犯罪被害者化に関する機会理論の展開と課題

増本:犯 罪被害者化 に関す る機会理論 の展 開 と課題
it
犯罪被害者化 に関 す る機会理論 の展 開 と課題
増
本
弘
文*
AnAnalysisofDevelopmentinandProblems
WithTheor-yforCriminalVictimization
HirofumiMASUMOTO
要
旨
犯 罪 被 害 者 化 に関 す る機 会 理 論 は、 直 接 的 接 触 を 伴 う略 奪 的 犯 罪 の被 害 者 化 の プ ロ セ ス を 明 らか に
しよ うとす る理 論 で あ る。 そ こで は、 犯 罪 者 はす で に存 在 す る もの と して扱 わ れ る。 つ ま り、 機 会 理
論 は、 す で に存 在 す る犯 罪 的 動 機 が どの よ う に実 現 され るか を解 明 しよ うと す る社 会 学 的理 論 な の で
あ る。 本 論 稿 は、 こ の機 会 理 論 の 現 在 の 理 論 水 準 と課 題 を明 らか に しよ う とす る もの で あ る。 機 会 理
論 は、1978年 の ラ イ フ ス タ イ ル理 論 と1979年 の ル ー テ ィ ンア ク テ ィ ヴ ィテ ィ ー理 論 に起 源 を有 して い
る。 しか し、 機 会 理 論 は、 これ ら二 っ の 理 論 の問 題 点 を克 服 す る こ とに よ って、 す で に両 理 論 を大 き
く越 え て い る。 す な わ ち、 ① 近 接 性 ・接 触 性 ・好 餌 性 ・防 備 性 な ど の媒 介 概 念 を考 案 す る こ とに よ っ
て、 被 害 者 化 を決 定 づ け る因 子 を実 証 的 に同 定 しっ っ 、 被 害 者 化 の プ ロセ ス を よ り明確 に した、 ② ラ
イ フス タ イ ル概 念 に含 まれ な い因 子 、 っ ま り、 個 人 属 性 的 因子 ・コ ミュニ ュテ ィー レベ ル の 因子 な ど
を実 証 的 に 同定 しよ うと して い る、 ③ 犯 罪 者 研 究 や環 境 犯 罪 学/状
況 的犯 罪予 防 との連 携 ・統 合 へ の
扉 を 開 い た、 ④ 略奪 的犯 罪 以 外 の被 害 者 化 に対 して も機 会 理 論 を適 用 し得 る可能 性 を示 唆 した 。 しか
しな が ら、 機 会 理 論 に は解 決 す べ き課 題 が残 さ れ て い る。 す な わ ち 、 よ り精 密 な デ ー タ収 集 ・分 析 と
い う困難 な 問題 を解 決 す る こと に よ って、 被 害 者 化 の リス クに 影 響 す る因 子 を 実 証 的 に 同 定 し、 よ り
洗 練 さ れ た モ デ ル を構 築 す る こと で あ る。 さ らに、 犯 罪 者 研 究 や 環境 犯罪 学/状 況 的犯 罪予 防 と連携 ・
統 合 す る こ とに よ って、 被 害 者 化 的 出来 事(Event)/犯
罪 的 出 来 事 の 解 明 ・予 防 を 実 現 す る こ とで
あ る。
1序
1978年
に 、 ヒ ンデ ラ ン グ ・ゴ ッ ト フ レ ッ ドソ ン ・ガ ロ フ ァ ロ に よ って 、 ラ イ フ ス タ イ ル 理 論
が 提 唱 さ れ た 。 そ して 、 翌79年
テ ィ ー 理 論 が 提 唱 さ れ たOほ
平 成10年9月30日
受 理*教
に は 、 コ ー エ ン ・フ ェ ル ソ ン に よ って 、 ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ
ぼ 同 時 期 に 提 唱 さ れ た こ れ ら二 っ の 理 論 は 、 被 害 者 学 の 発 展 に 大
養部
12
奈
良
大
学
紀
要
第27号
き く貢 献 す る と と も に 、 よ り一 般 的 な 理 論 で あ る 機 会 理 論(OpportunityTheory)へ
と発 展
し て い っ た1)。
こ の 機 会 理 論 は 、 被 害 調 査 を は じ め と す る 現 実 の デ ー タ に も とづ き、 直 接 的 接 触 を 伴 う 略 奪
的 犯 罪(Direct-ContactPredatoryviolations)の
被 害 者 化 の プ 白 セ ス を 明 らか に し よ う と
す る 理 論 で あ る 。 そ の 際 、 合 理 的 選 択 を 行 う犯 罪 者 は 、 す で に 存 在 す る も の と み な さ れ る。 す
な わ ち、 この機 会 理 論 は、 人 が ど の よ うに犯 罪 へ と動 機 づ け られ る の か は 問題 とせ ず 、 す で に
存 在 す る 犯 罪 的 動 機 が ど の よ う に 実 現 さ れ る の か を 明 らか に し よ う と す る社 会 学 的 理 論 な の で
あ る。
も ち ろ ん 、 ラ イ フ ス タ イ ル 理 論 ・ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ ー 理 論 に は 、 ほ と ん ど す べ て
の パ イ オ ニ ア 的 理 論 と 同 じ く、 多 くの 問 題 点 が 存 在 して い る 。 しか し な が ら、 機 会 理 論 は、 そ
の 問 題 点 を 克 服 し、 被 害 者 化 の 解 明 や 防 止 に 精 力 的 に 取 り組 ん で い る 。 本 論 稿 は 、 こ の 機 会 理
論 の 理 論 的 努 力 に 焦 点 を 当 て な が ら、 犯 罪 被 害 者 化(CriminalVictimization)に
関 す る機 会
理 論 の 現 在 の 理 論 水 準 と 課 題 を 明 らか に し よ う と 試 み る もの で あ る 。
II犯
罪 被 害 者 化 に関 す る機 会 理 論 の 登 場
ラ イ フ ス タ イ ル 理 論 や ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ ー 理 論 に つ い て は 、 わ が 国 で も、 す で に
い くっ か の 優 れ た 研 究 が 存 在 す る2)。 そ こ で 、 こ こ で は、 機 会 理 論 の 出 発 点 と し て の 両 理 論 の
概 要 を 述 べ る に と ど め る こ と に す る。
(1)ラ
イ フ ス タイ ル理 論
ヒ ンデ ラ ン グ達 は、 被 害 調 査 に も と つ くデ ー タ を 分 析 した 結 果 、 直 接 的 接 触 を 伴 う略 奪 的 犯
罪 の 被 害 者 化 は、 時 間 ・場 所 ・人 の 間 で 、 均 等 に 分 布 し て い る の で は な く、 危 険 な 時 間 ・場 所 ・
人 が 存 在 し て い る こ と を 発 見 した 。 そ し て 、 ハ イ リス ク な 時 間 帯 に ハ イ リ ス ク の 場 所 に い る か
ど う か 、 あ る い は、 犯 罪 傾 向 の 強 い ハ イ リス ク な 人 と接 触 す る か ど う か を 決 定 づ け る もの と し
て 、 ラ イ フ ス タ イ ル と い う概 念 を 考 案 し た 。 こ こ で い う ラ イ フ ス タ イ ル と は 、 日 常 的 活 動 を 意
味 し、 そ れ は、 職 業 活 動(VocationalActivity)と
余 暇 活 動(Leisure)の
両 者 か ら構 成 さ れ
る の で あ る。
図1か
ら 明 ら か な よ う に 、 人 は 、 そ の 人 に 対 す る 役 割 期 待(RoleExpectations)と
な 構 造 的 制 約(StructualConstraints)に
適 応(Adaptations)し
の 結 果 、 そ の 人 固 有 の 副 次 文 化(lndividualSubculture)を
社 会 的
な け れ ば な らず 、 この 適 応
創 り上 げ る。 そ して 、 こ の 副 次 文
化 は 、 そ の 人 固 有 の ラ イ フ ス タ イ ル を 形 成 す る 。 し た が っ て 、 ラ イ フ ス タ イ ル と は、 役 割 期 待
と社 会 的 な 構 造 的 制 約 に 対 す る そ の 人 固 有 の 適 応 形 態 な の で あ る。
