高等教育機関における国際交流制度の現状 と課題

市川:高 等教育機 関におけ る国際交流制度の現状 と課題に関す る比較調査研究
ノ
1
高等 教育機 関 にお け る国際 交流制 度 の現 状
と課 題 に関す る比較 調 査研 究
市 川 良 哉*武
高 見
茂*東
久 文 代*
山 弘 子*山
田 隆 敏*
AComparativeStudyonRecentIssuesoftheInternationalExchange
SysteminJapaneseHigherEducation
YoshiyaIcHIKAwA
FumiyoTAKEHIsAandShigeruTAKAMI
andHirokoHIGAsHIYAMAandTakatoshiYへMADA
要
約
国 家 間 の 相 互 依 存 関係 の緊 密 化 と と もに 、 現 代 世 界 は名 実 と もに 「国 際 化 時 代 」 を 迎 えつ つ
あ る。 こ う した趨 勢 に あ っ て は 、 と りわ け 「高 等 教 育 機 関 の 国際 化 」 は 、 最 も大 きな量 的 ・質
的 変 化 を経 験 し、 最 も先 端 的 な革 新 を迫 られ て い る部 分 で あ ると思 わ れ る。
本研 究 で は 、 か か る課 題 意 識 か ら、教 育 の 「国 際 化 」 の 諸 側 面 の うち 「教 育交 流制 度 の 一環
と して の語 学 研修 制 度 」 を取 り上 げ た。 そ して 、 国 内 お よび ア メ リカ の高 等 教 育 機 関 に お け る
そ の意 義 と現 状 、 な らび に問 題 点 を多 面 的 に検 討 した 。
そ の結 果 、 本学 に お い て 、 今 後 、 教 育 機 会 の空 間 的拡 張(=国
際 化)戦 略 を推 進 す る上 で考
慮 す べ き諸 課 題 が浮 か び 上 が った ので あ る。 ま た 、 ア メ リカ にお け る 「語 学 研 修 サ ー ビス」 の
類 型 の抽 出 と 、 そ の 妥 当 性 に つ い て も併 せ て検 討 し、 本学 学 生 に と って 最 も望 ま しい 「語 学 研
修 サー ビス」 の在 り方 に つ い て 、0定 の 結 論 を得 た。
第1章
(1)目
研 究 の 目的 と指 針
的
「教 育 の 国 際 化 」 が喧 伝 され て 久 しい 。 そ れ は、 社 会 ・政 治 ・経 済 上 の グ ロー バ リゼ ー シ ョ
ソの進 行 を 引 っ張 り要 因 とす る。 だ が 今 日の 国 際 社 会 に お い て は 、 国 家 間 の 相 互 依 存 関 係 の緊
密 化 と共 に 、 そ れ に 不 可 避 的 に付 随 す る 「国 際 間 摩 擦 」 の増 大 も見 られ る。
こ う した 諸 問題 の 克 服 をね らい と して 、外 交 ・通 商 と い っ た様 々 な チ ャ ソ ネル を 通 じた解 決
策 が鋭 意 錬 られ 、 わ が 国 にお い て も具 体 的 な 政 策 が打 ち 出 さ れ て い る。 だ が 、 日米 貿 易 摩 擦 に
も見 られ る よ うに 、 「万 能 薬 」 は見 出 し難 く難 問 山 積 の 現 状 に あ る。 そ れ は 、社 会 ・政 治 ・経
済 上 の関 係 と比較 して 、 よ りベ ー シ ッ クな よ り根 幹 に関 わ る部 分 の相 互 理 解 が 未 成 熟 な こ とに
も起 因す る。
平 成3年9月30日
受 理*教
養部
2
奈
良 大
学 紀
要
第20号
国際 関 係 は 、 究極 的 に は 「人 と人 の 関係 」 に 還 元 し うる もの で あ る。 そ れ ゆ え 、人 間 を 包 む
諸 環 境 一 そ の歴 史 、 文 化 、 習 慣 、 価 値 観 等 を学 び 相 互 理 解 を深 め る こ とは 、 今 日の 国際 関係 を
考 え る上 で 、 と りわ け重 視 され な け れ ば な らな い 。 こ う した課 題 に応 答 し う る方 法 論 は 、即 効
性 は望 む べ くもな い が 、 確 実 な手 段 と して の 「教 育 的 処 方 箋 」 の成 果 を抜 きに して は語 れ な い
の で あ る。 ま た 、 高 等 教 育 の 領 域 に お い て は 、 や が て 迎 え る18歳 人 口の急 減 お よび海 外 大 学 の
日本 進 出 に伴 う 「国 内 ・国 際 競 争 時 代 」 一 い わ ゆ る 「大 学 淘 汰 の時 代 」 へ の対 応 策 と して も、
そ れ は有 力 な切 札 と して 捉 え られ る。
した が っ て 、本 学 に お い て も、 こ う した 「教 育 の 国 際 化 」 の在 り方 を 多面 的 に も検 討 す る こ
とは 、 「教 学 の理 念 」 に 照 ら して も緊 急 か つ重 要 な 検討 課 題 で あ る と思 わ れ る。 本 研 究 で は 、
こ う した課 題 意 識 か ら、 「教 育 の国 際 化 」 の諸 側 面 の うち、 「教 育 交 流制 度 の一 環 と して の語
学 研 修 」 を取 り上 げ る。 そ して 畿 内 を 中心 と した 国 内 高 等 教 育 機 関 、 お よび ア メ リカ を 中 心 と
した海 外 高 等教 育機 関 に お け るそ の現 状 と問題 点 の 検 討 を通 じ、 今 後 本 学 に お い て 展 開 す べ き
「国際 教 育 交 流 戦 略 」 の 在 り方 を探 究 す る こ とを 目的 とす る。
(2)基本 指 針
本 研 究 を遂 行 す るに 当 た って 、 研 究 分 担 者 の 間 で 打 ち合 せ と討 論 を行 い 、 以下 二 点 に つ い て
留 意 し0定 の基 本 指 針 とす る こ とで 合 意 した。 そ れ は 、① 教 育 面 へ の 限定 と② 調 査 対 象機 関 の
限定 で あ る。
① 教 育 面 へ の 限定
高 等 教 育 の レベ ル に お い て 、 「教 育 の 国際 化 」 は 最 も大 きな量 的 ・質 的変 化 を経 験 し、 か つ
最 も先 端 的 な革 新 を 迫 られ て い る分 野 で あ る と され る。 そ して 現 実 に そ れ は 、高 等 教 育機 関 の
本 質 的 機 能 、す な わ ち 「研 究 」 お よ び 「教 育 」 の両 機 能 に関 わ る問 題 で あ る。 前 者 は 「学 術 面
で の 国際 交 流 の拡 大 」 と して 、 ま た後 者 は 「留 学 生 人 口の 増 加 」 と して捉 え られ る。 さ らに両
者 は密接 不離 の 関係 に あ る もの と考 え られ る。 した が って 、 高 等 教 育 の 国 際 化 を考 察 す る場 合 、
この両 側 面 を視 野 に 入 れ る こ と が肝 要 とな ろ う。
だ が本 研 究 で は、 本学 教養 部 教 育 の 「語 学 」 を 中 心 と した 将 来 の 「国際 化 戦 略 」 に資 す るた
め 、後 者 す な わ ち 「教 育面 」 か らの 考 察 に 限定 した 。 そ して 、 特 に 「海 外 語 学 研 修 制 度 」 に焦
点 を 当 て て調 査 ・検 討 を行 った 。 なぜ な ら同制 度 は 、 国 際 的 な相 互 理 解 の た め の最 も基 礎 的 な
技 能(=コ
ミュ ニ ケ ー シ ョソ手 段)の
「訓 練 の場 」 と して 把 握 され るか らで あ る。
② 調 査 対 象 機 関 の 限定
調 査 対 象 機 関 と して 、 国 内 につ い て は4年 制 私 立 大学15校 を、 ま た ア メ リカ に つ い て は別 表
W-1、2に
見 る よ うな4年 制 州 立 ・私 立 大 学11校 を取 り上 げ た。 調 査 方 式 は 、 国 内 に つ い て
は、 国際 交 流 担 当者 に対 す る質 問 紙 に基 づ くイ ソ タ ビ ュー と資 料 収 集 に よ っ た。 調 査 機 関 の リ
ス トア ップ に 当 た っ て は 、i)地
「教 養 部 」 を設 置 して い る等)と
域 性 、ll)男
女 共 学 、 血)学 生 数 、iv)学
内組 織(と
りわ け
い っ た諸 点 に 留 意 し、 少 な く と も2点 に つ い て本 学 との類 似
性 を見 出 し う る もの を対 象 と した。 た だ し、 調 査 対 象 校 の うち1校(以
下A大 学)に
つ いて は 、
地 域 的 に も関 東 エ リア で あ り、 学 生 数 、 学 内組 織 と も本 学 と の相 違 は顕 著 で あ る。 類 似 点 と し
て は、 唯 一
一 「男 女 共 学 」 を指 摘 で き る の み で あ。 だ が 、 同 大 学 の 「海 外 語 学 研 修 制 度 」 は 、高
等 教 育 の関 係 者 は言 うに及 ば ず マ ス コ ミ も関 心 を寄 せ 、 そ の 量 的 ・時 間 的 規 模 、 シ ス テ ム に つ
いて は一
一定 の評 価 が与 え られ て い る。 そ して そ れ は 、 あ る意 味 で 「急 減 対 策 」 を念 頭 に置 い た
「大 学 経 営 戦 略 」 の重 要 な一 翼 を担 って い る もの と思 わ れ る。
本 学 教 養 部 に お い て も、来 るべ き急 減 期 に備 え るべ く、 そ の 「教 学 の理 念 」 に照 ら しつ つ諸
対 策 を 同 時多 面 的 に検 討 して い ると ころ で あ る。 そ こで は 、 「教 育機 会 の空 間的 ・時 間 的 拡 張 」
1
市川:高 等教育機関 における国際交流制度 の現状 と課題に関す る比較調査研究
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が 有 力 な 戦 略 と して 提 起 され て い る。 「空 間 的拡 張 」 は 、教 育 の 「国 際化 戦 略 」 を そ の 内実 と
す る。 また 「時 間 的 拡張 」 は、 学 内遊 休 資 源 の 活 性利 用 を ね らい と した 「社 会 人 」 や 「シル バ ー
世 代 」 の キ ャ ソパ ス内 へ の 動 員 を テ コに した 「生 涯 教 育 化 戦 略 」 で あ る。
A大 学 に お い て は 、 教 育 の 「国 際 化 戦 略 」 は あ る意 味 で 「急 減 対 策 」(=一
戦 略 」)と
種 の 「企 業 防 衛
して位 置 づ け られ て い る。 そ して それ は、 同大 学 の志 願 者 増 ・レベ ル ア ップ に見 ら
れ る よ うに 、 あ る程 度 の成 功 を収 め た よ うに思 わ れ る。 そ れ ゆ え、 同大 学 の ケ ー スを 検 討 す る
こ とは 、本 学 教 養 部 に と って も、 今 後 の 「急 減 対 策 」 を多 面 的 に講 ず る上 で 、何 らか の 示 唆 が
得 られ る もの と期 待 され るの で あ る(1)。
他 方 ア メ リカ に つ い て は 、 現 地 訪 問 お よ び関 係 者 へ の イ ソ タ ビュ ー、 な らび に 資料 収 集 を実
施 した。 調 査 対 象校 は 、 以 下4つ の 要 件 を具 備 して い る も の を リス トア ップ した 。 す な わ ちそ
れ は、i)4年
制大学 である、 の
ア ク レデ ィテ ー シ ョソ(資 格 認定)を
集 中語 学 講 座 を有 して い る もの 、iv)大
受 け て い る こ と、111)
学 自体 が カ リキ ュ ラ ム を運 営 して い る こ と、 で あ る。
調 査 ・研 究 に 当 た っ て は 、 理論 面 は 高 見 が 、 実 践 面 は 武 久 、 東 山、 山 田 が 、 ま た全 体 の 総 括
は 市 川 がそ れ ぞれ 担 当 した。(高
見)
第II章 高等教育機関における国際教育交流の類型 と意義
(1)類
型
「目的 ・指 針 」 で も指 摘 した よ うに 、 本研 究 で は 、 国 際 教 育 交 流 制 度 の うち 「教 育 面 」 に検
討 対 象 を 限 定 し、 典 型 的 に は広 義 の 「留 学 制 度 」 を取 り上 げ た 。
「留 学」 とい う概 念 は 、1990年 代 の 日本 に お い て 、従 来 に は 見 られ な か っ た よ うな多 様 化 ・
複 雑 化 の様 相 を 呈 して い る。 さ らに今 後 の 国際 教 育交 流 の活 発 化 の 中 で 、 よ り0層 新 た な 問題
点 が生 ず る こ と も予 想 され る。 した が っ て 、第0に
「留 学 」 の現 状 を 多 面 的 に考 察 し、 わ れ わ
れ が検 討 対 象 とす る 「海外 語 学 研 修 制 度 」 の位 置 づ け を 明確 に す る作 業 は 不 可 欠 で あ ろ う。 本
章 で は 「留 学 制度 」 の 類型 化 を試 み よ う。 そ の際 い くつ か の類 別 基 準 が考 え られ るが 、 本 研 究
で は、 ① 教 育制 度 面 、② 教 育 内容 面 、③ 教 育 目的 面 、 とい った枠 組 み を採 用 す る。
① 教 育 制 度 に よ る類 型 化
教 育 制 度 に即 して 「留 学 制 度 」 を類 別 す る と、 それ はi)狭
し と、 の
i)は
義 の留 学 生 の 受 け 入 れ ・送 り出
研 修 生 の受 け入 れ ・送 り出 しに二 分 さ れ る。
、 ⑤ 送 り出 し ・受 け 入 れ両 校 の 間 に 単 位 互 換 に 関 わ る協 定 も し くは 文 書(letterof
intent)の
交換 が あ る こ と、 ⑤ 少 な く と も学 則 、 内規 に基 づ く条 件 に 沿 って 、 学 生 が 一 定 期 間
(少 な くと も1年 間)以 上 外 国 の 大学 に 正 規 の 学 生 に準 ず る資 格 を もっ て在 学 す る こ と、 ◎ 文
部 省 奨 学 金 や 相 手 校 奨 学 金 を得 て行 わ れ る こ と、 を 要 件 とす る②。
の
の 多 くは い わ ゆ る 「海 外 語 学 研 修 」 で あ り、i)の
は 、 ⑤ 英 米 に お け る1anguageschools(予
よ うな厳 しい要 件 もな い。 具 体 的 に
備 語 学 教 育機i関)や 、海 外 大 学 教 育 機 関 の別 科 的
