BTMU(China)経済週報 No.191

BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
中国自動車市場の現状と展望
トランザクションバンキング部
中国調査室
メイントピックス...................................................................................................................... 2
中国自動車市場の現状と展望.................................................................................................................................2
稲垣清の経済・産業情報 ........................................................................................................ 7
高速鉄道時代を迎えた中国と日本のビジネスチャンス ..........................................................................................7
人民元市場動向(2014年1月) ............................................................................................... 9
人民元は方向感無い展開。資金市場は春節要因もあり金利高止まり。 ...................................................9
全国情報 ........................................................................................................................... 10
【マクロ経済】 ...........................................................................................................................................................10
日本の対中輸出が3年ぶりに増加も、赤字は過去最高...................................................................................10
2013 年の全国規模以上工業企業利益、前年比 12.2%増 .............................................................................10
1月のPMI、製造・非製造業ともに前月比低下 ................................................................................................10
【金融】.....................................................................................................................................................................11
全国の小口融資公司、7,839 社に ....................................................................................................................11
社会科学院、今年のM2増加率は 14%程度 ...................................................................................................11
2013 年末の金融機関資産総額は 148 兆元=伸び率が前年より鈍化...........................................................11
理財商品初のデフォルト危機を回避 ................................................................................................................11
1 月のQFII、RQFII新規投資枠は大幅増、株式市場へのてこ入れか ............................................................12
【産業】.....................................................................................................................................................................12
聯想(レノボ)グループ、モトローラを買収 .........................................................................................................12
春節期間の全国小売・飲食業の売上高、前年比 13.3%増 ............................................................................12
地方情報 ........................................................................................................................... 13
【北京】 最低賃金を 1,560 元へ引き上げ.......................................................................................................13
【上海】 主要百貨店の売り上げ、前年比 1.2%増 .........................................................................................13
【浙江】 杭州市の春節期間消費は前年比 18.8%減.....................................................................................13
【広東】 広東省の政府返済債務、7,000 億元に ............................................................................................13
【山東】 青島市、2013 年の人民元たてクロスボーダー決済額は約倍増の 2,671 億元に.............................13
【四川】 四川省のクロスボーダー人民元決済額、累計で 1,171 億元に ........................................................13
BTMUの中国調査レポート(2014 年 2 月) ............................................................................. 14
