□校長だより□ ムッチがゆく ! 48 □ H25.11.22□ て ん さ い げ か い 天才外科医「ブラックジャック」 ま ん が か たまにはマンガもいいもんです て づ か お さ む 私が大好きな漫画家に「手塚治虫さん」という方がいらっしゃいます。この方はこれまでに、 てつわん ひ き つ 「 鉄 腕 ア ト ム 」 や 「 火 の 鳥 」、 ま た 「 陽 だ ま り の 樹 」 や 「 ア ド ル フ に 告 ぐ 」 な ど 、 数 多 く の 作 品 さいこうけつさく を 残 さ れ て い ま す が 、そ の 中 で も「 ブ ラ ッ ク ジ ャ ッ ク 」は 、最 高 傑 作 で は な い か と 思 っ て い ま す 。 そんげん な ぜ な ら ば 、 こ の 「 ブ ラ ッ ク ジ ャ ッ ク 」 に は 、「 命 の 尊 厳 」 が 、 そ し て 、 人 間 の 心 の 奥 深 く に し ん り えが 潜んでいる「真理」が、見事に描かれているからです。 今 回 は ブ ラ ッ ク ジ ャ ッ ク 第 3 集( コ マ ド リ と 少 年 )を 、文 章 体 に 書 き 直 し て み た い と 思 い ま す 。 お 「先生~! ふ し ブラックジャック先生~! 今日もまた、家の前に千円札が落ちてる~!」 ぎ まど よ う す ピノコが不思議そうな顔をしてブラックジャックにそう告げます。すると、窓の外の様子をじーっと かえ 見ていたブラックジャックがこう返します。 す はんにん 「ピノコ、見てみろ。ほら、あそこだ。お金を捨てていく犯人がわかったぞ。どうも、コマドリの めず ら たし よ う だ 。し か し 、こ ん な 近 く に コ マ ド リ が い る こ と も 珍 し い が 、コ マ ド リ は 確 か 夏 鳥 の は ず 。な の に 、 へん 1 2 月 に も な っ て 姿 を 見 か け る っ て の は 、 ど う 考 え て も 変 だ 。」 あと す はね そう考えたブラックジャックは、コマドリの後を追いかけます。すると、コマドリの巣には、羽の なお く す り ケガが治ったばかりのコマドリのつがいと、なぜか「みどり薬局」と書かれた小さな薬ビンを見つけ るのです。 ふ し ぎ 『なぜ、こんなところに薬ビンがあるのだろうか?』不思議に思ったブラックジャックが「みどり 薬局」に行くと、薬剤師がこんな話をしてくれるのでした。 ちようごう たの 「確かに、この薬ビンは今年の秋、私が調合したキズ薬ですね。で、これを頼みに来たのは子ども だったと思います。何でも、鳥が羽をケガしてもがいとったんで、家に持ち帰ったそうで、この薬で て あ て お 手当をしてやった言うてましたなぁ。きっと、お金を置いていったその鳥は、ケガをした鳥のつがい まど じゃないですかなぁ。その子の話じゃあ、毎日のようにその鳥のつがいが窓の近くの木に止まって、 そのキズ薬で手当てされているんを、ずっと見守ってたそうですから。 む り た だ 、そ の 子 は ど う も 働 き な が ら 学 校 へ 行 っ て た み た い で 、薬 代 も 無 理 し と っ た み た い で し た な ぁ 。 そ れ で 、ケ ガ を し た 鳥 が 元 気 に な っ た 後 も 、キ ズ 薬 を 小 ビ ン に 入 れ て コ マ ド リ に 持 た せ た と 言 う ん で 、 調 合 し て や っ た ん で す が 、 巣 の 中 に こ の 薬 ビ ン が あ っ た な ん て 、 り こ う な も ん で す な ぁ ...。」 「でも、なぜ、私の家にお金を置いていくのだろうか?」 「 あ の 子 が お 金 を 払 っ て 薬 ビ ン を も ら う と こ ろ を 、 あ の 鳥 た ち は い つ も 見 と り ま し た か ら な ぁ 。」 しゆうへん そこでブラックジャックは、薬局を出るとすぐに、薬局の周辺でその子に関する聞き取りを始めるの ゆうりよく じようほう ですが、有力な情報を得ることは出来ませんでした。 