TMI 中国最新法令情報 ―(2016 年 3 月号)

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TMI 中国最新法令情報
―(2016 年 3 月号)―
TMI 総合法律事務所
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皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。
お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI 中国最新法令情報」をお届けします。記事
の内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下
さい。バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきますので、
併せてご利用下さい。(http://www.tmi.gr.jp/global/legal_info/china/index.html)
目次
一.中国最新法令
1. 中央法規
(1) 保健食品登録及び届出管理弁法
(2) 特殊医学用途配合食品登録管理弁法
2.司法解釈
(1) 最高人民法院による「中華人民共和国物権法」適用に関する若干問題の解釈(一)
二.連載 中国企業法実務/第九弾:刑事法
(第 6 回 刑法各論 4)
三.中国法務の現場より
1. 日系企業の中国における事業展開の方向性と法務の現場における肌感覚
2.上海市 2016 年最低賃金の伸びは鈍る
1
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一.中国最新法令(2016 年 2 月中旬~2016 年 3 月中旬公布分)
1.中央法規
(1) 保健食品 1登録及び届出管理弁法 2
国家食品薬品監督管理総局令第 22 号 2016 年 2 月 26 日公布 2016 年 7 月 1 日施行
① 背景
近年食品安全問題が深刻になりつつあるという背景を受け、2015 年に「史上最厳(も
っとも厳しい)」といわれる食品安全法 3の改正がなされた。食品安全法で定められた、
保健食品、特殊医学用途調合食品及び乳幼児用調合食品等の特殊食品に関する監督・管
理規定4を貫徹施行するため、国家食品薬品監督管理総局は、食品生産経営企業、地方食
品薬品監督管理部門、専門家及び行業組織等、多方面の意見を広く取り入れて検討した
上、
「保健食品登録及び届出管理弁法」
(以下「弁法一」という。)を制定した。弁法一の
実施により、2016 年 7 月 1 日以後、現行の「保健食品登録管理弁法(試行)」5が廃止と
なる。以下、国家食品薬品監督管理総局による解読 6に沿って弁法一の主な内容を紹介す
る。
② 主な内容
ア 保健食品登録、届出の定義 7
登録:登録申請人の申請に対し、食品薬品監督管部門が法定手順、条件に基づき、
保健食品の安全性、保健機能、品質コントロール可能性に関する材料を評価
し、登録の可否を審査・許可する過程をいう。
届出:保健食品生産メーカーが、法定手順、条件に基づき、製品の安全性、保健機
能、品質コントロール可能性に関する資料を食品薬品監督管部門に提出し、
保管、公開される過程をいう。
イ 登録、届出の管轄部門 8
(a) 国家食品薬品監督管理総局
(Ⅰ) 保健食品の登録管理
(Ⅱ) 初輸入のビタミン・ミネラル等栄養物質の補充を目的とする保健食品の届出
(b) 省、自治区、直轄市食品薬品監督管理部門
所轄行政区内の保健食品届出の管理
(c) 市、県食品薬品監督管理部門
所轄行政区内の保健食品の登録、届出の監督
ウ 登録について
1
保健食品とは、特定の保健機能があると謳う食品またはビタミン・ミネラルの補充を目的とする食品のこ
とを指す。すなわち特定の人々の食用にふさわしい、身体を調節する機能があるが、疾病治療を目的とせ
ず、かつ人体にいかなる急性、亜急性、慢性危害を与えない食品のことをいう(保健食品登録管理弁法(試
行)第 2 条、食品安全法第 75 条)
2
《保健食品注册与备案管理办法》
3
《中华人民共和国食品安全法》
4
食品安全法第 74 条~78 条、第 82 条
5
《保健食品注册管理办法(试行)》
6
http://www.sda.gov.cn/WS01/CL1297/145580.html
7
弁法一第 3 条
8
弁法一第 5 条
2
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(a) 対象 9
(Ⅰ) 保健食品原料目録 10以外の原料(以下「目録外原料」という。)を使用した保
健食品
(Ⅱ) 初輸入の保健食品(ビタミン・ミネラル等栄養物質の補充を目的とする保健食
品を除く)
(b) 申請者 11
(Ⅰ) 国産保健食品の場合、中国国内で登記された法人又はその他の組織
(Ⅱ) 輸入保健食品の場合、海外生産メーカー。但し、この場合の申請手続は、海外
生産メーカーの中国常駐代表機構により行うか、中国国内の代理機構に委託す
る必要がある。
(c) 提出書類 12
(Ⅰ) 登録申請表及び提出資料の真実性を保証する法的責任承諾書
(Ⅱ) 申請人の主体登記証明書類の写し
(Ⅲ) 製品研究開発報告
(Ⅳ) 製品配合材料
(Ⅴ) 製品の製造工程資料
(Ⅵ) 安全性及び保健機能の評価資料
(Ⅶ) 保健食品に直接触れる包装材料の種類、名称、関連基準等
(Ⅷ) 製品ラベル、説明書サンプル等
(Ⅸ) 最小の販売包装サンプル 3 つ
(Ⅹ) その他登録審査に関する資料
また、初輸入の保健食品登録については、上記提出書類の他に次の資料の提出も
求められている。
(Ⅰ) 保健食品生産国(地区)政府の主管部門又は法的サービス機関から発行された
申請者が海外生産メーカーであることの資格証明書類、1 年以上販売された証
明文書、又は保険食品海外販売及び食用状況の安全性報告
(Ⅱ) 保健食品生産国(地区)又は国際組織の保健食品に関する技術法規又は基準の
資料
(Ⅲ) 保健食品生産国(地区)における販売用包装、ラベル、説明書の実物サンプル
(Ⅳ) 申請人の中国常駐代表機構が登記手続を行う場合、「外国企業中国常駐代表機
構登記証」及びその写し。中国代理機構に委託する場合、公証された委託書原
本及び受託代理機構の営業許可証写し
(d) 登録の手順及び所要期間
(Ⅰ) 受理 13:受理後 3 営業日以内に審査機構に転送。
(Ⅱ) 審査評価 14:受理材料を受けてから 60 営業日以内に審査作業を完了する。特
殊な事情がある場合、20 営業日延長可能。
9
弁法一第 9 条
保健食品原料目録は現在制定中である(http://www.sda.gov.cn/WS01/CL0087/144550.html)
11
弁法一第 11 条
12
弁法一第 12 条、第 13 条
13
弁法一第 15 条
14
弁法一第 16 条
10
3
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資料補正 15:資料補正が要求された場合、3 ヶ月以内に一回で補正完了。
現場検査 16:検査機構が検査通知を受けた後の 30 営業日以内に検査を完了。
再検証 17:検証機構が委託を受けた後の 60 営業日以内に完了。
再審査 18:申請人から不登録意見通知への異議の申出がある場合、再審査を行
い、申出受理日から 30 営業日以内に決定を下す。
(Ⅶ) 行政決定 19:申請を受理した後の 20 営業日以内に登録可否を決定する。
(Ⅷ) 登録証書、不登録決定書の発行20:決定日から 10 営業日以内に発行する。
(Ⅸ) 審査評価、行政決定の所要期間には上記(Ⅲ)ないし(Ⅵ)の所要期間を含まな
い21。
