蛋白質核酸酵素:転写因子の核局在機構

転写因子の核局在機構
酸化ストレスによるyAP-1の 核外輸送阻害
久下周佐
蛋白質合成の場と遺伝子発現(転写)の場を隔てる核膜には核膜孔があり,細 胞質一核間
Database Center for Life Science Online Service
を通過する蛋白質やRNAの 移動を監視する。細胞質に局在する転写因子の場合も,活 性化
シグナルを受けて細胞質から核へと場を変えることにより,複 数のターゲット遺伝子の発
現調節を行なっている。これらは核内輸送の許可が調節ステップとなっていることが明ら
かとなってきたが,yAP-1(yeastAP-1)転
写因子の場合は核外輸送のON/OFFに
より調
節されていることが判明した。yAP-1は 定常的に核内輸送および核外輸送されており,両
方向のバランスがその転写活性に重要である。酸化ストレスはyAP-1の 核外輸送を特異的
に阻害し,結 果的にyAP-1は 核に局在し,夕ーゲット遺伝子の転写を誘導することが明ら
かとなった。
【核 外 輸 送 】 【転 写 因 子 】 【
局 在 調 節 】 【yAP-1】
【酸 化 ス トレ ス 応 答 】
は じめ に 細 胞 が 増 殖 刺 激,ス
を受 容 ・感 知 して,そ
トレ ス な どの シ グ ナ ル
の シ グ ナ ル を転 写 因 子 の 活 性 化
に 導 き核 ま で到 達 さ せ る 。 そ の 結 果,一
連 の特 異 的 な
に伴 う 質 的 な 変 化 の 側 面 か ら分 類 して み る と,① 転 写
因 子 その もの の ダ イナ ミ ック な局 在 変 化 を伴 う場 合,す
な わ ち細 胞 質 に局 在 す る転 写 因 子 が,シ
グナル を受 け
遺 伝 子 群 の 発 現 誘 導 に よ り,そ れ ら の 刺 激 や ス ト レ ス
取 っ て 核 に局 在 し う る 形 に 変 化 す る場 合,そ
に対 応 し細 胞 の 向 か う方 向 性 を決 定 す る。 で は ど の よ
転 写 因 子 は常 に 核 内 に 存 在 し,そ
う に シ グ ナ ル が 転 写 因 子 に 到 達 し,必 要 な と き に必 要
胞 質 か ら核 に 到 達 す る場 合,が
な だ け特 異 的 遺 伝 子 群 の 発 現 誘 導 が 起 こ る の か?こ
場 合 も,細 胞 質 一核 間 の 蛋 白 質 の 輸 送 調 節 が細 胞 機 能 発
の 疑 問 に 答 え る べ く十 数 年 来,数
現 に とっ て 重 要 な ス テ ッ プ と な っ て い る。
多 くの 研 究 グ ル ー プ
に よ る精 力 的 な研 究 が な され た 結 果,受
容 体,細
胞内
して,②
の エ フェ クターが細
あ げ られ る 。 い ず れ の
細 胞 質 一核 間 の トラ フ ィ ック に関 して は こ こ数 年 で 多
シ グ ナ ル 伝 達 系 を は じ め,転 写 因 子 の活 性 化 と基 本 転
くの 役 者 が 明 らか に さ れ て き た 。 詳 細 に 関 し て は ご く
写 因 子 群 との 相 互 作 用 や,ク
最 近 の 総 説1∼4)があ る の で 参 照 して い た だ く として,本
ロ マ チ ン の 構 造 変 化 と転
写 調 節 な ど に関 す る 多 くの 知 見 が 明 ら か に され た 。 細
稿 で は概 念 的 に 示 す(図1)。
核 で機 能 す る 蛋 白質 は細
胞 外 の シ グ ナ ル が細 胞 質 を 介 して どの よ う な メ カ ニ ズ
胞 質 で 合 成 さ れ た の ち,核
膜 上 に 存 在 す る核 膜 孔
ム で 最 終 的 に核 内 に到 達 す る か を,転 写 因 子 の 活 性 化
(nuclear pore)と
Shusuke Kuge,東
stitute o fMedical 京 大 学 医 科 学 研 究 所 ウ イ ル ス 研 究 部(〒108-8639東
Science,The University 京 都 港 区 白 金 台4-6-1 )[Department of Tokyo,Shirokanedai,Minato-ku,Tokyo u-tokyo.ac.jp
RegulatedNuclearLocalizationofTranscriptionFactors:NuclearExportofyAP…1isSensitivetoOxidativeStress
668
よ ば れ る 通 り道 を 通 っ て核 内 輸 送 さ
108-8639,Japan] of Microbiology,InE-mail:skuge@ims.