1
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
メイントピックス
中国自動車市場の現状と展望
中国汽車工業協会(以下、中汽協)は 1 月 17 日、2013 年の中国自動車統計を発表、2013 年の自動車生産・
販売台数はともに初の 2,000 万台超となった。中国自動車市場の増勢は 2010 年をピークに徐々に鈍化して
いたが、購入規制などを克服して 2013 年に再び二桁成長を達成できたことは、人々の予想を上回った結果と
いえる。
Ⅰ.生産・販売台数とも 2000 万台超え
¾
2013 年の自動車生産台数は前年比 14.8%増の 2,211 万 6,800 台、販売台数は同 13.9%増の 2,198 万
4,100 台となり、ともに初の 2,000 万台超となった。伸び率は前年比それぞれ 10.2 ポイント、9.6 ポイントと
大幅に拡大した(図表 1)。
¾
2013 年の乗用車販売台数は 15.7%増の 1,792 万 8,900 台で、伸び率は前年比 8.6 ポイント上昇した。
そのうち、セダンとスポーツ用多目的車(SUV)の好調は乗用車全体を押し上げている。2013 年のセダン
の販売台数は 11.8%増の 1,200 万 9,700 台、SUV は 49.4%増の 298 万 8,800 台となり、それぞれ乗用
車全体の伸びに 47.2%、36.96%寄与した。その他、多目的乗用車(MPV)は 160%増の 130 万 5,200
台、軽ワゴンは 27.98%減の 162 万 5,200 台となった(図表 2)。
図表1 生産・販売台数(万台)と前年比(%)
2500
50
45
40
2000
35
図表2 乗用車販売台数(万台)と前年比(%)
2000
60
1800
1600
50
40
30
1500
30
1400
1200
1000
25
20
1000
800
15
10
500
5
0
0
2007
2008
販売台数
2009
生産台数
2010
2011
2012
販売台数前年比
20
600
400
10
200
0
2013
0
2007
生産台数前年比
2008
セダン
2009
MPV
2010
SUV
2011
2012
軽ワゴン
2013
前年比
¾
セダンのメーカー別販売台数を見ると、上位 3 位は前年と同じく上海通用(GM)、一汽大衆(VW)、上海
大衆(VW)であった。日系メーカーでは、東風日産は 22.29%増の 78 万 5,300 台で4位、一汽豊田(トヨ
タ)は 10.21%増の 41 万 1,400 台で 10 位にランクインした。なお、トップ 10 の合計販売台数は 789 万
7,900 台と、セダン全体の 65.76%を占めている(図表 3)。
¾
セダンの車種別販売台数を見ると、1 位は「FOCUS」(FORD)40 万 3,600 台、2 位は「Lavida」(VW)37
万 4,100 台であった。第 3 位の「Buick Excell」(GM)は 29 万 6,200 台で前年の第 1 位から後退した。日
系メーカーでは東風日産の「Sylphy」(軒逸)が 7 位になった。なお、トップ 10 の合計販売台数は 287 万
1,700 台で全体の 23.91%を占めている(図表 4)。
図表4 ブランド別セダン型販売台数上位10位
図表3 メーカー別セダン販売台数上位10位
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
上海通用(GM)
一汽大衆(VW)
上海大衆(VW)
東風日産
北京現代(HYUNDAI)
長安福特(FORD)
神龍汽車
吉利汽車
東風起亜(KIA)
一汽豊田(トヨタ)
合計
販売台数
137.32
137.18
128.59
78.53
74.68
52.58
49.77
48.66
41.35
41.14
789.8
前年比
8.13
10.74
20.07
22.29
8.53
23.97
13.1
5.75
13.83
10.21
シェア
11.43
11.42
10.71
6.54
6.22
4.38
4.14
4.05
3.44
3.43
65.76
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2
ブランド
FOCUS(FORD)
Lavida(VW)
Buick Excell(GM)
SAIL(GM)
SAGITAR(VW)
JETA(VW)
Sylphy(日産)
Cruze(GM)
SANTANA(VW)
BORA(VW)
合計
販売台数(万台)
市場シェア(%)
40.36
37.41
29.62
27.63
27.12
26.34
25.95
24.69
24.33
23.72
287.17
3.36
3.11
2.47
2.30
2.26
2.19
2.16
2.06
2.03
1.98
23.91
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
¾
¾
SUV の販売台数を見ると、上位 3 位は「哈弗」(長城汽
車)、「TIGUAN」(VW)、「CR-V」(東風ホンダ)で順位
は前年と変わらない。「IX35」(北京現代)は去年の 7 位
から 4 位に繰り上がり、「瑞虎」(奇瑞汽車)は 5 位から 9
位に後退した。なお、上位 10 位の合計販売台数は 159
万 2,900 台で全体の 53.3%を占めている(図表 5)。
図表5 ブランド別SUV販売台数上位10位
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
ブランド
哈弗(長城汽車)
TIGUAN(VW)
CR-V(ホンダ)
IX35(現代)
Qashqai(日産)
RAV4(トヨタ)
Q5(Audi)
翼虎(奇瑞汽車)
Highlander(トヨタ)
S6(BYD)
合計
販売台数(万台)
市場シェア(%)
41.74
19.98
19
15.69
12.46
11.78
10.21
9.59
9.52
9.32
159.29
13.97
6.68
6.36
5.25
4.17
3.94
3.42
3.21
3.19
3.12
53.30
国別の乗用車販売台数を見ると、地場系の販売台数
は 722 万 2,000 台で前年比 11.4%増となったが、全体
に占める割合は 40.3%で前年より 1.6 ポイント低下した。ドイツ系は 291 万 7,700 台で全体に占める割合
が 18.8%、日系は 217 万 8,000 台で 16.35%、米国系は 189 万 5,300 台で 12.4%、韓国系は 116 万 200
台で 8.8%、フランス系は 50 万 200 台で 3.1%となっている。市場シェアは日系を除き、いずれも 2012 年
より上昇した。特に米国系は前年より 0.71 ポイントの上昇と顕著である(図表 6、7)。
図表6 国別乗用車の市場シェア
図表7 国別セダンの市場シェア
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
35
30
25
20
15
10
5
0
2009
2010
2011
2012
2013
地場系
ドイツ系
日系
米国系
韓国系
フランス系
2009
2010
2011
2012
2013
地場系
ドイツ系
日系
米国系
韓国系
フランス系
出所:中国汽車工業協会により作成
¾
商用車の生産台数は 7.6%増の 403 万 5,200 台、販売台数は 6.4%増の 405 万 5,200 台と、伸び率はい
ずれも 3 年ぶりにプラスに転じた。商用車のうち、バスの販売台数は 55 万 8,900 台で 10.2%増、貨物車
は 349 万 6,300 台で 5.8%増となっている。
¾
新エネルギー車の生産台数は 39.7%増の 1 万 7,533 台で、販売台数は 37.0%増の 1 万 7,642 台。その
