10 IT技術は 生産のしくみも変革する

の男女の役割分担もできてきた。誰かが外に行くから、誰かが家の中のことを
やらなくてはいけない。この男女の役割分担も産業革命がつくったものと言え
る。
それと同じような、抜本的なライフスタイルの変革が、今まさに起ころうと
しているのではないか。アメリカのIBMでは、3日に1回だけ出社すればいい。
インターネットで仕事ができるのだから、わざわざ机にへばりついて仕事をし
なくても、家でやればいい。すると、オフィスのスペースが3分の1でよくな
る。机の数も3分の1でよくなる。もう自分の机なんてない。朝行ったら「貴
方、この机使いなさい」とデスクシェアリングが起こる。IBMのような巨大企
業がオフィススペースを一気に3分の1に減らしたらすごいコスト減になる。
IT技術は
生産のしくみも変革する
今まで企業は消費者に売るためにモノをつくった。しかし消費者の顔は見え
なかった。だから、消費者はこういうものが欲しいんだろうと企業は勝手に想
定して、モノをつくって、卸し、小売りを通して消費者に流していた。モノは
企業から消費者に流れた。しかし、企業からはモノだけではなくもう1つ重要
なものが消費者に流されていた。それは広告という名の情報だ。こういう素晴
らしいモノをつくったから買ってくださいね、ということを消費者に流す。つ
まり、企業からは情報とモノと両方が同時に流れていた。
ここに、インターネット広告が登場する。例えばYahooという情報サイトを
ご存じだと思うがここはインターネット広告だけで食べている会社で、1株1
億円つけた会社だ。
インターネット広告は、テレビやチラシの広告と一点において根本的に違っ
ている。テレビの広告は出したら出しっぱなし。向こうで見ているかどうかな
んて分からない。でもインターネットは分かる。ちゃんと何人が見に来たか、
ヒット数がどれだけだったかが分かる。ある調査ではYahooのサイトにアクセ
スして、広告を見た人の数は新宿駅の1日の乗降客の数の40倍だった。新宿駅
に、乗降客全員が見えるような大看板の広告を立てたとして、それを全国の賑
やかな場所に40個並べたのと同じ効果があったということである。
今、日本全国で広告に6兆円使われているが、インターネットの広告はその
うちのまだ1%にも達していない。これが今後とんでもなく増えてくるのは間
違いない。そうするとテレビの広告、新聞の広告は間違いなく非常に大きな影
響を受ける。6兆円のパイを奪い合うことになる。
面白い試みをした自動車会社があった。テレビでコマーシャルを流すところ
を、特別のスポーツカーをつくったのだからと、とりあえずインターネットで
安い広告を流してみた。すると、インターネットを通じて消費者から質問がき
た。「この構造やエンジンはどのようになっているのだ」という専門的なもの
だ。自動車会社はびっくりして、エンジニアに聞いて「こうこう、こういう構
造になっています」と答えたら、また消費者からインターネットで質問が来た。
「そういうエンジンの構造は2年前にドイツの○○でつくられた△△と似てい
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