39
転写因子の核局在機構
RNAの
核 外 輸 送 に 関 与 して
い る と 考 え ら れ て い る が,
mRNAの
核 外 輸 送 に関 して は
出 芽 酵 母 で はCrm1の
肯 定 的 で,脊
関与 が
椎動物 細胞 の場
合 は議 論 の 分 か れ る と こ ろで
あ る。
積 み 荷 が 受 容 体 か ら離 れ る
ス テ ップで働 くのがRanGTP/
RanGDPで
あ る。RanGTP
は 核 内 でimportinに
結 合 し,
核 内輸 送 シグナル を もった積
Database Center for Life Science Online Service
み 荷 か らimportinを
図1 核 内 輸 送 と核 外 輸 送
こ こ で は核 内 輸 送 受 容 体,importinを
単 量体 分 子 と して示 して い る が,高
プ タ ー分 子importin α を 介 して 積 み 荷 の 核 内輸 送 シ グナ ル(こ
る場 合 が 多 い。 一 方,積
み荷 の核 外 輸 送 シ グナ ル(こ
こ で はNESと
exportinに よ って 認 識 され 核 外 輸 送 され る 。NESとexportinと
要 で あ り,細 胞 質 に お ける この 複 合 体 の 解 離 にはRanGDPが
RanGDPが,解
離 に はRanGTPが
等真核細胞ではアダ
こ で はNLSと
示 す)は
示 す)を
を も っ た 積 み 荷 のCrm1へ
認識す
核 外 輸 送 受 容 体,
の結 合 にはRanGTPの
結 合 はRanGTPの
結合が必
働 く。importinとNLSの
結合には
に てRanGDPに
る(図1)。
れ る 。 またRNAや
あ る種 の 蛋 白質 は,や
は り核 膜 孔 を
らの 輸 送 は,(a)往
来 す る 分 子(積
結 合 に よ り開 始 され,(b)ひ
(c)積
み 荷)と
受容体 の
き続 く核 膜 孔 の 通 過 後 に,
activating 質(RanBP1,RanBP2)の
輸 送 にかか わ る受 容 体 は核 内 輸 送 に働 くimportinと,
分 類 され る。 また 積 み荷 に
よ り解 離 され
細 胞 質 で はRan-
protein)とRan結
活 性 が 導 き 出 さ れ てRanGTPが
合蛋 白
変 換 さ れ,RanGDPの
濃 度 が 高 く 維 持 さ れ て い る と 考 え ら れ て い る が,核
(regulator exchanging of chromosome よ りRanGTPの
factor)で
内で
あ るRCC1
condensation)の
働 きに
濃 度 が 高 い と考 え ら れ て い る 。 し た が
は そ の輸 送 の 方 向性 を決 め る シグ ナル として,importin
っ てRanサ
に認 識 され る核 内 輸 送 シ グ ナ ル やexportinに
て い る とい え る。
認 識 され
結合が必
存 在 に よ りRanのGTPase
はRan-GEF(GTP み荷 と受 容 体 の 解 離 が 起 こ り完 結 す る 。
核 外 輸 送 に働 くexportinに
GAP(GTPase の
要 で あ り,こ の 場 合 は 細 胞 質
必 要 で あ る。
通 っ て細 胞 質 に核 外 輸 送 され 細 胞 質 で 機 能 す る 。 これ
解 離 させ
る 働 きが あ るが,反 対 にNES
イ ク ル は 細 胞 質 一核 間 輸 送 の 方 向 性 を規 定 し
る核 外 輸 送 シ グ ナ ル が 存 在 す る。 典 型 的 な 核 内 輸 送 シ
グ ナ ル はSV40(simian virus 40)T抗
プ ラ ス ミン に 存 在 す るNLS(nuclear nal)で,こ
原,ヌ
ク レオ
Ⅰ.細胞質一
核間輸送による転写 因子の活性制御(図2)
localization sig-
れ らは ア ダ プ タ ー 分 子 で あ るimportin α に
よ っ て 認 識 されimportin α とimportinβ
とのヘ テ ロ
2量 体 蛋 白 質 に よ り核 内 輸 送 され る(単 量 体 のimportin
細 胞 質 に局 在 す る転 写 因 子 が ど の よ う に核 内 に そ の
局 在 を移 す の か?そ
の 戦 略 は い くつ か に分 類 され る
こ とが わ か っ て き た 。
に よ り運 ば れ る分 子 も出 芽 酵 母 の 系 で は多 く示 され て
い る)。 一 方,典
型 的 な核 外 輸 送 シ グ ナ ル は,ロ イ シ ン
な ど疎 水 性 ア ミノ 酸 に 富 ん だ 配 列 を 特 長 と す るNES
(nuclear export signal)で,HIV(human deficiency virus)のRev蛋
白 質,PKI(後