語 学 コー ス、 あ る い は ア ク レデ ィ ッ ト(資 格 認 定)さ
れて い な い機 関 へ の 送 り出 し ・受 け入 れ 、
⑤ 休 学 して の私 費 留 学 の場 合 、 な ど が これ に 該 当す る(3)。
した が って 「海 外 語 学 研 修 」 は 、 こ
の 類 別 枠組 み に照 ら して み る と、厳 格 な 意 味 で の 「留 学 」 で は な く文 字 ど お り 「研 修 の 送 り出
し」 と して 捉 え られ よ う。
② 教 育 内 容 に よ る類 型 化
教 育 内 容 面 か ら類 別 す る と 、 そ れ はi)「 依 存 型 留学 」 と 「付 加 価 値 型 留 学 」 に類 別 され るω。
i)は
ら北(=先
、 他 国 に 依 存 して 自 国 の必 要 を充 足 し よ うとす る もの で あ る。 南(=発
展 途 上 国)か
進 国)へ 向 か う留 学 が そ の典 型 で あ り、 そ れ は 高 等 教 育 制 度 の 未 整 備 に起 因 す る。
4
奈
学 位 取 得(特
良 大 学
紀
要
第20号
に 大学 院 レベ ル)や 、 自国 の必 要 とす る技 術 ・知 識 ・思想 の摂 取 を ね らい とす る
場 合 が 多 い。 こ う した 留 学 は 、 か つて の発 展 途 上 国 で あ っ た わ が 国 に も見 られ た もの で あ り、
0方 的 で 受 け 身 の 「文 明 伝 習 型 」 の留 学 と して 捉 え られ る。
ll)は 、 多数 の留 学 生 の 受 け 入 れ 国 で あ る と と も に送 り出 し国 で あ る北 の諸 国 に見 られ る も
の で あ る。 す な わ ち 、⑤ 学位 は 自国 の 教 育 制 度 に よ って 取 得 し、 そ の基 礎 の上 に あ るい は そ の
0部 と して 、現 地 で しか遂 行 し得 ない 特 定 の 研 究 課 題 を追 求 す る た め の留 学 や 、⑤ 一 年 内外 あ
る いは そ れ 以 下 の短 期 間 の 「異 文 化 体 験 学 習 」 、 「海 外 語 学 研 修 」 の 類 い 、 が これ に該 当す る。
これ らは 、 い わ ば 「文 化 伝 習 型 」 の 留 学 で あ り、 相 互 に学 び合 うこ とを特 徴 とす る。 こ う した
「付 加 価 値 型 」 の留 学 に つ い て は 、 プ ラ トソ もそ の 著 「法 律 」 の 中 で一 定 の評 価 を与 え て い る
⑤。 した が って 、 歴 史 的 に 見 て も古 い時 代 か らそ の教 育 的 意 義 が認 知 され て い た とい え よ う。
③ 教 育 目的 に よる類 型 化
依 存 型 、付 加 価 値 型 を 問 わ ず 、 「留 学 」 を 教 育 目的 面 か ら類 型 化 す る と、 そ れ は以 下 二 つ の
類 別 枠 で 整 理 し うる。 す な わ ちi)「
投資型留学」 と の
人 、 国 家 、 企 業 の具 体 的 な 目的 の た め の 留 学 で あ り、 の
「消 費 型 留 学 」 で あ る。i)は
、個
は 、 個 人 の教 養 を高 め た り、 異 文 化
体験 を通 じて 満 足感 を得 る こ とを 目的 とす る。 前 者 の例 と して は 、 ア メ リカの ビ ジネ ス ・ス クー
ルへ の 日本 企 業 か らの派 遣 留 学 や 、転 職 に よ る ラ ソ ク ア ップ を志 向す る退 職OLの
留 学 が指 摘
で き よ う。 ま た独 身OLの
休 暇 を利 用 した短 期 留 学 な どは 後 者 の典 型 例 で あ る。 人 々 の こ う し
た 「留 学 需 要 」 は 、i)に
つ い て は 「地 位欲 求 」 に よ って、H)に
つ いて は 「余暇 欲 求 」 に よっ
て そ れ ぞ れ喚 起 され た もの と把 握 し うる。
また 、 個 人 の レ・
シ レで見 た 「高 等 教 育 需 要 」 そ の もの が 、 ⑤ 将 来 の 「地 位 欲 求 」 と結 合 した
「投 資 的 需 要 」 と、 ⑤ 「余 暇 欲 求 」 と結 合 した 「消 費 的 需 要 」 か ら成 る と さ れ る。 そ れ ゆ え、
そ の 教 育 の一 環 と して実 施 され る留 学 に は 、 か か る二 つ の 側 面 が 内 包 され る こと は 当然 の帰 結
で あ ろ う。 われ われ が調 査 対 象 と した 「海 外 語 学 研 修 」 も こ の枠 か ら外 れ る もので は な い。
(2)意
義
で は 、 今 日的 な留 学 、 と りわ け 「海 外 語学 研 修 」 の 教 育 的 意 義 は ど の よ うな点 に見 出 せ る の
で あ ろ うか。 トー タ ル に見 れ ば 、 そ れ は 以下3点
に 集 約 され よ う。
第1に 、 「文 明」 を支 え包 括 す る シス テ ム と して の 「文 化 」 に触 れ 、 そ れ を理 解 す る場 を与
え る契 機 と な る こ と で あ る。 文 明伝 播 の ス ピー ドが 倍 加 した こ と に よ って 、 か え っ て文 明 を媒
介 と した 「国際 間 摩 擦 」(た
と えば 、 日米 半導 体 摩 擦 、 自動 車 輸 出 、 コ メ市 場 の 開放 問 題 な ど)
を触 発 す る現 象 が見 られ る。 こ う した 国 際 間 問題 の克 服 に は、 そ の背 景 に あ る 「文 化 的 諸 側 面 」
の 相 互 理 解 に努 め る こ とが肝 要 で あ る。
また 第2に 、 そ れ は 、 プ ラ トソの指 摘 に も見 られ る よ うに、 「自 国 の名 誉 を あ げ、 自国 のす
ば ら しさ を外 国 と比 較 して確 認 す る(6)」
契 機 と もな る こ とで あ る。 異 文 化 に接 して学 ぶ こ とは 、
相 手 側 の こと ば か りで は な く、 自己 お よび 自 らの 文 化 につ いて 知 り学 ぶ 機 会 と な る。 した が っ
て 、 「文 化伝 習 型 」 留 学 生 は、 正 に 文 化 体験 的 な相 互 交 流 の最 前 線 に価 値 す る主 体 な ので あ る。
また 自 ら が学 ぶ 「被 教 育 者 」 と して 教 育 の 原 点 に立 つ もの と思 われ る。
こ う した文 脈 の 中 で は 、本 学 教養 部 企 画 の 海 外 語 学 研 修 プ ロ グ ラム の 中で 導 入 した 「ホ ー ム
ス テ イ制 度 」 は 、積 極 的 な教 育 的 意 義 を 内 包 す る も の と して 評 価 で きよ う。 なぜ な らそ れ は 、
学 ぶ 側 か らす る と、 教 育 の根 幹 に 関 わ る最 も始 源 的 な教 育 シ ス テ ム と して の意 義 を体 現 す るか
らで あ る。
歴 史 的 に 見 る と、 「社 会 的 諸機 能 」 は 、 「・教
育 機 能 」 も含 めて 、 元 来 「家 族 機 能 」 の 中 に 包
摂 され る もの で あ っ た。 と こ ろが社 会 ・経 済 の 発 展 と と も に、 それ らは家 族 外 の 「専 門 的機 能
市川:高 等教育機関における国際交流制度の現状と課題 に関する比較調査研究
5
集 団 」(教 育 の 面 で は 学校 は そ の 典 型)に 吸 収 され た もの と考 え られ る。 した が っ て、 家 庭 は
は 正 に そ の 国 の あ らゆ る 「社 会 的 諸 機 能 」 の原 点 と して位 置 づ け られ るの で あ る。 「ホ ー ム ス
テ イ制 度 」 は 、 「家族 機 能 」 の 中 に 依 然 と して 維 持 され て い る 「教 育 機 能 」 を通 じて 、 そ の 国
の 「文 化 的 諸 側 面 」 を最 もベ ー シ ッ クな レベル か ら確 実 に 学 び うる教 育 機 会 で あ る と い え よ う。
さ らに 第3に 、 そ れ は 「自己 形 成 力 」 あ る い は 「自己教 育 力 」 を 錬 磨 す る機 会 と な る こ とで
あ る。 この 点 は 、 上記 で指 摘 した 「ホー ム ス テ イ制 度 」 の教 育 的 意 義 と も関 連 す る。 日本 の青
少年 は 、幼 少期 よ り学校 とい う0種 の 「文 化 的 孤 島」 に 閉 じ込 も り、 知 育 偏 重 教 育 の枠 の 中 で
社 会 的成 熟 を遅 らせ る結果 を招 きや す い 。 た と え ば、 「日米 高校 生 の 生 活 時 間 の配 分 に 関す る
調 査 」 で は 、 以 下 の よ うな 差 異 が 指 摘 され て い る(の
。 す な わ ち、i)日
本の高校生 は、家事 の
手 伝 い ・分 担 は あ ま り しな い が 、勉 強 時 間 と テ レ ビの視 聴 時 間 は長 い 、 血)ア メ リカ の高 校 生
は 、勉 強 時 間 や テ レ ビの視 聴 時 間 は や や 少 な い が 、 家 事 に加 え て ボ ラ ソテ ィ ア活 動 な ど外 で活
発 に活 動 す る、 とい う こ とで あ る。 こ う した 生 活 習 慣 の違 い の た め か 、 日本 の青 少 年 は、 自国
の 「生 活 文 化 」 や 「伝 統 」 に も意外 と無知 な こ と も多 い。 そ れ ゆ え 、 「海 外 語 学 研 修 制 度 」 に
組 み込 ま れ た 「ホ ー ム ス テ イ制 度 」 の利 用 者 は 、 自己 に課 せ られ た 「教 え る者 」 と して の機 能
を果 たす た め、 準 備 作 業 の プ ロセ ス の 中 で 、 日常 あ ま り意 識 す る こ と もな い 自己 お よ び 自国文
化 に つ いて 改 め て 自 己学 習 す る こ とに な る。 また 言 葉 も習 慣 も不慣 れ な外 国 で の研 修 生 活 は、
ど ち らか と い え ぱ保 護 的 ・ぬ るま湯 的体 質 に 染 ま っ た 日本 の若 者 に 、 自 らを 鍛 錬 し 「自助 の精
神 」 を培 うチ ャ ソ ス を与 え る もの と評 価 で き よ う。(高 見)
第III章 わ が 国の 高 等 教 育 機 関 に お け る海 外語 学 研修 プ ログ ラ ムの 現 状 と課 題
1.目
的
本 章 の 目的 は 、 実 際 に行 わ れ て い る諸 大 学 の 海 外 語 学 研 修 の プ ロ グ ラ ムに つ いて 調 査 した結
果 を分 析 考 察 す る こ と で あ る。
2.調
査 の 方 法(8)
(1)調査 票 お よ び調 査 項 目
以 下 の8項
目に つ いて 調 査 票 を作 成 した 。
① 海 外 研 修 の 企 画 と実 施 の主 体
② 教 育 的 意 義 ・目的 ・内容
③ 研 修 の概 要
④ 旅 行 業 者 に関 す る こ と
⑤ 参 加 学 生 に関 す る こ と
⑥ 実 施 後 の 評 価 と反 省
・
⑦ 同 行 教 員 に関 す る こ と
⑧ 事 故 ・危 機 管 理 、
(2)調査 対 象
教 養 部 が 設 置 され て い る4年 制 大 学15校 を 選 ん で 調 査 対 象 と し、 担 当 者 に面 接 して 、各 大 学
の 研 修 プ ロ グ ラ ムの 現 状 を 聞 きと る方 法 で 調 査 した。 以 下 、調 査 項 目の 順 に調 査 結 果 に つ い て
述 べ る。(東 山)
3.調
査 結 果 の分 析 と考 察
(1)語学 研 修 の企 画 と実 施 の主 体
表III-1で
る。
示 す よ うに、 海 外 研 修 の企 画 立 案 か ら実 施 ま で の 担 当 主 体 は 右 記 の機 関 で行 わ れ
6
奈 良
大 学
紀
海 外 語 学 研 修 の 受 け 入 れ ・送 り出 し
要
第20号
表III-1語
学 研 修 の企 画 の実 施 の担 当 機 関 名
機 関 の設 置 、 即 ち、 学 内 的 な イ ソ フ ラ
ス トラ ク チ ャー の 整 備 と確 立 を考 え た
企 画 ・実 施
場 合 に、 そ の 企 画 立 案 を行 う機 関 は、
国 際 交 流 委 員 会
3
「国 際 交 流 委 員 会 」 か ら発 足 して 、
国
3
「国際 交 流 セ ソ ター 」 へ と機 構 整 備 さ
国 際 交流 セ ソター
れ る こ とを 示 唆 して い る。
上 記 の 機 関 の構 成 メ ソバ ー は 次 の 通
際
セ
ソ
タ
企
画
大学数(校)
ー
1
国 際 交流 セ ソター
主
事
会
国 際 交 流 委 員 会
国際 交流課 セソター
1
1
鱒
りで あ る。
国 際交 流運 営 委員 会
① 企 画 立 案 を行 う機 関
代 表 の 教授+職
学部
員
② 企 画 立 案 か ら実 施 まで行 う機 関 …
・
① の機 関 の メ ソバ ー+同 行 教 職 員
① と② に共 通 す る メ ソバ ー と して は 、
国
際
交
流
部
海外研修実行委員会
海 外 研 修 旅 行
実 行 委 員 会
各種 サマ ー プ ログ ラム
実 行 委 員 会
語
学
セ
ソ
国際 交流委員会
1
1
各学部研修委員会
1
国 際 交 流 委 員会
0般 教 育 委 員 会
1
タ ー
1
1
国 際事 情 に=豊富 な経 験 と知 識 に精 通 し
て い る外 国 人 ス タ ッ フの採 用 で あ る。 な お 、 事 務 職 員 の 同行 に つ い て は 、 研 修 旅 行 に か か わ る
事 務0般
と、職 員 の研 修 を兼 ね る もの で あ る。
企 画 ・実 施 ・同 行 に関 連 す る事 務 職 員 の 所属 は 、学 生 課 ・学 務 課 ・庶 務 課 ・教 務 課 ・広 報 課 ・
総務 課 ・国 際交 流 課 な どで あ る。
表III-1の
機 関 の業 務 内容 は 、 次 の5点 に 要 約 で き る。
⑤ 留学 生 の受 け入 れ ・送 り出 し業 務 … … …長 期.1年
以 上.
⑤ 語 学 研 修 生 の受 け入 れ ・送 り出 し業 務 …短 期.3∼6週
間.
◎ 研 究 者 の交 換 留 学 制 度
月∼1年
中 ・長 期.6ヶ
以 上.
④ 受 け入 れ 国 ・受 け入 れ 先 機 関 の調 査 … …英 語 圏 一シ他 言 語 圏.
