射等で処方されていた薬剤の経口剤化に対応する。
ファーマテックについては、当初の計画よりも時間を要している。当社は粉、粒を扱う
ことにかけて 50 周年の歴史があり、新技術も開発している。欧州の企業よりも優れている
ので、微粒子の新製剤を生産することができる。準備は大分整っており、大手製薬企業か
らの試験依頼もきている。もう一段の先行投資が必要であるが、リスクをとって攻めると
いう姿勢は崩していない。
欧州のフロイントファーマテックは、製剤技術の欧州拠点で、2010 年 1 月に設立された。
まだ年間 1~2 億円の赤字であるが。新しい剤形のノウハウを蓄積しており、ロイヤリティ
で稼ぐことを基本としつつ、機械を販売に結び付け、ひいては製剤の受託に入っていく。
DDS(ドラッグデリバリーシステム)の利用に向けて、2 つの特定の物質に絞って製剤化の
R&D を進めている。将来はロイヤリティ収入と機械の販売に結び付く可能性があるので注目
したい。5 つの物質に対して製剤技術の特許を出願している。基本は日本で開発した技術で
あるが、日本での特許出願はしていない。ノウハウとして社内に保持してきた製剤技術を
欧州でビジネス化しようという戦略である。
例えば、1 日 3 回飲む薬を 1 回で済むような薬に仕上げるノンパレル(球型)のミニカプ
セルを活用して、それを実現しようとしている。それを製造する機械を販売してもよいし、
そのテクノロジー供与して、薬ができたらロイヤリティをもらうという方式もありうる。
設備投資と研究開発費
(百万円、%)
2014.2 2015.2 2016.2 (予)
2011.2
2012.2
2013.2
設備投資
469
218
221
477
545
600
減価償却費
257
264
232
303
308
325
研究開発費
355
390
435
464
592
600
2.7
2.6
2.7
2.6
3.4
3.2
売上高R&D費
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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米国の子会社フロイント- ベクターとの連携
米国のフロイント‐ベクターでは、工場建屋の増設が今年 1 月に完成した。組み立てス
ペースが現状より 1.6 倍に拡大した。この工場増設はタイミングがよかった。受注が好調
なのでいい方向にある。
南米や欧州での需要拡大に対応するための準備である。フロイント‐ベクターの輸出が
中南米向けに伸びている。米国の製薬メーカーが製造を海外に移しており、それにつれて
当社の機械の仕向地も北米依存から中南米への割合が高まりつつある。ブラジルの代理店
では、機械をテスト機として使えるようにしたり、レンタルを行ったりしてマーケティン
グに力を入れているところもある。ただ、中南米は販売代理店を使っているので、その分
だけ当社のマージンは低くなる。安定した需要が見込める地域では、今後直販の仕組み導
入も検討していく方針だ。
フロイント‐ベクターとのシナジー(相乗効果)を高めるべく、既に技術のトップに日
本人を送り込んでおり、技術交流を深めようとしている。また、営業担当も送って連携を
図っている。年に 3 回(アイオワ、ハワイ、東京で)、取締役会を催している。
新興国に出ていくには、フロイント‐ベクター社のよさと日本製のよさを上手く取り入
れていくことが必要である。アジア展開に当っては、現地でのスペックが必要である。そ
のための拠点も必要で、すでに中国ではスタートしている。インド、中国を攻めるにあた
ってはアフターサービスで日本的なきめ細かさで対応し、それで差別化し、フロイントブ
ランドを作っていく方針である。当社にしかないミニカプセルを作る機械は、インドでも
強みを発揮できる。これは次世代型の薬を作るのに有効である。
インドでの生産機の受注は 1 つの成果である。今期の納品となるが、ベクターの製品を
利用することになった。インド向けは、日本製ではなくベクター製を販売した。当社とし
ては日本製、米国製の 2 つの機械を提示したが、先方はベクター社のものを選択した。こ
のように、アジアでもフロイント- ベクターの製品を売る機会が増えてこよう。
ベクターの課題は営業力にある。アイオア州のシーダーラビッツ(シカゴから飛行機で 1
時間)に生産販売の本拠地を置いているが、全米、とりわけ製薬メーカーの拠点が多い東