存 在 し,核 外 輸 送 受 容 体Crm1(chromosome maintenance)/Xpo1(exportin1)に
質 に 運 ば れ る7∼11)。Crm1は
immuno述)な
どに
region
よ っ て 核 か ら細 胞
ま た,U snRNAや5S
1.核
内輸 送 シグナ ル が調 節 分子 に よ り隠され てい る
場合
最 も有 名 な例 と して あ げ られ るの が,転
XB(nuclearfactorxB,Re1フ
p65,c-Rel,Re1B)で
写 因 子NF-
ァ ミ リー;p50,p52,
あ る5)。 この 転 写 因 子 は 普 遍 的
に存 在 し,細 胞 外 か らの 活 性 化 刺 激(IL-1,TNF-α
な
ど)や ス トレ ス な どに よ り活 性 化 さ れ る。NF-κB(p50
669
40
蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.44 No.5(1999)
3.細
胞 内 膜 に 結 合 して いる
場合
他 の メ カニ ズ ム として は,細
胞 質 の 構 造 体 に結 合 して い る
場 合 が あ げ ら れ る 。SRBP1
(sterol regulatory-binding
protein1)は
分 子 量125Kの
前駆 体 として小胞 体膜 お よび
核 膜 に ア ンカ ー され てい る。 細
胞 の ス テ ロ ー ル が 枯 渇 す る と,
Database Center for Life Science Online Service
こ の 前 駆 体 蛋 白質 は可 溶 性 の
68Kの
蛋 白質 と し て切 り出 さ
れ,こ
れ が 核 に移 行 し て そ の
標 的 遺 伝 子 で あ る,LDL(low図2 転 写 因子 の核 内輸 送 調 節 の戦 略
転 写 因 子,エ フェ ク ター 分 子 は活 性 化 に伴 う質 的 な 変 化 に よ り核 内輸 送 シグナ ル(こ
density lipoprotein)受
こで はNLS
HMG-CoA遺
と表 示)が
提 示 され,核
内輸 送 に 導 か れ る。
とp65と
の ヘ テ ロ2量 体)はI-κB(inhibitor-κB)と
容 体,
伝 子 な どの 転
写 を 活 性 化 す る9)。
よ ば れ る阻 害 分 子1分
ま た よ く 研 究 さ れ て い る 例 と し て は,イ
子 と3量 体 を形 成 し た 状 態 で 細
ロ ン(IFN)に
よ る 転 写 因 子STAT(signal 胞 質 に局 在 す るが,細 胞 外 刺 激 に よ り1-κBが 分 解 され
and activators 隠 さ れ て い たNF-κB分
ズ ム が あ る10)。STAT1,STAT2は
わ れ,核
子 内 の 核 内輸 送 シ グ ナ ル が 現
内 輸 送 さ れ る。 こ の1-κBの
分 解 は,1-κBキ
of transcription)の
ンター フェ
transducers
核 移 行 の メ カニ
イ ンター フェ ロン
(α/β)受 容 体 の 細 胞 質 ド メ イ ン に 結 合 し て い る が,イ
ナ ー ゼ に よ る リ ン酸 化 とユ ビ キ チ ンープ ロ テ ア ソー ム経
ン タ ー フ ェ ロ ン の 細 胞 外 ドメ イ ン へ の結 合 に よ り リ ン
路 に よ り達 成 され る 。
酸 化 を 受 け,ホ
また 同 様 な例 と して,ス テ ロイ ド/ビ タ ミン受 容 体 型6)
お よ びAh受
容 体(AhR;aryl hydrocarbon モ2量
に よ り核 に 輸 送 さ れ る 。
receptor
また は ダ イ オ キ シ ン受 容 体)7)な どの 核 内 受 容 体 が あ げ
4.リ
られ る 。 こ の場 合,細
の機能 が調節 さ れる
胞 質 に お け る核 内 受 容 体 と調 節
分 子 の複 合 体 が リガ ン ドの 結 合 に よ り解 離 さ れ,核
受 容 体(転
写 因 子)が
体 形 成 とそ の 受 容 体 か ら の解 離
内
ン 酸 化 ま た は 脱 リ ン 酸 化 に よ る 構 造 変 化 でNLS
調 節 分 子 を必 要 とせ ず に,リ
核 内 輸 送 さ れ る。
Junl1),NF-AT(nuclear 2.調
節 分 子 と 複 合 体 を 形 成 す る こ と に よ り核 内 輸 送
シ グ ナ ル が 供 給 さ れ 核 に輸 送 さ れ るE2F4
細 胞 周 期 のG1-S期
必 須 なE2F(E2 の な か で,E2F4は
の 進 行 を コ ン トロ ー ルす るた め に
写 因子
に,細
胞質
か ら核 に局 在 変 化 す る こ とが 明 らか と な っ た 。E2F4は
核 内 輸 送 シ グ ナ ル を も た な い が,核
factor of activated T