うち、電気自動車が 1 万 4,604 台、プラグインハイブリッド車が 3,038 台となった。
Ⅱ.日系自動車、政治的影響を払拭しきれず
日産自動車、トヨタ自動車、ホンダの日系自動車メーカー上位 3 社はそろって、販売台数の過去最高を更新
した。トヨタは 91 万 7,500 台で前年比 9.2%増となり、目標の 90 万台を達成した。SUV「RAV4」のニューモデ
ルなど新型車の投入が販売を後押ししたとみられる。なお、2014 年の販売目標は 2 割増の 110 万台に設定し
ている。
ホンダは 75 万 6,882 台で前年比 26.4%増となった。主力車種である「アコード(雅閣)」(14.8%増の 11 万
9,542 台)、「CR-V」(12.4%増の 18 万 9,970 台)の販売が堅調であるほか、「オデッセイ(奥徳賽)」が 30.5%
増の 2 万 7,277 台、「クロスツアー(歌詩図)」が 38.5%増の 4 万 7,064 台と好調であった。その他、新車「クラ
イダー(凌派)」も下半期の工場出荷台数が 88,516 台と、「アコード」を凌ぐ勢いを示した。
日産は 126 万 6,200 台で前年比 17.2%増となった。新型「ティアナ(天籟)」や「ウェヌーシア (啓辰)」、クロス
オーバー「R50X」など新型車の投入、および市場競争力の強化に向けた製品ラインナップの拡充が功を奏し
たとみられる。日産は 2014 年の販売目標を明らかにしていないが、2013 年以上の販売を目指すという。
このように日系自動車メーカーは 2013 年には政治的緊張の影響を払拭し、台数ベースではほぼそれ以前の
水準に回復するという健闘した一年といえる。だがこれで 2014 年の見通しを楽観視できるかというと、決してそ
うではない。
不安要因としてまず政治的緊張感の高まりが挙げられる。2013 年末以来、日中両国は政治的には難航する
3
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
局面も生じているが、民間ではデモや日本製品ボイコットなど激しい反日行動は特になく、1 月の日系各メー
カーの販売も堅調な伸びを示した。ただこういった歴史問題を背景とする緊張は短期間で収まりそうになく、
自動車メーカーに限らず、日系企業は慎重な投資判断を継続することになろう。
また、競争の激化により、日系各メーカーは市場シェア争奪戦に参加せざるを得ない。米FORDが 2013 年に
新型「FOCUS」の好調などで、販売台数を 49%増の 93 万 5,813 台に伸ばし、トヨタを追い抜き外国ブランド
第 5 位に浮上したのはその一例である。トヨタもSUV需要の急伸を背景に新型「RAV4」、若年層獲得に新型
「ウィオス(威馳)」、「ヤリス(致炫)」を相次ぎ導入し、2014 年の巻き返しを図っている。
そのほか、ノウハウの流出を恐れて開発・生産の現地化に消極的であったことや、最近は追加投資に及び
腰になっていたことなども日系メーカーの成長を妨げた一因だと思われる。これらの遅れを取り戻すためには、
現地開発の加速と製品ラインアップの充実が求められる。
Ⅲ.中・小都市のポテンシャル
中汽協は今年の自動車販売のプラス要因として都市化の進展を挙げており、各自動車メーカーも都市化に
ついてポジティブにとらえている。その理由として、①都市化の進展に当たり、トラックなど建設用車に対する
需要の増加、②都市化に伴う交通インフラの整備および都市間の移動、③農民の市民化に伴う所得の上昇
および消費の拡大が新たな需要を生み出すこと、などが挙げられている。
ただ現段階では、自動車販売を牽引してきた大都市は大気汚染と交通渋滞の深刻化、および次々と導入さ
れる購入規制により、今までの増加ペースを維持することは困難である。かかる中、ますます多くの自動車
メーカーは、都市化によりもたらされた中・小都市のポテンシャルに目を向けるようになっている。それも低価
格車だけでなく、ベンツ、BMW といった高級車メーカーに至っても大都市の経営体制を維持しつつ、中・小
都市への進出を手がけている。
中・小都市に対する「中国自動車報」のアンケート調査がその1つの裏付けとなるだろう。調査によれば、1 年
以内の自動車購入予定について、「ある」と答えた人は全体の 6 割以上を占めており、購入予算については
「10~15 万」が全体の 37%と最も多い。
図表8 自動車購入計画(N=4372)
図表9 自動車購入予算(N=4400)
5%
5万以下
ある
61%
24%
5~10万
10~15万
37%
15~20万
ない
17%
16%
7%
20~25万
5%
25~30万
検討中
30~35万
23%
35万以上
2%
3%
好みの車種についてはセダン(41%)と SUV(29%)が最も多く、全体の 7 割を占めている。ブランドを選ぶとき
の注目ポイントは安全性、燃費、外観が上位 3 位で、そのうち燃費に関しては、排気量 1600cc~2000cc の車
が最も好まれているようである。
図表10 好みの車種(N=4218)
29%
SUV
16%
小型セダン
6%
新エネ者
MPV
軽ワゴン
4%
3%
図表12 自動車購入時の注目ポイント(N=4402)
図表11 排気量別の購入予定(N=4339)
41%
セダン
安全性
3%
1000cc以下
53%
1600~2000cc
9%
2100cc~2400cc
2%
43%
概観
33%
快適さ
27%
空間
25%
質
25%
パワー
2500cc~3000cc
3100cc~4000cc
8%
4000cc以上
24%
アフタサービス
21%
価格(予算)
2%
保有コスト
ピックアップドラック
61%
燃費
25%
1000~1500cc
1%
評判
16%
9%
8%
出所:「中国自動車報」第3361期、E19版により作成
大都市がほぼ飽和状態になっていることに加え、都市化の後押しもあり、中・小都市は今後の自動車市場に
おいてますます重要な存在となるであろう。自動車メーカーはこういった需要を把握し、自社のターゲットを絞
り、これらのニーズにうまく対応することが販売を伸ばす要と思われる。
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BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
Ⅳ.新エネ車
国務院は 2012 年に「省エネ・新エネ自動車産業発展規画(2012~2020 年)」を発表し、新エネ車の累計販売
台数を 2015 年に 50 万台、2020 年に 500 万台とする目標を掲げた。
2013 年の新エネ車販売は前年比 37.9%増の 1 万 7,533 台で、自動車業界全体を大きく上回った成長を見せ
たものの、このペースでは 2015 年の目標に届きそうにない。新エネ車がまだ産業化、規模化されていない
今、目標を達成させるには、補助金など各地方政府のサポートが不可欠と思われる。
環境汚染の深刻化に悩まされている京津冀(北京、天津、河北省からなる)地域において、北京市は、2017
年の新エネ車販売目標を 17 万台としたほか、電気自動車に 1 回充電の走行距離によって最高 10 万 8,000
元の補助金を給付するなどの促進策を打ち出した。関連施設の整備については、今後 4 年間、販売店、駐
車場でも充電できるように 1 万 7,000 台の充電機を新設し、携帯の APP を通じ、充電施設の空き状況を確認、
予約できるようにするという。天津市は、2015 年まで省エネ・新エネ車の保有台数を 3 万 5,000 台以上とする
ほか、5 つの充電ステーション、1,680 台充電機を新設する予定である。
その他も、上海市が 2015 年に個人購入の新エネ車を 2 万台、公共交通にクリーン燃料・新エネ車の比率を
60%以上にすることや、合肥市が今年の新エネ車販売台数を 2,000 台、新規購入者に対し 3,000 元/1KWh、
