YIA 候補演題口演発表スケジュール (発表 7 分、討論 4 分) 第 2 会場 (53 会議室)2 月 5 日(土) YIA 候補演題口演発表① 08:30~09:25 2 型糖尿病時における P2Y-receptor を介した血管収縮反応性増大に対する losartan の効果 Y-1 ○石田恵子、松本貴之、田口久美子、小林恒雄、鎌田勝雄 星薬科大学 医薬品化学研究所機能形態 細胞内酸性環境を維持する(プロ)レニン受容体の生理的な機能 Y-2 ○木内謙一郎 1)、市原淳弘 2)、佐野元昭 3)、和田戈虹 4)、和田洋 5)、三戸麻子 1)、 木田可奈子 1)、成田達也 1)、大島洋一 2)、黒澤秀章 1)、福田恵一 3)、伊藤 裕 1) 1) 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科、2)慶應義塾大学医学部抗加齢内分泌学講座、 3) 慶應義塾大学医学部循環器内科、4)同志社女子大学薬学部生化学研究室、 5)大阪大学産業科学研究所 尿細管管腔内アルカリ化は蛋白尿による近位尿細管細胞酸化ストレスを、Pyk2 経路を介し Y-3 て改善させる ○相馬友和 1)、阿部倫明 2)、森口尚 3)、高井淳 3)、秋山泰利 1)、豊原敬文 4)、鈴木健弘 1)、 種本雅之 5)、阿部高明 6)、山本雅之 3)、伊藤貞嘉 1) 1)東北大学大学院 腎高血圧内分泌学分野、2)仙台社会保険病院、 3)東北大学大学院 医化学分野、4)京都大学 iPS 細胞研究所、5)帝京大学医学部内科学講座、 6)東北大学大学院 分子病態医工学分野 心筋梗塞モデルへの骨髄単核球細胞移植と fasudil 併用投与による心保護効果 Y-4 ○武島 宏、小林直彦、小口 渉、石川まゆ子、杉山史弘、石光俊彦 獨協医科大学 循環器内科 心臓周囲脂肪組織における炎症性サイトカインの発現と冠動脈病変の関連 Y-5 ○平田陽一郎 1)、元木達夫 2)、黒部裕嗣 2)、赤池雅史 1)、田端 実 3)、高梨秀一郎 3)、 北川哲也 2)、佐田政隆 1) 1) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学分野、 2) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部心臓血管外科学分野、 3)榊原記念病院 心臓血管外科 YIA 候補演題口演発表② 09:30~10:25 eNOS 機能異常は代償性腎肥大機序を破綻させ、腎障害を進展させる Y-6 ○長洲 一、佐藤 稔、冨田奈留也、佐々木 環、柏原直樹 川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学 アドレノメデュリン-RAMP2 系による心臓エネルギー代謝制御と恒常性維持 Y-7 ○吉沢隆浩 1)、桜井敬之 1)、神吉昭子 1)、河手久香 1)、市川優佳 1)、荒井琢磨 1)、 小山晃英 1)、家里康弘 1)、楊 磊 1)、植竹龍一 1)、山内昭弘 1)、沖村綾乃 1)、田中 愛 1)、 川上速人 2)、中西広樹 3)、田口 良 3)、中西 豪 4)、新藤隆行 1) 1) 信州大学医学系研究科 臓器発生制御医学講座、2)杏林大学医学部 解剖学、 3)東京大学医学部 メタボローム講座、4)島津製作所 アプリケーション開発センター 高血圧発症における RVLM 内 Neuregulin-1/ErbB pathway の役割 -Nitric oxide synthase Y-8 (NOS)/NO axis との関連○松川龍一、廣岡良隆、伊藤浩司、砂川賢二 九州大学大学院医学研究院 循環器内科学 15 Y-9 Y-10 平滑筋特異的(プロ)レニン受容体ノックアウトマウスの解析 ○三戸麻子、市原淳弘、木内謙一郎、木田可奈子、柏 真紀、伊藤 裕 慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 Angiotensin II 誘発血管リモデリングにおける hypoxia-inducible factor-1α の役割 ○今西正樹 1)、石澤啓介 2)、木平孝高 1)、池田康将 1)、土屋浩一郎 2)、玉置俊晃 1)、 冨田修平 1) 1) 徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部薬理学分野、 2)徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部医薬品機能生化学 YIA 候補演題口演発表③ 10:30~12:00 脂肪酸受容体 GPR120 機能不全は食餌誘発性の肥満及び脂肪肝を惹起する Y-11 ○市村 敦彦、平澤 明、宮内諭、木村郁夫、鮎川公美子、竹内理人、辻本豪三 京都大学大学院薬学研究科ゲノム創薬科学/薬理ゲノミクス分野 Angiotensin II 誘発血管リモデリングに対するニトロソニフェジピンの抑制作用 Y-12 ○櫻田 巧 1)、石澤啓介 2)、今西正樹 1)、堀ノ内裕也 1)、富永えりか 3)、谷口順平 3)、 藤井聖子 2)、木平孝高 1)、池田康将 1)、冨田修平 1)、土屋浩一郎 2)、玉置俊晃 1) 1) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 薬理学、 2) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 医薬品機能生化学、 3)徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 臨床薬剤学 血管内皮細胞のアドレノメデュリン-RAMP2システムによる血管恒常性維持機構 Y-13 ○小山晃英、桜井敬之、神吉昭子、新藤優佳、川手久香、荒居琢磨、家里康弘、吉沢隆浩、 楊 磊、植竹龍一、沖村綾乃、山内啓弘、田中 愛、新藤隆行 信州大学医学系研究科 臓器発生制御医学講座 マウス腸間膜動脈における acetylcholine および calcium ionophore 誘発内皮依存性血管弛緩 Y-14 反応の特徴 ○和家祥大 1)、牧野堅人 1)、藤原弘喜 1)、橋川成美 2)、橋川直也 3)、髙取真吾 1)、 川﨑博已 1) 1) 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科臨床薬学、 2) 岡山理科大学 理学部 臨床生命科学科薬理学、 3)岡山理科大学 理学部 臨床生命科学科臨床分子遺伝学 血管周囲神経間相互干渉における proton の神経間伝達物質としての役割 Y-15 ○尾崎 周一郎1)、平井 和浩1)、高取 真吾 1)、北村 佳久2)、川﨑 博己1) 1) 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 臨床薬学、 2) 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 医薬管理学 ハイコンテンツイメージャーによる血管新生阻害薬の探索と作用機構解析 Y-16 ○張 孜 1)、西村有平 1,2,3,4)、黒柳淳哉 1)、島田康人 1,2,3,4)、梅本紀子 1)、田中利男 1,2,3,4) 1) 三重大学大学院医学系研究科 薬理ゲノミクス、 2) 三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター、 3) 三重大学ベンチャービジネスラボラトリー メディカルケモゲノミクス、 4)三重大学生命科学研究支援センター バイオインフォマティクス グレリン側脳室内投与が心臓迷走神経活動に及ぼす影響 Y-17 ○清水秀二、秋山 剛、曽野部 崇、川田 徹、神谷厚範、宍戸稔聡、寒川賢治、 白井幹康、杉町 勝 国立循環器病研究センター研究所 妊娠・授乳期間における内因性 ANP・BNP の心保護作用 Y-18 ○大谷健太郎 1)、徳留 健 2)、岸本一郎 2)、寒川賢治 2)、池田智明 1,3) 1)国立循環器病研究センター研究所 再生医療部、 2)国立循環器病研究センター研究所 生化学部 16 YIA 候補演題ポスター発表スケジュール (2 月 4 日 19:20~ 発表 5 分、討論 4 分、移動時間 1 分) YIA 候補演題ポスター発表①(座長:石橋敏幸、小林直彦) Y- 1: 19:20-19:30 2 型糖尿病時における P2Y-receptor を介した血管収縮反応性増大に対する losartan の効果 石田恵子、ほか Y- 2: 19:30-19:40 星薬科大学医薬品化学研究所機能形態 細胞内酸性環境を維持する(プロ)レニン受容体の生理的な機能 木内謙一郎、ほか Y- 3: 19:40-19:50 尿細管管腔内アルカリ化は蛋白尿による近位尿細管細胞酸化ストレスを、Pyk2 経路を介し て改善させる 相馬友和、ほか Y- 4: 19:50-20:00 東北大学大学院腎高血圧内分泌学分野、ほか 心筋梗塞モデルへの骨髄単核球細胞移植と fasudil 併用投与による心保護効果 武島 Y- 5: 20:00-20:10 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科、ほか 宏、ほか 獨協医科大学循環器内科 心臓周囲脂肪組織における炎症性サイトカインの発現と冠動脈病変の関連 平田陽一郎、ほか Y- 6: 20:10-20:20 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学分野、ほか eNOS 機能異常は代償性腎肥大機序を破綻させ、腎障害を進展させる 長洲 一、ほか 川崎医科大学腎臓・高血圧内科学 YIA 候補演題ポスター発表②(座長:東 Y- 7: 19:20-19:30 Y- 9: 19:40-19:50 平滑筋特異的(プロ)レニン受容体ノックアウトマウスの解析 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 Angiotensin II 誘発血管リモデリングにおける hypoxia-inducible factor-1α の役割 今西正樹、ほか Y-11: 20:00-20:10 信州大学医学系研究科臓器発生制御医学講座、ほか 高血圧発症における RVLM 内 Neuregulin-1/ErbB pathway の役割 -Nitric oxide synthase (NOS)/NO axis との関連松川龍一、ほか 九州大学大学院医学研究院循環器内科学 三戸麻子、ほか Y-10: 19:50-20:00 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部薬理学分野、ほか 脂肪酸受容体 GPR120 機能不全は食餌誘発性の肥満及び脂肪肝を惹起する 市村 敦彦、ほか Y-12: 20:10-20:20 徹) アドレノメデュリン-RAMP2 系による心臓エネルギー代謝制御と恒常性維持 吉沢隆浩、ほか Y- 8: 19:30-19:40 幸二、南野 京都大学大学院薬学研究科ゲノム創薬科学/薬理ゲノミクス分野 Angiotensin II 誘発血管リモデリングに対するニトロソニフェジピンの抑制作用 櫻田 巧、ほか 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部薬理学 YIA 候補演題ポスター発表③(座長:大蔵隆文、新藤隆行) Y-13: 19:20-19:30 血管内皮細胞のアドレノメデュリン-RAMP2システムによる血管恒常性維持機構 小山晃英、ほか 信州大学医学系研究科臓器発生制御医学講座 Y-14: 19:30-19:40 マウス腸間膜動脈における acetylcholine および calcium ionophore 誘発内皮依存性血管弛緩 反応の特徴 和家祥大、ほか 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科臨床薬学、ほか Y-15: 19:40-19:50 血管周囲神経間相互干渉における proton の神経間伝達物質としての役割 尾崎周一郎、ほか Y-16: 19:50-20:00 ハイコンテンツイメージャーによる血管新生阻害薬の探索と作用機構解析 張 Y-17: 20:00-20:10 孜、ほか 三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス、ほか グレリン側脳室内投与が心臓迷走神経活動に及ぼす影響 清水秀二、ほか Y-18: 20:10-20:20 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科臨床薬学、ほか 国立循環器病研究センター研究所 妊娠・授乳期間における内因性 ANP・BNP の心保護作用 大谷健太郎、ほか 国立循環器病研究センター研究所再生医療部 17 一般ポスター発表 (Discussion time; 2 月 4 日 19:20~20:30) 一般ポスター発表①(座長・モデュレーター: K-1 徳留 健) The role of renal sympathetic nerve in reno-protective effects of cilnidipine in spontaneously hypertensive rat Bai Lei、ほか K-2 Aliskiren suppressed the development of renal injury in valsartan-treated KKAy mice Bai Lei、ほか K-3 香川大学医学部薬理学 香川大学医学部薬理学 Effects of efonidipine on TGF-β1- and Smad2-dependent protein synthesis in rat cardiac fibroblasts Bai Lei、ほか K-4 香川大学医学部薬理学、ほか 血中アンジオテンシノージェンの尿中への漏出は腎糸球体ろ過障壁および尿細管再吸収に より厳密に制限されている 中野大介、ほか K-5 香川大学医学部薬理学 テモカプリルはアンジオテンシン I 投与ラットにおける腎アンジオテンシン II の蓄積を阻 害しない 大西啓右、ほか K-6 田島壮一郎、ほか K-7 香川大学医学部薬理学 鉄除去は脂肪肥大を抑制して糖尿病を改善する 徳島大学病院薬剤部、ほか ヒト内胸動脈および大伏在状静脈における 5-HT2A 受容体および 5-HT1B 受容体を介したセ ロトニン誘発性血管収縮作用について 山本隆一、ほか K-8 九州保健福祉大学薬学部薬理学第一、ほか ステロイドは腎メサンギウム細胞の線維化関連蛋白を誘導する 川田典孝、ほか 大阪大学医学部老年腎臓内科学 一般ポスター発表②(座長・モデュレーター: K-9 田口久美子、ほか K-10 岸 拓弥) 2 型糖尿病時における血管内皮機能障害には GRK2 増加が関与する 星薬科大学・医薬品化学研究所・機能形態学研究室 虚血性急性腎障害における17β‐エストラジオールの腎交感神経系を介した保護効果に ついて 田中亮輔、ほか K-11 大阪薬科大学病態分子薬理学研究室、ほか ステロイド受容体アゴニストは caveolin-1(cav-1)発現を増加させることで血管内皮の VEGF 反応を抑制する 五十嵐淳介、ほか K-12 武島 K-13 宏、ほか 栄養学科、ほか 東北大学大学院 医学系研究科内部障害学分野、ほか 糖尿病腎の早期からみられる腎細胞の老化はインスリン治療によって改善する 北田 K-16 徳島大学医学部 慢性心不全モデルラットにおける心・腎 nitric oxide 合成酵素に対する長期的運動の影響 伊藤大亮、ほか K-15 獨協医科大学循環器内科 血管リモデリングにおける HMGB1 の果たす役割 東田真由子、ほか K-14 香川大学医学部自律機能生理学、ほか 虚血下肢モデルにおける pitavastatin による血管新生作用の機序的検討 研人、ほか 香川大学医学部薬理学講座 自己再生細胞を活性化する抗老化食生活習慣の検討 片川まゆみ、ほか 日本大学医学部先端医学系細胞再生・移植医学分野、ほか 18 一般ポスター発表③(座長・モデュレーター: K-17 高血圧性血管および腎リモデリングにおける補体 C3 の役割 池田和也、ほか K-18 信州大学大学院医学系研究科臓器発生制御医学講座 高脂肪食負荷肥満マウスにおける鉄吸収動態の検討 山野範子、ほか K-23 信州大学大学院医学系研究科臓器発生制御医学講座発生再生医学分野 CKD におけるアドレノメデュリン-RAMP2 システムの病態生理学的意義 植竹龍一、ほか K-22 大阪市立大学大学院医学研究科分子病態薬理学 腹部大動脈瘤の病態におけるアドレノメデュリン-RAMP2系の役割 沖村綾乃、ほか K-21 国立循環器病研究センター研究所細胞生物学部 心肥大に対する抗線維化薬の効果 泉 康雄、ほか K-20 日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科 アンジオポエチンによる血管安定化機構 望月直樹、ほか K-19 吉栖正典) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部薬理学分野 トロンビン静脈内投与による血管内皮細胞機能不全と活性酸素種産生増加に対するスタチ ンの効果とそのメカニズム 大河原浩、ほか K-24 福島県立医科大学 甲斐田裕介、ほか 久留米大学 一般ポスター発表④(座長・モデュレーター: K-25 内科学講座腎臓内科部門 泉 康雄) ES 細胞胚様体分化系を用いた肝類洞内皮細胞分化誘導と高次肝様構造構築 荒居琢磨、ほか K-26 循環器血液内科学講座、ほか 慢性腎虚血による ER stress は DDAH1 の発現を低下させ ADMA の蓄積に関与する 信州大学医学系研究科臓器発生制御医学講座、ほか 急性心筋虚血時冠微小循環側副血行路におけるエリスロポエチンと内因性過酸化水素の効 果 矢田豊隆、ほか K-27 川崎医科大学医用工学、ほか ラット大動脈を用いた血管内皮前駆細胞の局在および血管構成細胞との相互作用について の検討 山元智衣、ほか K-28 生体でのアデノシンによる糸球体輸出入細動脈の調節 仲本 K-29 日本大学大学院総合科学研究科生命科学、ほか 博、ほか 川崎医科大学 医用工学システム循環器 アドレノメデュリン受容体活性調節タンパク RAMP2 および RAMP3 の脈管系における機能 分化 山内啓弘、ほか K-30 山田敏樹、ほか K-31 浜松医科大学医学部看護学科健康科学、ほか アンジオテンシンⅡによる腎尿細管のミトコンドリア内酸化ストレス亢進メカニズム 森 K-32 信州大学大学院医学系研究科臓器発生制御医学講座 新規 Benzyloxyphenyl 誘導体 YM-244769 の特異的な NCX 阻害特性 建文、ほか 東北大学大学院医学系研究科腎高血圧内分泌学分野 血管内皮細胞での硫化水素 (H2S)による NO 産生促進効果 木田道也、ほか 東京医科歯科大学大学院分子内分泌内科 一般ポスター発表⑤(座長・モデュレーター: K-33 堀之内孝広、ほか K-34 下澤達雄) エンドセリン A 型受容体作動性 TRPC6 チャネルの多様な機能制御機構 北海道大学大学院医学研究科細胞薬理学分野 冠動脈内皮機能障害に対するカンデサルタンの効果 飯野健二、ほか 秋田大学大学院循環器内科学 K-35 PHD 阻害剤の虚血皮弁生存に対する効果 K-36 メタボリックシンドロームにおける Na 利尿ペプチド受容体 GC-A の意義 高久 暢、ほか 槇野久士、ほか 徳島大学形成外科 国立循環器病研究センター糖尿病代謝内科 19 K-37 RA 系遺伝子多型の心血管病発症に対する遺伝的負荷 -高血圧患者を対象としたコホート研究加藤のぞみ、ほか K-38 東北公済病院内科、東北大学大学院医工学研究科 動脈硬化促進因子 salusin-β の分泌と ELISA 系の確立 藤本和実、ほか K-40 老年・腎臓内科学 頸動脈内膜中膜厚による血中 LDL-コレステロール値と頚動脈弾性特性との関係について 山岸俊夫 K-39 大阪大学 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科先端血液検査学 、ほか 超微量アルブミン尿を呈する高血圧合併腎移植ドナーは高血圧性腎硬化症の初期像を呈す る 祖父江 理、ほか 香川大学医学部 一般ポスター発表⑥(座長・モデュレーター: K-41 高井真司) 生体腎移植における持ち込み IgA 沈着症から見た IgA 腎症の成因と進行の機序 祖父江 K-42 循環器・腎臓・脳卒中内科、ほか 理、ほか 香川大学医学部 循環器・腎臓・脳卒中内科、ほか 健診患者における尿酸と動脈硬化の指標である Cardio ankle vascular index (CAVI) との関 係の検討 城徳昌典、ほか K-43 愛媛大学大学院病態情報内科学 心不全患者における血中O型糖鎖付加 N-terminal-proBNP 濃度および糖鎖修飾率の解析 竹田陽介、ほか K-44 獨協医科大学循環器内科 末期腎不全患者における血液浄化(透析導入)によるテトラヒドロビオプテリンの変化と意 義 岸田真嗣、ほか K-45 大阪市立総合医療センター Nerve growth factor (NGF)はマウス角膜移植腫瘍新生血管に血管周囲神経を分布させる 曽根曜子、ほか K-46 腎臓・高血圧内科、ほか 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科臨床薬学、ほか マウス下肢虚血モデルにおいて鉄キレート剤 Deferoxamine は酸化ストレスとアポトーシス を抑制する 池田康将、ほか K-47 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部薬理学 ラット腸間膜動脈血管床における histamine 誘発血管反応に対する H1 受容体拮抗薬抑制 効果の差異 楢原由生未、ほか K-48 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 Apelin-APJ とアンジオテンシン II-AT1 受容体との新しい連関 孫 驍、ほか 埼玉医科大学薬理学 一般ポスター発表⑦(座長・モデュレーター: K-49 森本 聡) Olmesartan ameliorates the impairment of renal function in aortic regurgitation model rats Kazi Rafiq、ほか K-50 臨床薬学、ほか 香川大学医学部薬理学、ほか Aldosterone induces insulin resistance via up-regulation of IGF-1 receptor and its hybrid receptor in vitro and in vivo Shamshad Sherajee、ほか K-51 細胞内 pH と酸化ストレスを介したアンジオテンシン II によるポドサイト障害機序の解明 Liu Ya、ほか K-52 香川大学医学部薬理学 ラット腸間膜動脈血管周囲神経分布に対する nicotine の影響 藤原秀敏、ほか K-53 香川大学医学部薬理学 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科臨床薬学 慢性腎臓病ラットに対するNOドナーの投与により慢性腎虚血を改善することで腎機能障 害進展を抑制する可能性がある 安藤亮太郎、ほか K-54 久留米大学医学部内科学講座腎臓内科部門 メタボリック症候群(MetS)におけるインスリン抵抗性発症機序の検討 -DDAH-ADMA の役割の検討岩谷龍治、ほか 久留米大学医学部内科学講座腎臓内科部門 20 K-55 遺伝子ノックダウンレベルに基づいた心筋症モデルゼブラフィッシュの機能解析 西村有平、ほか 三重大学大学院医薬理ゲノミクス、ほか K-56 Angiotensin II diverges insulin signaling into vascular remodeling from glucose metabolism 藤田昌子、ほか 香川大学医学部薬理学、ほか 一般ポスター発表⑧(座長・モデュレーター: K-57 吉原史樹、ほか K-58 国立循環器病センター内科高血圧・腎臓科、ほか 血管周囲神経における 5-Hydroxytryptamine (5-HT) の動態と神経機能に及ぼす影響 高取真吾、ほか K-59 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科臨床薬学、ほか 血管内皮損傷後新生内膜形成に小胞体ストレスが関与する 石村周太郎、ほか K-60 札幌医科大学内科学第二講座 心筋ミオシン軽鎖キナーゼの生化学的性状解析 谷口正弥、ほか K-61 深水 圭) 内因性ナトリウム利尿ペプチドの尿細管障害や間質線維化への関与 -グアニリルシクラ ーゼ-A(GC-A)欠損および内皮特異的 GC-A 強発現マウスでの検討- 三重大学大学院医学系研究科病態制御医学講座循環器・腎臓内科学 Role of epidermal growth factor receptor transactivation in cellular signaling mediated by (pro)renin receptor 柴山弓季、ほか K-62 妊娠高血圧症候群における胎盤(プロ)レニン受容体発現量と血圧・蛋白尿との関係 成田達哉、ほか K-63 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科抗加齢内分泌学講座 (プロ)レニン受容体の切断機構と細胞内輸送 相崎良美、ほか K-64 香川大学医学部薬理学、ほか 埼玉医科大学薬理学、ほか メタボリックシンドロームにおける減量療法がもたらすインスリン抵抗性の改善と血中プ ロレニンの関連 清元秀泰、ほか 東北大学病院腎高血圧内分泌科、ほか 一般ポスター発表⑨(座長・モデュレーター: K-65 上田誠二) 血漿・尿中(プロ)レニン受容体可溶性成分の検討 廣瀬卓男、ほか 東北大学大学院薬学研究科医薬開発構想寄附講座 K-66 活性型レニンおよび(プロ)レニン受容体の糸球体内局在の病態による変化 K-67 p53 の標的遺伝子 Sestrin2 は急性腎障害において誘導され近位尿細管細胞の Autophagy を 上田訓子、ほか 高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科学講座、ほか 引き起こす 濱田佳寿、ほか K-68 久留米大学病院内科学講座腎臓内科部門 Rho 依存性転写共役因子 MRTF-A による血管リモデリング制御 南 K-70 内分泌代謝・腎臓内科学講座 Acute Kidney Injury(AKI)における ADMA の役割の検討 中山陽介、ほか K-69 高知大学医学部 丈也、ほか 京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科 血管平滑筋細胞におけるアルドステロンのオステオポンチン誘導作用の分子機序 長田太助、ほか 東京大学大学院医学系研究科分子血管病態学、ほか 21 発表要旨 基調講演 ① 心脈管作動物質によるメタボリックドミノ制御機構とその最上流にあるもの ○伊藤 裕 慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 肥満、インスリン抵抗性によるメタボリックシンドロームから CKD、心血管イベントに至る流れは、 メタボリックドミノとして捉えられる。レニンアンジオテンシンアルドステロン系(RAAS)やナトリウ ム利尿ペプチド系(NPS)などは、心血管障害に関わるが、糖脂質代謝にも関与する。我々は、心脈管作 動物質によるメタボリックドミノの連続的制御の機序として、細胞内代謝に注目している。RAAS は、 エネルギー代謝の要であるミトコンドリア(Mit)機能を抑制し Mit 由来活性酸素を上昇させる。逆に NPS は Mit 生合成を活性化する。また、プロレニン受容体は細胞内小胞の酸性化にも関与している。 つまり心脈管作動物質は酸素の供給のみならず、酸素消費もコントロールする、“酸素ハンドリングホ ルモン“と考えられる。 メタボリックドミノにおける心脈管作動物質活性化の分子機構として、我々は、受容体レベルの制 御に注目している。酸化ストレス、炎症性サイトカインあるいは高血糖はミネラルコルチコイド受容 体の post-translational modification を介してアルドステロンの作用増強を誘導する。 さて、メタボリックドミノにおける心脈管作動物質活性化の源流は何なのであろうか?我々はその 答えの一つを見出した。エネルギーバランスの崩れにより生じた余剰エネルギーは、高エネルギー貯 蔵物質である中性脂肪として、脂肪細胞に蓄積される。このエネルギー代謝障害の最初のプロセスで、 個々の脂肪細胞は肥大化し、この事象は、細胞において“伸展刺激”として感知される。その結果、低 分子量 G タンパク Rho/Rho キナーゼが活化する。このことが、脂肪細胞の形質転換を誘導し、脂肪組 織における炎症を惹起し、心脈管作動物質の活性化につながる。つまり、代謝障害は脂肪細胞におい て物理的刺激に翻訳されて循環制御ホルモンの作用の変調をきたすと我々は考えている。 基調講演 ② 心血管病の新たな治療標的としての Rho-kinase の意義 ○下川宏明 東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学分野 冠動脈攣縮は日本人の幅広い虚血性心疾患の成因に重要な役割を果たしている。我々は、冠攣縮の 動物(ブタ)モデルを作成し、その分子機序について長年研究を行ってきたが、最終的に、平滑筋収 縮の分子スイッチの役割を果たしている Rho-kinase の活性化が冠攣縮の主因であることを見出した。 一連の Rho-kinase に関する研究においては、我々が見出した選択的 Rho-kinases 阻害薬である fasudil/hydroxyfasudil を用い、必要に応じて、dominant-negative Rho-kinase の遺伝子導入により薬効の 確認を行った。 我々の研究は、遺伝子・細胞レベルから動物レベル・臨床研究にまで幅広く展開し、いわゆるトラ ンスレーショナルリサーチになった。まず、遺伝子・細胞レベルでは、Rho-kinase が主要な動脈硬化 促進性分子の発現を増加させ抗動脈硬化性分子の発現を減少させること、また、Rho-kinase 自身の発 現が女性ホルモンにより抑制されニコチンにより促進されることを見出した。動物レベルでは、動脈 硬化・高血圧・肺高血圧症・慢性心不全などの各種動物モデルにおいて Rho-kinase の活性化が病態形 成に重要な関与をしていることを明らかにした。臨床レベルでは、Rho-kinase の活性化が、冠攣縮性 22 狭心症・労作狭心症・高血圧・肺高血圧症・慢性心不全などに重要な関与をしていることを明らかに した。 現在、これらの知見を基に、長時間作用型の経口 fasudil を用いた肺高血圧症に対する世界初のプラ セボ対照二重盲検治験を実施中である。Rho-kinase は心血管病の新たな治療標的として注目され、現 在、国内外の多くの製薬メーカーでその選択的阻害薬が開発中である。今後の幅広い臨床応用が期待 される。 基調講演 ③ 内分泌・代謝疾患における内皮機能障害 ○平田結喜緒 東京医科歯科大学大学院 分子内分泌内科学 臨床的に血管内皮機能を評価する方法には血中(尿中)NO(NOx)の生化学的測定法があるが、そ の定量性、特異性、感度に多くの問題点がある。一方、血流量や血管径の変化を検出する生理学的測 定法は、現在最も信頼できる方法とされる。特に上肢動脈を体表エコーを用いた非侵襲的検査である 血流依存性血管拡張反応(flow-mediated basodilation:FMD)は、虚血後の反応性充血、すなわちずり応 力刺激後の内皮由来 NO による血管拡張反応、を測定することで内皮機能を評価できることから、臨 床的に用いられている。FMD は動脈硬化が進行した血管の構造的変化の前に、初期病変の血管の機能 的変化をとらえることができるため、複数の心血管リスク因子(糖尿、肥満、高血圧、脂質異常症、 喫煙、閉経、加齢など)による内皮機能への影響を評価できる。また FMD は介入による効果判定や 心血管合併症の予知因子としても用いられ、簡便、正確、再現性の高い臨床的指標といえる。本講演 では FMD を用いて解析した多彩な内分泌・代謝疾患(メタボリックシンドローム、糖尿病、クッシ ング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、先端巨大症など)を中心に、当施設でのこれま での成績を解説する。 基調講演(ミニレクチャー) 体内時計の分子機構 ○野出孝一 佐賀大学医学部 循環器・腎臓内科 生物には、内分泌・代謝・循環器の日内リズムを制御する体内時計が存在する。中枢と末梢時計遺伝 子が体内時計をコントロールしているが、それらの時計遺伝子はネットワークを作ったり、連携と同 調システムを有している。視交叉上核に存在する中枢時計遺伝子は、光を感じ活性化され、松果体に 作用し、メラトニン分泌を抑制し、睡眠・覚醒・情動を支配する。末梢時計は光非感受性で、代謝・ 血圧・内分泌系のリズムを抑制している。時計遺伝子の一つである PER2 は MAP キナーゼや CK2 に よりリン酸化されることで、活性変動が調節されている事が明らかになった。臨床での時計遺伝子活 性の報告は少なかったが、我々は毛包細胞を用いた時計遺伝子活性測定値を報告した。この方法で、 シフトワーカーの時計遺伝子活性を測定したところ、デイワーカーに比較して非可逆性に変化してい ることから、外的なリズム異常が内的な時計遺伝子を変動させる事が示唆された。心血管・内分泌系 の臓器の時計遺伝子の活性調節メカニズムを検討する事で、高血圧・糖尿病・循環器疾患の病態解明 の一つのアプローチとなる事が期待される。 23 特別講演 新しい循環調節ペプチド:発見から臨床応用へ ○寒川賢治 国立循環器病研究センター研究所 心血管系は、多くの因子による複雑かつ巧妙な情報伝達および機能調節によって維持されており、 その破綻が種々の疾患の発症等に繋がる。我々のグループでは、その制御に関わる新規ペプチドを探 索・発見し、その機能の解明を目指している。未知のペプチドの探索は容易ではないが、その発見は 大きな breakthrough に繋がる。実際これまでに、オピオイドペプチド類(1978 年~)、ニューロメジン 類(1983 年~)、ナトリウム利尿ペプチド・ファミリー(ANP:1984 年, BNP:1988 年, CNP:1990 年) やアドレノメデュリン(1993 年)など多くの新規ペプチドの発見に成功し、ANP と BNP については 心不全の診断薬・治療薬への応用に至っている。さらに、アドレノメデュリンについても循環器系に 於いて多彩な病態生理的意義を有し、心筋梗塞、心不全、肺高血圧症、再生医療など循環器疾患の治 療応用が期待されている。 その後我々は、オーファン GPCR をターゲットにしたリガンド探索を進めオーファン受容体 GHS-R の内因性リガンドとして“グレリン(Ghrelin)”と名付けた、強力な成長ホルモン(GH)分泌促ペプチ ドの発見に成功した(1999 年)。 グレリンは 28 残基のアミノ酸からなり、活性発現に必須な脂肪酸修飾を有する。グレリンは GH 分 泌促進と共に摂食促進作用を有し、その主要な産生部位は胃の内分泌細胞である。血中に分泌された グレリンは求心性迷走神経を介して、中枢に摂食や GH 分泌のシグナル伝達、また、肥満や拒食症な どの病態やエネルギー代謝調節にも密接に関与する。さらに、血管拡張や心血管系の保護作用などの 循環器系における機能も明らかになり、現在多くの臨床研究や臨床治験へと展開されている。 本講演ではグレリンを中心に、生体内の新規生理ペプチドの探索・発見から多彩な生理機能の解明、 治療応用に向けての現状を紹介したい。 イブニングセミナー 糖尿病腎症における RAS 抑制の有効性と限界 ○伊藤貞嘉 東北大学大学院医学系研究科 内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野 糖尿病腎症患者は心血管病及び末期腎不全のリスクが極めて高い。病期の進行に伴って、そのリス クは増大する。したがって、糖尿病腎症の発症や進行を抑制すること、さらには、腎症の病期を逆戻 りさせることが重要である。腎症の管理には、血糖管理、血圧管理、脂質管理と同時にレニン・アン ジオテンシン系(RAS)の阻害が重要である。