cell)12,13),IRF-3(interferon regulatory factor-3)14)
や 出 芽 酵 母 転 写 因 子 のswi515),Pho416,17)な
promoter binding factor)転
細 胞 周 期 依 存 的 にG1期
ン酸 化 され る こ とに よ
り核 内 輸 送 が 負 に調 節 さ れ て い る転 写 因 子 と して,V-
合 体 を形 成 す る こ とに よ り核 内 輸 送 さ れ る8)。
Swi5は,細
接合 型 の ス イ ッチ ング に関与 す る
胞 周 期 特 異 的 リ ン酸 化 に よ りそ の 局 在 が 調
節 さ れ て お り,い ず れ の 場 合 も核 内 輸 送 シ グ ナ ル付 近
の セ リ ン残 基 の リ ン酸 化 に よ り核 内 輸 送 は 阻 害 さ れ 細
内輸送 シグ ナル を
もつ パ ー トナ ー 分 子(p107,pRB2/p130,DP2)と
れ て い る。v-Junや
どが 示 さ
複
胞 質 に局 在 す る が,リ
に局 在 す る。v-Junの
で あ り11),Swi5の
ン酸 化 さ れ て い な い と き に は 核
特 異 的 核 局 在 は細 胞 周 期 のG2期
場 合 はG1期
また,出 芽 酵 母 転 写 因 子Pho4は
で あ る15)。
リン酸 の 欠 乏 に よっ
て 核 局 在 化 し標 的 遺 伝 子 を 活 性 化 す る。 高 リ ン酸 濃 度
670
41
転写因子の核局在機構
下 で は サ イ ク リ ン-CDK(cyclin-dependent 複 合 体 のPho80-Po85がPho4の
kinase)
核 内 輸 送 シグ ナル 内 の
ry complex factor)がMAPキ
セ リ ン残 基 を リン酸 化 す るた め細 胞 質 に局 在 す るが,低
リン酸 濃 度 下 で はCDK阻
Po85の
害 剤 で あ るPho81がPho80-
蓄 積,こ
れ がimportin(Pse1)に
結 合 し核
内 に 輸 送 さ れ る16,17)。
T細
ナ ー ゼ フ ァ ミ リー のJNK/SAPKや
核 内 で 哺 乳 動 物AP-1を
構 成 す るc-JunやATF2
(activating transcription factor 2)を
リ ン酸 化 し活
性 化 す る こ とが 知 られ てい る19)。興 味 深 い こ とに,分
胞 の 活 性 化 に 必 須 な 転 写 因 子,NF-ATの
場合
酵 母 の ス トレ ス 活 性 化MAPキ
裂
ナ ー ゼ,Spc1/Sty1も
は核 内 輸 送 シ グ ナ ル か ら離 れ た 調 節 ド メ イ ン がCKIα
浸 透 圧 ス トレ ス で 細 胞 質 か ら核 に 局 在 変 化 し,転 写 因
(caseinkinase Iα)に
子ATF1を
よ り リ ン酸 化 され,核
グ ナ ル を マ ス ク す る。 一 方,T細
胞 内Ca2+濃
内輸送 シ
胞 の 活 性 化 に伴 う細
度 の 上 昇 に よ り活 性化 され たCa2+依
脱 リン酸 化 酵 素,カ
Database Center for Life Science Online Service
さ らにMAPキ
p38は ス トレ ス刺 激 に よ り細 胞 質 か ら核 へ 局 在 変 化 し,
活 性 を抑 制 し,結 果 的 に リン酸 化 を受 け て い な
いPho4が
ナ ー ゼ に よ り リ ン酸 化
さ れ る19)。
ル シ ニ ュー リンは,NF-AT調
メ イ ン を脱 リ ン酸 化 す る。 そ の 結 果,調
MAPキ
節 ド
核 に局 在 変 化 す る こ とが 示 され て お り21),酵 母 か ら哺 乳
節 ドメ イ ン と
浸 透 圧 ス トレ ス で細 胞 質 か ら
動 物 に 至 り細 胞 質-核 間 の輸 送 がMAPキ
ナーゼカスケ
ー ド制 御 の 重 要 な ス テ ッ プ で あ る こ と を示 し て い る 。
の 機 能 を発 揮 す る12,13)。ま たIRF-
Ⅱ.ユニークな調節機構をもつyAP-1
3の リン酸 化 とそ れ に 伴 う核 局 在 化 が,ウ イ ル ス感 染 に
よ るIFN-β
ナ ー ゼ,Hog1は
トレ ス 活 性 化
存性
核 内 輸 送 シ グ ナ ル と の相 互 作 用 が な くな りNF-ATは
核 内 に 輸 送 され,そ
リ ン酸 化 す る こ とに よ り活 性 化 す る こ とが
示 さ れ た20)。ま た 出 芽 酵 母 の 場 合 も,ス
遺 伝 子 転 写 誘 導 に必 要 で あ る こ とが 示 され
て い る14)。
前 述 し た よ う に,現 在 知 られ て い る 多 くの 転 写 因 子
は 核 内 輸 送 の ス テ ップ で 調 節 され て い るが,筆
5.シ