部への営業力をいかに強化するかが課題である。
欧州を攻める
ミラノにラボ(デモセンター)を設置した。2014 年 11 月にオープンし、欧州を攻める拠
点として活動を始めた。このラボを使って、テストをする引き合いも増えてきている。今
後のビジネス拡大が期待できよう。
デモセンターにサービスマンも置いて、欧州のスマイリーエリアのマーケティングを強
化する。当社がスマイリーエリアと名付けているアイルランド、スペイン、ポルトガル、
ギリシア、トルコという地域には、ジェネリックメーカーが多い。そこの製剤機械市場を
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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開拓していく。今後の需要拡大には一定の効果を発揮してこよう。
また、連続造粒機(グラニュフォーマー)は 6 月の欧州での展示会に出して、マーケティ
ングを行う。欧州の展示会は 2 年に 1 回開かれるので、ここでミラノのラボもプロモート
していく。
当社の技術が活きるサプリメント受託ビジネス
サプリメントの受託は、昨年後半から勢いがなくなっている。当社が主力とする栄養補
助食品が調整に入っていることによる。次の新製品を開発しているので、いずれか回復し
てこよう。
最近のサプリメントでは、当社の造粒、コーティングなど、製剤技術が活きている。同
じサプリメントの効能でも、それを吸収しやすい形に均一に整え、高い品質で提供できる
かどうかで効き目も異なってくる。利益率は自社品の添加剤や品質保持剤の方が、受託生
産のサプリメントよりも高いが、利益額の貢献度という点では貢献している。
サプリメントは既に 10 種類以上手掛けているが、そのうち大手企業から受託しているも
のがヒットして、規模が拡大してきた。当社の強みは製剤技術を持っていることにあり、
重要成分に特殊コーティング技術を応用することで、胃で溶けずに腸まで届けることがで
きるのである。こうした徐放性のコントロール技術に優れている。
最近では、ビフィズス菌を1つのカプセルに閉じ込め、腸まで届けるものを受託生産し
ている。ビフィズス菌は一般に胃・小腸などの消化管に弱く、胃で死滅しまっては意味が
ない。大腸まで届いて溶けるカプセルを作ることが、製剤技術で実現した。この製剤作り
では、有力企業と共同で開発し、特許(本案件はユーザーとの共願)を取得し、販売に入
った。当社が受注生産を受ける形である。こうした展開が今後も期待できよう。
4.当面の業績
受注は好調、来期はピーク利益更新へ
中期計画の進捗
中期計画に進捗では、3 つの点に注目したい。1 つは受注が好調で、2015 年 2 月期の受注
は前年度比+24 億円増の 124 億円となった。受注残も同+10 億円の 66 億円となった。2 つ
目は、印刷機を 3 台納品したが、その改良版を 2G(第 2 世代)として今年中に出す。3 つ
目はグループ資源の活用で、日本のフロイントと米国のベクターで製品のコラボを進めて
いる。日本の製品のよさとベクターの製品のよさを上手く使い分けて、新興国を攻めてい
く。この動きが具体化している。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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今期の重点テーマ
2016 年 2 月期の重点的な取り組みとして、伏島社長は 4 つ挙げる。1 つ目は、日本のジ
ェネリックは 2018 年にかけて数量ベースで 1.7 倍に伸びているので、その需要を賄うため
の製剤機械の受注をとっていく。2 つ目は、世界の医薬品市場も伸びていくので、その需要
もさらに追いかけていく。3 つ目は、産業用機械で新規分野を伸ばしていく。そして、4 つ
目は、機械のメンテナンス事業を本格的に立ち上げていくことである。
受注・受注残の動向
2012.2
2013.2
機械部門
受注
10135
9280 (-8.4)
販売
9582
9914 (+3.5)
受注残
5810
5271 (-9.3)
化成品部門
受注
2065
2844 (+37.7)
販売
5653
6482 (+14.7)
受注残
337
546 (+61.8)
合計
受注
12200
12125 (-0.6)
販売
15236
16396 (+7.6)
受注残