これまで報告された大規模臨床においても RAS 阻害薬 は腎症の発症や進展を抑制することが示されている。しかし、RAS 阻害によっても腎症の進展を十分 に抑制できない症例も少なくなく、RAS 阻害薬にも限界がある。本講演では、糖尿病腎症の発症と進 展機序における RAS の関与を述べるとともに、RAS 阻害薬の腎症ならびに心血管事故抑制に対する有 効性と限界を考察する。 24 ランチョンセミナー ① CKD 診療を再考する ○常喜信彦 東邦大学医療センター大橋病院 腎臓内科 近年、慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)と心血管疾患が密接に関連していることがことさら “強調”されるようになった。“強調”という表現を使用した裏側には、じつはこの2病態が密接に関わ っていることは、臨床現場では決して新しい事実ではなく、以前より当たり前のように認識されてい るからである。ではこの関連のなにがより“強調”されるべきなのであろうか。 CKD の概念が広まり、臨床現場では単に CKD 患者か否かで診療を分ける風潮が強くなった。果た してそんな単純なものであろうか。CKD は eGFR 値に従って 5 つのステージに分けられている。ステ ージごとに診療戦略があってしかるべきではないだろうか。たとえば、透析導入期のデータから推察 するに、腎不全保存期に合併する心血管合併症の中心は冠動脈疾患(CAD)/虚血性心疾患(IHD)で ある。その原因の一つである冠動脈のプラークはステージの進行とともにどのように進展するのか。 あるいは心筋酸素需要は CKD ステージによって変化してくるのか。そのような深い考察を基に、CKD ステージ別の CAD/IHD 診療戦略をたてるべきではないだろうか。 CKD 診療で最も油断している時期はいつか、いま手元にある術で、どの時期に何をターゲットにど んな介入治療をすべきか、そして心血管スクリーニングをするべき時期として適切な時期はいつか。このよ うな視点を“強調”して概説したい。 ランチョンセミナー ② 急性腎障害(AKI)の基礎と臨床 尿細管の再生はどこまで可能か○寺田典生 高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科、先端医療学推進センター・再生医学部門 急性腎障害は従来の急性腎不全(ARF)よりも早期からの腎障害を表す概念として用いられてきてい る。近年 RIFLE 分類などの新しい診断基準と尿中早期バイオマーカーの検索が進んできており AKI の研究が注目されている。ICU 入院患者の約 20%の頻度で AKI が発症しその症例では有意に予後が悪 いとの報告がある。一方 AKI の約 30%の症例では腎機能は回復するが、尿細管の再生のメカニズムが 近年明らかになってきている。 尿細管の修復と再生に関する基礎研究は、飛躍的に進んできている。その原因のひとつには、AKI の回復期に尿細管細胞が再生、修復される現象が注目されてきたことと、遺伝子改変動物が多く作成 され、AKI の病態への関与が明確な形で示される様になったことである。現在までの報告をまとめる と、尿細管細胞の再生の機序については、大きく 3 つの考え方がある、腎臓内に尿細管細胞の幹細胞 が存在し増殖するという考え方、骨髄由来幹細胞が出すサイトカインが再生に関与するという考え方、 そして元々ある尿細管細胞が脱分化(dedifferentiation)して増殖、再生するという報告があり、再生医学 的な面からも尿細管再生の基礎研究は進んできている。また AKI 後の組織障害、修復に関与する因子 として、腎胎生期遺伝子、アポトーシス関連遺伝子、サイトカイン、Sirt1 などについてもそれらの遺 伝子欠損マウスで AKI の予後が変わるという報告がある。また N-Gal, L-FABP, IL-18 などの AKI の尿 中早期バイオマーカーの研究も進んできており、より早期の治療介入が可能になりつつある。 これらの研究成果をいかに臨床に結び付け、AKI の病態の予後改善に結びつけるかが今後の課題で ある。再生医学的アプローチによる新規の治療法の開発, 尿中早期バイオマーカーのパネル化など多 くの課題があり今後の研究の発展が期待される分野である。 25 シンポジウム 1 「循環器ホットトピック」 S1-1 血管内皮による神経保護の分子メカニズム-低分子量 G 蛋白 Rac1 の役割 ○澤田直樹 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 分子代謝医学/グローバル COE 神経栄養因子(Neurotrophic factors)は、脳卒中や神経変性疾患において神経細胞死を強力に抑制し、 顕著な治療効果を有することが明らかにされている。しかしながら、その病変組織への浸達性の乏し さが臨床応用へのハードルとなっている。中枢神経系の構造・機能単位である「神経血管ユニット」 において、血管内皮細胞が、近接するニューロンやアストロサイトにサバイバルシグナルを送ってい ることが明らかにされており、神経保護における血管神経相互作用の重要性が注目される。その一方 で、内皮由来神経保護活性の制御メカニズム、および血管内皮機能との連関についての詳細は未解明 である。我々は、内皮機能の重要な制御因子である低分子量 G 蛋白 Rac1 に着目し、血管由来神経保護 活性における役割を検討した。血管内皮特異的に Rac1 発現が半減したノックアウトマウス(EC-Rac1+/–) に一過性中大脳動脈梗塞を施行したところ、対照に比べ脳血流減少に変化は認められなかったが、梗 塞サイズ及び脳浮腫が著明に縮小した。Rac1+/–マウス内皮のマイクロアレイ解析を施行したところ、 ストレス応答蛋白、基底膜構成蛋白および増殖因子の発現が上昇していた。実際、低酸素により惹起 される酸化ストレス・アポトーシス・透過性亢進・細胞間接着の減弱は、Rac1+/–内皮において全て抑 制されていた。さらに、内皮−ニューロン間の非接触型共培養を施行したところ、酸素グルコース枯渇 により誘導される神経細胞アポトーシスは、Rac1+/–内皮との共培養によって強力に抑制されることが 明らかになった。血管内皮 Rac1 を標的とすることにより、内皮バリア機能の強化と神経細胞の保護を 同時に実現する治療的ポテンシャルが期待され、脳卒中・神経変性疾患に対する新規アプローチとし て注目される。 S1-2 心不全増悪因子としてのインスリンシグナル ○清水逸平 1)、南野 徹 1,2) 1) 千葉大学大学院医学研究院 循環病態医科学、 2) 科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業さきがけ 心臓のインスリンシグナルと心不全との関連は未だ明らかではない。本研究において我々は、持続的 な圧負荷は過剰なインスリンシグナルの活性化により心不全の発症・増悪を促進することを明らかに した。圧負荷モデルでは心不全慢性期において、全身のインスリン抵抗性が惹起され、血清インスリ ン濃度の高値を示した。肝臓ではインスリン抵抗性が惹起されていたが、心臓では対照的にインスリ ンシグナルは著明に活性化していた。その機序として心筋組織の伸展刺激によるインスリン受容体の 活性化が重要であることがわかった。圧負荷により心筋細胞肥大が生じると、血管数とのミスマッチ が生じ、心筋組織内の虚血を介した心筋細胞死により心機能の著明な低下が生じるが、高インスリン 血症を抑制すると、心筋細胞肥大とそれに伴う心筋組織内の虚血が抑制され、心機能は保たれていた。 インスリン受容体を心筋細胞特異的に減少させることによっても、心筋組織内の虚血が抑制され心機 能は著明に保たれた。1 型糖尿病マウスでは圧負荷後の心機能が保たれていたが、インスリンで治療を 行うと、心筋組織内の虚血と心筋細胞死が惹起され、心機能は著明に低下した。本研究によって、高 血糖を改善するためにインスリンを用いることは、心臓に圧負荷が生じている状況では心機能に悪影 響を与える可能性のあることが明らかとなった。これらの結果は、高インスリン血症が心イベントと 関連することを報告した臨床研究の結果とも合致するものと考えられる。心不全の治療において、臓 器間のインスリンシグナルの調節を標的とした治療は不可欠であると考えられる。また、さらに研究 を進めたところ心不全慢性期に全身のインスリン抵抗性が獲得される機序が明らかとなったのでこの 場をかりて報告させていただきたいと思う。 S1-3 脳心血管疾患における Rho-associated kinase (ROCK)活性の意義 ○野間玄督 1)、吉栖正生 1)、木原康樹 2)、東 幸仁 1) 1) 広島大学大学院 心臓血管生理医学、2) 広島大学大学院 循環器内科学 Rho-associated kinase(ROCK)活性の亢進が、血管炎症や動脈硬化といった脳心血管疾患に関与している との知見が集積しつつある。ROCK 阻害剤の投与下では、eNOS の発現とリン酸化の増加によって血管 内皮機能が改善され、臓器保護作用がもたらされることが報告されている、しかしながら,血管内皮 機能や脳心血管疾患における ROCK アイソフォームの役割、そしてヒトにおける ROCK 活性の検討も 未だ十分にはなされていない。我々は、遺伝子改変マウスを用いて ROCK アイソフォームの役割を検 討、またヒトにおける血管および白血球 ROCK 活性の意義について検討した。大動脈組織では、 ROCK2+/-では WT と比して有意に eNOS 発現は増加し、培養マウス内皮細胞では ROCK2+/-が ROCK1+/と比して、ROCK1+/-が WT と比してそれぞれ eNOS 発現の増加を認めた。一方、eNOS のリン酸化指標 である p-eNOS/eNOS においては 3 群間で有意差はなかった。大動脈リング実験における ACh による 血管拡張反応、および L-NAME による血管収縮反応では ROCK2+/-で増加を認め、一過性中大脳動脈閉 26 塞モデルを用いた検討では ROCK2+/-において脳虚血領域の低値を認めた。ヒトにおける検討では、 ROCK 阻害剤ファスジルの投与によりヒト酸化ストレスモデルである喫煙者では血管内皮機能は改善 したが、非喫煙者では ROCK 阻害剤の投与前後において血管内皮機能に変化はなかった。また、白血 球 ROCK 活性は血管 ROCK 活性と有意に正の相関、そして血管内皮機能とは負の相関を認めた。これ らの結果より、血管内皮機能障害を惹起する冠危険因子や広汎な脳心血管疾患に対して ROCK2 は治療 標的になり得る可能性、そしてヒトにおいて白血球 ROCK 活性は脳心血管疾患を反映するバイオマー カーとなり得る可能性が示唆された。 シンポジウム 2「RAAS ホットトピック」 S2-1 プロレニン受容体の細胞内動態 ○千本松孝明 埼玉医科大学 薬理学 プロレニン受容体は、レニンアンジオテンシンシステムの新しい分子で、脳、心臓、肝臓、腎臓と広 範囲に発現し、C 末端側に膜一回貫通領域を有する分子量約 39kD の受容体として 2002 年に同定され た。プロレニン受容体の生理機能として、プロレニンのプロドメイン領域に結合し、非蛋白融解的に プロレニンのレニン活性化や細胞内シグナルの誘導、さらにはレニンアンジオテンシンシステム非依 存的 Wnt の活性化が報告されている。我々は、プロレニン受容体が、蛋白合成の過程で細胞内小器官 のひとつであるゴルジにおいて、蛋白分解酵素の1つである ADAM 19 により膜貫通領域に近い細胞外 領域で切断を受けていることを発見した。全長を有するプロレニン受容体は、ER に存在し、ゴルジに て ADAM 19 により膜貫通領域を含む C 末端が切断される。一方、アミノ末端側断片は細胞外に分泌 され、プロレニンのレニン活性を上昇させた。細胞内局在でもプロレニン受容体は、ER やゴルジに強 く認められるため、ほとんどのプロレニン受容体は細胞外へ分泌されている可能性が高い。ところが、 2005 年に報告された遺伝子異常△4 プロレニン受容体は、細胞外領域の一部が欠失した deletion mutant で、膜貫通領域近傍の切断領域を有するにもかかわらず ADAM 19 により切断を受けず、分泌もされな い。そのメカニズムとして△4 プロレニン受容体は ER よりゴルジに細胞内輸送されず、ER に留まっ ていることが判明した。興味深いことに△4 プロレニン受容体遺伝子異常を持つ家系では精神遅滞やて んかんなどの精神疾患が認められる。プロレニン受容体の細胞外領域は細胞内輸送において重要な機 能を担っている可能性がある。 S2-2 細胞特異的(プロ)レニン受容体ノックアウト解析 ○市原淳弘、木内謙一郎、三戸麻子、木田可奈子、黒澤秀章、大島洋一、伊藤 裕 慶應義塾大学医学部 抗加齢内分泌学講座 プロレニンが組織(プロ)レニン受容体に結合すると、プロレニンは活性化し組織レニン‐アンジオテン シン系を活性化すると共に、(プロ)レニン受容体から細胞内シグナルが惹起される。我々は、(プロ)レ ニン受容体結合阻害薬 HRP を用いて、この現象が糖尿病や本態性高血圧における臓器障害の発症と進 展に関与することを示してきた。これら病態の臓器においては、(プロ)レニン受容体の発現亢進が報告 されており、ヒト(プロ)レニン受容体高発現ラットでは、緩徐に発症し進展する腎症を認めた。しかし ながら(プロ)レニン受容体の生理的な機能については十分に解明されておらず、全身性に(プロ)レニン 受容体をノックアウトすると胎生致死となることがわかっていた。そこで、我々は細胞特異的に(プロ) レニン受容体をノックアウトすることが可能な Floxed (P)RR マウスを作成し、心筋細胞特異的、腎糸 球体上皮細胞時的、平滑筋細胞特異的ノックアウトマウスをそれぞれ作成し解析した。 (プロ)レニン受容体は発見当初より遺伝子が ATP6AP2 遺伝子と同一であることが分かっていた。 ATP6AP2 は細胞内小器官の pH を酸性に維持する vacuolar H+-ATPase に付随する蛋白であるが、その機 能については全く解明されていなかった。近年の研究により、全長型(プロ)レニン受容体蛋白はゴルジ 体でその一部が酵素の働きにより可溶性(プロ)レニン受容体と ATP6AP2 に切断されることが判明し、 我々が従来解明してきた全長型(プロ)レニン受容体の機能以外にも、他の機能を有する可能性が示唆さ れていた。 細胞特異的(プロ)レニン受容体ノックアウトマウスの解析の結果、(プロ)レニン受容体は発達生理にお いて ATP6AP2 として重要な役割を担うことが判明した。今後は、この機能と従来知られていたレニン ‐アンジオテンシン系関連機能との関係を解析する必要がある。 S2-3 プロアンジオテンシン-12 の単離同定と産生調節機序の検索 ○加藤丈司、永田さやか、桑迫健二、北村和雄 宮崎大学フロンティア科学実験総合センター 27 組織レニン・アンジオテンシン系(RA 系)の存在が以前より指摘されており、循環血液中の RA 系と は異なった調節を受けている可能性がある。プロアンジオテンシン-12(Proang-12)は、アンジオテン シン I(Ang I)の C 末に2個のアミノ酸が付加したペプチド(Ang I-Leu-Tyr)であり、当初、ラット 小腸より単離同定された。ラット静脈内に投与した Proang-12 は、おそらくレニン非依存性に速やかに Ang II に変換されて作用を発揮する。ラジオイムノアッセイ(RIA)による検索では、小腸のみでなく、 心筋、腎臓、脳を含めた多くの組織に免疫活性が検出され、免疫組織染色では、心筋細胞や腎尿細管 に免疫活性が認められた。血中 Proang-12 の濃度は低値であるが、心筋や脳の組織中の濃度は、Ang I や Ang II より高値であり、組織 RA 系のペプチドとして機能している可能性が示唆される。両側腎摘 により腎臓由来のレニンが欠失したラットでは、血中 Ang I および Ang II の濃度は極めて低値であっ たが、心室中の Proang-12、Ang I、Ang II の濃度は逆に増加していた。一方、食塩制限により、血中 RA 系を亢進させたラットでは、血漿レニン活性(PRA)が上昇して血中および腎組織中の Ang I およ び Ang II の濃度が上昇したが、血中や腎組織中の Proang-12 の濃度に変化は観察されなかった。アンジ オテンシン受容体拮抗薬(ARB)ロサルタン投与により、同様に PRA が上昇し、血中 Ang I および Ang II の濃度が上昇したが、血中 Proang-12 の濃度に変化は観察されずに、腎および心室組織中の Proang-12 の濃度は、むしろ低下傾向を示した。以上の結果は、少なくともラットにおいては、Proang-12 が組織 RA 系ペプチドとして存在し、Ang I や Ang II の産生とは異なった機序で産生され、Ang II の前駆体ペ プチドとして機能している可能性を示唆している。 S2-4 ACE2/Angiotensin(1-7)/mas 軸の最新知見 ○大石 充、楽木宏実 大阪大学 老年・腎臓内科学 レニン・アンジオテンシン系は Angiotensin II が AT1 受容体に結合することによって起こる様々な作用 について長い間研究されてきた。その後 AT2 受容体の機能が解明されてくるにつれてカウンター系の 重要性が認められてきた。1990 年代に米国の Ferrario らのグループが Angiotensin II のフラグメントで ある Angiotensin(1-7)の機能解析を精力的に行ってきたが一定の見解を得られずにいた。2000 年に入り、 Angiotensin(1-7)産生酵素である ACE2 の同定、状態である mas の同定、さらに ACE2 ノックアウトマ ウスが心不全を呈することなどが次々と報告されて ACE2/Angiotensin(1-7)/mas 軸がにわかに脚光を浴 びている。ACE2 ノックアウトマウスを用いた我々の検討では、ACE2 ノックアウトのみでは明らかな フェノタイプを呈さないが、横行大動脈結紮(TAC)モデルを作成して左室圧負荷をかけると、ノッ クアウトマウスでは心肥大・心拡大を呈して、心肥大のみを呈した TAC を施したワイルドタイプより も生命予後が不良であった。このような変化は ARB にて改善されて ACE2 ノックアウトによる Angiotensin II 過剰状態が引き起こした病態である可能性が示唆された。streptozotosin により誘発され た糖尿病性腎症モデルでは、通常アルブミン尿を呈さない 4 週目より ACE2 ノックアウトマウスでの みアルブミン尿が出現して糖尿病性腎症が促進されていた。しかしながらこの変化は ARB で部分的に しか改善されず、ACE2/Angiotensin(1-7)/mas 軸のダイレクトな作用が推察された。そこで我々は血管平 滑筋細胞と内皮細胞を用いた in vitro 研究を行った。これによると ARB にて AT1 受容体を抑制した状 態でのみ、Angiotensin(1-7)の mas 受容体刺激により ERK1/2 のリン酸化抑制を介した細胞増殖や細胞接 着抑制が認められた。以上の知見より ACE2/Angiotensin(1-7)/mas 軸賦活化は AT1 受容体抑制のブース ター効果が認めれて、新たな創薬ターゲットとなりうることを示唆している。この分野では現在も新 たなエビデンスが多数出てきており、本シンポジウムではこれらの最新知見と我々のデータを示しな がら ACE2/Angiotensin(1-7)/mas 軸の可能性について言及したい。 S2-5 腎髄質酸素代謝に対するレニン・アンジオテンシン系の役割 ○森 建文 1,2,3)、清元秀泰 1,3)、小川 晋 1,3)、宮田敏男 2,3)、伊藤貞嘉 1,3) 1) 東北大学大学院医学系研究科 腎高血圧内分泌学、 2) 同 創生応用医学研究センター 酸素医学コアセンター、 3) 同 先進統合腎臓科学コアセンター 腎髄質は動静脈が並走した特異な血管構造により、動脈から静脈に酸素が奪われる。しかも総腎血流 の10%にみたない髄質血流による酸素供給のため、腎髄質内層の酸素分圧は 20mmHg 程度にもなる。 腎髄質内層の尿細管は酸素消費少ないため、虚血に強いが、ヘンレのループ太い上行脚(MTAL)では ミトコンドリアで酸素を消費し、Na 再吸収を行っているため、虚血に弱い。アンジオテンシン II (AngII) は腎髄質の直血管を収縮し髄質血流を減らす能力があるが生理的濃度の AngII では髄質血流は低下し ない。これは MTAL で AngII による NO が産生し、周囲の直血管に拡散するためと考えられている(尿 細管血管クロストーク)。AngII はまた MTAL で NAD(P)H oxidase を介して活性酸素を産生する。Dahl 食塩感受性高血圧ラットなどの NAD(P)H oxidase 活性の高まったモデルでは尿細管から血管へ NO の 拡散が阻害され、腎髄質は虚血低酸素に陥り、腎髄質外層から障害が進行する。腎髄質の酸化ストレ スは髄質血流の低下とともに Na 再吸収を増やし、血圧調節に関与する。一方で血圧の上昇自体が腎髄 質外層の酸化ストレスを高めるため、悪循環が生じる。 28 最近、ミトコンドリア酸化ストレスが高血圧の病態に関与することが示されているが、AngII の増加お よび血圧の上昇は MTAL において豊富なミトコンドリアの活性酸素を産生し、NADPH oxidase と協調 して細胞内酸化ストレスを亢進することが明らかになった。レニン・アンジオテンシン系抑制薬には 腎髄質の酸素代謝を正常に保つ作用があり、高血圧性腎障害に対する保護作用のひとつを担っている。 未だ、腎酸素代謝をターゲットとした創薬は行われておらず、今後の課題である。 S2-6 RAAS と肝臓 局所 RAAS の関与 ○下澤達雄 東京大学医学部附属病院 検査部 RAAS 系が心臓、血管、腎臓、脳に対して障害を起こすことは広く知られ、これらの抑制薬が心筋梗 塞、心不全、脳卒中、腎不全の治療に有効であることは異論がないところである。とくに、全身の RAAS 系の重要性に加え、組織の RAAS 系の重要性も注目されている。我々はアンジオテンシノーゲンが豊 富な肝臓に注目して RAAS 系と肝障害について検討している。特に非アルコール性脂肪肝から肝炎へ の進展における RAAS 系の重要性をマウスを用いた検討で確認している。全身の RAAS 系は食塩負荷 により抑制したうえで、高脂肪食を負荷すると著明な肝炎が発症するが、レニン阻害、あるいはアン ジオテンシンII受容体の抑制により肝炎を抑制することができた。非アルコール性肝炎に対する ARB の有効性を示す臨床試験も散見されるようになった。本シンポジウムでは局所 RAAS 系からみた 臓器障害について特に肝臓に着目して我々の知見を紹介し、ディスカッションしたいと思う。 S2-7 直接的レニン阻害薬のアリスキレンの治療困難高血圧患者・CKD 患者での有用性と安全性 ○佐藤文俊、森本 玲、工藤正孝、岩倉芳倫、小野美澄、村上 治、伊藤貞嘉 東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科 <目的>コントロール困難な高血圧症例、CKD 患者におけるアリスキレンの有効性と忍容性を明らかに する。 <方法>対象は紹介受診後二次性高血圧の鑑別診断を行い、本態性高血圧症と特異的治療後の二次性高 血圧症で JSH 2009 に準拠して基準以上の血圧の患者既治療中の 80 症例、年齢中央値 61 歳(16 - 87) で 男性 50 名、女性 30 名。初期投与量は 150 mg を Add on し、降圧不良の際は 300 mg まで増量。CKD 患者は 44 例(55%)。降圧薬内服数の中央値は 5 剤/日(1-10)であった。 <結果>収縮期/拡張期血圧はアリスキレン投与前 BP149±2.3/83±1.9 から BP123±1.5/70±1.4 に下降し、血 漿レニン活性が 1ng/ml/h 未満(19 例)とそれ以上で降圧に差は認めなかった。また原発性アルドステロ ン症患者でも有効な降圧が得られた。血清 Cr、eGFR と血清 K の値にアリスキレン投与前後で有意差 は認めなかった。 <結語> CKD 患者が 55%を占めるコントロール困難な高血圧症例群においてアリスキレンは降圧に有 用であり、安全性も確認された。 シンポジウム 3「代謝・循環ホットトピック」 S3-1 2 型糖尿病の β 細胞機能障害における、膵島炎症の役割 ○江口航生 東京大学医学部 附属病院循環器内科 高カロリー食の摂取と身体活動量の低下に伴う肥満の急速な増加とともに、糖尿病の罹患率が全世界 で増加している。肥満は血中遊離脂肪酸を上昇させることが知られているが、飽和脂肪酸を多く含む 食事と血中飽和脂肪酸濃度の上昇は、2 型糖尿病の新規発症の独立した危険因子である。血中に最も多 い飽和脂肪酸であるパルミチン酸が、in vitro で膵細胞障害を惹起することはよく知られており、この ような脂肪酸による直接的な細胞障害は脂肪毒性とまとめられている。しかしながら技術的な問題に より、パルミチン酸等の飽和脂肪酸が in vivo で膵細胞機能障害を惹起するかどうかは明らかではな い。一方、2 型糖尿病の主要な代謝異常のうち、インスリン抵抗性に慢性炎症が密接に寄与しているこ とが明らかとなっているが、膵細胞機能障害においては、1 型糖尿病において炎症が主要な役割を果 たすことが明らかにされている一方、2 型糖尿病においては炎症が寄与するかどうかは不明である。 以上のような観点から、我々はパルミチン酸投与モデル及び、2 型糖尿病モデルである db/db マウスを 解析し、その結果細胞機能障害に炎症機序が広く寄与している事を明らかにした。肥満は脂肪組織や 肝臓の炎症を惹起し、インスリン抵抗性を引き起こすことが知られており、今回の結果は、肥満を背 景とする病態に広く炎症が寄与していることを示すだけでなく、脂肪酸が共通した炎症惹起因子であ ることも示唆する。 29 S3-2 生体分子イメージングによる肥満脂肪組織炎症の病態解析:実質・間質のクロストーク ○西村 智 東京大学 循環器内科、システム疾患生命科学による先端医療技術開発拠点、JST さきがけ 最近の研究により各種生活習慣病の背景には、慢性炎症を基盤とした異常な細胞間作用が生体内で生 じていることが明らかになってきた。生体内の各組織では複数の細胞同士、特に実質と間質の細胞が 常に相互作用しており、その破綻が疾患といえる。しかし、従来の単一の細胞種(培養細胞)を用い た分子生物学的手法、及び、固定標本の形態学的検討では、その本質、特に生体内における詳細な多 細胞連関のメカニズムや背景にある分子機構に迫る事が難しかった。 我々は、一光子共焦点・二光子レーザー顕微鏡を生体に適応し、 「生体分子イメージング手法」を開発 した。本手法では、血管内皮、マクロファージ、血球それぞれの細胞の体内動態が手に取るように可 視化された。メタボリックシンドロームを研究目標として、本手法を肥満脂肪組織に適応したところ、 肥満脂肪組織で、脂肪細胞分化・血管新生が空間的に共存して生じており(2007 Diabetes)、肥満脂肪組 織の微小循環において肥満を背景とする炎症性の細胞動態が生じていることが明らかになった(2008 J Clin Invest)。さらに、肥満脂肪組織の間質には CD8 陽性 T 細胞が多数存在し肥満・糖尿病病態に寄与 していることを示した(2009 Nat Med)。 我々は、さらに研究対象を脳・心血管病の原因である血栓症へと広げ、生体内で最も小さい細胞であ る単一血小板の生体内における可視化に成功した。本手法を用いて、Lnk というアダプター蛋白が血 栓の安定化に寄与している事を示した (2010 J Clin Invest)。 我々の開発した生体イメージングは、従来の手法ではアプローチできなかった細胞間相互作用を生体 内で直接可視化するもので、今後、多くの研究領域において重要な役割を果たすと考えられる。 S3-3 慢性炎症と代謝疾患における脂肪酸結合タンパク ○古橋眞人、三浦哲嗣 札幌医科大学 内科学第二講座 脂質とその関連シグナルは代謝・炎症反応に大変重要な役割を果たし、糖尿病や動脈硬化の病因に深 く関わっている。脂質シャペロンの一つである脂肪酸結合タンパク(FABP)は長鎖脂肪酸などの疎水 性リガンドと結合する可溶性タンパク質で、少なくともこれまでに9つのアイソフォームが報告され ている。その中の aP2 (FABP4/A-FABP)と mal1 (FABP5/E-FABP)は脂肪細胞およびマクロファージに発 現し、欠損マウスを用いた検討から、糖尿病や動脈硬化などのメタボリックシンドロームの成因に深 く関与することが示されている。最近、肥満に関連したインスリン抵抗性にマクロファージの脂肪組 織への浸潤が関与することが示唆されているが、我々は FABP 欠損マウスを用いた骨髄移植実験およ び脂肪細胞とマクロファージとの共培養の検討から、脂肪細胞とマクロファージのそれぞれの FABP が独立して代謝・炎症反応をつかさどり、インスリン抵抗性の進展に関与することを見いだした。さ らに、我々は糖尿病および動脈硬化に対する薬物治療のターゲットとして、製薬会社との共同研究で 小分子 aP2 阻害薬を開発した。aP2 欠損およびその再発現させた各種細胞ラインを用いて aP2 阻害薬の ターゲット特異性を確認し、さらには種々の糖尿病および動脈硬化のマウスモデルにおいて aP2 阻害 薬の有効性を明らかにした。最近、アミノ酸配列上明らかな分泌シグナルを持たないものの aP2 が脂 肪細胞から分泌されることが報告され、疫学的な検討から aP2 の血中濃度がメタボリックシンドロー ムの病態と関連する可能性が示された。当教室で 30 年以上継続中の端野・壮瞥町研究において、無治 療の健診受診者を対象に検討したところ、aP2 濃度と肥満度やインスリン抵抗性との関連が確認された。 aP2 が単に肥満と共に肥大した脂肪細胞から非特異的に放出されているのか、あるいは血中の aP2 自体 に生理活性があるのかについては現時点では不明である。もし後者であれば、FABP の生理学機能の概 念を根本から変えることとなり非常に興味深い。 シンポジウム 4 「最先端研究」 S4-1 オリジナル蛍光プローブの開発による、細胞応答観測・in vivo がんイメージングの新展開 ○浦野泰照 東京大学大学院医学系研究科 生体情報学分野 「生きている」細胞や動物個体の中で起こる様々な応答を「生きたまま」観測・計測する技術として、 蛍光プローブ、蛍光顕微鏡を用いた観察手法が近年汎用されている。本観察手法の実現には、観測対 象分子に対する選択的な蛍光プローブが必要不可欠であり、蛍光タンパク質をベースとするプローブ と有機小分子をベースとするプローブが繁用されている。前者のプローブは、細胞に遺伝子を導入す るだけで発現が可能であり、point mutation に基づく網羅的なプローブ設計法が可能である特長を持つ。 一方、後者の有機小分子蛍光プローブに関しては、細胞外液に添加するだけですべての細胞にプロー ブを導入可能であるという特長を有するものの、汎用性のある設計法が確立していなかったため、実 30 用的な蛍光プローブは数える程度しかないのが現状であった。 このような中、筆者らは新規有機小分子蛍光プローブの効率的な開発を可能とする、論理的かつ汎用 性の高いプローブデザイン法を、世界に先駆けて確立することに成功し、特定の活性酸素種を検出可 能な蛍光プローブ群や、様々なレポーター酵素、生体関連酵素活性を高感度に検出可能な蛍光プロー ブなどの開発に成功してきた。また最近では、新規に開発した酸性環境検出蛍光プローブとがん抗体 を組み合わせることで、生きている動物個体内の 1 mm 以下の微小がん部位を、明確に検出することに も成功した。 当日は、これらプローブの開発事例とその活用による種々のイメージング例を含め、医学・生物研究 や先進医療技術に資する「化学」技術の最前線を幅広く紹介する予定である。 S4-2 iPS 細胞技術を用いた腎臓再生医療の開発 ○長船健二 京都大学 iPS 細胞研究所、科学技術振興機構(JST)さきがけ/山中 iPS 細胞特別プロジェクト 現在、本邦において透析療法を必要とする末期腎不全患者数は約 30 万人であり、高齢化社会も相まっ て今後も増加し続けることが予想されている。さらに、透析医療費は全医療費の約 4%を占めるに至っ ており、末期腎不全は医学的のみならず医療経済的にも大きな問題である。年間約 3 万人の新規透析 導入患者が発生する一方で、その根治的な治療法である腎移植施行は年間 1 千例程度とドナー腎臓不 足は深刻な問題であり、その解決策の確立は急務である。一方、発生生物学の知見に基づいて、自己 複製能と多分化能の 2 つの性質で定義される「幹細胞」から主要臓器細胞への分化誘導を行い、細胞 移植によって機能不全となった臓器機能の回復を図る再生医学研究が注目を集めている。とりわけ、 2007 年に拒絶反応および受精卵の使用というヒト ES(胚性幹)細胞に付随する 2 つの問題点を克服し うるヒト iPS(人工多能性幹)細胞が開発され、再生医療の実現化に向けての期待が益々高まった。し かし、ES 細胞や iPS 細胞から腎臓への高効率の分化誘導法は未だに確立されておらず、その一日も早 い開発が望まれる。近年、化学と生物学を融合させた「ケミカルバイオロジー」と呼ばれる学問分野 が発展し、合成化合物や生物由来の天然物ライブラリを高速でスクリーニングすることによって、様々 な生命現象を制御する薬剤が探索されている。演者らは、最近、低分子化合物ライブラリの高速スク リーニングにてヒト ES 細胞から高効率に膵臓前駆細胞を分化誘導する化合物を見出し、ケミカルバイ オロジーを用いることによって、これまで幹細胞からの誘導が困難であった臓器の作製を行える可能 性があることを示した。本発表では、ケミカルバイオロジーを用いた iPS 細胞から腎臓への分化誘導 および細胞療法の開発に加え、iPS 細胞技術を用いた難治性腎疾患に対する新規疾患モデル作製、治療 薬探索の展望についても概説する。 S4-3 アディポネクチン・AdipoR の生理的・病態生理的意義 ○山内敏正、門脇 孝 東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 肥満はインスリン抵抗性を基盤としてメタボリックシンドローム(MS)や糖尿病を惹起し、動脈硬化の 主因となる。肥満では脂肪細胞から分泌されるアディポネクチン(Ad)、特に高活性型の高分子量 (HMW)Ad が低下し(JBC,2003)、MS や糖尿病等の原因となっており(Nat Genet,2002)、その補充が AMPK(Nat Med,2002)や PPARα を活性化し(JBC,2003)、 肝臓や骨格筋における脂肪酸燃焼促進等により、 これらの治療法となる事を示した(Nat Med,2001)。 次に、特異的結合を指標にした発現クローニング法により、Ad 受容体(AdipoR)1 と AdipoR2 を同定し た(Nature,2003)。さらに MS・糖尿病等のモデルマウスにおいては、AdipoR の発現量が低下し、Ad 感 受性の低下が存在する事を示した(JBC,2004)。一方、AdipoR1 或は AdipoR2 の MS・糖尿病等のモデル マウス肝臓での過剰発現は、Ad の作用を増強し、耐糖能障害を改善させた。欠損マウス解析と合わせ、 AdipoR1・AdipoR2 が個体レベルにおいても Ad の特異的結合と作用に必要な受容体である事、インス リン感受性や糖・脂質代謝、酸化ストレスや炎症の制御等において生理的に重要な役割を果たす事、 肝臓においては、AdipoR1 は AMPK、AdipoR2 は PPARα を活性化している事が示唆された(Nat Med,2007)。 骨格筋においては、Ad/AdipoR1 が、運動を模倣するような効果を発揮している事を見出している(Nature 2010)。 診断法への応用として、ヒト HMW-Ad 測定系を開発し、インスリン抵抗性・MS と逆相関するより良 い指標となる事を示した(Diabetes Care,2006)。治療への応用として、PPARγ 作動薬が HMW-Ad を増加 させる事、及びその事が抗糖尿病作用に重要である事を示した(JBC,2006)。さらに PPARα 作動薬が AdipoR を増加させる事(Diabetes,2005)、及び野菜・果物に含まれるオスモチンが骨格筋細胞において AdipoR を介して AMPK を活性化しうる事を示した(Mol Cell 2005)。 AdipoR 作動薬の開発に関しては、ランダムスクリーニングによる内服可能な低分子量化合物の開発や、 抗体創薬、Ad・オスモチン等の既知のアゴニストとの結合の有る無しの状態での立体構造解析のデー タに基づく低分子量化合物の設計及びスクリーニング等が戦略として考えられ、その実現が世界で大 いに期待されている。 