⑤ 受 け入 れ ・送 り出 し体 制 の教 育 面 ・財 政 面 ・施設 面 の 整 備.
o教 育 面:ト ー フル(TOEFL)・
トー イ ッ ク(TOEIC)・
英 検(STEP)な
どの 公 的 認
定 テ ス トを利 用 した選 抜 制 度 の活 用
o財 政 面:大 学 に よ って は、 運 営 資 金 と して 国 際交 流 基 金 を設 け 、 国 際 教 育 交 流 制 度 を財
政 面 か らバ ック ア ップ して い る。
o施 設 面:受
け入 れ ・送 り出 し体 制 の設 備 面 と して 、 宿 泊 設 備 と研 修 設 備 を 併 せ 持 つ 「留
学 生 セ ソ ター 」(仮 称)を 設 置 して い る大 学 も あ る。 こ こで は 、 海 外 の 留 学 生 と
国 内 の 学 生 を同 室 に して 、 文 化 ・語 学 面 の み な らず 人 間 的交 流 を 促 進 す る シ ステ
ムを と って い る。
上 記 の⑤ は 留 学 生 の 交 流 拡 大 、 ⑤ は研 修 生 の交 流 拡 大 、◎ は 学 術 研 究 の交 流拡 大 、③ は 国 際
交 流 先 の 拡 大 、 そ して⑤ は 国 際 教 育 の 拡 大 充 実 に つ な が る もの と考 え る。
(2)教
育 的 意 義 ・目的 ・内 容
表III-2を
要 約 す れ ば 、 次 の よ うに な る。
① … … … 語 学 の運 用 能 力 の 向 上 をめ ざす 。
②
④ … 語 学 力 を通 じて他 国 の 社 会 お よ び文 化 へ の理 解 を 深 め る。
⑥ … … …他 国 へ の理 解 を も とに して 、 日本 の 社 会 お よ び文 化 を再 認 識 す る。
③ ⑤.⑦.…
研 修 先 の 人 々 との コ ミュ ニ ケー シ ョ ソを通 じて 自己 の再 発 見 に つ と め る。
これ らの研 修 目的 を達 成 す るた め に 、 次 の よ うな3点 の指 摘 が あ つた 。
市川:高 等教育機関におけ る国際交流制度の現状 と課題に関す る比較調査研究
⑤ 学 生 の 資 質 と能 力 に応 じて 、 具体
表III-2語
7
学研修 の 目的
的 な研 修 目的 と プ ロ グ ラム を設 定 す る
項
こ と。
⑤ 研 修 先 の学 生 と 同様 の待 遇 を 受 け
られ る よ うな配 慮 をす る こ と。
◎ 研修先 と措駐妾的(書 簡 ・電話 ・ファッ
ク ス)に 、 直 接 的(現 地 調 査)に 連 絡
①語学研 修(実用英語 の修得)
13
②異文化 体験
11
③国 際人 の養 成
6
④ 地 域 研 究(文 化 ・歴 史 ・
社 会 生 活)
を と りあ う こ と。
(3)研 修 の 概 要
① 開始 時 期
開 始 時 期 に つ い て は 、 ⑤ 第1語
(英 語)の
大 学 数(校)
目
発 足 年 度 と 、 ⑤ 第2語
学
学
(ド イ ツ語 ・フ ラ ソ ス語 等)の 発 足 年
3
⑤ 個性 と精神 の錬磨
3
⑥ 日本文化 の理解 と再 認識
2
⑦建 学の精神 の具現化
2
,(徽
回答に よる)
度 とに分 け て考 え る。⑤ に つ いて は表
m-3の
通 りで あ るが 、⑤ に つ いて は研 修 制 度 そ の もの の 歴 史 は浅 く、1980年(1校)、1985
年(1校)、1989年(1校)と
な って い る。
② カ リキ ュ ラム との 関 連(単 位 認 定)
研 修 終 了後 に 、何 らか の 形 式 で 単 位 を認 定 して い る大 学 数 と、 そ の 大 学 で 認 可 して い る科 目
と単 位 につ い て は 、表III-4お
表III-3第1語
発 足
よび5の
よ うに な る。
学(英 語)の 研 修 開始 時期
年 度
表nI-5単
科
大学数(校)
英
1970
1
1975'
1
19?8
1
1980
1
1983
2
1987
3
明
表III-4単
s
位認定実施校
単 位 認 定
大 学 数(校)
る
10
実 施 し て い な い
5
実 施
し て い
単
目
米
4
化
4
情
2
海 外 英 語 研 修 講 座
2
海
2
語
英
と
米
外
英
文
事
語
実
習
N)
語(1,II,III,
英 会 話(英
英
事
位
情
言
英
不
位認定科 目
作 文)
2
2
II
2
英 語 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ソ
2
会
話1又
は
8
奈
良 大 学
紀
要
第20号
③ ⑤ 期 間 、⑤ 時 期 、◎ 対 象 学 生 、 ⑥ 参 加
表III-6語
学 研 修 の期 間(12大 学)
定 員 、 ⑤ 同行 教 員 、① 添乗 員 の有 無
大学数(校)
期 間(日)
語学 研 修 の期 間 に つ いて ま とめ てみ る と、
よ うに な る。 研 修 期 間 と の関 連
21
2
で 上 記 の ⑤ ∼ ① の留 意 点 を 述 べ る と、 次 の
26
2
よ うに な る。
28
3
。
30
1
◎ 対 象 学 生:全 学 部 全 学 年 を対 象 にす る
35
1
42
2
50
1
表III-6の
⑤ 時 期:夏
は7∼8月
、 冬 は2∼3月
の が11校 。
④ 参 加 定 員:30人
(1校)、
前 後(10校)、60人
希 望 者 全 員(1校)。
⑤ 同 行 教 職 員: 参 加 学 生30人 前 後 で 教 員2名.職
同行 教 員 が2名
の場 合 ζ 内1名
員1名
が平均値。
を国 際 交 流 セ ソ ター の教 員 で 担 当 す る ケー ス が あ る。 ま た、
大 学 に よ って は、 在 外 研 修 決 定 の 教 員 が研 修 ツ ア ー を兼 務 す るケ ー ス もあ る。
① 添 乗 員:有(4校)、
無(8校)。
④ 費 用(⑤ 費 用 の概 算,⑤
大 学 か ら の補 助 金 の有 無 、◎ 小 遣 い の 額 、④ ロ ー ソ の シ ス テ ムの
有 無)
⑤ 費 用 の概 算
研 修 費 用 と研 修 期 間 を 関 連 づ け て 分 類 す る と、 表III-7の
大 学 に よ って は、 大 学 か らの 補 助 金 や 奨
表III-7研
よ うに な る。
修 費 用 と研 修期 間 の関 連(12大
学)
学 資 金 、 ま た は国 際 交 流 基 金 か らの 補 助 金
研 修 費用(万)
研 修 期 間(日)
大 学 数(校)
等 を考 慮 に入 れ て 、 研 修 費用 の 件 を考 え な
35
21
1
40
21
1
43
30
1
参 考 資 料 とみ る べ きで あ る。
45
42
1
⑤ 大 学 か ら の補 助 金 の有 無
50
26
1
補 助 金 の 内 訳 に関 して 、 次 の よ うな3点
50
28
1
60
28
1
60
26
1
60
43
1
65
35
1
80
50
1
28
1
け れ ば な らな い ので 、 表III-7は
あ くまで
の指 摘 が あ った 。
㊨ は 参 加 学 生 に対 して、 ◎ 、⑤ は ツ アー
に 対 して の 具 体 例 で あ る。
⑧0人
当 り3万 円 の補 助(1大
⑤JapanFestiva1又
へ の補 助(2大
学)。
学)。
不明
はFarewellParty
表III-・8大
⑤ 国際 交 流基 金 等 か らの補 助(2大
項
学)。
学 か らの補 助 金 の有 無
大 学 数(校)
目
◎ 小遣 い の 額
補
助
金
あ
り
5
研修 期 間 中 の 小 遣 い の額 に つ い て は 、 表
補
助
金
な
し
10
III-9の
よ うに な る。
一
⑥ ロー ソ ・シ ス テ ム の有 無
大学 と して は 、 旅 行 業 者 の す す め る ロ ー
ソ シ ステ ム を採 用 して い るの は 少 な い 。
表III-9研
内
修 期 間 中 の小 遣 い の額
訳
大 学 数(校)
別 に定 めず
10
20万 円
1
10万 円
2
ノ
T.C.を
すす める
2
9
市川:高 等教育機関 におけ る国際交流制度 の現状 と課題に関す る比較調査研究
⑤
研修地域
研 修 地 域 と研 修 サ ー ビス の提 供 主 体 に つ い て 分 類 して み る と、 表III-10の よ うに な る。
表III-10研
修 地 域 と研 修 サ ー ビス の提 供 主 体 につ い て
研 修 地 域
南 メ ソ ジ ス ト大,イ
ト大,シ
ア
メ
リ
カ
ア トル 大,タ
ワ シ ソ ト ソ大,カ
St.ト
ダ
ナ
ーモ ス
コ マ 大,ジ
ョー ジ ・
ワ シ ソ トソ 大,ウ
12
レ ゴ ソ 大,ハ
ジ ョ ソ ・ア ボ ッ ト大,コ
ッ
ワイ大
ロ ソ ビ ア 大,ト
3
ロ ソ ト大
ニュージー ラソ ド
ニ ュ ー ジ ラ ソ ド大
イ
ス
ケ ソ ト大,リ
ツ
マ イ ソ ツ大
1
国
吉林大
1
サ テ ィ オ ワ ・ジ ャ ワ大
1
ド
ギ
リ
イ
中
イ ソ ドネ シ ア
⑥
リ ノ イ 大,ア
リ フ ォ ル ニ ア 州 立 大,
ー マ ス 大,西
ドベ リ ィ大,オ
カ
大学数(校)
研 修 サ ー ビ ス の 提 供 主 体
研 修 シ ス テ ム(⑤
ー ズ大,ケ
1
ソ ブ リッ ジ大
3
研 修 機 関 と の コ ソ タ ク トの 方 法 、 ⑤ 研 修 サ ー ビ ス の 提 供 主 体 、 ◎ 宿 泊 、 甘
⑥ オ プ シ ョ ナ ル ・ ツ ア ー の 取 り入 れ 方 と 問 題 点)
⑤ 研 修 機 関 と の コ ソ タ ク トの 方 法
大 学 の 多 く は 、 既 に 姉 妹 校 提 携 制 度 、 研 修 生 の 送 り 出 し ・受 け 入 れ 制 度 が ほ ぼ 確 立 さ れ て い
るの で 、 緊 密 な連 絡 体 制 が可 能 で あ る。 具 体 的 に は次 の よ うな指 摘 が あ った 。
⑧ 研 修 地 に 職 員 が 常 駐 し て い る。
◎ 国 際 交 流 セ ソタ ー が窓 口 とな り、 常 時 、 研 修 先 と連 絡 を と りあ って い る。
⑤ 大 学 間 交 流 協 定(InstitutionalCooperationAgreement)の
締 結 に よ っ て 、 研修 先 と綿
密 な 情 報 交 換 が 可 能 で あ る。
② 外 国 人 ス タ ッフ が交 流 セ ソ ター に常 駐 す る シ ス テ ム に よ っ て、 ス ム ー ズ な 意 志 伝 達 が 可 能
とな る。
⑤ 研修 サ ー ビス の提 供 主 体
表III-10「
研 修 地 域 と研 修 サ ー ビ ス の 提 供 主 体 」 の 表 を 参 照 。
◎ 宿泊
表III-11宿
学 生 寮 を 使 う こ と に つ い て(表III-11)次
の 二 点 の 指 摘 が あ っ た。
宿 泊 方 法
生
学
㊨ 先 方 の 学 生 と 同 部 屋 に ス テ イ す る。
◎ 学 生 寮 使 用 の 目的 は 、 提 供 条 件 の 均 一 化
に あ る。
ホ
泊 方 法 につ い て
ー
ム
・
ス
大 学 数(校)
テ
寮
7
イ
3
学生寮 十週 末 ホー ム ・ステ イ
醐
寮 ト(後
半)ボ「ム・
ステイ
『現 地 日 本 校 の 学 生 寮
4
1
③ オ プ シ ョナル ・ツア ー の取 入 れ方 と問 題
ハ
占.表III-12研
・
・
ツ ア ー の 実 施 の 実 態 は 表III-12の
修 期 間 中 の オ プ シ ョ,ナル ●
ツ アー の実 施 に つ い て
ようにな
る。
ツ ア ー の 実 施 に つ い て 次 の よ うな 指 摘 が あ っ
た。
内
実
大 学 数(校)
訳
る
12
原則 と して取 り入れない
3
施
す
10
奈
良 大 学
紀
要
第20号
⑧ 研修 終 了後 に ツ アー を実 施 す る(10大 学)、 研修 前 に実施 す る(1大
学)、 不 明(1大
学)。
◎ 研 修 終 了 後 の ツ アー は 、 学 生 側 の 開 放 気 分 に よ って 、 研 修 の意 義 を損 う場 合 もあ り うる の
で、Field-Tripを 採 用 す る大学 もあ る。
(4)旅 行 業 者
① 検 討 対 象業 者 の 数 と社 名
各 大 学 と も検 討 業 者 の 数 は 平 均5∼6社
で あ る。 業 者 の 主 だ った と ころ は次 の よ うに な って
い る。
近 畿 日本 ツー リス ト、 日本 交 通 公社 、 日本 旅 行 、 東 急 観 光 、 トラ ベ ル 日本 、ISA、
行 、ILS、
日通 旅
他。
② 業 者 の選 択 と決 定 理 由
業 者 選 択 の主 だ った方 法 と して 、 次 の2点 が あげ られ る。
⑤ 見 積 書 の提 出 に よ って。
⑤ 競 争 入 札 に よっ て。
な お決 定 に伴 う付 随理 由 と して 次 の3点 が 指 摘 され て い る。
⑤ 研 修 地 の情 報 に強 くて 、常 時 、連 絡 の と りや す い 業 者 。
⑤ 緊 急 時 の対 応 マ ラ ユア ル を完 備 し実 行 可 能 な業 者 。
◎ 飛 行 機 等 の輸 送 機 関 の手 配 に強 い業 者 。
③ 旅 行 業 者 の問 題 点
あ えて 取 り上 げ る よ うな 問題 点 は な い 。 要 望 事項 と して 次 の3点 が あ げ られ る。
⑤ 添 乗 員 の サ ー ビス精 神
⑤ 輸 送 の手 配(緊 急 予 約 を含 む)
◎ 現 地 係 員 の サ ー ビス
④ 企 画 ・立 案 の業 者 の関 与 の程 度
企 画 ・立 案 と い う内容 面 ま で関 与 させ て い る大学 は な い。 業 者 は企 画 ・立 案 に関 連 して 大 事
で は あ るが 、 次 の よ うな補 佐 的 役 割 を担 って い る。
⑤ 情 報 収 集 、 ⑤ 航 空 券 の 手 配 、 ◎ 輸 送 の 円滑 化 、④ 渡 航 手 続 き、⑤ 事 前 事 後 指 導 の ア ドバ イ
ザ ー 役 。(山
(5)参
田)
加 学 生 に関 す る こ と
① 企 画 立 案 に対 す る学 生 の希 望 の反 映
表III-13に 示 す よ うに、11校 で は、 語 学 研 修 の企 画 立 案 は実 施 主 体 で あ る語 学研 修 セ ソ ター
ま た は委 員 会 に お い て 行 わ れ 、 そ の段 階 で参 加 学 生 の希 望 は取 り入 れ られ て い な い。11校 の う
ち5校 で は 研 修 終 了 後 に提 出 され た学 生 の レポ ー トや感 想 、反 省 の 内容 を 次年 度 の企 画 に反 映
させ る よ うに配 慮 され て い る。1校
だ け は、 事 前 に 学 生 に ア ソケ ー トを実 施 し、 研修 国 の選 定 、
ホ ー ム ス テ イか 学 生 寮 か を決 定 す る際 の参 考 に して い る。
表III--13企
画立 案 に対 す る学 生 の希 望 の反 映
研 修 企 画 に 関 して 事 前 に学 生 の希 望 を調 査 しな い
前 年 度 参 加 学 生 の 反 省 や 感 想 を反 映 す る
事 前 に ア ソケ ー トを 実 施 し、 学 生 の希 望 を反 映
不
明
市川:高 等教育機関におけ る国際交流制度の現状 と課題に関す る比較調査研究
11
② 企 画 に対 す る学 生 の反 応 一 応 募 状 況
