年度経営計画(平成 27 年度)と評価(概要)

年度経営計画(平成 27 年度)と評価(概要)
川崎市信用保証協会は、中小企業が事業資金を調達する際、公的な保証人として企業の
経営安定と繁栄を力強く支援し、地域経済の発展に努めております。
以下の実績評価は、当協会の平成27年度の経営計画に基づき、外部評価委員会の意見・
アドバイスを踏まえて作成したものです。
1. 業務環境について
(1)当協会周辺地域の経済動向
平成27年度の日本経済は、一部弱さがみられるものの、緩やかな回復基調が続いて
いました。ただし、年度前半には中国を始めとする新興国等の景気減速や金融資本市場
の変動等による減速がみられました。
(2)中小企業を取り巻く環境
平成27年度の神奈川県内企業倒産は件数476件、負債総額638億600百万円
でともにバブル期に次ぐ低水準となりました。しかし、当協会保証利用企業の条件変更
リスケ先は減少してはいるものの金額構成比は未だ16.4%と依然として厳しい状況
が続いています。
2.
事業概況について
【保証承諾】
各種の施策に取組みましたが551億61百万で計画比(98.3%)、対前年
度比(94.4%)ともに下回りました。
【保証債務残高】
保証承諾に占める借換の割合増加により、1,693億26百万円で計画比(9
6.2%)
、対前年度比(94.3%)ともに下回りました。
【代位弁済】
景気の緩やかな回復、金融機関の積極的な経営支援、低金利の影響等により、2
8億49百万円で計画比(99.9%)、対前年度比(94.8%)ともに下回り
ました。
【回収】
担保物件の売却による回収の増加により、5億90百万で対前年度比(108.
3%)は上回りましたが、当年度代位弁済からの回収の伸び悩み等により、計画は
達成できませんでした(78.7%)。
平成 27 年度業務数値
(金額単位:百万円、計画達成率・対前年度比:%)
27 年度実績
27 年度計画
26 年度実績
対前年度比
保証承諾
55,161
56,100
98.3
58,437
94.4
保証債務残高
162,926
169,326
96.2
172,783
94.3
代位弁済
2,849
2,850
99.9
3,004
94.8
実際回収
590
750
78.7
545
108.3
計画達成率
3. 決算概要について
平成 27 年度の決算概要は、以下のとおりです。
経常収入
21 億 20 百万円
経常支出
13 億 87 百万円
経常収支差額
7 億 33 百万円
経常外収入
47 億 70 百万円
経常外支出
48 億 91 百万円
経常外収支差額
△1 億 21 百万円
経常・経常外収支差額
6 億 12 百万円
制度改革促進基金取崩額
1 億 24 百万円
当期収支差額
7 億 36 百万円
当期収支差額については、収支変動に備えるとともに、経営基盤の強化を図るため、収
支差額変動準備金に3億68百万円、基金準備金に3億68百万円をそれぞれに繰入れま
した。
4.
重点課題について
(1)保証部門
1)政策保証の推進
① 各種政策保証の推進
ア 借換保証の推進
既存の保証付融資を新たな保証付融資で借換えることにより月々の返済負
担が軽減される中小企業に対し借換保証を推進しました。また、返済軽減の条
件変更を実施している中小企業であっても経営改善が見込まれる中小企業に
対し、正常化を図る借換保証を推進しました。
イ
経営力強化保証制度の推進
金融機関や認定経営革新等支援機関の支援を受け、自ら事業計画を策定し経
営改善に取組む中小企業の経営力を強化する保証を推進しました。
ウ
平成27年10月1日から特定非営利活動法人(NPO法人)に係る保証の
取扱いを開始しました。
② 川崎市中小企業融資制度の推進
信用保証料の一部補助が受けられる等、中小企業にとってメリットがある
「川崎市中小企業融資制度」の利用を促進しました。
③
創業に係る保証制度の推進
ア
関係機関と連携し、創業セミナーの開催や関係機関が主催する創業関係フォ
ーラムに参加して情報発信に努めました。
イ
創業後のステップアップ段階にある中小企業者の成長・発展を資金調達面か
ら支援するため、平成27年7月15日に「創業ステップアップ保証制度」を
創設し、平成28年3月31日までの当協会受付分については保証料率0.