31 YIA 候補演題(18 演題) Y-1 糖尿病時における P2Y-receptor を介した血管収縮反応性増大に対する losartan の効果 ○石田恵子、松本貴之、田口久美子、小林恒雄、鎌田勝雄 星薬科大学 医薬品化学研究所機能形態 【目的】 細胞外 nucleotides は、血管緊張性維持に重要な役割を果たしているが、2 型糖尿病を長期 に罹患した状態での血管反応性の変化やそのシグナル伝達については全く明らかになっていない。そ こで本研究は、2 型糖尿病モデル GK rat (37-42 週齢) を用い、ATP に対する感受性の変化、並びにそ のシグナル伝達に焦点をあて検討を行った。また Losartan (25 mg/kg/day; 2 week) 慢性投与群を作成し、 angiotensin II の影響についても検討した。 【方法】GK 群、Wistar 群、及び Losartan 慢性 GK 群より摘出した上腸間膜動脈を用い ATP, UTP に よる累積収縮反応について検討した。また ATP, UTP 刺激による、リン酸化 cPLA2 level、prostanoids 産 生量、COX-1, COX-2, P2Y2-, P2Y4-receptor 発現について検討した。 【結果・考察】 Wistar 群と比較して GK 群において 1) ATP, UTP 累積収縮反応性増大 (この反応は COX inhibitor, cPLA2 inhibitor および内皮除去により抑制された), 2) ATP, UTP 刺激時の PGE2, PGF2 産 生量増加、3) ATP, UTP 刺激下の cPLA2 のリン酸化レベル増大、4) COX-1, COX-2 発現増加 5) P2Y4-receptor 発現減少が認められた。また、Losartan 慢性投与により 1) ATP, UTP 累積収縮反応、2) UTP 刺激時の PGE2, PGF2 産生量、3) UTP 刺激下の p-cPLA2 level, 4) COX-2, P2Y4-receptor 発現が是 正された。この結果から、2 型糖尿病時における ATP 収縮増大は P2Y-receptor を介した cPLA2/COX 経 路の活性化によるものであり、Losartan はこの経路を抑制することで、ATP 収縮増大を是正したこと が明らかとなった。 Y-2 細胞内酸性環境を維持する(プロ)レニン受容体の生理的な機能 ○木内謙一郎 1)、市原淳弘 2)、佐野元昭 3)、和田戈虹 4)、和田洋 5)、三戸麻子 1)、 木田可奈子 1)、成田達也 1)、大島洋一 2)、黒澤秀章 1)、福田恵一 3)、伊藤 裕 1) 1) 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科、2)慶應義塾大学医学部抗加齢内分泌学講座、 3) 慶應義塾大学医学部循環器内科、4)同志社女子大学薬学部生化学研究室、 5) 大阪大学産業科学研究所 【目的】 (プロ)レニン受容体[(P)RR]は、心臓・血管平滑筋・副腎など重要臓器に分布する。その遺伝 子配列は V-ATPase の Vo sector と局在を共にする蛋白である ATP6AP2 と同一であり、アミノ酸配列は (P)RR の膜貫通ドメインを含む C 末端側が ATP6AP2 であった。しかし、V-ATPase はオルガネラの酸性 環境の維持に必須であることが知られている一方で、ATP6AP2 の生理的な役割は不明であった。 【方法】今回我々は Floxed (P)RR transgenic mouse の作成に成功した。そのマウス由来の胎児線維芽細 胞と心筋細胞特異的発現 Cre 発現マウスとの交配によって得た心筋特異的欠損モデルマウスを用いて (P)RR/ATP6AP2 の生理的な役割を検討した。 【成績】Floxed (P)RR マウスより採取した胎児線維芽細胞に Cre アデノウイルスベクターを感染させ (P)RR を欠損させたところ、Vo sector 選択的にサブユニットのタンパク発現の減少を認め、オルガネラ の酸性環境が障害されていた。心筋特異的 Cre 発現マウスとの交配による産仔の(P)RR 欠損マウスは、 生後約 3 週間で拡張型心筋症様の心不全を発症し死亡した。心筋組織において核周囲の著明な空胞変 性と線維化を認め、これらの空胞は Multi-vesicular body や autophagosome から構成され、後期エンドソ ーム/ライソソームのマーカーである Rab7、Lamp-2 が陽性であった。また、胎児線維芽細胞と同様に、 Vo sector 選択的なサブユニットのタンパク発現の減少を認めた。更に心臓組織の LC3-II や p62 のタン パク発現亢進を認め、オルガネラの酸性化障害を背景とした autophagy の障害が示唆された。オルガネ ラの酸性化障害が同様な細胞変化を起こすかを検討するため、Bafilomycin および Chloroquine をラット 初代培養心筋細胞に投与したところ、両薬剤ともに Rab7 陽性の空胞形成が認められた。このことから オルガネラの酸性化障害が後期エンドソーム/ライソソームの蓄積をもたらしていると考えられた。 【結論】以上より、(P)RR は心筋細胞においてオルガネラの酸性環境を維持し、正常な発達と生理に必 須な役割を有する重要な分子であることが明らかになった。 Y-3 尿細管管腔内アルカリ化は蛋白尿による近位尿細管細胞酸化ストレスを、Pyk2 経路を介して 改善させる ○相馬友和 1)、阿部倫明 2)、森口尚 3)、高井淳 3)、秋山泰利 1)、豊原敬文 4)、鈴木健弘 1)、 種本雅之 5)、阿部高明 6)、山本雅之 3)、伊藤貞嘉 1) 1) 東北大学大学院 腎高血圧内分泌学分野、2)仙台社会保険病院、 3) 東北大学大学院 医化学分野、4)京都大学 iPS 細胞研究所、5)帝京大学医学部内科学講座、 6) 東北大学大学院 分子病態医工学分野 【背景】慢性腎臓病(CKD)進行因子として蛋白尿、特にオレイン酸結合アルブミン(OA-Alb)による近位 尿細管酸化ストレス蓄積を介した尿細管間質傷害がある。また、近位尿細管は、体液 pH 維持のために 生理的に原尿より重炭酸イオンを再吸収し、尿細管管腔内は pH6.4 前後の酸性環境となる。この酸性 環境が OA-Alb による活性酸素種(ROS)産生に与える影響は不明である。 32 【方法・結果】ヒト近位尿細管由来培養細胞(HK-2 細胞)に OA-Alb(pH7.0~6.0)を投与、活性酸素 産生(O2・-)を測定した。OA-Alb 刺激は pH6.4 および pH6.0 で O2・-産生をそれぞれ 7 倍、13 倍と有意に 上昇させた。この O2・-産生は Apocynin にて 56%抑制され NAD(P)Hoxidase(NOX)の関与が考えられた。 さらに、酸性環境(pH6.4)下での OA-Alb 刺激が、近位尿細管 pH センサーであり、かつ NOX 活性化 因子である proline rch tyrosine kinase2(Pyk2)の経時的なリン酸化増強をもたらし c-Src の共沈が観察さ れた。Rac1 活性化も有意に増強した。さらに、マウスアルブミン過剰負荷モデルを用いて in vivo での 検討を行ったところ、OA-Alb 負荷により尿細管細胞内 ROS 蓄積が有意に増加し、著明な組織傷害と 酸化ストレスによる DNA 傷害(8OHdG 染色)の増加を認めた。これらの変化は炭酸ナトリウム飲水 による管腔内アルカリ化でコントロール群レベルまで改善した。 【考察】蛋白尿による近位尿細管細胞酸化ストレスは生理的尿細管管腔内酸性環境にて増強され、そ の機序として Pyk2 を介した NAD(P)H oxidase 活性化が関与すると考えられた。蛋白尿を伴う CKD 患 者では、尿細管管腔内アルカリ化は尿細管細胞酸化ストレスを抑制し CKD の進展を抑制する可能性が ある。Journal of the American Society of Nephrology in press。 Y-4 心筋梗塞モデルへの骨髄単核球細胞移植と fasudil 併用投与による心保護効果 ○武島 宏、小林直彦、小口 渉、石川まゆ子、杉山史弘、石光俊彦 獨協医科大学 循環器内科 【目的】心筋梗塞犬モデルを用いて骨髄単核球細胞(MNC)移植と Rho-kinase 阻害薬である fasudil を併 用することによる心保護効果と機序について検討した。 【方法】ビーグル犬の骨髄より採取した MNC を、同一のビーグル犬の LAD を結紮し心筋梗塞犬モデ ルを作成した後、梗塞部位に MNC 移植を施行した。さらに併用群は fasudil (FAS: 30 mg/kg/day)を経口 投与にて 4 週間治療した。4 週間後に CAG にて collateral を評価し、また心機能評価としてコンダクダ ンスカテーテルを用いた pressure volume (P-V) loop による左室収縮能(Ees)を測定した。また VWF によ る免疫染色により血管新生を評価し、さらに左室心筋における Western blot により VEGF, eNOS, bax, bcl-2, caspase-3 発現を検討し、また TUNEL 染色を施行した。また血中の CD34 positive cell を FACS 解 析した。 【成績】Fibrosis area は未治療群に比べて MNC+FAS 併用群で線維化の抑制が認められ、また capillary density の増加も確認された。P-V loop による Ees、FACS 解析による CD34 positive cell および VEGF, eNOS 発現は未治療群に比べて MNC+FAS 併用群で亢進が認められた。また caspase-3 発現、bax/bcl-2 ratio お よび TUNEL 染色は未治療群で亢進し、MNC+FAS 併用群で抑制された。また以上のこれらの効果は MNC 単独群に比べ MNC+FAS 併用群で有意であった。 【結論】骨髄単核球細胞と fasudil 併用により心機能改善効果は増強し、心筋虚血における血管新生作 用には Rho-kinase 系が関与している可能性が示唆された。 Y-5 心臓周囲脂肪組織における炎症性サイトカインの発現と冠動脈病変の関連 ○平田陽一郎 1)、元木達夫 2)、黒部裕嗣 2)、赤池雅史 1)、田端 実 3)、高梨秀一郎 3)、 北川哲也 2)、佐田政隆 1) 1) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学分野、 2) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部心臓血管外科学分野、 3) 榊原記念病院心臓血管外科 【目的】動脈硬化は各種炎症性サイトカインなどが惹起する血管の慢性炎症がその基盤となる。また 脂肪組織へのマクロファージの侵潤が慢性炎症を惹起し、インスリン抵抗性などの病態に関与してい るとされる。しかし、血管周囲脂肪組織が動脈国か病変の形成にあたえる影響については、いまだ明 らかではない。そこでヒトの冠動脈病変と血管周囲脂肪組織における炎症との関連を調べることを目 的として、以下の研究を行った。 【方法】冠動脈バイパス手術を行う患者(CAD 群:38 例)、および弁形成術を施行する患者(Non-CAD 群:40 例)において、心臓周囲脂肪および皮下脂肪を採取し、免疫染色によってマクロファージの侵 潤を評価した。また同じ脂肪組織から mRNA を抽出し、リアルタイム PCR 法を用いて各種サイトカイ ンの発現を検討した。 【結果】CAD 群の心臓周囲脂肪においては、Non-CAD 群に比べて炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6、 MCP-1)の mRNA 発現が亢進していた。これらの炎症性サイトカインの発現は、皮下脂肪やバイパス グラフトとして使用される内胸動脈周囲脂肪では増加していなかった。またこれらの炎症性サイトカ インの発現は、脂肪組織中に浸潤したマクロファージの極性(M1/M2 ratio)と正の相関関係を示した。 一方で、M1/M2 ratio と抗炎症性サイトカイン(IL-10, AMAC-1)との間には、負の相関が認められた。 【考察】冠動脈における動脈硬化病変の形成には、冠動脈周囲の脂肪組織における炎症性マクロファ ージの浸潤と、炎症性サイトカインの発現亢進が影響を及ぼしている可能性がある。 Y-6 eNOS 機能異常は代償性腎肥大機序を破綻させ、腎障害を進展させる ○長洲 一、佐藤 稔、冨田奈留也、佐々木 環、柏原直樹 川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学 33 【背景】血管内皮由来の一酸化窒素 (NO) は血管拡張、血流維持、白血球接着抑制、血小板凝集抑制、 活性酸素消去、細胞増殖制御などの働きを介して組織・細胞機能の保持、恒常性維持に重要な役割を 果たしている。実質臓器の代償性肥大時には、血管内皮由来の NO の産生亢進、臓器血流量の増加が 随伴する。腎においても各種疾患で機能ネフロン数が減少すると、残存ネフロンが肥大し代償する。 これまで内皮型 NOS (eNOS)機能異常が腎障害進展に関わり、逆に、NO- sGC (soluble guanylate cyclase) – PKG(cGMP dependent protein kinase)経路が保護的に働くことを報告してきた。 「内皮機能(eNOS 機能) 障害が代償性腎肥大を破綻させ、腎障害をもたらす」との仮説をたて検証した。 【方法】野生型 (C57BL/6; WT)マウス、Tie-2 promoter 制御下で eNOS 遺伝子を発現する内皮特異的 eNOS 過剰発現マウス(ECeNOS-TG) および eNOS 欠損(eNOS-KO)マウスを使用し、右腎臓摘出術 (uninephrectomy; UNx) あるいは Sham 手術を行い、2 週間後に対側腎を評価した。培養近位尿細管細胞 に NO ドナーS-Nitrosoglutathione (GSNO)、あるいは sGC 刺激剤 (BAY 41-2272) を添加し、PKG 活性、 Akt- mTOR pathway 活性化を検討した。さらに eNOS-KO-UNx に対し BAY 41-2272 を投与し、代償性腎 肥大の再現性、Rapamycin (mTOR 抑制剤)で抑制されるか否かを検討した。 【結果】WT 群では UNx 後に腎内 NO 産生が亢進し、腎重量、蛋白/DNA 量比は有意に代償性に増大 した。eNOS-KO 群では UNx 後に生じる代償性腎肥大が抑制された。逆に ECeNOS-TG では腎肥大が増 強した。培養尿細管細胞では GSNO 投与による PKG 活性上昇と Akt-mTOR pathway 活性化、蛋白合成 亢進を認めた。BAY 41-2272 の投与で同 pathway 活性化と蛋白合成亢進が再現された。eNOS-KO-UNx 群に BAY 41-2272 を投与すると、代償性腎肥大が誘導され、BAY 41-2272 と Rapamycin 同時投与で肥 大が抑制された。 【結語】腎内 eNOS 活性は代償性腎肥大に必須であり、NO-sGC-PKG pathway が腎肥大のシグナル伝達 に重要であることが示された。内皮障害に伴う eNOS 異常は代償性腎肥大の破綻を惹起し、腎障害を 進展させうる。eNOS 機能異常は、血管内皮機能障害を基盤に持つ糖尿病、高血圧等を成因とする慢性 腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)の腎障害進展機序を形成するものと考えられる。 Y-7 アドレノメデュリン-RAMP2 系による心臓エネルギー代謝制御と恒常性維持 ○吉沢隆浩 1)、桜井敬之 1)、神吉昭子 1)、河手久香 1)、市川優佳 1)、荒井琢磨 1)、小山晃英 1)、 家里康弘 1)、楊 磊 1)、植竹龍一 1)、山内昭弘 1)、沖村綾乃 1)、田中 愛 1)、川上速人 2)、 中西広樹 3)、田口 良 3)、中西 豪 4)、新藤隆行 1) 1)信州大学医学系研究科 臓器発生制御医学講座、2)杏林大学医学部 解剖学、 3)東京大学医学部 メタボローム講座、4)島津製作所 アプリケーション開発センター アドレノメデュリン(AM)は多彩な生理活性を有し、心血管系の恒常性維持に重要なペプチド因子で ある。AM 受容体は G タンパク共役型受容体である CLR と、それに随伴する受容体活性調節タンパク 質 RAMP によって規定される。RAMP には複数のサブアイソフォームが存在するが、RAMP2 ノック アウトマウスのみが心血管系の発生異常により胎生致死になる事から、AM-RAMP2 系の重要性が示唆 されている。本研究では、従来胎生致死となるために困難であった成体における AM-RAMP2 系の機能 解明のために、成体心特異的な誘導型 RAMP2 コンディショナルノックアウトマウス(C-RAMP2 KO) の樹立、解析を行った。 C-RAMP2 KO では、RAMP2 欠損誘導と共に、拡張型心筋症様の所見と心機能低下を認め、ミトコン ドリアの形態異常と、PGC-1 をはじめとするミトコンドリア制御因子の発現低下を認めた。この時、 電子伝達系や脂質 β 酸化系、活性酸素種(ROS)制御系といった、ミトコンドリア機能関連因子にも 発現低下を認めた。心臓の脂質メタボローム解析や MALDI-TOF-MS イメージングでは、ミトコンドリ ア内膜の特異的脂質であるカルジオリピン(CL)の低下と、CL 成熟酵素であるタファジンの発現低下 を認めた。初代培養心筋細胞では、RAMP2 ダウンレギュレーションと共に、ミトコンドリア膜電位低 下と、ミトコンドリア由来 ROS 亢進が確認された。また、C-RAMP2 KO では、PGC-1 の制御因子であ る CREB のリン酸化低下を認めたが、フォルスコリン投与により CREB を活性化する事で、ミトコン ドリア関連因子の発現や心不全に回復を認めた。 以上の結果から、AM-RAMP2 系は、心筋ミトコンドリアにおける酸化ストレス制御、脂質代謝や ATP 産生制御といったエネルギー代謝制御を介して、心臓の恒常性維持に重要な役割を果たすと考えられ る。 Y-8 高血圧発症における RVLM 内 Neuregulin-1/ErbB pathway の役割 (NOS)/NO axis との関連○松川龍一、廣岡良隆、伊藤浩司、砂川賢二 九州大学大学院医学研究院 循環器内科学 -Nitric oxide synthase 【背景・目的】Neuregulin-1(NRG-1)/ErbB pathway は細胞の増殖・分化の促進などに関与することが知 られている。最近、我々は正常血圧動物において心臓血管中枢である頭側延髄腹外側野 (RVLM)にお ける NRG-1/ErbB pathway の活性化が主要伝達物質の制御を介して交感神経活動を抑制し、降圧作用を 示すことを報告した(AHA2010)。しかし、高血圧における神経性調節異常にこの経路の変化が関わって いるかは不明である。また、我々は RVLM において nitric oxide (NO)が降圧系として重要な役割を有す ることを報告してきた。従って、本研究の目的は、脳内 RVLM における NRG-1/ErbB pathway の NO と の関連、さらにこの系の高血圧発症・維持における役割を明らかにすることであった。 【方法・結果】Western blotting 法により脳幹部における NRG-1 および ErbB 受容体の発現を確認した 34 ところ ErbB2 の発現のみが 4 週齢の WKY に比べ同週齢の SHR において有意に低下しており、その変 化は 12 週齢の SHR においても同様であった。また、12 週齢の SHR および WKY に対して麻酔下に RVLM への NRG-1 および ErbB2 阻害薬 (AG825)の微量投与を行ったところ NRG-1 による降圧反応な らびに AG825 による昇圧反応は WKY に比べ SHR で有意に減弱していた。続いて ErbB2 の阻害が高 血圧に関与するかどうかをの確認するため SiRNA を用いて WKY の RVLM における ErbB2 の発現を抑 制したところ、尿中カテコラミンの増加を伴う有意な血圧・心拍数増加を、さらに RVLM において neural NO synthase(nNOS)および endothelial NOS (NOS)の発現を有意に抑制していることを認めた。さらに NOS 阻害薬である L-NMMA (1.0mM) を前投与した上で NRG-1 (500nM) の投与を行い L-NMMA 前投 与により NRG-1 による降圧作用は有意に抑制された。 【結論】以上の成績は、脳幹部における ErbB2 の発現低下による RVLM における NRG-1/ErbB pathway ならびにその下流に位置する NOS/NO axis の作用低下が、高血圧の発症・維持に関与することを示唆 する。 Y-9 平滑筋特異的(プロ)レニン受容体ノックアウトマウスの解析 ○三戸麻子、市原淳弘、木内謙一郎、木田可奈子、柏 真紀、伊藤 裕 慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 【目的】ヒト血管平滑筋細胞に組み換え型ヒトプロレニンを負荷すると、細胞内アンジオテンシン II の増加とともに(プロ)レニン受容体依存性細胞内シグナルが活性化することが知られている。近年、ヒ ト(プロ)レニン受容体高発現ラットでは、緩徐に腎症が発症・進行し生後6か月頃に血圧が上昇す ることが報告された。しかし、血管平滑筋における(プロ)レニン受容体の生理的な役割については全く 明らかにされていない。本研究では、血管平滑筋における(プロ)レニン受容体の生理的役割を解明 するために、平滑筋特異的(プロ)レニン受容体ノックアウトマウスを作成し、血圧と動脈組織変化 を解析した。 【方法】マウスの胚性幹細胞内の(プロ)レニン受容体遺伝子の exon2 を loxP 配列で挟んだ雌性 Atp6ap2loxp/loxp マウスを作製し、雄性 myosin heavy chain /Cre トランスジェニックマウスと交配して 得られた平滑筋細胞特異的(プロ)レニン受容体ノックアウト(cKO)マウスおよび野生型同胞(LM) マウスを用いて、自由行動下血圧と大動脈における組織変化を解析した。 【結果】cKO マウスは 20 週齢を最長に短命化の傾向を認めた。生後 7 週齢において頸動脈下にテレメ トリを挿入し、LM マウス(n=2)および cKO マウス(n=4)の自由行動下血圧を測定したが、16 週齢までに 両者に有意な差は認めなかった。腹部大動脈をマッソントリクローム染色したところ、cKO マウスで は中膜内の弾性板が断裂し、平滑筋細胞数の著明な減少と大動脈の繊維化を認めた。電子顕微鏡によ る観察では、cKO マウスの血管平滑筋細胞内に空胞やリポフスチン様顆粒が過剰に沈着しており、未 消化のオルガネラを含む巨大化した autophagosome が多数認められた。また内皮細胞内には vesicle 状 の物質の過剰沈着を認めた。 【考察】平滑筋特異的(プロ)レニン受容体の欠損は、大動脈において血管平滑筋細胞の脱落と繊維 化を引き起こした。血管平滑筋細胞の正常な維持に(プロ)レニン受容体は必須な役割を果たすと考 えられた。 Y-10 Angiotensin II 誘発血管リモデリングにおける hypoxia-inducible factor-1α の役割 ○今西正樹 1)、石澤啓介 2)、木平孝高 1)、池田康将 1)、土屋浩一郎 2)、玉置俊晃 1)、 冨田修平 1) 1) 徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部薬理学分野、 2) 徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部医薬品機能生化学 【目的】Hypoxia-inducible factor-1 (HIF-1α) は低酸素環境下で誘導され、血管新生や細胞分化、免疫機 能調節等に関わる様々な遺伝子群を制御する転写因子である。近年、通常酸素下においても酸化スト レス関連因子が HIF-1α 発現調節に関与することが報告されている。HIF-1α は動脈硬化等の血管障害に 関与することも示唆されているが、それらは in vitro の報告が主であり in vivo での詳細な検討はほとん どない。そこで本研究は、酸化ストレス障害に起因する血管リモデリングにおける HIF-1α の役割を解 明するため、平滑筋特異的 HIF-1α 遺伝子欠損マウスを作製し検討を行った。 【方法】Cre-loxP システムにより平滑筋特異的 HIF-1α 遺伝子欠損マウス (KO) を作製した。血管リモ デリングは angiotensin II (Ang II) を充填した浸透圧ポンプをマウス皮下に埋め込み 2.5 mg/kg/day の投 与量で 4 週間持続投与することにより惹起した。大動脈血管壁中膜肥厚及び繊維化は EVG 染色により 評価した。血圧は tail-cuff 法により測定した。各種遺伝子 mRNA 発現解析はリアルタイム PCR 法によ り行った。 【結果】Control マウス (CONT) では Ang II 投与により大動脈の HIF-1α 及び HIF-1β の mRNA 発現上 昇を認めたが、KO では認めなかった。CONT では Ang II 投与により大動脈血管壁中膜肥厚及び中膜周 囲の繊維化を認めたが、KO では認めなかった。さらに、CONT では Ang II 投与により大動脈の PAI-1、 collagen I、MCP-1 および IL-1β の mRNA 発現上昇を認めたが、KO では認めなかった。また Ang II 投 与により収縮期圧 (mmHg) は、CONT では 98±2 (0 週) から 159±5 (4 週)へと上昇したが、KO では 99±2 から 134±4 へと変化した。すなわち Ang II による血圧上昇は、平滑筋特異的 HIF-1α 遺伝子欠損により 有意に抑制されることが示された。 【結論】Ang II 誘発性血管リモデリングは、血管平滑筋細胞の HIF-1α を介して制御されている可能性 35 が示唆された。 Y-11 脂肪酸受容体 GPR120 機能不全は食餌誘発性の肥満及び脂肪肝を惹起する ○市村 敦彦、平澤 明、宮内諭、木村郁夫、鮎川公美子、竹内理人、辻本豪三 京都大学大学院薬学研究科ゲノム創薬科学/薬理ゲノミクス分野 遊離脂肪酸は、必須の栄養成分であるのみならず、シグナル分子としても機能することが見出された。 近年、これらの遊離脂肪酸によって活性化される G タンパク質共役型受容体が複数見出された。我々 は、この遊離脂肪酸受容体の内、消化管等に高発現している GPR120 が α リノレン酸などの長鎖不飽 和脂肪酸を受容し、消化管からの GLP-1 分泌を促進することを見出した (Hirasawa A et al, NAT MED 2005, 11:90-94)。更に近年、特異的抗体を用いた発現解析により、GPR120 は消化管以外にも脂肪組織 や肺において高発現していることを見出した (Miyauchi S et al N-S ARCH PHARMACOL 2009, 379:427-34)。しかしながら、これらの組織における GPR120 の生理機能や、全身の代謝において果た している役割は未知であった。そこで、本研究では、GPR120 のノックアウトマウスを作出し、その表 現型を解析することにより、GPR120 の生理、病態における機能の解明を試みた。 GPR120 ノックアウトは、通常餌給餌下では野生型マウスと大きな差は見られなかったが、高脂肪食負 荷下において、野生型と比較して肥満、脂肪細胞肥大及び脂肪肝を呈した。また、末梢組織における インスリンの感受性が低下し、糖代謝異常も観察された。マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現 プロファイリングにより、これらの脂質代謝及び糖代謝の異常が、脂肪や肝臓におけるインスリンシ グナル関連分子の発現低下や、脂質合成酵素の肝臓における発現亢進及び脂肪における発現低下に依 るものと推定された。これらの結果から、GPR120 が全身における脂質、糖代謝において重要な役割を 担っていることが示された。また、肥満や糖尿病は心疾患とも密接に関わっているため、遊離脂肪酸 やその受容体が心疾患においても重要な役割を果たす事が示唆される。 Y-12 Angiotensin II 誘発血管リモデリングに対するニトロソニフェジピンの抑制作用 ○櫻田 巧 1)、石澤啓介 2)、今西正樹 1)、堀ノ内裕也 1)、富永えりか 3)、谷口順平 3)、 藤井聖子 2)、木平孝高 1)、池田康将 1)、冨田修平 1)、土屋浩一郎 2)、玉置俊晃 1) 1) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 薬理学、 2) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 医薬品機能生化学、 3) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 臨床薬剤学 【目的】ニトロソニフェジピン (NO-nif) は、nifedipine に光照射を行うことで合成される。NO-nif は Ca チャネル阻害作用を示さないが、細胞膜における不飽和脂肪酸と反応して NO-nif ラジカルを生成す ることで、ニフェジピンよりも強いラジカル消去能を示す可能性が示唆されている。しかし酸化スト レス障害に対する NO-nif の影響は報告されておらず、その作用機序も不明である。そこで本研究では、 アンジオテンシン II (Ang II) 誘発血管リモデリングに対する NO-nif の作用を検討した。 【方法】細胞は培養ラット大動脈血管平滑筋細胞 (RASMC) を用い、遊走は boyden chamber 法、増殖 は MTT 法にて測定した。タンパク質リン酸化はウエスタンブロット法にて検出した。活性酸素種 (ROS) は dihydroethidium 染色により測定した。動物は C57BL/6J マウスを用い、Ang II は皮下埋め込み 式浸透圧ポンプを用いて 14 日間投与し、NO-nif は連日腹腔内投与を行った。大動脈中膜肥厚は HE 染 色にて評価し、血圧は tail cuff 法にて測定した。尿中 8-OHdG および各種遺伝子発現は、ELISA 法およ び Real-Time PCR により確認した。 【結果・結論】NO-nif (10 μM) は、Ang II (100 nM) 刺激により上昇した RASMCs の遊走及び増殖を抑 制した。Ang II 刺激による EGF 受容体、Akt のリン酸化および ROS 産生は、NO-nif 前処置により低下 した。一方、NO-nif は Ang II 刺激による細胞内 Ca2+ 濃度上昇および PKCδ リン酸化に対して何ら影響 を示さなかった。マウスにおいて、Ang II により惹起された血管壁中膜肥厚および血圧上昇は、NO-nif (30 mg/kg/day) により抑制された。NO-nif は Ang II による尿中 8-OHdG 増加を抑制した。さらに NO-nif は Ang II による p22phox、CD68、MCP-1 および collagen 1 の mRNA 発現上昇を抑制した。本研究から、 NO-nif は血管平滑筋細胞において酸化ストレス抑制作用を示すことにより、血管リモデリング抑制作 用を示す可能性が示唆された。 Y-13 血管内皮細胞のアドレノメデュリン-RAMP2システムによる血管恒常性維持機構 ○小山晃英、桜井敬之、神吉昭子、新藤優佳、川手久香、荒居琢磨、家里康弘、吉沢隆浩、楊 磊、植竹龍一、沖村綾乃、山内啓弘、田中 愛、新藤隆行 信州大学医学系研究科 臓器発生制御医学講座 アドレノメデュリン(AM)は、血管拡張による降圧作用をはじめ、pleiotropic 作用を有する血管作動性 物質として知られている。我々は、遺伝子改変マウスを用いて、AM が胎生期の血管形成に必須であ ること、AM の受容体活性調節タンパク(RAMP)2 によって、血管の AM シグナルが規定されている ことを報告してきた。AM、RAMP2 ノックアウトマウスともに、血管の構造異常により、浮腫や出血 を来たし胎生致死となる事から、AM-RAMP2 系が血管新生に必須であることが明らかとなった。 続いて我々は、血管における RAMP2 の意義を解明するために、血管内皮細胞特異的 RAMP2 ノックア ウトマウス(E-RAMP2-/-)と、成体おいてオンデマンドに血管内皮細胞特異的に RAMP2 を欠損させる薬 36 剤誘導性血管内皮細胞特異的 RAMP2 ノックアウトマウス(DI-E-RAMP2-/-)を樹立した。E-RAMP2-/-の ほとんどは出生直前に致死であり、全身性の浮腫を認めた。一方で、血管の RAMP2 発現が 2 割程度残 存する一部の E-RAMP2-/-では、成体が得られた。成体の E-RAMP2-/-では、血管壁構造の異常に加え、 肝硬変様の形態変化や、種々の腎臓障害の自然発症が認められた。さらに、主要臓器の血管周囲の著 明な炎症細胞浸潤や、血管における老化相関 β-ガラクトシダーゼ染色陽性所見を認めた。 E-RAMP2-/-では得られる成体が限られるため、次に成体で RAMP2 欠損を可能とする DI-E-RAMP2-/を用いた解析を行った。RAMP2 欠損誘導後早期から著しい体重の増加や腎機能障害を認め、血管内皮 細胞の形態異常と炎症性接着性因子の発現亢進が確認された。 以上の結果は、AM-RAMP2 系が血管新生に必須であると共に、成体の血管恒常性維持にも重要である ことを示しており、RAMP2 は新たな治療標的分子として期待される。 Y-14 マウス腸間膜動脈における acetylcholine および calcium ionophore 誘発内皮依存性血管弛緩反 応の特徴 ○和家祥大 1)、牧野堅人 1)、藤原弘喜 1)、橋川成美 2)、橋川直也 3)、髙取真吾 1)、川﨑博已 1) 1) 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科臨床薬学、 2) 岡山理科大学 理学部 臨床生命科学科薬理学、 3) 岡山理科大学 理学部 臨床生命科学科臨床分子遺伝学 【目的】我々は、多数の病態モデルが存在するマウスの腸間膜動脈血管床における灌流評価系を確立 し、ラット腸間膜動脈に類似した血管周囲神経を介する血管緊張度調節機構の存在を明らかにしてい る。本研究では、血管の緊張度調節に関与する血管内皮機能に着目し、マウス腸間膜動脈血管床にお ける内皮細胞による調節機構について検討を行った。 【方法】C57BL/6 系雄性マウスの腸間膜動脈血管床を摘出して、灌流標本を作製した。一定流量で Krebs 液を灌流し、その灌流圧変化を血管緊張度変化として測定した。Methoxamine 誘発昇圧条件下における、 acetylcholine(ACh)および calcium ionophore(A23187)による血管弛緩反応に対する一酸化窒素(NO) 合成酵素阻害薬(L-NAME, Nω-nitro-L-arginine methyl ester)、cyclooxygenase 阻害薬(indomethacin)、K+ チャネル阻害薬(TEA, tetraethyl ammonium)、gap-junction 阻害薬(18α-GA, 18α-glycyrrhetinic acid)お よび高 KClの影響を検討した。 【結果・考察】昇圧条件下において、ACh および A23187 により惹起された血管弛緩反応は、L-NAME 処置により抑制されなかった。Indomethacin 処置では、A23187 誘発弛緩反応が抑制され、TEA および 18α-GA 処置では ACh 誘発弛緩反応がより強く抑制された。高 KCl処置下では、ACh 及び A23187 の 反応が抑制された。以上の結果から、マウス腸間膜動脈血管床では prostanoid や、endothelium-derived hyperpolarizing factor(EDHF)を介する NO 非依存性の内皮依存性弛緩機構が存在することが示唆され る。 