1 神経変性疾患

講義名:疾患
SBO
キーワード
変性疾患
講義担当者:谷脇考恭(神経内科)
3) パーキンソン病の病態、症候と診断を説明できる。
4)筋萎縮性側索硬化症を概説できる。
5)脊髄小脳変性症を概説できる。
パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症
パーキンソン病
1817 年英国の James Parkinson により、振戦麻痺として記載された。有病率は 10
万人に 100 名とされ、高齢化時代を迎えて増加傾向にある。臨床症候としては、
l)固縮(硬直)、2)振戦、3)寡動または無動、4)姿勢反射障害を4大徴候。
黒質の神経細胞死の機序として、1)
ミトコンドリアの呼吸障害-複合体 I
の低下、2)酸化的ストレス、3)黒
質への毒性物質の関与、4)体質や遺
伝的要素(優性遺伝、劣性遺伝)を示
す家系例において遺伝子異常が同定
された。
パーキンソン
病の病理
黒質のメラニン
神経細胞の
(ドーパミン含有)
変性・脱落
治療として、
1)レボドパ (ドーパ DCI)
キソールなど)
2)ドーパミンアゴニスト(ペルゴリド、タリベ
3)ドロキシドパ
4)セレギリン
5)抗コリン薬
6)定位
脳手術(視床 Vim 核、淡蒼球、視床下核電気刺激)などである。
長期療養で問題となる点は、
1)wearing-off, on-off, delayed on など 2) 歩行障害 3) 発話障害、
嚥下障害、4) 腰痛、骨折等の合併症への対策などである。
進行性核上性麻痺 (Progressive supranuclear palsy)
50~60歳台、核上性外眼筋麻痺(上方, 下方注視障害)、仮性球麻痺、構音
障害、頚部ジストニア、姿勢反射障害、皮質下性痴呆。
筋萎縮性側索硬化症
筋萎縮性側索硬化症 (ALS)は、随意筋を支配する運動神経(上位運動ニュー
ロンと下位運動ニューロン)が選択的に侵される疾患
1) 病理:脊髄前角・脳幹運動神経細胞変性、大脳運動領 Betz 細胞変性、錐
体路変性 (上位, 下位運動ニューロン変性)
2) 頻度:2〜7 人/10 万(グアム島チャモロ族に多発)
3) 年齢:30〜50 歳.
性:男性に多い
4) 原因:弱い遺伝性、強い外因、不明、変異 SOD1 の蓄積?
5) 症状:
a) 下位運動ニューロン症状: 筋萎縮(手は猿手、 鷲手)、筋力低下、
線維束性収縮 (fasciculation)、 舌筋萎縮、球症状。
筋電図: giant MUP、脱神経電位、線維束性収縮電位
b) 上位運動ニューロン症状: 痙性麻痺、深部反射亢進、
病的反射出現、 情動失禁
c)
陰性徴候:眼球運動障害,膀胱直腸障害,感覚障害,じょくそう
6) 検査:筋電図で神経原性変化.血清 CK 正常
7) 予後:平均
3〜 5 年で死亡
運動ニューロン疾患
球症状
構音障害
嚥下障害
ALS
SPMA
PBP
PLS
+
+
-
-
+
-
上位運動
ニューロン徴候
筋力低下
腱反射亢進
病的反射
+
+
+
-
-
+
下位運動
ニューロン徴候
筋力低下
筋萎縮
線維束攣縮
+
-
+
+
-
-
PBP:進行性球麻痺.PLS:原発性側索硬化症
SPMA (脊髄性進行性筋萎縮症)の特殊型
Werdnig-Hoffmann病
乳児期に発症.進行が早く4-5歳で死亡 (Floppy infant)
常染色体劣性遺伝 (5q11.2-13.3).脊髄前角細胞が変性消失
四肢近位筋の筋力低下.筋電図で神経原性変化.血清CK正常
Kugelberg-Welander病
学童期に発症し,進行が遅い.
