ビールベックドイツ

独身 30 才
雨の夕刻、旧市街を歩いていると、
シルクハットにタキシード姿の色白・痩身の男性が、
不釣合いなでっかいホウキを持って、歩き去っていきました。
小
へんなの、と思っていたら、しばらくして今度は、
サッカーフィールドの帽子をかぶった、
ヴェアダー・ブレーメン・チーム色のジャケット男が、
ぞろぞろ同年輩の人たちをひきつれてやってきました。
その人たちはおもむろに、おのおのの荷物を下ろし、
ドーム教会前の石畳にカーペットを敷いて、
サッカー男をその真ん中に立たせて、取り囲んで立ちました。
なんだかみんなすごく楽しそうなので、興味津々で近づいていくと、
一人の女性が「あなたたちも一緒にやってよ」といって、
私たち一人に一袋ずつビニール袋をくれました。
袋の中には、ビールの王冠ばかりが、じゃあらじゃら。
元気のいい別の女性が、サッカー男の横に
立 っ て、 み ん な に 問 い た だ し ま す。
「???????!」
すると、みんなが「ナーイン!(ノー!)」と
答えて、レッドカードを差し出します。
だれかが、持っている王冠を男の足元にばら
まきます。
男はひざまづいて、それをスプーンでかき集
め始めます。
また質問があって、また「ナーイン!」とみんなでレッドカードを示し、
誰かが王冠をばらまきます。それを何度かくりかえして、
最後にはバケツに2杯あった王冠が、
ぜんぶカーペットの上にぶちまけられました。【写真】
これは独身30才男の誕生日祝いです。
もしこの儀式の終わりまでに、
Mädchen(女の子)がキスしてくれなかったら、
ばらまかれた王冠すべてを、
自分できれいに片付けなければならないのだそうです。
このお祝いの女性版もあります。
ドーム教会のドアノブ磨きだそうです。
(私もドイツに居れば磨いたクチですけど。)
近所のおばさん
あ
る3人のおばさんの仕草について少し書きます。
ちょっと日本では見られないと思ったので。
一人目は、悠のサッカーのコーチのことです。
ちょっと太めだけど、シャキシャキみんなに指示をして、とにかく朗らかで、
「いいね!」「うまくやった!」と、いつもとてもほめ上手です。
彼女が、試合登録料がいるからといって、20ユーロずつ集めたとき。
風がふきつけるフィールドで、
肩にはさんでいた、みんなからもらった20ユーロ紙幣を、
1枚ずつ地面に広げては、なんと、ボールペンで、その紙幣の上に、
もらった人の名前を書き込んでいました。
二人目は、安売りのチェーン店 Penny のレジのおばさん。
ドイツ人には珍しく、週末も働いている人です。
長蛇のお客を、たった一人で、
何時間もぶっつづけでこなしている、根気強い人。
レシートが詰まってうまく出てこなくなったので、
バン!と機械を開いて、レシート用紙のロールを取り出すと、
まだ2センチくらいの厚みが残っているというのに、
そのままゴミ箱へポイッと捨て、新しいロールをセットしていました。
三人目は、息子達の担任をしている、わが愛するハルトマン先生。
体つきは私くらいで、50代後半。高校教師から小学校に変わってきて、
「夢の職業に就けた」と喜んでいる、ほんとに気のいいおばちゃん先生です。
アフロ風の髪に、金・銀・緑・赤・黄といった髪飾りをつけていて、
それはまるでクリスマスツリーが授業しているみたいです。
授業態度の悪い子がいると、
黒板消し雑巾とかゲル状のおもちゃとか投げるそうですが、
あるとき、コントロールが外れてうちの子に当たったので、
申し訳なさそうに、へんな日本語で、「arigaatou!」といわれたとか。
以来、うちのクラスでは、「arigaatou!」が大流行しているそうです。
それからも一つ、うちの子にうけていたエピソードは、鉛筆削り事件。
先生が子どもから借りた鉛筆削りで自分の鉛筆を削っていたら、
削るたびに芯が折れるので、3度目には、
鉛筆をまん中からボキッと手で折って、
その折ったところからまた削り直して。
それでもまた芯が折れたので、こんどはゴミ箱へポイッ。
ハンブルク
い
まは、日の出が5時過ぎ、日の入りが9時半過ぎ、です。
今週は、しとしと雨が降る日が多くって、
気温は6度から13度という感じです。
おととい5月25日はイエス・キリストの昇天祭とかで、学校がお休みでした。
一度ハンブルクに行ってみよう、と早起きしてでかけました。
すると、いつも使う路面電車が運行していな
くて、線路を塞ぐようにして、パトカーが停
車し、回転灯をつけていました。
大戦中の不発弾が見つかったので、
ヴェーザー川付近は立ち入り禁止とのこと。
けっきょく1時間後の電車で出発しました。
ハンブルクでは、子どもたちの慰めにと思っ
て、ハーゲンベック動物園を訪れました。
柵のかわりに堀を設けるなど、動物と身近に
接することができるようになっています。
ゾウなどに手ずから餌をやることが許されて
いて、これには、大人も子どもも、とっても興
奮しました。
どの動物もみな、元気でした。(日本の暑い動物園と違うから?)