6148
5817 (-5.4)
(注)カッコ内は前年度比伸び率
2014.2
10067 (+8.6)
11004 (+11.0)
4991 (-5.2)
(百万円、%)
2015.2
12407
10941
6682
(+23.2)
(-0.6)
(+33.9)
2737
6611
560
(-3.8)
(+2.0)
(+2.5)
1932
6482
98
(-29.4)
(-2.0)
(-82.5)
12804
17616
5551
(+5.6)
(+7.4)
(-4.6)
14340
17424
6780
(+12.0)
(-1.1)
(+22.1)
円安の影響
円安はアジアで追い風になっている。韓国からの受注が入っている。インドでも大型の
生産機が受注できた。一方、ユーロに対しては、円高、ドル高となっており、この分の負
担が出ている。ベクターの対ユーロビジネスでも影響を受けている。
円安については、海外から原料を輸入している分についてコストが上がっている。一方
で、海外の子会社の利益を円転する時にはプラスに働く。また、日本からの輸出は円建て
であるが、ここの競争力にも改善効果を発揮する。
地域別売上高
(百万円、%)
2013.2 (構成比) (伸び率) 2014.2 (構成比) (伸び率) 2015.2 (構成比) (伸び率)
日本
12800
78.1 (+8.5) 13233
75.1 (+3.4) 13056
74.9
(-1.3)
海外
3596
21.9 (+4.5)
4382
24.9 (+21.9)
4367
25.1
(-0.3)
北米
948
5.8 (-37.3)
1503
8.5 (+58.6)
1599
9.2 (+6.3)
欧州
772
4.7 (-8.2)
701
4.0 (-9.2)
450
2.6 (-35.8)
アジア・中南米等
1875
11.4 (+72.4)
2177
12.4 (+16.1)
2317
13.3
(+6.4)
中南米
1071
6.1 ー
アジア等
1246
7.2 ー
合計
16396 100.0
(+7.6) 17616 100.0 (+7.4)
17424
100.0
(-1.1)
(注)伸び率は前年度比
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例えばインドにおいては、日本から輸出する場合と米国のフロイント・ベクターの製品
を持っていく場合がありうる。製品特性上どちらが顧客に向いているかという点と、価格
競争力上どちらが先方にとって有利かという 2 つの面から選択が可能となる。
為替が 120 円/ドルになってくると、ベクターと日本のフロイントで価格面の差はないの
で、製品特性がニーズに合うかどうかがポイントとなる。
輸入原料のコストアップについては、値上げの要請をしているが、原料市況の上昇は転
嫁できても、為替の分についてはまだ十分ではない。
需要は強い
ジェネリックメーカーの設備投資意欲は引き続き高い。量産のための製剤機械の大型化
も進んでいる。例えば流動層が 120~200 ㎏の装置から 300 ㎏のものになるという傾向であ
る。一方で納期を急ぐという方向にありながら、先方の工場建設や建屋の増設が遅れて、
当社の機械が納入できないという納期遅れも生じている。そうした中でも次の注文が入っ
てくるという状況である。
中期的にみると、2020 年頃まではジェネリックメーカーの設備増強が続こう、ジェネリ
ック比率の向上が続くからである。その後については、ジェネリックメーカーの海外展開
がどこまで拡大していくかが注目される。彼らの海外生産のウエイトが高まれば、そこで
も当社の機械が使われる可能性が高いからである。
ジェネリックメーカーからの品質要求は、新薬メーカーと同じで、特に違いはない。受
注における価格交渉は厳しいが、当社の品質とサービス体制をベースに、適正な価格で受
注をとっていく方針である。
セグメント別業績
機械
(伸び率)
化成品
(百万円、%)
(伸び率) 調整額
合計
2012.2
売上高
営業利益
(同利益率)
9582
907
9.5
(+18.4)
(+46.3)
5653
470
8.3
(+9.5)
(+20.9)
-1
-312
15236
1065
7.0
売上高
営業利益
(同利益率)
9914
1172
11.8
(+3.4)
(+29.2)
6482
565
8.7
(+14.7)
(+20.2)
ー
-267