グ ナル伝 達経 路の 核内 への到 達
最 近,核
転 写 因 子 が 定 常 的 に核 に局 在 し て い る場 合,そ
の活
者 らは
内 輸 送 は定 常 的 に 起 こ り,核 外 輸 送 の ス テ ッ
プ で 調 節 さ れ る転 写 因 子yAP-1を
明 らか に した22,23)。
性 調 節 分 子 が 細 胞 質 で シ グ ナ ル を受 け取 っ て 核 へ 移 行
し転 写 因 子 を活 性 化 す る 。
1.yAP-1は
CREB(cyclicAMPresponsiveelementbinding
protein)は 細 胞 内cAMP濃
れ る転 写 因 子 で,定
CREBを
3)
度 が上 昇 した と き活 性 化 さ
常 的 に 核 内 に 局 在 す る 。 一 方,
活 性 化 に導 くキナ ー ビのPKA(cAMP-depen-
dent protein kinase)2分
(PKI)2分
子 は,調
され たPKAは
節 サブ ユニ ッ ト
濃 度 上 昇 に伴 い 解 離
核 内 輸 送 され,CREBの133番
yAP-1は
出 芽 酵 母 のAP-1様
目の セ リ
に は結 合 で きない。GCN4は
yAP-1は,c-Jun,ATFな
す18)。
bZIPド
の発 現
合 配列
出芽 酵 母 の もう1つ のAP位 に は結 合 で き
な い こ とか ら,両 者 の 結 合 特 異 性 は 明 らか に 異 な る25)。
leucine-zipper)構
構 成 す るc-Fosは,そ
合 配 列 に結 合 し,
1様 転 写 因 子 で あ るが,SV40AP-1部
ン残 基 を リ ン酸 化 す る こ と に よ り転 写 の 活 性 化 を果 た
ま た 哺 乳 動 物AP-1を
転 写 因 子 と して ク ロ ー
ニ ン グ され た が24),SV40のAP-1結
ソマ トス タ チ ン遺 伝 子 な ど の典 型 的 なAP-1結
子 とヘ テ ロ4量 体 を 形 成 し不 活 性 型 と して
細 胞 質 内 に存 在 す るが,cAMPの
酸 化 ス トレス 応 答 に中 心 的 に機 能 す る(図
のbZIPド
ど と 同 様 にbZIP(basic
造 を も つ が,そ
れ らの間 で は この
メ イ ンの み に 相 同性 が み られ る24)。yAP-1は
こ
メイ ンの相 互 作 用 で ホ モ2量 体 を形 成 す るが,
レベ ル が血 清 刺 激 な どに よ り誘 導 され るが,こ れ はMAP
現 在 ま で にAP-1で
キ ナ ー ゼ(mitogen 2量 体 を 形 成 す る証 拠 は な い(筆 者 ら:未 発 表)。yAP-1
activated protein kinase)が
細胞
明 らか に され て い る よ うな ヘ テ ロ
質 か ら核 へ 局 在 変 化 し,cfos遺
伝 子 の プ ロ モ ー ター を
の 機 能 は,YAP1遺
活 性 化 す る こ と に よ る。c-fosプ
ロモ ー タ ー上 に はSRE
育 に 影 響 を与 え な い こ とか ら不 明 で あ っ た 。 しか し そ
(serum response element)が
ponse factor)2分
あ り,SRF(serumres-
子 とTCF/SAP-1/Elk-11分
子がヘ
テ ロ3量 体 を 形 成 して 結 合 して い る。 このTCF(terna-
の 後,①yAP-1を
伝 子 を 欠 損 させ て も酵 母 細 胞 の 生
酵 母 細 胞 内 で 過 剰 発 現 させ る と,作
用 の 異 な る薬 剤 に対 して耐 性 とな る,②
さ らにyapl遺
伝 子 欠 損 細 胞 は酸 化 ス トレ ス に 対 して 感 受 性 が 高 くな
671
42
蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.44 No.5(1999)
ン サ ー か ら核 内 へ の シ グ ナ ル
の伝 達 機 構 を 明 ら か に す る こ
とにつ なが る。 筆 者 ら は 初 め
に,yAP-1の
結 合 配 列 へ の特
異 的DNA結
合 活 性 は,酸 化
ス トレ ス に よ り2倍 程 度 上 昇
す る こ と を 見 い だ した が,酸
化 ス トレス の な い細 胞 のyAP1に も 結 合 活 性 は あ る こ とか
ら,他
の 調 節,局
在 変化 の可
能 性 を 予 想 した 。 そ こでyAP1の 局 在 変 化 を 追 跡 す るた め,
Database Center for Life Science Online Service
N末
端 にGFP(green cent protein)を
図3 yAP-1に
融 合 し発 現 さ
せ た 。 都 合 の よ い こ と に,こ
よ る 酸 化 ス トレ ス 応 答 機 構