と こ ろ で 、 ラ イ フ ス タ イ ル 論 者 は 、 自 ら の モ デ ル をLifestyle/ExposureModelと
お り、 こ のExposureと
こ のExposureは
い う概 念 は、 ラ イ フ ス タ イ ル 概 念 と並 ぶ 中 心 的 な 概 念 と さ れ て い る 。
、 「略 奪 的 犯 罪 の 被 害 者 と な る か も し れ な い 危 険 な 状 況 に 身 を 晒 す こ と 」 と
い う意 味 で 使 用 さ れ て い る。 図1か
(危 険 度)を
呼ん で
ら 明 ら か な よ う に 、 ラ イ フ ス タ イ ル は 、 こ のExposure
経 由 す る こ と に よ っ て 、 被 害 者 化(Victimization)に
到 るの で あ る。 た とえ ば 、
夜 間 一 人 で公 の場 所 に頻 繁 に外 出 す る と い うラ イ フ ス タ イル は、 そ の人 の身 を極 め て危 険 な状
況 に 晒 す こ と に な り、 そ の 結 果 、 現 実 に 略 奪 的 犯 罪 の 被 害 者 と な る の で あ る3)。
増本:犯 罪被害者化 に関す る機会 理論 の展開 と課題
図1.Lifestyle/ExposureModelの
13
概略図
役割期待
適応
ライ フ
ス タイ ル
Exposure
個人の
副次文化
被害者化
(危 険 度)
職業活動
余暇活動
構造的制約
(2)ル
ー テ ィ ンア クテ ィヴ ィテ ィー理 論
コ ー エ ン と フ ェ ル ソ ン は 、 様 々 な 現 実 の デ ー タ に も と づ き、 合 衆 国 で は1947年
か ら74年 の 間
に 、 こ れ ま で 犯 罪 の 原 因 と考 え られ て き た 諸 因 子 、 た と え ば 、 失 業 や 貧 困 な ど が 改 善 さ れ た に
も か か わ らず 、 犯 罪 発 生 率 が 上 昇 して い る こ と を 発 見 し た 。 彼 ら は、 こ の 逆 説 的 な ト レ ン ドを
説 明 す る た め に 、 ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ ー と い う概 念 を 考 案 し た 。
こ の ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ ー と は 、 日 々 繰 り返 し て 行 わ れ る 日常 的 活 動 で あ り、 そ れ
は 、 集 団 や 個 人 が 必 要 と す る も の を ま か な う た め の 活 動 で あ る。 し た が っ て 、 そ れ は 、 「仕 事
だ け で な く、 標 準 的 な 食 物 ・住 居 ・性 的 欲 求 ・余 暇 ・社 会 的 相 互 作 用 ・学 習 ・養 育 を ま か な う
こ と を 含 ん で い る 」。 こ の ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ ー は 、 人 が い っ ・ ど こ で ・誰 と 接 触 す
る の か を 決 定 づ け る と さ れ る 。 そ して 、 社 会 構 造(の
テ ィ ー(の
変 化)を
変 化)が
、 この ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィ
決 定 づ け る と され る ので あ る。
と こ ろ で 、 直 接 的i接触 を 伴 う略 奪 的 犯 罪 が 発 生 す る た め に は 、 三 つ の 最 低 限 の 要 素 が 収 敏 し
な けれ ば な らな い。 す なわ ち、 ① 動 機 づ け られ た犯 罪 者 、 ② 恰 好 の標 的、 ③ 有 効 な監 視 の不 存
在 、 と い う三 っ の 要 素 が 、 同 一 の 時 間 に 、 同 一 の 場 所 に 存 在 し な け れ ば な ら な い の で あ る。 そ
して 、 ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ ー こ そ が 、 こ の 三 っ の 要 素 の 収 敏 を 決 定 づ け る と さ れ る の
で あ る。
し た が っ て 、 ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ ー 理 論 を 略 図 で 示 す と、 図2の
よ う に な る と思 わ
れ る4)。
図2.RoutineActivityModelの
概 略 図5)
三 っ の要 素
ル ー テ ィ ン
社会構造
(の変 化)
ラ
ア ク テ ィヴ
の収 敏
う
1.犯 罪 者
ィテ ィー
(の変 化)
2.標 的
3.監 視 不 在
ラ
犯罪の
ラ
機会
被害者化
14
奈
良
大
学
紀
要
第27号
皿
両 理 論 の位 置 づ け
す で に 明 らか とな った よ うに、 ライ フス タイ ル理 論 は、 人 々 の 間 で被 害者 化 の発 生 率 が異 な
る こ とに着 目 し、 ライ フス タイ ル の違 い が、 人 々 の 間 で の被 害 者 化 の リス クの違 い を もた らす
とす る理 論 で あ る。 これ に た い し、 ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィー理 論 は、 犯 罪 発 生 率 が年 毎
に変 化 して い る こ とに着 目 し、 ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィー の変 化 が、 犯 罪発 生 率 の変 化 を
もた らす とす る理 論 で あ る。
した が って、 前 者 は横 断 的 な理 論 で あ り、 後 者 は縦 断 的 な理 論 で あ って 、 そ の 点 に、 両 者 の
違 い が あ る と も言 え よ う。 しか し、 ライ フス タイ ル論 者 で あ る ガ ロ フ ァロ 自身 、 この 点 は単 な
る説 明 の仕 方 の違 い に す ぎず 、 ライ フス タイ ル理 論 も縦 断 的 に適 応 可 能 で あ り、 ル ー テ ィ ン ア
クテ ィ ヴ ィテ ィー理 論 も横 断 的 に適 用 可 能 で あ って、 両 理 論 の 間 に実 質 的 な違 い はな い と して
い る。 しか しな が ら、 両 理 論 は、 完 全 に オ ー バ ー ラ ッ プす る と は思 わ れ な い。
第 一 に、 ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィー理 論 は、 そ もそ も、 シ カ ゴ学 派 の 生 態 学 的 ア プ ロ ー
チ に根 ざ す理 論 で あ り、 した が って、(ラ イ フ ス タ イ ル理 論 と異 な り)コ
ミュニュ テ ィーに よ
る犯 罪 統 制 に親 和 性 を持 って い るの で あ る。 この こ とを端 的 に物語 って い るの が 、 ル ロ
ーテ ィ ン
ア クテ ィ ヴ ィテ ィー概 念 で あ る。 す な わ ち、 ライ フ ス タイ ル は、 構 造 的 制 約 と役 割 期 待 に対 す
る適 応 か ら生 じ るの に た い し、 ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィ ー は、 生 活 を 維 持 す る た め の重 要
な活 動 の 時 間 的場 所 的分 布 を反 映 す る もの と され る。 した が って 、 後 者 は、 人 間 生 態 学 的 な概
念 で あ る。 そ れ故 、 ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィー理 論 は、 コ ミュ ニ ュ テ ィ ー に よ る犯 罪 統 制
を も射 程 に入 れ得 る理 論 な の で あ る6)。㌧
この点 は極 め て重 要 で あ る。 す な わ ち、 後 述 す るよ う に、 コ ミュ ニ ュ テ ィ ー に関 連 す る因 子
が、 個 人 の被 害 者 化 に影 響 を お よ ぼ す こ とが指 摘 され て い る。 この 指 摘 に したが え ば、 被 害 者
化 の プ ロセ ス を解 明 す るた め に は、 個 人 レベ ル の 因子 だ けで な く、 コ ミュ ニ ュ テ ィー レベ ル の
