TMI 中国最新法令情報 ―(2015 年 4 月号)

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TMI 中国最新法令情報
―(2015 年 4 月号)―
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皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。
お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI 中国最新法令情報」をお届けします。記事
の内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下
さい。バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきますので、
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目次
一.中国最新法令
1. 中央法規
(1) 使用者職業病危害予防・治療八条規定
(2) 国家外貨管理局による外商投資企業外貨資本金の為替決済の管理方法の改革に関する
通知
(3) 知的財産権を濫用して競争を排除し、又は制限する行為の禁止に関する規定
(4) 検査検測機構資質認定管理弁法
2. 司法解釈
(1) 人民法院登記立件の若干問題に関する最高人民法院の規定
二.連載 中国企業法実務/第八弾:財産法
(第 1 回 財産法の体系)
三.中国法務の現場より
1.15 日以内の短期出張でもビザが必要か(Part 2)
2.中国(上海)自由貿易試験区の拡張と改革
1
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一.中国最新法令(2015 年 3 月中旬~2015 年 4 月中旬公布分)
1.中央法規
(1) 使用者職業病危害予防・治療八条規定 1
国家安全生産監督管理総局
2015 年 3 月 24 日公布
同日施行
① 背景
現在の中国において、職業病危害2の予防・治療が社会的注目を集めている一方で、相
当数の企業(特に中小企業)の使用者には、職業病危害の予防・治療の重要性に対する
認識が不足しており、職業病予防・治療の基準が正確に把握されておらず、職業衛生管
理の基盤が比較的薄弱であるという問題が広く存在している。そのため、国家安全生産
監督管理総局は、職業衛生の関連法規に定める基準の中における使用者の職業病の予
防・治療に対する要求の核心的な内容を整理し、
「使用者職業病危害予防・治療八条規定」
(以下「本規定」という。)を公布した。
② 主な内容
本規定では、以下のとおり 8 つの必須事項及び 8 つの厳格な禁止事項が定められてい
る。
表1
番号
必須事項
厳格な禁止事項
1
職業病の予防・治療責任制を導入し、
健全化すること
責任の所在を明確にせず法令に違反した生
産を行うこと
事業所を職業衛生の要求に適合させる
職業病危害の基準を超える環境で作業する
こと
こと
職業病の防護施設を設置し、有効に機
職業病の防護施設を設置せず、又は使用し
能させること
ないこと
労働者に対して要求に適合する防護用
偽造品や劣悪な防護用品を割り当てること
2
3
4
5
6
7
8
1
2
本規定上の必須事項及び厳格な禁止事項
品を割り当てること
事業所及び作業場に警告の標識及び告
知カードを設置すること
職業病危害を隠蔽すること
定期的に職業病危害の検査を行うこと
検査を偽装し、又は検査に不足若しくは漏
れを生じさせること
労働者に対して職業衛生トレーニング
を実施すること
トレーニングを実施せず、又は不合格のま
まで勤務すること
労働者の職業健康検査を組織し、看護
健康検査を実施せず、又は看護データを導
データを導入すること
入しないこと
《用人单位职业病危害防治八条规定》(国家安全生产监督管理总局令第 76 号)
中国語では「职业病危害」である。
2
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(2) 国家外貨管理局による外商投資企業外貨資本金の元転の管理方法の改革に関する通
知3
国家外貨管理局
2015 年 3 月 30 日公布
同年 6 月 1 日施行
① 背景
中国(上海)自由貿易試験区を始めとする国内一部地域で試行実施されていた外商投
資企業の外貨資本金の意向決済 4が、「国家外貨管理局による外商投資企業外貨資本金の
元転の管理方法の改革に関する通知」(以下「本通知」という。)により全国的に展開さ
れる。また、本通知により、外商投資性公司等投資を主要業務とする外商投資企業は、
従来の方法以外の方法で資本金を元転して国内再投資を行うことができることになる。
② 主な内容
ア
資本金の意向決済 5
現状では、外商投資企業の外貨資本金(以下「資本金」という。)は、原則として実
際に資金を必要とする際に、その都度必要な額だけ元転することができるとされてい
る(いわゆる「支払元転」)。一方、本通知に定める意向決済は、外商投資企業が経営