でんせん と、そのときでした。電線にあのコマドリが止まっているのが目に入ったのです。しかも、 に か い そのコマドリは、すぐ近くにあるアパートの二階に入っていったのです。 そこでブラックジャックが急いでそのアパートの二階に入って行こうとすると、アパートの管理人 がポツリとこう言うのでした。 「 あ の 部 屋 の 子 は 、 病 人 だ よ 。」 と 。... か あ ハ ッ と し た ブ ラ ッ ク ジ ャ ッ ク が 、そ の 子 の 二 階 に 駆 け 上 が っ て い く と 、げ っ そ り と や せ こ け た 子 が 、 ベットに横たわっていました。 「私は医者だ! お前さんが羽を治してやったというあのコマドリのつれあいが教えてくれたんだ。 今から私の病院へ来い! でないと、あと半年もしないうちに、本当に死んでしまうぞ!」 するとその少年は、天井を見上げながら、こう言葉を返すのでした。 けんこうほけん 「僕はひとりぼっちだし、健康保険にも入ってないんです。 お 金 だ っ て な い し ...。」 とど 「お金? お金ならあるさ。 て く れ た ん だ ぞ ..。 あのコマドリが、お前さんのためにかき集めて、私のところに届け お 前 さ ん を 心 配 そ う に 見 つ め る あ の コ マ ド リ を 見 て 、 や っ と わ か っ た よ ..。 私 が 病 気 を 治 せ る 人 間 だ と 気 づ い て 、 毎 日 、 私 の 所 へ コ ツ コ ツ と お 金 を 届 け て く れ る な ん て ...。 大 し た 奴 じ ゃ な い か ...。」 しゆじゆつ と もど その後、ブラックジャックの手によってその少年の手術は成功し、元気を取り戻していきます。 ところがどうしたことか、その後もあのコマドリは、ブラックジャックのもとにお金を届けること をやめようとはしなかったのです。 ふろうしや そしてその日も、いつものようにお金を届けようと飛び立とうとしたとき、心ない浮浪者の投げた ちよくげき きず 石が、コマドリを直撃してしまいます。しかし傷ついた体にムチうってまでも、コマドリはブラック まどぎわ つ ジャックの家へと向かいます。そして血のついた千円札を窓際に置くと、最後の力を尽くして自分の 巣へと戻っていくのでした。 「先生~、大変~! けつそう 窓のところに、血のついた千円札が落ちてる~!」 しんさつしつ い へ ん ピノコが血相を変えて診察室に飛び込んで来ます。ピノコのあわてように異変を感じたブラックジャ す ックとその少年は、コマドリの巣へと飛び出していきます。 2人がコマドリの巣に登っていくと、浮浪者に石をぶつけられ、血みどろになったコマドリを、も かいほう う一方のコマドリが介抱しているところでした。 おん か え り 「自分が助けてもらった恩を少しでも返そうと、あの羽をケガしたコマドリは、自分の命も省みず た に 、 死 ぬ 苦 し み に も 耐 え な が ら 、 最 後 の お 金 を 私 の 所 へ 運 ん で く れ た ん だ ...。」 ブラックジャックが少年にそうつぶやくと、となりにいた少年は、目に涙をためながら、傷ついた かた コマドリに、こう語りかけるのでした。 ひ つ し 「 僕 だ よ 、 わ か る か い .. ? お前が必死になって集め、届けてくれたお金で、僕はほら、こんな に 元 気 に な る こ と が 出 来 た ん だ よ ...。 あ り が と う ... ! 」 と 目を閉じたまま、血みどろになったコマドリがコックリと 首を動かすと、もうコマドリは、二度と動くことはありませんでした。 ( 手 塚 治 虫 作 :「 ブ ラ ッ ク ジ ャ ッ ク 第 3 集 = コ マ ド リ と 少 年 」 よ り )
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