因子 に も着 目 しな け れ ば な らな い の で あ る。 した が って、 機 会 理 論 が 、 コ ミュ ニ ュ テ ィー に よ
る犯 罪 統 制 を射 程 に入 れ る こ とが で き るか ど うか は、 極 め て 重 要 な問 題 と な る ので あ る。
第 二 に、 ライ フス タイ ル理 論 が、 犯 罪 者 よ り も犯 罪 の 標 的 で あ る被 害 者 の方 に分 析 の重 点 を
お いて い るの にた い し7)、ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィー 理 論 は、 犯 罪 の 発 生 を犯 罪 者 と被 害
者 の相 互 関係 と して(も)理
解 す る傾 向 が 強 い の で あ る8)。
も っ と も、 この よ うな違 い に もか か わ らず、 多 くの 論 者 が 、 両 理 論 の同 質 性 を前 提 に して議
論 を進 め て い る。 そ こで、 こ こで は、 ライ フ ス タイ ル理 論 が 被 害 者 個 人 に力 点 を お い た理 論 で
あ るの に た い し、 ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィー理 論 は、 コ ミュ ニ ュ テ ィーや 犯 罪 者 を も視 野
に入 れ得 る理 論 で あ る こ とを確 認 す るだ けで十 分 で あ る よ う に思 わ れ る。
要 す る に、 犯 罪 被 害 者 化 に 関 す る機 会 理 論 は、 被 害者 と い う個 人 の レベ ル に力 点 を お く ライ
フ ス タィ ル理 論 と、 よ り広 い射 程 を持 つ ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ ー理 論 を 出発 点 とす る理
論 な の で あ る。
この二 っ の理 論 は、 被 害 者 学 の発 展 に大 い に貢 献 した。 そ の 理 論 的 功 績 は、 以 下 の二 点 に要
約 す る こ とが で き るよ うに思 わ れ る。
第 一 は、 伝 統 的 な犯 罪 理 論 の一 面 的 な 見方 を打 破 した 点 で あ る。 す なわ ち、 当 然 の こ と なが
ら、 略奪 的犯 罪 は、 犯 罪 者 だ けで な く被 害者 を もそ の 構 成 要 素 とす る。 しか し、 伝 統 的 な犯 罪
学 理 論 は、 も っぱ ら、 犯 罪 者 に焦 点 を 当 て、 人 が どの よ う に犯 罪 へ と動 機 づ け られ るか を解 明
しよ う と試 み た。 両 理 論 は、 この一 面 的 な見 方 を 打 破 し、 被 害 者 研 究 の重 要 性 を明 らか に した
の で あ る。
15
増本:犯 罪被害者化 に関す る機会理論 の展開 と課題
第 二 に、 両 理 論 は、 従 来 の被 害 者 学 の欠 点 を克 服 した。 す な わ ち、 ヘ ンテ ィ ッ ヒに代 表 され
る初 期 の理 論 、 っ ま り、 被 害 者 類 型 論 は、 直感 的 で あ り9)、か っ、 被 害 者 バ ッ シ ン グ的 傾 向 を
持 っ 理 論 で あ った10)。ま た、70年 代80年 代 の被 害 者 運 動 を支 え た被 害 者 原 因論 は、 被 害 者 が 犯
罪 に遭 遇 した の は、 単 に、 そ の人 が ア ン ラ ッキ ー で あ った か らに す ぎな い と し、 被 害 者 バ ッ シ
ン グ的色 彩 を払 拭 した。 しか し、 そ れ は、 結 果 的 に、 被 害 者 の実 像 を看 過 す る こ とに な った11)。
これ に た い し、 両 理 論 は、 被 害 調 査 を は じめ とす る現 実 の デ ー タに も とづ き、 被 害者 の実 像 を
中立 的 に描 こ う と した の で あ る。
も っ と も、 両 理 論 が、 被 害 者 化 の プ ロセ スの解 明 に成 功 した と は言 いが た く、 次 の よ うな 問
題 点 が存 在 して い る と思 わ れ る。
第 一 に、 ライ フス タイ ル や ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィ ー と い う概 念 そ れ 自体 が 漠 然 と して
い るた め に、 「ラ イ フ ス タ イ ルや ル ー テ ィ ンア ク テ ィヴ ィテ ィー が被 害 者 化 の リス ク を 決 定 づ
け る」 と述 べ るだ け で は、 実 は、 何 も明 らか にな って いな いの で は な いか?
第二 に、 被 害 者 化 の リス クを決 定 づ け る こ とが 実 証 され て い る因 子 は何 か?
第 三 に、 ライ フ ス タイ ル や ル ー テ ィ ンア ク テ ィヴ ィテ ィー概 念 に含 まれ ない因子 で あ って も、
被 害 者化 の リス クを決 定 づ け る こ とが 実 証 され た因 子 は存 在 しな い のか?
以 下 で は、 これ ら三 っ の 問 題 点 にそ って 論 述 を進 め る こと にす る。
IV媒
介概念
被 害 者 学 の 犯 罪 機 会 の 理 論 の出 発 点 は、 ライ フ ス タイ ル や ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィー が
被 害 者 化 に 影 響 を お よ ぼ す と い う も の で あ る 。 し か し な が ら、 こ の こ と は 、 被 害 者 化 の プ ロ セ
ス を 必 ず し も 具 体 的 に 明 らか に して い る わ け で は な い 。
こ の 点 を 改 善 す る た め に 、 実 に 様 々 な 媒 介 概 念(MediatingConcepts)や
Concepts)が
下 位 概 念(Sub
考 案 さ れ 、 実 証 的 検 討 が 試 み ら れ た12)。そ の 中 に あ っ て 、MietheandMeierの
媒 介 概 念 は と り わ け 有 益 と思 わ れ る13)14)。彼 ら に よ れ ば 、 ラ イ フ ス タ イ ル や ル ー テ ィ ンア ク テ ィ
ヴ ィ テ ィ ー 概 念 は 、 以 下 の 四 つ の 下 位 概 念 に 分 け る こ と が で き る と さ れ る15)。
囮Proximity(近
Proximityと
接 性)
は、 被 害 者 の 居 住 地 域 と 犯 罪 多 発 地 域(潜
あ る。 す な わ ち 、Proximityが
在 的 犯 罪 者)と
の物理 的 な距離 で
増 大 す れ ばす る ほ ど、 犯 罪 者 と 出 会 う頻 度 が 増 大 し、 そ の 結
果 、 被 害 者 化 の リ ス ク が 高 ま る と さ れ る の で あ る。
こ の 近 接 性 は 、 た と え ば 、 ① 都 心 部 に 居 住 し て い る か そ れ と も 郊 外 に 居 住 して い る か 、 ② 当
該 地 域 の 社 会 経 済 的 特 性(た
と え ば 、 収 入 の レベ ル ・失 業 率 ・人 種 構 成)、 ③ 自 分 の 居 住 地 域
を 危 険 と感 じ て い る か ど う か 、 ④ 周 辺 地 域 の 犯 罪 発 生 率 、 な ど に よ っ て 測 定 さ れ て い る 。
C]Exposure(接
Exposureは
角虫」
性)
、 犯 罪 に 対 す る 可 視 性(Visibility)や
接 近 可 能 性(Accessibility)で
あ る。 た
とえ ば、 出入 口 の多 い ビ ル や 住 居 、 あ る い は、 角 地 に あ る ビル や 住 居 は、 侵 入 盗 に対 す る
Exposureが
高 い と さ れ る 。 ま た 、 ラ イ フ ス タ イ ル や ル ー テ ィ ン ア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ0の
して 、 危 険 な 場 所 に 出 入 り す る 人 は 、 盗 罪 や 暴 行 ・傷 害 罪 に 対 す るExposureが
一 環 と
高 い と され る
の で あ る。
こ の 接 触 性 は、 た と え ば 、 ① 仕 事 を 持 っ て い る か そ う で な い か(有