実需に基づき、為替相場等を考慮して、自由なタイミングで銀行において資本金を全
額まで元転をすることができるとされている(外貨資本金自由元転比率 100%)6。
イ
元転支払待専用口座 7
外商投資企業は意向決済を行う場合、原則として、銀行にて資本金口座と一対一で
対応する形で「資本項目‐元転支払待専用口座」
(以下「元転支払待専用口座」という。)
を開設したうえで、元転後の資本金を当該口座に入金し、当該口座を通じて各種支払
手続を行うことになる。但し、外商投資企業が同一銀行店舗で開設した同一名義の資
本金口座、国内資産現金化口座及び国内再投資口座は、一つの元転支払待専用口座を
共用することができる。
また、外商投資企業は、意向決済と、従来の支払元転のどちらかを選択して資本金
を使用することができるが、従来の支払元転で元転された人民元は、元転支払待専用
口座を通じて支払に用いることができない。
なお、本通知第 2 条は、元転支払待専用口座及び資本金口座の入金・支出範囲等を
詳細に定めている。同条によれば、元転支払待専用口座は、経営範囲内の支出、国内
持分出資資金及び人民元保証金の支払、同一名義の元転支払待専用口座への振替、ク
ロスボーダー人民元決済、人民元外債の返済等の資本項目の支払のために使用するこ
とができる。
ウ
資本金及び元転後の人民元の使途制限 8
本通知第 3 条によれば、外商投資企業の資本金及び元転後の人民元資金は、経営範
3
《国家外汇管理局关于改革外商投资企业外汇资本金结汇管理方式的通知》(国家外汇管理局汇发[2015]19
号)
4
中国語で「意愿结汇」という。関連規定は「外貨管理による試験区建設の支持の実施細則」(2014 年 2 月
28 日公布、同日施行)、及び「国家外貨管理局による一部の地域での外商投資企業外貨資本金の元転の管理
方法の改革試行に関する問題の通知」
(2014 年 7 月 4 日公布、同年 8 月 4 日施行、2015 年 6 月 1 日の本通知
の施行により廃止予定。)である。
5
本通知第 1 条
6
但し、国家外貨管理局は国際収支形勢に基づいて適時外貨資本金自由元転比率を調整することができる。
7
本通知第 2 条
8
本通知第 3 条
3
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囲以外の業務に用いてはならず、証券投資や人民元委託貸付の実行(経営範囲に含ま
れる場合を除く。)、企業間金銭消費貸借や第三者に転貸した銀行借入の返済、非自己
使用不動産の購入(外商投資不動産企業を除く。)も禁止される。
エ
資本金による国内持分投資の規制緩和 9
本通知第 4 条によれば、原通貨での持分投資を除き、投資を主要業務とする外商投
資性公司等は、投資プロジェクトが真実、合法であることを前提として、元転後の人
民元資本金を使って、又は元転支払待専用口座内の人民元資金を使って国内持分投資
を行うことができる。
また、一般の外商投資企業による国内持分投資についても、現行の再投資規定に基
づき処理するほか、被投資企業の国内再投資登記を経て開設された元転支払待専用口
座に、元転された人民元資金を振り込んで出資することができると定められている。
但し、本通知と同じく 2015 年 6 月 1 日から施行予定の「外貨管理局の直接投資外貨管
理政策を更に簡素化と改善することに関する通知」
(2015 年 2 月 13 日公布)の付属文
書である「直接投資外貨操作指針」においては、
「外商投資企業が資本金を元転された
人民元資金は国内持分投資に用いてはならない」という本通知第 4 条と異なる内容の
規定が存在しているため、実務上、元転後の人民元資金をもって国内持分投資を行う
場合、外貨管理局を始めとする関連当局への確認等の事前対応が必要であると考えら
れる。
(3) 知的財産権を濫用して競争を排除し、又は制限する行為の禁止に関する規定 10
国家工商行政管理総局
2015 年 4 月 7 日公布
同年 8 月 1 日施行
① 背景
ここ数年、知的財産権を濫用して競争を排除又は制限する行為(以下「知的財産権濫
用」という。)が、徐々に独占禁止関連の法執行機関に注目されつつある。もっとも、独
占禁止法(2008 年 8 月 1 日施行)第 55 条11等の現行規定は、非常に抽象的なものに止ま
り、実務上の運用を明確にするため、具体的なガイドラインの制定が必要となっていた。
そこで、国家工商行政管理総局(以下「工商機関」という。)は 2014 年 6 月 11 日に意見
募集稿を公布し、同年 7 月 10 日までのパブリックコメントの募集を経て、2015 年 4 月 7
日に「知的財産権を濫用して競争を排除し、又は制限する行為の禁止に関する規定」
(以
下「本禁止規定」という。)を正式に公布した。
② 主な内容
ア
関連概念
知的財産権濫用とは、事業者が独占禁止法の規定に違反して知的財産権を行使し、
独占合意又は市場支配的地位の濫用等の独占行為を実施することである12(価格独占
行為を除く13。以下同じ。)。
9
本通知第 4 条
《关于禁止滥用知识产权排除、限制竞争行为的规定》(国家工商行政管理总局令第 74 号)
11