ガソリン車からの買い替えに対し 3,000 元/台の補助金を給付するなど、各地は次々と販売目標、補助策など
を発表した。
メーカーに関して言えば、地場系メーカーはすでに動き出している。上海汽車は第 12 次五ヵ年規画期間
(2011~2015 年)において新エネ車の研究開発、および事業化に 60 億元を投資する予定で、2015 年までに
中国の新エネ車市場の 2 割を占めることを目標としている。現段階では、すでにハイブリッド車「栄威 750」、プ
ラグインハイブリッド車「栄威 550」、電気自動車「栄威 E50」などの生産を開始している。
その他、北京汽車は 2015 年に新エネ車の生産・販売台数を 15 万台に、広州汽車は 2015 年にハイブリッド
車を含む省エネ・新エネ車の生産・販売台数を 20 万台に、長安汽車は 2014 年に新エネ車の生産・販売台数
を 15 万台にすると目標を掲げている。
2014 年の見通しについて中汽協は、自動車全体の伸びが鈍化する中、新エネ車の成長が目立つとみている。
中汽協によれば、ハイブリッド車補助金政策の実施、および地方の産業保護による市場分割の改善ができれ
ば、新エネ車の販売台数は 6~8 万台に拡大することが可能という。
Ⅴ.今年の展望
2014 年の見通しについて中汽協は、経済の安定による消費者マインドの好転、都市化の推進に伴う自動車
需要の拡大といったプラス要因と、大気汚染、交通渋滞、および国際経済の不透明さによる自動車輸出への
影響などマイナス要因が共存するとし、今年の販売台数は 2013 年対比 8~10%増の 2,374 万台~2,418 万
台になるとの見通しを示した。販売伸び率の見通しは 2013 年を下回っている。
その他、自動車市場に影響を与える不確定要因について以下が市場関係者に指摘されている。
¾
自動車保有台数を制限するため、国務院は 1 元/ℓのガソリン税を引き上げることを考案しているという。
すでに噂されている渋滞費や大気汚染費なども含め、もし実行に移されれば、中国の自動車市場にマイ
ナス影響を与えかねない。
¾
2013 年の大幅成長は日系自動車の反動増、自動車購入制限前の駆け込み需要、および倹約令による
自家用車需要の押し上げなどによるものと言われている。そのうち、自動車購入制限の導入による駆け
込み消費効果はどれほど残るかによって今年の自動車市場の需要も変わりそう。
一方、中国の自動車市場が 2 年間の調整期を経て、2013 年から再びサイクルの上昇期に入っているため、
2013 年も 2 桁増は十分可能との楽観的な見方もある。
各自動車メーカーは、こういったプラス・マイナス要因や不確定要因を冷静に受け止め、競争がますます熾烈
5
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
になっていく中国自動車市場で独自の戦略を練りながらシェアの拡大を目指していくであろう。
三菱東京 UFJ 銀行(中国)トランザクションバンキング部
中国調査室 佘兴
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BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
稲垣清の経済・産業情報
高速鉄道時代を迎えた中国と日本のビジネスチャンス
Ⅰ 「速い」が「高い」新幹線
中国の高速鉄道(新幹線)営業距離は、2013 年末までに 1 万キロを超えた。世界最大の営業距離であり、中
国は「高速鉄道時代」に突入したといってよい。
1978 年 10 月、日本を公式訪問した鄧小平副総理(当時)は、東京―大阪間の新幹線に乗り、「何が近代化な
のかよくわかった」、「背中をおされているようだ」という感想を漏らした。この日本視察が、帰国後の 12 月に開
催された中国共産党中央委員会総会(三中全会)における、歴史的な「改革・開放路線」決定の大きな契機と
なった。以来 30 年、中国は大発展をとげ、「近代化」のシンボルともいえる新幹線(高速鉄道)がいま、中国の
大地を縦横無尽に走りぬけている。
2010 年 7 月 1 日、上海万博の開催に合わせて、上海と南京を結ぶ滬寧高速鉄道が開業した。筆者も早速、
上海から蘇州(84 キロ)まで乗車した。在来線に比べ、時間は半分の 32 分、料金は 2 倍である。いまや、中国
でも時間をお金で買える時代となった。高速鉄道は世界一のスピードであり、料金も日本 3 分の 1 である。し
かし、中国国内の物価水準からみると、高速鉄道は庶民にとって高嶺の花である。これに先立って、2009 年
末開業した武漢―広州間(1068 キロ)の高速鉄道料金は、特等 880 元、1 等 780 元、2 等 490 元の 3 段階に
分かれている。最低料金の 490 元でも、在来線硬座の 3 倍である。在来線で 10 時間かかっていたが、高速
化によって 3 時間に短縮、つまり、「速い」分、「高い(料金)」というわけである。しかも、在来線が廃止となり、
庶民にとって、安い交通手段が失われた。高速鉄道は、「白領列車」(「白領」とは、金持ちの意味)、「出張列
車」(公費でしか、乗れない)などと揶揄される有様である。「近代化」とは、一部の富裕層にとってのものかと
いう嘆きが聞かれる。
新幹線が普及すると、どこでも航空機との競争が激化する。中国でも同じである。通常は航空機の方が高い
が、航空業界も「特割」や「マイレージ」を売り物に、高速鉄道に対抗する。広州をベースとする南方航空は、
高速鉄道の開業に対抗して、武漢―広州間の航空運賃を「400 元」に設定した。「高鉄」の最低料金を下回る
料金設定である。あるいは、東方航空は、南京の人が上海経由でニューヨークにいく場合、南京―上海間を
無料にするというキャンペーンを展開している。いまや、「貧乏人が飛行機に乗り、金持ちが新幹線に乗る」と
いう時代になりつつある。
中国の高速鉄道に対し、日本の鉄道関係者はその安全性や技術盗用に疑問を投げかけているが、中国はこ
れを一蹴している。もっとも、中国の高速鉄道は、当初、ドイツシーメンス、カナダボンバルディア、フランスア
ルストムそして日本の日立製作所、三菱電機、川崎重工などの技術を寄せ集めたものである。その後、徐々
に「国産化」を行っているが、中国の独自技術による「走出去」を目指してこそ、名実ともに日本を抜くことにな
る。
Ⅱ クルマ社会と新幹線
中国は、新年を旧暦で祝う習わしであり、「春節」と呼ばれる。毎年、春節を故郷で過ごすため、その前後の
40 日間に民族大移動が起こる。故郷に帰るのに、列車の切符が買えない、何日も前から長い行列に並ばな
ければならないのがこれまでの春節前夜の光景であった。ところが、昨今、やや様相が異なるようである。
まず、移動手段が鉄道依存からクルマ(道路)などに多様化したことである。マイカーやオートバイによる道路
利用が圧倒的に増え、春節期間のみ、小型車は有料道路料金が無料になることも手伝って、中国でも連休
の初めと終わり、幹線道路が渋滞、という日本と同様の現象が生まれている。マイカーだけではないが、道路
利用は、中国の人口の 3 倍に相当する 36 億人の総移動数のうち、32 億人に及ぶという予測もある。
7
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
「購入のための長蛇の列」「切符が買えない」などのこれまでの春節時の特徴がなくなった理由の一つには、
ネット購入ができるようになったため、「並ぶ必要」がなくなったことが大きい。また、これまでは、「お金があっ
てもなくても帰郷」といっていたが、いまでは春節でも故郷に帰りたがらない若者が増えており、需給に余裕が
できたことも大きい。帰郷しない理由は、「費用が無駄」というドライな考え方による。また、春節期間に工場に
出勤した場合には、割り増し賃金がもらえるという企業もあり、帰郷代や紅包(お年玉)を節約し、かつ収入を
増やし、少しでも貯金にまわしたいためである。
Ⅲ 鉄道技術でも日本を抜くのは時間の問題?