時 間 が 多 い の でExposureが
職 者 の ほ うが 外 で す ごす
高 い と さ れ る)、 ② 夜 間 の 外 出 頻 度 、 ③ 家 を 留 守 に す る 平 均 時 間 、
④ 家 で す ご す 時 間 の 割 合 、 ⑤ テ レ ビ を 見 る 総 時 間 、 ⑥ 公 共 交 通 機 関 を 利 用 す る 労 働 者 の 割 合 、'
奈
16
良
大
学
紀
要
第27号
⑦ 娯 楽 施 設 の 数 、 ⑧ 女 性 の 就 業 率 、 ⑨ 外 食 費 、 な ど に よ っ て 測 定 さ れ て い る。
C]Attractiveness(好
Attractivenessは
食
耳性)
、 標 的 の 経 済 的価 値 や 象 徴 的 価 値 で あ る 。 さ ら に、 サ イ ズ や 持 ち運 び し
易 い か ど うか も、 好 餌 性 に 関 連 づ け ら れ る 。
こ の 好 餌 性 は 、 た と え ば 、① 高 価 で 携 行 可 能 な 品 物(た
バ イ ク)を
と え ば 、 ビ デ オ カ セ ッ トレ コ ー ダ ー 、
所 有 し て い る か ど うか 、 ② 現 金 や 宝 石 を 持 ち 歩 い て い る か ど う か 、 ③ 収 入 や 社 会 階
層 、 な ど に よ って測 定 可 能 と され て い る。
囚Guardianships(防
Guardianshipsと
性)を
備 性)
は、 人 に よ る 防 犯 効 果(社
会 的 防 備 性)と
物 に よ る 防 犯 効 果(物
理的防備
意 味 す る 。 前 者 は 、 警 察 な ど に よ る 公 式 の 監 視 活 動 だ け で な く、 家 族 や 近 隣 住 民 同 士 の
非 公 式 の 近 隣 監 視(NeiborhoodWatch)も
含 ん で い る 。 後 者 に 属 す る の は 、 警 報 装 置 ・鍵 ・
番 犬 ・武 器 な ど で あ る 。
この 防 備 性 は、 た と え ば、 ① 武 器 あ る い は警 報 装 置 を持 って い る か、 ② 一 人 で住 ん で い る か
ど うか 、 な ど に よ って 測 定 され て い る。
MietheandMeierの
こ れ ら四 っ の 媒 介 概 念 に よ っ て 、 ラ イ フ ス タ イ ル/ル
ー テ ィ ンア ク テ ィ
ヴ ィ テ ィ ー と 被 害 者 化 の リ ス ク と の 関 連 性 が よ り明 確 に な っ た と 思 わ れ る 。
そ こ で 、 次 の 課 題 は 、 ど の よ う な ラ イ フ ス タ イ ル/ル
者 化 の リ ス ク を 増 大/減
ー テ ィ ンア ク テ ィヴ ィテ ィーが 、 被 害
少 させ るか を 経 験 的 に検 証 す る こ とで あ る。
V被
害 者 化 を 決 定 づ け る 因 子1
一 ラ イ フ ス タ イル 概 念 に含 まれ る因 子 一
前章 にお いて 、 被 害 者 化 の リス ク に関 連 す る可 能 性 の あ る具 体 的 な ライ フス タイル/ル ーテ ィ
ンア クテ ィ ヴ ィ テ ィ ーが 明 らか にな った。 そ の こ と に よ り、 被 害 者 化 に影 響 をお よ ぼす 具 体 的
な 因子 を 実証 的 に検討 す る こ とが 可 能 とな った。
しか しな が ら、 被 害者 化 の リス ク との 関 連 性 が 経験 的 デ ー タ に よ って 肯 定 され た因 子 は、 必
ず しも多 くな い。
す な わ ち、 た とえ ば、 外 で す ごす 時 間 が 多 くな れ ば な る ほ ど リス クが 増 大 す るか につ いて 、
これ を肯 定 す る リサ ー チ と否 定 す る リサ ーチ が 併 存 して い る。
も っ と も、 若 干 の 因子 にっ いて は、 多 くの リサ ーチ が、 被 害 者 化 の リス ク と の関 連 性 を肯 定
して い る。
(1)都
心 部 に居 住 して い るな ど(近 接 性 に 関連 づ け られ る因子)
① 都 心 部 に居 住 して い る、 ② 自分 の居 住 して い る周 辺 地 域 を危 険 と感 じて い る、 ③ 都 心 部 の
低 所 得 地 域 に居 住 して い る、 ④ 犯 罪 発 生 率 の高 い地 域 に居 住 して い るな どの 因 子 は、 被 害 者 化
の リス クを高 め る こ とが実 証 され て い る。
す で に 明 らか な よ うに、 これ らの 因子 は、 す べ て近 接 性 に 関連 づ け られ る因子 で あ る。 した
が って、 犯 罪 者 との物 理 的 な距 離 を増 大/減 少 させ るよ うな 因子(あ
るい はそ の よ うな ラ イ フ
ス タイ ル/ル ー テ ィ ンア クテ ィ ヴ ィテ ィー)は 、 一 般 に、 被 害 者 化 の リス クを増 大/減 少 させ
る こ とが実 証 され て い るの で あ る。
17
増本:犯 罪被 害者化に関す る機会理論の展開 と課題
(2)逸
脱行動
犯 罪 行 動 な どの 逸 脱 行 動 が 被 害 者 化 の リス ク を高 め る こと は、 副 次 文 化 論 の観 点 か ら も説 明
す る こ とが で き る。 す な わ ち 、 た とえ ば 、 暴 力 な ど の逸 脱 的 手 段 に よ って 問題解 決 す る ことが、
副 次 文 化 に よ って 受 け いれ られ て い る場 合 に は、 そ の副 次 文 化 に属 す る者 は、 犯 罪 者 に な る確
率 が 高 いだ けで な く、 被 害 者 にな る確 率 も高 い と さ れ る の で あ る16)。
しか し、 等 価 グル ー プ理 論 と噂 ば れ る理 論 は、 犯 罪 行 動 を は じめ とす る逸 脱 行 動 が ライ フス
タ イ ルや ル ー テ ィ ンア ク テ ィヴ ィテ ィー の一 形 態 で あ る と した うえ で、 現 実 のデ ー タを根 拠 に、
逸 脱 行 動 が 被 害 者 化 の リス ク に影 響 をお よ ぼす こ とを実 証 して い る。
っ ま り、 ① 逸 脱 行 動 は、 犯 罪 者 や 犯 罪 的 出来 事 と接 触 す る機 会 を増 大 させ る、 ② 逸 脱 行 動 を
行 う者 は、 た と え 自分 が 犯 罪 の被 害 に遭 った と して も、 自分 の犯 罪 行 動 が警 察 に知 られ る こ と
を恐 れ て、 ま た、 そ もそ も警 察 を信 用 して い な い た め に、 被 害 を警 察 に通 報 す る確 率 が 低 いた
め、 恰 好 の標 的 と な る、 ③ 逸 脱 行 為 を行 う者 は、 因習 的 な社 会 的環 境 を 回 避iするた め に、 監 視
の 目 が行 き届 か な くな る。 した が って、 逸 脱 行 動 は、 接 触 性 ・好 餌 性 ・防 備 性 と い う三 っ の 観
点 か ら、 被 害 者 化 の リス ク と関 連 す る と され るの で あ る17)。
さ らに、 この等 価 グル ー プ理 論 は、 「犯 罪 者 と被 害 者 を異 な る カ テ ゴ リー に 分 け る こ と は ナ
ンセ ンス で あ り、 犯 罪 者 とな り得 る環 境 はす べ て の者 の 人 生 にお いて 幾 度 か は存 在 す る」 と し
て い る18)。これ に よ り、 犯 罪 者 研 究 と被 害 者 研 究 は、 連 携 ・統 合 され る可 能 性 が あ る と思 わ れ
る。
(3)被
害 者 化 経 験(累 被 害 者 化)
過 去 に犯 罪 の被 害 に遭 った こ とが あ る と い う事 実 が 、 被 害 者 化 の リス ク を高 め る こ とは、 こ
の20年 間 の様 々 な研 究 に よ って一 貫 して 実 証 され て い る。 この累 被 害 者 化 に関 す る事 実 は、 た
とえ ば、 家庭 内暴 力 な ど につ い て は、 常 識 的 に承 認 さ れ るで あ ろ う。 なぜ な らば、 被 害 者 が そ
の 家 庭 内 に と ど ま るか ぎ り、 被 害 者 化 を もた ら した状 況 は改 善 さ れ な い ま ま だ か らで あ る。