当該第 55 条は、「事業者が知的財産権に関する法律又は行政法規の規定により知的財産権を行使する行
為には、この法律を適用しない。但し、事業者が知的財産権を濫用して競争を排除し、又は制限する行為に
は、この法律を適用する。」と定めている。
12
本禁止規定第 3 条
13
価格独占行為に対する規制は、国家発展改革委員会に公布された「価格独占規定」
(2011 年 2 月 1 日施行)
10
4
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また、関連商品市場は、技術市場又は特定の知的財産権を含む商品の市場のいずれ
かと認定することができる。
イ
独占合意
独占禁止法の関連規定に従い、事業者は知的財産権の行使過程において独占合意を
結ぶことが禁止されるが 14、合計市場シェア又は代替技術の存在等の状況によっては、
例外的に事業者間の合意が禁止される独占合意に該当しない場合もある 15。
ウ
市場支配的地位の濫用
独占禁止法の関連規定により認定・推定された市場支配的地位を有する事業者は、
正当な理由なく一定の行為を行うことが禁止される 16。禁止される行為類型の一例は
以下のとおりである。
(a) 生産経営活動に必須の施設を構成する知的財産権のライセンスを拒否すること
(b) 取引相手に対する取引制限
(c) 抱き合わせ販売
(d) 改良技術のグラントバック 17、保護期間が満了し、又は無効とされた知的財産権
の継続的な権利行使等の不合理な制限条件を付帯すること
(e) 差別的な取扱い
エ
その他 2 種類の独占行為
上記イ及びウに記載した行為類型のほか、事業者(主に市場支配的地位を有する事
業者)の知的財産権行使に際して、(a)パテントプール 18又は(b)基準の制定・実施に
関する特許権行使を通じて競争を排除又は制限する行為 19も知的財産権濫用の関連独
占行為として禁止される。
オ
管轄機関の認定作業及び処罰
知的財産権濫用の管轄機関である工商機関が知的財産権濫用に対する分析・認定を
行う場合の手順 20、考慮すべき要素 21及び認定された場合の行政処罰 22が定められた。
その中で、独占合意及び市場支配的地位の濫用に対する処罰内容の内容は、独占禁止
法に定められた処罰内容と同様である。
(4) 検査検測機構資質認定管理弁法 23
国家品質監督検査検疫総局
2015 年 4 月 9 日公布
同年 8 月 1 日施行
① 背景
国務院による行政認可項目の減尐及び下位機関への権限委譲の政策に従い、国家品質
監督検査検疫総局は、現行の「試験所・検査機構資質認定管理弁法」(2006 年 4 月 1 日
より定めることになる。
14
本禁止規定第 4 条
15
本禁止規定第 5 条
16
本禁止規定第 6 条ないし第 11 条
17
取引相手方が技術改良によって構築した知的財産を独占的に譲渡させる行為を指す。
18
本禁止規定第 12 条
19
本禁止規定第 13 条
20
本禁止規定第 15 条
21
本禁止規定第 16 条
22
本禁止規定第 17 条
23
《检验检测机构资质认定管理办法》(国家质量监督检验检疫总局令第 163 号)
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施行、2015 年 8 月 1 日の本弁法の施行により廃止予定。)等に定める計量認証、資質認
定及び試験所・検査機構認定を一つの認可、即ち検査検測機構資質認定に統合し、社会
に向けて証明機能を有するデータ又は結果を発行する検査検測機構市場の参入制度をよ
り一層完全なものとするため、「検査検測機構資質認定管理弁法」(以下「本弁法」とい
う。)を制定・公布した。
② 主な内容
ア
概念及び認定範囲
検査検測機構とは、法に従い成立し、関連の基準又は技術規範に基づき、器具設備、
環境施設等の技術条件と専門技能を利用し、製品又は法律法規の規定する特定対象に
対して検査検測を行う専門技術組織である 24。
検査検測機構は、司法機関の裁決、行政機関の行政決定、仲裁機構の仲裁決定、及
び社会経済と公益活動のために、証明機能を有するデータ又は結果を発行する等の活
動を従事する場合、資質認定(計量認証を含む。)を取得する必要がある 25。
イ
資質認定条件及び手続
資質認定を申請する検査検測機構は、以下の条件に適合する必要がある 26。
(a) 法的責任を負うことができる法人又はその他の組織であること
(b) 検査検測活動に適合する技術者と管理者を有すること
(c) 固定の勤務場所及び環境を有すること
(d) 検査検測活動に必要となる設備施設を有すること
(e) 検査検測活動の独立、公正等を保証できる管理体系を有すること
(f) 関連する法令並びに標準及び技術規範規定の特殊な要求に適合していること
また、資質認定の手続は、概ね以下の流れで行われる27。
表2
資質認定の手続
番号
所要日数
1
初歩的審査による受理決定
5 営業日以内
2
技術評価・審査
受理した日から 45 営業日以内
認可決定
技術評価・審査が完了した日から 20
3
4
ウ
手続
日以内
有効期限 6 年間の資質認定証書の発行
認可決定を下した日から 10 営業日以
内
検査検測機構の就業規範