表III-14に 示 す よ うに 、 今 回調 査 対 象 とな った 大 学 の1/4で
1.5∼2倍
の応 募 が あ り、1校
だ け は 毎 年 定 員 の3∼4倍
は ほぼ 定 員 ど お り、1/4で
の 応 募 が あ る。 年 度 に よ って 応 募 の
状 況 が 変 動 す る と答 え た大 学 の うち1校 は 、 今 年 度 に 限 って応 募 者 が 減 った も ので 、 そ の理 由
と して旅 行 代 金 が値 上 が り した こ と を挙 げ て い る。 他 の1校 は 、 研 修 先 に よ って 応 募 状 況 が変
わ る こ とを指 摘 して い る。 カ ナ ダ、 イギ リスの 場 合 に応 募 者 が 多 くな る傾 向 は2校 が指 摘 して
い る。 男女 の 内訳 を み る と、 何 れ の 大 学 で も女 子 学 生 が 多 い よ うで あ る。 応 募 者 が定 員 を超 え
た 場 合 、1校 は応 募 者 全 員 を 研 修 に 参 加 させ て い るが 、 そ の 他 の 大 学 で は面 接 、 説 明会 、 英 語
力 の 程 度 な どに よ って 定 員(約30名
前 後 、1校
表III-14学
の み60名)に
しぼ って い る。
生の応募状 況
大 学 数
定
員
の
範
定
員
の1.5∼2倍
定
員
の3∼4倍
囲
4
内
4
1
、
年
に
よ
っ
て
変
動
不
す
2
る
4
明
計
15
③ 研 修 に対 す る学 生 の反 応 一 満 足 度
参 加 学 生 の 研 修 に対 す る満 足 度 は 、表III-15に 示 され る よ うに 、概 して現 状 の 研 修 内 容 に満
足 して い る とい え る だ ろ う。 た だ し、今 回 の調 査 で は、 全 体 の 印象 を問 うた に と ど ま って お り、
研 修 の 「何 に満 足 して い る か」 を知 る こ とは で きな か った 。
表m-15研
修 に対す る学生の満足度
大 学 数
非 常 に満 足 して い る
7
と りたて て不 満 は な い
1
非 常 に満 足 して い る学 生 や ら、 や や 不 満
を感 じる学 生 まで あ る
お お むね 満 足 して い る
不
1
3
3
明
15
計
④ 事 前 指 導 の 内容
事 前 指 導 は 、 ど の程 度徹 底 して 行 うか に よ って 次 の3つ の タ イ プ に分 け る こ とが で き る(表
III‐16)o
表m-16事
前指導の内容
大 学 数
徹 底 した 事 前 指 導 を お こ な う
4
8∼10回
の オ リエ ソ テ ー シ ョ ソ
6
2∼8回
の オ リエ ソテ ー シ ョソ
3
そ
の
2
他
計
15
12
奈
良
大 学
紀
要
第20号
(a)徹底 した指 導 を行 う(4校)
宿 泊 研 修 を重 ね 、 参 加 学 生 間 の 人 間 関 係 を深 め る と と もに 、 マ ナ ー の習 得 、研 修 先 の 国 と研
修 地 、研 修 大 学 に つ い て の情 報 を 得 る こ と と理 解 す る こ と、 さ ら に語 学 の トレー ニ ソ グに 至 る
ま で 、集 中的 に徹 底 して指 導 す る。
(b)8∼10回 の オ リエ ソテ ー シ ョソを 行 う(6校)
渡 航 手 続 き、 研 修 国 、 研 修 大 学 に つ い て の 紹 介 、 生 活 全 般 に 関 す る指 導 、 語 学 指 導 を8∼10
回 の な かで 行 う。
(c)2∼3回
の オ リエ ソ テ ー シ ョソを行 う(3校)
この タ イ プの 大 学 は 、 海 外 研 修 の歴 史 が 長 く、 ノ ウ ハ ウが確 立 して お り、 現 地 で の指 導 協 力
体 制 が整 備 され て い るの で 、 事 前 指 導 を と くに丁 寧 に しな くて も よい の で あ る◎
な お、 語 学 力 の指 導 につ い て は、 内 容 の 差 は あ る に して も どの大 学 も力 を いれ て い る。 個 別
指 導 や 合 宿 指 導 も まれ で は な い。
海 外 語 学 研修 の実 施 に あ た っ て大 学 は事 前指 導 と準 備 に 多大 の エ ネ ル ギ ー と時 間 を か け る。
研 修 が充 実 し、 安全 に 遂 行 され 、 研 修 が成 功 す るか 否 か を左 右 す る もの は ひ とつ に は事 前 指 導
の 適 切 さで あ る と思 わ れ るの で 、 学 生 の実 情 に 合 った 独 自 の プ ロ グ ラ ムを 作 る こ と が課 題 で あ
る。
⑤
学 生側 の 問題 点
⑤ ル ー ル違 反
「集 合 時 間 に遅 れ る」 「無 断 で授 業 を欠 席 す る」 「門 限 を守 らな い 」 な ど、 時 間 の ル ー ル を
守 れ な い こ とが も っ と も頻 発 しやす い 問題 点 と して 挙 げ ら れ て い るが 、 そ の 他 の 生 活 のル ー ル
を守 らな い こ と も多 く指 摘 され て い る。 具 体 的 に 、授 業 を 欠 席 して観 光 に 出 掛 け て い た例 に つ
い て 関係 者 に迷 惑 を か け 、 心 配 を させ た体 験 を 聞 い た 。迷 惑 を か け るだ け で は な く、 不 慮 の事
故 に もな りか ね な い 。 も し学 生 た ち が 、 この よ うな 単 独 行 動 を本 人 の 「自由 」 で あ る と思 い ち
が い を して い る と した ら、 とん で も な い誤 解 で あ る。
同行 教 員 が最 も気 を使 い 、 エ ネル ギ ー を使 うの は 、 この よ うな学 生 に対 す る管 理 と処 置 、 指
導 で あ る。 時 間 を守 らな い 学 生 や ル ー ル に反 して 単 独行 動 を と っ た学 生 に 対 して は 、 強 制 送 還
の処 置 を と る と明記 して い る大 学 が1校
あ った。 ま た 、1校 で は単 独 行 動 を 禁 止 し、4名
の連
体 責 任 制 を とっ て い る。
⑤ 女 子 学 生 の異 性 に対 す る意 識 の 問 題
女 子 学 生 の異 性 に対 す る意 識 の 問 題 を指 摘 す る大 学 が あ る。 外 国男 性 へ の 憧 れ か ら開 放 的 に
な るの か 、習 慣 の ち が い で あ るの か 、 あ るい は 双方 の誤 解 に よ る の か 、女 子 学 生 の 異 性 と の ト
ラ ブル を心 配 す る大 学 は 少 な くない 。
以上 の よ うな 問題 点 を 防 ぐた め に、 事 前 指 導 の段 階 で 充 分 に 指 導 し、 そ れ で も時 間 を守 れ な
か った り無 断 で欠 席 す る学 生 に つ いて は参 加 を辞 退 させ る こ と も考 え て お くべ きで あ ろ う。
◎ ホ ス トフ ァ ミ リー との トラ ブル
生活 習 慣 や誤 解 に よ る多 少 の トラブ ル は起 こ って も止 む を得 な い。 しか し、 そ の こ と を 自分
で ホス トフ ァ ミ リー と話 し合 うと か確 か め て 、処 理 して い くと ころ に 人 間 的 成 長 が 期 待 され る
し、研 修 の 意味 もあ る。 い つ まで 待 っ て も食 事 を用 意 して くれ な か った とか 、 家 の 仕 事(皿 洗
い 、 ペ ソキ塗 り、芝 刈 りな ど)を 手 伝 わ され た 等 の訴 えは 、 そ の時 々 に 同行 教 員 や 業 者 を通 じ
て 臨機 応 変 に処 理 で き る もの は 処 理 し、 お互 い の誤 解 を解 く努 力 を した い もの で あ る。 そ れ で
もな お か つ ホ ス トフ ァ ミ リー と の相 性 が悪 い場 合 は 、変 更 の 申 し出 を す れ ば 事 情 に よ って は変
更 され る。
市川:高 等教育機関におけ る国際交流制度の現状 と課題に関す る比較調査研究
13
(6)研 修 実 施 後 の 評価 ・反 省
研 修 の評 価 と して 、 単位 の認 定 を行 う大 学 と行 わ な い大 学 が あ る。(こ
-4参 照)
れ につ い て は 、 表III
何 れ の大 学 に お い て も研 修 が終 わ っ た 時 点 で 、 研 修 報 告 や感 想 文 を提 出 させ て い る。 そ れ に
基 づ い て 体 験 記 を発 刊 す る大 学 が多 い。 帰 国報 告 会 を開 催 す る と こ ろ もあ る。 実 施 に関 わ った
委 員 会 、 研 修 大 学 の教 員 、業 者 、 同行 教 員 に よ る合 同 反 省 会 を実 施 す る大 学 は3校 で あ る。
参 加 学 生 の 感 想 や 報 告 、 実 施 した大 学 側 の反 省 の 結 果 を次 年 度 の 研 修 の企 画立 案 に フ ィー ド
バ ッ ク し、 生 かす よ うな建 設 的 な方 向性 が研 修 を よ りよ き もの に して い く と思 わ れ る。
(7)同
行 教 員 に関 す る こ と
① 研 修 実 施 につ いて の ス タ ッフの 合 意
研 修 の実 施 に あた って 「実 施 委 員 会 」 レベ ル の 合 意 は 得 られ て い る が、 教 員 全 体 の 合 意 が得
られ て い るか ど うか につ いて は不 明 も し くは 「コ ソセ ソサ スは あ る」 と の報 告 を得 た。 微 妙 な
ニ ュア ソス の 差 は あ るか も しれ な い が、 お お む ね 合 意 は 得 られ て い る と解 釈 で き る。 ス タ ッ フ
の合 意 を得 て お くこ とは 、 同 行 教 員 に と って は支 え に な るだ ろ う。
② 研 修 企 画 に 対 す る同 行教 員 の 意 向の 反 映
表III-17に 示 され て い る とお り、6校 で 委 員 会(ま
た は そ れ に 変 わ る組 織)に
お い て企 画 立
案 され 、 同行 教 員 の 意 向 は 直接 的 に は反 映 され な い。 そ れ は 、企 画 立 案 され た あ と で 同行 教 員
が 決 定 す る こ と、 例 年 ほ と ん ど 同'じ内容 で 実 施 され て い る こ と等 が 理 由で あ る。4校
では、
「同 行 教 員 が企 画 の 中心 とな り、 そ の 意 向を 取 り入 れ て い る」 。 うち1校 で は現 地 視 察 と打 ち
合 せ をす る、 と報 告 され て い る。 しか し、 同 行 教 員 の意 向 が委 員 会 に反 映 され る場 合 と 、 国際
交 流 セ ソ タ ー(ま た は そ れ に相 当す る組 織 や 施 設)の 企 画 で 同行 教 員 が 中 心 的 に決 定 す る場 合
とで は 、 内 容 的 に は ち が い が あ る よ うに 推 測 され る。
あ る大 学 で は、 「研 修 期 間 中 、現 地 で 教 員 が 自分 の研 究 を で きる体 制 を 確 立 して ほ しい」 と
い う要 望 が 出 さ れて い る との こ とで あ っ た。
表III-17同
行教 員 の 意 向 の反 映
大 学 数
同行 教員 の意 向は反映 で きな い
6
同行 教員 の意 向を全 面的 に と り入 れ る
4
実施 後の反 省 ・
意 向を次年 度 の内容 に反映 させ る
2
不
3
明
計
15
③ 同行 教 員 の 決 定 方 法 ・ル ール の 有 無
同行 教 員 は 、 国 際 交 流 委 員 会 、 語 学 セ ソ ター運 営 委 員 会 な ど名 称 は異 な るが 、 い ず れ も学 内
の実 行 委 員 会 で 決 定 され る。(こ の 項 に つ い て は 表III-1参
照)実 際 の選 定 に あた って は、 研
修 の 目的 や 大 学 内 の 事 情 に応 じて さ ま ざ ま な条 件 が 考 慮 され て い る。 そ の 条 件 は 多 様 で あ る。
順 番 制 で選 定 され る に して も委 員 で あ る教 員 や語 学 の 教 員 に偏 って 選 定 され るに して も、 個 人
の研 究 計 画 との 関 連 も あ るの で 、 長 い 目で み た計 画 的 な 選 定 が され る よ う、 い ろい ろ と苦 労 し
て い る現 状 が伺 え る。
14
奈
良
大 学
紀
要
第20号
④ 同行教員の費用負担
同 行 教 員 の 費 用 は 、 いず れ の 大学 で もす べ て 法 人 の全 額 負担 とな って い る。 大 学 の 学 内 規定
に 従 って 、 旅 費 、 宿 泊 費 、 日当 が支 給 され る。 そ れ以 外 の 費用 負担 は 、 大 学 に よ って さ ま ざま
で あ る。 例 えば 、 い ざ と い う時 に備 えて 現 金 を準 備 す る、 学長 名 に よ る支度 金 を支 給す る、 フ ィ
ル ム代 を 支 給 す る な ど。
⑤ 同 行 教 員 へ の配 慮
④ に述 べ た 費用 の負 担 の ほか に 、 法 人 負 担 の 保 険 を組 む こ とが実 施 さ れ て い る。 そ の他 で は、
1校 で 、 緊 急 事 態 が発 生 した 時 に現 地 の 宗 教 団 の支 部 の支 援 が 受 け られ る よ うな連=携が とれ て
い る。 不 慣 れ な外 国 で は不 安 が 高 い の で 、 頼 れ る と ころ が あ れ ば不 安 が軽 減 され るだ ろ う。
(8)事
故 ・危 機 管 理
①事前 調査の実施状況
表III-18に 示 され て い る よ うに 、事 前 調 査 を 毎 回行 うの は2校 で あ る。 初 め て の 研 修 先 につ
い て の み 事 前 調 査 を行 うの が2校 で あ る。 そ の 他 の大 学 で は 、研 修 先 の 大 学 との コ ン タ ク トが
す で に充 分 で き あ が っ て い た り、教 員 の 個 人 的 な留 学 体 験 や研 修 大 学 との 個 人 的 な 接 触 に よ っ
て 事前 調 査 に あ た る 内容 が充 分 に な され て い る と判 断 で き るの で 、大 学 と して 改 め て 実 施 す る
必要 性 が な い か らで あ ろ う。 従 って 、 い ず れ の 大 学 も研 修 先 の事 情 に つ い て は 、充 分 な 把握 を
して い る とい え るだ ろ う。 今 回 の調 査 で は 、 同 行 教 員 が事 前 に研 修 先 に派 遣 され る こ とは 少 な
い。 事 前 調 査 を す る こ とに よ って は じめ て 気 づ くこ と は多 い はず で あ り、 不 安 が軽 減 され る効
果 は お お きい 。 同 行 教 員 が現 地 の情 報 を よ く把 握 した上 で研 修 に臨 む た め に 、 事 前 調 査 を 実施
す る こ とが 望 ま しい で あ ろ う。
表III-18事
前 調 査 の実 施 状 況
大 学 数
研 修 大学 に0任
し、 事 前 調 査 は 行 わ な い
4
事 前 調 査 は行 って い な い
3
初 回 の時 に は 実 施 す る
2
事前調査 を必 ず実施す る
2
法人関係者 に よる視察
1
そ の 他
3
計
.
