監修:検査部長 深谷眞彦 2008年2月 発行 近森会グループ 皆さんこんにちは。今回は採血の目的についてお話いたします。 各検査項目には「基準値」(以下青字の数値)が設定されていますが、この数値は健康な人の95%に当てはまる数値です。 残りの5%の人は健康であっても「基準値」から少し外れた数値を示すことになり、従って、「基準値」から外れたからといって 直ちに病気であるということにはなりません。また、測定方法が異なると「基準値」も異なる場合もあります。 WBC (白血球数) 40~90 (×102/μl) 白血球は病原微生物に対して体を防衛する細胞です。 細菌などが体に侵入してくると骨髄で盛んにつくられ、血液中の白血球数が増えてきます。 ストレス・タバコの吸い過ぎでも増えます。 RBC (赤血球数) 男性:420~540、女性:380~500 (×104/μl) 血 液 検 査 赤血球は骨髄でつくられ、体の細胞に酸素を渡し、二酸化炭素を受け取って肺まで運んでいます。 赤血球数が増加した場合には多血症と診断されます。 また、赤血球数が減少すると酸素の運搬量が低下して体内が酸素の欠乏状態になります。 HGB (ヘモグロビン・血色素量) 男性:14~18、女性:12~16 (g/dl) ヘモグロビン(血色素)は赤血球の主成分で赤血球が酸素を運搬する際に中心的役割を果たしており、 血液が赤いのはHGBによるものです。なお、このヘモグロビン濃度が減少している状態を貧血といいます。 HCT (ヘマトクリット) 男性:39~50、女性:35~45 (%) 一定量の血液中に含まれる赤血球容積の割合を調べる検査で、貧血や多血症の重症度がわかります。 PLT (血小板数) 12~36 (×104/μl) 血液中の有形成分で、出血したとき、それを止める上で重要な働きをします。 血小板数を測定することで、出血傾向の原因が量的なものなのか(数の減少)、あるいは質的なものなの か(数があっても血小板自体の働きが悪いのか)を推測できます。 GOT (グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ) 0~40 (IU/l)…最近ではASTとも呼ばれています。 肝臓病や心臓病などの有力な指標で、GPTとともに測定されます。 急性・慢性肝炎、肝硬変、脂肪肝、急性心筋梗塞などで上昇します。 GPT (グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ) 0~40 (IU/l)…最近ではALTとも呼ばれています。 肝臓や胆道の病気の有力な指標です。GOTとともに測定され、GOTよりも肝臓に特異的です。 急性・慢性肝炎、アルコール性肝炎、肝硬変、脂肪肝、胆道疾患などで上昇します。 γ-GTP (ガンマ グルタミルトランスペプチターゼ) 0~55 (IU/l)…最近ではγ-GTとも呼ばれています。 アルコール性肝障害や常習飲酒家および薬物性肝障害において上昇します。 ALP (アルカリフォスファターゼ) 115~359 (IU/l) 主に肝臓や骨に多く分布している酵素で、肝臓や骨の病気を知る目安となります。 乳幼児期と10~12歳頃は成人の3~4倍程度高くなります。妊娠後期にも高くなります。 肝 機 能 な ど CHE (コリンエステラーゼ) 男性:242~495、女性:200~459 (IU/l) 肝細胞で作られる酵素です。肝障害の重症度の指標となり肝細胞障害などで低下し、 脂肪肝(肝疾患では例外的)、ネフローゼ症候群では上昇します。 T-BIL (総ビリルビン) 0.3~1.3 (mg/dl) 胆汁に含まれている黄色い色素で、その大部分は老廃赤血球のHGBに由来し、その最終代謝産物です。 肝細胞から胆道系に排泄され、便や尿の色調に関係します。 血液中には微量に存在し、その濃度が高くなると黄疸を呈します。 CPK (クレアチンフォスフォキナーゼ) 男性:24~195、女性:24~170 (IU/l) 心筋や骨格筋などに多量に存在する酵素で、筋肉細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たしており、 これらの組織・細胞の障害を反映し上昇します。急性期の心筋梗塞で上昇しますが、 筋肉を使った過激な運動でも上昇します。 LDH (乳酸脱水素酵素) 115~245 (IU/l) 体内全ての臓器に含まれている酵素です。細胞の変性や壊死を反映します。 肝障害、心筋疾患、筋肉疾患、血液疾患、肺疾患、悪性腫瘍などで上昇します。 AMY (アミラーゼ) 血清:40~130、尿:650以下 (IU/l) 膵臓や唾液中に含まれる糖質分解酵素で 急性膵炎などの膵疾患で上昇します 膵臓や唾液中に含まれる糖質分解酵素で、急性膵炎などの膵疾患で上昇します。 BUN (血液尿素窒素) 8.0~20.0 (㎎/dl) 蛋白質の最終代謝産物として腎臓から尿中に排泄されます。腎機能低下により高くなります。 