Y-15 血管周囲神経間相互干渉における proton の神経間伝達物質としての役割 ○尾崎 周一郎1)、平井 和浩1)、高取 真吾 1)、北村 佳久2)、川﨑 博己1) 1) 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 臨床薬学、 2) 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 医薬管理学 【目的】我々は、ラット腸間膜動脈血管床において nicotine が交感神経から proton(H+)を遊離し、隣 接するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)含有神経を刺激し、血管弛緩反応を惹起することを 報告している。そこで今回は血管周囲神経-神経間伝達物質としての H+の役割をより詳細に検討した。 【方法】実験には、Wistar 系雄性ラットを用い、摘出腸間膜動脈血管床の内皮除去灌流標本を作製し、 Krebs 液にて一定流量で灌流し、灌流圧の変化を血管の緊張度変化として測定した。Methoxamine を含 む Krebs 液で灌流圧を上昇させた状態で、経壁電気刺激(PNS)、高用量 acetylcholine (ACh)、capsaicin および HCl 注入による灌流圧および流出灌流液 pH の各変化を測定した。また、腸間膜動脈の小動脈 分離標本を作製し、pH 感受性蛍光指示薬を用いて nicotine と上記薬物処置後の血管周囲における pH 変化も観察した。 【結果・考察】PNS、ACh および capsaicin 投与により、濃度依存的かつ持続的な血管弛緩反応と流出 灌流液の pH 低下が観察された。PNS による血管弛緩反応と pH 低下は、除神経と capsazepine によっ て有意に抑制され、ACh の反応は atropine および ruthenium red で抑制された。また、HCl 注入では持 続的な弛緩反応と一過性の pH 低下が認められ、除神経、capsaicin および ruthenium red 存在下によって 血管弛緩反応のみが著明に抑制された。一方、pH 感受性蛍光観察実験において、nicotine、ACh または capsaicin により、血管弛緩とともに血管周囲部分の pH 低下が観察された。 以上の結果から、H+は交 感神経のみならず CGRP 神経からも遊離され、神経間伝達物質として血管緊張度調節に関与している ことが示唆される。 Y-16 ハイコンテンツイメージャーによる血管新生阻害薬の探索と作用機構解析 ○張 孜 1)、西村有平 1,2,3,4)、黒柳淳哉 1)、島田康人 1,2,3,4)、梅本紀子 1)、田中利男 1,2,3,4) 1) 三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス、 2) 三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター、 3) 三重大学ベンチャービジネスラボラトリー メディカルケモゲノミクス、 4) 三重大学生命科学研究支援センター バイオインフォマティクス 37 血管新生は、既存の血管から新たな血管枝が分岐して血管網を構築する生理的現象だけでなく、創傷 治癒のほか、慢性炎症や悪性腫瘍の病態においても重要な役割を果している。近年、癌の増殖が血管 新生に依存しているというメカニズムが解明され、血管新生を標的とした抗癌剤の開発が非常に盛ん になってきた。我々はゼブラフィッシュを用いた血管新生阻害薬のスクリーニング系の構築を試みた。 ゼブラフィッシュは一ペアの交配で約二百個の受精卵を得ることができる。受精後 12 時間から血管の 分化が開始し、2 日目でほぼ全ての血管網が形成される。また、血管新生における分子機構は、ヒトと ゼブラフィッシュの間で高い類似性が認められる。さらに、我々は血管内皮の in vivo イメージング用 に独自の色素欠損血管内皮 GFP トランスジェニックゼブラフィシュ(MieKomachi002)を開発した。 そこで我々は、ハイコンテンツイメージャーを用いた、高速かつ定量的な血管新生阻害薬のスクリー ニング系を構築した。このスクリーニング系を用いて SU4312、SU5402、SU5416、flavopiridol、indirubin および indirubin-3-monooxime (IRO)の血管新生阻害作用を評価した。SU4312、SU5402、SU5416 は VEGF, PDGF, FGF 受容体を標的分子とする血管新生阻害薬であり、本スクリーニング系においても、 著明な血管新生阻害作用を確認することができた。Flavopiridol および IRO は CDK5、GSK3β を標的分 子とするが、本スクリーニング系では IRO の著明な血管新生阻害作用を確認した。そこで、DNA マイ クロアレイを用いて、IRO の血管新生阻害作用の分子機構を解析したので報告する。 Y-17 グレリン側脳室内投与が心臓迷走神経活動に及ぼす影響 ○清水秀二、秋山 剛、曽野部 崇、川田 徹、神谷厚範、宍戸稔聡、寒川賢治、白井幹康、 杉町 勝 国立循環器病研究センター研究所 【目的】グレリンの心臓保護作用機序に関して詳しくは知られていない。近年、迷走神経刺激により、 心不全の予後が改善することが報告されており、グレリンに心臓迷走神経活動亢進作用があれば、同 様の機序で心臓保護作用を発揮すると考えられる。そこで、麻酔下ウサギにおいて、側脳室内投与し たグレリンが、血行動態・心臓自律神経活動にどのような影響を与えるかを、心臓マイクロダイアリ シス法を用いて検証した。 【方法】洞房結節周囲の右心房にマイクロダイアリシス・プローベを植込み、リンゲル液にて灌流し、 透析液中のノルエピネフリン・アセチルコリン濃度を高速液体クロマトグラフィで計測することによ り、心臓自律神経活動の指標とした。 【結果】グレリン投与前には 270 ± 4 bpm であった心拍数は、グレリン投与後 40 分から徐々に低下し、 60~80 分後に 234 ± 9 bpm(P < 0.01)に達し、120 分後まで低下が維持された。120 分後から徐々に心 拍数は上昇し、180 分後には、投与前のレベルまで回復した。グレリン投与前には 5.5 ± 0.8 nM であっ たアセチルコリン濃度は、心拍数低下に合わせて、40 分後から有意に上昇し、60~80 分でピークに達 し(8.8 ± 1.2 nM, P < 0.01)、120 分後まで上昇が維持された。アセチルコリン濃度は、120 分後から徐々 に低下し、180 分後には投与前のレベルに回復した。平均血圧とノルエピネフリン濃度には変化はなか った。また、心拍数が最も低下した時点で、頸部にて両側迷走神経を切断することにより、心拍数は 速やかに上昇し、アセチルコリン濃度も速やか投与前のレベルに回復した。 【結論】側脳室内投与したグレリンは、心臓迷走神経活動を亢進させることが示唆された。したがっ て、グレリンには、迷走神経刺激と同様の心臓保護作用を発揮できる可能性がある。 Y-18 妊娠・授乳期間における内因性 ANP・BNP の心保護作用 ○大谷健太郎 1)、徳留 健 2)、岸本一郎 2)、寒川賢治 2)、池田智明 1,3) 1) 国立循環器病研究センター研究所 再生医療部、 2) 国立循環器病研究センター研究所 生化学部、3)国立循環器病研究センター病院 周産期科 【背景】ANP・BNP の共通受容体である Guanylyl Cyclase-A の遺伝子欠損マウス(GC-A-KO)は、軽 度の食塩非感受性高血圧および心肥大を呈する(Nature 1995)。我々は内因性 ANP・BNP が、血圧非 依存性の心肥大・心線維化抑制作用を有することを報告してきた。一方で近年、ANP のプロセシング 酵素である Corin の遺伝子欠損マウス(Corin-KO)が妊娠中に顕著な血圧上昇を呈することが報告され た(PNAS 2005)。しかし、GC-A-KO が妊娠・授乳によってどのような表現形の変化を呈するかは不明 である。 【目的】妊娠・授乳による GC-A-KO の心血管系フェノタイプ変化を調べ、内因性 ANP・BNP の妊娠・ 授乳期間における生理的意義を検討すること。 【方法】10 週齢 GC-A-KO 及び野生型マウス(WT)において、妊娠期間中の血圧経時的変化、未妊娠 時・妊娠後期(E18.5)・出産直後・離乳直後における心重量・心線維化を定量評価した。 【結果】両群とも、観察全期間を通じて血圧に有意な変化を認めなかった。WT では、妊娠・授乳期間 中に、線維化を伴わない軽微な心重量増加を認めたが、授乳終了 8 週後の観察では、未妊娠時とほぼ 同程度にまで退縮していた。一方、GC-A-KO では、とくに出産後から授乳期間後にかけて、顕著な心 肥大・心線維化の進行を認めた。 【結語】Corin-KO と異なり、GC-A-KO では妊娠に伴う血圧上昇を認めなかったが、出産後から授乳終 了後にかけて顕著な心臓リモデリングの進行を認めた。本研究により、内因性 ANP・BNP の妊娠・授 乳期間における心保護作用が明らかとなった。産褥心筋症の原因として、授乳期間中に産生される異 型プロラクチンの関与が最近明らかとなったが(Cell 2007)、内因性 ANP・BNP と異型プロラクチン の相互関連について、現在検討中である。 38 一般演題(ポスター発表) K-1 The role of renal sympathetic nerve in reno-protective effects of cilnidipine in spontaneously hypertensive rat ○Bai Lei、中野大介、人見浩史、Liu Ya、西山 成 香川大学医学部薬理学 Cilnidipine, an L/ N-type dual calcium channel blocker, is believed to induce its reno-protective effect partially via suppressing the sympathetic hyperactivity through the blocking action of N-type calcium channels. We previously demonstrated that cilnidipine elicited reno-protective effects partially through the inhibition of N-type calcium channel in podocyte (Fan, et al, 2010). However, the contribution of N-type calcium channel inhibition in nerve has not been determined yet. Therefore, we hypothesized that cilnidipine showed its reno-protective effects even in the rats received renal denervation. Male spontaneously hypertensive rats (SHR) were divided into groups as follows at 9 weeks of age: (1) vehicle; (2) vehicle + renal-denervation; (3) cilnidipine (50 mg/kg/day, po); (4) renal-denervation + cilnidipine for 18 weeks. Renal norepinephrine level was undetectable in denervated groups. Cilnidipine, either denervated or non-denervated condition exhibited significant antihypertensive effects and suppression of urinary protein excretion compared to vehicle (vehicle: 147.5±32.3 mg/day, cilnidipine: 64.7 ±8.5 mg/day, renal-denervation + cilnidipine: 69.0±13.5 mg/day, p<0.05) to the level. On the other hand, denervation alone tended to, but not statistically significantly, induce the hypotensive or anti-proteinuric effect (106.2±8.6 mg/day). These results suggest that cilnidipine provides reno-protective effects not only through N-type calcium channel inhibition on nerve. K-2 Aliskiren suppressed the development of renal injury in valsartan-treated KKAy mice ○Bai Lei、Fan Yu-Yan、中野大介、人見浩史、河野雅和、西山 成 香川大学医学部薬理学 We hypothesized that aliskiren gave further benefit of renal protection in valsartan-treated KKAy mice. Male type 2 diabetic KKAy mice were treated with vehicle (as group C), valsartan (as group V, 15 mg/kg) or aliskiren (as group A, 25 mg/kg/day) from 12 to 16 weeks of age. Aliskiren exerted significant anti-proteinuria effect, whereas valsartan failed to ameliorate proteinuria (urine protein/creatinine: vehicle; 15.0±2.4 mg/mg, aliskiren; 8.2±1.0 mg/mg, valsartan; 17.0±2.6 mg/mg, p<0.05). These mice were subsequently divided into 6 groups treated with the following combination drugs for another 6 weeks; 1: group C receiving vehicle (as group C-C), 2: group V receiving 15 mg/kg/day of valsartan (V-V15), 3: group V receiving 50 mg/kg/day of varsartan (V-V50), 4: group V receiving 15 mg/kg/day of valsartan with 25 mg/kg/day of aliskiren added (V-V+A), 5: group A receiving 25 mg/kg of aliskiren (A-A), 6: group A receiving 25 mg/kg/day of aliskiren with 15 mg/kg/day of valsartan added (A-A+V). Additional treatment with valsartan tended to but not significantly attenuate the proteinuria compared to vehicle infusion (C: 27.4±3.7 mg/day, V-V15: 23.2±4.7 mg/day, V-V50: 19.0±2.7 mg/day). Adding aliskiren to valsartan significantly suppressed the development of proteinuria (12.2±2.3 mg/kg, p<0.01). On the other hand, both A-A and A-A+V groups showed further attenuation of proteinuria (A-A: 4.1±1.4 mg/day, A-A+V: 2.9±0.8 mg/day, p<0.01), and there was no difference in proteinuria between the groups, suggesting that aliskiren alone maximally suppressed proteinuria. In conclusion, the renin inhibition by aliskiren provided remarkable renoprotection in type 2 diabetic animals even if AT1 receptor had been blocked. K-3 Effects of efonidipine on TGF-β1- and Smad2-dependent protein synthesis in rat cardiac fibroblasts ○Bai Lei、森 龍彦、人見浩史、中野大介、西山 成 香川大学医学部薬理学、大阪医科大学第 3 内科学 Intracellular Ca2+ signaling is an important factor that mediates the transforming growth factor-β1 (TGF-β1)-dependent signal transduction. We examined the effects of efonidipine, a dual blocker for T- and L-type calcium channel, TGF-β1 induced Smad2 activation and protein synthesis in neonatal rat cardiac fibroblasts (NRCF). NRCF were isolated from neonatal rat ventricle and were exposed to TGF-β1 (5 ng/mL). TGF-β1 significantly increased Smad2 phosphorylation and [3H]-leucine incorporation, which were attenuated by pretreated with efonidipine. Neither of R(-) efonidipine (selective T-type calcium channel blocker) nor nifedipine (selective L-type calcium channel blocker) inhibited TGF-β1-induced Smad2 phosphorylation and [3H]-leucine incorporation. However, a markedly inhibitory effects were observed by combination treatment of R(-) efonidipine plus nifedipine. In addition, pretreatment with Smad2 siRNA attenuated [3H]-leucine incorporation induced by TGF-β1. Furthermore, Y-27632 (Rho-kinase inhibitor) and Wortmannin (phosphatidylinositol 3-kinase inhibitor) also showed the inhibitory effects on activation of Smad2. These findings suggest that efonidipine blocks Smad2/TGF-β1-mediated protein synthesis through its inhibitory effects on both of T-type and L-type calcium channels in NRCF. 39 K-4 血中アンジオテンシノージェンの尿中への漏出は腎糸球体ろ過障壁および尿細管再吸収に より厳密に制限されている ○中野大介、Peti-Peterdi Janos、小堀浩幸、人見浩史、西山 成 香川大学医学部薬理学 腎障害の診断において、尿中アルブミン排泄の測定はもはや必須項目となっている。一方、我々は尿 中アンジオテンシノージェン(AGT)の増加が尿中アルブミンの増加よりも早期の腎障害指標となる 可能性を提唱している。しかしながら、アルブミン同様、尿中排泄増加のメカニズムについては議論 が続けられている。本研究は、血中に大量に存在するタンパク質である AGT の腎における糸級体ろ過 および尿細管再吸収を観察し、その挙動の腎障害に伴う変化を明らかにするために行われた。レニン による AGT 分解の影響を除くため、本実験ではマウスレニンによって分解されることのないヒト AGT を外因的に投与した。麻酔下のマウス腎臓を 2 光子レーザー顕微鏡により可視化したところ、Atto565 によりラベル化したアルブミンおよび AGT の糸球体タンパクろ過率(Bowman 氏腔濃度/血中濃度) はそれぞれ 0.199±0.020%および 0.068±0.010%であり、 AGT の糸球体ろ過率はアルブミンのそれと比べ、 約 1/3 であることがわかった。正常マウスの近位尿細管における AGT の再吸収はほとんど観察されな かったが、糖尿病マウスの近位尿細管においては顕著な再吸収が認められた。これは尿中内因性 AGT の明らかな増加が確認できる高齢糖尿病マウスにおいても同様であった。さらに、これらのマウスに おける尿中ヒト AGT は検出限界以下であった。なお、ヒト AGT 投与はマウスの血圧に影響を与えな かった。これらの結果より、血中 AGT の尿中排泄は、正常腎においては糸級体ろ過障壁によって、糖 尿病腎においては近位尿細管再吸収によって、それぞれ厳密に制限されており、腎障害により増加す る尿中 AGT は血中由来ではないことが示唆された。 K-5 しない テモカプリルはアンジオテンシン I 投与ラットにおける腎アンジオテンシン II の蓄積を阻害 ○大西啓右、村瀬美樹、中野大介、Nicolas Pelisch、人見浩史、西山 香川大学医学部薬理学 成 アンジオテンシン II は腎臓において、AT1 受容体を介して、更なる腎アンジオテンシン II の蓄積を促 す。そこで、本研究では、アンジオテンシン I 投与(100 ng/min、4 週間)による腎アンジオテンシン II 蓄積に対するアンジオテンシン変換酵素活性(ACE)阻害薬テモカプリル(10 or 30 mg/kg/day、n=10) および AT1 受容体拮抗薬オルメサルタン(10 mg/kg/day、n=9)の影響を検討した。アンジオテンシン I による高血圧はテモカプリルおよびオルメサルタンにより正常化した。テモカプリルは血漿および腎 臓内 ACE を有意に抑制した。腎アンジオテンシン II はアンジオテンシン I の投与により顕著に増加し た(2 週目:2.54+0.46 倍、4 週目:1.96+0.02 倍)。興味深いことに、テモカプリルはこの腎アンジオテ ンシン II の増大を投与 2 週目にて顕著に抑制していたが(高用量:0.61+0.16 倍)、投与 4 週目におい ては、その効果は消失していた(低用量 2.00+0.65 倍、高用量:1.86+0.41 倍) 。オルメサルタンはアン ジオテンシン I 投与に伴う腎臓におけるアンジオテンシン II 増大を完全に抑制した(0.53+0.11 倍) 。こ れらの結果は、腎臓におけるアンジオテンシン II 蓄積に対して、ACE 阻害薬が無効であることを示唆 するものである。 K-6 鉄除去は脂肪肥大を抑制して糖尿病を改善する ○田島壮一郎 1,2)、池田康将 2)、土屋浩一郎 3)、山野範子 2)、堀ノ内裕也 1,2)、木平孝高 2)、 石澤啓介 3)、川添和義 1)、冨田修平 2)、水口和生 1)、玉置俊晃 2) 1) 徳島大学病院薬剤部、2)徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部薬理学、 3) 徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部医薬品機能生化学 【目的】血清フェリチン高値は糖尿病発症のリスク因子であり、また血清フェリチン値と内蔵脂肪蓄 積が相関するなど、鉄と糖尿病との関連性が示唆されている。鉄はフェントン反応によって酸化スト レスの基質となることから、鉄除去による酸化ストレス制御は脂肪細胞肥大を抑制して糖尿病の治療 につながると考えられる。本研究では 2 型糖尿病モデルマウスを用いて鉄除去による糖尿病改善効果 について検討した。 【方法】8週齢の2型糖尿病モデルマウス(KKAy マウス)を用いて鉄キレート剤 deferoxamine 投与群 (DFO 群:100mg/kg/day) と Vehicle 投与群の2群にて比較検討した。投与2週間後に糖負荷試験(GTT) およびインスリン負荷試験(ITT)を行った。脂肪組織中の鉄量は原子吸光分析法により定量を行った。 血清フェリチンならびに尿中 8-OHdG は ELISA 法により測定した。各種遺伝子発現および蛋白質リン 酸化は、それぞれ定量的 RT-PCR、Western blot 法にて検討した。 【結果】DFO 投与群の血清フェリチン値は有意な低下を認めた(KKAy 群:164.3±19 ng/ml, DFO 群: 125.6±21 ng/ml)。同様に脂肪組織の鉄量も低下した(KKAy 群:4.9±0.6 μg/g weight, DFO 群:3.2± 0.7 μg/g weight)。GTT、ITT による耐糖能ならびにインスリン抵抗性の評価では DFO 投与群は有意に 改善した。精巣上体脂肪の肥大は vehicle 群と比較して DFO 投与群において縮小を認めた。 酸化スト レスマーカーである尿中 8-OHdG と脂肪組織の NADPH oxidase の mRNA 発現は DFO により有意に低 下し、炎症性サイトカインの mRNA 発現も同様に DFO 群において低下を認めた。加えて DFO により 脂肪組織の Akt と AMPK のリン酸化は亢進し、GLUT4 の発現も増加した。 40 【結語】 糖尿病において鉄除去は酸化ストレスと炎症を抑制して、脂肪細胞肥大を改善させることに より糖尿病の病態を改善することが示唆された。 K-7 ヒト内胸動脈および大伏在状静脈における 5-HT2A 受容体および 5-HT1B 受容体を介したセロ トニン誘発性血管収縮作用について ○山本隆一 1)、 田中直子 1)、桑原正知 2)、中村栄作 3)、松尾徳子 1)、金井 祐 1)、 浅田祐士郎 4)、山下篤 4)、比佐博彰 5) 1) 九州保健福祉大学薬学部薬理学第一、2) くわばら医院、3) 宮崎県立延岡病院心臓血管外科、 4) 宮崎大学医学部 病理学第一、5) 九州保健福祉大学薬学部 薬理学第二 冠動脈バイパス手術に使用されるグラフト血管として、内胸動脈 (ITA) および大伏在静脈 (SVG) が 多く用いられ、術中および術後の血管れん縮防止が、グラフト血管の長期開存に良好な結果をもたら すとされている。今回の研究では、手術で使用しなかった部分の両グラフト血管を用いて、セロトニ ン(5-HT)受容体サブタイプの反応性について検討した。ITA および SVG の内皮除去リング状標本を Krebs-Henseleit 液を満たしたマグヌス管内に懸垂し、張力変化を等尺性に記録した。収縮反応は 60 mM KCl による収縮を 100% として評価した。さらに、両グラフト血管における 5-HT2A および 5-HT1B 受容体の局在を、免疫組織学的に検討した。ITA および SVG において、5-HT は濃度依存的 (1 nM – 10 M) に収縮反応を引き起こした。5-HT2A 受容体拮抗薬であるサルポグレラート (SAR) およ び 5-HT1B 受容体拮抗薬である SB224289 の supramaximum concentration (各 1.0 M) は、いずれも 5-HT による収縮反応を有意に抑制した。さらに、SAR および SB224289 の同時投与は、5-HT による血管 収縮反応をほぼ遮断した。また、ITA および SVG の平滑筋細胞において、5-HT2A および 5-HT1B 両 受容体の存在が免疫組織学的に確認された。以上の結果から、ITA および SVG において、5-HT2A お よび 5-HT1B 両受容体が 5-HT による血管平滑筋収縮作用に関与していることが明らかとなり、これ らの血管 を使用する冠動脈バイパス手術の術後血管れん縮予防には、5-HT2A 受容体拮抗薬に加えて 5-HT1B 受容体拮抗薬併用が有用となる可能性が示唆された。 K-8 ステロイドは腎メサンギウム細胞の線維化関連蛋白を誘導する ○川田典孝、守山敏樹、北村温美、小尾佳嗣、貝森淳哉、高畠義嗣、堀尾勝、楽木宏実、 猪阪善隆 大阪大学医学部 老年腎臓内科学 【背景と目的】SLE・IgA 腎症へのステロイド治療は、他の免疫抑制療法に比して腎線維化病変を進展 する。本研究では、ステロイドの線維化進展機序を、線維化関連分泌型蛋白質である Lysyl-oxygenase (LOX)および Plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1)発現から検討する。 【方法】ラット培養メサンギウム細胞への①デキサメサゾン(Dex)単独、②TGFβ単独、③Dex と TGF β同時刺激が mRNA 発現と培養液への蛋白分泌におよぼす影響を RT-PCR 法と Western blotting 法で検 討した。 【結果】培養メサンギウム細胞への Dex10-6M 単独 6 時間刺激は、線維化促進因子である PAI-1 と LOX mRNA 発現を増加した(PAI-1: +130%, p<0.01. LOX: +20%, p<0.05)。Dex10-6M 単独 16 時間刺激は培養液 中の PAI-1, LOX 蛋白濃度を増加した(PAI-1: +53%, p<0.01. LOX: +79%, p<0.01)。TGFβ(2ng/ml) 単独 6 時間刺激は、PAI-1 mRNA を増加したが(+190%, p<0.01)、LOX mRNA 発現には影響しなかった。TGF βと Dex の同時 6 時間刺激は、LOX と PAI-1 mRNA 発現を増加し(PAI-1: +640%, p<0.01. LOX: +60%, p<0.01)、16 時間刺激は LOX と PAI-1 蛋白分泌を増加した(PAI-1: +230%, p<0.01. LOX: +110%, p<0.01)。 TGFβと Dex 同時刺激による LOX 蛋白増加は、グルココルチコイド受容体拮抗薬(RU486: 10-6M)で抑 制された。 【結語】ステロイドによる線維化促進機構に LOX, PAI-1 発現誘導が関与する可能性が示された。 K-9 2 型糖尿病時における血管内皮機能障害には GRK2 増加が関与する ○田口久美子、小林恒雄、松本貴之、鎌田勝雄 星薬科大学・医薬品化学研究所・機能形態学研究室 糖尿病性血管障害の原因の1つとして血管内皮機能の低下、特に NO 産生系の障害により生じること が知られている。我々はα2 受容体刺激による NO 産生は、Akt/eNOS 経路を介していることを報告し、 2 型糖尿病マウス胸部大動脈においてこの経路の活性減弱による内皮機能の低下・弛緩機能の減弱を報 告した。最近、GRK2(G-protein coupled receptor kinase 2)が内皮細胞において NO 産生を抑制的に制御し ていると報告されたため、糖尿病時における Akt/eNOS 経路の活性減弱による血管内皮機能低下と GRK2 の関与について検討を行った。 その結果、糖尿病時には、1) clonidine(α2 agonist)刺激により血管弛緩反応の減弱・NO 産生の低下を示 した。GRK2-inhibitor 処置下では、clonidine 刺激によるこれら反応において改善が認められた。更に GRK2-inhibitor 処置濃度依存的に弛緩反応の改善・血圧の低下・血糖値の低下がみられた。2) clondine 刺激により Akt や eNOS のリン酸化は減少したが、GRK2-inhibitor 処置によりこれらリン酸化の回復が 示された。3) GRK2 発現(特に膜分画において)は増加していた。また、GRK2-inhibitor 処置により GRK2 活性の低下・膜分画における GRK2 発現量の減少を認めた。 41 以上のことから、糖尿病時には、内皮細胞膜上への GRK2 移行がさかんに起こり、増加した GRK2 が Akt/eNOS 経路を抑制的に制御したことにより NO 産生低下・弛緩反応の減弱・血圧の上昇がみられた ことが示唆された。この結果は、糖尿病時におけるα2 受容体刺激による Akt/eNOS 経路の減弱の分子 機構を明らかにした初めての例であり、血管内皮細胞の GRK2 活性抑制が高血圧を伴った糖尿病性血 管障害治療薬の新たな標的となることを突き止めた。 K-10 ついて 虚血性急性腎障害における17β‐エストラジオールの腎交感神経系を介した保護効果に ○田中亮輔 1)、筒居秀伸 2)、杉浦孝宏 1)、小渕修平 3)、山形雅代 4)、大喜多守 1)、 高岡昌徳 1)、雪村時人 4)、松村靖夫 1) 1) 大阪薬科大学 病態分子薬理学研究室、2)大阪大谷大学 薬学部 臨床薬理学講座、 3) 兵庫医療大学 薬学部 医療薬学、4)大阪大谷大学 薬学部 臨床薬理学講座 これまでに我々は、虚血性急性腎障害の病態発症に腎交感神経系の亢進が関与していることを報告し ている。また当研究室では、雄性ラットにおける虚血性急性腎障害に対して、17β-estradiol(E2-β)が 顕著な保護効果を示すことや、本病態モデルにおける腎障害の程度が雌では雄に比べて極めて軽度で あることを明らかにした。そこで、本研究では虚血性急性腎障害に対する外因性及び内因性 E2-β の効 果に交感神経系が関与しているか検討を行なった。 実験動物として 8 週齢の雄性及び雌性 SD 系ラットを用いた。右腎摘除 2 週間後、左腎動静脈を虚血、 45 分後に再灌流を行うことで虚血性急性腎障害モデルを作製した。また一部の実験では虚血 1 週間前 の雌ラットに卵巣摘出(OVX)処置を施した。 虚血再灌流処置を施すことにより雄雌ともに腎障害がみられたが、その腎障害の程度は雌ラットに比 べ、雄ラットにおいてより顕著であった。また雄ラットにおいて虚血再灌流後、腎静脈血漿中ノルア ドレナリン(NA)濃度の有意な上昇がみられたが、雌ラットでは変化がみられなかった。一方、OVX 処置を施した雌ラットでは、雄ラットと同程度の腎障害及び腎静脈血漿中 NA 濃度の上昇がみられた。 本病態における性差発現に E2-β が関与していると考えられため、雄ラットを用いて、外因的に E2-β(100 μg/kg)処置を行ったところ、虚血再灌流処置による腎障害及び、再灌流後の腎静脈血漿中 NA 濃度の 上昇が抑制された。この外因性 E2-β による効果はエストロゲン受容体拮抗薬 tamoxifen(5 mg/kg)の 前処置によって消失した。 以上の結果より、虚血性急性腎障害に対する E2-β の腎保護効果には、エストロゲン受容体を介した腎 交感神経系の抑制作用が関与すると考えられる。 K-11 ステロイド受容体アゴニストは caveolin-1(cav-1)発現を増加させることで血管内皮の VEGF 反応を抑制する ○五十嵐淳介 1)、小路和代 2)、橋本 剛 1)、米田耕造 2)、森上徹也 2)、塚本郁子 3)、 窪田泰夫 2)、小坂博昭 1) 1) 香川大学医学部自律機能生理学、2)香川大学医学部皮膚科学、3)香川大学医学部薬物生体 情報学 ステロイド受容体アゴニストは種々のストレス反応を伝達するため重要な役割を果たしている。これ らの物質は血管機能にも多様な影響を与えるが、その分子機作には不明な点が多い。