16396
1470
9.0
売上高
営業利益
(同利益率)
11004
1242
11.3
(+8.6)
(+6.0)
6611
379
5.7
(+2.0)
(-32.9)
ー
-335
17616
1286
7.3
売上高
10941
(-0.6)
営業利益
1108 (-10.8)
(同利益率)
10.1
(注)同利益率は、売上高営業利益率
6482
474
7.3
(-2.0)
(+24.9)
ー
-432
17424
1150
6.6
2013.2
2014.2
2015.2
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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2014 年 2 月期は減速し、経常利益で 17%減益となった
2014 年 2 月期は、売上高 17616 百万円(前年度比+7.4%)、営業利益 1286 百万円(同-
12.5%)
、経常利益(同-17.1%)
、当期純利益 787 百万円(同+2.9%)となった。産業機械
の不振と化成品の原料高が響いた。機械部門では、医薬品関連の売上高は前年度比+18.1%
と伸びたが産業関連が同-23.9%となり、セグメントの利益の伸びは同+6.0%に留まった。
受注高は同+8.6%であったが、期末の受注残は同-5.2%と減少した。海外では中南米が大
きく伸びているが、採算はさほど高くないので、利益貢献度は大きくなかった。
化成品は売上高が同+2.0%であったが、セグメントの利益は同-32.9%となった。欧州か
ら入れている輸入原料がユーロ安(102.6 円/ユーロ→129.8 円/ユーロと 2.7%の円安)でコ
ストアップとなったことが響いた。
セグメント別業績予想
2011.2 2012.2 2013.2
2014
2015.2
9914 11004
7024 7081
2983 3892
1022
782
10941
6887
3905
999
2016.2
(会社計画)
(予)
(予)
(会社計画)
13400
9000
4300
1100
15400
10400
5000
1200
14200
1500
11.2
1800
13.3
5500
2200
2000
1300
6300
2300
2200
1800
474
7.3
400
7.3
500
7.9
-335
-432
-500
-600
16396 17616
1470 1286
9.0
7.3
17424
1150
6.6
18900
1400
7.4
21700
1900
8.8
23000
2300
10.0
5000
26.5
6500
30.0
9200
40.0
機械部門
フロイント単体
フロイント‐ベクター
フロイント・ターボ
8094
4776
2757
561
9582
6595
2799
1093
営業利益
売上高営業利益率
619
7.6
907
9.5
1172
11.8
1242
11.3
1108
10.1
5163
2064
1962
1136
5653
1948
1892
1812
6482
2041
1889
2552
6611
1971
1916
2723
6482
2135
1952
2394
営業利益
売上高営業利益率
338
6.5
470
8.3
565
8.7
379
5.7
セグメント間調整額
(全社的管理費)
-328
-312
-267
売上高
営業利益
売上高営業利益率
13257
680
5.1
15236
1065
7.0
海外売上高
海外売上比率
3236
24.4
3442
22.6
化成品部門
医薬品添加剤
食品品質保持剤
健康食品他
(百万円、%)
2016.2 2017.2 2017.2
3596
21.9
4382
24.9
4368
25.1
13000
5500
18500
1350
7.3
8800
(注)(会社計画)は公表ベース。(予)アナリスト予想。
2015 年 2 月期も下方修正し、7%経常減益となった
2015 年 2 月期は、売上高 17424 百万円(前年度比-1.1%)
、営業利益 1150 百万円(同-
10.6%)
、経常利益 1249 百万円(同-6.9%)
、当期純利益 695 百万円(同-11.7%)とな