しか し、 た とえ ば、 強 盗 や 性 的 暴 行 にっ いて は事 情 は異 な るはず で あ る。 そ れ に もか か わ ら
ず 、 強 盗 の 被 害 に遭 った もの は、 そ うで な い者 と比 較 して約9倍
の確 率 で、(再 び)強
盗 の被
害 に遭 い、 性 的 暴 行 の 被 害 に遭 っ た者 は、 そ うで な い者 と比 較 して約35倍 の確 率 で 、(再 び)
性 的 暴 行 の被 害 を 受 け る と報 告 す る研 究 も存 在 して い る19)。
この高 い累 被 害 者 化 率 の原 因 は、 次 の二 つ の点 に お い て、 好 餌 性 に 関連 づ け られ て い る。 す
な わ ち、 ① た とえ ば、 犯 罪 の実 行 が 容 易 で あ る、 ま た は、 逮 捕 な どの危 険 が 少 な い、 も しくは、
よ り多 くの利 益 を獲 得 す る ことが で きる場 合 、 当該 被 害 者 は、 累 被 害者 化 され 得 る。 この よ う
な被 害 者 は、 同 じ犯 人 に よ って だ け で な く、 別 の新 た な犯 罪 者 に よ って も再 度 被 害 者 化 され 得
る、 ② 犯 罪 者 は、 一 度 犯 罪 を行 った こ とに よ って、 そ の被 害 者 につ いて の 情 報 を持 って い る た
め に、 も う一 度 同 じ被 害 者 を狙 う。 この場 合 、 累 被 害 者 化 は、 同 じ犯 人 に よ って もた らされ る
の で あ る20)。
この累 被 害 者 化 は、 防 犯 とい う観 点 か ら、 極 め て 重 要 な 意 味 を 持 って い る。 す な わ ち、 累 被
害者 化 が非 常 に高 率 で あ る こ とか らす れ ば、 犯 罪 予 防 の た め に は、 防 犯 対 策 を、 犯 罪 の被 害 に
遭 った もの に集 中 的 に注 ぐ こ とが提 案 され る。 さ らに、 犯 罪 の被 害 に遭 った者 は、 防 犯 対 策 に
非 常 に積 極 的 で あ る こ とを考 慮 す る と、 彼 らに対 す る防 犯 対 策 は、 極 め て効 果 的 で あ る と言 え
よ う。
こ こで 考 慮 に入 れ な けれ ば な らな いの が 、 転 移(Displacement)の
問 題 で あ る。 す な わ ち・
累 被 害 者 が 、 防 犯対 策 を講 じれ ば 、 犯 罪 者 は、 別 の新 た な被 害 者 を捜 し求 め るため、結果 的 に・
奈
18
良
大
学
紀
要
第27号
犯 罪 は全 体 と して は減 少 しな い ので は な いか と い う問 題 で あ る。 これ につ い て は、 そ の可 能 性
は比較 的低 い とい う研 究 も存 在 す る21)。こ の指 摘 に従 う場 合 に は、 累 被 害 者 に焦 点 を 絞 った 犯
罪 対 策 は、 よ り一 層 効 果 的 な も の に な る と思 わ れ る。
VI被
害 者 化 を 決 定 づ け る 因 子2
一 ライ フス タイ ル概 念 に含 ま れ な い 因 子 一
前 章 にお いて 列 挙 した因 子 は、 いず れ も ラ イ フ ス タ イ ル概 念 に含 ま れ る因子 で あ る。 しか し、
い くっ か の リサ ー チ は、 ラ イ フ ス タ イ ル概 念 に包 摂 され な い因 子 で あ って も、 被 害 者 化 の リス
ク に影 響 を お よぼ す 場 合 が あ る こ とを 指 摘 して い る。
(1)個
人属性的因子
個 人 属 性 的 因 子 に属 す る もの と して 、 性 別 ・年 齢 ・身 体 的 特 徴 ・精 神 的心 理 的特 徴 ・性 的 嗜
好 な ど が考 え られ る。FinkelhorandAsdigianに
よ れ ば、 こ の 個 人 属 性 的 因 子 は 、 さ ら に三
つ に分 類 す る こ とが で き る と され る22)。
団
脆 弱(TaregtVulnerability)的
因子
脆 弱 的 因 子 と は、 犯 罪(被 害 者 化)に 抵 抗 す る能 力 に関 連 す る属 性 で あ る。 た とえ ば、 標 準
以 下 の 身 体(身 長 体 重)・ 身 体 的 劣 性 ・肥 満 ・心 理 的不 安 ・学 業 不 振 な どが 、 脆 弱 的 因 子 に属
す る と され るの で あ る。
2欲
求 充 足(TargetGratifiability)的
因子
犯 罪 者 が 欲 して い る特 質 を被 害者 が 持 って い るた め に、 それ が 、 被 害 者 化 の リス ク を決 定 づ
け る場 合 が あ る。 そ の典 型 例 が性 別 で あ る。 た とえ ば 、 性 的 暴 行 の被 害 者 化 の ケ ー ス で は、 女
性 と い う性 別 は、 被 害 者 化 に決 定 的 な影 響 を お よぼ す 。 他 方 、 少 年 の間 で の暴 行 傷 害 の被 害 者
化 の ケ ー スで は、 男 性 とい う性 別 が重 要 な 役割 を 演 じる、 なぜ な らば、 ヒエ ラル キ ー の確 立 や
支配 を示 す た め に暴 力 が使 用 され る こ とが 多 い か らで あ る。
團
敵 対(TargetAntagonism)的
因子
敵 対 的 因子 と は、 犯 罪 者 の怒 り ・妬 み ・破 壊 的 衝 動 を 生 じさせ る属 性 で あ る。 た と え ば、 親
の子 供 に対 す る暴 行 の ケ ー ス で は、 継 親 関係 とい う敵 対 的 因 子 は、 被 害 者 化 の リス ク に重 大 な
影 響 を お よ ぼ す。 さ らに、 憎 悪 に も とつ く犯 罪 で は、 人 種 ・民 族 ・宗 教 ・性 的 嗜 好 が 、 被 害 者
化 を決 定 づ け るの で あ る23)。
これ らの 因子 は、 い ず れ も、 ライ フス タイ ル だ けで な くル ー テ ィ ンア ク テ ィヴ ィテ ィー概 念
に も包 摂 され 得 な い 因 子 で あ る。 しか し、FinkelhorandAsdigianは
、 これ ら の 因 子 が 、 被
害 者 化 の リス クに影 響 を お よ ぼ す こ とを実 証 して い る。 す な わ ち、 彼 らの リサ ー チ に よ れ ば、
若 年 者 が家 族 以 外 の人 か ら暴 行 を受 け るケ ー ス で は、 心 理 的 不 安 定 ・学 業 不 振 ・年 齢(以 上 、
脆 弱 的 因子)・ 性 別(充 足 的 因 子)が 、 被 害 者 化 を決 定 づ け る とさ れ る。 ま た、 若 年 者 が 受 け
る性 的暴 行 の ケ ー ス で は、 心 理 的不 安 定 ・性 別 ・年 齢(こ
こで は年 齢 は充 足 的 因 子 と み な され
る)が 、 さ らに は、 親 か ら受 け る暴 行 の ケ ー スで は、 身 体 的 劣 性 ・継 親 関 係 ・危 険 な 行 動24)
(以 上 、 敵 対 的 因 子)が 、 被 害 者 化 の リス ク に影 響 を お よ ぼす の で あ る25)。
な る ほ ど、FinkelhorandAsdigianの
研 究 が 、 若 年 者 の被 害 者 化 に 限 定 さ れ て い る こ と、
ま た、 この種 の リサ ー チ が緒 に つ い た ば か りで あ る こ とな どか ら考 え る と、 個 人 属 性 的 因 子 と
被 害 者 化 との関 連 性 は未 だ充 分 実 証 さ れ て い な い と言 え よ う。 しか し、 この 種 の 因 子 が 被 害 者
化 に影 響 を お よ ぼす こ とを否 定 す る こ とは で きな い よ うに思 わ れ る。
19
増本:犯 罪被害者化 に関す る機会理論 の展 開 と課題
(2)コ
ミュニ ュテ ィー に関連 す る因子
犯 罪 被 害 者 化 に 関 す る研 究 の 多 くの も の は、 こ れ ま で 述 べ て き た 個 人 レ ベ ル の 諸 因 子 に 関 す
る も の で あ る。 しか し、 い くっ か の 研 究 は、 コ ミ ュ ニ ュ テ ィ ー レ ベ ル の 因 子 に も 着 目 し て い
る26)。
こ の 種 の 研 究 は 、 デ ー タ 不 足 と い う 問 題 も あ り 、 未 だ 極 め て 不 十 分 な も の に と ど ま っ て い る。