中国では、2011 年の浙江省温州での鉄道事故や鉄道部汚職(鉄道部長の逮捕)などの影響により、高速鉄
道建設にブレーキがかかり、またスピードを競うのを控えたこともあった。しかし、このほど、高速鉄道車両を製
造する有力メーカーである南車青島四方機車車両公司が、最高速度 605 キロの車両を開発した。これまでの
試験速度の最高は 487 キロであったが、炭素繊維、ナノテク材料の利用など新素材の導入により、車両の軽
量化と高速化を高めることに成功している。実際の運行スピードは平均で 380 キロ程度ではあるが、中国の高
速鉄道の始まりが、2004 年であったことを考えると、このわずか 10 年の間で、中国の鉄道技術は世界的レベ
ルに達しているといえる。
さらに、この中国の鉄道技術が海を渡ろうとしている。中国の鉄道輸出の歴史は古い。1970 年代、中国は第
三世界(発展途上国)のリーダーを自負して、アフリカ外交を積極的に展開した。そのシンボルとなったのが、
タンザン鉄道への協力であった。タンザニアとザンビア 1800 キロを結ぶ鉄道の敷設に資金と技術を提供した
のである。主要駅と車両は中国そのものという。40 年後の今日、中国は「走出去」(海外に打って出る)のシン
ボルとして、高速鉄道技術や車両の海外進出を積極的に進めようとしている。ロシア、ブラジル、マレーシアな
どへの売り込みを日本と競っている。2009 年に高速鉄道距離において日本を抜いた中国、2010 年には GDP
においても日本を抜いた。そして、残るは鉄道技術において日本を抜くこと(国産化)が悲願であり、スピードだ
けが技術ではないが、すでに高速鉄道における国産車両も導入が始まっており、鉄道技術も日本を抜く勢い
である。鉄道車両台車フレームにおける炭素繊維強化プラスチックなどの新素材技術では、現在も日本が上
回っており、ビジネスチャンスはまだある。
稲垣
清
三菱東京UFJ銀行(中国)顧問
1947 年神奈川県生まれ。慶応義塾大学大学院終了後、三菱総合研究所、三菱 UFJ 証券(香
港)産業調査アナリストを歴任。現在、三菱東京 UFJ 銀行(中国)顧問。著書に『中国進出企業
地図』(2011 年、蒼蒼社)、『いまの中国』(2008 年、中経出版)、『中国ニューリーダーWho’s
Who』(2002 年、弘文堂)、『中国のしくみ』(2000 年、中経出版)など。
8
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
人民元市場動向(2014年1月)
人民元は方向感無い展開。資金市場は春
節要因もあり金利高止まり。
【図 1】人民元中間値とドルインデックス
每天 QCNY=CFXS, Q=USD
2013-10-21 - 2014-2-13 (PEK)
价格
价格
81.5
6.15
6.14
81
6.13
昨年末最終 3 営業日で基準値・実勢値共に急
伸した人民元は、1 月 2 日の基準値が 6.0990 に
設定されて本年度の取引を開始した。
80.5
6.12
80
6.11
6.1
79.5
6.09
79
6.08
6.07
78.5
6.06
同日の実勢値が 6.0500 丁度を付け元の高値を
更新するなど、年度替わり以降も潜在的な元買い
圧力を感じさせる相場となったが、節目の 6.05 を
一気に突破する程の勢いもなく、月上旬は取引
値幅も狭い膠着状態となった。10 日に発表された
12 月の米国雇用統計が、事前予想比不冴えな内
容となり米国景気への懸念が台頭、対主要通貨
での米ドル売りを受けた 13 日の基準値が、小幅
乍ら元の過去最高値を更新すると、同日、実勢値
も漸く 6.05 を突破、翌 14 日には 6.0406 まで元の
上値を伸ばした。
78
6.05
77.5
6.04
自动
自动
21
28
04
11
13 十 月
18
25
02
09
2013 十 一 月
16
23
30
06
2013 十 二 月
13
20
27
07
2014 一 月
— 人民元ドル中間値(右側) — ドル index 時間線(左側)
(出所)ロイター
【表 1】為替市場:2014 年 1 月の変動幅
日付
始値
高値
安値
終値
USDCNY 基準値
6.0990
6.1109
6.0930
6.1050
USDCNY 実勢値
6.0523
6.0617
6.0406
6.0600
【図 2】O/N Shibor と 7 日間債券レポ利回り
每 天 QCN7DRP=CFXS, QSHICNYOND=
2013-10-21 - 2014-2-12 (GMT)
价格
CNY
然し乍ら月央以降は、基準値が元安方向にシ
フトしたこともあり、実勢値も 6.05 を挟み方向感な
く展開、春節連休入り前の最終週は輸入決済と
思しき大口の元売りなどもあり、若干元安に振れ
て 6.06 丁度で 1 月の取引を終了、春節連休入り
した。
8.5
8
7.5
7
6.5
6
5.5
5
4.5
4
3.5
3
2.5
自动
1 月の人民元は、やや上昇一服感を漂わせた
が、今月以降も基調としての緩やかな元高圧力に
著変無きものと思料、引き続き年率 3%程度での
元高進行を見込む。
資金市場では、資金需要の強まる春節連休を
控えた 20 日に短期金利が急騰、同日人民銀行
は、短期流動性ファシリティ(SLF)を通じ大手商
業銀行に緊急の流動性供給を行った旨発表する
と共に、翌 21 日の公開市場操作にて 12 月 24 日
以来となるリバースレポにより資金供給を行う旨を
事前に公表するという異例の対応を見せた。実際
21 日には 2550 億元の資金供給を実施、市場の
混乱は回避されたが、金利は高止まりしたまま春
節連休入りした。
(環球金融市場部市場営業グループ)
21
28
04
13 十 月
11
18
25
02
2013 十 一 月
09
16
23
2013 十 二 月
30
06
13
20
27
07
2014 一 月
— 7 日間債券レポ利回り — Over Night Shibor 金利
(出所)ロイター
【表 2】資金市場:2014 年 1 月の変動幅(%)
日付
始値
高値
安値
終値
1
3.0947
4.8725
2.7328
4.2719
7 日間レポ 1
4.9831
6.5920
4.0149