常染色体劣性遺伝(5q11.2-13.3) .脊髄前角細胞が変性消失
四肢近位筋の筋力低下.筋電図で神経原性変化.血清CK上昇
Kennedy-Alter-Sung症候群
10-20歳代発症し,進行が遅い.脊髄前角細胞が変性消失
伴性劣性遺伝(X染色体のアンドロゲン受容体のCAGリピート延長)
四肢近位筋の筋力低下.球筋の萎縮.女性化乳房
脊髄小脳変性症
脊髄小脳変性症とは緩序進行性の運動失調を主症状とし、病変は主
として小脳、小脳の求心路、遠心路にみられる原因不明の症候群。
頻度:4〜10人/10万
I. 孤発性
A. 多系統萎縮症
小脳症状にパーキンソン二ズム、自律神経障害、錘体路症状
症状:40-60 (平均52) 歳で発症。初発症状は不安定歩行(失調性歩
行)が多く、さらに四肢失調(巧緻運動/変換運動困難、書字障害)、
眼振、失調性言語を呈する。パーキンソン二ズム(筋固縮、無動)、
自律神経障害(起立性低血圧、尿失禁、発汗障害)、深部腱反射亢
進を伴うことあり。
病因:不明だがαシヌクレインの蓄積が関連?
治療:なし
予後:平均 5〜 8年で車椅子、臥床状態、生命予後は10年前後。
B. 晩発性皮質性小脳萎縮症
症状:40-70 (平均55) 歳で発症。小脳症状のみ。
病因:悪性腫瘍、アルコール多飲、ビタミンE欠乏と関連?治療:な
し. 予後:平均 11年で車椅子、臥床状態、生命予後は10-20年
I. 遺伝性
遺伝子座が判明したものをSCA1、SCA2・・と名づけ、今はSCA28
A.SCA 6
症状:35-60 (平均47)歳で発症。初発症状は歩行障害(失調性歩行)
が多く、次第に上肢失調、失調言語、眼症状を呈する。
病因:カルシウムチャンネルのCAG繰返しの延長。ポリグルタミン蓄
積.治療:なし 予後:進行は多系統萎縮症の2倍遅い。
B. SCA 3
症状:USA在住のポルトガル人家系より発見。臨床像が多彩
I型:10歳以降に発症し錘体路→錐体外路の順。小脳症状は軽度
II型:20-40歳代に発症。小脳→錐体路→錐体外路の順。
III型:40歳以降に発症。小脳→末梢神経症状の順
病因:CAG繰返しの延長。ポリグルタミン蓄積
治療:なし 予後:全経過は15-20年
C.DRPLA (歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)
症状:臨床像が多彩。運動失調、舞踏病、ミオクローヌスてんかん
病因:CAG繰返しの延長。ポリグルタミン蓄積。予後:全経過は1020年
脊髄小脳変性症の分類
弧発性
多系統萎縮症
皮質性小脳萎縮症
症候性皮質性小脳萎縮症
(アルコール,薬剤,内分泌
傍腫瘍症候群)
常染色体劣性遺伝
フリードライヒ失調症
ビタミンE単独欠乏性失調症眼
球運動失行と低アルブミン血
症を伴う早発性小脳失調症
常染色体優性遺伝
脊髄小脳失調症1型
脊髄小脳失調症2型
脊髄小脳失調症3型
脊髄小脳失調症6型
脊髄小脳失調症7型
脊髄小脳失調症10型
脊髄小脳失調症12型
歯状核赤核淡蒼球
ルイ体萎縮症
Puratrophin-1異常
脊髄小脳変性症の分類
弧発性
小脳症状のみ
小脳症状+α
皮質性小脳萎縮症
多系統萎縮症
常染色体優性遺伝 脊髄小脳失調症6型
脊髄小脳失調症3型
DRPLA