検査検測機構は検査検測活動に従事する場合、本弁法に定められた規範に従う必要
がある28。具体的な規範の一例は以下のとおりである。
(a) 発行された検査検測結果の利害関連者から独立していること
24
25
26
27
28
本弁法第 2 条
本弁法第 3 条
本弁法第 9 条
本弁法第 10 条
本弁法第 22 条ないし第 32 条
6
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(b) 資質認定証書に定める検査検測能力の範囲内に検査検測結果を発行すること
(c) 検査検測活動に従事する人員は、同時に 2 つ以上の検査検測機構に勤務してはな
らないこと
(d) 社会に向けて証明機能を有するデータ又は結果を発行する場合、検査検測専用印
を押し、資質認定標識を明記すること
(e) 検査検測原始記録及び報告を 6 年以上保存すること
エ
法的責任
本弁法の関連規定に違反した検査検測機構等に対しては、是正命令、3 万元以下の
過料及び資質認定証書の取消し(取消しの場合、3 年間は資質認定を再申請すること
ができない。)等の行政処罰が科されることになる29。
2.司法解釈
(1) 人民法院登記立件の若干問題に関する最高人民法院の規定 30
最高人民法院
2015 年 4 月 15 日公布
同年 5 月 1 日施行
① 背景
中国全国の人民法院の登記立件作業を統一させ、立件手続の規範化を通じて当事者の
訴権を保障するために、最高人民法院は、
「人民法院登記立件の若干問題に関する最高人
民法院の規定」(以下「本司法解釈」という。)を公布した。
② 主な内容
ア
立件手続
起訴(民事、行政)及び自訴(刑事)について、人民法院は一律に訴状を受け取り、
受取日を明記した書面証書を発行する。また、法令に適合する起訴及び自訴について
はその場で登記立件を行い、法令に適合しない場合には指定期間内に補足・修正すべ
き事項を一括して告知しなければならない 31。
その場で法令に適合するか否かを判断できない起訴及び自訴については、関連法律
に定める期限内に立件の可否を決定しなければならず、法定期間内に判断できない場
合は、当該判断に先立って立件を行う32。
人民法院は、起訴及び自訴に対し、受理しない又は立件しないと決定した場合、理
由を明記した裁定書又は決定書を発行しなければならない33。
イ
起訴及び自訴の形式要件
当事者は起訴及び自訴に際して、以下の資料を提出する必要がある 34。
(a) 起訴者又は自訴者が個人である場合には身分証明書/法人である場合には営業許
可証又は組織コード証の写し及び法定代表者又は主要責任者の身分証明書等
(b) 代理人の場合、授権委託書及び代理人の身分証明書等
(c) 被告(民事、行政)又は被告人(刑事)を他人と十分区別できる具体かつ明確な
氏名又は名称、住所等の情報
29
30
31
32
33
34
本弁法第 41 条ないし第 46 条
《最高人民法院关于人民法院登记立案若干问题的规定》(法释[2015]8 号)
本司法解釈第 2 条、第 7 条
本司法解釈第 8 条
本司法解釈第 9 条
本司法解釈第 6 条
7
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(d) 本司法解釈第 4 条及び第 5 条に定める事項を明記した訴状の原本並びに被告又は
被告人及びその他の当事者の人数に応じた副本
(e) 証拠
ウ
登記立件できないケース35
人民法院は、以下の起訴及び自訴について、登記立件をしない。
(a) 違法起訴又は法令に適合しない場合
(b) 国家主権と領土の完全性に危害を及ぼす場合
(c) 国家安全に危害を及ぼす場合
(d) 国家統一と民族団結を破壊する場合
(e) 国家宗教政策を破壊する場合
(f) 訴訟事項が人民法院の管轄に属さない場合
エ
立件監督
人民法院が登記立件手続において、訴状を受け取らず、若しくは受け取った後に書
面証書を発行せず、又は当事者に一括して訴状内容の補足・修正を告知しないような
場合、当事者は、受訴人民法院又は上級人民法院に苦情を申し立てることができ、人
民法院は当該苦情申し立てを受けた日から 15 日以内に、事実を究明し、当事者に通知
しなければならない 36。
当事者等が虚偽の訴訟又は悪意の訴訟等によって立件秩序を妨害する場合、
「民事訴
訟法」
(2013 年 1 月 1 日改正施行)、
「行政訴訟法」
(2015 年 5 月 1 日施行)の関連規定
に従い、過料、行政拘留に処され、犯罪に該当する場合には刑事罰が科されることに
なる37。
(田晓争・中国弁護士)
35
36
37
本司法解釈第 10 条
本司法解釈第 13 条
本司法解釈第 16 条
8
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二.連載 中国企業法実務
第八弾:財産法(第 1 回/全 6 回)
第1回
2015 年 4 月号
財産法の体系
第2回
2015 年 5 月号
物権法の概要と諸原則、所有権一般
第3回
2015 年 6 月号
区分所有権
第4回
2015 年 7 月号
用益物権
第5回
2015 年 8 月号
担保物権
第6回