4.9887
O/N Shibor
3.1310
4.8477
2.7380
4.4350
3 ヶ月 Shibor
5.5657
5.5998
5.5657
5.6000
1 日間レポ
(注) 1. 加重平均レポ利回り
2. 始値は第 1 営業日の終値
【表 3】人民元為替相場見通し
予想レンジ
2014 年
2 月~3 月
2014 年
4 月~6 月
2014 年
7 月~9 月
2014 年
10 月~12 月
USD/CNY
5.9500-6.1500 5.9000-6.1000 5.8500-6.0500 5.8000-6.0000
JPY/CNY
5.5500-6.1500 5.5500-6.1500 5.3500-6.0500 5.2500-5.9500
(単位;元。JPY/CNY は 100 円当り)
9
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
全国情報
【マクロ経済】
日本の対中輸出が3年ぶりに増加も、赤字は過去最高
日本の財務省が 1 月 27 日に発表した貿易統計によれば、2013 年 12 月の対中輸出は前年同月比 34.4%増
の1兆 2,165 億円で、伸び幅は前月(33%増)から 1.4 ポイント拡大し、今年最高の伸び率を記録した。特に
自動車(2.6 倍増)、自動車部品(95.9%増)、有機化合物(44.2%増)などが好調となった。
中国からの輸入は同 29.2%増の1兆 6,000 億円で、伸び幅は前月(19.4%増)から 9.8 ポイントと大幅に拡大
した。品目別では電子部品(85.3%増)、通信機(57.9%増)、電算機類(31.8%増)の伸びが顕著である。貿
易収支は 3,835 億円の赤字となり、22 カ月連続での赤字となった。
通年で見ると、2013 年の対中輸出は 12 兆 6,287 億円で前年比 9.7%増、2010 年以来 3 年ぶりの増加となっ
た。中国からの輸入は 17.4%増の 17 兆 6,502 億円、貿易赤字は5兆 215 億円、金額ベースでともに過去最
大となった。
(1 月 27 日 財務省)
2013 年の全国規模以上工業企業利益、前年比 12.2%増
規模以上工業企業利益
10,000.00
9,000.00
8,000.00
7,000.00
6,000.00
5,000.00
4,000.00
3,000.00
2,000.00
1,000.00
0.00
前年同月比
30.00
25.00
20.00
15.00
10.00
5.00
0.00
-5.00
2013-11
2013-12
2013-08
2013-09
2013-10
2013-06
2013-07
2013-04
2013-05
2012-11
2012-12
2013-03
2012-09
2012-10
2012-07
2012-08
-10.00
2012-05
2012-06
企業別で見ると、国有企業の利益総額は 1 兆 5,194 億
元で 6.4%増、集団企業は 825 億 4,000 万元で 2.1%増、
株式企業は 3 兆 7,285 億元で 11%増、外資(香港、マ
カオ、台湾を含む)企業は 1 兆 4,599 億元で 15.5%増、
私営企業は 2 兆 876 億元で 14.8%増となった。
規模以上工業企業利益総額(億元)と前年同月比(%)
2012-03
2012-04
2013 年の全国規模以上工業企業利益総額は前年比
12.2%増の 6 兆 2,831 億元となった。
また、全国規模以上工業企業営業収入は 11.2%増の
102 兆 9,149 億元で、営業収入 100 元当たりのコストは 85.27 元。また、平均利益率は 6.11%(2012 年は
6.07%)となった。企業別の営業収入では、国有企業は前年比 25 兆 8,242 億元で 6.1%増、集団企業は 1 兆
1,513 億元で 5.1%増、株式企業は 61 兆 395 億で 12.7%増、外資(香港、マカオ、台湾を含む)企業は 24 兆
1,387 億元で 9%増、私営企業は 32 兆 9,694 億元で 15.4%増となった。
なお、2013 年末時点、規模以上工業企業売掛金は 9 兆 5,693 億元で前年比 14%増、完成品在庫は 3 兆
2,759 億元で 6.8%増となった。
(1 月 28 日 国家統計局)
1月の PMI、製造・非製造業ともに前月比低下
国家統計局によれば、1月の製造業購買担当者指数(PMI)は 50.5 で、先月より 0.5 ポイント低下したが、景
気判断の分かれ目である 50 を 16 カ月連続で上回った。
項目別でみると、新規受注指数は前月比 1.1 ポイント低下の 50.9、新規輸出受注指数は 0.5 ポイント低下の
49.3、生産指数は 0.9 ポイント下落の 53.0、原材料在庫指数は 0.2 ポイント上昇の 47.8、生産経営活動予期
指数は 1.9 ポイント上昇の 51.3 となっている。
PMI の低下について国家統計局は、春節を控えた季節的要因によるものが大きいとした上、生産経営活動
10
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
予期指数の回復から、景気に対する企業の見通しが好転しているとの見方を示した。
また、1 月の非製造業PMIは 53.4 で、前月を 1.2 ポイント下回り、3 カ月連続の下落となった。各項目のうち、
新規受注指数は 0.1 ポイント下落の 50.9、新規輸出受注指数は 0.7 ポイント上昇の 50.1、中間投入価格指
数は 2.4 ポイント下落の 54.5、業務活動予期指数は 0.6 ポイント下落の 58.1 となっている。
(2 月 3 日 国家統計局)
【金融】
全国の小口融資公司、7,839 社に
中国人民銀行によれば、2013 年末時点、全国小口融資公司は計 7,839 社あり、貸出残高は 8,191 億 2,100
万元、前年比 2,269 億 8,900 万元の純増となっている。
省別で見ると、江蘇省の小口融資公司は 573 社、従業員は 5,658 人、払込資本金は 894 億 8,200 万元、貸
出残高は 1,142 億 9,000 万元でいずれもトップである。