腎 機 能 CRE (クレアチニン) 男性:0.6~1.2、女性:0.4~0.9 (㎎/dl) 骨格筋のクレアチンの代謝により合成され、尿中へ排泄されます。腎機能障害の程度に応じて上昇します。 UA (尿酸) 男性:3.5~7.5、女性:2.5~6.5 (㎎/dl) 尿酸は、核酸やプリン体代謝の終末産物で、その大部分は尿中に排泄されます。 痛風の原因となる物質です。痛風では、関節内に尿酸塩結晶が析出して急性関節炎が生じ激痛を伴います。 炎 症 CRP (C-反応性蛋白) 0.0~0.6 (㎎/dl) 炎症や組織の破壊が起こるとすぐに増える蛋白質の1つで、急性炎症の指標となります。 健康な人でも風邪や疲れすぎで増えることがあります。 TG (トリグリセライド、中性脂肪) 男性:40~160、女性:28~108 (㎎/dl) 体内にある脂肪の一種。体内エネルギーのうち 使われなかったものは皮下及び内臓脂肪組織に蓄えられます。 高値を示す最大の原因は肥満です。 食べ過ぎ、運動不足、過剰な飲酒でも高値となります。 T-Cho 脂 質 代 謝 メタボリックシンドロームの診断基準 (国内8学会による診断基準 2005年) 内臓脂肪蓄積 ・腹囲(ヘソの高さで測定) + 下記の2項目以上 (総コレステロール) 130~220 (㎎/dl) コレステロールは細胞膜の構成成分であり、血管の強化・維持にも 重要な役割を果たしており、人体になくてはならないものです。 しかし、多すぎると動脈硬化症などの原因となります。 脂肪を多く含む食品を多量に食べると、高値になります。 HDL-Cho (高比重リポ蛋白-コレステロール)…善玉コレステロール 男性:33.0~84.0、女性:38.0~89.0 (㎎/dl) 血清脂質 ・TG:150以上 ・HDL-Cho:40未満 高血圧 ・最高血圧:130以上 ・最低血圧:85以上 血管の掃除をして動脈硬化を防ぐ働きをもっています。 善玉コレステロールの量を調べる検査です。 喫煙、肥満、運動不足、糖尿病などで低下します。 高血糖 LDL-Cho (低比重リポ蛋白-コレステロール)…悪玉コレステロール 140以下 (㎎/dl) 血管に脂肪を沈着させ粥腫(プラーク)の形成などを通して血液の流れを悪くする働きがあり、 虚血性疾患(心筋梗塞・脳梗塞など)をきたす粥状動脈硬化性疾患の直接的な危険因子と考えられています。 GLU 糖 質 代 謝 (グルコース)…血糖値 空腹時:70~110 (㎎/dl) 血液中のブドウ糖のことです。エネルギーとして全身で利用されやすい栄養素 であり、食事や運動などによっていつも血糖値は変化しています。 糖尿病では、インスリンの分泌不足や作用が低下するため血糖値は上昇します。 HbA1c (ヘモグロビンA1c) 4.3~5.8 (%) 過去1~2ヶ月間の平均的な血糖値を反映し、糖尿病の診療指標となります。 蛋 白 質 代 謝 TP 血糖値の採血時には… 食事の影響を受けま すので、最後のお食 事から何時間経過し ているか、確認させて いただきます。 (総蛋白) 6.7~8.3 (g/dl) 身体には多種類の蛋白質が存在していて、それぞれ違う働きをしています。すべての蛋白質の総量を測る ことで、蛋白質の合成や使われ方に異常があるかどうかをみます。 ALB (アルブミン) 3.8~5.3 (g/dl) 血漿蛋白質の主要成分で、血液の浸透圧の維持やビタミン・ホルモン・酵素などを運搬する働きがあります。 体の栄養状態や肝臓・腎臓などの様子がわかります。 Na (ナトリウム) 135~150 (mEq/l) 血清中の陽イオンの90%以上を占め、体内の水分調整に重要な役割を果たしています。 脱水症や糖尿病、慢性腎不全などで上昇し、浮腫・嘔吐・下痢などで低値となります。 K (カリウム) 3.6~5.0 (mEq/l) 電 解 質 代 謝 細胞内を満たしている体液(細胞内液)のおもな陽イオンです。 腎不全、炎症、外傷、熱傷などで高値となり、嘔吐、下痢、ネフローゼ症候群で低値となります。 Cl (クロール) 98~110 (mEq/l) 血清中の陰イオンの大半を占めており、ふつう食塩として摂取され、腎臓を通って尿中に排泄されます。 食塩過剰摂取、脱水症、慢性腎不全などで高値を示し、食塩摂取不足、尿崩症などで低値となります。 Ca (カルシウム) 8.8~10.2 (㎎/dl) 血液中には蛋白に結合したカルシウムとイオン状態のCa2+(イオン化カルシウム)の2種類があり、常に1:1の比率で存在し、 この両方合わせたものを測定します。副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍などで高値となり、 副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、腎不全などで低値となります。
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