しか し、SampsonandWooldredgeの
研 究 の よ う に 一 定 の 評 価 を 受 け て い る も の も存 在 す る 。
彼 ら に よ れ ば 、 被 害 者 化 に 影 響 す る の は 個 人 レ ベ ル の 因 子 だ け は な い と さ れ る。 っ ま り、 コ ミ ュ
ニ ュ テ ィ ー レベ ル の 因 子 も被 害 者 化 に 影 響 を お よ ぼ す の で あ る か ら、 被 害 者 化 の リ サ ー チ は 、
多 元 的 レ ベ ル(Multilebel)の
もので な けれ ば な らな い と さ れ る の で あ る。 彼 らは、 こ の 多 元
的 レ ベ ル の 被 害 者 化 機 会 理 論(MultilevelOpportunityTheoryofVictimization)に
き 、 以 下 の こ と を 実 証 し た 。 た と え ば 、 ①Burglary(住
居 侵 入 盗)の
もとづ
被 害 者 化 は、 コ ミュニ ュ
テ ィ ー に お け る 単 身 世 帯 ・片 親 世 帯 ・失 業 者 ・集 合 住 宅 の 割 合 に 正 比 例 す る 、 ②Personal
Theft(人
か ら財 物 を 盗 取 す る 犯 罪 、 た と え ば 、 強 盗 ・ス リ)は 、 コ ミ ュ ニ ュ テ ィ ー の 社 会 的
結 合 力(こ
れ は 、 居 住 年 数 や 、 近 隣 地 域 に 友 人 が い る か な ど に よ っ て 測 定 さ れ る)に
る、 ③PersonalTheftは
、 コ ミ ュ ニ ュ テ ィ ー の"StreetActivity"(こ
で 外 出 す る 割 合 に よ っ て 測 定 さ れ る)に
正 比 例 す る、 な ど で あ る。
と こ ろ で 、 環 境 犯 罪 学(EnvironmenalCriminology)/状
PreventionofCrime)は
反比例 す
れ は、 住 民 が 夜 間 徒 歩
況 的 犯 罪 予 防(Situational
、 ライ フス タイ ル理 論 や ル ー テ ィ ンア ク テ ィ ヴ ィ テ ィ ー 理 論 を 基 礎
と し て い る と言 わ れ る。 し た が っ て 、 そ も そ も、 機 会 理 論 は、 環 境 犯 罪 学/状
況的犯罪予防 と
同 じ理 論 的 基 盤 に 立 っ て い る。
そ れ に と ど ま ら ず 、 既 述 の よ う に 、 犯 罪 被 害 者 化 に 関 す る機 会 理 論 は 、 住 居 や ビ ル の 構 造 ・
警 察 に よ る 監 視 活 動 ・NeiborhoodWatchな
ど を 考 慮 し、 ま た 、 多 元 的 レ ベ ル の 機 会 理 論 は コ
ミ ュ ニ ュ テ ィ ー レベ ル の 因 子 を も 考 慮 に 入 れ て い る。 こ の こ と か ら考 え る と 、 機 会 理 論 は 、 環
境 犯 罪 学/状
況 的 犯 罪 予 防 と0層
の 親 和 性 を 持 って い る よ う に思 われ る ので あ る。
皿
結
語
以 上 の こ とか ら明 らか な よ う に、 現 在 の機 会 理 論 の理 論 水 準 は、 ライ フス タイ ル理 論 や ル ー
テ ィ ンア ク テ ィヴ ィテ ィー理 論 を越 えて い る と言 え る。
第 一 に、 それ は、 近 接 性 ・接 触 性 ・好 餌 性 ・防 備 性 な ど の媒 介 概 念 を用 い る こ とに よ って・
具 体 的 な因 子 を実 証 的 に同 定 しっ っ 、 被 害 者 化 の プ ロ セ ス を よ り明 らか に した。
第 二 に、 ライ フ ス タ イ ル や ル ー テ ィ ンア ク テ ィヴ ィテ ィー に含 ま れ る因子 だ け で な く、 個 人
の属 性 に関 連 す る因 子 や、 コ ミュ ニ ュ テ ィー に関 連 す る因子 の実 証 的解 明 に も力 を注 いで い る。
第 三 に、 犯 罪 者 研 究 ・環 境 犯 罪 学/状 況 的犯 罪 予 防 と被 害 者 研 究 との連 携 や統 合 の 可 能 性 を
開 い た。 と ころ で、 直 接 的接 触 を伴 う犯 罪 の被 害 者 化 は、 あ る場 面 に お い て 犯 罪 者 と被 害 者
(標 的)が 遭 遇 す る こ と に よ って 発 生 す る 犯 罪 で あ る。 した が って 、 この 種 の 被 害 者 化 現 象
(犯 罪 現 象)を 解 明 ・予 防 す る た あ に は、 犯 罪 者 ・被 害 者 ・(犯罪 実 行 の)環 境/状 況 の 三 っ の
要 素 に着 目 しな け れ ば な らな い で あ ろ う。 した が って、 犯 罪 者 研 究 ・環 境/状 況 の 研 究 ・被 害
者研 究 の三 っ は、 究 極 的 に は統 合 な い し連 携 され な けれ ば な らな いで あ ろ う。 そ して 、 機 会 理
論 は、 そ の方 向性 を示 唆 して い るよ うに思 わ れ るの で あ る。
最後 に、 最 近 め研 究 は、 略奪 的 犯 罪 以 外 の 犯 罪 へ の 応 用 の 可 能 性 も示 唆 して い る。 す なわ ち、
機 会 理論 は、 三 っ の 要素 の 収 敏 に 関 す る理 論 で あ るか ら、 そ れ は、 三 っ の要 素 の うち の い くっ
奈 良
20
大 学
紀
要
第27号
か の 要 素 の 収 敏 に よ っ て 発 生 す る 犯 罪 、 つ ま り、 ① 賭 博 や 売 春 の よ う な 相 利 的 犯 罪
(MutualisticOffenses)、
② けん か の よ う な 対 向 的 犯 罪(CompetitiveViolations)、
使 用 や 自殺 な どの個 人 的犯 罪(lndividualisticOffenses)の
③薬 物
す べ て に応 用 可 能 で あ る と さ れ
る27)。
以 上 の よ うな進 歩 に もか か わ らず、 機 会理 論 は、 被 害 者 化 の リス ク を決 定 づ け る具 体 的 因 子
の実 証 的 同定 に成 功 した と は言 い が た い。 そ の 最 大 の 原 因 は、 デ ー タ の収 集 ・分 析 で あ る と思
わ れ る。 な る ほ ど、 ライ フ ス タイ ル理 論 や ル ー テ ィ ンア ク テ ィ ヴ ィテ ィー理 論 の登 場 以 降 、 被
害調 査 や デ ー タ分 析 は長 足 の進 歩 を遂 げ た。 しか し、 未 だ この 問 題 は完 全 に解 決 さ れ た と は言
え な い状 態 に あ る。
犯 罪 被 害 者 化 に 関 す る機 会 理 論 の 直面 して い る課題 は、 一 層 の デ ー タ収 集 と よ り精 確 な分 析
とい う困 難 な 問題 を解 決 す る こ と に よ って、 被 害者 化 の リス ク に影 響 をお よ ぼす 具 体 的 な因 子
を実 証 的 に 同定 し、 よ り洗 練 され た モ デ ル を構 築 す る こ とで あ る。 そ して 、 さ らに、 犯 罪 者 研
究 や環 境 犯 罪 学/状 況 的犯 罪 予 防 と連 携 ・統 合 す る こ と に よ って 、 被 害 者 化 的 出 来事(Event)
/犯 罪 的 出来 事 の解 明 ・予 防 を実 現 す る こ とな の で あ る。
注
1)両
理 論 は 、 合 理 的 選 択 を 行 う犯 罪 者 を 前 提 と し て お り、 し た が っ て 、 合 理 的 選 択 理 論 を 含 あ て 、 機 会
理 論 と 呼 ば れ る 。 も っ と も、 機 会 理 論 と い う名 称 は 、 統 一 的 に 使 用 さ れ て い る わ け で は な く、 状 況 モ デ
ル(SituationalModelsofCrime)あ
る い は 活 動 理 論(ActivityTheory)と
呼 ば れ る こ と もあ る 、
Davis,R.C.,Taylor,B.G.,andTitus,R.M.1997."VictimsasAgents",inDavis,R.C.,
Lurigio,A.J.andSkogan,W.G.(eds.).VictimsofCrimesecondedition.SAGEPublications.p.170.
