力制御ベースの手作業への応用

2B24
高齢者の手作業を支援する操縦型ロボットシステムの開発
― 力制御ベースの手作業への応用 ―
正
正
中嶋
大金
新一(新潟工科大)
一二(新潟工科大)
正
○学
寺島
大宮
正二郎(新潟工科大)
浩一(新潟工科大院)
Manually operated robot system for supporting handworks of aged workers
― Application to force control based handworks ―
Shin-ichi NAKAJIMA, Shojiro TERASHIMA, Katsuji OOGANE,
*Kouichi OOMIYA, Niigata Institute of Technology, Kashiwazaki, Niigata
In order to support handworks of aged workers in machine industries, we have developed a
manually operated robot system. The system consists of a commercial industrial robot and an active
joystick. The operator handles the joystick and manipulates the robot remotely. The control system based
on the force feedback controller enables the interactive manipulation of the tool. The developed robot
system was applied to the buff-finishing task, and several experiments verified the practical
effectiveness of the system.
Abstract
Key Words : Aged worker, Master slave system, Active joystick
れており,3軸の並進力と3軸周りのモーメントが測
緒論
労働者人口の減少に伴い高齢者を産業現場で活用 定できる.一方,ロボット手先にも6軸力覚センサが
することが求められている.高齢者の就労においては,取り付けられており,任意方向の作業反力を測定でき
高齢化による身体機能の衰えによる作業遂行能力の る.
低下が問題となる.高齢者を雇用し,産業現場で積極
的に活用するためには,これらの低下した機能を補完 3. 操縦型ロボットの制御
する支援機器が必要となる.このための装置として,
Fig.3に工具を遠隔操作して力制御作業を行うた
本研究では市販の産業用ロボットを操縦操作する支 めの制御系を示す.
援システムを提案する.
この制御系は,作業反力 fr のフィードバック制御
ロボットを操縦操作して作業を遂行するためには, とジョイスティック操作力 fj のフィードバック制御
人からロボット,ロボットから人への双方向の情報 を組み合わせている.
伝達が必要になる.この機能を実現するために、イ
force sensor
ンタラクティブにロボットを操縦操作できる能動ジ
ョイスティックを開発し,これと市販の産業用ロボ
fj
ットを組み合わせて手作業支援システムを構築した.
PC
開発した支援システムは力制御ベースの作業とし
てバフ研磨仕上げ作業に適用して,実用上の有効性
fr
active joystick
を検証した.
1.
operator
2. 遠隔操縦型ロボットシステムとその制御
Fig.1 に提案する手作業支援システムの概念図を
示す.システムは実際に作業を実行する産業用ロボッ
ト,これを操縦操作するジョイスティックおよび,こ
れらを制御する計算機により構成されている.このジ
ョイスティックを操作することにより,ロボット手先
に取り付けた工具を遠隔操作する.
Fig.2 に試作した支援システムを示す.ロボットを
操縦操作する装置としては,作業反力などの感覚を仮
想的に呈示するハプティックインターフェースも開
発されているが 1),ここでは簡単な力操作を目的とし
て , モ ー タ 駆 動 の 能 動 ジ ョ イ ス テ ィ ッ ク (active
joystick 以下 AJS と呼ぶ)を開発した 2).
AJS は2軸ジンバル機構と並進リンク機構による
3軸機構となっている.このジョイスティックの球形
のグリップ内には超小型6軸力覚センサが組み込ま
第19回日本ロボット学会学術講演会 (2001年9月18-20日)
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computer
Fig.1 Concept of the system
robot
force sensor
grip
(force sensor)
tool
(buff wheel)
active joystick
Fig.2 Experimental setup
まず,ロボット手先が拘束されていない状態では,
fr=0 となるため,AJS の操作量がロボットの速度指令
fc
Kc
となる.これに対し,ロボット手先が対象物に接触し
fr
−
+
fj
た状態では,ロボットは力フィードバック制御で動か
Kj
Kr
されることになり,AJS の操作量が工具押し付け力の
+
目標値となる.
一方,AJS は操作力 fj と工具押し付け力 fr の差に
Ki
force
force
AJS
robot
より駆動されている.これにより,作業者はロボット
sensor
sensor
S
に押し付け力を与えるだけでなく,接触感覚を得なが
position control
velocity control
ら工具を操作できる.ここで,ゲイン Kj,Kr を変える
tool
ことで,操作力と作業反力の関係を任意に変えること operator
ができる.
Fig.3 Control system for force control based
さらに破線で示すように,目標押し付け力 fc を加
manual operation
え,Kj=0とすれば,目標操作力で動かす自律的な力
制御も可能となる.
(a) Kr=0.3 deg/N
4. バフ研磨作業への応用
開発したシステムの実作業への応用として,半径約
10cmの円形の対象面でバフ研磨の作業実験を行っ
てみた.
Kj=0.6 deg/N として,Kr を 0.3,0.6,1.2 deg/N
と変えた場合のジョイスティックの操作力とロボッ
トによる工具押し付け力の測定例を Fig.4に示す.
(b)に示すように Kj=Kr の場合,工具押し付け力はほ
ぼ操作力に一致しており,遠隔操作で任意の工具押し
付け力を制御できることが確認された.また,(a)に
示すように Kr を小さくした場合,小さな操作力で大
きな力の作業を遂行することができる.逆に(c)のよ
うに Kr を大きくするれば,操作力をスケールダウン
することができ,細かい力制御が実現できる.このよ
うに、力の伝達率を変えることで,作業目的、作業者
の能力に応じた力操作が可能となる.
Fig.5は自律的な力制御の例である.このように,
ロボットの自律動作を加えることで精度のよい力制
御が実現できる.ここで,手動操作と自動作業はゲイ
ン Kc,Kj を変えることで,任意かつ連続的に切り換
えることができる.
operator
robot
(b) Kr=0.6 deg/N
operator(green)
robot(red)
(c) Kr=1.2 deg/N
5. 結論
以上,力制御作業を支援するシステムとして,市販
の産業用ロボットをインタラクティブに操縦操作す
るシステムを提案した.
開発した支援システムは力制御ベースの作業とし
てバフ研磨作業に適用して,実用上の有用性を確認し
た.
本研究は NEDO ウェルフェアテクノシステム研究開
発の一環として行われたものである.また,本研究の
一部は(株)セコム科学技術振興財団の助成を受けた
ものである.
robot
operator
Fig.4 Experimental results of manual operation
Kr=0.6 deg/N
参考文献
1) 岩田 洋夫,ハプティックインターフェース,計測と
制御,第38巻,第6号,p391∼p396,1999
2) 大宮他, 産業用ロボットをインタラクティブに操縦
操作するための能動ジョイスティック,北陸信越学生
会第 30 回学生員卒業研究発表講演会論文集,2001
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Fig.5 Autonomous force control