yAP-1は 酸 化 ス トレス に よ り活 性 化 され,多 くの 夕ー ゲ ッ ト遺 イ
云子 の 転 写 に影 響 を 与 え,還 元
型 チ オ レ ドキ シ ン,還 元 型 グ ル タチ オ ン,グ ル タ チオ ン トラ ンス ポ ー ター な どの 発 現 を増 強,酸
化 ス トレス抵 抗 性 に 中 心 的 に機 能 して い る 。
の 細 胞 は 薬 剤 耐 性 能,転
酸 化 ス トレ ス でyAP-1の
転 写 活性 能 が上 昇 す
る,な
どが 明 らか とな り26∼28),yAP-1が
察 す る こ とに よ り,実 際 のyAP-1の
複数 の薬剤 耐
性 遺 伝 子 の発 現 を 担 っ て い る こ とが 予 想 され た 。yAP1に よ り誘 導 さ れ る遺 伝 子 の 検 索 の 結 果,細
胞 の過 酸
4)。
子(TRX2)が
B.Crm1に
ル タ チ オ ン合
成 に か か わ る遺 伝 子29),グ ル タ チオ ン胞 合 体 の輸 送 ボ ン
プ30)な どがyAP-1の
細 胞 全 体 に存
ア ミ ドな ど に よ る酸 化 ス ト
レ ス に よ り核 に 局 在 変 化 す る こ とが 明 らか にな った22)(図
化 物 抵 抗 性 に必 要 な 遺 伝 子 と し て チ オ レ ドキ シ ン遺 伝
同 定 さ れ た26)。そ の 後,グ
酸 化 水 素,ジ
蛍 光 を観
挙 動 を観 察 で き る
と考 え た。 お も し ろ い こ とに,yAP-1は
在 す るが,過
写活
性 化 能 な ど は 親 株 と変 わ らな
い こ と か ら,GFPの
る,③
fluores-
よる負 の調 節
次 に こ の局 在 変 化 の 調 節 機 構 を 明 ら か に す る た め の
標 的遺
伝 子 と して 明 らか に さ れ,酸
化 ス トレ ス,薬
剤耐 性 に中心
的 に 機 能 す る転 写 因 子 の1つ
で あ る こ とが 判 明 し た28)(図
3)。TRX2遺
伝 子 は そ の 後,
バ ク テ リア の シ グ ナ ル トラ ン
ス ダ ク シ ョ ン系 で あ る二 成 分
制 御 系 類 似 の 蛋 白 質Skn7と
協 同 調 節 され て い る こ とが 明
らか と な っ て い る31)。
2.yAP-1核
A.核
外輸 送の 調節
局在 化 と転写 活性 化
yAP-1の
転 写活性化機構
図4 酸 化 ス トレ ス はCrmlに
よ るyAP-1蛋
白質 の核 外 輸送 を阻害 す る
yAP-1の 局在 は 酸 化 ス トレ ス(ジ ア ミ ド)に よ り細 胞 質 か ら核 に変 化 す るが,CRD(cysteine rich
domain)中
の シ ス テ イ ン を す べ て変 異 させ たyAP-1cm46A5やCRDをPKINESに
置 き換 え た
yAP-1-NESで
は こ の 局 在 変 化 は起 こ ら な い。 しか しすべ て の場 合,核
外 輸 送 の 受 容 体Crm1の
の 解 明 は酸 化 ス トレ ス 応 答 の
発 現 を抑 え る と(Crm1抑
制)核 に 局 在 す る 。 左 側 はGFPの
蛍 光 を,右 側 は 透 過 像 を共 焦 点 レ
ー ザ ー顕 微 鏡 で 観 察 した 。 理 由 は不 明 で あ る がyAP-1-NES(Crm1誘
導)で は リ ン グ状 の 局 在
全 体 像,す
が 観 察 さ れ る が,こ
672
な わ ち ス トレ ス セ
れ は 細 胞 質 側 の核 膜 上 にyAP-1が
トラ ッ プ され て い る と考 え られ る 。
43
転写 因子の核局在機構
転 写 活 性 が 上 昇 す る こ と,
CRDをGAL4のDNA結
合
ドメ イ ン にGFPと
と もに融 合
す る と,酸 化 ス トレ ス に よ る
そ の融合 蛋 白質 の局在 を コン
トロ ー ル す る こ とが で き る こ
と,な
ど の 結 果 に 加 え,two
hybrid法
CRDが
に よ りCrm1と
相 互 作 用 す る こ とが 明
ら か に な っ た こ とか ら,CRD
がNES様
の核 外輸 送 シ グナ
ル と して 機 能 し て い る と考 え
Database Center for Life Science Online Service
ら れ た22.23)(図5)。
図5 yAP-1 CRD中
のNES様
局 在 は 細 胞 質(C)と
核(N)で
PKI(37-47)NES]お
よ び,プ
配 列 と シ ス テ イ ン 残 基(598,620,629)の
示 す 。Crm1と
ル ダ ウ ン ア ッ セ イ(野
生 型,cm46A5)で
で はyAP-1の
変 異 と そ の 活 性
の 相 互 作 用 はtwo hybrid法[野
生 型,cm46A5,
解 析 し た 。nd:未
核外移行 の
調 節 は どの よ うに起 こるのか?
