第11回「排出事業者は誰?(排出事業者を特定する基本的な考え方)」

第11回「排出事業者は誰?(排出事業者を特定する基本的な考え方)」について
今号は、排出事業者を特定するための基本的な考え方について、解説致します。
1)建設工事に伴って発生した廃棄物
平成22年の廃棄物処理法改正によって、建設廃棄物の排出事業者の定義が法律上に明
記され、発注者から直接注文を受けた建設事業者、つまり「元請業者」が排出事業者と規
定されました(廃棄物処理法第21条の3)。
平成22年改正により、ごく一部の例外を除き、下請業者が排出事業者として行動でき
るケースがなくなりました。そのため、下請の立場で関与している現場の廃棄物について
は、産業廃棄物処理業の許可がないと運搬や処理ができません。
また、元請業者には、排出事業者として委託基準の厳格な遵守が求められていますので、
産業廃棄物収集運搬業の許可を持たない下請業者に廃棄物の運搬などを委託すると、無許
可業者への委託をしたことになり、廃棄物処理法で重く処罰されることになります。
2)使用済み製品を無償で下取り回収した場合
商慣習として、新品の製品を買ってもらう代わりに、それまで使っていた旧製品を無償
で引き取る行為を「下取り」と言います。そうして引き取られた使用済み製品の処理責任
を負うのは誰なのでしょうか?
平成12年に当時の厚生省が、「下取り回収された廃棄物は、それを回収した製造事業者
が排出事業者として適切に処理すること」という通知を出しています。そのため、本来の
製品ユーザーではなく、下取り回収した製造事業者または販売事業者が排出事業者となり
ます。
下取り回収の際の注意点としては、
① 旧製品の回収は、新品の販売と同時でなくても良い。
② 下取り回収ができるのは、製造事業者または製品の販売事業者のみで、運送業者にまで
廃棄物の回収を認めるものではない。
というものがあります。
3)倉庫から発生する廃棄物
倉庫で保管していた物品が廃棄物となった場合、排出事業者になるのは倉庫会社でしょ
うか、それとも物品の元々の所有者でしょうか。
例えば、在庫として寄託していた物品を一括処理するような場合は、倉庫会社ではなく、
物品の元々の所有者が排出事業者として処理をする方が適切と考えられます。
しかし、倉庫会社が、在庫と廃棄品の選別作業の委託を受け、選別後に倉庫会社の責任
で廃棄品を処理するような場合は、倉庫会社を排出事業者として扱うことも可能です。
重要なポイントは、寄託契約などで倉庫会社の義務と権限を明確にし、当事者のどちら
が廃棄物処理を行うのかを決めておくことです。具体的には、寄託物が廃棄物になるタイ
ミングと、それを処理する責任を誰が負うかを決めておくということになります。
4)テナントビルの場合
テナントビルでテナントが排出する廃棄物については、各テナントが排出事業者となり
ます。そのため、各テナントと産業廃棄物処理業者が直接契約をする必要があります。
ただし、マニフェストに関しては、『平成13年3月23日環廃産116号通知』で、廃
棄物の集荷場所が決められており、その場所をビル管理会社が管理しているような場合は、
「マニフェストはビル管理会社が自ら発行しても良い」と、示されています。
しかしながら、テナントビルの集荷場所での回収に適さない危険物や大量の産業廃棄物
の処理委託をする場合は、廃棄物処理法の基本原則通り、各テナントが処理業者と直接契
約をし、マニフェストを自ら交付する方が望ましいでしょう。
「平成13年3月23日環廃産116号通知」から抜粋
「管理票の交付については、(中略)ビルの管理者等が当該ビルの賃借人の産業廃棄物の集
荷場所を提供する場合(中略)のように、産業廃棄物を運搬受託者に引き渡すまでの集荷
場所を事業者に提供しているという実態がある場合であって、当該産業廃棄物が適正に回
収・処理されるシステムが確立している場合には、事業者の依頼を受けて、当該集荷場所
の提供者が自らの名義において管理票の交付等の事務を行っても差し支えないこと。なお、
この場合においても、処理責任は個々の事業者にあり、産業廃棄物の処理に係る委託契約
は、事業者の名義において別途行わなければならないこと。
」
以上