8%を0.2%割り引き0.6%の優遇を実施しました。
④
経済環境の変化等に応じて速やかに各種相談窓口を開設し、中小企業からの相
談や問い合わせについて窓口相談や電話相談によりきめ細やかで親身な対応に
取組みました。
2)利便性向上への取組みの推進
① 平成27年3月に実施したアンケートの結果を踏まえて、質問を記入されてい
た中小企業者へ直接訪問する等、サービス並びに利便性向上に努めました。
②
パンフレットの配布やホームページの更新、隔月で発行している協会広報誌
「REPORT」で協会が取組んでいる事業等の情報を発信しています。また、
協会認知度向上のために協会名を印字したノベルティグッズの活用、地域イベン
トへの協賛、さらに川崎市の各区役所と連携して、広報モニターで制度の案内を
放映する等、積極的な広報活動に取組みました。
(2)期中管理部門
1)創業者への継続的な支援
平成26年度に創業に係る保証制度を利用した中小企業の内、保証後に決算書
が提出された者については、創業計画の進捗のモニタリングを行い、事業継続を
フォローしました。
2)期中支援の強化
①
経営の安定に支障が生じている条件変更先や条件変更に至る恐れのある中小
企業に対し、その経営状況に応じた支援を行うため、国の施策を活用し、金融機
関と連携して訪問支援により実態の把握を行い、適切な期中支援に取組みました。
また、中小企業へ当協会の支援内容を周知するためパンフレットを作成し、訪
問支援時や条件変更申込時に配付しました。
②
保証債務残高が一定金額を超えている大口保証先について決算書の提出を求
め、赤字や債務超過となっている中小企業について抽出し、中小企業経営診断シ
ステム(McSS_Simulation)の活用や企業訪問等により、経営状
況を把握して経営改善に向けた支援に取組みました。
③ セーフティネット5号保証の「業況報告書」で売上が減少傾向にあり、保証付
以外の借入がなく金融機関による訪問回数が少ない中小企業を訪問しました。
④
条件変更申込時に保証債務残高が一定金額を超えている大口保証先について
は、企業訪問等を行い、経営状況を把握して経営改善に向けた支援に取組みまし
た。
⑤ 平成27年8月からは、初めて返済軽減の条件変更を申請した中小企業につい
て、企業訪問を行い経営状況を把握して経営改善に向けた支援に取組みました。
⑥ 元金返済据置先について、平成28年1月から、金融機関と連携して企業訪問
を行い、経営状況を確認するとともに元金返済再開を促進しました。
⑦
延滞先企業をリストアップした「期限経過及び延滞債務一覧」を金融機関へ送
付し、延滞解消に向けて状況把握等の速やかな条件変更申し込み等の対応を促す
等、適切な期中支援に取組みました。
3)事業承継問題への取組み
経営者の高齢化や後継者不在等、中小企業にとって大きな課題である事業承継問
題について、経営者が計画的に取組めるよう情報発信するためパンフレットを作成
し、条件変更時や企業訪問時に配付しました。
4)経営改善に向けた支援
① 条件変更先等の経営状態が良好でない中小企業のうち、積極的な経営支援を行
うことにより改善が見込まれる中小企業に対して、関係機関と連携した専門家派
遣や国が行う専門家派遣事業を活用して、経営診断や経営改善計画策定支援等を
行い、経営改善に取組みました。
②
経営支援についての情報を地域金融機関等関係機関と共有するため、「かなが
わ企業支援ネットワーク会議」を開催し、国や神奈川県中小企業再生支援協議会
の施策等の説明や、意見交換等を行いました。
③
個別中小企業の経営改善計画や金融支援策について意見交換を行う「経営サポ
ート会議」を開催しました。
④ 「中小企業金融情報交換会議」を開催し、関係機関(川崎市・川崎商工会議所・
(公財)川崎市産業振興財団・川崎信用金庫・(株)商工組合中央金庫川崎支店・(株)
日本政策金融公庫川崎支店と各機関の取組みや市内中小企業の動向等について
意見交換や情報共有を行い、連携を強化しました。
5)再生支援への取組み
経営環境の変化等により業績が悪化し求償債務者となった事業者のうち、再生
の可能性がある事業者について求償権消滅保証や事業再生保証の活用による支
援を図りました。
6)経営支援に対する職員の能力向上
中小企業の現状や将来性を見極めた適切かつ柔軟な経営支援を行うため、中小
企業診断士等の資格取得を推進しました。
(3)回収部門
1)早期回収の着手
回収の効率化や最大化を図るため、代位弁済時に債務者等の現況や所有不動産
の調査を行い、速やかに回収方針や行動計画を策定しました。
また、早期回収につなげるため、代位弁済時の呼出に応じない債務者について
は現地調査を行いました。
2)担保物件の売却推進及び法的措置の強化
有担保求償権については担保物件の任意売却を推進するとともに、破産管財人
弁護士が選任されている場合は早期売却に向けた交渉を行い、交渉に応じない債
務者等については競売申立てを行いました。
また、回収の最大化を図るため、協会広報誌「REPORT」及び協会ホーム
ページへ競売情報を掲載して買受希望者の情報を広く募るなど任意売却への移
行を推進しました。
3)増額交渉の強化
回収の最大化を図るため、定期回収先については増額交渉、不定期回収先につ