った。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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機械の受注は 12407 百万円(同+23.2%)と好調で、受注残も 6682 百万円(同+33.9%)
となった。しかし、納期遅れや産業用機械の減少などによって、機械部門の売上高は同-
0.6%、セグメント利益は同-10.8%となった。
期ズレについては 5 億円ほど発生している。フロイント本体では、機械のうち、医薬品
以外の産業用(主に食品向け)が低調であった。海外では、アジア(韓国、中国)、中近東(ト
ルコ)が増えた。ベクターの売上は横這いながら、販売地域の違いで全体の採算は向上した。
化成品は全体の売上高は同-2.0%と伸びなかったが、新規商品(栄養補助食品など)は
減少したものの、採算のよい添加剤や品質保持剤が伸びたことと、浜松への移転効率もあ
って、セグメント利益は同+25.1%と増益になった。
サプリメントは、売上高は大きいが、受注生産なので、利益率は相対的に低い。医薬品
添加剤の利益率はよい。品質保持剤を生産していたフロイント化成をフロイント本体に統
合し、浜松に生産拠点を移した。これによって、生産効率が上がり、コストダウンにもな
っている。
また、このセグメントに属するフロイント。ファーマテック(アイルランド)は-190 百
万円の赤字であった。フロイントファーマテックは一部のテストが売上げとして初めて計
上された。しかし、まだ本格的なものではないので、先行投資が続いている
P/L でみると、粗利は+207 百万円となったが、販管費が-343 百万円(うち 50 周年記念
費用-100 万円)となったため、営業利益は前年度より-136 百万円ほど減少した。
期ずれ以外にも、1)新興国の市場開拓に伴う費用の増加、2)タブレックスの初納入に
伴う開発費、改良費の増加、3)輸入原料のコストアップ、4)ターボ社の前社長の退職金、
5)50 周年記念事業の費用増など、これまでよりもコストアップになる要因が加わった。
R&D 費が 464 百万円から 592 百万円へ+128 百万円ほど増えている。これは新規分野であ
る印刷機の R&D が増えたことによる。
原料高では、欧州から輸入している医薬品添加剤用乳糖(ラクトース)が影響した。現地
での原料高と円安による輸入価格高の両面で響いている。利益に対して、1 割前後の影響を
もたらすが、市況高については逐次価格転嫁しており、概ね浸透できている。その後、乳
糖の相場は落ち着いてきている。
会社側では昨年 10 月に業績見通しを下方修正した。受注が好調であるにも関わらず、増
益予想から減益予想に変わった要因は、納期の期ずれにある。ジェネリックメーカーが設
備の増強を進めているが、その建屋の建設が遅れた。建設業界における人手不足が至る所
に出ている。その影響で建屋・設備が遅れれば、中に入る製剤機械の納期も遅れてくる。
しかし、翌期に向けては納期管理への対応を適切に調整していけば、業績はかなり上向い
てくることになろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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キャッシュ・フローの動向
2014.2
営業キャッシュ・フロー
税引き後当期純利益
減価償却
売上債権
棚卸資産
仕入債務
前受金
投資キャッシュ・フロー
有形固定資産
フリーキャッシュ・フロー
財務キャッシュ・フロー
配当金
現金・同等物期末残高
2015.2
1227
822
574
303
453
552
-113
-447
-423
1075
895
308
-781
12
345
252
-240
-264
804
-226
-172
1400
-600
1150
350
-300
-200
200
200
-600
-550
475
-300
-215
4548
(百万円)
2017.2(予)
850
325
-300
-100
200
100
-453
582
-284
4107
2016.2(予)
-600
800
-400
-260
4723
-300
5123
2016 年 2 月期は増益に転換、来期はピーク利益更新へ
今 2016 年 2 月期は、会社公表ベースで、売上高 18500 百万円(前期比+6.2%)、営業利
益 1350 百万円(同+17.9%)
、経常利益 1370 百万円(同+9.6%)、当期純利益 800 百万円