(Ⅹ) 初輸入の保健食品の場合、海外生産メーカーの実際の状況により、海外現場検
査、確認検証の期間を確定する 22。
(e) 登録拒否の救済 23
登録拒否の決定に対し異議があれば、国家食品薬品監督管理総局に行政再審査を
請求するか、又は、人民法院に行政訴訟を提起することができる。
(f) 技術譲渡について 24
保健食品登録人が技術を譲渡する場合、譲受人は譲渡人の指導に基づき再度保健
商品登録申請をする必要がある。但し、審査手順が簡素化される。
(g) 登録証書
(Ⅰ) 有効期間 25:5 年間
(Ⅱ) 更新 26:有効期間満了日の 6 ヶ月前までに申請。
(Ⅲ) 紛失・毀損 27:受理機構に新証書の発行を申請する。紛失の場合、省レベル薬
品監督管理部門のウェブサイトに紛失声明を発表しなければならない。毀損の
場合、原登録証書の原本を返還しなければならない。
エ 届出について
(a) 対象 28
(Ⅰ) 使用された原料が保健食品原料目録に掲げられた保健食品
(Ⅱ) 初輸入のビタミン・ミネラル等栄養物質の補充を目的とする保健食品
(b) 届出人 29
(Ⅰ) 国産保健食品の場合、保健食品生産メーカー
(Ⅲ)
(Ⅳ)
(Ⅴ)
(Ⅵ)
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
弁法一第 19 条
弁法一第 20 条
弁法一第 21 条
弁法一第 24 条
弁法一第 26 条
弁法一第 28 条
弁法一第 27 条
弁法一第 22 条
弁法一第 29 条
弁法一第 30 条
弁法一第 42 条
弁法一第 32 条
弁法一第 44 条
弁法一第 45 条
弁法一第 46 条
4
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(Ⅱ) 輸入保健食品の場合、保健食品の海外生産メーカー
(c) 提出書類 30
(Ⅰ) 前述ウ(c)に述べた登録提出書類のうち、(Ⅳ)~(Ⅷ)の資料
(Ⅱ) 届出申請表及び提出資料の真実性を保証する法的責任承諾書
(Ⅲ) 届出人の主体登記証明書類の写し
(Ⅳ) 製品技術要求の材料
(Ⅴ) 適法な資格を持つ試験・検証機構が発行した製品技術要求全項目に合致した試
験・検証報告
(Ⅵ) その他製品安全性、保健機能を表明できる資料
また、輸入保健食品届出の場合、上記(Ⅰ)~(Ⅵ)の書類の他に、前述ウ(c)
に述べた、初輸入の保健食品登録にあたって更に必要とされる(Ⅰ)~(Ⅳ)の資
料を提出する必要がある。
オ ラベル、説明書 31
疾病予防・治療機能に係る内容を記載してはならず、当該製品が薬物を代替するこ
とができないことを表明しなければならない。
カ 法的責任32
(a) 真実を隠蔽し、虚偽資料を提出して、登録を申請する場合、不受理又は不登録と
するほか、警告を与える。また、1 年間再申請ができない。犯罪に至った場合、刑
事責任を追及する。
(b) 詐欺、賄賂等の不正手段により保健食品登録証書を取得した場合、登録証書の取
消及び 1 万元以上 3 万元以下の過料に処し、3 年間再申請ができない。犯罪に至っ
た場合、刑事責任を追及する。
(c) みだりに保健食品登録証書を譲渡する場合、保健食品登録証書を偽造、改竄、販
売、貸借する場合、1 万元以上 3 万元以下の過料に処する。犯罪に至った場合、刑
事責任を追及する。
(2) 特殊医学用途配合食品登録管理弁法 33
国家食品薬品監督管理総局令第 24 号 2016 年 3 月 7 日公布 2016 年 7 月 1 日施行
① 背景
特殊医学用途配合食品(以下「調合食品」という。)は(1)に述べた保健食品と同様
に特殊食品として取り扱われている。調合食品の販売対象者の特殊性、敏感性から、1980
年代に、調合食品は薬品として監督・管理されており、薬品登録を経た上で販売される
時期があった。その後、国務院衛生行政部門は調合食品に関する食品安全国家基準 34を
発表し、調合食品の定義、類別、栄養要求、技術要求、ラベル要求、生産規範等につい
て、より詳細な規定を置いた。2015 年改正の食品安全法第 80 条で、調合食品に関し、
30
弁法一第 48 条、第 49 条
弁法一第 55 条
32
弁法一第 70 条~第 72 条
33
《特殊医学用途配方食品注册管理办法》
34
「食品安全国家基準 特殊医学用途幼児配合食品通則」(GB25596-2010)、「食品安全国家基準 特殊
医学用途配合食品通則」(GB29922-2013)、「食品安全国家基準 特殊医学用途配合食品良好生産規範」
(GB29923-2013)が挙げられる。
31
5
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国家食品薬品監督管理部門に登録しなければならない旨の規定が定められたが、かかる
規定を貫徹執行し、登録を規範化させ、その安全性を確保するために、
「特殊医学用途配
合食品登録管理弁法」(以下「弁法二」という。)が制定された。
弁法二は、主に調合食品申請、登録条件及び手順、製造工程、臨床試験要求、ラベル
及び説明書の要求、法律責任等について規定した。以下、国家食品薬品監督管理総局に
よる解読 35に沿って弁法二の主な内容を紹介する。
② 主な内容
ア 調合食品の定義 36
食事制限がある者や消化吸収・新陣代謝障害又は特定の疾病状態にある者の栄養素、
食事上の特殊な需要を満たすために、加工調合されて作られた調合食品をいい、次の
ものが含まれる。
(a) 生後 0 ヶ月から 12 ヶ月の幼児を対象とする特別な医学用途幼児用調合食品
(b) 1 歳以上を対象とする特別な医学用調合食品
イ 登録の管轄部門 37
国家食品薬品監督管理総局
ウ 登録申請者 38
(a) 中国国内で調合食品を生産、販売する生産メーカー
(b) 調合食品を中国に輸出しようとする海外生産メーカー
エ 提出書類 39
(a) 登録申請書
(b) 技術資料:製品研究開発報告、製品配合設計及びその根拠、製造工程資料、製品
標準要求、製品ラベル、説明書サンプル
(c) 関連報告:試験サンプル検証報告、安定性試験報告等
(d) 証明材料:研究開発、生産、検証能力証明資料及びその他証明資料
(e) その他製品の安全性、営業充足性及び特殊医学用途臨床効果の資料
(f) 特定全営業配合食品 40登録の場合、更に臨床試験報告を提出する必要がある。
オ 登録の手順及び所要期間 41
(a) 行政受理:申請材料を受領した後の 5 営業日以内に受理可否を決定する。
(b) 審査評価:受理材料を受けてから 60 営業日以内に審査作業を完了する。特殊な事
情がある場合、30 営業日延長可能。
(c) 資料補正:資料補正が要求された場合、6 ヶ月以内に一回で補正完了。
(d) 現場検査:検査機構が検査通知を受けた後の 20 営業日以内に生産企業現場検査、
40 営業日以内に臨床試験現場検査を行う。
(e) サンプル抽出検証:食品検証機構は委託を受けた後の 30 営業日以内に完了する。
(f) 再審査:申請人から不登録意見通知に対する異議の申出がある場合、再審査を行
35
http://www.sda.gov.cn/WS01/CL1297/146743.html
弁法二第 48 条
37
弁法二第 5 条
38
弁法二第 8 条
39
弁法二第 9 条
40
具体的には、「食品安全国家基準 特殊医学用途配合食品通則(GB29922-2013)」付録 A に規定された
13 種類の食品(http://www.moh.gov.cn/ewebeditor/uploadfile/2015/04/20150414114624848.pdf )
41
国家食品薬品監督管理総局による解読の第 8 条、弁法二第 11 条から第 18 条
36
6
