米国における船員留置について −警備員配置を要求される可能性をどの

米国における船員留置について
−警備員配置を要求される可能性をどのように軽減するか
ご既承のとおり、9・11 テロ以来、海運業界では安全対策の強化やそれにかかる費用が
増加しています。これは今後も当分続くでしょう。米国に配船している船主や用船者に
とって懸念されることは、米国当局−税関・国境取締局(以下 CBP)又は、沿岸警備
隊(以下 USCG)−が、船舶に警備員の手配を命じる可能性があることです。特に、
米国の査証を所持していない船員が乗船している場合にはその可能性が高くなります。
これは決して避けられないものではありませんが、米国入港時に米国の有効な査証を所
持していない船員は船内留置される可能性があり、船舶が米国の領海内にいる間は、
CBP や USCG がそのような船員を監視するために警備員を付けるよう命じる可能性が
高まります。警備員にかかる費用は幅広く、停泊が 1 日や 2 日の短い場合には
US$1,000∼US$2,500 で済みますが、例えば、ミシシッピ川へ向かい穀物倉庫で揚げ
荷のため数週間停泊した場合には何万ドルもかかることもあります。本稿では、米国へ
入港する際に当局から警備員の手配を命ぜられるリスクを軽減するために、何をすべき
かという点について考察します。
CBP によると、米国以外の港から米国に入国する一時渡航の船員で、有効な査証−”D”
Visa−を所持していない場合には、
「条件付上陸不適格」となり CBP の検査官が留置
もしくは国外退去を命じることになり、これにかかる費用は運送人負担となります。言
い換えれば、条件付上陸の許可を得るためには、一時渡航の船員は、まず 1)有効なパ
スポートまたは船員手帳を所持し、且つ、2)D タイプの有効な米国査証を併せて所持
している必要があります。しかし、カナダとバミューダ市民に限っては、特定の条件を
満たせばこれの除外となります。米国領海内にいる間、船内留置を命ぜられた船員には、
1 名以上の警備員が監視に付くことになります。経験上、以下の場合にも留置を命ぜら
れることがあります。
1. CBP にハイリスクとみなされた船員がいる場合には、CBP から要請をされた
USCG の Captain of the Port(以下 COTP)が COTP Order を発行し、船員は
船内で待機のうえ警備員の監視下に置かれる。
2. USCG Port Security Advisory で述べられているように、船舶が USCG の規定す
る安全対策をとっていない港や国に寄航した場合、米国領海内で警備員の手配を命
ぜられることがある。
3. Maritime Transportation Security Act of 2002(以下 MTSA)や International
Ship and Port Facility Code(以下 ISPS)といった規則遵守の確認のため USCG
が乗船し、遵守していないとみなされた場合には米国領海内で警備員の手配を命ぜ
られることがある。
加えて、船籍、船舶の大きさ、船種、所有者、船舶管理者、運航者、用船者、寄港地、
積荷、船舶関係者の CBP や USCG 事件や違反履歴、本船上の備え付け書類(又はその
不備)、安全対策、といった船舶/船員/積荷に関するあらゆる情報が、米国当局が警備
員の手配を命じるか否かの判断基準となります。この基準は公開されていないため、先
に挙げた項目が重要になると考えます。
船員を留置にかかる費用や船舶の遅延は相当な額になることから、リスクを抑えるため、
組合員の皆様におかれては、以下の点を遵守することを推奨します。
1. MTSA や ISPS の規則に加え、米国領海内に入る前及び領海内では、関係のある全
ての国際法、米国法、規則、国際協定を厳守する。
2. 米国入港前にテロ対策が十分でない港(別紙の USCG Port Security Advisory ご
参照)に寄航した場合、当該寄港地において Port Security Advisory の条項を遵
守したことを証明するための必要書類を提出する。さらに USCG に対し「十分な
安全対策をとっている」ことを証明するための準備をし、Port Security Advisory
に述べられている安全対策がとられている報告書を提出するべきである。
3. 重要なことは、全ての船員が米国入国のために必要な書類、即ち有効なパスポート
または船員手帳、且つ、有効な米国査証を所持する。
4. 船員は CBP や USCG の職員に十分協力し、要求のあった情報や書類を提供する。
船員の米国査証取得に関わる費用や手続きは面倒ですが、警備員の費用や船舶の出港が
遅れる可能性を考慮すると、より重要であると考えます。
上記の点を遵守することで、CBP や USCG に警備員の手配を命ぜられることを避けら
れると考えられます。
本件に関するご質問がありましたら、当組合までご連絡ください。
Charles L. Whited, Jr.
Murphy, Rogers, Sloss & Gambel
以上