カワウソが、ものすごい勢いで魚を食べているのをみると、こんなのが最近までは四
国にいたのか、と悲しい気がしました。
トラがずーっと飽きもせず檻のなかを往復しているのを見た蒼は、
日本にのこしてきたトラのぬいぐるみのことを思い出したのか、
涙ぐんでいました。
それで、新しくぬいぐるみを買ってやりました。
それはすぐに、「トラ」と名づけられました。
それから、残りの時間で大急ぎで、市立美術館に行きました。
なんと、夫婦2人で入るよりも、子ども連れのほうが安く見学できるのです。
入口で、「子ども達はクイズを解いて楽しめるのよ」とカードをくれました。
でも、子ども達は美術館は大嫌いで、もう初めからウンザリしていて、
こんなものもらってもどうせドイツ語は読めないんだしと、
さっさと椅子をみつけて、靴や靴下を脱いで店開きして、読書を始めました。
(悠だけが「トラ」に絵を見せて、そのへんをまわっていましたけど。)
ところが、ここを訪れるほかの子ども達は、みんな目をキラキラさせて、
見てまわっているのです。絵を指差して、興奮したりして。
これはこのカードに何かあるに違いない、おー、あった、
最後に宝物袋をくれるんだって!
そうなれば話は別。3人とも、喜び勇んで、
私についてくることになりました。
示された10作品を訪れて、クイズを解いていきます。
すると、大きな美術館のなか、時代の異なる全ルートを回ることになります。
子ども達は、なぞ解きを通して、
図像学を知らなくても、絵のなかにアイコンを探すことになったり、
自然描写の繊細な技法の妙に、目を凝らしたり、
絵の具の原料として使われてきたものに驚いたり、
現代美術に空間にギョッとさせられたり、という体験をします。
閉館ぎりぎりまで興奮して館内を回ったのだけれども、
美術館の人たちはみんな子ども達に親切でした。
「さよなら」というと、「あら、トラはどこ?」と言われたりしました。
(名前を覚えてもらって、トラも光栄でしたね。)
来る前から見たくて楽しみにしていた絵は、
けっきょく見れなかったけれども、
子どもと美術館が楽しめるなんて、初めての経験で、ほんとによかったです。
食料の輸送
食
料の買出しには、
40Lのリュックサックと20Lの買物袋を使っています。
いつも、リュックがいっぱいになって、買物袋も使います。
週末には、全部で、私の体重の半分以上の重さにもなります。
飲んで、食べて、生かされている、ということを感じる瞬間です。
(昔の人は、たくさん子どもを生んで、育てて、
ホントに凄かったんだなーとか。)
最寄のスーパーで買える野菜・果物は、ほとんど外国産です。
近いところでは、イタリア・スペイン・ギリシアなどから来ていますが、
多くのものは、アフリカや南アメリカから来ています。
家族が大好きで毎日食べているブドウは、チリやアルゼンチン産です。
この店の特徴かも知れませんけど。
アメリカ系の大型スーパーで、はじめて「生魚」を見つけたとき、
もちろん喜んで買って帰りました。
ところが、開けた途端にひどい臭いが!
とても調理のできるしろものではありません。
友人の話によると、海産物は、ハンブルクから仕入れられているそうです。
そのハンブルクでさえも1週間に2回しか
生魚の仕入れがないというのですから。
もう、ここにいる間は、生魚はぜったいに買わないでしょう(^.^)。
このあいだ聞いた話。
北の海で獲れたエビの殻をむくのに、
ドイツ人に剥かせるとコストがひどくかかるので、
一旦モロッコに送って、そこで安い賃金で殻をむかせて、
もう一度こちらドイツに送り返すのだそうです。