我々は糖質ステ ロイド受容体(GR)アゴニストであるデキサメサゾン(DEX)がウシ大動脈由来及びヒト臍帯静脈由 来の培養血管内皮細胞並びに、正常ラット(オス、8週齢)由来大動脈及び肺小動脈において内皮特 異的に cav-1 の発現をタンパク質・遺伝子レベルで著明に増加させることを見いだした(ウエスタンブ ロット法、RT-PCR 法、免役染色法)。Cav-1 は内皮細胞のカベオラミクロドメインにおいて種々の受容 体シグナルを調節している。そこで、DEX 前投与(1μM、48 時間)により cav-1 の発現が増加した細 胞において VEGF に対する反応がどのように修飾されるか検討した。DEX 前投与群においては非前投 与群と比して、VEGF によりもたらされる代表的な内皮反応である1)タンパク質リン酸化(VEGFR-2、 Akt、ERK1/2、eNOS:ホスホウエスタン法) 、2)一酸化窒素産生(高感度亜硝酸イオン濃度測定法)、 3)Rac1 小 G タンパク質活性化(GST pull-down 法) 、4)細胞遊走能(Boyden Chamber 法)のいずれ もが低下していた。DEX による cav-1 誘導及び VEGF 反応の減弱は GR アンタゴニストである RU-486 により拮抗された。鉱質ステロイド受容体アゴニストであるアルドステロンはスピロノラクトン感受 性を以て cav-1 を誘導したが、性ステロイド受容体アゴニストである 17-β エストラジオール、テスト ステロン、プロジェステロンにはかかる効果は認めなかった。以上より核内の糖質及び鉱質ステロイ ド受容体アゴニストは細胞膜表面での cav-1 誘導を介して血管内皮細胞の VEGF 反応を減弱させる可能 性が示唆された。 K-12 虚血下肢モデルにおける pitavastatin による血管新生作用の機序的検討 ○武島 宏、小林直彦、小口 渉、石川まゆ子、杉山史弘、石光俊彦 獨協医科大学 循環器内科 【目的】虚血下肢ラットモデルに pitavastatin を投与し、eNOS, Rho-kinase および PI3kinase の各種阻害 薬を投与して、血管新生作用の機序的検討を施行した。 42 【方法】Wistar ラットの左鼠径部から外腸骨動脈を根部で結紮切離し下肢虚血モデルを作成した。ま た治療群は pitavastatin (P: 1mg/kg/day), P+eNOS 阻害薬 L-NAME (PL: 100mg/L), P+Rho-kinase 阻害薬 fasudil (PF: 100mg/kg/day), P+PI3K 阻害薬 wortmannin (PW: 1mg/kg/day)の 4 群について 3 週間投与した。 下肢動脈血流量は laser Doppler 法を用いて毎週測定した。血中の EPC assay の評価と CD34 positive cell を FACS 解析した。病理組織学的評価として Isolectin B4, von Willebrand Factor (vWF)による免疫染色に より血管新生を評価し、さらに Western blot による VEGF, Angiopoietin (Ang)-1, Ang-2, eNOS 発現を評価 した。 【成績】3 週間後の laser Doppler 法による下肢血流量および capillary density は未治療群に比べ P 群/PF 群で有意に増加し、PL 群/PW 群で悪化した。EPC colony formation および CD34 positive cell は未治療群 に比べ P 群/PF 群で有意に増加し、PL 群/PW 群で減少した。 Western blot による VEGF, Ang-1, Ang-2, eNOS 発現は未治療群に比べ P 群/PF 群で発現の増加が認められ、PL 群/PW 群で発現は低下した。 【結論】Pitavastatin には EPC の増加作用および機能活性作用が認められ、その機序として Rho-kinase, eNOS, PI3kinase/Akt 経路などのメカニズムが関与している可能性が示唆された。 K-13 血管リモデリングにおける HMGB1 の果たす役割 ○東田真由子 1、西雄千佳 1、松岡祐貴 2、平田陽一郎 3、黒部裕嗣 4、中屋豊 1、北川哲也 4、 佐田政隆 3 1) 徳島大学医学部 栄養学科、2)徳島大学医学部 医学科、 3) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学分野、 4) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 心臓血管外科学分野 【背景】High mobility group box-1(HMGB1)は核内非ヒストン蛋白として当初同定されたが、近年、炎 症性サイトカインの発現に寄与することが報告されている。我々は血管リモデリングの過程で HMGB1 の果たす役割を明らかにする為に以下の研究を行った。 【方法】野生型マウスの大腿動脈に Wire Injury を行い、術後 2 時間から 2 週間までの各時間で血清 HMGB1 濃度を測定した。次に、Wire Injury を行った傷害血管周囲に、コラーゲンジェルを用いて PBS(PBS 群)、抗 HMGB1 中和抗体(局所抗体群)を持続投与した。また中和抗体を術直後に腹腔内に 投与した(全身投与群)。以上の 3 群(各群 n=5)で、4 週間後の血清 HMGB1 濃度と新生内膜増殖面 積を測定した。さらに、RAW264.7、HUVEC、SMC を LPS(100ng/ml)で刺激し、1 から 24 時間後の 培養上清の HMGB1 濃度を測定した。 【結果】Wire Injury 後の血清 HMGB1 濃度は傷害直後には上昇せず、4 日目に高値となりその後徐々に 低下した。傷害後 4 週間での新生内膜/中膜比は、局所投与群において有意に抑制された(p<0.05)が、 全身投与群は PBS 群と差がなかった。血清 HMGB1 濃度も同様に、PBS 群と腹腔内投与群には差がな く局所抗体群で有意に低下した(p<0.05)。RAW では刺激 6 時間後をピークに HMGB1 濃度が上昇した が、内皮細胞や平滑筋細胞では上昇しなかった。 【結論】中和抗体を局所投与することで新生内膜増殖が抑制されたことから、傷害後の血管リモデリ ングに HMGB1 が関与することが示唆された。また in vitro の結果から傷害細胞から放出される HMGB1 だけでなく、マクロファージなどの免疫細胞から 2 次的に分泌される HMGB1 によって、炎症が増幅 される負の連鎖が起きていることが示唆された。 K-14 慢性心不全モデルラットにおける心・腎 nitric oxide 合成酵素に対する長期的運動の影響 ○伊藤大亮 1)、伊藤 修 1)、森 信芳 1)、須田千尋 1)、羽尾清貴 2)、曹 鵬宇 1)、戎 栄 1)、 下川宏明 2)、上月正博 1) 1) 東北大学大学院 医学系研究科 内部障害学分野、 2) 東北大学大学院 医学系研究科 循環器病態学分野 【目的】慢性心不全(CHF)では、循環機能保持のために心・血管系とともに腎臓も重要な役割を担 う。運動療法は降圧や心・腎保護効果を有し、運動によって心・血管系の NO 合成酵素(NOS)が増 強することが報告されているが、CHF での運動による心・血管系および腎 NOS 発現への影響について は十分に明らかではない。そこで、運動による心・腎保護効果の機序を明らかにするため、CHF ラッ トの心・血管系および腎 NOS 発現に対する長期的運動の影響について検討した。 【方法】8 週齢の雄 SD ラットを用いて、冠動脈結紮による CHF モデルを作製した。4 週間後、偽手術 (Sham)ラットと CHF ラットをそれぞれ非運動群と運動群に分け、トレッドミル運動(速度 25 m/分、 60 分間/日、週 5 日)を 4 週間行った(計 4 群:Sham 群、運動/Sham 群、CHF 群、運動/CHF 群) 。心 機能を心エコーで評価、各種血漿・尿パラメーターを測定し、胸部大動脈、左室、腎皮質、髄質外層、 髄質内層における内皮型と神経型 NOS(eNOS、nNOS)蛋白発現をウェスタンブロット法で検討した。 【結果】血漿 BNP 値は CHF 群で有意に増強し、運動/CHF 群で有意に減少した。心機能評価では、運 動/CHF 群で左室駆出率や左室内径短絡率の改善が認められた。また、腎機能の指標であるクレアチニ ンクリアランスも、 運動/CHF 群が CHF 群に比較して有意に高値であった。eNOS および nNOS 蛋白は、 大動脈、左室、腎のほぼ全組織において Sham 群に比べ CHF 群で有意に低い発現、CHF 群に比べ運動 /CHF 群で有意に高い発現を示した。 【結論】長期的運動は CHF モデルラットにおいて、心機能、腎機能改善に有効であり、その機序の一 つとして、心・血管系および腎の eNOS と nNOS 蛋白発現増強の関与が示唆される。 43 K-15 糖尿病腎の早期からみられる腎細胞の老化はインスリン治療によって改善する ○北田 研人、中野 大介、人見 浩史、西山 成 香川大学医学部薬理学講座 【目的】近年、加齢や酸化ストレスなどを介して引き起こされる細胞レベルでの老化(有糸分裂の停 止)と病態の関連性が注目されている。我々は最近、アルドステロンが腎細胞の老化を惹起し、腎障 害の進展に関与することを報告した。また、糖尿病患者において、糖尿病性腎症の早期から腎細胞の 老化が認められることが報告されているが、糖尿病腎における細胞老化のメカニズムは不明である。 本研究では、糖尿病マウスにおける腎細胞老化メカニズムの解明を目的として、高血糖およびインス リンに着目して検討を行った。 【方法】C57/BL6J マウスに対して、vehicle あるいはストレプトゾトシン(STZ)投与(10 mg/kg/day, 7 日間連続腹腔内投与)により糖尿病マウスを作製し、インスリン存在下(0.1 U/day あるいは 0.3 U/day、 皮下投与)および非存在下における経時的な腎細胞老化の評価を検討した。 【結果】STZ 投与マウスにおいて、明らかな腎障害や腎機能低下が認められない早期から、p21、p16 などの老化関連因子発現の顕著な増大(3.67±0.59 and 3.73±0.12 fold at week 4, respectively, p<0.01)お よび SIRT1 発現の減少(0.45±0.15 fold, p<0.05)が観られた。また、これらの因子の変化に伴って、細 胞老化の指標である老化関連 β-ガラクトシダーゼ活性の増加が認められた。STZ 投与マウスに認めら れる腎細胞の老化は、インスリンの投与によって用量依存的に抑制された。一方、正常マウスに対す るインスリンの投与は、腎細胞の老化に影響を与えなかった。 【結論】糖尿病マウスの腎臓において、高血糖が細胞老化の進展に密接に関与している可能性が考え られた。また、糖尿病下における腎細胞の老化は、インスリン治療によって改善されることが示唆さ れた。 K-16 自己再生細胞を活性化する抗老化食生活習慣の検討 ○片川まゆみ 1)、福田 昇 2,3)、常見明子 3)、上野高浩 3)、森 真理 4)、家森幸男 4)、 松本太郎 1)、相馬正義 3) 1) 日本大学医学部先端医学系細胞再生・移植医学分野、 2) 日本大学大学院総合科学研究科生命科学、 3) 日本大学医学部内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野、 4) 武庫川女子大学国際健康開発研究所 【目的】血管内皮前駆細胞(Endotherial progenitor cell:EPC)は骨髄から産生され末梢血中に 0.01%存在 し、臓器障害に応じて活性化され、自己修復細胞として血管内皮の修復や血管新生に関与しているこ とがわかってきた。また EPC の寿命は酸化ストレスで短くなる事が知られているので、今回、抗酸化 食品や食生活習慣が EPC 機能に及ぼす影響を評価し、抗老化としての食生活習慣を確立し啓蒙するこ とにより、抗老化再生医療として社会還元することを目的としている。 【対象ならびに方法】20 歳代の健康な成人を対象とし、2 週間のベースライン研究と 2 週間の栄養介 入研究の 2 段階臨床試験を行うため、計 4 週間魚介類の食事摂取制限期間を設けた。ベースライン研 究後、無作為に試験食群と対照群とに分け、試験食群は「タウリン」を、対照群は「乳糖」を二重盲 検で摂取した。タウリン介入は 3000mg/day とし、全員に介入前と後で EPC 機能測定、健診、24 時間 畜尿を行った。 【結果】被験者全員のベースラインの EPC 機能と、酸化ストレス度の指標である尿中 8OHdG、血中 TBARS との間にそれぞれ負の相関傾向が認められた。介入試験においては、タウリン群で EPC 機能が 有意に増加し、血中 TBARS は有意に低下した。また、尿中8OHdG、血中 d-ROMs(酸化ストレス度) は低下する傾向が見られ、BAP(抗酸化力)においては、高くなる傾向が認められた。HOMA-R、内 皮機能指数においては変化が認められなかった。 【結論】今回健常者において、酸化ストレスが EPC 機能を低下させることが示唆された。抗酸化食品 であるタウリンを摂取することにより EPC 機能を高めることができるため、食生活習慣を見直すこと により EPC 機能が増加し、血管内皮修復機能を高め、心血管イベントを抑制し、さらには抗老化に寄 与するものと考えられた。 K-17 高血圧性血管および腎リモデリングにおける補体 C3 の役割 ○池田和也 1)、福田 昇 1,2)、遠藤守人 3)、山元智衣 2)、上野高浩 1)、松本紘一 1)、 相馬正義 1) 1) 日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科、2)日本大学大学院総合科学研究科生命科学、 3) 八戸大学人間健康学部 【目的】我々は SHR 由来 VSMC は補体 C3 が転写因子 KLF-5 を介して合成型形質に変換し Ang II を産 生し、過剰増殖を示している事を認めた。今回、高血圧性血管および腎リモデリングにおける補体 C3 の役割を検討した。 【方法】In vitro で4週齢 WKY 及び SHR、SHR-SP 腎皮質由来 MC を単離し、継代培養した。内因性 C3 は C3a 受容体拮抗剤(SB290157)で抑制した。細胞増殖は 5%血清での細胞数の増加、DNA 生合成 は BrdU の取り込みで評価した。収縮型形質マーカーα-SM actin、合成型形質マーカーOsteopontin mRNA 44 発現を評価した。KLF-5 mRNA 発現を評価した。無血清培養 MC の上澄、細胞抽出物を Sep-Pack カラ ムで精製し、Ang II を RIA にて測定した。In vivo の実験として SHR-SP/Izm に ALZET 浸透圧ポンプを 用いて SB290157 (1mg/kg/day)を2週間投与。収縮血圧、体重、血清 BUN、尿蛋白を評価した。腎臓の PCNA 免疫染色を行い増殖の評価をした。 【成績】Pre-pro C3 に対するアンチセンス ODN は SHR・SHR-SP の MC の増殖を抑制した。SB290157 は SHR・SHR-SP 由来 MC の細胞増殖を抑制し、合成型形質マーカーOsteopontin 及び Matrix Gla mRNA 発現を抑制し、収縮形質マーカーα-SM actin mRNA 発現を増加した。SB290157 は SHR・SHR-SP 由来 MC で増加した KLF-5 mRNA 発現を抑制した。SB290157 は SHR・SHR-SP 由来 MC で増加した Ang II 産生を抑制した。In vivo で SHR-SP に SB290157 を全身投与すると、血圧には影響せず腎臓の増殖を抑 制した。 【結論】補体 C3 は高血圧症において一義的に VSMC や腎メサンジウム細胞など間葉系細胞を合成型 形質に維持することにより、高血圧に伴う血管および腎リモデリングに関与していると考えられた。 K-18 アンジオポエチンによる血管安定化機構 ○望月直樹、Zhang Jianghui、福原茂朋 国立循環器病研究センター研究所細胞生物学部 【背景】Angiopoietin-1(Ang1)/Tie2 受容体シグナルは、VEGF に拮抗することにより、血管内皮細胞の 安定化を司っている。われわれは、この Ang1/Tie2 の細胞内情報伝達系が細胞間接着の有無によって変 化することを明らかにしてきた。細胞間接着(+)では、細胞間接着(-)と比較して Akt の活性化がより増 強されていた。 【目的】Ang1/Tie2 による血管内皮細胞の安定化のメカニズムを明らかにする。 【方法・結果】細胞間接着(+)での遺伝子発現を microarray で検討した結果、血管安定化に深くかかわ る Kruppel-like factor2 (KLF2)と Delta-like 4 (Dll4)が Ang1 刺激依存性に誘導されることがわかった。 VEGF 刺激による VCAM-1 の発現、単核球の血管内皮細胞への接着が Ang1 によって抑制されるが、 KLF2 をノックダウンすることによって、この効果が阻害された。細胞間接着(+)に限って Dll4 の発現 が増強された。細胞間接着(+)では、Ang1 刺激前から発現していたが、細胞間接着(-)では発現を認めな かった。刺激前の Notch の切断阻害薬-secretase の投与により Dll4 の発現が抑制された。以上より、細 胞間接着(+)では Dll4/Notch シグナルが恒常的に機能していることが示唆された。さらに、Ang1 刺激に よって増加する Dll4 も Notch 依存性であり、この Notch 依存性 Dll4 転写の増加には、β-catenin が不可 欠であった。Ang1/Tie2 によって Akt が活性化され、これが GSK3b による β-catenin のリン酸化(分解) を抑制することで β-catenin を介した Dll4 の転写促進がおきていることを突き止めた。 【結論】Ang1/Tie2 による血管安定化には転写因子 KLF2 を介した系と Dll4/Notch シグナルを介した系 が重要である。 K-19 心肥大に対する抗線維化薬の効果 ○泉 康雄、山下直人、高橋克之、田中昌子、南野優子、文 沙倻、山口麻貴、塩田正之、 中尾隆文、岩尾 洋 大阪市立大学大学院医学研究科 分子病態薬理学 【目的】長期の高血圧状態は心臓肥大・線維化といった心臓リモデリングを引き起こすことが知られて いる。特発性肺線維症の治療薬の一つである抗線維化薬 ピルフェニドン(PFD)は、炎症性サイトカ インの抑制作用や線維化に関する種々の増殖因子の産生抑制作用により、肺や腎臓において抗線維化 作用を示す報告がある。本研究では、高血圧性心肥大に対する PFD の効果について検討した。 【方法】8 週齢の野生型マウス (BALB/c マウス) に対し、浸透圧ミニポンプを用いて、アンジオテン シン II (Ang II: 200 ng/kg/min) の持続注入を 2 週間行った。マウスを生食持続投与(コントロール)群、 Ang II 持続注入群、Ang II 持続注入+PFD 300 mg/kg/day 経口投与群に分けた。PFD の血圧及び心拍数、 心重量や心エコー図法による心機能への影響を検討した。さらに、冠動脈周囲の線維化や左室間質の 線維化に対する PFD の影響、心筋の遺伝子発現に対する PFD の影響を検討した。 【成績】Ang II 持続注入群ではコントロール群に比べて血圧は有意に上昇し、心重量も有意に増加し た。PFD 投与により、Ang II 持続注入による血圧上昇には影響を与えなかったが、心重量は有意に減 少した。また、Ang II の持続注入により増大した左室壁厚は、PFD により軽減した。Ang II により増 加した血管周囲の線維化や間質の線維化は PFD により抑制され、 Ang II 群で 「異常型(abnormal relaxation pattern)」を呈した左室流入波形は、PFD 群では「正常型(normal pattern)」に近づいた。心肥大および線 維化の関連遺伝子である ANP, BNP, MCP-1, TGF-β1 の発現は Ang II 持続注入で増加し、PFD 投与によ りこれらの発現増加は有意に抑制された。 【結論】PFD は血圧非依存的に心肥大・線維化の進展を抑制した。こうした抗線維化薬は心臓リモデ リングに対する新たな治療薬となるかもしれない。 45 K-20 腹部大動脈瘤の病態におけるアドレノメデュリン-RAMP2系の役割 ○沖村綾乃、桜井敬之、神吉昭子、新藤優佳、河手久香、荒居琢磨、家里康弘、小山晃英、 吉沢隆浩、楊 磊、植竹龍一、山内啓弘、田中 愛、新藤隆行 信州大学大学院医学系研究科 臓器発生制御医学講座発生再生医学分野 腹部大動脈瘤(AAA)は、動脈硬化病変を起因とし、血管壁が脆弱化して瘤状に拡大する疾患であり、 病態の進展には、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性化、炎症細胞浸潤、中膜断裂、血管壁 の栄養血管(vasa vasorum)の形成など、多くの因子が関与している。 アドレノメデュリン(AM)は、血管拡張作用をはじめとする多彩な生理活性を有するペプチドである。 これまで我々は、血管における AM のシグナルの中心が、RAMP2 によって担われていることを報告し てきた。また、AM はヒト AAA 病変での高発現も報告されており、AM の AAA への関与が示唆され ている。 本研究では、LDL 受容体欠損マウス(LDL-R-/-)と RAMP2 ヘテロノックアウトマウスの交配によるダブ ルノックアウトマウス(DKO 群)を樹立し、動脈硬化食とアンジオテンシン2投与による AAA モデ ルを作成し、LDL-R-/-(対照群)との比較から、AM-RAMP2 系の AAA の病態における意義を検討し た。 AAA の発生率は、対照群に比較して DKO 群で高く(38.2 vs 83.2 %)、血栓を有する偽腔の形成率も DKO 群で高値 (15.3 vs 26.7%) であり、AAA 発症に対する AM-RAMP2 系の抑制作用が示唆された。 一方で、AAA 径を比較したところ、DKO 群よりも対照群の方が大きかった。Real-time PCR による検 討では、AAA の進展に関与する MMP2、MMP9 や、MΦマーカーの発現は、両群に差がなかった。CD31 免疫染色による血管新生の検討では、DKO 群で外膜の血管新生が低下しており、DKO 群における AAA の進展の低下に、vasa vasorum 形成低下の関与が示唆された。 以上から、AM-RAMP2 系は、AAA の病態の発症および進展の双方に関与しており、AAA の進展には、 vasa vasorum の形成が重要であることが示唆された。 K-21 CKD におけるアドレノメデュリン-RAMP2 システムの病態生理学的意義 ○植竹龍一、桜井敬之、神吉昭子、新藤優佳、荒居琢磨、吉沢隆浩、小山晃英、家里康弘、 楊磊、山内啓弘、沖村綾乃、田中愛、河手久香、新藤隆行 信州大学大学院医学系研究科 臓器発生制御医学講座 アドレノメデュリン(AM)は、血管拡張作用をはじめ、様々な生理活性を有するペプチドである。一 方、AM 受容体である CLR には、これに重合する受容体補助タンパク、RAMP が存在する。我々は、 複数の RAMP サブアイソフォームの中でも、RAMP2 ノックアウトマウスのみが AM ノックアウトマ ウスの表現形を再現し、血管の異常により胎生致死となることから、RAMP2 が、血管における AM の 機能の規定因子であることを報告してきた。一方、腎臓においては、AM とその受容体システムは、 血管以外にも、糸球体上皮細胞、メサンギウム細胞、尿細管、集合管にも存在する。AM は、尿細管 での水、電解質の再吸収を抑制することによる利尿効果をもたらす一方、慢性腎不全では、重症度に 応じて血中 AM 濃度が上昇することや、血中 AM 濃度が慢性腎臓病(CKD)の予後予測因子となりうる ことなどが報告されている。 本研究では、RAMP2 のヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/-)を用いて、AM-RAMP2 システムの CKD における病態生理学的意義を検討した。 一側尿管結紮(UUO)モデルにおける腎臓では、急性期における炎症性サイトカイン、ケモカインの発現 亢進と、慢性期における間質の線維化と炎症細胞浸潤が主要な所見として観察された。これに対し、 反対側の腎臓においては、慢性期の糸球体肥大と酸化ストレスレベルの亢進が主要な所見として観察 された。RAMP2+/-では、結紮側、反対側共に、これらの所見が増悪していたことから、内因性の RAMP2 は、抗線維化作用や抗炎症作用により、腎臓において、臓器保護的に働いていると考えられた。 一方、ストレプトゾトシン(STZ)投与モデルにおいては、RAMP2+/-では、尿細管の顕著な空胞変性と 刷子縁の破綻が観察され、AM-RAMP2 システムは尿細管の保護にも関与している事が示唆された。 K-22 高脂肪食負荷肥満マウスにおける鉄吸収動態の検討 ○山野範子 1)、池田康将 1)、田島壮一郎 1)、木平孝高 1)、石澤啓介 2)、冨田修平 1)、 土屋浩一郎 2)、玉置俊晃 1) 1) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 薬理学分野、 2) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 医薬品機能生化学分野 【背景】鉄は生体に最も多く存在する金属元素であり、ヘモグロビン合成や各種細胞内の酸化還元反 応、細胞増殖・アポトーシスなどに関与する必須の元素である。その一方、鉄は酸化ストレスのソー スとなり、鉄が過剰に存在すると、細胞に有害な活性酸素を産生させる細胞毒として働く。近年、体 内貯蔵鉄量の指標となる血清フェリチン値の増加は、2 型糖尿病のリスクを増大させることが報告され ている。しかし、2 型糖尿病における鉄代謝には未だ不明な点が多い。 【方法と結果】高脂肪食負荷による肥満糖尿病マウスを作製し、鉄輸送体関連遺伝子の発現について 46 正常食マウスと比較検討した。高脂肪食負荷糖尿病マウスの十二指腸において、2 価鉄輸送体 divalent metal transporter 1 (DMT-1)および 鉄還元酵素 duodenal ferric reductase (Dcytb)mRNA の発現が有意に上 昇していた。また、十二指腸における Hypoxia-inducible factor (HIF)-2 mRNA の発現が高脂肪食負荷 糖尿病マウスにおいて増加を認めた。なお HIF-1 mRNA の発現に変化はなかった。高脂肪食を短期間 だけ負荷した非糖尿病マウスでは、DMT-1、 Dcytb mRNA の発現に変化はなかった。 【結論】高脂肪食負荷肥満糖尿病マウスにおいて、十二指腸における鉄吸収の亢進が示唆された。 K-23 トロンビン静脈内投与による血管内皮細胞機能不全と活性酸素種産生増加に対するスタチ ンの効果とそのメカニズム ○大河原浩 1)、石橋敏幸 2)、斎藤修一 1)、井上信孝 3)、杉本浩一 1)、上岡正志 1)、 金城貴士 1)、多久和陽 4)、竹石恭知 1) 1) 福島県立医科大学 循環器血液内科学講座、2)大原医療センター 循環器内科、 3) 神戸労災病院 循環器科、4)金沢大学大学院医学系研究科血管分子生理学 【背景】プラバスタチンを用いた日本発の大規模臨床試験 MEGA Study によって、スタチンが総コレ ステロール値の低下率 18%にも関わらず、冠動脈疾患の発症を 33%抑えることが示され、WOSCOPS および AFCAPS/TexCAPS とともにプラバスタチンの心血管イベントの一次予防効果が明らかとなった。 スタチンの冠動脈疾患予防効果にはコレステロール低下作用に加えて pleiotropic effects も寄与してい ることが示唆されている。 【目的】我々は正常および高血圧ラット大動脈を用いてプラバスタチン静脈内投与の迅速な血管内皮 保護作用および活性酸素種(ROS)産生抑制効果とそのメカニズムについて検討した。 【結果】トロンビン(50 U/kg)静脈内投与はラット摘出冠動脈中隔枝の ACh による内皮依存性血管弛緩 反応を障害したが、プラバスタチン(0.3 mg/kg)併用投与はトロンビン刺激による血管弛緩反応障害を1 時間以内に抑えた。その機序として、プラバスタチンが速やかに Akt/eNOS 経路を介した NO 産生を誘 導し、トロンビンによる血管弛緩反応障害を抑えることが明らかとなった。さらにトロンビン静脈内 投与はラット大動脈の低分子 G 蛋白 Rac1 のゲラニルゲラニル化を速やかに誘導し、ほぼ同時に Rac1 の GTP/GDP 交換と膜移行を誘導した。プラバスタチンは Rac1 のゲラニルゲラニル化を阻止すること によって一連の Rac1 の活性化反応を阻止し、トロンビンにより誘導される Rac1/NAD(P)H オキシダー ゼ活性上昇を介した ROS 産生増加を抑えた。 【結論】プラバスタチンが内皮機能不全および ROS 産生増加を短時間で抑えることが示され、冠動脈 疾患予防におけるスタチンの有用性と pleiotropic effect のメカニズムがさらに明らかにされた。 K-24 慢性腎虚血による ER stress は DDAH1 の発現を低下させ ADMA の蓄積に関与する ○甲斐田裕介、上田誠二、中山陽介、安藤亮太郎、岩谷龍治、深水 圭、奥田誠也 久留米大学 内科学講座 腎臓内科部門 【目的】近年内因性 NO 合成阻害物質である Asymmetric dimethylarginine (ADMA)の蓄積が慢性腎臓病 (CKD)の進展に関与することが明らかになってきている。CKD における ADMA の蓄積の機序に関して は 、 我 々 は 腎 不 全 モ デ ル ラ ッ ト を 用 い て 腎 臓 に お け る ADMA を 分 解 す る dimethylarginine dimethylaminohydralase(DDAH)発現の低下、産生に関与する protein methyltransferase(PRMT)発現の上昇 が ADMA の蓄積に関与する可能性を報告した。しかしながら DDAH や PRMT の発現異常を来す詳細 な機序は不明である。 近年、腎臓における慢性虚血が CKD の進展に重要であり、また虚血下で出現する Hypoxia inducible factor(HIF)や小胞体ストレス(ER stress)が腎障害に関与することが報告されている。更に培養肺胞上 皮細胞では虚血下で DDAH1の発現が低下することが報告されている。これらのことから我々は腎臓 での慢性腎虚血が ER stress もしくは HIF を介し DDAH の発現低下に関与し、CKD における ADMA の 蓄積を引き起こしているとの仮説を立て以下の検討を行った。 【方法】培養ヒト近位尿細管細胞を低酸素下(1%O2)で 24 時間培養し、PRMT-ADMA-DDAH 系への影 響を検討した。また低酸素下(1%O2)で HIF の阻害薬である 2Methoxyestradiol(2ME)を、正常酸素下で ER stress inducer で あ る tunicamycin を 投 与 し 培 養 ヒ ト 近 位 尿 細 管 細 胞 を 24 時 間 培 養 し PRMT-ADMA-DDAH 系への影響を検討した。 【結果】培養ヒト近位尿細管細胞では低酸素培養下で上清中の ADMA は有意に上昇した。また DDAH2 と PRMT1 は不変であったが、DDAH1 の発現は著明に低下することが観察された。これらの変化は HIF の阻害薬である 2ME では抑制されなかった。また低酸素培養下では ER stress マーカーである ORP150 が上昇していることを確認した。更に Tunicamycin 刺激では低酸素下と同様に DDAH1 の発現の低下と 上清中の ADMA の上昇を確認した。 【結論】慢性腎虚血は HIF を介する経路ではなく ER stress を介し DDAH1 の発現低下を惹起すること で ADMA を蓄積させ、腎障害の進展に関与している可能性が示唆された。 47 K-25 ES 細胞胚様体分化系を用いた肝類洞内皮細胞分化誘導と高次肝様構造構築 ○荒居琢磨 1,2)、桜井敬之 1)、神吉昭子 1)、新藤優佳 1)、小山晃英 1)、吉沢隆浩 1)、 植竹龍一 1)、家里康弘 1)、沖村綾乃 1)、山内啓弘 1)、楊磊 1)、田中 愛 1)、河手久香 1)、 小川真一郎 2)、宮川眞一 2)、新藤隆行 1) 1) 信州大学医学系研究科臓器発生制御医学講座、2)信州医学部付属病院消化器外科 【目的】アドレノメデュリン(AM)は発生において血管、リンパ管形成に必須であるとされる。他方、 TGFβシグナル抑制が胎生期類洞内皮の増殖、成熟化を促すとする報告がみられる。われわれは ES 細 胞由来胚様体系を用いて,AM および TGFβシグナルを介した類洞内皮細胞の分化誘導および肝細胞を 含む高次肝様構造構築を試みた。 【方法と結果】胚様体形成 4 日目に接着培養した後に、14 日目から AM および SB431542(TGFβ1 受容 体キナーゼ阻害剤)を添加し、血管内皮および肝細胞特異的遺伝子の発現を評価した。AM 単独群、 SB431542 単独群とも類洞内皮細胞に発現するとされる LYVE-1,stabilin-2 が有意に上昇し、同時投与群 ではその効果は相乗的であった。同時投与群における免疫染色において CD31/LYVE-1/stabilin-2 陽性内 皮細胞が確認でき、その一部には有窓様構造が認められた。また、Ac-LDL の取り込みが亢進しており、 類洞内皮特異的遺伝子(F8,Mrc1,Fcgr2b)の発現が有意に上昇していた。さらに、LYVE-1 陽性内皮細胞 とアルブミン陽性細胞集塊が近接し肝様構造が構築され、成熟肝細胞遺伝子発現が上昇していること が確認された。 【結語】ES 細胞胚様体系において,類洞内皮様細胞の分化誘導が可能であった。また、類洞内皮細胞の 発生および成熟化において、AM シグナル刺激および TGFβシグナル抑制が重要であることが示唆さ れた。近年、急性肝障害や肝硬変に対して血管前駆細胞の経門脈的移植が肝機能を改善させたとする 報告や、血友病患者に類洞内皮細胞を経門脈的に移植したところ、血友病が改善したという報告がみ られる。また、肝細胞および非実質細胞を含めたバイオ人工肝による透析治療の実験も進められてい る。本実験系で得られた知見は将来、前述したような再生医療に活用できる可能性が示唆された。 K-26 急性心筋虚血時冠微小循環側副血行路におけるエリスロポエチンと内因性過酸化水素の効果 ○矢田豊隆 1)、下川宏明 2)、平松 修 1)、仲本 博 1)、後藤真己 1)、小笠原康夫 1)、 梶谷文彦 1) 1) 川崎医科大学医用工学、2)東北大学医学部循環器内科 【目的】イヌ生体内冠微小循環側副血行路において、急性冠動脈閉塞時にエリスロポエチン(EPO)投与 時に過酸化水素を介した血管拡張作用を示すか否かについて、評価を行った。 【方法】イヌ冠心外膜下側副冠微小血管の急性冠動脈閉塞前後で CCD 生体顕微鏡を用いて観察した。 実験は、以下の7つのグループを比較した(各 5 匹)。(i) control, (ii) EPO, (iii) EPO+catalase (H2O2 decomposer), (iv) EPO+L-NMMA (NO synthase inhibitor), (v) EPO+L-NMMA+catalase, (vi) EPO+L-NMMA+apamin+charybdotoxin [KCa channels blockers; apamin and charybdotoxin (CTX)] and (vii) EPO+wortmannin (an inhibitor of PI3 kinase). 【結果】冠動脈閉塞後 85 分時、冠側副細動脈は、拡張したが、小動脈は有意な拡張を認めなかった。 Epo 投与後の血管拡張は、control 群群と比較して、細、小動脈共に有意な拡張を認めた。Epo 投与後、 catalase を投与する事によって、細動脈の血管拡張反応は、半減したが、L-NMMA 投与時には、軽度の 低下を認めた。さらに、他の混合投与群においては、細動脈の血管拡張反応の低下を認めた。