2015 年 9 月号
不動産登記
第1回
財産法の体系
1.はじめに
本連載の第八弾では、中国の財産法を紹介する。
中国は、生産手段の社会主義公有制を基本とする社会主義国家である一方、社会主義
市場経済を導入して 20 余年を経て、今や世界第 2 位の経済大国として、成長を続けてい
る。市場経済の基礎となるのが、財産法秩序であるが、社会主義の制度基盤の上に市場
経済を発展させてきた経緯に照らして、中国の財産法の体系は、複雑な構造になってい
る。
財産法の基本法ともいうべき物権法が施行されたのは、2007 年 10 月 1 日、今からまだ
7 年半ほど前のことであり、それまで接ぎ木式に必要に応じて積み上げられてきた制度が
併存しているため、物権法の条文だけを読んでも全面的な理解が難しい。
そこで、まず、今回は、財産法体系整備の沿革を簡単に紹介し、枠組みを俯瞰してか
ら、次回以降、各論の説明を行う。
2.財産法体系整備の沿革
(1) 憲法
中国でも憲法は国の最高法規である(憲法前文最終項)。中国の憲法は、通常の法律(全
人代の過半数)よりも厳しい要件(全人代の 3 分の 2 以上)での改正が必要となる硬性
憲法であるものの(第 64 条)、1954 年に最初の憲法が制定されてから、文化大革命中の
1975 年憲法、文化大革命終了後の 1978 年憲法、そして 1982 年に現行憲法が制定された。
そして、現行憲法についても、1988 年、1993 年、1999 年、2004 年と 4 回の改正を経て
いる。
中国では、国の政策が変わる度に憲法の条文は頻繁に改正される。例えば 1988 年には、
「社会主義公有制経済の補充」として従来認められていた個人経営を広げて「私営経済」
の存在を認めた(第 11 条)。1993 年には「社会主義市場経済」の文言が憲法に入った(第
15 条)。1999 年には憲法前文に「社会主義市場経済を発展させる」ことが人民の行動規
範に加えられるとともに、第 11 条を改正し、
「私営経済」を含む「非公有制経済」を「社
会主義市場経済の重要な構成部分」として積極的に是認した。2004 年の改正では、さら
に、それまで「誘導、監督管理」の対象だった「非公有制経済」につき、「奨励、支援」
9
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をすることが加えられた(第 11 条第 2 項)。
とはいえ、社会主義の大原則の下、憲法では、生産手段の社会主義公有制が採られ(第
6 条第 1 項)、土地は国有又は集団所有とされており(第 9 条第 1 項、第 10 条第 1 項、
第 2 項)、この原則は、社会主義市場経済の導入によっても変更されていない。
他方で、憲法上、私有財産制(かつては、生産手段と区別して生活手段と言われた)
も認められており、建物を含む国民の財産については、所有権が認められてきた(1978
年憲法第 9 条、1982 年憲法第 13 条)。社会主義では私有財産は保護されないというイメ
ージもあるが、それは正しくない。
(2) 民法通則
中国には、民事実体法の基本法として、民法通則という法律がある。これは、現行の
1982 年憲法下で、改革開放政策が一定程度進んだ 1986 年 4 月に制定され、1987 年 1 月
に施行されたものである 38。
章立てとしては、第一章 基本原則、第二章 自然人、第三章 法人、第四章 法律行為・
代理といった日本の民法総則に相当する規定が置かれ、第五章 民事権利の中で、財産所
有権、債権、知的財産権、人格権の各節が置かれている。そして、第六章 民事責任、第
七章 訴訟時効、第八章 渉外民事関係、第九章 附則となっており、一応、親族・相続編
以外の項目は含まれているが、条文数は附則まで合わせても 156 条しかなく、日本の民
法と対比すると、規定内容としては大変薄いものである。
この中で、財産権については、
「財産所有権とは、あらゆる者が法により自己の財産に
対して有する占有、使用、収益及び処分の権利をいう」として所有権の通則的規定があ
り(第 71 条)、国有土地や集団所有土地の使用について簡単な規定を置くとともに(第
80 条、第 81 条)、建物を含む個人財産の法的な保護が定められた(第 75 条)。
(3) 土地使用権に関する個別法令の制定
民法通則と同時に、都市及び農村の土地管理に関する土地管理法 39が 1987 年 1 月 1 日
に施行され、その後、都市の不動産の払下げ、割当て、開発、取引等についての具体的
取り扱いを定めた都市不動産管理法40が 1995 年 1 月 1 日に施行された。また、国有土地
使用権の払下げについては、都市部の国有土地使用権の払下げ及び譲渡に関する暫定条
例41が 1990 年 5 月 19 日に施行された。土地使用権の払下げの期間の上限は同暫定条例
第 12 条で定められており、(a)居住用地は 70 年、(b)工業用地は 50 年、(c)教育、科学
技術、文化、衛生、スポーツ用地は 50 年、(d)商業、観光、娯楽用地は 40 年、(e)総合
又はその他の用地は 50 年とされる。
他方、農村部の土地の利用については、農村土地請負法 42が 2003 年 3 月 1 日に施行さ