2)両
理 論 に 関 す る 比 較 的 最 近 の 研 究 と し て 、 藤 本 哲 也 ・朴 元 奎 、 「ア メ リ カ 合 衆 国 に お け る 被 害 者 学 の
生 成 と発 展 」、 日本 被 害 者 学 会
「被 害 者 学 研 究 」、1994年
第3号
、 成 文 堂 、50∼54頁
、 朴 元 奎 、 「被 害 者
学 研 究 に お け る 日米 比 較 一 日本 の 被 害 者 学 者 は ア メ リカ 合 衆 国 か ら何 を 学 ぶ べ き か?一
学会
「被 害 者 学 研 究 』、1996年
雄 ・瀬 川 晃 編
3)78年
第6号
「刑 事 政 策 』、1998年
、 成 文 堂 、34∼36頁
」、 日 本 被 害 者
、 瀬 川 晃 、 「刑 事 政 策 と 犯 罪 被 害 者J、
加藤 久
、 現 代 青 林 講 義 、41∼42頁.
の オ リ ジ ナ ル の ラ イ フ ス タ イ ル モ デ ル は 、87年
に ガ ロ フ ァ ロに よ って修 正 を施 され る こ とにな る。
本 文 は 、 修 正 後 の モ デ ル も 視 野 に い れ た も の で あ る 。78年
の オ リ ジ ナ ル の モ デ ル に っ い て は、
Hindelang,M.J.,Gottfredson,M.R.,andGarofalo,J.1978.VictimsofPersonalCrime:An
EmpiricalFoundationforaTheoryofPersonalVictimization.BallingerPublishing
Company.こ
れ を 補 充 す る も の と し て 、Gottfredson,M.R.1981."OntheEtiologyofCriminal
Victimization"TheJournalofCriminalLawandCriminologyVo1.72,No.2.pp.714‐726.
さ ら に 、Gottfredson,M.R.1984.VictimsofCrime:TheDimensionsofRisk.AHomeOffice
ResearchandPlanningUnitReportは
、82年
に イ ング ラ ン ドと ウエ ー ル ズ で行 わ れ た調 査
(BritishCrimeSurvey)に
も と づ き 、 ラ イ フ ス タ イ ル 理 論 を 検 証 した 。 ガ ロ フ ァ ロ の 改 訂 版 モ デ ル に
っ い て は 、Garofalo,J.1987
."ReassessingtheLifestyleModelofCriminalVictimization",in
Gottfredson,M.R.andHirsh,T.(eds.).PositiveCriminology.SagePublications.pp.23‐
42.な
お 、 本 文 は(図
も含 め て)極
め て概 略 的 な もの で あ る。 ラ イ フ ス タ イ ル理 論 の詳 細 につ い て は 、
拙 稿 、 「ラ イ フ ス タ イ ル 理 論 の 現 状 と 展 望 」、 日 本 被 害 者 学 会
17∼29頁
を 参 照 さ れ た い.
「被 害 者 学 研 究 』、1998年
第8号
、 成文 堂、
増本
犯罪被害者化 に関す る機会理論 の展開 と課題
21
4)Cohen,L.E.andFelson,M.1979."SocialChangeandCrimeRateTrends:ARoutine
ActivityApproach"AmericanSociologicalReviewVo1.44.pp.588-608.
5)こ
の 概 略 図 に つ い て は 、Bursik,R.J.,Jr.andGrasmick,H.G.1993.Neighborhoodsand
Crime:TheDimensionsofEffectiveCornmunityControl.p.72を
参 考 に し た.
6)Bursik,R.J.,Jr.andGrasmick,H.G.,lbid.,p.64.
7)藤
本 哲 也
・朴 元 奎 、 前 掲 、53頁.
8)瀬
川 晃 、 前 掲 、42頁.
9)Hindelang,M.J.1976.CriminalVictimizationinEightAmericanCities:ADescriptive
AnalysisofCommonTheftandAssault.BallingPublishingCompany.p.12.
10)瀬
川 晃 、 前 掲 、43頁.
11)Davis,R.C.,Taylor,B.G.,andTitus,R.M.,op.cit.,pp.167-169.
12)た
と え ば 、Cohen,L.E.,Kluegel,J.R.,andLand,K.C.1981."Sociallnequalityand
PredatoryCriminalVictimization:AnExpositionandTestofaFormalTheory"American
SociologicalReviewVol.46.pp.507-509は
Exposure(接
、
触 性)とGuardianships(防
(近 接 性)・TargetAttractiveness(好
の 定 義 的 性 質)と
ラ イ フ ス タ イ ル 論 者 の
備 性)か
ら構 成 さ れ
ラ イ
フ ス タ イ ル 概 念 が 、
る と し っ っ 、
さ ら に 、Proximity
餌 性)・DefinitionalPropertiesofSpecificCrimes(犯
い う合 計 五 っ の 媒 介 概 念 を 設 定
罪
し て い る 。Hough,M.1987."Offenders'Choiceof
Target:FindingsfromVictimSurveys"JournalofQuantitativeCriminologyVol.3,No.4.
pp.359-360は
、Proximity(近
な 監 視 の 不 存 在)と
接 性)・Reward(報
い う三 っ の 媒 介 概 念 を 定 立
酬)・AbsenceofCapableGuardians(有
し た 。
さ
効
ら に 、Miethe,T.D.,Stafford,M.C.,and
Sloane,D.1990."LifestyleChangesandRisksofCriminalVictimization"Journalof
QuantitativeCriminologyvol.6,No.4.PP.359-360は
深 い(Active)ラ
イ フ ス タ イ ル 」 と
、 危 険 度 を 減 少 さ せ る と 考 え ら れ る
「不 用 心 な(Passive)ラ
イ フ ス タ イ ル 」
「用 心
と い う媒 介 概 念 を 使 用
し
て い る.