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い、申出受理日から 30 営業日以内に決定を下す。
(g) 行政決定:申請を受理した後の 20 営業日以内に登録可否を決定する。
(h) 登録証書、不登録決定書発行:決定日から 10 営業日以内に発行する。
(i) 審査評価、行政決定の所要期間には上記(c)ないし(e)の所要期間を含まない。
(j) 輸入調合食品の場合、海外生産メーカーの実際の状況により、現場検査、サンプ
ル抽出検証の期限を確定する。
カ 臨床試験 42
(a) 試験対象:特定全営業配合食品
(b) 試験方法:申請人から資格のある臨床試験機構に委託する。
キ 登録証書有効期間及び更新
(a) 有効期間 43:5 年間
(b) 更新 44:有効期間満了の 6 ヶ月前までに次の更新申請資料を提出する。
(Ⅰ) 登録更新申請書
(Ⅱ) 調合食品質量安全管理情況
(Ⅲ) 調合食品質量管理体系自己点検報告
(Ⅳ) 調合食品追跡評価状況
ク 法的責任45
(a) 真実を隠蔽し、又は、虚偽資料を提出して、登録を申請した場合、不受理又は不
登録とするほか、警告を与える。また、1 年間再申請ができない。
(b) 詐欺、賄賂等の不正手段により保健食品登録証書を取得した場合、登録証書の取
消及び 1 万元以上 3 万元以下の過料に処し、3 年間再申請ができない。
(c) 登録証書を偽造、改竄、販売、貸借、譲渡する場合、県以上の食品薬品監督管理
部門により是正を命じ、警告し、また、1 万元以下の過料に処し、情状が重い場
合、1万元以上 3 万元以下の過料に処する。
(d) 製品安全性、栄養充足性及び特殊医学用途臨床効果に影響しない事項を変更する
場合、法に基づいた変更申請をしなければ、是正を命じ、警告する。是正されな
い場合には、1 万元以上 3 万元以下の過料に処する。安全性、栄養充足性、特殊
医学用途臨床効果に影響する事項(調合食品の配合、製造工程等)を変更した場
合、法に基づいた変更申請をしなければ、食品安全法第 124 条第 1 項46に基づき
処罰する。
ケ その他
中国において調合食品を生産、販売するには、上記に述べた配合食品登録証書の
ほかに、
「食品生産許可管理弁法」47に基づく食品生産許可証を取得する必要もある。
42
弁法二第 29 条
弁法二第 19 条第 2 項
44
弁法二第 24 条
45
弁法二第 43 条~第 46 条
46
食品安全法第 124 条第 1 項に定められた罰則として、具体的には、「犯罪に至らなかった場合、県級以
上の食品薬品監督管理部門により違法所得、違法生産経営の食品、食品添加剤を没収し、更に違法生産に利
用された工具、設備、原料等の物品を没収することができる。違法生産経営の食品、食品添加剤の価値が 1
万元未満である場合、5 万元以上 10 万元以下の過料を併科し、その価値が 1 万元以上である場合、価値の
10 倍以上 20 倍以下の過料を併科する。情状が重い場合は、営業許可証を取り消す」とされている。
47
《食品生产许可管理办法》(2015 年修正)国家食品薬品監督管理総局令第 16 号 2015 年 10 月 1 日施行
43
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2.司法解釈
(1) 最高人民法院による「中華人民共和国物権法」適用に関する若干問題の解釈(一) 48
最高人民法院 2016 年 2 月 22 日公布 2016 年 3 月 1 日施行
① 背景
物権法は 2007 年 10 月 1 日に施行された後も、実務上、法律規定の適用について不明
確な部分が多かったことから、これらの問題を解決するために、条文内容の明確化を図
るための「最高人民法院による『中華人民共和国物権法』適用に関する若干問題の解釈
(一)」(以下「本解釈」という。)が公布された。
2016 年 2 月 23 日に開かれた本解釈の記者会見 49における、本解釈制定部署の主要責任
者である程新文氏(最高人民法院民一庭庭長)の紹介によると、本解釈をもって、主に
(a)実務における不動産登記と民事訴訟の関係に対する誤った認識とやり方、
(b)不動
産物権者による不動産の処分行為に対し、予告登記の効力が不当に拡大されて適用され
ていること、(c)自動車等の特殊動産に関する物権変動における「第三者」の範囲に関
する理解の偏差、
(d)物権法第 28 条の不当な拡大適用、
(e)持分共有者による共有持分
の優先購入権に関する実務運用及び司法判断基準の不統一、(f)善意取得に関する規定
の解釈、証明責任等の実務上の問題を解決したという。
② 主な内容
本解釈は合計 22 の条文から構成され、主に以下の六つの内容に重点を置かれている。
ア 不動産登記と物権確認又は基礎関係の紛争について
実務上、不動産登記に係る不動産紛争は行政訴訟で解決すべきであるとの考え方が
存在するところ、民事、行政審判部署の相互の責任押し付けを防ぎ、不動産登記簿の
証明力を規範化するため、本解釈は次の内容を規定した。
(a) 不動産物権の帰属、不動産物権登記の基礎となる売買、贈与、抵当等から生じた
紛争により民事訴訟を提起した場合、人民法院が受理しなければならない(第 1
条)。
(b) 当事者が、不動産登記簿の記載が真の権利状態と相違があり、当事者自身が不動
産物権の本当の権利者であることを証明できれば、当事者の物権確認の請求を支
持する(第 2 条)。
イ 予告登記 50の効力について
予告登記制度に基づき、予告登記をした権利者の同意を得ずになされた不動産に対
する処分に関し、いかなる処分が無効とされるのかについて、実務上の認定が曖昧で
あり、過剰に適用される傾向にあったため、本解釈はその適用範囲を「不動産所有権
の移転、又は建設用地使用権、地役権、抵当権等その他物権の設定」に限定するよう
解釈した(第 4 条)。
ウ 特殊動産の譲渡における「善意の第三者」について
48
最高人民法院关于适用《中华人民共和国物权法》若干问题的解释(一)法釈(2016)5 号
http://www.chinacourt.org/article/subjectdetail/id/MzAwNEgzM4ABAA%3D%3D.shtml
50
当事者は不動産物権の売買に関する協議書を締結した後、将来の物権の実現を保障するため、その約定
に従い登記機構に予告登記することができる。予告登記後、予告登記権利者の同意なく、当該不動産を処分
したとしても、かかる物権の効力は生じない。債権消滅、又は不動産登記を行うことができる日から 3 ヶ月
以内に不動産登記を申請しない場合、予告登記は効力を失う(物権法 20 条)。
49
8
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近年、船舶、航空機、自動車等の特殊動産による紛争が年々増加する傾向にある。
特に自動車が普及する中、中古車取引及びその他経済活動により、自動車の実際の権
利者と登記権利者が一致していない場合も尐なくない。
そこで、本解釈は、
「船舶、航空機、自動車等の所有権を移転する際、譲受人が既に
対価を支払い、占有を取得した場合には、登記がされていなかったとしても、譲渡人
の債権者が物権法第 24 条 51に基づき、自らを「善意の第三者」と主張することを支持
しない(その他規定がある場合を除く)」旨の内容を規定した(第 6 条)。
エ 物権変動の効力が生じる人民法院、仲裁委員会の法律文書の範囲について
人民法院、仲裁委員会の法律文書等による物権の変動は、法律文書の効力発生の時
より効力が生じると定めた物権法第 28 条の規定に関し、ここにいう法律文書の適用範
囲は司法実務において議論されてきた難問である。これにより生じる紛争を防ぐため、
本解釈は、
「人民法院、仲裁委員会が共有不動産又は動産を分割する案件において言い