Epo 投 与後の冠静脈洞血中 8-OHdG 及び Troponin-T は、control 群と比較して、有意な改善を認めた。 【結論】生体内冠微小循環側副血行路における、急性冠動脈閉塞時にエリスロポエチン投与時、冠側 副血行路の拡張を認め、その血管拡張反応に内因性過酸化水素が関与する事が窺われた。 K-27 の検討 ラット大動脈を用いた血管内皮前駆細胞の局在および血管構成細胞との相互作用について ○山元智衣 1)、松本太郎 2),福田 昇 1) 日本大学大学院総合科学研究科 生命科学、 2) 日本大学医学部先端医学系 細胞再生・移植医学分野 1) 【目的】最近、血管外膜に血管に分化し得る血管幹細胞、血管内皮前駆細胞の存在が報告されている。 そこで今回我々は、ラット大動脈を用い血管に局在する血管内皮前駆細胞の確認および血管構成細胞 との相互作用を検討した。 【方法】7 週齢雄性 SD ラットより胸大動脈を摘出しリング状に切断し、マトリゲルにて 7 日間 3 次元 培養を行い、組織より発芽した細胞(sprout 細胞)を内皮マーカーとして vWF、平滑筋細胞マーカー としてα-SMA による免疫染色を行った。さらに 3 次元培養施行中の大動脈リングを経時的にマトリゲ ルより取り出し CD31、CD34 および細胞増殖マーカーである Ki-67 による免疫染色を行った。a)内膜、 中膜、外膜を有する大動脈、b)外膜を取り除いた大動脈、c)大動脈外膜のみ、の 3 種の組織をそれぞれ 3 次元培養し sprout 細胞を観察した。また、大動脈外膜をコラゲナーゼ処理により細胞を採取し、外膜 に存在する細胞を解析した。 48 【結果】3 次元培養により発芽した sprout 細胞は vWF 陽性、α-SMA 陰性であった。3 次元培養中の大 動脈は sprout 細胞発芽時において外膜に CD31 陰性かつ CD34 陽性、Ki-67 陽性細胞の存在が確認され た。b)外膜を取り除いた大動脈、c)大動脈外膜のみを用いた 3 次元培養では sprout 細胞の発芽を認めな かった。外膜より採取した細胞から CD34 陽性かつ CD31 陰性の細胞を確認した。 【結論】ラット大動脈外膜には血管内皮前駆細胞の存在が示唆され、sprout 細胞の発芽に寄与している 可能性が示唆された。また sprout 細胞は、内膜、中膜、外膜を有する大動脈でのみ発芽し、外膜を取 り除いた動脈、外膜のみの組織では発芽しないことより血管外膜に局在する血管内皮前駆細胞は中膜 平滑筋との相互作用により血管内皮に分化し、血管新生に寄与する可能性が示唆された。 K-28 生体でのアデノシンによる糸球体輸出入細動脈の調節 ○仲本 博、矢田豊隆、小笠原康夫 川崎医科大学 医用工学システム循環器 腎微小循環の生体内可視化による研究は、これまでそのアプローチが困難であったことから対象は、 摘出モデルか特殊な病態動物モデルに限られていた。しかし、われわれの研究室では、生体ビデオ顕 微鏡システムを開発し、この困難を克服した。本研究では、この生体顕微鏡を用いて、腎糸球体での アデノシンの作用を、ラットの生体内で観測することで、可視化解析することが目的である。 Wistar ラットを使用した。吸入麻酔下にラットの左腎を剖出し、表面を薄く剥いで観察窓とし、生体 顕微鏡による観察下に腎糸球体を画面上に捉え、静脈よりジラゼプを 300mg/kg を投与してその後の変 化を録画した。なお、ジラゼプの作用としては、ニュークレオシドトランスポーターの阻害により、 組織でのアデノシンの細胞内への取り込みが抑えられ、組織での濃度が上昇することが知られている。 また、A1 受容体の遮断薬(DPCPX, 10 mg/kg)、A2 受容体の遮断薬(DMPX, 10 mg/kg)、A1 と A2 の双方 の遮断薬(8-sPT 10 mg/kg)を前投与した際の、血管への作用の変化も調べた。 ジラゼプの投与により、1分で輸入細動脈と輸出細動脈はそれぞれ、早期では 4.8±1.0%、4.6±1.0%収 縮して、後期では8分でそれぞれ 7.2±1.8%、5.3±1.8%まで拡張するという2相性の変化を示した。A1 受容体の遮断薬の前投与により、早期の収縮が消失した。A2 受容体の遮断薬の前投与により、後期の 拡張が消失した。A1 と A2 受容体の遮断薬の前投与により、早期と後期の双方の収縮が消失した。(す べて、p<0.05) 輸入細動脈径と輸出細動脈径の比は、ほぼ保たれていたことから、糸球体の濾過と濾過圧は保たれて いると推測された。また、ジラゼプ投与後の早期に見られた、輸入輸出細動脈の収縮は、一過性の虚 血時に他の臓器への血流を増やすことを示唆してはいないだろうか。 K-29 分化 アドレノメデュリン受容体活性調節タンパク RAMP2 および RAMP3 の脈管系における機能 ○山内啓弘、桜井敬之、神吉昭子、河手久香、市川優佳、荒井琢磨、小山晃英、吉沢隆浩、 家里康弘、楊 磊、植竹龍一、沖村綾乃、田中 愛、新藤隆行 信州大学大学院医学系研究科 臓器発生制御医学講座 アドレノメデュリン(AM)は、全身で広範に産生され、多彩な生理活性を有するペプチド因子である。 AM とそのファミリー因子の受容体である CLR には、受容体活性調節タンパク RAMP サブアイソフォ ームのいずれかが 1 対 1 で重合する。中でも RAMP2、RAMP3 は、ほぼ全身の細胞で同時に発現して おり、CLR を AM の受容体として機能させると考えられているが、両者の機能分化や相互間関係など は不明である。 我々は、AM および RAMP2 ノックアウトマウスが、血管の発生異常により胎生中期に致死となる事か ら、AM-RAMP2 系が、血管新生に必須であることを報告した。一方、RAMP2-/-は、RAMP2 単独の欠 損に関わらず胎生致死となることや、RAMP3 発現に変化を認めないことから、RAMP2、RAMP3 両者 に、発生における機能相補性が無いことが示唆された。本研究では、RAMP3-/-を新たに樹立し、 RAMP2-/-との表現形比較から、脈管系における両者の機能について検討した。 RAMP3-/-は、AM-/-や RAMP2-/-と異なり、出生し、AM-/-や RAMP2-/-で見られる胎児の浮腫や出血、 血管発生異常は観察されなかった。成体における下肢虚血モデルの検討では、野生型マウスと比較し て、RAMP2+/-では血流回復不良が認められたが、RAMP3-/-では変化を認めなかった。一方、RAMP2+/-、 RAMP3-/-双方とも、尻尾の表皮剥離による術後リンパ浮腫モデルで、野生型に比較して増悪を認めた。 RAMP3-/-では、リンパ管、血管の数に変化を認めないものの、リンパ管径の拡張と間質浮腫の増悪が 特徴的に観察された。 以上の結果から、AM-RAMP2 は、血管新生、リンパ管新生双方に関与するのに対し、RAMP3 は、新 生リンパ管によるドレナージに関与していることが示唆された。 K-30 新規 Benzyloxyphenyl 誘導体 YM-244769 の特異的な NCX 阻害特性 ○山田敏樹 3)、渡邊泰秀 1)、山下寛奈 1)、木村純子 2)、喜多紗斗美 3)、山本信太郎 3)、 岩本隆宏 3) 1) 浜松医科大学医学部看護学科健康科学、2)福島県立医科大学医学部薬理学、 3) 福岡大学医学部薬理学 49 YM-244769 (N-(3-aminobenzyl)-6-{4-[(3-fluorobenzyl)oxy]phenoxy} nicotinamide) は 最 近 開 発 さ れ た Benzyloxyphenyl 系 Na+/Ca2+交換体(NCX)阻害薬である。今回、我々はモルモットの単離心筋細胞を 用いてホールセルクランプ法により NCX 電流に対する YM-244769 の作用を検討した。細胞外液、細 胞内液はそれぞれ調節して、ランプ波を用いて NCX 電流を記録した。YM-244769 は濃度依存性に両方 向型 NCX 電流を抑制した(IC50 値=外向き 0.12μM 、内向き 0.1μM)。しかし、片方向型外向き電流 に対する IC50 値は 0.05μM であった。また、片方向型内向き NCX 電流に対する作用は 10μM で約 50% の抑制を示すに過ぎなかった。細胞内 Na+濃度が増加すると両方向型 NCX 電流に対する抑制作用は強 くなった。ピペット内にトリプシンを投与しても、YM-244769 の両方向型 NCX 電流に対する抑制作用 は変化しなかった。YM-244769 の抑制作用は、細胞内投与したトリプシンには非感受性であり、その 抑制部位は細胞内側だけでないことが示唆された。さらに、マウス単離心筋細胞を用いて、YM-244769 の各種イオン電流に対する作用を調べたところ、1~10μM の濃度域では ICa、INa、IK1、ISS、Ito および IOAG の各種電流に有意な影響を及ぼさなかった。以上より、YM-244769 は、効力および特異性の高い NCX 阻害薬であり、有用な研究ツールである。YM-244769 は NCX の Ca2+流入モード(外向き電流) に特異性があることから、NCX を介する Ca2+過負荷障害に対する治療応用が期待できる。 K-31 アンジオテンシンⅡによる腎尿細管のミトコンドリア内酸化ストレス亢進メカニズム ○森 建文、芦 毅、胡 春艶、米城淑美、清元秀泰、小川 晋、伊藤貞嘉 東北大学大学院医学系研究科 腎高血圧内分泌学分野 アンジオテンシン II(AngII)は腎髄質ヘンレのループ太い上行脚(mTAL)において細胞内酸化ストレス を介して Na 再吸収を調節している。本研究では、AngII によるラット mTAL のミトコンドリア内活性 酸素への影響を検討した。 Sprague-Dawley ラット mTAL を単離し微小灌流したのち、ミトコンドリア内活性酸素(O2-)と過酸化 水素(H2O2)を特異的蛍光色素 MitoSOX および MitoPY1、細胞質ゲル H2O2 を PF6-AM を用いてリア ルタイムに観察した。 血管側の AngII 刺激により、ミトコンドリア内 O2-と H2O2 は 390 秒後有意に増加したが、ミトコンド リア内 O2-の反応は superoxide dismutase (SOD) の阻害剤である diethyldithiocarbamate により、有意に 増加した。AngII によるミトコンドリア内 H2O2 の反応は AngII type(AT1)受容体拮抗薬である losartan、ミトコンドリア複合体-I 阻害剤である rotenone、及び細胞内透過性 H2O2 の消去剤である PEGカタラーゼにより有意に抑制されたが、NAD(P)H 酸化酵素抑制剤である apocynin では有意に抑制され なかった。また、AngII 刺激により細胞質ゲル H2O2 は有意に増加し、この反応は apocynin 又は rotenone により抑制された。 AngII は AT1 受容体と複合体-I を介し、mTAL のミトコンドリア内酸化ストレスを亢進し、ミトコンド リア内活性酸素は過酸化水素に変換し、細胞質ゲルに拡散することが示された。このメカニズムは AngII による NAD(P)H oxidase を介した酸化ストレスとともに mTAL の細胞内酸化ストレス亢進とナト リウム再吸収に関わることが示唆された。 K-32 血管内皮細胞での硫化水素 (H2S)による NO 産生促進効果 ○木田道也、杉山 徹、吉本貴宣、平田結喜緒 東京医科歯科大学大学院 分子内分泌内科 【目的】硫化水素 (H2S) は腐卵臭のある有毒ガスとして知られているが、近年哺乳類の生体内におい ても cystathionine γ-lyase (CSE)、cystathionine β-synthase (CBS)、3-mercaptopyruvate sulfurtransferase (3-MST)といった酵素を介して合成され、種々の生理活性を持つことが明らかとなってきている。心血 管系では H2S の血管拡張作用や降圧作用が示されており、内皮由来弛緩因子 (EDRF)の一つと考えられ てきている。しかし、H2S の細胞内機序や一酸化窒素 (NO)をはじめとする他の EDRF との相互作用に ついては明らかになっていない。そこで本研究では血管内皮細胞において、H2S が内皮型 NO 合成酵素 (eNOS)活性および NO 産生にどのような影響を及ぼすかを検討した。 【方法】培養ウシ大動脈血管内皮細胞 (BAEC、継代数 5~10)に NaHS(H2S ドナー)を添加し、培地中へ の NO 産生量を 2,3-diaminonaphthalene を用いた蛍光法にて測定した。細胞内 Ca2+濃度([Ca2+]i)の測定は、 カルシウム蛍光色素(Fura2-AM)を用いた蛍光測定法で行った。eNOS 活性はウェスタンブロット法で解 析した。 【結果】NaHS の添加によって BAEC での NO 産生は濃度依存性 (12.5 - 200μM)に増加した。この効 果 は 細 胞 内 カ ル シ ウ ム キ レ ー タ ー (BAPTA) の 前 処 置 に て 減 弱 し た が 、 PI3 キ ナ ー ゼ 阻 害 剤 (wortmannin)の前処置では変化しなかった。また、NaHS の添加により BAEC の[Ca2+]i は緩徐な上昇を 認めた。さらに、NaHS は eNOS の活性的リン酸化部位 (Ser1179)のリン酸化を促進し、同時に阻害的リ ン酸化部位 (Ser116)の脱リン酸化を促進した。この効果も BAPTA にて減弱したが、wortmannin では変 化しなかった。 【結論】本研究により、H2S が血管内皮細胞に直接作用し、カルシウム依存性に eNOS を活性化させ、 NO 産生を増加させることを初めて明らかにした。H2S による血管拡張作用の機序の一部に、血管内皮 における NO 産生を介している可能性が示唆される。 50 K-33 エンドセリン A 型受容体作動性 TRPC6 チャネルの多様な機能制御機構 ○堀之内孝広、比嘉綱己、西屋 禎、青柳裕之、鈴木浩之、西本 新、三輪聡一 北海道大学大学院医学研究科 細胞薬理学分野 Gq タンパク質共役型受容体であるエンドセリン A 型受容体(ETAR)が内因性の生理活性ペプチドである エンドセリン-1 によって活性化されると、ストア作動性 Ca2+チャネル(store-operated Ca2+ channel: SOCC) や受容体作動性 Ca2+チャネル(receptor-operated Ca2+ channel: ROCC)を介して、細胞外の Ca2+が細胞内へ 流入する。そして、SOCC や ROCC として機能する分子として、7 種類のアイソフォームから成る TRPC(transient receptor potential canonical)チャネル(TRPC1-7)が同定されている。最近、私達は、ETAR 刺激によって引き起こされる受容体作動性 Ca2+流入に TRPC3・TRPC5・TRPC6・TRPC7 が関与してい ることを報告した。このうち、心血管系に多く発現している TRPC6 を介した Ca2+流入は、血管平滑筋 細胞の収縮や異常増殖、心筋細胞の病的肥大を引き起こすことから、高血圧、動脈硬化症、心不全、 肺高血圧症などの心血管系病態の発症・進展において、重要な役割を果たしていると考えられている。 本研究では、ETAR 及び GFP 融合 TRPC6 を安定的に共発現する HEK293 細胞を用いて、TRPC6 を介し た ETAR 作動性 Ca2+流入の制御機構に焦点を当てた解析を行った。 選択的阻害薬及び TRPC6 変異体を用いた解析により、(1) Gq タンパク質、ホスホリパーゼ C、Src、PI3 キナーゼ、ミオシン軽鎖キナーゼ、カルモジュリン(CaM)及び TRPC6 の細胞内 C 末端に存在する CaM/IP3 受容体結合ドメインが、TRPC6 を介した ETAR 作動性 Ca2+流入に促進的に関与していること、 また、(2) ETAR 作動性 TRPC6 が cAMP/PKA 系によって負の制御を受けていることが示唆された。 K-34 冠動脈内皮機能障害に対するカンデサルタンの効果 ○飯野健二、渡邊博之、伊藤 宏 秋田大学大学院 循環器内科学 【背景】多くの大規模スタディーにてアンギオテンシンレセプターブロッカー(ARB)の心血管イベ ントの予後改善効果が示されている。また、ARB の投与は FMD を用いて評価した末梢の内皮機能を 改善することが報告されている。冠動脈の内皮機能障害は冠動脈病変や心血管イベントの予後規定因 子と考えられるが、カンデサルタンの冠動脈内皮機能に関する検討は十分になされていない。我々は、 冠動脈における内皮機能障害に対するカンデサルタンの効果を検討した。 【方法・結果】右冠動脈に対する冠動脈形成術を予定しており、左冠動脈前下行枝(LAD)に有意 狭窄を持たない患者を対象とした。冠動脈内皮機能評価のためLADにドップラーワイヤーを留置し 冠血流を測定した。また、冠血流予備能(CFR)の測定には内皮依存性の血管拡張作用を有するアセ チルコリン(Ach)を用い、Ach (30μg/分)依存性の冠血流の増加率で内皮機能を評価した。コントロ ール群(n=10)、カンデサルタン群(n=14)の各群間にて治療前と6か月後に内皮機能について評価し た。治療前は両群において CFR は 300%以下であり、内皮機能障害の存在を認めた。6 ケ月後、カン デサルタン群において CFR は 199 ± 20% から 337 ± 27% (P < 0.005) と有意に増加を認めた。一方、コ ントロール群では有意な増加を認めなかった(192 ± 11% vs 184 ± 15%, P = 0.84) また、5 年間の経過に て、コントロール群に比してカンデサルタン群では有意に心血管イベント回避率が高い傾向が認めら れた(50 % vs 78.6%, P < 0.05)。 【結語】カンデサルタン投与によって冠動脈内皮機能障害の改善傾向が認められ、心血管イベントを 減少させる可能性が示唆された。 K-35 PHD 阻害剤の虚血皮弁生存に対する効果 ○高久 暢 1)、冨田修平 2)、小谷武司 3)、橋本一郎 1)、中西秀樹 1)、玉置俊晃 2) 1) 徳島大学 形成外科、2)徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部薬理学、 3) 徳島大学 薬学部 Hypoxia-inducible factor 1(HIF-1)は低酸素/虚血環境における血管形成応答の中心的な役割を有する。 一方で、prolyl hydroxylase domain enzyme (PHDs)は HIF-1alpha の分解のトリガーとなりその活性を抑制 している。今回我々は、マウスの虚血皮弁生存に対する PHD 阻害薬(dimethyloxalylglycine :DMOG) の効果を検証した。 皮弁作成の 48 時間前に DMOG を全身投与し、皮弁生存領域と血管数を術後 7 日目に評価した。虚血 組織における Hif-1a タンパクの発現を術後 1 日目に評価した。さらに、虚血皮弁の生存に Hif-1alpha が重要な役割を有することを検証するために、HIF-1alpha ノックアウトマウスを用いて同様の実験を 行った。 皮弁生存領域・血管数・HIF-1alpha タンパクの発現に関して、DMOG 処置群ではコントロール群と比 較して有意に高値を示した。HIF-1alpha ノックアウトマウスにおける皮弁生存領域はコントロール群 と比較して減少し、さらに DMOG を前処置として全身投与したところ皮弁生存領域の回復を認めた。 これらの結果から、DMOG の前処置は皮弁壊死の予防方法として新たな治療方法となる可能性が示さ れた。 51 K-36 メタボリックシンドロームにおける Na 利尿ペプチド受容体 GC-A の意義 ○槇野久士 1)、徳留健 2)、岸本一郎 1)、寒川賢治 2) 1) 国立循環器病研究センター糖尿病代謝内科、2)国立循環器病研究センター研究所 【目的】Na 利尿ペプチドである心房性 Na 利尿ペプチド (ANP), 脳性 Na 利尿ペプチド (BNP) は guanylyl cyclase A (GC-A) 受容体を介して体液量の調節、血圧の調節などの作用を発揮する。近年肥満患者にお ける血中の BNP 濃度の低下やメタボリックシンドロームのコンポーネント数と血中 BNP 濃度の逆相 関などが報告されており、Na 利尿ペプチドがこれらの代謝性疾患の病態に関与している可能性が示唆 されている。今回我々は GC-A 欠損マウスを用いて内因性の Na 利尿ペプチド系の肥満における代謝異 常への役割について検討した。 【方法】8 週齢の雄性 GC-A 欠損マウス(GCAKO)とその対照マウス(WT)に fat kcal 60%の高脂肪 食(HFD)または通常食(NFD)を負荷し、16 週後に血圧測定、CT による体脂肪率、内臓脂肪/皮下 脂肪比、脂肪肝の程度の評価、IPGTT、IPITT による耐糖能の評価を行った。更に免疫染色による、脂 肪組織での GC-A の発現部位の検討を行った。 【結果】NFD では GCAKO と WT に有意な体重差は生じなかったが、HFD 負荷 4 週後より GCAKO は WT に比し有意な体重の増加を認め、その差は 16 週後まで持続した(16 週後 WT-HFD; 42.8±1.2g, GCAKO-HFD; 48.0±1.1g, p < 0.01)。また 16 週後 WT-HFD は WT-NFD に比し有意な血圧の上昇は認め られなかったが、GCAKO-HFD は GCAKO-NFD に比し有意な血圧の上昇を認めた。16 週後において GCAKO-HFD は WT-HFD に比し有意な体脂肪率の増加(GCAKO-HFD; 53.1±1.6, WT-HFD; 48.1±1.9, p <0.05)、内臓脂肪/皮下脂肪比(GCAKO-HFD; 2.59±0.14, WT-HFD; 2.03±0.17, p <0.05)、肝脂肪率の増 加(GCAKO-HFD; 28.01±2.32, WT-HFD; 19.59±2.79, p <0.05)を認めた。また IPGTT において NFD 群 では GCAKO と WT において差は認めなかったが、HFD 群では GCAKO は WT に比して耐糖能の悪化 を認めた。更に IPITT では GCAKO-HFD は WT-HFD に比し有意なインスリン感受性の低下を認めた。 また免疫染色において GC-A は脂肪組織の脂肪細胞及び血管内皮にその発現を認めた。 【結論】GC-A は脂肪組織でも強く発現しており、GCA を介した Na 利尿ペプチドの作用がメタボリッ クシンドロームに対して保護的に作用している可能性が示唆された。 K-37 RA 系遺伝子多型の心血管病発症に対する遺伝的負荷 -高血圧患者を対象としたコホート研究○加藤のぞみ、多田羅雄之、大石 充、楽木宏実 大阪大学 老年・腎臓内科学 【目的】レニン・アンジオテンシン(RA)系の遺伝子的負荷が高血圧や心血管疾患と関連があるここと が報告されている。今回 RA 系遺伝子多型(AGT M235T 多型・ACE I/D 多型・AT1 A1166C 多型)が心血 管イベント発症のリスクとなりうるかを本態性高血圧症患者を対象に前向きコホート研究で検証した。 【方法】本研究は NOn-invasive Atherosclerotic evaluation in Hypertension (NOAH)研究のサブ解析として 行われ、1998 年 1 月から 2004 年 6 月にエントリーした 515 名の高血圧患者を対象とし、2009 年末現 在を最終調査として来院時の面接及び電話連絡による質問紙法等により脳卒中、心血管疾患発症等の 予後調査を行った。 【結果】脳卒中・心血管発症複合一次エンドポイントに対するカプランマイヤー解析で ACE I/D 多型 の DD 型がリスクとなった(P<0.0001: Loglank test)。心血管発症に対しては ACE I/D 多型および M235T 多型の DD 型及び TT 型がリスクとなったが、脳卒中発症に対しては各多型で有意差は認められなかっ た。コックスハザード解析では ACE 遺伝子多型 DD 型(P<0.0001)は種々な危険因子を用いて補正して も有意な危険因子として選択された。また、降圧薬服用の有無や ACE 阻害薬・ARB の使用の有無など を危険因子として追加をしても ACE 遺伝子多型 DD 型は有意な危険因子として採択された。さらに年 齢別解析ではカプランマイヤー解析およびコックスハザード解析にて 65 歳未満において CVD および 脳卒中のリスク比はより高かった。 【結論】ACE I/D 遺伝子多型の DD 多型は本態性高血圧症患者において脳・心血管イベント特に心血管 イベントの遺伝的危険因子となりうることが示唆された。 K-38 頸動脈内膜中膜厚による血中 LDL-コレステロール値と頚動脈弾性特性との関係について ○山岸俊夫 東北公済病院内科、東北大学大学院医工学研究科 【目的】血管が脂質の影響で肥厚した場合、血管壁が必ずしも硬くなるとは限らない。頸動脈エコー で求めた頸動脈弾性特性と動脈硬化因子である血中 LDL-C 値との相関関係を、頸動脈内膜中膜厚 (IMT)のレベル区切った場合に求め、頸動脈弾性特性が、新しい動脈硬化の指標となり得るかを評価 する。 【方法】外来患者 350 人(平均年齢 50±13 才)について、生化学データ、IMT、位相差トラッキング 法 (Kanai et al. 2003 Circulation、歪みと脈圧の演算から求める値)を用いた。弾性特性計測には、計測部 位は、Bulb を含む左右の総頸動脈の各 3 箇所、Bulb を含まない平坦部分について、合計 6 箇所とした。 IMT と IMT 計測領域における血管弾性特性の平均(円周方向の Eθ)を計測した。IMT のカットオフ 値 a を、0.8 から 1.6mmまで、0.1mm刻みにふり、a より小さい範囲と、a 以上の範囲に分け、各々に 52 おいて血中 LDL-C や他の古典的な動脈硬化因子の値と IMT および Eθの相関を求めた。 【結果】IMT が a より小さい範囲では、a が 1.0 から 1.6mm の間で、LDL-C と IMT は、正の相関を示 したが、IMT が a 以上の範囲では、a が 1.0mm 以上で、LDL-C と IMT の相関は認めなかった。一方、 IMT が a より小さい範囲では、LDL-C と Eθは、有意な相関を認めなかったが、IMT が a 以上の範囲 では、a が 1.0 から 1.5mm の間で、LDL-C と Eθは、負の相関を示した。また血圧、HbA1c は、いず れの範囲でも正の相関を示した。 【結論】頸動脈内膜中膜厚と血管壁厚の影響を受けにくい Eθの両方を計測することで 1)脂質と血圧、 血糖による影響の質の差を検出できる可能性があり、2)従来疫学から求めた IMT と頸動脈弾性特性か ら求めたカットオフ値を使用することで早期動脈硬化病変やスタチンなどによる線維性被膜形成とい った薬効評価に有用と考えられた。 K-39 動脈硬化促進因子 salusin-β の分泌と ELISA 系の確立 ○藤本和実 1)、佐藤健吾 2)、七里眞義 3)、小山高敏 1) 1) 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 先端血液検査学、 2) 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 臨床解剖学、 3) 北里大学医学部 内分泌代謝内科学 【目的】Salusin-β は Acyl-CoA:Cholesterol Acyltransferase-1 の発現促進によりヒト単球由来マクロファ ージ泡沫化を促進して動脈硬化を進展させる。また、salusin-β は急性冠症候群患者の冠動脈硬化病変 内の泡沫化マクロファージ等に高発現している。最近我々は salusin-β RIA 系を確立し、ヒト尿中及び 血中での存在を明らかにしているが、産生細胞はいまだ明らかではない。そこで今回、ヒト単球由来 細胞での salusin-β の分泌を検討し、血中濃度の測定可能な ELISA 系の構築も試みた。 【方法】まずヒト単球性白血病細胞株の THP1 及び U937 細胞において、前駆体である preprosalusin mRNA 及びタンパクを RT-PCR 及びウエスタンブロットで、細胞外分泌を RIA で検討した。また、逆 相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)による分子型評価も行った。更に、サイトカイン刺激を行った 場合の salusin-β の分泌動態も検討した。次に、サンドイッチ ELISA 系の確立を試み、健常ヒト血漿中 の salusin-β 濃度を測定し、分子型の評価も行った。 【結果】両細胞に preprosalusin mRNA 及びタンパクを確認した。THP1 及び U937 細胞は salusin-β を分 泌し、マクロファージに分化させると分泌量は著しく増加した。更に、LPS 及び TNF-α 刺激で salusin-β 分泌量は著しく増加したが mRNA の変化はなかった。ELISA の確立により血漿中 salusin-β 濃度測定が 可能となり、健常ヒト血漿中濃度は 1.1 ± 0.2 nmol/L であった。さらに、ヒト血漿中及び THP1 細胞培 養上清抽出物の RP-HPLC 画分の免疫活性のピークは salusin-β 標準品と一致した。 【結論】単球及びマクロファージは salusin-β を分泌し、炎症性サイトカインによりその分泌量が増加 した。Salusin-β は粥状動脈硬化症において autocrine/paracrine 作用を有し、動脈硬化性疾患との関連が 強く示唆された。今後、ELISA 系を用いて動脈硬化性疾患等での病態生理学的意義をさらに解明して いく。 K-40 超微量アルブミン尿を呈する高血圧合併腎移植ドナーは高血圧性腎硬化症の初期像を呈する ○祖父江 理 1)、乾 政志 2) 、守時政宏 1)、西岡 聡 1)、西島陽子 1)、海部久美子 1)、 原 大雅 1)、串田吉生 3)、清元秀泰 5) 、河野雅和 1)、西山 成 4) 1) 香川大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科、2)香川大学医学部泌尿器・副腎・腎移植外科 3) 香川大学医学部病理部、4)香川大学医学部薬理学、5)東北大学腎・高血圧・内分泌科 【目的・方法】アルブミン尿は高血圧、糖尿病、肥満等で出現し、15-30mg/gCr 程度の超微量の領域(超 微量アルブミン尿)でも心血管病変のリスクであることが知られている。高血圧性腎硬化症の初期の病 変を解明するために、超微量-微量アルブミン尿を呈する腎移植ドナーの 0 時間(摘出腎)腎生検におけ る腎組織の検討を行った。対象は当院における 27 例の生体腎移植ドナーのうち、超微量アルブミン尿 を呈した 13 例とした。アルブミン尿は随時尿で検討し、超微量アルブミン尿は 15-30mg/gCr と定義し た。 【結果】ドナーは平均 59 歳、平均 eGFR は 84.5±4mL/min であった。正常血圧ドナー(N=18)の 38%、 高血圧ドナー(N=9)の 67%に超微量-微量アルブミン尿を認めた。アルブミン排泄量と腎提供後のドナ ー腎機能変化は負の相関を示した。正常血圧ドナーにおいては超微量アルブミン尿の有無は糸球体硬 化率、動脈硬化保有率、間質の線維化、移植後腎機能と関連を認めなかった。一方、高血圧かつ超微 量アルブミン尿陽性ドナーでは高血圧かつ超微量アルブミン尿陰性ドナーと比較して糸球体硬化率、 動脈硬化保有率、間質の線維化が高率(20.4±6.1%, 100%, 8.3±1.7% vs. 11.2±4.2%, 33%, 0%)であり、移 植腎機能も低値で推移した。 【結語】高血圧患者では腎機能低下を呈さない超微量アルブミン尿の時点から高血圧性腎硬化症の腎 病理組織を呈していることが示された。 K-41 生体腎移植における持ち込み IgA 沈着症から見た IgA 腎症の成因と進行の機序 ○祖父江 理 1)、乾 政志 2)、守時政宏 1)、西岡 聡 1)、西島陽子 1)、海部久美子 1)、 原 大雅 1)、串田吉生 3)山口佳津騎 4)、清元秀泰 6)、河野雅和 1)、筧 善行 2)、西山 成 5) 1) 香川大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科、2)香川大学医学部泌尿器・副腎・腎移植外科、 53 3) 6) 香川大学医学部附属病院病理部、4)香川大学医学部附属病院薬剤部、5)香川大学医学部薬理学、 東北大学 腎・高血圧・内分泌科 【背景】 生体腎移植において、検尿異常のないドナー腎において IgA の沈着を認めることがある(持 ち込み IgA 沈着症:IgAD)。検尿異常や腎機能低下のないドナーにおける IgAD は IgAN の成因を解明 する上で非常に有用なツールであると考えられる。今回我々は生体腎移植において、ドナー腎の IgAD の検討を通じて IgAN の成因や進行の機序を検討した。 【方法】当院にて生体腎移植を施行した連続 53 例の生体腎移植を対象とし、0 時間腎生検にて IgAD を認めたドナー18 例とそのレシピエントに対して対照群(n=35)と比較した。また、持ち込み IgAD 消失 群(n=7)と非消失群(n=8)間における免疫抑制剤の濃度を検討した。 【結果】持ち込み IgAD ドナー群は提供前臨床的に検尿異常や腎機能低下を認めず、ドナー年齢、血圧 も同等であった。原疾患が IgAN であるレシピエントにおいては、ドナーが親族である場合、有意に持 ち込み IgAD 率が高かった(P=0.0113)。また、持ち込み IgAD を有するドナー、原疾患が IgAN であるレ シピエントにおいて、HLA-B35 保有率は有意に高率であった。また、持ち込み IgAD18 例のうち、12 例は軽度のメサンギウム増殖を伴っていたが、検尿異常や機能低下を認めなかった。IgAD はドナーの 術後腎機能、レシピエントの生存生着率、1 年後、3 年後の移植腎機能にも影響を与えなかった。IgAD のみの群とメサンギウムの増殖を伴う群の群間にも移植腎機能に差は認めず、今回の検討においては、 レシピエントにおける蛋白尿・血尿の再発率にも影響を与えなかった。1 年後のプロトコール移植腎生 検において、持ち込み IgAD 消失率は 47%であった。また、持ち込み IgAD 消失群と非消失群の群間に おいて、移植 1 年後の免疫抑制剤濃度には有意差を認めなかった。 【結語】IgA 沈着症が IgA 腎症へ進行する際には IgA 沈着以外の因子が関与している可能性が示唆さ れ、これは 2nd hit 仮説を支持するものであった。 K-42 の検討 健診患者における尿酸と動脈硬化の指標である Cardio ankle vascular index (CAVI) との関係 ○城徳昌典、大蔵隆文、長尾知明、入田 純、三好賢一、檜垣實男 愛媛大学大学院 病態情報内科学 【目的】高尿酸血症は動脈硬化の危険因子と考えられているが、生体内で抗酸化物質として作用する ため、これを否定する報告も多い。本研究では、動脈硬化の指標である Cardio ankle vascular index (CAVI) と尿酸値との関連について検討した。 【方法】対象は明らかな疾患を指摘されたことがない健診受診者 2,930 名(男性 1,125 名、女性 1,805 名)である。健診で行われる一般血液検査と CAVI との関連を検討した。 【結果】平均年齢は 47 歳で、平均血圧は 124±15/74±11mmHg、平均尿酸値は 4.92mg/dL であった。 CAVI と単相関する因子としては、年齢、血圧、総コレステロール、HDL コレステロール、中性脂肪、 クレアチニン、尿酸、血糖であった。さらに、これらの因子の中で、年齢、血圧、総コレステロール、 中性脂肪、尿酸が CAVI の独立した規定因子であった。また、尿酸値によって対象者を 4 分位にして解 析を行うと、尿酸値が高ければ高いほど、CAVI も高値であった。 【結論】明らかな生活習慣病を有しない健診患者において、尿酸は腎機能(クレアチニン)と独立し た動脈硬化の危険因子であることが明らかになった。 K-43 心不全患者における血中O型糖鎖付加 N-terminal-proBNP 濃度および糖鎖修飾率の解析 ○竹田陽介、錦見俊雄、家村周子、越川省吾、早川弥生、田所寿剛、石村公彦、石光俊彦 獨協医科大学 循環器内科 【背景】最近の研究では血中 NT-terminal-proBNP(NT-proBNP)が糖鎖修飾されており、現行の測定系 では血中濃度を過小評価している可能性が指摘されている。