いては定期化への交渉を行いました。
時効管理など対債務者残高一覧のデータを活用し、定期的な督促に努めました。
4)サービサーの効率的活用
無担保案件をサービサーへ委託し、資産がある場合や返済交渉に応じない債務
者に対して仮差押等の法的措置を実施しました。
また、毎月連絡会議の開催や、四半期ごとにサービサーの営業所を訪問するな
ど管理課とサービサーの情報共有を図り、効率的な回収に努めました。当年度に
代位弁済した無担保求償権に加え、前年度以前に代位弁済して当年度に無担保と
なった求償権を新たに委託しました。
(4)その他間接部門
1)コンプライアンス態勢の維持・強化
具体的行動計画であるコンプライアンス・プログラムに基づき反社会的勢力排
除や不当要求防止等の内部研修等を実施しました。
①
神奈川県警察から講師を招きコンプライアンスを内容とする「暴力団等の反社
会的勢力への対応研修」を実施しました。
② コンプライアンス委員会を開催し、実施状況やコンプライアンスに係る事案に
ついて報告・協議し、発生時の対応及び再発防止策の審議等を行いました。
③
社会的にも問題となっているSNSを利用した企業情報等の漏洩を未然に防
止するため、外部講師による「情報セキュリティセミナー・SNS研修」を実施
し、自己の行動を振り返るとともに情報管理について細心の注意を払うよう徹底
しました。
2)協会運営の透明性の向上
①
ホームページや「REPORT」を活用して協会が取組んでいる事業内容等の
積極的な情報発信に努めました。
②
ディスクロージャー誌を発行し当協会の取組みや業務状況について掲載する
などして、協会運営の透明性向上に取組みました。
3)反社会的勢力の排除及び不正利用の防止
反社会的勢力による不当な要求、介入を排除し、信用保証業務の健全な運営を
確保するため、神奈川県警察、神奈川県暴力追放推進センター、横浜弁護士会の
協力を得て、「神奈川県内信用保証協会暴力団等排除連絡協議会」の総会や情報
交換会を開催しました。
反社会的勢力に関する情報交換ならびに警察等との連携強化を図るため、神奈
川県企業防衛対策協議会の地区連絡会へ出席し、さらに、緊密な連携を図り反社
会的勢力を排除するため「神奈川県銀行警察連絡協議会」に加盟しました。
4)的確な監査等の実施
① 「川崎市信用保証協会監事監査規程」に基づき、監事による決算予備監査、決
算監査、毎月の出納監査、業務執行状況監査が行われ、指摘項目については改善
に向け取組んでいます。また、
「川崎市信用保証協会監事会運営要領」を制定し、
監査に関する事項についての報告、協議を行うため非常勤監事と監事会を開催し
ました。さらに「内部監査規程」に基づき、四半期毎に自主監査を行うとともに
実地監査・書面監査を実施しました。
② 外部評価委員会を2回開催し、業務実績の客観的評価等によりガバナンスの強
化や経営の透明性向上を図りました。
5)事業継続の確保
災害やシステム障害等の緊急事態における業務の継続を確保するため、安否確
認訓練を行いました。また、事業継続計画(BCP)を実効性のあるものとする
ため、見直しを進めます。
5. 外部評価委員会の意見等
【保証部門】
借換保証や経営力強化保証、更には創業に係る保証といった各種政策保証の推進につ
いて積極的に取り組んだ成果が表れている。殊に、創業に関する保証については協会負
担による信用保証料の優遇や、起業意欲を高めるためのセミナー開催が評価できる。
NPO法人に係る保証については、今後需要が高まることと考えられることから引き
続きの対応が必要と考える。
【期中管理部門】
「信用保証協会中小企業・小規模事業者経営支援強化促進補助金」を活用した期中支
援の取り組み、専門家派遣等による経営改善に向けた支援等は前年度よりも取り組みを
拡大しており評価できる。
なお、事業承継問題への取り組みは、未だ緒に就いたばかりといった状況であるが、
地域経済活性化の重要な課題であり、継続して取り組む事が望まれる。
【回収部門】
求償権回収は、無担保求償権の増加や連帯保証人非徴求等といった環境変化の下、計
画は割込んだものの新たな取り組みを行い前年比108%と改善の傾向が認められる。
回収業務は信用補完制度を維持・存続させるためにも欠くことのできない重要な業務で
あることに鑑み、引き続きその向上に努めることが必要である。
【その他間接部門とコンプライアンス態勢】
ディスクロージャー誌の発行による透明性の向上や適切な監査を行っていることはガ
バナンス向上つながるものであり評価できる。また、協会が中小企業からゆるぎない信
頼を確保するためには、コンプライアンス態勢の充実は極めて重要であり、関連規程制
定等の事務対応をマイナンバー施行に合わせて完了したことは評価できる。
なお、資金運用については低金利という難しい状況にあるものの、経営基盤の強化を
図るためにも引き続き安全かつ効率の良い運用に努めることが望まれる。
【総
括】
信用保証協会には信用保証供与のほかにも経営支援をはじめとするさまざまな役割が
求められており、その期待に応えるためにも、運営基盤強化を図ることはもとより、広
報・ディスクローズの推進等を図り「顔の見える協会」として、中小企業のより良きパ
ートナーとなれるよう不断の努力を希望するものである。