血液でわかる心臓の検査 心筋マーカーの特徴 心筋マーカーの特徴を理解し、臨床症状にあった検査をすることで、生理学的 検査(心電図、心エコー、MRI、血管造影)と組みあわせ、心疾患の迅速な診断が 可能となります。 心臓に損傷を受け血中に逸脱するマーカー ①心筋細胞中の細胞質に存在し病変初期に血中に逸脱する心筋マーカー =病変早期に有用→ H-FABP、ミオグロビン *急性心筋梗塞の場合 H-FABP MGB (心筋型脂肪酸結合蛋白) (ミオグロビン) 異常値 出現 数時間(早ければ30分∼3時 間) 数時間 ピーク 5∼10時間 7∼10時間 正常化 12∼24時間 約48時間 使い分け MGBは骨格筋にも含まれるため心筋特異性はH-FABPの方が高 い。MGB/H-FABP比が小さいと心筋、比が大きいと骨格筋由来と 診断できるが、同時算定はできない。 保険点数 150点(生化Ⅰ) 急性心筋梗塞の診断のみ その他 150点(生化Ⅰ) 迅速キットにて15分で判定可 変動により、急性心筋梗塞での 再灌流療法の成否の推測可能 ②蛋白分解酵素より筋原繊維が分解され、収縮調整蛋白が逸脱する心 筋マーカー→ 心筋トロポニン(トロポニンT・トロポニンI)、ミオシン軽鎖 *急性心筋梗塞の場合 トロポニンT (TnT) トロポニンI (TnI) ミオシン軽鎖(MLC) 異常値 出現 3∼4時間(診断感度は 十分でない) 2時間(67%の症 例) 3∼6時間 ピーク 12から16時間、90∼ 120時間の二峰性 10∼16時間 5∼6日(値は梗塞 サイズを反映する) 正常化 その他 保険 点数 約10日以降 腎臓から排泄されるた め腎不全患者で偽陽性 となる 130点(生化Ⅰ) TnIと同月検査の場合、 約8日以降 骨格筋疾患や腎障 害では異常を示さな い 120点(生化Ⅰ) 主たるもののみ算定 約10日以降 腎臓から排泄される ため腎不全患者で 偽陽性となる 190点(生化Ⅰ) 発症月1回 心臓に負荷がかかったときに増加するマーカー 心臓に負荷がかかると生合成を亢進させ血中に増加する心筋マーカー → BNP、ANP BNP、ANP バランスがくずれる ナトリウム利 尿ペプチド系 ××有害作用×× こんなふうに 心筋細胞肥大 血管収縮 PAI-1産生 炎症性サイト カインの発現 ・・・・ レニン-アン ジオテンシ ン-アルドス テロン系 バランスを元にもどそうと して血中に増加する 血管作動システムのバランス 心房性ナトリウム利尿ペププチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などがありま す。この物質は、血管拡張作用・ナトリウム利尿作用を有し、交感神経活性やレニン・アン ジオテンシン・アルドステロン系を抑制し心臓の負荷を改善しようとします。心室負荷、心 室肥大、心筋虚血、不整脈などで上昇し、重症(負荷がたくさんかかる)な病態ほど高値 になります。 心臓の負荷の大きさは、ANPよりBNPの方が鋭敏に変化するため、BNPの方が有用です。 心筋障害のときの 脳性ナトリウム利 尿ペプチド(BNP) の産生・代謝につ いて 心筋損傷・心筋ストレス 検査と技術Vol.36No92008SEP「BNP検査とNT-ProBNP 検査の使い分け」米田孝司・佐藤清 図心不全における BNPおよびNT-proBNPの産生・代謝を参考にしました BNP前駆体遺伝子発現増加 Pre-proBNP ProBNP 1:1の割合で心筋細胞外に放出される 1 : 1 NT-ProBNP 生理的意義 心不全の診断 基準(pg/ml) BNP BNPとNT-proBNPとの心機能の評価や疾患の予後評価での有 用性は同じ。 心筋細胞にストレスがかかると、改善しようと血中に放出される。 心不全の病態改善時、心室負荷や心室肥大、心筋虚血、不整脈 などで上昇、心筋梗塞の予後予測としても優れている。 450以上(50歳以上は900以 上)疑い、300未満は除外 100以上疑い、50未満は除外 検体と安定性 血清・血漿(EDTA)可 室温で24時間、冷蔵で72時 間まで安定 EDTA血漿のみ 採血後冷蔵でそのまま放置する と値は減少、一晩で約10%低下 保険点数 140点(生化Ⅱ) 心不全の診断(疑い含む)または病態把握のた め月1回算定、主たるもの1項目のみ算定 その他 NT-ProBNPは、BNPより腎障害の影響を受けやすく腎不全などで は高値となるが、そのときの値と予後の値がBNPよりも密接に関 連するため、心腎関連の優れたマーカーとされている。 2007心不全の生化学 マーカーガイドライン より 参照文献:検査と技術Vol.36 No.9 2008SEP.「BNP検査とNT-proBNP検査の使い分け」米田孝司・佐藤清 検査と技術Vol.38 No.10 2010EXTRA.生化学「C心疾患マーカー」高橋 伯夫 検査と技術Vol.38No.7 2010「心房性ナトリウム利尿ペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド」石井潤一 MEDICALTECHNOLOGY2008 Vol.36NO.2心臓を学ぼう!第2 回検査値はどうなる? 血液データの見方 小倉克巳・杉浦哲朗
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