れている。農村土地の請負の形の利用権(国有土地使用権の払下げと同様、用途によっ
て期限がある43。)について、一定の範囲で、下請け、賃貸、交換、譲渡等の流通を認め
38
39
40
41
42
43
その後、2009 年 8 月 27 日に改正がなされている。
現行法(2004 年改正)は、1999 年 1 月 1 日に大幅な改正施行したものをベースにしている。
中国語では、「城市房地产管理法」という。
中国語では、「城镇国有土地使用权出让和转让暂行条例」という。
中国語では、「农村土地承包法」という。
耕地は 30 年、草原は 30 年から 50 年、林地は 30 年から 70 年とされる(同法第 20 条)。
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ている(同法第 32 条以下)。
(4) 担保法
担保については、民法通則では第 89 条の僅か 1 条で、保証、抵当権、手付、留置権に
ついての概要的規定が置かれていたほか、上記、都市部の国有土地使用権の払下げ及び
譲渡に関する暫定条例等の個別の法令で規定がなされていたが、1995 年 10 月 1 日施行
の担保法にて体系的な規定がなされた。
担保法では、人的担保としての保証と、物的担保としての抵当権、質権、留置権及び
手付について比較的詳細な規定が置かれた。条文数は 96 条まである。
(5) 物権法
担保物権の内容を含むところの物権法は、本来各論としての担保法よりも先に制定
されるのが論理的といえるが、物に対する全面的な支配権である所有権を基本とする
物権法の制定には、イデオロギー的な反対意見が多く、1993 年に起草を始めてから 14
年もかかった44とされ、担保法の施行より 10 年以上遅れた 2007 年に施行となった。
物権法の詳細については、次回以降紹介するが、構成としては、第一編 総則、第二
編 所有権、第三編 用益物権、第四編 担保物権、第五編 占有となっており、条文数
も 247 条にわたり、体系的にも内容的にも本格的なものとなっている。
(6) 不動産登記
不動産登記については、物権法第 10 条で、「国は、不動産に対し統一登記制度を実
施する」と定められたものの、統一登記の範囲、登記機構、登記方法は法律又は行政
法規の規定に委ねられており、これまで別々の行政法規に基づき別々の部門が、土地
と建物の登記を別々に編製しており、その管理も地域ごとにばらばらであった。
これについては、今年の 3 月 1 日に、不動産登記暫定条例が施行され、一つの部門
で統一的に不動産登記を行うこととされたが、直近の報道によれば、地方の県レベル
では、統一的不動産登記の実施率はまだ僅かに 4%にとどまり、制度の浸透には時間が
かかる見込みである。
3.小括
以上のように、1978 年以降の改革開放、1992 年以降の社会主義市場経済導入に伴い、
必要に応じて個別法で整備されてきた財産権に関する法制度について、基本法としての
物権法が後から制定されたのが、中国の特色である。基本法としての民法に物権の原則
があり、それを前提に特別法が整備されてきた日本法と異なり、個別法が何重にも存在
し、基本法としての物権法が制定されてからも、それに反しない範囲で個別法の規定が
生きているという複雑な法体系となっている。
また、土地の公有制の上に、土地の利用権と建物の所有権について物権取引の諸原則
が組み立てられているため、土地の所有権を前提とする日本人の思考からすると、中国
の財産法は、より分かりにくくなっている。
44
全国人民代表大会常務委員会副委員長(当時)王兆国の「『中華人民共和国物権法(草案)に関する説明』」
(2007 年 3 月 8 日第 10 期全国人民代表大会第 5 回会議での発表)による。
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今回のシリーズにより、中国の財産法の基礎知識について理解の一助となれば幸いで
ある。
[応用編]
土地と建物は別の不動産か。
日本では、土地と建物は別個の不動産とされ、別々に処分して、異なる権利者に帰属
させることが可能である。
他方、中国の物権法では、建物とその敷地の建設用地使用権は、同時に処分しなけれ
ばならないとされる。すなわち、敷地の使用権が処分されれば当該敷地上の建物等は敷
地の使用権と一緒に処分され(第 146 条)、建物等が譲渡される場合にはその敷地の使
用権も一緒に処分される(第 147 条)。そのため、土地と建物は別々に処分ができず、
日本とかなり異なるように見える。
しかし、中国では、そもそも土地の私有が禁止され、土地についての権利はあくまで
地上権的な性質を有する建設用地使用権であるから、もし敷地の使用権者と敷地上の建
物の所有者が異なるということでは法律関係が不安定になる。日本でも、建物の所有者
と敷地の借地権者が異なるということは認められないはずである。
もっとも、本文に述べたような財産法体系の整備における複雑な沿革から、現実には、
建物の所有権者とその敷地の建設用地使用権者が異なる場面はありうる 45。法令上も、
