言語のエコノミ とエコロジ 言語のエコノミーとエコロジー

言語のエコノミ とエコロジ
言語のエコノミーとエコロジー
―日本語の将来を見据えつつ―
大阪大学サステイナビリティ・サイエンス研究機構
第3回交流WS
金水 敏
(コミュニケ ションデザイン センタ 長/文学研究科教授)
(コミュニケーションデザイン・センター長/文学研究科教授)
子どもの言語と大人の言語
• 子どもの日本語=基本文法+基本語彙(=〈私
ども
本 基本 法 基本 彙 〈私
的〉話し言葉)
• 大人の日本語=高級文法+高級(専門)語彙
+敬語+文体・修辞(=〈公的〉話し言葉+書
きことば)
• ※携帯メールなどの「打ち言葉」は、両者の
中間か。
言語の生物的・文化的・社会的面から
• 普通の環境で育てられると
普通の環境で育てられると、(健常な)子どもは自然に話し始める
(健常な)子どもは自然に話し始める
=子どもの言語(日本語)
→一種の“本能”
• すべての(健常な)人間は、あらゆる人間の言語を話す能力を持っ
すべての(健常な)人間は あらゆる人間の言語を話す能力を持
て生まれてくる。
→バイオ・プログラミング仮説、普遍文法
• 育てられる環境に従って、(通常)一つの母語を選んで習得する。
育てられる環境に従 て (通常) つの母語を選んで習得する
→個別言語の基本文法+基本語彙
• 知的な語彙・表現、文字・書きことば(=大人の言語)は、教育(家
庭 学校)によ て習得する
庭・学校)によって習得する。
→言語の文化・社会的側面
• 日本語は難しいか?
難しく見えるのは だいたい 大人の日本語(表記 敬語等)
難しく見えるのは、だいたい、大人の日本語(表記、敬語等)
• 方言には、書きことばがない=子どもの言語+α
つまり、共通語(標準語)は大人の日本語
大人の言語の細分類
• 大人の言語
大人の言語=地域の言語+国家の言語
地域の言語+国家の言語
• 地域の言語:
方言基盤、敬語を含み、地域における社会活
動を支
動を支えることば。話し言葉。
。話 言葉。
• 国家の言語:
共通語(標準語) 書きことばと公的な話し言
共通語(標準語)。書きことばと公的な話し言
葉。司法、行政、報道、産業、学術、文学、翻
訳など知的営為を支える言葉。
訳など知的営為を支える言葉
国家の言語
大人の
言語
地域の言語
こどもの言語
国家の言葉=共通語
言
語
方言1
方言2
(東京)
英語=グローバル言語
翻訳
国家の言語
地域の言語
子どもの言語
言語1
言語2
英語
まとめ
• 世界には
世界には、経済の発展やグローバリゼーションに伴っ
経済の発展やグロ バリゼ シ ンに伴
て消滅の危機に瀕している言語が多数存在する。危
機言語を守る きかどうかは話者の自己決定に任さ
機言語を守るべきかどうかは話者の自己決定に任さ
れるべきではあるが、個々の言語には生活環境との
対話が蓄積されており、サステイナブルな世界構築の
智恵も蓄えられている 危機言語を守るための援助
智恵も蓄えられている。危機言語を守るための援助
は継続的に行われるべきである。
• グローバル言語(英語等)と翻訳でつながれた国家の
グロ バル言語(英語等)と翻訳でつながれた国家の
言語を持たない言語は、脆弱であり、話者がどんなに
多くても地域の言語に留まってしまう。言語政策として、
英語教育の強化 バイリンガルの養成は必須である
英語教育の強化、バイリンガルの養成は必須である
が、一方で国家の言語としての共通語の絶えざる琢
磨を怠るべきではない。