渡した、元の物権関係を変更することを内容とした、有効な判決書、裁決書、調停書、
及び人民法院が執行中に言い渡した競売成立裁定書、代物弁済裁定書を第 28 条にいう
法律文書とする」旨の内容を規定した(第 7 条)。
オ 持分共有者の優先購入権の司法保護について
物権法第 101 条では、持分共有者は持分を譲渡する場合、その他の共有者は同等の
条件において優先購入権があると規定されている。しかし、条文が原則的な内容を定
めているに過ぎず、実務上の運用と司法判断との不一致が問題となっている。この点、
本解釈は、第 9 条から第 14 条までの 6 条文を用いて内容をより明確にした。
(a) 持分の権利主体が承継、遺贈等により変更した場合、その他持分共有者の優先購
入権の主張を支持しない。その他の約定がある場合を除く(第 9 条)。
(b) 物権法第 101 条にいう「同等の条件」は、譲渡価格、支払方法及び支払期限等に
より判断される(第 10 条)。
(c) 優先購入権の行使期間について、約定がない場合又は約定が不明な場合は、(Ⅰ)
譲渡人が他の持分共有者に対して出した通知に行使期間の記載があれば、その期
間に従う、(Ⅱ)通知に行使期間がない、又は行使期間が通知の送達日から 15 日未
満とされている場合、15 日とする、(Ⅲ)未通知の場合、その他持分共有者が最終
の確定的な同等の条件を知った又は知るべきである日から 15 日とする、(Ⅳ)未通
知でかつ他の持分共有者が最終の確定的な同等の条件を知った又は知るべきであ
ることを確定できない場合、持分移転日から 6 ヶ月とする(第 11 条)。
(d) 他の持分共有者は、(Ⅰ)(c)に掲げられた法定期間内に優先購入権を主張しなかっ
た、又は主張したが、値下げ、譲渡人の負担を増やす等の実質的変更を要求した
場合、 (Ⅱ)優先購入権が侵害されたことを理由に、持分譲渡契約の取消又は無効
だけを要求する場合は、その要求を支持しない(第 12 条)。
(e) 持分共有者間での持分譲渡に対する、他の持分共有者の優先購入権主張を支持し
ない。但し、その他の約定がある場合を除く(第 13 条)。
(f) 2 以上の持分共有者が優先購入権を主張し、合意に至らなかった場合、譲渡時の
各自持分に応じた優先購入権の行使については支持する(第 14 条)。
51
船舶、航空機及び自動車の物権の設定、変更、譲渡及び消滅は、登記を経なければ、善意の第三者に対
抗することはできない(物権法第 24 条)
9
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カ
善意取得制度の適用について
物権法第 106 条に規定した善意取得に係る紛争は、実務上は多く見られる。そこで、
善意取得制度への理解の相違を解消し、正しい適用を図るために解釈三は下記の通り
規定した。
(a) 譲受人は、不動産又は動産を譲り受ける際、譲渡人に処分権がないことを知らず、
かつ重大な過失がない場合、善意とみなす。真の権利者は譲受人の善意でないこ
との立証責任を負う(第 15 条)。
(b) 以下のいずれかに該当する場合、不動産の譲受人は、譲渡人に処分権がないこと
を知っているものとみなす(第 16 条)。
(Ⅰ) 登記簿に有効な異議登記が存在する場合
(Ⅱ) 予告登記の有効期間内に、予告登記権利者の同意を得なかった場合
(Ⅲ) 登記簿に司法機関又は行政機関による不動産の差押え又はその他の方法で不
動産権利を制限した裁定、決定が記載された場合
(Ⅳ) 譲受人が登記簿に記載した権利主体が間違っていることを知った場合
(Ⅴ) 譲受人が、法に基づき他人が不動産物権を享有していることを知った場合
(c) 譲受人が動産を譲り受けた際、取引相手、場所、タイミング等が取引習慣に合致
しない場合、譲受人に重大な過失があるとみなす(第 17 条)。
(d) 物権法第 106 条第 1 項第 1 号にいう「譲受人が不動産又は動産を譲り受けた時点」
とは、法により不動産物権の移転登記又は動産の引渡が完了した時点を指す。物権
法第 25 条の規定により譲受人が既に動産を占有している場合の引渡について、その
法律行為の効力は、動産引渡の時点から生じる。物権法第 26 条の規定により第三者
が動産を占有した場合の引渡について、その法律行為の効力は、譲渡人と譲受人の
間の原物返還請求権に関する協議の効力発生の時から生じる(第 18 条)。
(e) 物権法第 106 条第 1 項第 2 号にいう「合理的価格」は、対象物の性質、数量及び
支払方法及び取引地の市場価格、取引習慣により総合的に認定する(第 19 条)。
(f) 船舶、航空機、自動車等の引渡は、物権法第 106 条第 1 項第 3 号に規定した善意
取得の条件 52に合致するとみなす。
(g) 以下のいずれかに該当する場合、譲受人の善意取得制度による所有権取得の主張
は支持しない。
(Ⅰ) 譲渡契約が、契約法第 52 条に定める規定に違反し、無効となった場合
(Ⅱ) 譲渡契約が、譲受人による詐欺、脅迫又は他人の危急につけこみ、相手方を真
実の意思に背かせる行為等の法定事由により取消された場合
(蒋丹丹・中国法顧問)
52
善意取得の要件の一つとして、「譲渡される不動産又は動産が法律規定により登記すべきものである場
合、既に登記がなされていること、登記が不要である場合は、すでに譲受人への引渡がなされていること」
が規定されている。特殊動産については、登記が必要とされているが、物権変動の要件とされていない。そ
のため、登記がなされなくても、善意取得の適用対象になると解釈される。
10
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二.連載 中国企業法実務
第九弾:刑事法(第 6 回/全 8 回)
第1回
2015 年 10 月号
中国刑法の特徴
第2回
2015 年 11 月号
刑法総則
第3回
2015 年 12 月号
刑法各論 1
第4回
2016 年 1 月号
刑法各論 2
第5回
2016 年 2 月号
刑法各論 3
第6回
2016 年 3 月号
刑法各論 4
第7回
2016 年 4 月号
刑事訴訟法
第8回
2016 年 5 月号
治安管理処罰法
第6回
刑法各論 4
1.背景
本連載の第 6 回となる今月号は、中国刑法の各論を取り上げる最終号である。今月号で
は、日本企業及びその従業員等の中国現地における経営活動に密接な関係にある内容とし
て、市場秩序攪乱、財産侵害及び贈収賄に関する罪について取り上げる。
中国で法人等を設立し、中国国内で経営活動を行う場合、当該法人等及び日本からの本
社出向者を含む全ての従業員等が中国国内市場の秩序を守り、国内市場の秩序を攪乱する
ような行為がないようにしなければならない。また、従業員等の個人が中国国内で就労・
生活している以上、勤務時間中又は日常生活で遭遇しうる刑法上の財産侵害に関する罪に
ついても一定程度の理解が必要と考える。
さらに、中国企業との商取引において、長い間外資企業が悩まされている問題として、
現地での贈収賄問題が挙げられる。近年、習近平政権の腐敗撲滅キャンペーンにより、中
国当局による国の職員等への贈賄、民間企業間の贈収賄に対する摘発と処罰が強化され、
日系企業を含む外資企業においては、中国の検察当局により起訴され、中国国内の裁判で
刑事罰が言い渡される事例が増えている。このような背景の下、贈収賄の立件基準及び刑
事罰等に関する初歩的な知識と理解が必要不可欠といえる。
以下、市場秩序攪乱、財産侵害及び贈収賄に関する主な罪について紹介する。
2.市場秩序攪乱に関する罪
(1) 商業的信用、商品の評判を損なう罪 53
不正競争防止法 54では、経営者は、事実を捏造し、虚偽の事実を流布し、競争相手の
商業的信用、商品の評判を損なってはならないとされている 55。