15
② 対 応 の シナ リオ
表III-19に 見 る とお り、 約5割(8校)で
は 、 危 機 管 理 に関 す る シ ナ リオ は 無 い。 これ は恐
ら く、 業 者 を通 して 危 機 に対 応 す る こ とに な って い る もの と思 われ る。 シ ナ リオ が あ る と答 え
た大 学 で は 、 緊 急 連 絡 網 の 整 備 と国 際 交 流 課 、 実 行 委 員 会 が緊 急 事 態 の対 応 に あ た る とい う申
し合 わ せ を そ の 内 容 と して い る。 あ る大 学 で は 、 事 故 に遇 つて しま っ た時 に迅 速 な処 置 が で き
る よ うに 「学 生 カー ド」 を携 帯 させ る。 この カ ー ドに は、 英 語 で 必 要 な 個 人 デ ー タ、す なわ ち、
氏 名 、身 分 、 血 液 型 、RH、
投 薬 中 の 薬 名 、 ア メ リカの 保 険 会社 、 日本 語 の ホ ッ トラ イ ソ、 が
記 入 さ れ て い る。
危 機 管 理 の シナ リオ は 、 そ れ が ど ん な に綿 密 で あ って も、 うま く機 能 しな け れ ば絵 に描 い た
餅 で あ る。 従 って 、 大 学 の 現 状 を踏 ま え た上 で 最 も よ く機 能 す る内 容 の シ ナ リオ を練 る こと が
必 要 で あ る。 そ の た め には 、 知 識 と経 験 の蓄 積 が重 要 で あ ろ う。
市川:高 等教育機 関におけ る国際交流制度 の現状 と課題 に関する比較調査研究
表III-19危
15
機 対 応 の シ ナ リオ
大 学 数
危 機 対 応 の シナ リオ は 作 られ て い な い
6
危 機 対 応 の シ ナ リオ が 作 られ て い る
5
現在検討 中であ る
2
不
2
明
計
15
③ 事 故 発 生 時 の補 償 措 置
補 償 は 、保 険 で 賄 わ れ る。6校 で は 、 保 険 は 学 生 が個 人 的 に保 険 を組 み 、 大 学 は 関 与 しな い 。
4校 は 大 学 が 学 生 全 員 に一 律 の 保 険 料 を負 担 し、 父兄 が希 望 す れ ば個 人 的 に そ れ に 上 積 み で き
るか た ちの 保 険 を組 ん で い る。4校 で は 、 強 制 保 険 の み で あ る(表III-20)。
表III-20事
故発生時の補償措置
大 学 数
学生 が個人的 に保険 をかけ る
6
強制保険
4
大学が負担 して保険 をかけ る
4
不
明
1
計
15
④ 同 行 教 員 の責 任 領 域 、責 任 関 係
表III-21に 示 さ れ る よ うに 、6校 で は 「マ ニ ュ ア ル は な い 」 。 マ ニ ュ アル は な い が、 「職 場
放 棄 以 外 は 大 学 の責 任 で あ る」 と い う合 意 が得 られ て い る とす るの が1校 、 「現 地 集 合 か ら現
地 解散 まで 」 とす る の が1校 で あ った 。 マ ニ ュ ア ル が あ る と1校 が 答 えて い る が、 そ の詳 細 に
つ い て 情 報 が 得 られ な か った の は 残 念 で あ る。 現 在 の時 点 で は 、 同 行 教 員 の 責 任 関 係 を マ ニ ュ
ア ル と して 明 確 に 規 定 す べ きで あ る とい う意 識 は あ ま り一 般 的 で は な い よ うに思 われ る。 モ デ
ル とな る よ うな 内 容 の もの が あ れ ば 、 参 考 に な る で あ ろ う。
学 校 事 故 の 判 例 につ いて 弁 護 士 と相 談 して い る大 学 が2校 あ るが 、 他 の 大 学 で はそ こ ま で は
や って い ない 。 た だ 、 万 が0に 備 えて 、 「両親 に対 す る説 明会 を実 施 し、 同意 書 を と って お く」
が1校 あ っ た 。
表III-21同
行教員 の責任
大 学 数
マ ニ ュ ア ル は作 られ て い な い
6
マ ニュアルはあ る
1
その他
3
不
明
5
計
15
16
奈
良
大 学 紀
要
第20号
(5)提 訴 時 の 同行 教 員 に対 す る法 人 の バ ック ア ップ
「す で に検 討 済 み で あ る」 の は2校 あ り、 提訴 され た場 合 の 対 策 が考 え られ て い る よ うで あ
る。 今 回 の調査 で は詳 細 は 聞 きえ て い ない が 、今 後 この問 題 を検討 しよ うと して い る大 学 に と っ
て 、 そ の 内容 は参 考 に な るで あ ろ う。
ほ とん どの 大 学 で は、 この 問題 に つ い て の 明確 な 答 え を 得 られ な か っ た が 、 不幸 に して 学 生
また は そ の 親 に提 訴 され た場 合 に 、 法 人 が責 任 を問 わ れ て も同 行 教 員 の個 人 的責 任 が 問 わ れ る
こ とは な い と常 識 的 に は解 釈 で き るで あ ろ う。 しか し、 そ れ で は 不 充 分 で あ る とい う意 見 は 当
然 考 え られ る こ とで あ り、 今 後 の充 分 な検 討 が期 待 され る。
⑥ 過 去 にお け る事 故 歴
どの 大 学 に お い て も、 研 修 中 の事 故 は一 件 も報 告 され て い な い 。
「事 故 」 で は な い が 、 発 熱 、 下 痢 な ど体 調 を崩 した程 度 の もの は5校 で 報 告 され 、 研 修 後 の
ツア ー で の 事 故 が0件 報 告 され た に留 ま っ て い る。 大 学 や教 員 た ち が 、 事 故 の起 こ らな い よ う
に い か に 努 力 し、 未 然 に 防 い で い る の か が わ か る。
⑦ そ の 他 の 事故 防 止 ・安 全 対 策
具 体 的 に記 述 され た もの を 挙 げ る と、a.誓
約 書 ・同意 書 を と る。b.事
前 の説 明会 に 父 兄
の 出席 を求 め 、外 国 の事 故 に は責 任 を負 え な い こ と もあ りう る こ とを説 明 し、 了解 を得 て お く。
c.事
前 指 導 に お い て 以 下 の 項 目は と くに徹 底 す る。 す な わ ち 、単 独 行 動 の 禁 止 、 ル ー
一ル違 反
を しな い こ と(強 制 送 還 され る こ と あ り)、 自動 車 運 転 の禁 止 、拳 銃 所 持 の 禁 止 、 危 険 な所 へ
行 か な い こ と、 病 気 に か か ら ない 努 力 、 体 調 の悪 い 時 に は早 め に 申 しで る こ と等 。
以上 、 事 故 ・危 機 管 理 につ いて 検 討 して きた。 事 前 に、 あ り得 る限 りの ケー ス を想 定 して慎
重 か つ充 分 な体 制 を 整 備 す る努 力 が重 要 で あ る こ とが 明 白 に な っ た 。 しか し、 不 幸 に して事 故
が起 こっ て しま った場 合 に 、 そ の 体 制 に基 づ いて 充 分 な 「機 能 」 を 発揮 で き る こ とは さ らに重
要 な こ とで あ る。 ち ょっ と した くい ち が いや 判 断 の ミス、 連 絡 不 充 分 な どの 「す き ま」 が対 応
を誤 らせ る こ とに な る危 険 性 を孕 んで い る。 語 学 研 修 の 実 施 に際 して わ れ わ れ 実 施 者 に求 め ら
れ て い る の は 、 そ の よ うな組 織 的 ・心 理 的 準 備 性 で あ る と い え よ う。(東
4.課
山)
題
(1)問題 の所 在
わ れ わ れ の今 回 の調 査 研 究 を 通 じて い くつ か の 問 題 点 が 明 らか に な った。 そ の 詳 細 は 前 節 に
譲 る と して 、本 節 で は 「海 外 語 学 研 修 」 の根 幹 に触 れ る問 題 に つ い て検 討 して み よ う。 端 的 に
い え ば、 そ れ は受 け 入 れ機 関 に 対 す る送 り出 し機 関 の 「リサ ー チ」 の欠 如 とそ れ に付 随 す る諸
問題 、 お よび危 機 管 理 に 関 わ る問 題 で あ る。
す な わ ち第1に 、 多 くの送 り出 し機 関 は、 受 け入 れ機 関 のi)ア
ll)全 米 総 合 大 学 協 会(AAU)や
全 米 カ レ ッジ学 長 会 議(AACP)な
ク レデ ィテー シ ョソの 状 況 、
どへ の 加 盟 の 有 無(9)
、 とい っ た 「資 格 」 に 関 す る徹 底 した 調 査 を実 施 して い な い と い う こ と で あ る。 受 け 入 れ 機
関 は 、各 大 学 の専 任 教 員 の 個 人 的 コネ クシ ョソや 、 留 学 斡 旋 業 者 の紹 介 に よ って 決 定 す る場 合
が多 い。 「留 学 」 で は な く 「研 修 」 な ので あ る か ら、 そ う した調 査 手続 きは 不 要 との 論 も成 り
立 つ。
だ が送 り出 し機 関 の 中 に は 、 「研 修 」 を狭 義 の 「留 学 」 と混 同す るケ ー ス も見 られ る。 た と
え ば 、別 科 的組 織 や ア ク レデ ィ ッ トされ て い な い機 関 へ の短 期 送 り出 し(=研
修)を
「留 学 」
と 同様 に 扱 い 、 単 位 認 定 まで 行 う場 合(9)などが そ の 典 型 で あ る。 そ して 、 「学 生 獲 得 戦 略 」 か
らそ の 旨 を入 学 案 内 に 表 示 し、 「研 修 」 を あ た か も 「留 学 」 と錯 覚 させ る よ うな 記 述 も散 見 さ
市川:高 等教育機 関におけ る国際交流制度の現状 と課題 に関す る比較調査研究
17
れ る。 だ が、 受 け入 れ 機 関 の 「資 格 」 に 関 す る詳 細 な調 査 を伴 わ な い限 り、 これ は 「教 育 消 費
者 」 に対 す る虚 偽 表 示 ・誇 大 広 告 で あ る。
さ らに 、 こ う した 実 態 こそ が ∼ 英 米 の 大 学 が わ が 国 の大 学 を軽 視 す る一 因 と な っ て い る血
Φ、
と の指 摘 も見 られ る。
第2に 事 故 ・危 機 管 理 に 関 す る こ とで あ る。 多 くの大 学 で は 、 事 前 の オ リエ ソ テー シ ョ ソを
通 じて 諸 注 意 を 与 え 、 事 故 防 止 に 努 め て い る よ うで あ る。 学 外 、 と りわ け様 々 な 面 で 国 内 と は
違 った 実 情 に あ る海 外 に お け る研 修 で あ る こ と か ら、 病 気 ・事 故 を惹 起 す る確 率 は よ り一 層 高
くな る もの と思 わ れ る。 した が って 、 そ の 徹 底 した防 止 策 を講 ず る こ とは も ち ろん の こ と、 学
校 側 が主 体 的 に企 画 ・実 施 の 任 に 当 た る以 上 、 ど の よ うな責 任 を ど こま で遺 漏 な く負 うべ き な
の か 、 を多 面 的 に検 討 す る こ と も重 要 な課 題 とな ろ う。
前節 に お け る指 摘 に も見 られ る よ うに 、 研 修 内 容 の ソフ ト面 の み な らず 、 そ れ を 包 む環 境 と
して の地 域 の実 情 調 査 も、 い ささ か不 十 分 で あ る。 また 、 引 率 者 の責 任 領 域 ・責 任 関 係 に つ い
て も、 詳 細 な検 討 を行 っ て い る機 関 は少 な く、 こ う した 問 題 に対 す る意 識 は 、驚 くほ ど希 薄 で
あ る。
第3の 問 題 点 は 、 参 加 者 の 質 に関 わ る こと で あ る。 多 くの 送 り出 し機 関 で は、 一 応 「選 抜 制
度 」 を導 入 して い るが 、 そ れ は 定 員 オ ー バ ー に よ る員 数 合 わ せ の 観 が ぬ ぐえ な い。 トー フ ル
(TOEFL)な
ど を利 用 して 厳 しい評 価 を し、0定
の 学 力 水 準 以 上 の 者 を派 遣 す る とい っ た積
極 的 な政 策 は 、0部 の機 関 を 除 き0般 には 、 採 用 され て い な い。 つ ま り 「能 力 主 義 」 の 原 則 は
貫 徹 されず 、 単 に応 募 者 を送 り込 む とい う発 想 の域 を脱 して い な い の で あ る。 した が って そ こ
に は何 の原 理 ・原 則 も見 当 た らな い。 そ の た め 「海 外 語 学 研 修 」 は 、 「余 暇 欲 求 」 に 喚 起 され
た 「消 費的 教 育 需 要 」 の充 足 を 目的 と した プ ロ グ ラム に堕 す 懸 念 もあ る。 「研 修 参 加 者 の 中 に
は 、 『海 外 語 学 研 修 』 の教 育 的意 義 が十 分理 解 で きず 、 目的 意 識 の希 薄 な者 も多 い 」 との 証 言
ωは 、 こ う した事 実 を 如実 に示 す もの とい え よ う。
(2)学 内 的 イ ソ フ ラス トラ クチ ャー の整 備 とバ ック ア ップ体 制 の必 要 性
上 記 の よ うな諸 問 題 の克 服 の た め に は 、様 々 な 処 方 箋 が 考 え ら れ る が、 こ こで は 、学 内 の 対
応 面 に焦 点 を当 て て 検 討 して 見 て み よ う。
① 「リサ ー チ能 力 」 の 向上
ノ
単 位 認 定 を行 う以 上 、 た と えそ れ が 制 度 的 に 「研 修 」 で あ っ た と して も、 受 け入 れ 機 関 の
「資格 」 に 関 す る事 前 の詳 細 な リサー チ は不 可 欠 で あ る。 また 単 位 認 定 を行 わ な い場 合 で も、
そ れ に 費 され る多額 の 貨 幣 的 ・時 間 的 コス トに鑑 み れ ば 、 そ こで 提 供 され る 「教 育 サ ー ビス」
の 質 を 客観 的 に把 握 し得 る情 報 は 、 で き る だ け多 く収 集 す べ きで あ ろ う。
こ う した手 続 きの 欠如 は 、 長 期 的 に は 大 学 の教 育 水 準 を低 下 させ 、 「知 的 国 際 主 義 」 とい う