物権法第 142 条では、「建設用地使用権者が建造した建築物、構築物及びその付属施設
の所有権は、建設用地使用権者に属する。但し、反対の証拠により証明される場合を除
く。」と規定され、建設用地使用権者と建物の所有権者が異なる場合が事実として存在
することは認められている。また、1990 年施行の、都市部の国有土地使用権の払下げ及
び譲渡に関する暫定条例第 25 条では、「土地使用権と、地上の建築物その他の付着物
の所有権とを分割して譲渡する場合には、市、県人民政府の土地管理部門及び建物管理
部門の認可を受けて、規定に従って名義変更登記を行うものとする」として、土地使用
権と建物所有権の分割譲渡があることを前提とした規定が置かれている 46。
(山根基宏・弁護士)
45
例えば、以前の制度に基づき単位(勤務先等)から国家所有の住宅の分配を受けて低額の家賃を支払っ
て生活していた住民が、その後、当該住宅を購入し、建物所有権証を取得したものの、国有土地使用権証を
取得しないままになっており、土地使用権は単位に、建物所有権は当該住民になっている例も尐なくないと
言われる(張東偉「建設用地使用権法律適用と難問の解釈」中国法制出版社(2008 年 8 月初版)第 230 頁)。
ただ、このような問題も、今後は、物権法及び統一の不動産登記制度の下、徐々に改善・解消していくこと
が期待される。
46
但し上位法かつ新法である物権法の施行後、当該暫定条例の規定が有効かについては疑問である。
12
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三.中国法務の現場より
1.15 日以内の短期出張でもビザが必要か(Part 2)
本年 1 月 1 日に施行されて以来、その不明瞭な内容が多くの日系企業担当者を悩ませた
「『短期業務完成のための外国人入国に関する処理手続(試行)』を公布する通知」
(人社部
〔2014〕78 号。以下「78 号通知」という。)に関して、3 月 25 日及び 4 月 1 日付けで、
在中国日本大使館が中国の人力資源社会保障部及び外交部に対する照会結果をウェブサイ
ト上47で公開した。
本ニュースレターの 1 月号「15 日以内の短期出張でもビザが必要か」 48で解説したとお
り、従来、公安部出入境管理局の通知(公境検〔2003〕1176 号)に基づき、日本人が「観
光、商用、親族知人訪問或いは通過の目的」で中国に入国する場合、滞在日数が入国日か
ら 15 日を超えない場合はビザが免除されてきた。ところが、78 号通知において、「『中国
国内の支社・子会社・駐在員事務所に派遣され短期業務を完成させる』業務については、
90 日以内であれば M ビザ(商用ビザ)、90 日を超える滞在であれば Z ビザ(就労ビザ)の
取得が必要」である旨が明記される一方、滞在期間が 15 日を超えない場合が除外されてい
ないことから、「15 日以内の子会社等への出張においてもビザが必要になったのではない
か」という点が日系企業の間で大きな懸念となっていた。
この点、在中国日本大使館が公表した上記照会結果によると、
「日本国民が一般旅券で中
国に入国する場合、78 号通知で M ビザ(商用ビザ)が必要とされている事項49であって
も、滞在日数が 15 日間を超えない場合は、ビザが免除される」旨が中国外交部の回答とし
て明記されている。1 月号の拙稿で紹介したとおり、本年 1 月末時点においては、78 号通
知の解釈や適用基準に関する当局の見解が一切発表されておらず、ビザ担当の担当部門間
においても見解の一致は見られていなかったが、今回の照会結果の公表を受けて、「15 日
以内の子会社等への出張においてはノービザで構わない」ことが一応明確化されたと言っ
てよいであろう。
なお、上記照会結果によると、ノービザ出張が許される「子会社」は、
「当該会社との間
に資本関係があればよく、出資比率が過半数に至る必要は無い」とされていることから、
中国国内にあるマイナー出資先の合弁会社に対する出張についても 15 日以内であればノ
ービザ扱いとなる。一方で、15 日を超える「子会社」等への出張の場合は M ビザ(商用
ビザ)が必要となり、さらに中国国内で資本関係のない「協力先」において技術、科学研
究、管理及び指導等の業務を完成させる場合等においては、たとえ 15 日以内であっても Z
ビザ(就労ビザ)の取得が必要となるため、注意が必要である。
(野中信孝・弁護士)
47
http://www.cn.emb-japan.go.jp/consular_j/joho150401-2_j.htm
http://www.tmi.gr.jp/wp-content/uploads/2015/02/TMI-China-News-Jan-20151.pdf
49
①中国国内の支社・子会社・駐在員事務所に派遣され短期業務を完成させる場合、②購入した設備機器
に付随するメンテナンス、据付、試運転、解体、指導及び研修を行う場合、③中国国内において落札したプ
ロジェクトについて指導、監督、検査を行う場合、④スポーツ大会への参加等がこれに該当する。
48
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2.中国(上海)自由貿易試験区の拡張と改革