中国の行政法令である不正競争防止法に対して、刑法上、虚偽の事実を捏造し、かつ
流布し、他人の商業的信用又は商品の評判を損ない、他人に重大な損害をもたらし、又
53
54
55
刑法第 221 条
《中华人民共和国反不正当竞争法》
不正競争防止法第 14 条
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はその他の重い情状のある者は、2 年以下の有期懲役もしくは拘役に処し、罰金を併科
し、又は罰金を単独で科すとされている。
(2) 虚偽広告罪 56
不正競争防止法では、経営者は広告又はその他の手段を利用し、商品の品質、原材料
名、性能、用途、生産者、有効期限、産地等を誤認させる虚偽の宣伝をしてはならず、
広告事業者は、虚偽の広告であることを明らかに知り、又は知りうべき状況において、
これを代理し、デザインし、制作し、発表してはならないとされている 57。
刑法では、不正競争防止法で禁止されている、上記虚偽宣伝行為について、広告主、
広告経営者又は広告発布者による虚偽宣伝の情状が重い場合には、2 年以下の有期懲役
もしくは拘役に処し、罰金を併科し、又は罰金を単独で科すとしている。
(3) 通謀入札罪 58
国有企業、国有資産が関わるプロジェクトではよく見られる競争入札の方式であるが、
入札者が通謀して入札した場合に刑事責任が問われるおそれがある。不正競争防止法で
は、通謀して入札し、入札価格を引き上げ、又は入札価格を引き下げること、入札者と
入札募集者が、互いに結託することにより、競争相手の公正な競争を排除することが禁
止されている 59。
刑法では、入札者が、談合して入札額を申し出、入札募集者又は他の入札者の利益を
損ない、情状が重い場合には、3 年以下の有期懲役もしくは拘役に処し、罰金を併科し、
又は罰金を単独で科すと定め、また、入札者と入札募集者とが通謀して入札し、国、集
団又は国民の適法な利益を損なった場合にも、同様に処罰するとされている。
(4) 契約詐欺罪 60
企業の経営活動において必ず発生するとも言える契約行為であるが、一定の不法占有
の目的で契約を締結し、契約の相手当事者の財物を騙し取った場合には、刑事罰を受け
るおそれがある。特に、以下の行為は刑法によって明確に禁止されているため、契約締
結の際に、これらの行為がないように留意することが必要である。
(a) 虚構の単位の名義により、又は他人の名義を冒用して契約を締結したこと
(b) 偽造され、変造され、無効となった手形小切手又はその他の虚偽の財産権証明書
を担保としたこと
(c) 実際の履行能力を有しないにもかかわらず、まず尐額の契約を履行し、又は契約
の一部を履行する方法により、相手方当事者を誘惑して契約を継続して締結させ、
及び履行させたこと
(d) 相手方当事者が給付した商品、商品代金、前払金又は担保財産を収受した後に逃
亡隠匿したこと
56
57
58
59
60
刑法第 222 条
不正競争防止法第 9 条
刑法第 223 条
不正競争防止法第 15 条
刑法第 224 条
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上記の行為により相手方当事者の財物を騙し取った場合、又はその他の方法により相
手方当事者の財物を騙し取った行為(第 224 条第 1 項第 5 号)があると認められた場合、
金額及び情状に応じて、3 年以下の有期懲役もしくは拘役、罰金の併科、又は罰金の単
科(金額が比較的大きい場合)、3 年以上 10 年以下の有期懲役、罰金の併科(金額が巨
額な場合、又は、その他の重い情状のある場合)、もしくは 10 年以上の有期懲役又は無
期懲役、罰金又は財産没収の併科(その他の特に重い情状のある場合)とされる可能性
がある。
(5) 不法経営罪 61
外国投資の禁止、制限分野で事業を行った場合、従事・展開する事業が許認可事業に
属し、許認可を取得せずに事業を行った場合には、刑法に違反する可能性があるため、
市場参入前に参入分野について、専門家のアドバイスを受けながら慎重な検討をするこ
とが重要である。以下の不法経営行為(及び市場秩序を重大に攪乱するその他の不法経
営行為 62)があり、市場秩序を攪乱し、情状が重い場合は、刑法上の不法経営罪を犯し
たとして刑事責任が問われるおそれがある。
(a) 許可を得ずに、法律又は行政法規に定める専営又は専売物品又はその他の売買が
制限される物品を経営する行為
(b) 輸出許可証、輸出原産地証明及びその他の法律又は行政法規の定める経営許可証
又は認可文書を売買する行為
(c) 国の関連主管部門の認可を得ずに、証券、先物、保険業務を不法に経営し、又は
資金支払決済業務に不法に従事する行為
刑法では、不法経営行為をし、市場秩序を攪乱し、情状が重い者については、5 年以
下の有期懲役もしくは拘役に処し、違法所得と同額以上 5 倍以下の罰金を併科し、又は
罰金を単独で科すとされ、情状が特に重い場合には、5 年以上の有期懲役に処し、違法
所得と同額以上 5 倍以下の罰金又は財産没収を併科するとされている。
(6) 虚偽証明文書提供罪、重大な誤りのある証明文書発行罪 63
資産評価、会計監査、法律サービス等を提供する者が、虚偽の証明文書又は重大な誤
りのある証明文書を発行した場合には、刑法違反になり、刑事罰を受ける可能性がある。
刑法では、資産評価、出資検査、検証、会計、会計監査及び法律サービス等の職責を
引き受ける仲介組織の職員が、虚偽証明文書を故意に提供し、情状が重い場合には、5
年以下の有期懲役又は拘役に処し、罰金を併科すると定められ、職員が他人の財物を要
求し、又は他人の財物を不法に収受して、前記の罪を犯した場合には、5 年以上 10 年以
下の有期懲役に処し、罰金を併科するとされている。
また、上記の職員の重大な職務怠慢により、発行した証明文書に重大な事実の誤りが
あり、重大な結果をもたらした場合には、3 年以下の有期懲役もしくは拘役に処し、罰
金を併科し、又は罰金を単独で科すとされている。
61
62
63
刑法第 225 条
刑法第 225 条第 1 項第 4 号
刑法第 229 条
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(7) 商品検査逃避罪 64
貿易業務等海外との商品輸出入を頻繁に行っている場合に、特に注意しなければなら
ないのは、輸出入商品の輸出入検査である。
刑法では、輸出入商品検査法に違反し、商品検査を逃れ、商品検査機構の検査を経な
ければならない輸入商品につき検査を経ずに無断でこれを販売し、使用し、又は商品検
査機構の検査を経なければならない輸出商品につき検査合格を経ずに無断でこれを輸出
し、情状が重い者は、3 年以下の有期懲役もしくは拘役に処し、罰金を併科し、又は罰
金を単独で科すとされている。
(8) 組織等が市場秩序攪乱に関する罪を犯した場合の処罰 65
刑法によれば、法人等の単位が、上記(1)から(7)の市場秩序攪乱に関する罪を犯した
場合、単位に罰金を科し、かつその直接に責任を負う主管者及びその他の直接責任者は、
上記各条の規定により処罰されることになる。
3.財産侵害に関する罪
(1) 職務上横領罪 66
刑法では、会社、企業又はその他の単位の者が、職務上の便宜を利用し、当該単位の
財物を自己の所有物として不法に占有し、金額が比較的大きい場合には、5 年以下の有
期懲役又は拘役に処し、金額が巨額である場合には、5 年以上の有期懲役に処し、財産
没収を併科することができるとされている 67。
また、国有の会社、企業又はその他の国有組織において公務に従事する者並びに国有
の会社、企業又はその他の国有組織が非国有の会社、企業及びその他の組織に派遣し公
