日本に根付いて半世紀以上 日本企業の高い信頼を得た グローバル・ファーム スクワイヤ・サンダース 外国法共同事業法律事務所 米国をベースにする世界15か国、32都 市に展開する米国スクワイヤ・サンダー ス&デンプシー LLPの日本の拠点。前身 はグラハム&ジェームス東京オフィス。00 年にスクワイヤ・サンダースと統合し、05 年4月に現在のスクワイヤ・サンダース外 国法共同事業法律事務所となる。日本 企業が関わるM&A、 プロジェクト・ファイ ナンス、海外訴訟・仲裁、知的財産権な どの案件を中心に展開。現在、弁護士・ パラリーガルなど合わせ約40名の体制。 www.ssd.com/japan クライアントとの長年の付き合いの裏に 丁寧で柔軟な対応 — スクワイヤ・サンダースの強みなど、特長を教えてく ださい。 というスタイルです。現在の東京オフィスには、 私も含め てグラハム&ジェームズ時代からの生え抜きが多く、黒 須弁護士、チェルバーグ弁護士も20年以上一緒にやって きた仲間です。 このように日本に長く根付いてきたおかげで、日本企 土居 我々東京オフィスの前身は、グラハム&ジェーム 業の方からは高い信頼をいただいていると自負していま ズの東京オフィスですが、 最初に開設したのは55年で、 日 す。外資系事務所には珍しく、 日本の一流企業から当事務 本企業とのお付き合いが非常に長いことが最大の特長で 所の弁護士を社外取締役や監査役に選任していただいて す。クライアントの約8割は日本企業ですし、 戦前からの いることも、 その一つの証だと思います。 お付き合いが続いているクライアントもいて、海外企業 スクワイヤ・サンダース&デンプシーLLPの主要業 の日本への進出よりも、日本企業が海外の企業と提携し 務分野としては、 M&A、 紛争解決、 行政規制への対応、 知 たり、海外で新しい形態のビジネスをスタートさせる際 的財産関連があげられますが、テレコム分野も得意とし のお手伝いの仕事が中心です。また最近は、 日本企業同士 ています。テレコム企業のM&Aから衛星やネット、 移動 のM&Aなど国内案件でもグローバルなインパクトを考 体通信、 放送分野に関わる各種の取引案件や規制案件まで えて当事務所にご依頼いただくことが増えています。 カバーしています。また、 テクノロジー分野でも知的財産 そのような我々が重視しているのは、海外からの弁護 士が短期間日本に滞在して仕事をするのではなく、あく まで東京に腰を据えた経験豊富なメンバーが業務を行う 関連全般から訴訟、 ベンチャー、 M&Aなど何でもできる 体制があり、 IT、 バイオ技術の専門家も在籍しています。 — 日本企業との付き合い方で気をつけている点は何で しょうか。 松本 私はもっぱら日本法に関する業務を担当していま すが、日本と海外の両方のクライアントとお仕事をさせ ていただいています。海外、 特に米国のクライアントから はビジネス上のニーズに即した実務的な助言やスピー ディーな対応を求められることが多いのに対し、日本の クライアントからは法律上の問題点に関する高いレベル の助言を求められることが多いといった傾向があるよう に思います。 その中で私は、一方で得た経験を他方でも生かすこと で、私どもの事務所のサービスの質を向上させていくこ とを心がけています。日本企業で法務を担当されている 方には大変優秀な方が大勢いらっしゃるので、そのよう な方々にも認められるような日本法に関するサービスを 提供できるよう日々努力しています。 黒須 日本企業の方が我々の法的な説明に求めるもの は、 確かに厳格ですね。 「この問題は心配ありません」 とい うだけでは足らず、担当者が経営陣にきちんと報告でき るような形で根拠を丁寧に説明しなければならない場合 が多いです。その要望に満足いただける回答を続けてき 弁護士・パートナー 松本宗大 Munehiro Matsumoto 96年東京大学法学部卒業。99年弁護士登録。02年ペ ンシルバニア大学法学修士号。専門は企業間取引、 コー ポレート・ファイナンスおよびコーポレート・ガバナンス。クロ スボーダー M&A 案件などに携わるほか、NYSE 上場日本 企業へのディスクロージャーに関する助言や上場 REIT 運 用会社のコンプライアンス委員なども経験。 たことが現在の信頼につながっていると思います。 —海外取引案件を外資系事務所に依頼すると高いコストが かかるというイメージが、 どうしてもあると思いますが。 黒須 我々は長くお付き合いしているお客様には、長期 的視点で考えて個々の案件でのフィーの設定について柔 がちな米英中心の考え方はとっていません。米国以外で 何か問題が起こると米国から何十名も弁護士が出てくる というのではなく、基本的には現地の弁護士がコント ロールして、その地域独特のニーズにあったやり方で対 処するようにしています。 例えば最近では、日本の大手通信企業の国際事業に関 わる案件がありました。日本法に関しては松本弁護士を 中心に東京オフィスでチームを組み、米国法に関しては 米国オフィスのFCC (米連邦通信委員会) 対応に強い弁 護士らとコンタクトを取りながら進めていきましたが、 他のオフィスの専門家を引き入れながらも契約書作成・ 交渉など主要な部分は東京オフィスが中心となって行い ました。この件では、日本企業の慎重さと米国企業のス ピード感の違いをどう調整するか、そのギャップを埋め ることに苦心しましたね。 クライアントにとっての仕事の 透明性が大事 軟に対応しています。また、 グローバル・ ファームにあり カリフォルニア州弁護士・アジア地域統括パートナー 数年がかりの世界同時進行プロジェクトも 東京オフィスで指揮 黒須 賢 Ken Kurosu 日本育ち。