血中 NT-proBNP 濃度は心不全で増加する が、測定から漏れていると考えられるO型糖鎖付加 N-terminal-proBNP(糖鎖付加 NT-proBNP)と心不 全との関連は十分に知られていない。また糖鎖付加 NT-proBNP と従来の測定系で得られた NT-proBNP (非糖鎖付加 NT-proBNP)との割合(糖鎖修飾率)の意義についてもほとんど報告はない。 【目的】心不全患者における糖鎖付加 NT-proBNP 濃度の病態生理学的意義について検討した。 【方法】心不全患者176人を対象とした。透析中の腎不全患者は除外した。心不全重症度(NYHA) 、 血漿 BNP,NT-proBNP 濃度,Cre を測定した。未処理の NT-proBNP 濃度を非糖鎖付加 NT-proBNP 濃度、 酵素的脱糖鎖処理後の NT-proBNP 濃度を総 NT-proBNP 濃度と仮定した。糖鎖付加 NT-proBNP 濃度は (総 NT-proBNP)-(非糖鎖付加 NT-proBNP)として算出した。 【結果】心不全重症度に伴い血漿 BNP,糖鎖付加 NT-proBNP、非糖鎖付加 NT-proBNP、総 NT-proBNP は増加したが、糖鎖修飾率に有意な変化は見られなかった。BNP と非糖鎖付加 NT-proBNP(r=0.52)、糖 鎖付加 NT-proBNP(r=0.78)、総 NT-proBNP(r=0.75)はそれぞれ正の相関を認めた(P<0.0001)。糖鎖修飾 率は BNP,Cre と相関を認めなかった。 Cre と糖鎖付加 NT-proBNP(r=0.35) 、総 NT-proBNP(r=0.42) は正の相関を示す傾向を認めた(P<0.0001)。 【結論】BNP や非糖鎖付加 NT-proBNP(従来の NT-proBNP)と同様に、血中O型糖鎖付加 NT-proBNP 濃度は心不全重症度、腎不全悪化に伴い増加することが示唆された。また心不全および腎不全の重症 度は糖鎖修飾率に関与しない可能性が示唆された。 54 K-44 末期腎不全患者における血液浄化(透析導入)によるテトラヒドロビオプテリンの変化と意義 ○岸田真嗣 1)、前田一石 2)、新宅治夫 3)、柴田幹子 1)、濱田真宏 1)、北林千津子 1)、 森川 貴 1)、小西啓夫 1)、西山 成 4) 、今西政仁 1) 1) 大阪市立総合医療センター 腎臓・高血圧内科、2)大阪市立大学 環境衛生学教室、 3) 大阪市立大学 発達小児医学、4)香川大学医学部 薬理学講座 【背景・目的】 末期腎不全では、酸化ストレスが亢進し、一酸化窒素(NO)の代謝異常、すなわち NO 合成酵素(NOS)の uncoupling がおこりスーパーオキシドが多量に産生され、血管系の障害が進行すると されている。NOS の uncoupling の原因は、酸化ストレスによる補酵素テトラヒドロビオプテリン(BH4) の減少と考えられているが、臨床での検討はほとんどない。そこで、BH4 を含む血中のプテリジン類 を測定し、初回血液浄化(酸化ストレス軽減)による変化と意義を検討した。 【対象・方法】対象は、末期腎不全から血液透析導入となった糖尿病患者(DM) 20 例と非糖尿病患者 (nonDM) 20 例の計 40 例である。ただし、緊急透析導入例や CRP 高値例を除外し、末期腎不全ながら 安定導入した症例を対象とした。評価するプテリジンとして、BH4、総ビオプテリン(Total-Bi)とネオ プテリン(Ne)を選択した。初回血液透析の直前・直後で血液を採取し、高速液体クロマトグラフィーを 用いて、血漿中の Ne・Total-Bi・BH4 の変化について検討した。 【結果】Ne・Total-Bi は、DM・nonDM とも透析で有意に減少した(p<0.01)。BH4 は、透析前、DM で nonDM より有意に低値であった。透析により、両群とも同等レベルまで増加したが、その増加は DM では有意 (13.3±5.45 pmol/ml, p<0.01)であったものの、nonDM では(7.10±5.58 pmol/ml)有意ではなかっ た。 【考察・結論】Ne・Total-Bi・BH4 は低分子量のため、透析除去され減少するはずである。しかし、減 少するはずの BH4 が変わらないかむしろ有意に増えた、特に糖尿病患者でそれが著明であったことか ら、末期腎不全で低値であった BH4 が血液浄化(酸化ストレス軽減)により回復し、NO の代謝改善に繋 がることが示唆された。 K-45 Nerve growth factor (NGF)はマウス角膜移植腫瘍新生血管に血管周囲神経を分布させる ○曽根曜子 1)、越智榮子 1)、松山晃子 1)、普久原聡子 1)、合田光寛 2)、髙取真吾 1)、 川﨑博已 1) 1) 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床薬学、 2) 新潟大学大学院医歯学総合研究科 薬理学 【背景・目的】腫瘍の増殖、拡大、転移には血管新生が必須であり、新生した血管から血液の供給を 受けることで腫瘍は増殖する。しかし、腫瘍新生血管には血流調節に重要な役割を果たしている血管 周囲神経は分布していないことが報告されている。我々は、Nerve growth factor (NGF) が角膜新生血管 への血管周囲神経の分布を促進すること、さらに、マウス皮下に移植した腫瘍増殖も抑制することを 報告している。これらの結果から、NGF により腫瘍新生血管に分布した血管周囲神経を介して、腫瘍 組織への血流調節が行われ、その増殖が抑制されている可能性を示唆している。そこで、新生血管全 体像の観察が容易な角膜ポケット法を用いて、各種腫瘍誘導新生血管における血管周囲神経分布状態 を調べ、NGF の神経分布効果について検討した。 【方法】BALB/c 系雄性マウスの角膜に、腫瘍(ヒト前立腺癌 DU145 細胞またはヒト線維肉腫 HT1080 細胞)を含むゲル(6×104 cells/ゲル)を挿入して、新生血管を誘導した。NGF または生理食塩液(対 照群)は、浸透圧ポンプを用いて、腫瘍ゲル挿入と同時または挿入後 7 日から 7 日間持続皮下投与し た。投与終了後、角膜を摘出し、各種抗体を用いた免疫染色法により、血管周囲神経の分布を観察し た。 【結果・考察】腫瘍ゲル移植後 7 日目および 14 日目において、両群ともに既存の輪状血管から腫瘍部 位へ伸長する新生血管が観察された。NGF 投与群において、角膜移植腫瘍新生血管に血管周囲神経と 考えられる PGP9.5 免疫陽性神経が観察された。しかし、対照群において PGP9.5 陽性神経は観察され なかった。以上の結果より、腫瘍の種類を問わず誘導された新生血管には血管周囲神経が分布しない こと、さらに NGF は腫瘍新生血管への血管周囲神経の分布を亢進させ、腫瘍への血流調節を制御する 可能性が示唆される。 K-46 マウス下肢虚血モデルにおいて鉄キレート剤 Deferoxamine は酸化ストレスとアポトーシス を抑制する ○池田康将 1)、田島壮一郎 1)、吉田守美子 2)、山野範子 1)、木平孝高 1)、石澤啓介 3)、 粟飯原賢一 2)、冨田修平 1)、土屋浩一郎 3)、玉置俊晃 1) 1) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 薬理学、 2) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 生体情報内科学、 3) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 分子生物薬学 【背景】 鉄は生体の恒常性維持に必須の因子であるが、一方 Fenton/Haber-Weiss 反応を介して細胞障 害性の強いヒドロキシラジカルを生成して酸化ストレスを誘導することが知られている。近年、鉄蓄 積と末梢動脈疾患との関連が報告されている。昨年の本学会にて我々は鉄過剰症治療薬 Deferoxamine (DFO)が血管内皮細胞を活性化させて虚血後血管新生に作用することを報告した。今回、マウス下 55 肢虚血モデルにおける DFO の酸化ストレスならびにアポトーシスに与える影響について検討した。 【方法・結果】 8 週齢 C57BL/6J マウスの下肢虚血モデルを用いて、Vehicle 投与群と DFO 投与群の2 群間で比較検討を行った。レーザードップラーによる虚血後微小循環は DFO 投与群で血流回復が促進 しており、虚血肢骨格筋における毛細血管密度も増加していたが、同様に側副血行路数も DFO 群で高 値であった。加えて、内皮細胞増殖も DFO 群で亢進していた。下肢骨格組織における組織鉄濃度は DFO 群で低下していたが、虚血側において顕著に減少していた。DHE 染色ならびに TBARS アッセイ により酸化ストレス評価を行い、虚血肢における酸化ストレスの上昇は、DFO 投与群においては抑制 された。また虚血肢における TUNEL 染色により、DFO 群においてアポトーシス陽性細胞の減少を認 めた。 【結論】DFO による虚血後血流回復の促進作用には、鉄制御による酸化ストレス低下ならびにアポト ーシス抑制も関与していることが示唆された。 K-47 ラット腸間膜動脈血管床における histamine 誘発血管反応に対する H1 受容体拮抗薬抑制 効果の差異 ○楢原由生未 1)、服部紗代 1)、小山敏弘 2)、孫 鵬遠 1)、髙取真吾 1)、川﨑博已 1) 1) 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床薬学、 2) 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 医薬管理学 【背景・目的】我々はラット腸間膜動脈血管床において histamine が H1, H2, H3 受容体を介する血管 弛緩反応を惹起することを明らかにしている。一方、histamine 誘発結膜炎モデルにおける充血反応に 対する H1 受容体拮抗薬の充血抑制効果と H1 受容体に対する選択性との間に相関が認められないこ とが報告されている。そこで今回、ラット腸間膜動脈血管床を用い、histamine 誘発血管反応に対する 3 種 H1 受容体拮抗薬(levocabastine, olopatadine, chlorpheniramine)の抑制作用について比較検討を行 った。 【方法】Wistar 系雄性ラットの腸間膜動脈抵抗血管床標本を作製し、histamine(10-8 M ~10-4 M)を低 濃度より各 1 分間灌流して灌流圧変化を測定した。同時に、3 種の各 H1 受容体拮抗薬存在下、さら に H2 受容体拮抗薬 famotidine および H3 受容体拮抗薬 clobenpropit 共存下における影響について検 討を行った。 【結果・考察】Histamine により誘発された濃度依存的な弛緩反応は、3 種の H1 受容体拮抗薬によっ て有意に抑制されたが、消失しなかった。一方、各 H1 受容体拮抗薬に famotidine を併用すると histamine 誘発弛緩反応は著明に抑制され、levocabastine ではほぼ消失した。また、olopatadine および chlorpheniramine では、famotidine に clobenpropit を併用することによって histamine 誘発弛緩反応はほ ぼ消失した。以上の検討より、H1 受容体拮抗薬は、H1 のみならず H2 および H3 受容体に対する拮 抗作用を併せ持つことで、histamine 誘発血管反応をより強く抑制できることが示唆される。 K-48 Apelin-APJ とアンジオテンシン II-AT1 受容体との新しい連関 ○孫 驍、飯田慎一郎、相崎良美、丸山敬、西村重敬、千本松孝明 埼玉医科大学 薬理学 【背景】AT1 受容体と相同性を有する7回膜貫通型 G タンバク質共役型受容体 APJ は、Apelin と結合 し生理作用を発揮する。その作用はアンジオテンシン II (AngII)-AT1 受容体作用に拮抗するものと考え られているが、コンセンサスは得られておらず、これまでの報告も臓器保護作用を示しているものも 病態促進作用を示しているものも存在する。そこで細胞実験を用いて両リガンド-受容体の作用連関 を解析した。 【 結 果 】 pcDNA5/FRT/TO-EF1α-V5-His-CMV-myc-His を 作 成 し 、 AT1-myc-His と APJ-V5-His, AT1R-myc-His, APJ-V5-His, AT1-myc-His と AT2-V5-His そして AT1-myc-His と β2AR-V5-His を HEK293 細胞に遺伝子導入した。AT1 と APJ を共発現させた HEK293 細胞に AngII 刺激をしたところ、ERK1/2 のリン酸化は AT1 単独のそれに比して有意に抑制された。 この抑制は Apelin-13 刺激により相殺された。 次に Gi 特異的抑制薬である Pertussis Toxin (PTX)を前処置したところ、Apelin-13 刺激作用は抑制され た。次に ARB(TA-606A)を用いて ERK1/2 のリン酸化抑制を検討した。AT1 単独では、30nM TA-606A は約 50%の ERK1/2 リン酸化を抑制したが、Apelin-13 非刺激 APJ 発現下では、75%と有意に増加した。 Apelin-13 刺激下では、120nM TA-606A でも 30%の抑制しか認められなかった。AT1 と AT2 そして AT1 と β2 を共発現した HEK293 細胞を用いて同様の実験を行ったが、AngII 刺激における ERK1/2 のリン酸 化に変化を認めなかった。 【結論】非刺激 APJ は内因性に Ang II-AT1 を抑制する。 K-49 Olmesartan ameliorates the impairment of renal function in aortic regurgitation model rats ○Kazi Rafiq1), Takahisa Noma2), Daisuke Nakano1), Hirofumi Hitomi1), Masakazu Kohno2), Hiroyuki Kobori3) and Akira Nishiyama1) 1) Department of Pharmacology, 2)Department of CardioRenal and Cerebrovascular Medicine, Faculty of Medicine, Kagawa University, Japan 3) Department of Physiology, Tulane University Health Sciences Center, LA, USA. 56 Chronic heart failure and chronic kidney disease often co-exist and exacerbate each other, called cardio-renal syndrome. However, the mechanisms and mediators underlying this phenomenon are not well clarified. In the current study, we aimed to investigate the potential roles of sympathetic nerves system (SNS) and intrarenal renin angiotensin system (RAS) in the pathogenesis of cardio-renal syndrome. Rats were subjected to aortic regurgitation (AR) and treated with either vehicle, angiotensin II (AngII) receptor blocker, olmesartan, or hydralazine with or without renal denervation for 6 months. AR induced left ventricular hypertrophy, cardiac dilatation and decreased fractional shortening, but did not alter systolic blood pressure. AR rats also showed glomerular podocyte injury and albuminuria, which were associated with increases in urinary angiotensinogen excretion, kidney AngII and norepinephrine levels as well as angiotensinogen gene expression, and oxidative stress in renal cortical tissues. Importantly, treatment with olmesartan or renal denervation prevented these AR-induced renal injuries, but hydralazine did not. These data support the hypothesis that SNS and intrarenal RAS are key cardiorenal connectors in mediating renal injury during the progression of cardiac insufficiency. K-50 Aldosterone induces insulin resistance via up-regulation of IGF-1 receptor and its hybrid receptor in vitro and in vivo ○Shamshad Sherajee、藤田昌子、人見浩史、Kazi Rafiq、中野大介、清元秀泰、河野雅和、 西山 成 香川大学医学部薬理学、循環器腎臓脳卒中内科 We previously showed that aldosterone induces insulin resistance in rat vascular smooth muscle cells. Since insulin-like growth factor-1 receptor affects insulin signaling in vascular smooth muscle cells, we aimed to test the hypothesis that aldosterone induces vascular insulin resistance via up-regulation of insulin-like growth factor-1 receptor and its hybrid insulin/insulin-like growth factor-1 receptor. We analyzed insulin-like growth factor-1 receptor and insulin receptors, extracellular signal-regulated kinase 1/2 and Akt using Western blot. Expressions of hybrid receptor and α-smooth muscle actin were measured by immunoprecipitation and immunofluorescence, respectively. Hypertrophy of vascular smooth muscle cells was evaluated by 3H-labeled leucine incorporation. Aldosterone significantly increased protein and mRNA expression of insulin-like growth factor-1 receptor and hybrid receptor in vascular smooth muscle cells, but did not affect insulin receptor expression. Mineralocorticoid receptor blockade with eplerenone inhibited aldosterone-induced increases in insulin-like growth factor-1 receptor and hybrid receptor. Aldosterone augmented insulin-induced extracellular signal-regulated kinase 1/2 phosphorylation. Insulin-induced leucine incorporation and α-smooth muscle actin expression were also augmented by aldosterone in vascular smooth muscle cells. These aldosterone-induced changes were significantly attenuated by eplerenone or picropodophyllin, an insulin-like growth factor-1 receptor inhibitor. Expression of hybrid receptor, azan-positive area, and oxidative stress in aortic tissue were increased in aldosterone-infused rats. Spironolactone, a mineralocorticoid receptor antagonist, and tempol, an antioxidant, prevented aldosterone-induced these changes. These data indicate that aldosterone induces vascular remodeling through insulin-like growth factor-1 receptor-dependent vascular insulin resistance. K-51 細胞内 pH と酸化ストレスを介したアンジオテンシン II によるポドサイト障害機序の解明 ○Liu Ya、Suwarni Diah,、北田研人、中野大介、人見浩史、西山 成 香川大学医学部薬理学 Angiotensin II (AngII) induces oxidative stress and apoptosis in podocytes; however, the molecular mechanism of apoptosis is unclear. Intracellular pH mediated by Na+/H+ exchanger-1 (NHE-1) is involved in apoptosis in cardiovascular system. Thus, we measured the effect of AngII on intracellular pH and apoptosis in cultured podocytes. Oxidative stress and intracellular pH change were measured with confocal microscopy using dihydroethidium and seminaphtharhodafluor, respectively. Apoptosis was evaluated by measuring caspase 3 activity and by TUNEL staining. AngII (100 nmol/L, 30 minutes) increased oxidative stress and intracellular pH in podocytes. Pretreatment with candesartan (10 μmol/L), an AngII type 1 receptor blocker, apocynin (50 μmol/L), an antioxidant, or 5-N,N-Hexamethylene amiloride (HMA) (2 μmol/L), a NHE-1 inhibitor attenuated these changes induced by AngII. Apoptosis in podocyte was augmented by AngII treatment (18hours). These inhibitors completely diminished AngII-induced apoptosis. In conclusion, AngII induced apoptosis in cultured podocytes through caspase 3 activation via oxidative stress and intracellular pH. These results offer a basis for clarifying the molecular mechanism of AngII-induced apoptosis in podocytes. K-52 ラット腸間膜動脈血管周囲神経分布に対する nicotine の影響 ○藤原秀敏 1)、萩森健太 1)、北村佳久 2)、髙取真吾 1)、川﨑博已 1) 1) 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床薬学、2)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 医薬管理学 【目的】我々は、ラット腸間膜動脈血管周囲に分布する交感神経やカルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP)含有神経などの血管周囲神経の分布が、上腸間膜動脈への phenol 局所塗布により減少し、さら に各種神経成長因子の投与により減少した神経分布が回復することを明らかにしてきた。一方、nicotine 57 には中枢神経保護作用が知られているが、末梢神経における神経保護・再分布作用は確認されていな い。そこで、ラット腸間膜動脈 phenol 局所塗布法を用いて、nicotine の血管周囲神経再分布作用につい て検討を行った。 【方法】8 週齢の Wistar 系雄性ラットを麻酔下にて開腹し、腹部大動脈から上腸間膜動脈への分岐部 に 10% phenol 溶液を局所塗布して閉腹し、nicotine(3 mg/kg/day)を 1 日 2 回、1 週間皮下投与した。対 照群として、偽手術を行った sham 群および saline を投与した phenol 群を作製した。術後 7 日目に麻酔 下にて腸間膜動脈を摘出し、tyrosine hydroxylase (TH)、neuropeptide Y (NPY)、CGRP および substance P (SP)に対する抗体を用いて免疫染色を行い、神経分布を定量した。また、摘出腸間膜動脈血管床の灌流 標本を作製し、血管反応も検討した。 【結果・考察】Phenol 処置群において、全ての血管周囲神経分布量が有意に減少した。一方 nicotine 投与により、phenol 処置群に比べて TH 含有神経の分布量は有意に増加したが、他の血管周囲神経分布 量には変化は認められなかった。また灌流標本において、phenol 処置群における交感神経性および CGRP 神経性血管反応の減弱が認められたが、nicotine 投与による影響は観察されなかった。以上の結 果、nicotine は血管周囲 TH 含有神経の再分布を促進することが示唆される。 K-53 慢性腎臓病ラットに対するNOドナーの投与により慢性腎虚血を改善することで腎機能障 害進展を抑制する可能性がある ○安藤亮太郎、上田誠二、中山陽介、甲斐田裕介、奥田誠也 久留米大学医学部 内科学講座腎臓内科部門 傍尿細管毛細血管の減少は尿細管間質の虚血に起因する血管内皮障害によって生じ、慢性腎臓病にお ける腎障害増悪の一因となっている。NOは血管拡張物質であり、傍尿細管毛細血管網の血流維持に おいて重要な役割を持つことが知られている。このため、外因性のNOドナーの投与により尿細管間 質の虚血が改善され腎保護的に作用することが期待される。しかしながら腎微小血管循環におけるN Oドナーの投与に関する報告はほとんどなく、本研究ではNOドナーとしてのisosorbide dinitrate(ISDN)を半腎摘モデルに投与することで尿細管間質の虚血が改善し得るか 検証した。 モデル動物にSprague-Dawley雄(ラット)を用い、血圧、尿中ナトリウム排泄量および 腎機能を測定。その後、sham(n=5)、半腎摘群(Nx)(n=16)に群別した後、後者につ いては術後7日目にさらに2群(Nxコントロール群(n=6)およびISDN投与群(餌食混入5 mg/kg)(n=10))に群別した。治療開始後21日目における、血圧、尿中ナトリウム排泄量 および腎機能を測定、eNOSとリン酸化eNOS(p-eNOS)をWesternblotin gにて、虚血領域をpimonidazole染色により検証した。 体重、腎重量、血圧、アルブミン尿、尿中ナトリウム排泄量はいずれも3群間において有意差を認め なかったが、Nxコントロール群ではp-eNOS/eNOS比の低下および虚血領域の拡大がみら れた。これに対してNOドナーを投与した結果、半腎摘に起因する腎機能障害(血清クレアチニン値, コントロール群;0.43mg/dl vs ISDN投与群;0.37mg/dl,p=0.01) と虚血領域の有意な改善を認めた。 NO投与は慢性腎虚血を改善することにより腎保護作用を持つ可能性が示唆され、慢性腎臓病患者に おける新たな治療戦略となり得る可能性が考えられた。 K-54 メタボリック症候群(MetS)におけるインスリン抵抗性発症機序の検討 -DDAH-ADMA の役割の検討○岩谷龍治、安藤亮太郎、中山陽介、甲斐田裕介、上田誠二、奥田誠也 久留米大学医学部内科学講座腎臓内科部門 【背景】MetS 患者ではインスリン抵抗性 (IR)が、cardio vascular disease (CVD)や chronic kidney disease (CKD)の発症に深く関与することが知られている。また、MetS 患者では血管内皮障害が認められ、IR と血管内皮障害の間には密接な関連が存在するが、その詳細については不明である。そこで今回我々 は、MetS で上昇する内皮障害因子 asymmetric dimethylarginine(ADMA)が、IR の一因であると仮定し、 以下の検討を行った。 【方法】C57BL/6J mice (n=10)に 16 週間 High fat diet (HFD)を行い MetS モデルマウスを作成し、対照群 (n=20)と血中 ADMA、また ADMA の代謝酵素である dimethylaminohydrolase-1 (DDAH-1) の全身での発 現を比較検討した。また DDAH-1 Tg (DH Tg) mice (n=5)に HFD を行い(n=9)、MetS モデルで ADMA を 低下させた場合の病態への影響を検討した。 【結果】Wild mice では HFD により、体重増加、高血糖、食事負荷直後のインスリン値の上昇を認め、 インスリン抵抗性を示していた。また、脂肪組織では脂肪サイズが肥大していた。CD31 の免疫染色で は脂肪組織における capillary density の低下を認め、それに伴い同組織において hypoxia-inducible factor (HIF)の発現亢進が観察された。ADMA は HFD 群で上昇傾向にあり、Western Blotting では肝臓、腎臓、 特に脂肪組織においては著明な DDAH-1 の発現低下が認められた。また、DH Tg mice における検討で は、ADMA は有意な低下を認め、HFD を行っても体重増加が抑制される事が観察され、更に血糖値の 低下、食事負荷直後のインスリン値の低下、脂肪サイズの縮小、免疫染色における capillary density の 改善、HIF の抑制、血清アディポネクチンの上昇が観察された。 【結論】MetS では、全身、特に脂肪組織における DDAH-1 の発現低下、それに伴う ADMA の上昇が、 58 脂肪組織における微小血管内皮障害、虚血を引き起こし、脂肪細胞の肥大やアディポサイトカインの 異常に関与し、IR の一因となっている可能性が示唆された。 K-55 遺伝子ノックダウンレベルに基づいた心筋症モデルゼブラフィッシュの機能解析 ○西村有平 1, 2, 3, 4)、梅本紀子 1)、山中裕貴子 1)、岸 誠也 1)、伊藤早紀 1)、岡森加奈 1)、 島田康人 1, 2, 3, 4)、黒柳淳哉 1)、張 孜 1)、田中利男 1, 2, 3, 4) 1 三重大学大学院医 薬理ゲノミクス、 2 三重大学メディカルゼブラフィッシュ研究センター、 3 三重大学 バイオインフォマティクス、4 三重大学 メディカルケモゲノミクス 遺伝子の生体における機能を解析する上で、ジーンターゲッティングは極めて有用な手法であり、ノ ックアウトマウスやヘテロマウスを用いて多くの重要な知見が得られてきた。しかし、遺伝子発現量 と病態が相関する場合は、標的遺伝子の発現量を調節できるノックダウン技術を用いた機能解析が必 要である。RNAi 技術は、遺伝子発現量と機能との関連性を in vitro で詳細に解析することを可能にし た。In vivo でも、マウスを用いたコンディショナル RNAi モデルが報告されているが、コストや労力 などの面で解決すべき問題が残されている。一方、ゼブラフィッシュでは、モルフォリノ(MO)と呼 ばれるアンチセンス核酸を用いて標的遺伝子の発現をノックダウンすることが容易である。標的遺伝 子の発現量は、受精卵に入った MO 量と逆相関する。我々は、蛍光色素でラベルしたコントロール MO (蛍光 MO)を、標的遺伝子に対する MO と共投与することにより、受精卵内の蛍光強度を用いて、 標的遺伝子に対する MO 量を推測できると考えた。この仮説を心筋症の原因遺伝子である cTnT に対す る MO を用いて検証したところ、リサミン MO の蛍光強度が、cTnT 遺伝子発現量と逆相関し、心不全 の重症度と正相関することを確認した。次に我々は、心拍、心拍出量をともに認め、静脈洞にうっ血 が出現するゼブラフィッシュ(cTnT 発現量がコントロールの約 30%)の心機能を、Bodipy セラミドを 用いた蛍光心臓イメージングにより解析した。その結果、この病態では、心筋拡張能の障害と、収縮 期および拡張期の心筋壁運動速度が低下していることを明らかにした。本研究で開発した手法を用い て、任意の心筋症原因遺伝子をノックダウンしたゼブラフィッシュを、遺伝子発現レベルに基づいて 分類し、各病態における心機能を解析することが可能である。 