務に従事させる者が、上記の行為をした場合には、刑法第 382 条 68、第 383 条 69の規定に
より罪を認定し、処罰するとされている。
(2) 資金流用罪 70
刑法では、会社、企業もしくはその他の単位の従業員が、職務上の便宜を利用し、当
該単位の資金を流用して、個人の使用に供し、又は他人に貸し付けた場合で、(a)金額が
比較的大きく、3 か月を超えて返還しない場合、(b)3 か月が経過していないが金額が比
64
刑法第 230 条
刑法第 231 条
66
刑法第 271 条
67
《最高人民检察院、公安部关于公安机关管辖的刑事案件立案追诉标准的规定(二)》(公通字[2010]23
号、以下「立件訴追基準に関する規定」という。)によれば、職務上横領罪の立件訴追基準は、5000 元か
ら 10000 万元以上となっている。
68
刑法第 382 条(汚職罪)
国の職員が、職務上の便宜を利用し、公共の財物を横領し、窃取し、詐取し、又はその他の手段により不
法に占有した場合には、汚職罪とする。
国家機関、国有の会社、企業、事業組織、人民団体の委託を受け国有資産を管理し、取り扱う者が、職務
上の便宜を利用し、国有の財物を横領し、窃取し、詐取し、又はその他の手段により不法に占有した場合に
は、汚職として処理する。
前 2 項に掲げる者と結託し、共同で汚職した者は、共犯として処理する。
69
刑法第 383 条は、第 382 条(汚職罪)の具体的な処罰規定である。
70
刑法第 272 条
65
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較的大きく、営利活動をする場合、又は(c)不法活動をする場合には、3 年以下の有期懲
役又は拘役に処し、流用した当該単位の資金額が巨額であり、又は金額が比較的大きく
返還しない場合には、3 年以上 10 年以下の有期懲役に処するとされている 71。
また、国有の会社、企業又はその他の国有単位において公務に従事する者及び国有の
会社、企業又はその他の国有単位が非国有の会社、企業及びその他の単位に派遣されて
公務に従事する者が、上記の行為をした場合は、刑法第 384 条72の規定により罪を認定
し処罰するとされている。
刑法上の「職務上横領罪」及び「資金流用罪」は、共に会社等の単位の財産権を侵害
する罪であり、両罪に類似する要素が多いが、通常の場合、財物を返還する意思がある
かどうかによって、いずれの罪を構成するか判断される。すなわち、会社等の単位の財
物を自己の所有とし、返還する意思がない場合は職務上横領罪であり、財物を一時使用
し、当該財物を会社等の単位に返還する意思がある場合は資金流用罪であるとされる。
(3) 労働報酬支払拒絶罪 73
日本企業の現地法人で従業員の労働報酬を数か月にわたって全く支払わないという事
例は比較的尐ないものの、中国労働契約法上の特殊労働時間制を申請せず、現地法人の
管理職及び従業員に時間外手当(残業代)を支払わない事例は、数多く見られる。時間
外手当の不払は、労働契約法が定める行政上の責任だけではなく、刑事責任まで追及さ
れる可能性があることには留意が必要である。
刑法では、財産を移転し、逃げ隠れする等の方法によって労働者の労働報酬の支払を
逃れ、又は支払い能力を有するにもかかわらず労働者の労働報酬を支払わず、金額が比
較的大きく政府の関連部門による支払命令を受けてもなお支払わない者は、3 年以下の
有期懲役もしくは拘役に処し、罰金を併科し、又は罰金を単独で科すとされ、重大な結
果をもたらした場合には、3 年以上 7 年以下の有期懲役に処し、罰金を併科するとされ
ている。さらに、単位が上記の罪を犯した場合には、単位に罰金を科し、かつその直接
に責任を負う主管者及びその他の直接責任者は、上記の規定により処罰するとされてい
る。
71
「立件訴追基準に関する規定」によれば、以下のいずれかに該当する場合、立件訴追しなければならな
い。
(1)本単位の資金流用金額が 10000 元から 30000 元以上、3 か月を超えて返還しない場合
(2)本単位の資金流用金額が 10000 元から 30000 元以上、営利活動に使用した場合
(3)本単位の資金流用金額が 5000 元から 20000 元以上、不法活動に使用した場合
72
刑法第 384 条(公的資金横領罪)
国の職員が、職務上の便宜を利用し、公金を横領して個人の使用に供し、(a)不法活動をした場合、(b)
公金横領額が比較的大きく、営利活動をした場合、又は(c)公金横領額が比較的大きく、3 か月を超えて返
還しない場合には、公金横領罪とし、5 年以下の有期懲役又は拘役に処する。情状が重い場合には、5 年以
上の有期懲役に処する。公金横領額が巨額で返還しない場合には、10 年以上の有期懲役又は無期懲役に処
する。
災害救助、危険救助、洪水防衛、優待慰問、貧困扶助、移民、救済に用いる金員・物品を横領し個人の使
用に供した者は、重きに従い処罰する。
73
刑法第 276 条の 1
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4.贈収賄に関する罪 74
企業法務実務の観点から、賄賂に関する犯罪については、贈賄の対象が「国の職員・単
位」であるか、又は「民間企業の職員・単位」であるかによって、国の職員等に対する贈
賄犯罪及び民間企業間の贈収賄犯罪の二種類に分けることができる。以下、両者について
説明する。
(1) 国の職員等に対する贈賄犯罪
① 贈賄罪 75
刑法では、贈賄罪の基本形について、以下のとおり定めている。
不正な利益をはかる 76ために、国の職員に対して財物 77を供与した者は、贈賄罪とする。
また、経済取引において国の規定に違反して国の職員に対して財物を供与し、金額が比
較的大きい場合、又は、国の規定に違反し国の職員に対して各種名義のリベート、手数
料を供与した場合には、贈賄として処理する。但し、強要されたことにより国の職員に
対して財物を供与し、不正な利益を取得しなかった者は、贈賄としない。
贈賄解釈によれば、不正な利益をはかるため、国の職員に贈賄し、金額 1 万元以上で
ある場合は、刑事責任を追及するものとされる 78。
② 贈賄対象別の贈賄犯罪
刑法上、贈賄の対象によって、以下の主な罪が定められている。
罪名
贈賄罪
贈賄の対象
刑事罰
国の職員
・ 5 年以下の有期懲役又は拘役、罰金併
科
・ 情状が重い場合 79、又は国の利益に重
74
贈収賄に関する罪のうち、本誌 2013 年 11 月号で「商業賄賂」を取り上げており、商業賄賂の詳細につ
いては同号をご参照されたい(http://www.tmi.gr.jp/wp-content/uploads/2013/12/China-News-Nov-2013.pdf)。
75
刑法第 389 条
76
「贈賄刑事事件の処理における具体的法律適用の若干問題に関する解釈」(《最高人民法院、最高人民
检察院关于办理行贿刑事案件具体应用法律若干问题的解释》法釈[2012]年 22 号。以下、「贈賄解釈」とい
う。)によれば、贈賄犯罪における「不正な利益をはかる」とは、贈賄者のはかる利益が法律、法規、規則、
政策の規定に違反すること、又は国の職員に対し、法律、法規、規則、政策、業界規範の規定に違反し、自
己に幇助又は便利な条件を提供するよう要求することを指す。また、公平、公正の原則に反し、経済、組織
人民管理等の活動において、競争上の優位性をはかる場合は、「不正な利益をはかる」ものと認定しなけれ
ばならない(第 12 条)。
77
「商業賄賂刑事事件の処理における法律適用の若干問題に関する意見」(《最高人民法院、最高人民检
察院关于印发《关于办理商业贿赂刑事案件适用法律若干问题的意见》的通知》法発[2008]33 号)第 7 条によ
れば、商業賄賂における財物は、金銭及び現物のほか、金銭によって評価することのできる財産的利益(例