スタンフォード大学卒業。83年ワシントン大学法 学博士号、 カリフォルニア州弁護士登録。93年外国法事 務弁護士登録。専門はM&A、企業間取引、 プロジェクト・ ファイナンス、 インフラ・ストラクチャー。DIC株式会社 (旧大 日本インキ化学工業株式会社) 社外監査役。 — 複数の国や地域にまたがる大きな案件には、どのよう なものがありますか。 チェルバーグ 私が抱えている一つの案件は、世界中で 多数の資産売却を同時に行うという大規模なM&A案件 です。日本をメインに米国、 欧州から南米などで同時進行 的に行わなければならないので、 スクワイヤ・サンダース で巻き込まれることに不安を感じる日本企業に対して、 のグローバル体制が非常に役に立っています。ただ、そう アドバイスはありますか。 いうときにも特に気をつけているのは、クライアントの チェルバーグ 海外での訴訟がどのような流れで行われ 知らないところでプラクティスを動かさないということ るのか、どれくらいの費用がかかるのかなどの問題に関 です。クライアントが納得できない人員の投入をしてい して、我々は欧米の弁護士と一緒にプランを立て、さら てはフィーの透明性が損なわれますし、多くの弁護士が に、 本格的に取り組んで最後まで争うか、 最小限で抑える 関わりすぎることで情報の安全性を保つことも難しくな 戦略をとるかなど、状況ごとに選択肢を示すこともでき ります。ですから我々は極力少人数のチームを組み、 クラ ます。 イアントに透明な形で仕事を進めるという点には常に気 黒須 最近の傾向としては、いったん訴訟が起きると、そ を使っています。 れが単発的なものにとどまらず、 米国から欧州、 アジアへ もう一つは、日本の医薬品メーカーが、もともと海外 とどんどん広がっていくというケースが増えています。 メーカーからライセンスを得て日本で新薬を開発したの 最初の方向性を間違えてしまうと、問題が全世界に広 ですが、それをアジアだけではなく全世界レベルで展開 がってしまうという危険性があるわけです。ですから、ま する、さらにその医薬品の適応症の追加も行うというプ ず何よりも早くご相談に来ていただきたいですね。米国 ロジェクトです。このために、 必要な知的財産権を取得し の場合は訴訟が起きそうだという段階でディスカバリー たり、 ビジネス・ パートナーとの交渉をするなど、 数年が の問題が生じてきます。特に最近ではEディスカバリー かりのプロジェクトを進行させています。 対策が必須です。 — クラスアクションなど日本にはない形態の訴訟に海外 日本企業の場合、こうした訴訟に用いる文書や電子情 報の管理に関しては法務部門が対処するのが通常です 事なのは皆が対等に協力してやっていく関係です。また が、今やITの専門家なども関与しなければならない時 渉外業務ばかりでは経験が偏ってしまい日本の弁護士が 代です。企業内のシステム構築段階から訴訟リスクを念 育たないということからも、 紛争処理を含め、 純粋な国内 頭に入れておくという考えは米国では定着しています 案件は積極的に取り組んでいかなければならないと考え が、日本でもIT分野の方にもリーガルマインドを持っ ています。 ていただきたいと思います。 土居 現在、東京オフィスには外国法事務弁護士を含め 弁護士が27名在籍していますが、 今後5年程度で50~60名 日本弁護士の力を高め より多くの国内案件に対応できる事務所に — に増やしたいと考えています。また日本法に関する業務 を担当する弁護士が約半数のところを、 将来的には3分の 2の弁護士が担当できるような体制にしたいですね。 今後の東京オフィスの方向性をどのように考えていま また特にこれからは、ITやバイオに関するIP分野 すか。 と、 M&Aに力を入れていきたいです。そして何よりも、 黒須 日本の弁護士と外国の弁護士がより融合した事務 我々の最大の強みである長く培った日本のクライアント 所にしたいですね。日本の弁護士が外国の弁護士の下請 とのビジネス・パートナーのような関係を、これからも大 け的な関係になったり、逆の関係になってしまうことが 切にしていきたいと思います。 外国法共同事業法律事務所にありがちな問題ですが、大 スティーブン S. 土居 Steven S. Doi ポモナ大学卒業。86年カリフォルニア大学ロサンゼルス校 法学博士号。87年カリフォルニア州弁護士登録。94年外 国法事務弁護士登録。専門は企業間取引、 コーポレート・ ファイナンスおよびコーポレート・ガバナンス。米国、 日本、英 国、 ドイツ、中国などで公開・非公開企業の法律顧問を任さ れ、 「Asialaw Leading Lawyers 2008年版」にも選出。 Photo by Kenshu Sannohe 将来的には3 分の2が国内業務を 担当するような体制に カリフォルニア州弁護士・マネージング・パートナー カリフォルニア州・イリノイ州弁護士・パートナー スティーブン・E・チェルバーグ Stephen E. Chelberg スタンフォード大学卒業。83年ミシガン大学法学博士号。 83年カリフォルニア州・87年イリノイ州弁護士登録。06 年外国法事務弁護士登録。専門は企業間取引、 コーポ レート・ファイナンスおよびM&A、知的財産、 ライセンス供 与。また、 テクノロジー分野での実績も豊富。日本で半導 体装置メーカーおよびサプライチェーン・ソフトウェア会社 を設立・運営した経験を持つ。
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