2013 年 9 月 29 日に中国(上海)自由貿易試験区(以下「上海自由貿易試験区」という)
が成立してから約 1 年半を経て、広東、天津、福建の自由貿易試験区が始動するとともに、
上海自由貿易試験区の地理的範囲が拡張された 50。
上海自由貿易試験区は、従前、上海市外高橋保税区、上海外高橋保税物流園区、上海洋
山港保税港区、上海浦東空港綜合保税区の 4 つの保税区(税関特別監督管理区域)を対象
として設置されたものであり、対象区域の面積は、合計でも 28.78 平方キロメートルであ
ったが、これに、右下の地図でオレンジ色の吹き出しを付けた、陸家嘴金融片区(東方明
珠塔のある陸家嘴駅周辺のみならず、浦東新区の政府機関が林立する世紀公園北側や、黄
浦江沿いの万博跡地までの広い範囲を含む)32.26 平方キロメートル、金橋開発片区 20.48
平方キロメートル、張江高科技片区 37.2 平方キロメートルが加わり、合計面積は一挙に
120.72 平方キロメートルまで拡大した。
これは、従来の保税区という特殊地域
を超えて、オフィス街、商業施設、住宅
地等を含む一般地域まで自由貿易試験
区が拡大することを意味し、試験区で実
験した政策を将来的に全国一般に拡大
するために、さらに一歩進んだというこ
とができる。
これらの拡大地域の業務は 4 月 27 日
より開始され、陸家嘴については、浦東
新区市民中心に、金橋については、金橋
開発区管理委員会の所在地に、張江につ
いては張江高科技園区管理委員会の所
在地に、それぞれの地区の自由貿易試験
区行政窓口が置かれた。
また、地理的範囲の拡大のみならず、
今回の改革を機に、政策内容についても
より一層の緩和・合理化がなされた。
外商投資企業との関係では、商務部が 4 月 8 日付で公布し(実際の発表は 4 月 20 日)、5
月 8 日施行予定の「自由貿易試験区外商投資届出管理弁法(試行)」が注目される。
ネガティブリスト適用外の企業については、上海自由貿易試験区においては、設立や変
更における審査認可が廃止され、届出制となっていたが、設立又は変更の工商登記前の届
出が必要であった。これが、本弁法施行後は、「投資実施」の前又は後 30 日間に届出を行
えば足りることとされた(第 4 条、第 5 条)。「投資実施」とは耳慣れぬ言葉であるが、本
弁法の定義によれば、会社設立においては営業許可証の新規発行時点を、営業許可証の書
換を伴う変更事由については営業許可証の書換発行時点を、営業許可証の書換を伴わない
変更事由については当該変更事由の発生時点をそれぞれ「投資実施」の時点としている(第
50
《全国人大常委会关于授权国务院在中国(广东)自由贸易试验区、中国(天津)自由贸易试验区、中国(福建)
自由贸易试验区以及中国(上海)自由贸易试验区扩展区域暂时调整有关法律规定的行政审批的决定》(2014 年
12 月 28 日公布、2015 年 3 月 1 日施行)に基づく。
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2 条)。すなわち、今後は、ネガティブリスト適用外の外商投資企業は、内資企業と同様、
いきなり工商登記(設立・変更)の手続を行うことができ、外商投資の届出は事後的に行
ってもよいことになった。法人格の取得や、変更事項の対外的公示は、工商登記を基準に
するため、いきなり工商登記を行うことができることは、外商投資企業の登記実務にとっ
ては、手続迅速化のために、メリットが大きいといえる51。
また、同時に国務院から 4 自由貿易試験区共通の新たなネガティブリストが公布され(同
様に 5 月 8 日より施行)、リストに挙げられた規制対象項目は 122 個となり、現行の上海自
由貿易試験区のリストの 139 項目よりさらに緩和が図られたといえる 52。
(山根基宏・弁護士)
TMI 中国最新法令情報―2015 年 4 月号―
発
行:TMI 総合法律事務所
監
修:何連明・外国法事務弁護士
編集主幹:山根基宏、中城由貴・弁護士
発 行 日:2015 年 4 月 30 日
51
なお、届出に関する規制緩和の反面、外商投資企業への年度報告義務、監督検査の明確化、及び外商投
資企業の信用情報システムを確立し、部門間で情報共有を行うという事後規制の強化が図られたという面も
ある(商務部による解説を参照 http://www.mofcom.gov.cn/article/zhengcejd/bm/201504/20150400947185.shtml)。
52
他方で、国務院は、同時に「自由貿易試験区外商投資国家安全審査試行弁法」を公布し、ネガティブリ
ストによる管理の反面で国家安全を確保するための施策の試験的導入を図った。これは、ネガティブリスト
による管理を導入しつつ、国家安全審査制度を整備するという外国投資法(意見募集稿)の方針を自由貿易
試験区で実験するという意味合いがあるものと思われる。
(外国投資法の意見募集稿については、本稿 2015
年 1 月号を参照)
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