えば、建物の内装、金額がチャージされている会員カード、買物カード(金券)、旅行費用)も含まれる。
具体的な金額は、実際に支払われる金額を基準とする。
78
贈賄解釈第 1 条
79
贈賄解釈第 2 条
贈賄により不正な利益をはかり、次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合は、刑法第 390 条第 1
項に定める「情状が重い」と認定しなければならない。
(1)贈賄金額が 20 万元以上 100 万元未満であるとき
(2)贈賄金額が 10 万元以上 20 万元未満であり、かつ次の各号に掲げる事由のいずれかに該当するとき
①3 人以上に対して贈賄したとき
②違法所得を贈賄に用いたとき
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大な損害を被らせた場合 80には、5 年
以上 10 年以下の有期懲役、罰金併科
・ 情状が特に重い場合 81、又は国の利益
に特に重大な損失を被らせた場合に
は、10 年以上の有期懲役又は無期懲
役、罰金又は財産没収を併科
国の職員の近親者もしくは
かかる国の職員と密接な関
影響力を有
する者に対
する贈賄罪
82
・ 3 年以下の有期懲役又は拘役、罰金併
科
係にあるその他の者、又は
・ 情状が重い場合、又は国の利益に重
離職した国の職員もしくは
大な損害を被らせた場合には、3 年以
その近親者及びこれと密接
上 7 年以下の有期懲役、罰金併科
な関係にあるその他の者
・ 情状が特別に重い場合、又は国の利
益に特に重大な損失を被らせた場合
には、7 年以上 10 年以下の有期懲役、
罰金併科
単位に対す
る贈賄罪
83
国家機関、国有の会社、企
業、事業単位、人民団体
・ 3 年以下の有期懲役又は拘役、罰金併
科
③ 単位による贈賄犯罪等
上記 2 で挙げた贈賄犯罪について、単位による贈賄又は単位に対する贈賄に関する刑
事罰は以下のとおりである。
③違法犯罪活動を実施するため、食品、薬品、安全生産、環境保護等の監督管理職責を負う国の職員に
対して贈賄し、甚だしく民生に危害を及ぼし、公衆の生命及び財産の安全を侵害したとき
④行政法律執行機関、司法機関の国の職員に対して贈賄し、行政法律執行及び司法の公正に影響を与え
たとき
(3)情状が重いその他の場合
80
贈賄解釈第 3 条
贈賄により不正な利益をはかり、100 万元以上の直接の経済的損失をもたらした場合は、刑法第 390 条第
1 項に定める「国の利益に重大な損害を被らせた」と認定しなければならない。
81
贈賄解釈第 4 条
贈賄により不正な利益をはかり、次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合は、刑法第 390 条第 1
項に定める「情状が特に重い」と認定しなければならない。
(1)贈賄金額が 100 万元以上であるとき
(2)贈賄金額が 50 万元以上 100 万元未満であり、かつ次の各号に掲げる事由のいずれかに該当するとき
①3 人以上に対して贈賄したとき
②違法所得を贈賄に用いたとき
③違法犯罪活動を実施するため、食品、薬品、安全生産、環境保護等の監督管理職責を負う国の職員に
対して贈賄し、甚だしく民生に危害を及ぼし、公衆の生命及び財産の安全を侵害したとき
④行政法律執行機関、司法機関の国の職員に対して贈賄し、行政法律執行及び司法の公正に影響を与え
たとき
(3)500 万元以上の直接の経済的損失をもたらしたとき
(4)情状が特に重いその他の場合
82
刑法 390 条の 1
83
刑法 391 条
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罪名
贈賄罪
・ 単位は罰金刑、直接主管者及びその他の直接責任者は 5
84
(単位贈賄罪 )
影響力を有する者に対
する贈賄罪
刑事罰
86
単位に対する贈賄罪 87
年以下の有期懲役又は拘役、罰金併科 85
・ 単位は罰金刑、直接主管者及びその他の直接責任者は 3
年以下の有期懲役又は拘留、罰金併科
・ 単位は罰金刑、直接主管者及びその他の直接責任者は 3
年以下の有期懲役又は拘役、罰金併科
(2) 民間企業間の贈収賄
中国の不正競争防止法では、贈収賄行為について以下のとおり定めている(第 8 条)。
経営者は、財産又はその他の手段で賄賂行為を行うことにより商品を販売又は購入して
はならない。帳簿に記帳することなく密かに相手側単位又は個人にリベートを贈ることは、
贈賄行為として処分する。相手側単位又は個人から、帳簿に記帳することなく密かにリベ
ートを受け取ることは、収賄行為として処分する(第 1 項)。不正競争防止法にいう「賄
賂行為」については、
「商業賄賂行為の禁止に関する暫定規定」88において、リベート、値
引き、手数料等の具体的な行為を定めている 89。不正競争防止法及び上記暫定規定によれ
ば、経営者が商品を販売又は購入するために財産又はその他の手段で贈賄を行った場合の
行政罰は、1 万元以上 20 万元以下の過料及び違法所得の没収である。
民間企業間の贈収賄に関する刑法上の規定は、第 163 条(国の職員でない者の収賄罪)
及び第 164 条(国の職員でない者に対する贈賄罪、外国の公職にある者、国際公共組織の
職員に対する贈賄罪)となっている。
① 国の職員でない者の収賄罪 90
刑法では、民間企業の従業員による収賄犯罪について以下のとおり定めている。
会社、企業又はその他の単位の職員 91が、職務上の便宜を利用し、他人の財物を要求
し、又は不法に他人の財物を収受し、他人のために利益を図り、金額が比較的大きい場
合には、5 年以下の有期懲役又は拘役に処する。金額が巨額である場合には、5 年以上の
有期懲役に処し、財産没収を併科することができる。
会社、企業又はその他の単位の職員が、経済取引において職務上の便宜を利用し、国
の規定に違反し、各種名義のリベート又は手数料を収受して個人の所有に帰属させた場
合には、上記の規定により処罰する。
注意しなければならないのは、立件訴追基準によれば、国の職員でない者の収賄は、
84
刑法 393 条
但し、贈賄により取得した違法所得を個人に帰属させた者は、刑法第 389 条(贈賄罪)を認定し、処罰
する(刑法 393 条)。
86
刑法 390 条の 1
87
刑法 391 条
88
《关于禁止商业贿赂行为的暂行规定》
89
「商業賄賂行為の禁止に関する暫定規定」第 5 条ないし第 8 条
90
刑法第 163 条
91
「商業賄賂刑事事件の処理における法律適用の若干問題に関する意見」第 3 条によれば、刑法第 163 条、
第 164 条に定める「会社、企業又はその他の単位の職員」には、国有会社、企業及びその他の国有組織にお
ける国の職員でない者が含まれる。
85
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金額が 5000 元以上であった場合は、立件・訴追の対象となることである 92。
② 国の職員でない者に対する贈賄罪、外国の公職にある者、国際公共組織の職員に対す
る贈賄罪93
刑法上、民間企業の従業員、外国公務員、国際組織の職員に対する贈賄犯罪について、
以下のとおり定めている。
不正な利益を取得するため、会社、企業又はその他の単位の職員に財物を与え、その
金額が比較的大きい者は、3 年以下の有期懲役又は拘役に処し、罰金を併科するとし、
金額が巨額である場合には、3 年以上 10 年以下の有期懲役に処し、罰金を併科する。
不正な商業的利益を取得するため、外国の公職にある者又は国際公共組織の職員に財
物を供与した場合には、前項の規定に従い処罰する。
注意しなければならないのは、立件訴追基準に関する規定及びその補充規定 94によれ