(1 月 26 日 中国人民銀行)
社会科学院、今年の M2増加率は 14%程度
社会科学院金融研究所は、2014 年「金融青書」を発表した。社会科学院は 2013 年に続き、今年の金融市場
も流動性逼迫の状況に見舞われる可能性が高く、過度な金融引き締めは不適切で、M2 の増加率を 14%程
度に維持すべきとの見方を示した。
社会科学院によれば、経済回復の基盤はまだ完全に固まっていないため、金融当局の今年の主要任務は緩
和か、引き締めではなく、「安定を保ちながら成長を目指す」という基本方針に基づき、中国の経済構造転換
によい外部環境を作ることだという。歴史的経験から見て、経済成長と物価安定の両方に配慮し、経済構造
の転換と改革の深化に良い環境を提供するためには、M1、M2 の増加率をそれぞれ 9%、14%、社会融資
規模を 14%程度にすることが適切だとの見方を示した。
(1 月 27 日付「経済参考報」)
2013 年末の金融機関資産総額は 148 兆元=伸び率が前年より鈍化
中国銀行業管理監督委員会によれば、2013 年末時点の中国銀行業総資産は前年比 12.8%増の 148 兆 500
億元、総負債は同 12.5%増の 137 兆 9,200 億元となった。
総資産の増加幅の鈍化は、景気減速や 6、12 月の流動性逼迫、理財商品に対する管理の厳格化など複数
の要因によるものだが、これらの要因は短期的なものが多く、「安定を保ちながら成長を目指す」という基本方
針の下で、銀行業の総資産は今後は適切な伸びを維持できるとの見方が多い。
国有商業銀行の総資産・総負債の伸びは 1 桁で最も低い。
(1 月 28 日 中国銀行業管理監督委員会)
理財商品初のデフォルト危機を回避
石炭会社の山西振富能源集団は 2011 年、信託会社の中誠信託の金融商品「誠至金開 1 号」を通じ、30 億
3,000 万元の資金を調達した。同信託商品の年間収益率は約 10%で、中国最大手の中国工商銀行が販売
会社として同行の富裕層顧客に販売した。しかし山西振富能源集団の資金繰りが悪化したことを受け、1 月
31 日の償還日を前に返済のめどが立たない状態となっていた。
正規の銀行融資と異なるシャドーバンキングで、初めての大規模なデフォルトが起きる可能性に懸念が広
がっていたが、信託会社の中誠信託は 27 日、出資した投資家に元本を全額返済すると発表し、当面は、懸
11
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
念が払拭された形となった。
返済資金の出所は明らかにされていないが、表面的には、新たな投資家が石炭会社の担保を押さえるという
解決策でまとまったが、実際には中国華融資産管理公司(工商銀行が不良債権を処理するために設立され
た資産管理公司)、中誠信託の筆頭株主である中国人寿が救済役を担ったのではないかと噂されている。
(1 月 28 日付「第一財経日報」)
1 月の QFII、RQFII 新規投資枠は大幅増、株式市場へのてこ入れか
国家外貨管理局は 1 月、適格海外機関投資家制度(QFII)で 7 社に計 17 億 1,700 万ドル、人民元適格海外
機関投資家制度(RQFII)で 8 社に計 103 億元の投資枠をそれぞれ新たに承認した。昨年 12 月に承認した
投資枠(QFIIが 4 億 5,000 万米ドル、RQFIIが 13 億元)より急伸し、2 制度を合わせた 1 月の投資枠は人民
元換算で約 208 億元となった。
投資枠の拡大は資金流入を促し、低迷する株式市場に活力を注ぎこむ狙いがあるとみられる。上海総合株
式指数は最近、2,000 ポイント前後で推移しており、最高値の 6,124 ポイントに遠く及ばないだけでなく、直近
1年の最高値 2,444 ポイントからも大幅に下落している。
なお、国内適格機関投資家(QDII)制度では1月に 1,100 万米ドルの投資枠を新たに承認した。投資枠総
額は 850 億 4,300 万米ドルとなっている。
(1 月 28 日付「証券日報」)
【産業】
聯想(レノボ)グループ、モトローラを買収
PC大手の聯想(レノボ)グループは1月 29 日、米グーグル傘下の携帯電話端末メーカー、モトローラ・モビリ
ティを買収することでグーグル側と合意した。買収金額は 29 億 1,000 万ドルとなる見通し。
WIND によれば、2013 年のレノボのスマートフォンの市場シェアは中国で第 2 位、世界で第 5 位と好調で、
モトローラの買収により、韓国サムスン電子、米アップルに続くスマートフォン世界シェア 3 位に躍進する見込
みのほか、欧米の携帯電話市場で存在感を高めることも期待される。
ただ、モトローラの特許資産約1万 7,000 件のうち1万 5,000 件は引き続きグーグルが保有することとなり、レ
ノボには知的財産ライセンスの供与だけとなった。
(2 月 4 日付「中国証券報」)
春節期間の全国小売・飲食業の売上高、前年比 13.3%増
商務部によれば、春節期間(1 月 31 日~2 月 6 日)の全国小売・飲食企業の売上高は 6,107 億元で前年同
期比 13.3%増となった。省別では、湖南省は 15%増、甘粛省は 14.2%増、陜西省は 14.1%増、湖北省は
14%増で上位 4 位となっている。
商品別では、食品、衣類など生活必要品の販売は最も好調で、電子類商品、馬年をテーマとする金・銀アク
セサリーなどの販売も高い伸びを示したという。
商務部によれば、今年の各種商品の中でもコストパフォーマンスの高いものが人気で、広西省、安徽省など
は売り上げを 2 割以上も伸ばした。一方で、高級品の落ち込みは顕著で、福州市、洛陽市の高級酒の販売
高は前年同期よりそれぞれ 7 割、4 割減少したという。
その他、多くの消費者がネットで買い物するようになっており、春節期間のネットショッピングの売上高は前年
同期より倍増した地域もあるという。
(2 月 8 日 商務部)
12
BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
地方情報
【北京】 最低賃金を 1,560 元へ引き上げ
【上海】 主要百貨店の売り上げ、前年比 1.2%増
北京市人事社会保障局は1月 29 日、市内企業の