大 学 の 「レー ゾ ソデ ー トル 」 働を 突 き崩 す こ と に もな りか ね ない 。 だ が 、 大 学 内 の0部 ス タ ッ
フの ボ ラ ソテ ィア的活 動 に支 え られ た 「教 育交 流」 に は 自 と限界 が あ る。 そ れ ゆ え、 業 者 に バ ッ
クア ップ され た商 業 ベ ー ス に乗 る限 りで の 「研 修 」 の域 を超 え る こ とは 望 め な い。 何 よ り も研
修 参加 学 生 の 「全 面 発 達 」 を保 障 す る仕 組 み が必 要 な の で あ る。 海 外 大 学 と の交 流 協 定 に基 づ
く と ころ の狭 義 の 「留 学 」 の レベ ル に まで 昇 華 さ せ るた め に は 、 こ う した体 制 で は人 的 ・物 的
側 面 で不 十 分 で あ ろ う。 ま た 、各 機 関 の 「リサー チ能 力」 の如 何 は 、 事 故 防 止 、 危 機 管 理 体 制
を根 底 で 支 え る重 要 な フ ァ ク ター と もな り うる も ので あ る。 な ぜ な ら各機 関 自身 に よ る現 地 事
前 調 査 の信 頼 性 と、 リア ル タイ ム に近 い現 状 把 握 を保 障 す る情 報 ネ ッ トワ._._Cク
の整備は、そ の
情 報 収 集 能 力 に依 拠 す る か らで あ る。
そ の ため 、 「国 際 教 育 交 流 」 の企 画 、立 案 、 情 報 収 集 、 研 修 実 施 期 間 中 の バ ック ア ップ、 留
18
奈
良
大
学
紀
要
第20号s
学 事 務 の取 扱 い、 な ど を専 門 的 に管 掌 す る 「学 内 組 織 的 イ ソフ ラ ス トラ クチ ャー」 の整 備 を 図
らな けれ ば な らな い ので あ る。 具 体 的 に は 、大 学 の 構 成 員(教 員 、 職 員 、学 生)全 体 の 質 的 レ
ベ ル ア ップ と と もに、 国 際 的 常 識 に合 致 した学 則 、 カ リキ ュ ラム、 施 設 設 備 面 の拡 充 が そ の 内
実 と な ろ う。
② 「質 的 問 題 」 へ の対 応
現 行 プ ロ グ ラム の 多 くは 、 厳 しい 「能 力 主 義 」 の 原 則 に 徹 して い な い。 そ して そ れ らは 、
「異 文 化 体 験 学 習 」 とか 「語 学 研 修 」 とい った 教 育 的 装 い を持 ち つ つ も、 「急 減 対 策 」 あ るい
は 「学 生 募 集 の 目だ ま」 と い った正 当化 の論 理 に 支 え られ て い る。 だ が そ の 実 態 は 、 最 近 と り
わ け0部 高 等 教 育 機 関 な ど で 、 「急 減 対 策 」 と して 積 極 的 に取 り組 ま れ て い る、 「余 暇 欲 求 の
充 足 」 を ね らい と した 「高 等 教 育 の周 辺 部 分 の 整 備(大 学 の レ ジ ャー ラ ソ ド化)戦 略 」 と軌 を
0に す る もの で あ る。
先 日の大 学 審 議 会 の答 申 に も見 られ る よ うに 、 今 後 の 「急 減 期 」 に あ って は 、 よ り0層
「大
学 教 育 の質 」 が問 わ れ る時 代 とな る もの と予 想 され る。 ま た 、文 部 省 に よ る留 学 の 実 態 調 査 や
留 学 を め ぐる訴 訟 の 出現 は、 「国際 交 流 」 の 難 しさ を雄 弁 に物 語 っ て い る。 こ う した 環 境 要 因
の下 で は 、斡 旋 業 者 に バ ッ クア ップ され た 小 手 先 の 皮 相 的 対 応 は 、 か え って 大 学 の 存 立 基 盤 を
危 な くす る遠 因 と もな りか ね な い。
した が って 、本 学 は、 他 の 「海 外 語 学 研 修 」 先 発 大 学 の実 施 水 準 に満 足 す るだ け で な く、 後
発 者 と して の メ リツ トー い わ ゆ る 「後 発 効 果 」(先 発 者 の長 所 ・短 所 を 見 極 め、 長 所 を摂 取 す
る ことが で き る効 果)を 十 分 生 か した戦 略 を採 るべ きで あ る。 少 な く と も 「ホー ム ス テ イ制 度 」
を導 入 した 「海 外 語 学 研 修 」 の教 育 的 意 義 を認 め、 急 減 期 を に らん だ 「大 学 経 営 戦 略 」 の一 環
とす るた め に は 、次 の よ うな配 慮 が 必 要 で あ ろ う。
す な わ ち そ れ は、 参 加 学 生 の モ ラー ル 、 と りわ け学 習 意 欲 の 向上 とい う 「投 資 的 教 育 需 要 」
の側 面 を 喚起 す る こ とで あ る。 そ れ ゆ え、 「参 加 意 志 」 と 「経 済 的 因 子 」 に よ る員 数 合 わせ 的
な参 加 者 の決 定 とい う方 針 は避 け るべ きで あ る。 学 生 の 「余暇 欲 求 」 に 応 答 す る 「消 費 的 教 育
需 要 」 に対 応 した 「研 修 」 、 あ るい は 「旅 行 」 に徹 す るな らば 、 「受 益 者 負 担 の 原 則 」 に基 づ
くそ れ もや む を得 な い。 だ が 、 「海 外 語 学 研 修 」 が、 学 生 の 付加 価 値 を 高 め る こ と をね らい と
す るな らば 、 また そ れ が真 の 「急 減 対 策 」 と して 将 来 の 志願 者 へ の誘 因 とな り得 るも の な らば 、
そ の 「教 育経 費」 は受 益 者 が 受益 の程 度 に応 じて 負 担 す べ きで あ ろ う。
た とえ ば 、 「能 力主 義 」 と 「機 会均 等 の 原 理 」 の バ ラ ソ スあ る貫 徹 をね ら い と した、 以 下 の
よ うな施 策 の導 入 も考 え られ な い で は な い 。 す な わ ち そ れ は 、i)厳
修 参 加 者 適 格 者 主 義 」 の原 則 の採 用 と、 の
しい 選 抜 基 準 に よ る 「研
一 定 の 「奨 学 金 な い しは 補 助 金 制 度 」 の創 設 、 で
あ る。i)は 、 いみ じく もプ ラ トソが外 国 派 遣者 の要 件 と して 、 「一 流 の 美 し くもま た善 い人 々」
個と指 摘 した故 事 を彷 彿 とさ せ る。 他 方 の は 、 志 願 者 の 量 的 拡 大 とそ の 質 的 レベ ル ア ップ の
た め の効 果 的誘 因(呼 び 水 的 先行 投 資)で
あ る と思 わ れ る。
こ う した積 極 的 な将 来 展 望 を 抜 きに して は、 「国際 教 育 交 流」 とい って も、 そ の 内実 は上 記
の よ うに斡 旋 業 者 の採 算 ベ ー スの枠 内 で の 「研 修 」 に綾 小 化 す る懸 念 も あ る。
③ 「受 け入 れ」 体 制 の整 備
ま た 、 「送 り出 し」 と同 時 に 「受 け 入 れ 」 に つ い て も考 慮 しな け れ ば な ら な い。 なぜ な らわ
れ わ れ は 、 参 加 意 思 は あ って も何 ら か の 事 情(e・g・ 経 済 的 要 因 、 選 抜 漏 れ)で
「送 り出 し」
の枠 か ら外 れ た学 生 の 「教 育 権 保 障 義 務 」 を負 って い るか らで あ る。 した が って 、 「送 り出 し」
で対 応 で きな い部 分 に つ い て は 、 積 極 的 に 「受 け入 れ」 を行 い 、 「国 際 教 育 交 流 」 の場 を本 学
内 で設 置 す る こ と も重 要 な戦 略 の0つ
と な ろ う。
市川:高 等教育機関 におけ る国際交流制度の現状 と課題に関す る比較調査研究
19
こ う した 「受 け 入 れ 」 を 「送 り出 し」 と同 時進 行 させ る な らば 、 そ れ は 夏 期 休 業 中 遊 休 化 す
る学 内 資 源 の 活 性 利 用 に もつ な が る もの と期 待 され る。 さ らに大 学 は 、 学 生 の み な らず 「地 域
社 会 」 に も こ う した 国 際 化 の 果 実 を積 極 的 に還 元 し、 そ の 蒙 を啓 き地 域 の 国 際 化 の 牽 引 車 と し
て の 役割 を担 わ な け れ ば な ら ない 。
以 上 の諸 点 に鑑 み る と 、本 学 教 養 部 に お い て 、 今 後 の 「急 減 対 策 」 と して提 起 され て い る
「国 際化 戦 略 」(空
間 的拡 張)と
「生 涯 教 育 化 戦 略 」(時 間 的 拡 張)は
、 「受 け 入 れ 」 を媒 介
と して容 易 に統 合 し得 るか も知 れ な い 。 こ う した意 味 で は 、 「国 際 教 育 交 流 」 の拠 点 た る 「学
内組 織 的 イ ソ フ ラス トラ クチ ャー」 は 、 大 学 の 「教 育機 会 の 時 間 的 空 間 的拡 張 戦 略 」 に 、 同 時
対 応 可 能 な主 体 で あ る こ とが 求 め られ よ う。 そ の早 期 整 備 が 待 た れ る の で あ る。
④責任関係
先 に指 摘 した よ うに、 この 問題 に つ い て綿 密 な調 査 を行 って い る機 関 は ほ と ん ど見 当 た らな
い 。 そ れ は 前 節 の指 摘 に も見 られ る よ うに 、 重 大 な事 故 を経 験 して い な い こ と と、 具 体 的 な事
故 の ケー ス を事 前 に想 定 す る こと の 困難 さに あ る も の と思 わ れ る。
だ が 、事 前 に予 知 で き る 大 枠 の 中 で 、 語 学 研 修 に 関 わ る フ ァ ク タ ー(e.g.研
修実施機 関、
研 修 受 け 入 れ 機 関 、 引 率 教 職 員 、 旅 行 業 者 、 参加 学 生 お よ び そ の親 権 者)の 責 任 範 囲 と その 軽
重 等 々 に つ い て 、 学 校 事 故 判 例 ・法 制 な ど を勘 案 しつ つ 、 積 極 的 に検 討 す る こ とは 重 要 な課 題
で あ る。
な ぜ な ら こ う した 検討 を 通 じ、 各 機 関 お よ び引 率 者 は どの よ うな法 的 責任 関 係 にあ り、 最 低
限 どの よ うな 義務 を 覆行 せ ね ば な らな い の か、 とい うこ とが あ る程 度 明確 に な るか らで あ る。
そ して究 極 的 に は 、 少 な くと も各機 関 お よび 引 率 者 の側 の 重 過 失 に よ る事 故 の 発 生 を 、 抑 止 せ
しめ る効 果 を伴 う もの と思 わ れ る。
具 体 的 に は 、以 下 の よ うな枠 組 の 中 で 、 多 面 的 に検 討 す る こ と も一 考 で あ ろ う。 す な わ ち 、
そ れ はi)設
置 主 体 の違 い(国 公 立 か私 立 か)に
よ る引 率 教 職 員 の 責 任 の在 り方 の相 違 、 の
参 加 学 生 が 「加 害 者 」 で あ る場 合 の 、本 人 お よび 親 権 者 の責 任 、 な らび に引 率 教 職 員 「監督 義
務 違 反 」 の 問 われ 方 、111)参 加 学 生 が 「被 害 者 」 で あ る場 合 の 引 率 教 職 員 の 「注 意 義 務 違 反 」
の 問 わ れ 方 、iv)旅
行 業 者 の語 学 研 修 へ の 関 与 の 程 度 に よ る責 任 の 相 違 、V)学
生 へ の補 助 金
の 有 無 と大 学 の 責 任 の相 関 、 と い っ た こ とで あ る。
こ う した 作 業 を通 じて 、 大 学 お よ び引 率 教 職 員 の 「監 督 義 務 」 お よび 「注 意 義 務 」 の範 囲 に
つ い て0定 の マ ニ ュ アル を策 定 す る こ と は、 よ り安 全 で 質 の高 い語 学 研 修 制 度 を整 備 拡 充 す る
上 で 、不 可欠 な作 業 で あ る と思 わ れ る。(高 見)
第IV章 米国の大学における語学教育事情
前3章
に お い て 、我 が 国 の 高 等教 育機 関 に お け る国 際 教 育 交 流 制 度 の類 型 や 意 義 の 認 識 、 お
よ び、 ア ソケ ー ト調 査 の結 果 に基 づ く、 海 外 語 学 研 修 プ ロ グ ラ ム実 施 に つ い て の 分析 を 見 て 来
た 。 本 章 で は、 実 際 に語 学 研 修 の実 施 を 検 討 、 立 案 す るに 当 た って 最 も重 要 な 問題 で あ る研 修
先 の 選 定 に関 し、 長 年 の実 績 を有 す る米 国 の 大 学 を対 象 に 取 り上 げ 、 そ こで の 語 学 教 育 事 情 の
視 察 資 料 を中 心 に検 討 を行 う。
1.事
前調 査 の 必 要 性
我 が 国 の 高 等 教 育 機 関 にお け る国 際 化 教 育 へ の 積 極 的 な取 り組 み の 必 要 性 が ま す ます 高 ま る
中 で 、学 生 の ため の 交 換 留学 や語 学 研 修 の実 施 に 向 か って 、 各 大学 が 一層 の 努 力 を傾 けて い る。
この よ うな 状 況 に あ って 、 本 学 と して も この 問 題 へ の具 体 的検 討 に 取 りか か り、 教 養 部 の学 生
を 対 象 と した海 外 語 学 研 修 の 実 施 に踏 み 切 っ た。
20
奈
良
大 学
紀
要
第20号
計 画 案 検 討 に先 立 ち 、1989年11月 、10日 間 に亘 っ て、 学 生 の海 外 留 学 ・研 修 に 関 す る米 国教
育 事 情 視 察 旅 行α
◎
に 参 加 の機 会 を 得 た 。 これ は 、 本 学 に と って 最 初 の試 み とな る語 学 研 修 先 と
して 米 国 の大 学 を選 ぶ に 当 た り、長 年 の 経 験 と実 績 を有 す る米 国 諸 大 学 の 語 学 教 育 の シス テ ム
や 、 現 地 で の生 活 環 境 、 安 全 性 の確 認 等 、 事 前 に視 察 す る た め の研 修旅 行 で あ った。 視 察 の主
眼 は 、 大 学 生 の た め の短 期 語 学 研 修 プ ロ グ ラ ム に お い た。
今 回 の 視 察 先 は、 主 と して 、 米 国 西=海岸地 域(カ
学 数校 と中 西 部 地 域(コ
ロ ラ ド州)の1大