ば、個人の贈賄金額が 1 万元以上、又は組織の贈賄金額が 20 万元以上である場合は、立
件・訴追の対象となることである 95。
[応用編]
今月号で紹介した市場秩序攪乱、財産侵害及び贈収賄に関する主な罪を含め、本連載
前各号で紹介した中国刑法各論の罪は、企業活動と最も密接な関係にあるものである。
本連載で紹介した罪等との関連で中国の検察当局・公安当局から立件、訴追された場
合には、速やかに刑事分野に詳しい弁護士等の専門家を起用し、落ち着いた対応をする
ことが重要である。訴訟対応の際に、特に自社の従業員等において、以下の司法妨害行
為 96がないように(これらの行為があった場合、司法妨害があったとして刑事罰の適用
を受ける可能性がある)、専門家のアドバイスを受けながら、訴訟対応を行うことが望ま
しい。
① 裁判の証人、翻訳者等に勤める者が、案件に重要な関係を有する部分について、虚偽
の証明、鑑定、記録、翻訳等を行うこと(偽証罪 97)
② 暴力、威力、賄賂等の方法によって証人による陳述を阻止し、又は偽証をさせ、案件
の当事者に協力して証拠を隠ぺいし、偽造すること(証明妨害罪 98)
③ 犯罪者であることを明らかに知りながら、隠れる場所、財物を提供し、海外への逃亡
を手伝うこと、又は偽証して庇うこと(犯人蔵匿・隠避罪 99)
④ スパイ、テロリスト等であることを明らかに知りながら、当局による調査及び証拠収
集時に提供を拒否すること(スパイ犯罪・テロ犯罪・過激主義犯罪証拠提供拒絶罪 100)
92
「立件訴追基準に関する規定」第 10 条
刑法第 164 条
94
《最高人民检察院、公安部关于公安机关管辖的刑事案件立案追诉标准的规定(二)的补充规定》公通字
[2011]47 号
95
「立件訴追規準に関する規定」第 11 条、補充規定第 1 条
96
刑法第 305 条~第 317 条
97
刑法 305 条
98
刑法 307 条
99
刑法 310 条
100
刑法 311 条
93
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⑤ 犯罪所得及びその収益であることを明らかに知りながら、それを隠匿・移転・買収・
代理販売すること、又はその他の方法でごまかし、隠ぺいすること(犯罪所得・犯罪
所得収益隠蔽、隠匿罪 101)
⑥ 裁判所の判決又は裁定に対して執行能力があるにもかかわらず、執行を拒絶すること
(判決・裁定執行拒絶罪 102)
なお、中国刑事訴訟の具体的な手続等については、本連載の来月号に掲載する予定で
ある。
(莊凌云・中国弁護士)
三.中国法務の現場より
1.日系企業の中国における事業展開の方向性と法務の現場における肌感覚
去る 3 月 21 日に、JETRO 北京事務所開催のセミナー「中国経済・ビジネス動向説明会」
に出席した。全体としてデータに裏付けされた詳細な情報、分析が盛り込まれており、非
常に有益な内容であった。
なかでも私が特に関心を持ったのは、中国における日系企業の今後の事業展開の方向性
として、「拡大」が 38.1%、「現状維持」が 51.3A%、「縮小もしくは移転・撤退」が 10.6%
となっていたことである 103。北京で日系企業に対する法的サービスを提供する私の肌感覚
としては、もう尐し撤退案件の比率が多いように感じている。これは、現状維持の会社に
おいては弁護士に依頼する頻度が相対的に低下するという要素も影響しているのかもしれ
ない。上記の数値をどのようにとらえるかは、読者の立場や状況によっても異なるのでは
ないだろうか。
中国からの撤退案件においては、スケジュールの把握、労働契約の解除(経済補償金の
交渉)、税務調査対応が肝要である。特に、労働契約の解除についてはトラブルになってか
らでは対応が後手に回って収拾が困難になる可能性があることから、事前に弁護士と相談
して十分な準備をする必要がある。中国からの撤退に関しては、是非、弊事務所を利用し
て頂きたい。
また、撤退する企業の中では、東南アジアのより人件費の安い国へ拠点を移す企業もあ
る。弊事務所では、東南アジアの主要な都市に事務所又は拠点を設置していることから、
このような場合には是非弊事務所の現地オフィスを利用して頂きたい。
なお、本文とは関係のない話であるが、私のまわりでは今年 3 月、4 月の人事異動で北
京を去る人が非常に多い。寂しい別れではあるが、これまでの支援に深く感謝するととも
に、それぞれの新天地での発展と飛躍を祈っている。
(中城由貴・弁護士)
101
102
103
刑法 312 条
刑法 313 条
出所:JETRO 北京事務所「中国経済・ビジネス動向説明会」配布資料
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2.上海市 2016 年最低賃金の伸びは鈍る
3 月 31 日に、今年 4 月 1 日からの最低賃金が発表された 104。
これにより、月最低賃金は、これまでの 1,820 元から 2,020 元から 2,190 元に引き上げら
れた。170 元の上げ幅は、昨今の経済状況を反映してか、昨年の 200 元の上げ幅より小さ
くなった。また、非全日制の労働者に適用される時給の最低賃金は、18 元から 19 元に変
更され、昨年に続き、小幅の上昇となった。
最低賃金は、最低賃金規定 105に基づき、省、自治区、直轄市の労働部門が制定し、現地
の人民政府の認可を受けてから新聞等にて公表するものとされる(同規定第 9 条)。省、
自治区、直轄市の範囲内の異なる行政区域では異なる最低賃金基準を設けることも可能で
ある(同規定第 7 条)が、上海では全市共通である。他方、広東省の例では、2015 年の基
準において、省としては地区により 1,895 元、1,510 元、1,350 元、1,210 元という段階があ
るが、深圳市だけは 2,030 元とされ、全国最高であった 106。黒竜江省は最高段階でも 1,160
元、最低段階で 850 元であり、全国最低である。
このように、中国の最低賃金は、地方によりかなり金額水準が異なるのが特徴である。
<近年の最低賃金・平均賃金の推移>(最低賃金は毎年 4 月 1 日より変更)
2008 年
2009 年
2010 年
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
2015 年
2016 年
最低賃金
960
960
1,120
1,280
1,450
1,620
1,820
2,020
2,190
上昇率
14.3%
0%
16.7%
14.3%
13.3%
11.7%
12.3%
11.0 %
8.4%
年平均賃金
39,502
42,789
46,757
51,968
56,300
60,435
65,417
月平均賃金
3,292
3,566
3,896
4,331
4,692
5,036
5,451
上昇率
13.8%
8.3%
9.3%
11.1%
8.3%
7.3%
8.2%
注:2015 年の公式の平均賃金はまだ発表されていない。
(山根基宏・弁護士)
TMI 中国最新法令情報―2016 年 3 月号―
発
行:TMI 総合法律事務所
監
修:何連明・外国法事務弁護士
編集主幹:山根基宏、包城偉豊・弁護士
発 行 日:2016 年 3 月 31 日
104
105
106
http://shanghai.xinmin.cn/msrx/2016/03/31/29762630.html
《最低工资规定》(労働社会保障部令第 21 号 2004 年 3 月 1 日施行)
http://www.chyxx.com/news/2015/0930/347306.html
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