試 験 。
Crm1に
よる核 外輸 送 活性 そ
の も の が 酸 化 ス トレ ス で 調 節
突 破 口 とな っ た のが,分
裂 酵 母 に お け る遺 伝 学 的 解 析
で あ る。 分 裂 酵 母 のyAP-1ホ
モ ロ グ で あ るPap1の
の 調 節 遺 伝 子 と し て,crm1+が同
る32)。す な わ ち,crmlの
負
定 され て いたの であ
活 性 の低 下 した 変 異株 で は
Pap1の
転 写 活 性 が 上 昇 し,一 方Crm1の
Pap1の
転 写 活 性 を低 下 させ る。 この こ とは 出 芽 酵 母 に
お い て もyAP-1がCrm1に
過剰 発現 は
よ り活 性 が 調 節 され て い る
可 能 性 を示 し て お り,解 析 した と こ ろ,調
モ ー タ ー でCRM1遺
を観 察 した 。 お も しろ い こ とに,Crm1の
る とyAP-1特
節 可能 プ ロ
伝 子 を 発 現 しyAP-1の
転 写 活性
発 現 を抑 制 す
異 的 転 写 の 活 性 は酸 化 ス トレ ス に よ る誘
され て い る の か?こ
の 可 能 性 はCRDをPKINESと
交 換 し たyAP-1(yAP-1NES)が
酸 化 ス トレ ス に よ り
影 響 され な い こ とか ら否 定 され た 。 す なわ ち,Crm1が
NESを
認 識 して核 外 輸 送 す る活 性 は 酸 化 ス トレ ス に よ
り影 響 を 受 け な い こ とが 判 明 し た23)(図4,5)。
それ で
はCRDのNESと
して の活 性 が 変 化 す るの か?CRD
に は確 か にNES様
の疎 水 性 ア ミノ酸 残 基 に富 む配 列 が
存 在 す る が,そ
の 配 列 中 と周 辺 に シ ス テ イ ン残 基 が 存
在 す る。 このCRD内
の1つ
また は 複 数 の シ ス テ イ ン残
基 が 酸 化 ス トレ ス に よ るyAP-1の
核局 在化 調節 に必須
で あ る こ と,酸 化 ス トレス に よ るyAP-1とCrm1と
の
導 と同 レ ベ ル ま で 上 昇 した 。 そ し て 前 述 し た よ う に,
相 互 作 用 の 調 節 に 必 須 で あ る こ とが 明 らか とな っ た の
yAP-1の
で あ る22.23)(図5)。 した が っ て,CRDは
活 性 化 は 局 在 変 化 を伴 うが,Crm1がyAP-1
通 常NESと
の核 局 在 を 阻 害 す る こ とが 明 らか とな った の で あ る23)(図
し てCrm1に
認 識 さ れ核 外 移 行 され る が,酸
4)。
ス でNESと
して の 機 能 を失 い,Crm1に
C.CRDは
調 節 可 能 なNESか?
そ の 後,前
(NES)の
述 した よ うに,Crm1は
受 容 体,す
な わ ちNESを
識 さ れ な くな る と考 え られ た 。
核 外 輸 送 シグ ナル
D.yAP-1の
認 識 して 核 外 に 輸
yAP-1の
活性 調節 の メ カニ ズム
核 内 輸 送 は酸 化 ス トレス に よ り影 響 を 受 け
送 す る こ とが 示 さ れ て き た 。 した が っ て,yAP-1も
な い と考 え られ る。 す な わ ちCRDをNESに
Crm1に
合(yAP-1-NES),お
よ る 核 外 輸 送 で負 に 制 御 され て い る可 能 性 が 考
え られ た 。 で はyAP-1に
yAP-1の
配 列 が あ る の か?
ドメ イ ン構 造 を 解 析 す る過 程 で,C末
CRD(cysteine Crm1に
もNES様
rich domain)と
端側 の
名 づ けた ドメ イ ンが
よる制 御 に必 要 な領 域 で ある こ とが 示 された22,23)
(図5)。 す な わ ち,CRDを
化 ス トレ
よ り も はや 認
欠 い たyAP-1は
核 に局 在 し
よ び3つ
変 え た 場 合(yAP-1cm46A5)の
り核 外 輸 送 され る が,酸
変 えた 場
の シ ス テ イ ン を同 時 に
い ず れ もCrm1に
よ
化 ス トレ ス に よ り核 局 在 化 や
転 写 の 活 性 化 は も はや 起 こ ら な く な る こ とか ら(図4,
5),こ
れ らの 変 異 体 の場 合 は核 内 輸 送,核
外輸 送 とも
に 酸 化 ス トレス に よ り影 響 を 受 け て い な い と結 論 づ け
673
44
蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.44 No.5(1999)
裂 酵 母 のyAP-1ホ
Pap1も
モ ロ グ,
酸 化 ス トレス に よ り核
に局 在 変 化 す る 。 しか しな が
らこの 場 合,出
芽 酵 母yAP-1
の 系 と 異 な りMAPキ
Spcl/Sty1に
い る33)。Sty1が
でPap1を
ナー ゼ
よ り調 節 さ れ て
どの ステ ッ プ
活 性 化 す る か,
Pap1CRDの
機 能 な どに関 し
て は こ れ か ら の研 究 課 題 で あ
る。
本 稿 で 示 し たyAP-1の
転
Database Center for Life Science Online Service