K-56 Angiotensin II diverges insulin signaling into vascular remodeling from glucose metabolism ○藤田昌子、海部久美子、人見浩史、清元秀泰、河野雅和、西山 成 香川大学医学部薬理学、循環器腎臓脳卒中内科 We examined the effect of angiotensin II (Ang II) on insulin-induced mitogen-activated protein (MAP) kinases activation and cellular hypertrophy in rat vascular smooth muscle cells (VSMCs). Cellular hypertrophy and glucose uptake were evaluated using 3H-labeled leucine and deoxy-D-glucose incorporation, respectively. Cell sizes were measured by a Coulter counter. Ang II (100 nmol/L, 18 hours) increased cellular hypertrophy by insulin (10 nmol/L, 24 hours), although insulin did not affect the hypertrophy without pretreatment of Ang II. Insulin increased the p38MAP kinase and c-Jun N-terminal kinase (JNK) phosphorylation, and in the presence of Ang II, p38MAP kinase and JNK were further activated by insulin. Treatment of a p38MAP kinase inhibitor, SB203580 (10 μmol/L), and a JNK inhibitor, SP600125 (20 μmol/L), abrogated the 3H-labeled leucine incorporation by insulin in the presence of Ang II. An Ang II receptor blocker, RNH-6270 (100 nmol/L), and an antioxidant, Ebselen (40 μmol/L), inhibited vascular cell hypertrophy by insulin. Specific depletion of insulin receptor substrate-1 with siRNA increases 3H-labeled leucine incorporation by insulin without Ang II. Furthermore, pretreatment with Ang II attenuated the insulin-induced glucose uptake and increased cell size. These data indicate that Ang II attenuates insulin-stimulated glucose uptake and enhances vascular cell hypertrophy via oxidative stress- and MAP kinase-mediated pathway in VSMCs. Thus, Ang II may cause insulin signaling to diverge from glucose metabolism into vascular remodeling, which may be involved in insulin-induced arteriosclerosis in hypertension. K-57 内因性ナトリウム利尿ペプチドの尿細管障害や間質線維化への関与 -グアニリルシクラーゼ-A(GC-A)欠損および内皮特異的 GC-A 強発現マウスでの検討- ○吉原史樹 1)、徳留 健 1,2)、岸本一郎 3)、堀尾武史 1)、河野雄平 1)、寒川賢治 2) 1) 国立循環器病センター内科 高血圧・腎臓科、2)国立循環器病センター研究所、 3) 国立循環器病センター内科 糖尿病・代謝内科 【目的】アンギオテンシン II(Ang II)を GC-A 欠損マウス(GC-A-KO)および内皮特異的 GC-A 強発 現マウス(GC-A-Eup)に持続投与(1.0 mg/kg/day)し、内因性ナトリウム利尿ペプチドの意義を検討 した。 【方法と結果】7 群を作成(Wild-Saline, Wild-Ang II, GC-A-KO-Saline, GC-A-KO-Ang II, GC-A-KO-Ang II-Hydralazine, GC-A-Eup-Saline, GC-A-Eup-Ang II)し、生理食塩水および Ang II は浸透圧ミニポンプを 用い、3週間皮下投与した。ヒドララジンは飲水に添加した(0.05 g/L)。収縮期血圧は、Wild-Saline と比べて GC-A-Eup-Saline で低値であり、GC-A-KO-Saline で高値あった。GC-A-KO-Saline で Wild-Ang II、GC-A-KO-Ang II-Hydralazine、GC-A-Eup-Ang II とほぼ同レベルであり、GC-A-KO-Ang II で他の 6 59 群より高値であった。尿細管細胞萎縮や間質線維化は GC-A-KO-Ang II で Wild-Saline、Wild-Ang II、 GC-A-KO-Saline、GC-A-Eup-Saline、GC-A-Eup-Ang II より有意に亢進し、ヒドララジンで抑制されな かった。GC-A-Eup-Ang II では Wild-Saline と同レベルであった。Ang II による髄質集合管の MCP-1、 間質の F4/80・α-SMA の発現亢進、尿細管細胞の E-cadherin 発現低下は GC-A-KO で増強した。 【結語】内因性ナトリウム利尿ペプチドは Ang II による尿細管萎縮、間質線維化、尿細管細胞と線維 芽細胞の形質転換を抑制する作用を有する可能性が示唆された。 K-58 血管周囲神経における 5-Hydroxytryptamine (5-HT) の動態と神経機能に及ぼす影響 ○高取真吾 1)、藤井裕士 1)、原 直之 1)、座間味義人 2)、川﨑博己 1) 1) 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 臨床薬学、 2) 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 医薬分子設計学 【目的】我々は、5-HT が血管周囲交感神経終末に取り込まれること、取り込まれた 5-HT が経壁電気 刺激(PNS)により遊離され、血管収縮を惹起することを報告している。血管周囲神経には交感神経の ほか、血管拡張性の CGRP 作動性神経が分布しているが、CGRP 神経機能に対する 5-HT の影響につい ては検討されていない。今回、ラット腸間膜動脈血管床を用いて、血管周囲神経における外因性 5-HT の動態を免疫組織化学的に検討し、PNS により交感神経から遊離させた 5-HT の CGRP 神経機能に及 ぼす影響についても検討した。 【方法】Wistar 系雄性ラット腸間膜動脈血管床の灌流標本を作成し、Krebs 液を一定流量で灌流し、灌 流圧を血管緊張度変化として測定した。内皮細胞除去後、methoxamine にて灌流圧を上昇させ、PNS(1-4 Hz)による灌流圧の変化を血管反応として観察した。また、5-HT(1 µM)を灌流処置した後、5-HT 非存在下に PNS を行い、弛緩反応の変化を検討した。また、腸間膜動脈血管周囲神経における 5-HT の分布を免疫組織化学的に検討した。 【結果・考察】PNS により一過性の交感神経性収縮反応とそれに続く持続性の CGRP 神経性弛緩反応 が観察された。5-HT 処置後、PNS による CGRP 神経性弛緩反応は有意に抑制されたが、guanethidine または 5-HT 受容体拮抗薬存在下では、5-HT による CGRP 神経性弛緩反応の抑制はほぼ消失した。 Desipramine+5-HT 処置標本では、CGRP 神経性弛緩反応に変化はなかった。腸間膜動脈の 5-HT 処置 によって 5-HT 免疫陽性線維の分布が観察されたが、desipramine+5-HT 処置では観察されなかった。 以上の結果より、5-HT は交感神経終末に取り込まれ、PNS により遊離された 5-HT は CGRP 神経機能 を抑制することが示唆される。 K-59 血管内皮損傷後新生内膜形成に小胞体ストレスが関与する ○石村周太郎、古橋眞人、太田英喜、吉田英昭、三浦哲嗣 札幌医科大学 内科学第二講座 【背景】冠動脈疾患に対するカテーテル治療の合併症として、血管内皮傷害による新生内膜増生を伴 う再狭窄が挙げられる。抗血小板薬の使用や薬剤溶出性ステントの出現により頻度は減少したものの、 再狭窄の問題が克服されたとはいえない状況である。一方、小胞体はタンパク質の品質管理をするオ ルガネラとして重要な役割を果たしている。様々なストレスにより UPR (unfolded protein response)と呼 ばれる適応反応を示し、これが種々の病態と関連することが示されている。 【方法】7-8 週齢の C57BL/6J マウスに対し、大腿動脈にワイヤーを挿入することで内膜を剥離して新 生内膜の増生を誘導した。4 週間後に大腿動脈を採取し、各種小胞体ストレスマーカーを免疫組織化学 的染色で評価した。さらに、ヒト冠動脈平滑筋細胞 (CASMC)に血小板由来増殖因子 (PDGF)を作用さ せ、ケミカルシャペロンである 4-PBA (4-phenyl butyric acid)の有無で増殖能と UPR を MTS、ウェスタ ンブロットおよび定量的 PCR 法で検討した。 【結果】ワイヤー傷害により、α-SMA 陽性の新生内膜の増生を認めた。同部位に小胞体シャペロンで ある GRP78 (glucose-regulated protein 78)、GRP94、PDI (protein disulfide isomerase)に加え、UPR 活性化 マーカーであるリン酸化された IRE1α (inositol-requiring 1α)や eIF2α (eukaryotic initiation factor 2α)の陽性 細胞を認めた。CASMC においては、PDGF により細胞は増殖し、ERK (extracellular signal-regulated kinase) の活性化と共に小胞体シャペロンの誘導と UPR の活性化を認め、4-PBA はこれらを抑制した。 【結語】機械的な血管傷害時の新生内膜形成に小胞体ストレスの関与が示唆された。小胞体ストレス は、冠動脈インターベンション後の再狭窄に対する新たなターゲットとなる可能性が考えられた。 K-60 心筋ミオシン軽鎖キナーゼの生化学的性状解析 ○谷口正弥、岡本隆二、後藤 至、藤田 聡、小西克尚、中村真潮、伊藤正明 三重大学大学院 医学系研究科 病態制御医学講座 循環器・腎臓内科学 心筋ミオシン軽鎖(cardiac myosin light chain, c-MLC)のリン酸化反応は、心肥大及び張力のカルシウム感 受性に関係している。c-MLC をリン酸化する酵素として、近年、心筋ミオシン軽鎖キナーゼ(c-MLCK) が同定された。今回我々は、c-MLCK の生化学的性状解析を行った。マウス c-MLCK をバキュロウイ ルス発現系にて精製し、平滑筋ミオシン軽鎖キナーゼ(sm-MLCK)との酵素学的な差異について検討し た。c-MLCK は sm-MLCK と比較し、MLC2v(心室型 MLC)に対する親和性が高いものの(Km=7.44 vs. 14.22μM)、キナーゼ活性は sm-MLCK よりも著明に低値であった(Vmax: 6.1 vs. 860.0 nmol/min/mg)。 60 また c-MLCK の MLC2vに対する反応は Ca2+/カルモデュリン依存性で、非存在下と比べ、3.47倍キ ナーゼ活性が上昇した。リン酸化部位と思われる Serine を Alanine に置換した MLC2v を作成し、リン 酸化アッセイを行ったところ、Ser15Ala の MLC2v においてリン酸化反応は全く認められず、リン酸化 部位は Ser15 と判明した。また、ラット培養心筋細胞にて細胞内局在を検討したところ、c-MLCK 及 び sm-MLCK は共に細胞質や核周囲にびまん性に存在しており、ウエスタンブロットを用いた蛋白定 量にて c-MLCK は sm-MLCK よりも心室では 10 倍以上発現レベルが上昇していることが確認された。 以上より c-MLCK は sm-MLCK よりもキナーゼ活性は低いものの、c-MLC に対する高い親和性を有し、 細胞内に豊富に存在することで、c-MLC のリン酸化を制御している可能性が示唆された。 K-61 Role of epidermal growth factor receptor transactivation in cellular signaling mediated by (pro)renin receptor ○柴山弓季、劉 鋼、中野大介、人見浩史、市原淳弘、伊藤 裕、西山 成 香川大学医学部薬理学、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科抗加齢内分泌学講座 We revealed that prorenin directly stimulates proliferative and hypertrophic signaling pathways following binding to the (pro)renin receptor in rat vascular smooth muscle cells (VSMCs). Prorenin directly induces VSMC proliferative and hypertrophic changes through epidermal growth factor (EGF) receptor-mediated extracellular signal-regulated kinase (ERK) 1/2 and Akt signaling pathways. In the present study, we examined the roles of EGF receptor transactivation, focusing on three phosphorylation sites, Tyr992, Tyr1068, Tyr1086, in (pro)renin receptor-mediated signaling pathway in HEK 293 cells. HEK 293 cells were treated with 20 nmol/L human recombinant prorenin for various times, and EGF receptor phosphorylation on Tyr992, Tyr1068 and Tyr1086 was determined by Western analysis using phosphospecific antibodies. First, we confirmed the expressions of (pro)renin receptor and EGF receptor in HEK 293 cells. EGF receptor phosphorylation on Tyr 992 induced by prorenin was observed in biphasic response. Later phosphorylation on Tyr 992 was inhibited by Ang II type 1 blocker, candesartan (100 nmol/L), although earlier phosphorylation was not inhibited by candesartan. Prorenin induced weak phosphorylation on Tyr 1068 compared with Tyr 992. In addition, prorenin did not affect EGF receptor phosphorylation on Tyr 1086. Prorenin augmented Src phosphorylation in HEK 293 cells. Pretreatment with a Src kinase inhibitor, PP1 (20 μmol/L), significantly inhibited prorenin-induced EGF receptor phosphorylation. We conclude that phosphorylation of sites Tyr992 and Tyr1068 of EGF receptor is involved in prorenin-mediated signaling pathway. K-62 妊娠高血圧症候群における胎盤(プロ)レニン受容体発現量と血圧・蛋白尿との関係 ○成田達哉、原 淳弘、迫田万里代、三戸麻子、木内謙一郎、木田可奈子、伊藤 裕 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科抗加齢内分泌学講座 【背景】(プロ)レニン受容体は脳・心臓・腎臓・肝臓・血管平滑筋・脂肪組織など重要臓器に分布し、 プロレ二ンと(プロ)レニン受容体の結合が組織 renin-angiotensin system 活性化と細胞内シグナル亢進 を介して臓器障害に関与する。(プロ)レニン受容体は胎盤にも存在することが証明されているが、正常 妊婦の血中プロレ二ンはレニンの 200 倍以上も高値であるにもかかわらず、臓器障害を来たすことは なく血圧も正常である。しかし、妊娠高血圧症候群(PIH)合併妊婦では胎盤中プロレ二ン濃度が上昇し ており、胎盤(プロ)レニン受容体が PIH 病態に関与する可能性が考えられる。 【目的】PIH の病態における胎盤組織中の(プロ)レニン受容体発現が血圧や臓器障害に関連するかどう かを明らかにする 【方法】同意の得られた正常妊婦(n=8)と PIH 合併妊婦(n=8)より、分娩直前の血漿と分娩後の胎盤組織 を採取し、血漿レニン/プロレニンを ELISA 法で、胎盤組織(プロ)レニン受容体を western blot 法で定 量測定した。得られた結果と血圧や蛋白尿を含む臨床データとの関係を検討した。 【結果】血漿レニン/プロレニン濃度比は正常妊婦に比べ PIH 合併妊婦で低下傾向であったが、本研 究における胎盤(プロ)レニン受容体発現量は、正常妊婦、PIH 合併妊婦間で有意な差はなかった。しか し、PIH 患者において、胎盤組織(プロ)レニン受容体発現は収縮期血圧との間に負の相関関係を、蛋白 尿との間に正の相関関係を示した。 【結論】胎盤におけるプロレニン、(プロ)レニン受容体は、PIH における血圧や腎臓障害の重症度を修 飾する可能性が示唆された。 K-63 (プロ)レニン受容体の切断機構と細胞内輸送 ○相崎良美 1)、吉河 歩 1)、飯田慎一郎 2)、丸山 敬 1)、村松俊裕 2)、西村重敬 2)、 千本松孝明 1) 1) 埼玉医科大学 薬理学、2)埼玉医科大学 国際医療センター 心臓内科 【背景】(プロ)レニン受容体は、2002 年に同定されたレニン・アンジオテンシンシステムの新しい構 成分子である。 (プロ)レニン受容体はプロレニンに結合し、プロレニンのプロドメインを切断するこ 61 となくレニン活性を持たせる。我々は、(プロ)レニン受容体が膜貫通領域近傍の細胞外領域にて切断を うけることを見出しており、その細胞内局在について解析を行った。 【結果】カルボキシル末端に Venus を標識したヒト(プロ)レニン受容体の安定発現細胞を作製した。そ の細胞抽出物を用いてウェスタンブロットを抗 GFP 抗体で施行したところ、68kDa と 35kDa に全長と カルボキシル末断片の 2 つのバンドが描出され、恒常的に(プロ)レニン受容体が切断を受けていた。 Subcellular fraction assay にて細胞内局在を調べたところ、全長は小胞体に局在し、カルボキシル末断片 はゴルジに局在していることが判明した。更に Brefeldin A 処理により全長(プロ)レニン受容体タン パク質が消失し、切断断片のみとなった。Brefeldin A はゴルジ体タンパク質を小胞体へと強制的に逆 行輸送を誘発することから、(プロ)レニン受容体はゴルジにて切断されていることが判明した。細胞外 に分泌された N-末側断片は、 細胞上清中に 29kDa に確認され、 プロレニンのレニン活性を上昇させた。 一方、一部細胞外領域の欠損したΔ4(プロ)レニン受容体は切断領域があるにもかかわらず切断されず、 ER に留まっていることが判明した。 【結論】(プロ)レニン受容体は、細胞内小器官の1つである ER では全長で存在し、ゴルジで切断を受 け、N-末断片は分泌されプロレニンのレニン活性を誘導する。ところがΔ4(プロ)レニン受容体は ER に留まり切断を受けない。これらのことより細胞外領域はプロレニンの活性化だけでなく、細胞内輸 送においても重要な機能を有していることが示唆された。 K-64 メタボリックシンドロームにおける減量療法がもたらすインスリン抵抗性の改善と血中プ ロレニンの関連 ○清元秀泰1)、市原淳弘2)、鈴木文昭3)、藤田昌子4)、山本 恵4)、西島陽子4)、 祖父江理4)、海部久美子4)、中野大介5)、原 大雅4)、人見浩史5)、森 建文1)、 伊藤貞嘉1)、西山 成5) 1) 東北大学病院腎高血圧内分泌科、2)慶応大学医学部抗加齢医学、 3) 岐阜大学応用生物科学部動物生化学研究室、 4) 香川大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科、5)香川大学医学部薬理学 【緒言】近年、本邦では生活習慣の欧米化に伴いメタボリック・シンドローム(MS)が増加しており、 早期発見と積極的な介入が求められている。MS や糖尿病のもたらす血管系障害や腎障害にはレニン・ アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の関与することが知られており、特に糖尿病では早期 から血中プロレニンの上昇が臓器障害に関与している可能性が示唆されている。今回、積極的な減量 治療のインスリン抵抗性改善とプロレニンを含む RAA 系に及ぼす効果について検討した。 【方法】医学的に減量が必要な MS 患者 60 名に対して、文章による同意取得の上、抽選によって運動 療法(E)群、食事療法(D)群、両者の併用療法(E+D)、自己努力(S)群の 4 群に振り分けた。参 加者全員に食事手帳の記載と歩数計の着用を義務付け生活習慣をモニターし、更に E 群は週 2 回のス ポーツ・インストラクターによる直接指導、D 群にはカロリー・コントロール食品の摂取と定期的な 管理栄養士による指導、E+D 群は両者を併用し、S 群は自己流ダイエットを励行した。MS の改善度は、 試験前後(6 週間)での身体計測と食事負荷試験を含む血液・尿検査で評価した。 【結果】S 群以外は有意な体重減少とインスリン抵抗性の改善を認めた。両者併用群では有意なインス リン抵抗性の改善とインクレチンである GLP-1 や glucagon の低下を認めた。血中プロレニンは減量方 法にかかわらずほぼ全例に低下を認め、HOMA-R 指数の低下率と正相関していた。 【結論】MS における減量療法は、血中プロレニンの低下とともにインスリン抵抗性の改善を促進する。 MS の臓器障害には高インスリン血症のみならずプロレニンも関与している可能性が示唆された。 K-65 血漿・尿中(プロ)レニン受容体可溶性成分の検討 ○廣瀬卓男、戸恒和人、森 信芳、菊谷昌浩、大久保孝義、高橋和広、今井 潤 東北大学大学院薬学研究科医薬開発構想寄附講座 【目的】(プロ)レニン受容体[(P)RR]は、レニンおよびその前駆体であるプロレニンをリガンドとする アミノ酸 350 残基からなる 1 回膜貫通型の受容体である。(P)RR は、プロレニン/レニンと結合しレニ ン・アンジオテンシン系を賦活するとともに、細胞内シグナル伝達機構の ERK1/2 を介して TGF-β 等 の産生を促進し、臓器の繊維化に関与する。加えて、最近、レニンを用いた共沈法により、28 kDa の (P)RR 可 溶 性 成 分 が ヒ ト 及 び ラ ッ ト 血 漿 中 に 存 在 す る 可 能 性 が 報 告 さ れ た (Hypertension 2009;53:1077-82)。今回我々は、ヒト血漿及びラット血漿・尿を用いての(P)RR 可溶性成分の存在をウ エスタンブロット法により検討した。 【方法】ヒト及びラット血漿は 1 μL を使用し、ラット尿は 5 μL を使用した。サンプルを SDS-PAGE により分離し、ウエスタンブロットにより(P)RR 可溶性成分を同定した。一次抗体として、(P)RR 膜貫 通部位外側近傍のアミノ酸配列(ヒト(P)RR 224-237 残基)を抗原として作製した既報の抗(P)RR 抗体 (Peptides 2010;30:2316-22)を 1:5000 希釈にて用いた。 【結果】ヒト血漿より、100 kDa 以上の領域に(P)RR 可溶性成分様のシグナルが得られた。しかし、28 kDa 付近に(P)RR 可溶性成分様のシグナルは得られなかった。一方、ラット血漿より、25-30 kDa と 100 kDa 以上の 2 つの(P)RR 可溶性成分様シグナルが得られた。 また、ラット尿より、25-30 kDa と 80-100 kDa に 2 つの(P)RR 可溶性成分様シグナルが得られた。これらのシグナルは、抗原エピトープを用いた吸収 62 試験により消失した。 【結論】(P)RR 可溶性成分がヒト及びラット血漿に存在し、多量体を形成している可能性が示唆された。 血漿中(P)RR 可溶性成分を測定することにより、(P)RR が臓器障害の新たなマーカーとなる可能性が示 唆された。 K-66 活性型レニンおよび(プロ)レニン受容体の糸球体内局在の病態による変化 ◯上田訓子 1)、島村芳子 1)、緒方巧二 1)、井上紘輔 1)、谷口義典 1)、香川 亨 1)、 降幡睦夫 2)、市原淳弘 3)、西山 成 4)、寺田典生 1) 1) 高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科学講座、2)高知大学医学部 病理学講座、 3) 慶応義塾大学医学部 抗加齢内分泌講座、4)香川大学医学部 薬理学講座 【目的】活性型レニン[AR]および(プロ)レニン受容体[(P)PR]は組織 RAA 系の重要な因子であ るが、各種糸球体病変における局在の変化は不明であり、腎生検検体および培養ヒトメサンジウム細 胞を用いてその局在を検討した。 【方法】高知大学倫理委員会で承認後、IC を得た 19 例の腎生検検体(IgA 腎症 7 例、DM 腎症 4 例、 微小変化群 8 例)を共焦点顕微鏡にて AR, (P)RR とネフリンの抗体で二重染色した。培養細胞での AR の細胞内局在を検討した。 【結果】IgA 腎症においては(P)PR、AR ともにメサンジウム領域で強く染色された。DM 腎症において は(P)PR、AR ともにメサンジウム領域だけでなくポドサイトでも染色が認められた。微小変化群では 両者の染色性は弱い傾向があった。培養メサンジウム細胞では AR は小胞体マーカー及びゴルジ体の マーカーと共染色された。 【結論】AR および(P)PR は各種糸球体病変において発現パターンが異なり、病態に関与する可能性が ある。 K-67 p53 の標的遺伝子 Sestrin2 は急性腎障害において誘導され近位尿細管細胞の Autophagy を引 き起こす ◯濱田佳寿、石原正行、島村芳子、上田訓子、緒方巧二、井上紘輔、谷口義典、香川 亨、 寺田典生 高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科学講座 【はじめに】Autophagy は様々なストレスから生体を保護するシステムの 1 つである。過去に我々はマ ウスの急性腎障害(AKI)において Autophagy が生じることを報告した。また、近年 p53 の標的蛋白で ある Sestrin2 が骨肉腫の細胞を Autophagy に導くことが報告されて、酸化ストレス時での Autophagy を 誘導に Sestrin2 の関与が推察されるが、Sestrin2 の AKI における具体的な役割については知られていな い。 【目的】Sestrin2 の AKI における役割について評価を行なうために、ラット虚血再潅流モデルおよび培 養尿細管細胞を用いて実験を行なった。 【方法】虚血再潅流モデルラットの腎臓における、Sestrin2 の経時的な発現の変化を調べた。また、尿 細管培養細胞を用いて過酸化水素や低酸素条件下での Sestrin2 の発現について評価した。更に LC-Ⅲ -GFP 安定発現細胞を用いて、Sestrin2 を遺伝子導入、発現させることにより Autophagy の発現の有無 についての評価も行なった。 【結果】虚血再潅流モデルラットでは、虚血後 6 時間をピークとして Sestrin2 の近位尿細管細胞におけ る発現増加が確認された。尿細管細胞においてはストレス下において、Sestrin2 の RNA および蛋白レ ベルでの誘導が認められた。また Sestrin2 の遺伝子導入により、Autophagy が誘導されることを確認し た。 【結語】Sestrin2 は傷害された尿細管細胞を Autophagy に誘導し、AKI において重要な働きを有するこ とが示唆された。 K-68 Acute Kidney Injury(AKI)における ADMA の役割の検討 ○中山陽介、上田誠二、安藤亮太郎、甲斐田祐介、岩谷龍治、深水圭、奥田誠也 久留米大学病院 内科学講座腎臓内科部門 【目的】AKI の問題の1つとして、たとえ AKI から回復したとしても、長期的にみると CKD への進 展や ESRD となるリスクが高いことが報告されたが(JAMA 2009)、いまだ CKD との関連は不明な点 も多い。ADMA は循環血中にも存在する L-arginine analogue であり、NO 産生を阻害することにより組 織障害に関与する。これまで我々は CKD で蓄積した ADMA が心血管病の発症のみならず、腎微小血 管網のホメオスターシスを破綻させることにより腎障害の進展に寄与することを報告してきた。一方、 これまで AKI では尿細管細胞障害が病態の主体であると考えられてきたが、近年傍尿細管毛細血管に おける血流異常・内皮障害も AKI の病態に深く関与することが明らかとなってきている。最近、ADMA の上昇が移植腎の腎生着や腎予後に深く関与することが報告された(Kidney Int 2010)。そこで今回我々 は、CKD のみならず、AKI の進展にも ADMA による内皮障害が寄与しているとの仮説を立て、以下 63 の検討を行った。 【方法】8 週齢の C57BL/6Jmice に、生食(対照群, n=15)、あるいは全身血圧に影響しない量の ADMA(0.01mg/kg/min) を 皮 下 ポ ン プ に て 持 続 投 与 し た 群 (ADMA infusion; n=10) 、 dimethylarginine dimethylaminohydrolase-I (DDAH-I; ADMA の分解酵素) transgenic mice ( DDAH Tg; n=5)群にそれぞれ虚 血再潅流(IR)を行い、IR 後の微小血管網、腎組織障害、腎機能への影響を比較検討した。 【結果】まず対照群において IR における DDAH-ADMA 系の動態を確認したところ、早期より腎にお ける DDAH-I の発現が著明に低下し、それに伴い循環血中の ADMA が高値になることが観察された。 次に IR 時に上昇した ADMA の役割の詳細を明らかにするため、ADMA infusion 群、DDAH Tg 群に IR を惹起し、ADMA の増減が AKI に及ぼす影響を検討した。ADMA infusion 群では、血中 ADMA は増 加し、微小血管網の障害が対照群と比較してさらに増強し、それに伴い間質障害、腎機能が増悪する ことが観察された。DDAH Tg 群では ADMA の低下に伴い、これらの変化が軽減することが観察され た。 【結語】DDAH-ADMA 系は AKI の病態に深く関与し、AKI やその後の腎障害のリスクの予期因子とし て、また新たな治療標的となり得る可能性が示唆された。 K-69 Rho 依存性転写共役因子 MRTF-A による血管リモデリング制御 ○南 丈也、桑原宏一郎、中川靖章、木下秀之、宇佐美覚、山田千夏、桒原佳宏、 中尾一泰、柴田純子、錦見俊雄、中尾一和 京都大学大学院医学研究科 内分泌代謝内科 心脈管病において Rho-ROCK シグナル伝達経路は細胞の増殖・遊走・分化に関与し重要な働きを担う。 最近、Rho-ROCK シグナルの活性化は MRTF-A の核内移行を促進し、血管平滑筋細胞の分化、増殖に 重要な転写因子 SRF を活性化することが示された。病的血管における MRTF-A の役割を、本研究では 2 種類の血管障害動物モデルを使用して検討した。野生型マウスの大腿動脈ワイヤー障害モデルにおい て障害側では非障害側に比べ MRTF-A の遺伝子発現が有意に上昇し、その family 蛋白である MRTF-B や Myocardin の遺伝子発現は逆に低下していた。ワイヤー障害による新生内膜増殖は MRTF-A-/-マウス は野生型マウスに比べ有意に少なかった(neointima to media ratio: 1.53±0.14 in MRTF-A+/+ versus 0.99± 0.13 in MRTF-A-/-, p<0.05)。また MRTF-A-/-;ApoE-/-マウスの動脈硬化病変は MRTF-A+/+;ApoE-/-マウスよ り有意に少なかった(% area of atherosclerotic lesions: 11.4% in MRTF-A+/+; ApoE-/- versus 2.8% in MRTF-A-/-;ApoE-/-, p<0.05)。細胞遊走に関与する MMP-9 や vinculin などの SRF 標的遺伝子の障害血管 における発現は MRTF-A-/-マウスでは野生型マウスに比べ低下していた。培養ラット大動脈平滑筋細胞 における MRTF-A ノックダウンは、PDGF-BB やウシ胎仔血清による増殖・遊走、および MMP-9 や vinculin 遺伝子発現を有意に抑制した。以上の結果から MRTF-A は平滑筋細胞の遊走能制御を介して血 管リモデリングに重要な働きを担っている事が示された。 K-70 血管平滑筋細胞におけるアルドステロンのオステオポンチン誘導作用の分子機序 ○長田太助 1,2)、清末有宏 2)、平田恭信 2) 東京大学大学院医学系研究科 分子血管病態 1)、 東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学 2) 【背景・目的】RALES 試験や EPHESUS 試験などの大規模臨床試験でも、心不全患者に対して ACE 阻 害薬など標準治療に加えてミネラロコルチコイド受容体(MR)拮抗薬が予後を改善することが示され、 MR 拮抗薬の臓器保護効果が示唆された。一方、アルドステロン(Aldo)はオステオポンチン(OPN)の 産生を増やすこと、OPN はアスパラギン酸を高率に含み MMP による cleavage site を持つ蛋白であるこ とは知られているが、OPN の血管病変形成への関与について詳細は不明である。今回は血管平滑筋細 胞における Aldo の OPN 産生亢進作用と、OPN を介した血管系への作用について検討をした。 【結果】Aldo は用量依存的に OPN の産生を増加するが、刺激後 6 時間後から優位に増加し、24 時間 後の遺伝子発現は 2.5 倍に増加した。この増加はエプレレノンにより優位に抑制された。OPN のプロ モータの転写活性を評価したところ、-1599bp と-1300bp の間にある GRE の関与が最も大きかった。同 部位の DNA フラグメントをプローブとして行った EMSA では、Aldo 刺激で優位に核抽出蛋白とプロ ーブの複合体形成が増加したが、エプレレノンで優位に抑制された。またコルチゾールによる刺激で は優位な増加は見られなかった。 また Aldo で刺激後の核抽出蛋白と DNA 複合体は抗 MR 抗体では super shift するが、抗 GR 抗体ではしなかったことから、Aldo が MR 作用した際に特異的に OPN の遺伝子発 現が効率良く増加することが示された。また麹菌で産生した OPN で血管平滑筋細胞を刺激するとの c-Src のリン酸化が刺激 90 分後に約 5 倍増化することより、この経路が血管炎症に一部関与している 可能性が示唆された。 【結論】血管平滑筋における Aldo 誘導性 OPN 発現亢進の分子機序と血管炎症への関与の一部が明ら かとなった。 64
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