13)Lynch,J.P.1987."RoutineActivityandVictimizationatWork"JournalofQuantitative
CriminologyVol.3,No.4.pp.287-288;Bursik,R.J.,Jr.andGrasmick,H.G.,op.cit.,pp.70‐
72も
、MietheandMeierの
媒 介 概 念 を 採 用 し て い る.
14)Finkelhor,D.andAsdigian,N.L.1996."RiskFactorsforYouthVictimization:Beyonda
Lifestyles/RoutineActivitiesTheoryApproach"ViolenceandVictimsVol.11,No.1.p.4は
MietheandMeierの
媒 介 概 念 に 関 し 、 「男 性
・黒 人
・独 身 者 の グ ル ー フ.が な ぜ 高 い 犯 罪 被 害 者 化 率 を
持 っ か 、 そ し て 、 犯 罪 被 害 者 化 率 が な ぜ 時 と と も に 上 昇
の 概 念 が 有 益 で あ る と い う こ と が 判 明 し た 」
と記
、
し た の か を 経 験 的 に 説 明 す る に 際 し て 、
し て い る.
15)Miethe,T.D.andMeier,R.F.1994.CrimeandItsSocialContext:TowardanIntegrated
TheoryofOffenders,VictimsandSituations.StateUniversityofNewYorkPress.pp.46‐
56;Miethe,T.D.andMeier,R.F.1990."Opportunity,Choice,andCriminalVictimization:A
TestofaTheoreticalModel"JournalofResearchinCrimeand-DelinquencyVo1.27,No.3.
pp.243-266.
16)Sampson,R.J.andLauritsen,J.L.1990."DeviantLifestyles,ProximitytoCrime,andthe
Offender-VictimLinkinPersonalViolence"JournalofResearchinCrimeandDelinquency
Vo!.27,No.2.p.111.
17)等
価 グ ル ー プ 理 論 と し て 、 た と え ば 、Jensen,G.F.andBrownfield,D.1986."Gender,Lifestyles,
andVictimization:BeyondRoutineActivityTheory"ViolenceandVictims,Vol.1,No.2.
こ れ ら
奈
22
良
大
学
紀
要
第27号
pp.85-99;Sampson,R.J.,andLauritsen,J.L.,Ibid.;Riley,D.1987."TimeandCrime:The
LinkbetweenTeenagerLifestyleandDelinquency"JournalofQuantitativeCriminology
Vol.3,No.4.pp.339-354;Lauritsen,J.L.,Sampson,R.J.,andLaub,J.H.1991."TheLink
betweenOffendingandVictimizationamongAdolescents"CriminologyVo1.29,No.2.pp.265
-292;Lauritsen
,J.L.,Laub,J.H.,andSampson,R.J.1992."ConventionalandDelinquent
Activities:ImplicationsforthePreventionofViolentVictimization.amongAdolescents"
ViolenceandVictimsVol.7,No.2.pp.91-108.
18)瀬
川 晃 、 前 掲 、42-43頁.
19)Davis,R.C.,Taylor,B.G.,andTitus,R.M.,op.cit.,p.171.
20)Bouloukos,A.C.andFarre!l,G.1997."OntheDisplacementofRepeatVictimization",in
Newman,G.,Clarke,R.V.,andShoham,S.G.(eds.).RationalChoiceandSituational
CrimePrevention.Ashgate.pp.220-221.
21)Bouloukos,A.C.andFarrell,G.,Ibid.,pp.225-229.
22)Finkelhor,D.andAsdigian,N.L.,op.cit.,pp.6-7.
23)憎
悪 に も と つ く 犯 罪 に つ い て は 、Garofalo,J.1997."HateCrimeVictimizationintheUnited
States",inDavis,R.C.,Lurigio,A.J.,andSkogan,W.G.(eds.).VictimsofCrimesecond
edition.SAGEPublications.pp.134-145.
24)危
険 な 行 動 と は 、 家 出
・盗 み
こ の 危 険 な 行 動 は 、 敵 対 的 因 子
さ せ 怒
り を 生
・飲 酒
・学 校 へ の 武 器 の 携 帯 で あ る 。 親 か ら 受 け る 暴 行 の ケ ー ス で は 、
と し て 位 置 づ け ら れ る 。 な ぜ な ら ば 、 若 年 者 の 危 険 な 行 動 は 、 親 を 立 腹
じ さ せ る か ら で あ る 、Finkelhor,D.andAsdigian,N.L.,op.cit.,p.9andp.15.
25)Finkelhor,D.andAsdigian,N.L.,op.cit.,pp.12-17.
26)Sampson,R.J.andWooldredge,J.D.1987."LinkingtheMicro-andMacro-Level
DimensionsofLifestyle-RoutineActivityandOpportunityModelsofPredatoryVictimization"JournalofQuantitativeCriminologyVol.3,No.4.pp.371‐393;Sampson,R.J.1987.
"PersonalViolencebyStrangers:AnExtensionandTestoftheOpportunityModelof
PredatoryVictimization"TheJournalofCriminalLawandCriminologyVo1.78,No.2,pp.
327-356;Bursik,R.J.,Jr.andGrasmick,H.G.,op.cit..
27)Felson,M.1998."RoutineActivitiesandCrimePreventionintheDevelopingMetropolis",
inHenry,S.andEinstadter,W.(eds.).TheCriminologyTheoryReader.NewYork
UniversityPress.p.133.
AnAnalysisofDevelopmentinandProblems
withTheoryforCriminalVictimization
Lifestyletheorywasoriginatedin1978byHindelanget.al.,androutineactivitytheory
wasadvocatedin1979byCohenandFelson.Contributinggreatlytotheprogressof
victimology,thesetwotheorieshaveevolvedintoamoregeneraltheory,opportunity
theorツ!orcriminalvictimization.Thispaperattemptstoexplorethecurren七theoretical
standardandproblemsofthe-criminalopportunitytheory.
Theproponentsoftheopportunitytheoryanalyzevariousdata,includingcriminal
victimizationsurveydata,andtrytoexploretheprocessofvictimizationfordirectcontactpredatoryviolations.Theytakecriminalmotivationasagiven,andexaminehow
増本
犯罪被害者化 に関す る機会 理論 の展開 と課 題
motivationcomesintoaction.Therefore,opportunitytheoryisclassifiedassociologicalin
itsorientation.
Aswithallpioneeringefforts,lifestyletheoryandroutineactivitytheorywerenot
devoidofflaws,butmanysubsequentstudieshaveaddressedsomeoftheweaknesses.
First,theyhavecreatedthemediatingconcepts(subconcepts),proximity,exposure,
targetattractiveness,andguardianships.Itdoesn'texplaintheprocessofvictimization
merelytosaythatlifestyle/routineactivityaffectstheprobabilityofvictimization.By
adoptingthemediatingconcepts,however,theymakeclearerhowcriminalvictimizationis
realized.
Second,theyhaveidentifiedthefactorsbesideslifestyle,suchasindividualattributes
andcommunity-contextfactors,thataffecttheprobabilityofvictimization.
Third,theyhavetriedtointegratestudiesofvictims,offenders,andenvironments.
Finally,they-haveattemptedtoapplyopportunitytheorytoothertypesofcrimebesides
direct-contactpredatoryviolations.
Itcanbeconcludedthattoday'sopportunitytheorygoesfarbeyondlifestyletheoryand
routineactivitytheory.Butithasnotyetsucceededinclarifyinghowc-riminalvictimizationisrealized.Theproblemstobesolvedaremoreadequatecollectionandanalysisof
data,moreconcreteandpreciseidentificationofthefactorsthataffecttheprobabilityof
victimization,constructionofamoresophiscatedmodel,andintegrationofstudieson
victims,offenders,andenvironmentsforclarificationandpreventionofvictimization/
crimeevents.
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