(同+14.9%)を見込んでいる。機械部門の売上は同+18.8%と好調に拡大するが、化成
品は同-15.1%と減少する。化成品では、新規食品で主力のサプリメントの生産調整が長
引くためである。全体として営業利益は+200 百万円(同+17.9%)ほど増える見込みであ
る。これが会社公表の内容である。
今期の状況はいい方向にあるので、会社公表を多少上回ることができよう。来 2017 年 2
月期の売上目標 230 億円については、今のペースでは届かない公算が高い。しかし、新製
品も含めて内外の需要は強い。生産体制の強化、営業の充実による拡販が進めば、届かな
いわけではない。今期後半の受注動向が注目されよう。
来期は、売上高 21700 百万円(同+14.8%)
、営業利益 1900 百万円(同+35.7%)
、経常利
益 1950 百万円(同+34.6%)を予想する。
配当性向については、従来の 20%以上から、30%を目途へと変更した。2015 年 2 月期は 50
周年の記念配 5.0 円も含めて 30 円とした。2016 年 2 月期について会社側では 25 円に戻す
方針であるが、業績が順調に推移すれば 30 円が継続されることになろう。
バランスシートは良好で、フリーキャッシュ・フローも十分
バランスシートは健全で無借金である。棚卸資産が増えても前受金で対応できる。研究
開発型企業なので、大型の設備投資が必要なわけではない。増加運転資金は内部資金で対
応できるので、外部資金に頼る必要はない。フリーキャッシュ・フローは十分確保できる
ので、配当余力は高まってこよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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バランスシート
2012.2
流動資産
10554
現預金
3035
受取手形・売掛金
4954
商品・製品
251
仕掛品
1219
原材料・貯蔵品
403
固定資産
3787
有形固定資産
2861
投資その他
898
総資産
14342
流動負債
5204
支払手形・買掛金
2810
前受金
1223
固定負債
647
純資産
8489
自己資本比率
58.3
(注)有利子負債はゼロで無借金
5.企業評価
2013.2
11084
3617
4764
210
1497
394
3886
2910
946
14971
5015
2478
1279
640
9315
61.4
(百万円、%)
2014.2
2015.2
11331
12782
4600
4870
4409
5272
202
296
937
931
535
543
4219
4495
3052
3403
988
944
15550
17277
4402
5427
2068
2786
926
1242
754
669
10392
11180
65.8
63.6
海外市場の拡大と利益率の向上が鍵
3 ヵ年計画で目指すもの
伏島社長は 2 代目として、長期ビジョンを持って経営にあたっている。海外市場を伸ば
すには準備期間が必要であり、そのための投資もなされよう。
製剤機械は内外とも好調である。ジェネリック企業の投資は拡大しており、タブレック
スの評価も高い。製剤機械中心のビジネスではあるが、今後は産業用や添加剤にもチャン
スを作ることが出来る。添加剤は日米欧各国の規制が厳しいが、その基準を準用できる韓
国・台湾などでのビジネスチャンスがある。
イタリアのミラノにラボ兼展示場を開設した。欧州のスマイリーエリアともいわれるイ
タリア、アイルランド、ポルトガル、エジプト、トルコにはジェネリックメーカーが多い、
そこでミラノにラボを設置することで、受注拡大に結び付けようという作戦である。
タブレックス(TABREX)は大塚製薬のプレタール錠に初めて使われた。この装置は、当
社の機械・化成品(インク:医薬品添加剤)の技術を加え、錠剤検査機能も持った印刷装
置 TABREX DOD へと発展した。現在受注の同装置の製造は仕入先メーカーが分担する。錠剤
印刷の市場は今後大きな伸びが見込めよう。そのための品質性能の向上が急がれる。
新興国向け製品の開発も進んでいる、ハイコーターFZ は、インド市場でみれば、価格が
3 倍以上の高額機械である。ここまでのスペック(仕様)はいらない。現地に合った製品を
いかに開発するか。ベクターの製品で生産機の受注ができたことは 1 つの解であろう。