最低賃金を4月1日より現行の 1,400 元/月から
11.4%上昇の 1,560 元/月へ引き上げると発表し
た。
2013 年の上海市内百貨店上位 20 店舗の売上
総額は前年比 1.2%増の 236 億 9,000 万元とな
り、伸び率は全市平均を 1 ポイント上回った。
上位 3 位について、一般消費者をターゲットにし
た第一八佰伴は前年比 5.1%増の 47 億 5,000
万元で第 1 位、海新世界城は同 3.5%増の 36
億 8,000 万元で第 2 位となった。高級百貨店・
久光は政府の腐敗防止策などで前年と横ばい
の 22 億 7,000 万となったが、3 位をキープした。
またパートタイム労働者の最低賃金について、時給
は1時間当たり 15.2 元から 16.9 元に、法定休日の
場合、36.6 元から 40.8 元へそれぞれ引き上げる。
同局は今年に入って、失業保険や労災手当の支給
額なども引き上げている。
(1 月 30 日 人民網)
(1 月 30 日付「上海商報」)
【浙江】 杭州市の春節期間消費は前年比 18.8%減
【広東】広東省の政府返済債務、7,000 億元に
杭州市貿易局が 6 日、市内の主要小売企業 29 社
を対象に実施した調査によれば、春節期間中(1 月
30 日~5 日)の売上高合計は 3 億 300 万元で前年
同期比 18.8%減となった。
広東省審計署によれば、2013 年6月末時点の
広東省政府返済債務は 6,931 億 6,400 万元、
政府保証債務は 1,020 億 8,500 万元、その他
の関連債務は 2,212 億 8,800 万元となった。
業種別では、飲食店7社は 2,660 万元で 20.2%増、
百貨店・ショッピングモール7社が 1 億 8,500 万元で
25.1%減、スーパーマーケット 11 社は 6,735 万元で
12.6%減、家電量販 4 社は 2,405 万元で 10.7%減と
なった。
政府返済債務の対 GDP 比率は 54.4%、また保
証債務とその他の関連債務を合わせた後の対
GDP比率は 59.1%となっている。広東省審計署
は全体としてコントロール可能な範囲にあると見
ている。
(2 月 7 日付「銭江晩報」)
(1月 28 日付「南方日報」)
【山東】 青島市、2013 年の人民元建てクロスボー
ダー決済額は約倍増の 2,671 億元に
【四川】 四川省のクロスボーダー人民元決済額、
累計で 1,171 億元に
青島市の 2013 年の人民元建てクロスボーダー決済
額は 1,282 億元で前年比 95.6%と大幅に増加した。
また 2010 年6月の試行開始からは累計で 2,671 億
元に上った。
中国人民銀行四川省成都支店によれば、2013
年の四川省の人民元建てクロスボーダー決済
額は 711 億元となり、人民元決済を導入した20
10年からの累計では 1,171 億元に達している。
青島市では各銀行の 38 支店は人民元建てクロス
ボーダー決済業務を取り扱っている。人民元建て
決済を利用した企業も 1,800 社に達し、前年から
74.6%増となった。
またクロスボーダーにおける人民元建て決済額
は全体の 12.3%を占めており、米ドルに次ぐ 2
番目の通貨となった。
(1 月 30 日付「青島財経日報」)
(2 月 5 日 四川オンライン)
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BTMU(China)経済週報
2014 年 2 月 12 日 第 191 期
BTMU の中国調査レポート(2014 年 2 月)
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経済レビュー
習近平政権の改革・開放下で新段階に入る対中直接投資
https://reports.btmuc.com/fileroot_bj/FILE/jpreport_chinese/140130_01.pdf
経済調査室
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経済マンスリー
(中国)12 月の指標は減速が鮮明 不安定な金融環境が継続
https://reports.btmuc.com/fileroot_bj/FILE/jpreport_chinese/140130_02.pdf
経済調査室
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ニュースフォーカス 2014 年第 2 号
(中国)深セン市政府、「前海湾保税港区における
~ファイナンスリースの発展推進に関する試験実施についての意見」を発表
https://reports.btmuc.com/fileroot_bj/FILE/jpreport_chinese/140130_03.pdf
業務開発室(香港)
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産業トピックス
「中国ステンレス業界」(2014 年 1 月)
https://reports.btmuc.com/fileroot_bj/FILE/jpreport_chinese/140114_01.pdf
企業調査部(香港)
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BTMU 中国月報 第 97 号
http://www.bk.mufg.jp/report/inschimonth/114020101.pdf
国際業務部
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海外駐在情報 China Economic TOPICS No. 52
「2020 年に向けた中国の改革深化に関する政策方針
~共産党第18期三中全会での「決定」について~」
https://reports.btmuc.com/fileroot_bj/FILE/jpreport_chinese/131203_01.pdf
経済調査室(香港)
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