リフ ォ ル ニ ア 州)の 州 立 大学 お よ び私 立 大
学 で あ っ た。i(表W-1お
「BarroガsProfilesofAmericanColleges」ooに
よび2を 参照)
よ れ ば 、 米 国 内 の"accreditedfour-year
college"、 い わゆ る4年 制 大 学 と して認 定 され た大 学 だ け で も約1500校 程 に な り、 そ の 他短 大 、
専 門 学 校 等 を含 め れ ば、 約3000校 程 に な る。 そ の 中 、 約300大 学 に外 国 人 の た め の 語 学 教 育 を
目的 と した 英 語 集 中 講 座 と して の エ クス テ ソ シ ョソ コー ス が設 け られ て い る。
この よ うに 多 数 の 研 修 先 の 教 育 機 関 が あ る中 で 、 そ れ ぞ れ の大 学 に つ い て資 料 に よ る情 報 の
入手 は 可 能 で あ る。 しか し、 実 際 に研 修 先 を決 定 す る際 に は、 研 修 担 当者 が 直接 現 地 を視 察 調
査 の上 、 そ こで行 な わ れ て い る語 学 教 育 プ ロ グ ラ ムは も ち ろ ん、 立 地 条 件 、環 境 状 態 、 学 生 寮
等 の施 設 の 内容 、 ホー ム ス テ イの場 合 の諸 条 件 、 更 に 全 般 的 な安 全 性 等 に つ き、 受 け入 れ 側 責
任 者 との 意 見交 換 を 通 じて 得 られ る情 報 に基 づ い て の検 討 が 不 可 欠 で あ ろ う。
2.語
学研修 のための英語教育 システム
米 国 の大 学 に お け る外 国 人 学 生 の た め の英 語 教 育 は 、 エ ク ス テ ソ シ ョソ コー スの 中 で 長 期 ま
た は短 期 の英 語 集 中 講座 形 式 で 行 わ れ て い る。 本来 の 目的 は 、 米 国 大 学 へ留 学 す る学 生 の 英 語
力熟 達 に あ るが 、最 近 は 、 短 期 語 学 研 修 プ ロ グ ラム へ の 参 加 者 の増 加 に応 じて 、 各 大 学 共 多 様
な プ ロ グ ラム を組 み 、 エ ク ス テ ソ シ ョ ソ活 動 の強 化 を 目指 して い る。 これ は、 米 国 の 多 くの 大
学 の経 営 上 の活 性化 に と って 欠 くべ か らざ る組 織 と して活 用 され て い る こ と を意 味 す る。
さ て 、前 述 の視 察 旅 行 か ら得 られ た 資 料 を基 に して 、 そ れ ぞ れ の 大 学 に お け る外 国 人 学 生 の
た め の英 語 教 育 シス テ ム を検 討 した 結 果 、 下 記 の如 き2タ イ プへ の 類 別 を試 み た 。
(1)独 立 組 織 タイ プ
これ は 、通 常 の エ クス テ ソ シ ョソ コー ス の英 語 集 中講 座 シ ステ ム と して 認 識 され て い る タイ
プで 、 州 立 大 学 等 の大 規 模 な 大 学 に 多 くみ られ る。 組 織 上 で は 、 一 応 分 離 独 立 して 外 国 人 留 学
生 や 語 学 研 修 生 の受 け入 れ シ ステ ム と して 機 能 して い る。 運 営 は 専 任 の ス タ ッフに よ り行 わ れ
て い る が、 大 学 全 体 の経 営 基 盤 上 の 重 要 な役 割 を果 た して い る。
こ の場 合 、 研 修 用 施 設 と して は 、 大 学 の教 室 棟 の一 部 を利 用 す る大 学 も あ るが 、 多 くは 独 立
した エ クス テ ソシ ョ ソ コー ス用 の 教 育 施 設 を有 し、 独 自の 教 育 活 動 を行 な って い る。 た だ し、
いず れ の場 合 で あ っ て も、大 学 キ ャ ソ パ ス 内 の諸 施 設 は0般 学 生 と同 様 、 自 由 に利 用 可 能 な シ
ス テ ム を とっ て い る。
(表IV-1、2の
大 学 中 、1、3、4、5、
お よび8が
この タイ プ に相 当 す る。)
こ の タ イ プ を選 ん で短 期 研 修 プ ロ グ ラ ム へ の参 加 学 生 を送 る場 合 、 キ ャ ソパ ス内 で の 研 修 生
と して の位 置 付 を充 分 に認 識 させ 、 研 修 の 目的 や集 中 力 の 必 要 性 を 徹 底 させ るた め の 充 分 な 事
前 研 修 が な され な け れ ば な らな い 。 す なわ ち、 この タイ プ の 大 学 で の研 修 の 場 合 、 学 生達 が 、
広 大 な キ ャ ソパ ス の雰 囲 気 に圧 倒 され 、 研 修 へ の集 中 力 が 失 わ れ る可 能 性 が 大 き く、 研 修 目的
に と って マ イ ナ ス の結 果 を 生 じる こ と に もな る。
(2)内
部 組 織 タイ プ
米 国 に お い て は、 州立 大 学 等 の 公 立 大 学 に比 較 して 、私 立 大 学 の 数 の 減 少 化 傾 向 が 目立 って
市川:高 等教育機関における国際交流制度の現状 と課題 に関する比較調査研究
21
来 て い る。 内部 組 織 タイ プ の もの は 、私 立 大 学 に 多 く見 られ る もの で 、 大 学 組 織 の 中 に組 み込
まれ た 集 中英 語 講 座 と して位 置 付 られ て い る。従 って 、 この タイ プ の 大 学 に お け る集 中英 語 教
育 プ ロ グ ラ ム の作 成 に も、大 学 内 の ス タ ッ フ も協 力体 制 を と り、 ユ ニ ー ク な教 育 シ ス テ ム に よ
る研 修効 果 の 向上 を 目指 して い る。 また 、運 営 面 に お い て も、大 学 経 営 を支 え る組 織 の 一 端 を
担 うもの と して 位 置 付 られ て い る。
これ は 、 最 近 の 米 国 の緊 迫 した経 済 状 況 の 中 で、 私 立 大 学 の経 営 危 機 に 関 して も厳 しい局 面
が展 開 して い る と言 われ て い るが㈹、 そ う した危 機 の 回避 方 策 の 一助 とな るよ うエ クス テ ソシ ョ
ソ コー ス の 拡 充 と発 展 に大 きな期 待 を寄 せて い る こと の表 明 と も言 え よ う。 この よ うな 私 立 大
学 の経 営 危 機 に 直 面 して 、"大 学 の マ ー ケ テ ィ ソ グ"論 働が提 唱 され 、 私 学 経 営 の 将 来 の 在 り
方 が示 唆 され て い る。
この タ イ プ で の語 学 研 修 を実 施 す る場 合 、 大 規 模 な州 立 大 学 で は 求 め られ な い い くつ か の メ
リ ッ トが見 い だ され る。 す な わ ち、 研 修 用 施 設 と して は 、 キ ャ ソパ ス 内 の通 常 の教 育施 設 が使
用 され 、 そ の他 の大 学 附属 施 設 も、 も ち ろん 一 般 学 生 と同 様 に使 用 が許 可 され る。 又 、 キ ャ ソ
パ ス の規 模 も比 較 的 に 小 さ く、 留 学 生 は も ち ろん 、 短期 研 修 生 で あ って も、 プ ロ グ ラム へ の 集
中 度 が 持 続 し易 い と思 わ れ る。 更 に 、研 修 学 生 の レベ ル や ニ ー ズに 応 じて 、 適 切 な カ リキ ュ ラ
ムの 組 み 立 て や 、 異 文 化 体 験 活 動上 の調 整 も容 易 で あ り、 ユ ニ ー ク な プ ロ グ ラム に よ る研 修 が
可 能 とな る こ とで あ る。
(表IV-1、2の
大 学 中 、2、6、9、10、
お よび11が この タイ プ に相 当 す る。)
この よ うな メ リ ッ トを示 す1例 を あ げ る と、 私 立 女 子大 と して知 られ た ミル ズ カ レ ッジで は、
集 中 英語 コー スに 留 学 中 の学 生 で あ って も、 英 語 力 の上 達 が認 め られ る と一 般 学 生 の ク ラス に
出席 も可 能 で あ る と の こ とで あ る。
以上 、 留 学 また は 語 学 研 修 を大 学 の組 織 上 か ら2つ の タイ プ共 、 エ ク ステ ソ シ ョ ソ コー ス と
して集 中英 語 教 育 プ ロ グラ ム の発 展 拡 張 が、 大 学 の重 要 な経 営 基 盤 と して位 置 付 され て い る点
で は共 通 して い る と言 え よ う。
3.語
学 研 修 先 の選 定 に お け る留 意 点
前 章 で 提 示 した語 学 研 修 の 組 織 上 の 類 別 は 、 先 に述 べ た 米 国教 育 事 情 視 察 お よび そ の 他 の機
会 に入 手 した資 料 に 基 ず い た もの で あ る。 も ち ろん 、 米 国 に は、 そ の他 多数 の 大 学 や 、 各 地 の
コ ミュ ニ テ ィカ レ ッ ジ、 又 は 、 私 的 な語 学 教 育 施 設 が 存 在 し、 多 様 な プ ロ グ ラ ムを 提 供 して い
る こ とは 、 周 知 の ご と くで あ る。
そ の よ うな多 様 な 対 象 の 中 か ら適 確 な 研 修 先 を 選 定 す る に 当 た っ て 、 い くつ か の 留 意 点 が 指
摘 され よ う。 受 け入 れ大 学側 に対 して 留 意 す べ き点 は 次 の3つ で あ る。
(1)研
修 プ ロ グ ラム の 内 容 が 、 研 修 生 の レベ ル に 対 して 適 切 な考 慮 が払 わ れ て い るか 、 又 、
指 導 教 員 の 適 性 に つ い て も、 責 任 あ る対 応 が な され て い るか に つい て の確 認 。
(2)学
生 達 の滞 在 期 間 中 の 安 全 性 に つ い て 、 真 剣 な配 慮 が な され て い るか の確 認 。
語 学 研 修 の成 果 は 、研 修 生 の安 全 性 が 確保 され て い るか 否 か に依 る と こ ろが 大 きい 。従 って 、
滞 在 方 法 を学 生 寮 に す るか 、 ホー ム ステ イに す るか 、 い ず れ の ケー ス に せ よ、 生 活 上 の 快 適 さ
と共 に 、 安 全 性 に関 して 、 受 け 入 れ 大 学 側 が い か に 誠 意 を 以 て 対 処 して い るか が 、 研修 先 決 定
の重 要 な ポ イ ソ トと な ろ う。
最 近 、 ホー ム ス テ イ中 の トラブ ル が 、 時折 社 会 問 題 と して 新 聞 紙 上 等 に批 判 的 に 取 り上 げ ら
れ るが 、 これ は 受 け 入 れ大 学 側 の取 り組 み の 甘 さ と共 に 、 研 修 生 へ の事 前 指 導 の 不 足 に も起 因
す る点 も併 せ て 考 慮 す べ きで あ る。
22
奈
(3)受
良 大 学
紀
要
第20号
け 入 れ 大 学 側 の 姿 勢 と して 、 語 学 研 修 が参 加 す る学 生 に と って 単 な る英 語 の受 身 的 な
学 習 に終 わ る こ とな く、 さ らに又 、 一 方 的 異 文 化 体 験 プ ロ グ ラ ムに 偏 る こ と の な い よ う、 日本
文 化 の理 解 に 通 じる活 動 を も盛 り込 む た め の配 慮 が な され て い るか の 確 認 。
この よ うな基 本 的 コソ セ プ トの 了解 を計 る こ とに よ り、語 学 研修 プ ロ グ ラ ム を通 して相 互 理
解 を 深 め る機 会 とな る こ と が望 ま れ る。
4.ま
とめ
以 上 、主 と して 米 国 に おけ る短 期 語学 研 修 の実 施 に即 して検 討 す べ き点 に つ い て述 べ て来 た。
しか し、 現 在 は この よ うな語 学 研 修 を異 文 化 体 験 と ミッ ク ス させ た プ ロ グ ラム に よ り実 施 して
い る大 学 に と って 、 いず れ は、 単 位 認 定 の方 向 に 向 け て0歩 前 進 の 必 要 性 が生 じ る こ と にな ろ
う。 又 、 最 近 の 傾 向で は、 高 等 教 育 機 関 と して の大 学 が 、 留 学 制 度 の将 来 展 望 と して 、 交 換 留
学 制 度 の 充 実 、 す な わ ち、 海 外 大 学 との制 度 的提 携 や 、 単 位 の 互 換 制 の実 現 を 目指 す こ とに な
ろ う。 これ は 又 、 目下 の急 務 と され る一
一般 教 育 制 度 改革 に 於 い て も、 検 討 課 題 の一 つ と視 な さ
れ るべ き問 題 で あ る。 更 に最 近 は 、米 国 に 限 らず 、 英 国 、 カ ナ ダ、 オ ー ス トラ リア の 大 学 も、
日本 の 学 生 を対 象 に した留 学 や短 期 研 修 計 画 へ の 参 画 に熱 意 を示 し、,我 が 国 へ の働 きか け も激
化 して い る ので 、 研 修 先 の選 定 も多様 化 す る こ とに な る。 そ の 他 、 海 外 か らの留 学 生 の 受 け 入
れ 、 研 究 者 サ イ ドの相 互 交 換 留 学 制 度 の促 進 等 、 今 後 ます ます 多 様 化 す る問題 に対 処 す べ く、
大 学 と して 国 際 交 流 組 織 の実 現 へ の取 り組 み の 検討 が 望 まれ る こと に な ろ う。(武
Date
Nov.16,'89
No.
1
College/University
UniversityofCalifornia
2
Meeting&discussionwith
DirectorofExtensionProgram
(English)
Berkley
17
久)
MillsCollege
Directorandinstructorof
ExtensionCourses
"TheEnglishCenterfor
i
InternationalWomen"
Nov.18,'89
3
SonomaStateUniversity
Instructor&studentsof
ExtensionCourses
19
4
CaliforniaStateUniversity
atLosAngels
NoMeetingonsunday
(Freecampustour)
Lecturesweregivenlater.