癌に使う薬など、主成分は薬としての効果(薬効)が高い分、健常の作業者にも影響があ
りうる。そこで、薬効をシールする製剤機械(コンテイメントスペック)が必要となる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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こうした機械がアジアのジェネリックでも今後必要になってこよう。
今後の展開としては、アウトソーシングも含めて、1)工場の設備稼働率を上げるには、
外部からの受注生産を増やしていく、2)医薬品に限らず、健康食品などの儲かる分野にシ
フトしていく、3)新興国向け製品開発と、現地生産も含めた製造プロセスのコストダウン
に力を入れる、という点が重要である。
将来を見ると、癌領域等の新薬が注射剤に変わっていく可能性もあるが、経口投与で、
効き目の長持ちする錠剤へのニーズも一段と高まろう。当社の技術をもってすれば、医薬
品の製造は十分できる。すでに引き合いがきて生産に入っているものもある。
グローバルマネジメント力がいかに発揮されるか
フロイント‐ベクターとの連携による市場開拓は期待できる。2012 年に従来あった国際
本部を改組して、機械事業本部、化成品事業本部の中に入れた。昨年、研究開発部門も各
事業部の中に位置づけた。社長は海外経験も豊富なので、十分期待できる。フロイント‐
ベクターの海外売上げは南米のブラジル、チリ、アルゼンチンにも展開しており、欧州を
入れて半分以上に達している。
中期計画のドライバーとしては、フロイント本体のアジア、フロイント-ベクターの南
米・中近東等の新興国での市場拡大、フロイント-ターボの化粧品パウダー、リチウムイオ
ン電池等、付加価値が高い分野への展開、製剤技術を用いたサプリメントの受託なども寄
与してこよう。
2017 年 3 月期に目標の売上高 230 億円、営業利益 23 億円が達成できるかどうかはまだ分
からない。製品開発力はあるので、市場開拓がどこまで進展するかにかかっている。海外
の現地拠点の強化など、もう一段の布石が必要である。
日本人、外国人を含めた人材の育成、強化が最大のテーマである。中途採用も進め、拠
点への先行投資も必要なので、海外の収益力が向上には一定の時間を要しよう。
営業利益率で 10%を実現することができるかどうかがポイントである。自己資本比率が
高いこともあって、ROE をもう一段高めるには、営業利益率の向上が不可欠である。海外売
上比率を 40%に高める方向の中で、海外の採算を上げること、当社の独自技術を活かした
付加価値商品のプライシングを見直すことも必要になろう。
海外市場開拓でもう一段の成果が上げられるかどうかにかかっている。この分野で世界
トップクラスの地位を向上させるには一定の努力を要するので、企業評価は B とする。(企
業評価の定義については表紙を参照)
社外取締役については、株主総会で 2 名入れることとした。1 部上場基準には 2200 人の
株主が必要であるが、2015 年 2 月末で 3900 名となった。100 株単位の株主が多いので、株
主優待(1000 円のクオカード)は、実質配当の増額という点で意味を持つ。株主優待とし
ては、第 2 四半期末時点で 1 年以上保有している 100 株以上の株主にクオカード 1000 円が
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
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ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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付く。実質配当利回りを 0.7%ほど上げることになろう。
現時点の株価(5/7)でみると、PBR1.03 倍、ROE7.6%、PER13.2 倍、配当利回り 2.3%で
ある。今期の業績は好転し、来期はピーク利益を更新してこよう。今後の業績拡大も十分
見込める。ROE が 9%を超えてくれば、当社の企業価値はマーケットにおいて大きく見直さ
れてこよう。
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