19
5
UniversityofCalifornia
DirectorofExtensionCourses
Irvine
20
6
ClaremontUniversity
PitzerCollege
23
7
UniversityofDenver
PresidentofPitzerCollege
DirectorofPACEPROGRAM
ExtensionAdministrative
DirectorofEnglishLanguage
Centeer
(表W-1)調
査対 象 大 学 リス ト(米 国教 育 事 情 視 察 に よ る)
市川:高 等教育機関 におけ る国際交流制度 の現状 と課題 に関する比較調査研究
Aug.1,'86
8
UniversityofHawaii
23
DirectorofExtensionCourses
atManoa
Mar.25,'88
9
TrinityUniversity
ProfessorofEnglishDepartment
(Texas)
Mar.25,'88
10
UniversityofPittsburgh
VicePresidentandprofessors
atJohnstown
Aug.8,'90
11
ofEnglishDepartment
PacificUnionCollege
DirectorofEnglishExtension
Courses
(表IV-2)調
(注)表IV-2に
査 対 象 大 学 リス ト(上 記 視 察 以 外)
示 され た大 学 は 、 表IV-1の
視 察 研 修 とは 別 にそ れ ぞ れ の 時期 に 視 察 の
機 会 を得 た大 学 の リス トで あ る 。
第V章
今後の課題と提言
現 代 とい う時 代 の 顕 著 な特 色 の 一 つ は 、 社 会 が情 報 化 ・高齢 化 ・国 際 化 に 向 か って確 実 に大
き く激 しく変 移 して い る こ とに あ る。 した が っ て 、時 代 は そ う した 社 会 の 移 り変 わ りに 対 して
適 切 な対 応 を 、 わ れ わ れ に要 求 し要 請 して い る と い わ な け れ ば な らな い 。 時 代 ・社 会 へ の 対応
とい う点 に立 っ て い え ぱ 、教 育 は そ の 際 大 き な関 わ りを もち 、 な か で も高 等 教 育 は時 代 ・社 会
の要 請 に対 して充 分 に応 え られ る内容 を もつ も ので な けれ ば な らな い。
高 等 教 育 が大 きな関 わ りを もち対 応 しな け れ ば な らな い とい うの は 、 まず 、 情 報 化 に つ い て
は、 社 会 の 全 体 が情 報 に対 して 関心 や依 存 の 度 合 を著 し く高 め つ つ あ る現 在 、 よ り正 確 で よ り
良 質 の情 報 ・知 識 が 与 え られ る必 要 が あ る。 同 時 に、 よ り迅 速 で正 しい判 断 の 出 来 る能 力 を身
につ け る必 要 が あ る。 そ の 意 味 で、 高 等 教 育 は コ ソ ピュー タ ・リテ ラシ ー ・情 報 処 理 教 育 を推
進 して 対 応 しな け れ ば な ら な い と い う こ とで あ る。 また 、 高 齢 化 に つ い て は 、社 会 福 祉 の問 題
な どは 他 に ゆ ず り高 等 教 育 の 面 か らい え ば 、 シル バ ー エ イ ジへ の 生 涯 教 育 の一 環 と して 具 体 的
対 応 が 望 ま れ て い る とい うこ とで あ る。 そ れ は大 学 の地 域 社 会 へ の 公 開 や 貢 献 の 問題 と して も
望 まれ る こ とで あ る。 一 般 に 週 休 二 日制 が普 及 定 着 し、 ま た 、 科学 技 術 が格 段 に進 歩 しそ れ に
伴 う知 識 の 陳腐 化 が 急 速 に進 行 して お り、 更 に、 余 暇 時 間 が増 加 して い る こ とな ど指i摘され て
い るが 、 これ ら も踏 まえ て生 涯 学 習 の 必 要 制 は ます ます 増 大 して い くと思 わ れ る。
さて、 本 研 究 が 直接 関係 す る国 際 化 に つ いて は、 高 等 教 育 に お け る グ ロバ リー ゼ ー シ ョソの
問 題 と して対応 しな けれ ば な らな い と い うこ とで あ る。 今 日、高 等 教 育 にお け る グ ロバ リー ゼー
シ ョ ソ と して 、 つ ぎ の3点
を 『平 成5年
度 以 降 の 高 等 教 育 の計 画 的 整 備 に つ い て(答
申)』
(平 成3年5月17日
大 学 審 議 会)は 指 摘 して い る。 す な わ ち、 ① 国 際 的 に 通 用 す る教 育 シ ステ
ム の確 立 、 ② 留 学 生 の交 流 拡 大 ・学 術 研 究 の 国 際 交 流 の拡 大 、 ③ 国 際 社 会 で 活 躍 で き る人 材 の
育 成 、 で あ る。 こ こ に指 摘 さ れ る課 題 は 極 め て 重 要 な もの で あ る こ とは繰 り返 して い うま で も
な い。
この よ う に、 時 代 の 提 出 す る諸 問 題 の 中 で 、 高 等 教 育 に対 応 を迫 っ て い る国 際 化 に関 して 、
本 研 究 は 高 等 教 育機 関 にお け る国 際 交 流 制 度 の 教 育 面 に 限 定 し、 併 せ て、 本 学 で 実 施 し よ う と
す る 「海 外 語 学 研 修 」 の位 置 づ け に資 す るた め 、 い くつ か の視 点 か らア プ ロー チ しよ うと した 。
24
奈
良 大
学 紀
要
第20号
第II章 で は 、 今 日多 様 化 して い る 「留 学 」 を 教 育 の 制 度 ・内 容 ・目的 の三 側 面 か ら類型 化 し
た 。 まず 、 制 度 面 か ら、 ① 狭 義 の留 学 生 の 受 け 入 れ ・送 り出 し、 ② 研 修 生 の受 け入 れ ・送 り出
し、 に 二 分 し、 本 学 の 海 外 語 学 研 修 は研 修 生 の 送 り出 しに 相 当 す る。 次 に、 内 容面 か らは 、①
依存 型 留 学 、② 付 加 価 値 型 留 学 に類 別 され 、前 者 は高 等 教 育 の 未 整 備 に起 因 す る もの で あ るが、
後 者 に は 短 期 間 の 異 文 化 体 験 学 習 ・海 外 語 学 研 修 が 含 まれ て 、 プ ラ トソ以 来 そ の教 育 的 意 義 は
認知 され て い る。 そ して 、 目的 面 か らは、 ① 投 資 型 、② 消 費 型 に 分 け られ 、 海 外 語 学 研 修 は こ
の二 つ を 内 包 して い る と詳 論 した 。 最 後 に 、海 外 語学 研 修 の 意 義 と して 、 ① 他 国 の文 化 に触 れ
る、② 他 国 の文 化 を知 り学 ぶ だ け で な く 自国 の そ れ を も知 り学 ぶ 機 会 と な る、 ③ 自己形 成 力 の
錬 磨 とな る、 な ど明 らか に した 。
第III章で は 、各 大 学 で実 施 され て い る海 外 語 学 研 修 の プ ロ グ ラ ムの 現 状 に つ い て調 査 し、 そ
こに見 られ る問題 点 を探 り出 し、 そ れ の望 ま しい あ り方 を示 す た め の 分 析 考 察 を した。 主 な調
査 項 目は研 修 の企 画 と実 施 の 主 体 、 意 義 目的 、 内容 、 研 修 の概 要(単
位認 定 、 期 間 、 費用)、
参加 学 生 に 関す る こ と、業 者 に 関 す る こ と、 実 施 後 の評 価 と反 省 、 同 行 教 員 に関 す る こと 、事
故 ・危 機 管 理 体 制 で あ った。 課 題 と して は 、 今 日の海 外 語 学 研 修 の 根 幹 に 関 わ って 、 送 り出 し
機 関 の受 け入 れ先 ・大 学 の リサ ー チ 欠 如 、 そ れ に付 随 して 生 ず る参 加 者 の 質 の 低 下 な ど の問 題
点 を指 摘 した。 リサ ー チ欠 如 は 、 例 え ば 単 位 認 定 を行 な お う とす る場 合 、 果 して そ れ が妥 当 な
もの か ど うか の問 題 と して 直 ち に 関 わ って くる ので あ り、 長 く見 れ ば 大学 の 教 育 水 準 の低 下 を
招 くな ど に 関 わ る。 こ う した観 点 か ら、 国 際 交 流 の企 画 ・実 施 を扱 う学 内 組 織 、 す な わ ち、 人
的 ・物 的 イ ソフ ラス トラ クチ ャー の 整 備 ・確 立 を は か らな け れ ば な らな い と した。 こ れ は受 け
入 れ先 の大 学 の リサ ー チ だ け で な く、 他 国 か らの留 学 生 の受 け入 れ の体 制 整 備 に も機 能 して い
く もので あ り、 そ の果 たす 役 割 は 今 後 重 要 性 を増 して い く もの と した の で あ る。
こ う した調 査 の分 析 を通 して 終 始 問 題 と な り望 ま しい こ と と議 論 され た の は 、 独 自 に プ ロ グ
ラ ム の企 画 か ら実 施 に至 る ま で を 取扱 え る学 内 組 織 の 確 立 で あ っ た。 この組 織 確 立 の 中 に は交
i換留 学 制 度 や 研 修 ・留 学 に伴 い偶 発 的 に 発 生 す る か も知 れ な い事 故 、 そ れ よ りは 事 故 予 防 に備
え る危 機 管 理 体 制 の確 立 な ど も含 め られ て い な け れ ば な らな い。 こ こで は 、知 識 と経 験 の 蓄 積
が大 事 な こ と と な る。
第IV章 は、 外 国 人 の海 外 語 学 研 修 の 受 け 入 れ 先 の0つ で あ る ア メ リカ の大 学 の 語 学 教 育 シ ス
テ ム を中 心 と した調 査 報 告 で あ る。 語 学 教 育 シ ス テ ム と して は、 ① 独 立 組 織 タイ プ、② 内 部 組
織 タ イ プ、 の二 つ に類 別 さ れ る。 どち らが 研 修 先 と して 適 切 で あ るか は 内容 ・条 件 を よ く検 討
しなけ れ ば な ら な い。 ここ で は 、海 外 語 学 研 修 先 の 決 定 に到 る留 意 点 と して 、① 研修 プ ロ グ ラ
ムの 内 容 、 ② 安 全 性 、 ③ 受 け入 れ大 学 側 の 姿 勢 、 の3点
を示 して 、 単 位 認 定 の 問 題 を 含 め 、 海
外 大 学 との 制 度 的 提 携 の実 現 を提 起 した 。
以 上 、 本 研 究 報 告 の 内容 を要 約 しな が ら、 問 題 点 を絞 っ て きた。 国 際教 育交 流 を軌 道 に 乗 せ
るた め の 全 学 的 組 織 的 イ ソフ ラス トラ クチ ャー を、 ど の よ うな形 で確 立 して い くか は 充 分 な検
討 が 必 要 で あ ろ う。 「国際 交 流 委 員 会(仮 称)」 の よ うな もの か らス ター トさせ て 、 「国 際 交
流 セ ソ ター(仮 称)」
の創 設 に 向 か い 、 そ の 所 期 の趣 旨 に添 って 知 識 と経 験 を 蓄 積 して い くの
が 最 も基 本 的 な ス テ ップで は な い か と考 え られ る。 も ち ろ ん、 そ う した組 織 の もつ 問 題 点 も事
前 に検 討 して い か な け れ ば な らな い で あ ろ う。
なお 、 本 研 究 は平 成2年 度 奈 良 大学 特 別 研 究 費 の助 成 を受 けて 行 わ れ た。(市
川)
市川:高 等教育機関における国際交流制度の現状 と課題 に関す る比較調査研究
25
〈注 〉
(1)A.大
学 の 場 合 、 以 下 の よ う な 諸 施 策 が 採 ら れ て い る 。 す な わ ち 、i)海
採 用 制 度 、 血)授
業 の 全 面 委 託 制 度 、 趙)安
の 義 務 化 、iv)入
院 ・加 療 ・手 術 な ど を 行 う場 合 に 備 え た 事 前 承 諾 書(和
外 研修 担 当 ス タ ッフ の現 地
全 対 策 、 緊 急 時 へ の 対 応 策 と して の 「学 生 カ ー ド」 の 携 行
文 ・英 文)の
準 備 、 な どで あ
る。
(2)詳
し くは 、 井 門 富 二 夫
研 究 紀 要 第12号
「大 学 国 際 交 流 の 現 実 一 フ ィ ー ル ド ワ ー ク ・ ノ ー ト的 視 点 か ら一 」 、 高 等 教 育
、p47∼p48参
照。
(3)同
上 論 文 、p48
(4)喜
多 村 和 之 「1990年 代 の 国 際 教 育 交 流 と 日 本 の 高 等 教 育 へ の 課 題 」 、 高 等 教 育 研 究 紀 要 第12号
、p15
7参 照 。
(5)詳
し くは 、 岡 田 正 三 訳
(6)石
附
実
「プ ラ トー ソ 全 集 」 第5巻1971年
参照。
(7)山
村
健 、 天 野 郁 夫 、 「青 年 期 の 進 路 選 択 」 有 斐 閣 、 昭 和55年
(8)調
査 項 目 は 、 今 回 の 調 査 目 的 に 沿 っ て 選 択 し 、 構 成 し た も の で あ る 。 詳 し くは 資 料 を 参 照 さ れ た い 。
「留 学 の 大 衆 化 と 多 様 化 」 、 高 等 教 育 研 究 紀 要 第12号
、p4
、p43∼p44
な お 、 聞 き取 り に 協 力 い た だ い た の は 、 海 外 研 修 セ ソ タ ー 等 の 研 修 に 直 接 関 わ っ て い る 事 務 担 当 者 が
ほ と ん どで あ っ た。 各 項 目の全 て に つ い て解 答 を得 た わ け で は な い 。 そ れ は 打 ち 合 わ せ が 不充 分 で あ っ
た こ と 、 質 問 項 目が 不 明 瞭 で あ っ た こ と 等 が 理 由 で あ る 。 結 果 を 持 ち よ っ て 検 討 し た 時 点 で か な り の 点
に 気 づ い た こ と を 反 省 して い る 。 今 回 は 我 々 が 聞 き と れ た も の に 限 っ て 分 析 考 察 し た も の で あ る こ と を
お 断 わ り して お く。
(9)井
門 富 二 夫 、 前 掲 論 文 、p48
(io)井
門 富 二 夫 、 前掲 論 文 、 同 所
⑳
筆 者 の 行 っ た イ ソ タ ビ ュ ー の 中 で 、 こ う した 証 言 が 若 干 校 で 見 ら れ た 。
(12)江
淵 公 一 、 「留 学 の 世 界 的 動 向 一 国 レベ ル と 機 関 レ ベ ル の 留 学 政 策 一 」 、 高 等 教 育 研 究 紀 要 第12号
、
p12
(13)石
附
実
前 掲 論 文 、 同所
(14)海
外 留 学 お よ び 国 際 交 流 を 主 業 務 と す るISA主
催 に よ る 視 察 旅 行 で 、1989年10月26日
に わ た り、 大 学 お よ び そ の 他 の 教 育 施 設 の 状 況 を 視 察 し た 。
㈲Barron:"ProfilesofAmericanColleges",15thed.,compiled&editedbytheCollege
DivisionofBarron'sEducationalSeries,Inc.,N.Y.
(16)PaulB.Ranslow:"AmericanHigherEducation:HistoryandFuturePossibilities"Prepared
remarksfortheInternationalStudyAbroadCenter,PitzerCollege,Claremont,California.
㈲ibid.
よ り11月11日
26
奈
良
大 学
紀 要
第20号
添 付 資 料
海外語学研修 に関す る調査
奈 良 大学 教養 部 海 外 語 学 研 修 委 員会
担 当 者()
訪 問 日()
大学 名:
1.海
外 研 修 の企 画 と実 施 の主 体 は ど こか。
学 内組 織 、 シ ス テ ム(eg.国
際 セ ソ ター 、 国 際 交 流 委 員 会 、 特 定 学 部 か 学 科)
2.研
修 の教 育 的 意 義 ・目的 ・内容
3.研
修 の概 要
(語学 研 修 、 異 文 化 体 験 、 専 門学 科 の フ ィー ドバ ッ ク、 そ の他)
(1)開 始 時 期
(2)カ
リキ ュ ラ ム との 関 連 一 単 位 の認 定 、 何 の単 位 か
(3)期 間 、 時 期 、。対 象 学 生 、 参 加 人 員(定 員)、 同 行 教 員 の人 数 、 添 乗 員 の有 無
(4)費 用
・概 算
・大 学 か ら の補 助 金 の有 無
・こず か い の額
・ロー ソの シ ス テ ム
(5)研 修 地 域 は ど こか 一 具 体 的 に、 選 択 理 由
(6)研 修 シ ス テ ム
・研 修 機 関 との コソ タ ク トの方 法(姉 妹 校 提 携 が あ る、 業 者 に任 せ る そ の他)
・研 修 サー ビ スの 提 供 主 体(大 学 、 語 学 学 校 、 そ の他)
・宿 泊 一学 生 寮 か ホー ム ス テ イか 一そ の理 由
・オ プ シ ョナル ツ アー の と りい れ 方 と問 題 点
4.旅
行 業 者 につ い て
(1)検 討 対 象 業 者 の 数 と社 名
(2)業 者 の選 択 、 決 定 の 理 由
(3)問 題 点
(4)企 画 立 案 へ の 業 者 の 関 与 の 程 度(全 面 的 か 一 部 か)
5.参
加 学 生 に関 す る こ と
(1)企 画 立 案 につ い て 学 生 の 希 望 を どの よ うに反 映 して い るか 。 た と え ば、 事 前 に ア ソケ ー ト調 査 を す
るか 、 あ るい は 協 議 会 を 開 催 して 意 見 を集 め るか 、 等 。
(2)企 画 にた い す る学 生 の 反 応(集
ま り方)
(3)研 修 にた い す る学 生 の 反 応(満 足 度)
(4)事 前 指 導 の 内 容
(5)学
生 側 の 問題 点(eg.集
合 時 間 厳 守 な ど に つ いて)
(6)研 修 実 施 後 の 評 価 ・反 省 につ い て
(7)同
行 教 員 に関 す る こ と
・研 修 実 施 に つ い て の ス タ ッ フの 合 意 の程 度
市川:高 等教育機関におけ る国際交流制度の現状 と課題 に関する比較調査研究
・研 修 企 画 に関 して 、 同 行教 員 の意 向 は 、 ど の程 度 反 映 され て い るか
・同 行 教 員 の 決 定 方 法 ・ル ー ル の有 無
・同 行 教 員 の 費 用 負 担 … …学 生負 担 、法 人 負 担 、 同行 教 員 負 担 、 そ の 他
金額 も
・同 行 教 員 へ の 配 慮 の有 無
金 銭 面(ど の程 度)
そ の 他(具 体 的 に)
(8)事
故 ・危 機管 理 に つ い て
・事前 調査 の実 施状 況
ど の程 度 まで
調 査 費 用?
・事故 発 生 時 の対 応 シナ リオ の有 無
・事 故 発 生 時 の補 償 措 置 …… 法 人 と して の バ ッ ク ア ップ の 内 容
保 険 等 の組 み か た
・同行 教 員 の責 任 領 域 、 責 任 関 係 に つ いて
範 囲等 に つ いて マ ニ ュ アル は あ るか
合 意 が ス タ ッフ の間 で で きて い るか
学 校 事 故 の判 例 収 集 と検 討 を 十 分 や った か
・提 訴 時 の 同行 教 員 に対 す る法 人 の バ ックア ップ に つ い て
→ 検 討 済 み か 、 合 意 が で きて い るか
・過 去 にお け る事 故 歴
具体的に
対 応措置
・そ の 他 事 故 防 止 、 安 全 対 策 と して どの よ うな方 策 を講 じて い る か
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