写 調節 機構 は核外 輸送 に よる
負 の 調 節 の 重 要 性 を 示 唆 して
図6 yAP-1転
写 因子 の 酸化 ス トレス に よる核 局 在 化 調 節 モ デ ル
yAP-1は 定 常 的 に核 内輸 送,核 外 輸 送 され て お り,核 内 で は 濃 度 が 低 く保 た れ て い る。 核 外 輸
送 はCrm1がyAP-1の
調 節 ドメ イ ンCRDを
認 識 す る こ と に よ る。 しか しなが ら,酸 化 ス トレス
に よ りyAP-1のCRDの
お そ ら くシス テ イ ン残 基 を介 した 構 造 変 化 に よ りCrm1に
な り核 外 輸 送 が 阻 害 され,結
果 的 に核 内のyAP-1濃
認識 され な く
度 が 上 昇 し,特 異 的 遺 伝 子 の 転 写増 強 に導
かれる。
い る が,実
yapl変
際 に核局 在型 の
異 を もつ 酵 母 細 胞 は過
酸 化 物 に感 受 性 で あ る こ とが
わ か っ た22)。最 近,い
くつ かの
転写 因 子 の核 外輸 送 に よる負
られ る。
の 調 節 が 明 らか に な っ て きた 。 た と え ば前 述 したNF-
以 上 の 結 果 か ら,図6に
yAP-1は
示 す モ デ ル が 考 え られ る23)。
細 胞 質-核 間 を シ ャ トル し て お り,核
yAP-1蛋
内の
白質 の 濃 度 が 低 く保 た れ て い る。 しか しな が
κBは 数 多 くの タ ー ゲ ッ ト遺 伝 子 の な か でI-κBα 遺 伝
子 の 発 現 も増 強 し,新 た に 合 成 され たI-κBα
行,核
内 のNF-κBに
は核 に移
結 合 し て 不 活 化 し,さ
ら にI-
ら,酸 化 ス トレ ス に よ り核 外 輸 送 の み が 阻 害 さ れ,結
κBα が もつ核 外 輸 送 シ グナ ル に よ りNF-xBを
果 的 に核 内yAP-1の
移 行 させ る41)。この よ うに タ ー ゲ ッ ト遺 伝 子 の 転 写 を介
は お そ ら くCRD内
濃 度 が 上 昇 す る。 核 外 移 行 の 調 節
の シ ス テ イ ン残 基 の レ ドッ ク ス 調 節
で そ の 構 造 に変 化 が 起 こ り,Crm1に
な っ た 状 態 が 想 定 さ れ る(図6)。
よ る認 識 され な く
この よ うにユ ニー ク
な 活 性 調 節 に ど の よ うな メ リ ッ トが あ る か を 考 察 す る
と,①
非 ス トレ ス 条 件 下 で も ター ゲ ッ ト遺 伝 子 の 基 礎
活 性 を維 持 す る た め に必 要 で あ る こ と,②yAP-1は
胞 質,核
細
内 で 酸 化 ス トレス セ ンサ ー と し て 機 能 し て い
る 可 能 性,な
どが 考 え られ る 。
した ネ ガ テ ィ ブ フ ィー ドバ ッ ク ル ー プ の 例 以 外 に,転
写 因 子 内 に核 外 輸 送 シ グ ナルNESを
314)な ど で 示 さ れ て い る。
また 転 写 因 子 を活 性 化 す る エ フ ェ ク タ ー に 関 して も
同 様 な核 外 輸 送 に よる 調 節 が 明 らか に され て い る。PKI
は核 内 に 移 行 され て核 内 に存 在 す るPKAと
質 に移 行 させ る戦 略 でPKA活
(MEK1)にNESが
核 外 輸 送 調 節 機 構 に関 して は,今
後 の 課 題 としてCRDとCrm1の
の 同 定,そ
相 互 作 用 に必 要 な 因 子
れ ら相 互 作 用 の 試 験 管 内 実 験 系 を 構 築 し,
もち核 外 輸 送 に よ
る 負 の調 節 に 寄 与 して い る こ と が,NF-AT34),IRF-
い る35)。ま たMAPキ
お わ りにyAP-1の
核外に
結 合,細
性 の 負 の 調 節 を行 な っ て
ナ ー ゼ を 活 性 化 に 導 くMAPKK
存 在 し,Crm1に
よ り核 外 輸 送 され
る こ とが判 明 した36)。この 場 合,MAPKKは
にMAPキ
胞
非誘 導時
ナ ー ゼ と結 合 し,細 胞 質 に 止 め る た め に 機
能 して い る可 能 性37),ま た はMAPKK自
体 も活 性 化 に
酸 化 ス トレ ス に よ る 相 互 作 用 調 節 の 再 現 を 試 験 管 内 で
伴 い核 局 在 とそ の直 後 の 核 外 移 行 に よ り,MAPキ
行 な う必 要 が あ る。 これ に よ りCRD内
ゼ の 活 性 化 調 節 を し て い る 可 能 性38)が 示 唆 され て い る。
の シ ス テ イ ン残
基 の 変 化 を解 析 す る 道 が 拓 け る と考 え られ る。 ま た 本
さ ら に ス トレ ス活 性 化MAPキ
稿 で は誌 面 の都 合 上 述 べ る こ とが で き な か っ た が,分
るMAPKAP 674
kinase-2は,活
ナ ー ゼp38の
ナー
基質 で あ
性 化 に 伴 いp38を
核外
45
転写因子の核 局在機構
輸 送 に よ り負 に調 節 し て い る こ とが 示 され て い る39,40)。
この ように特異 的転 写 の活性 化が適 切 な時間軸 を も
19)Karin,M.,Liu,Z.,Zandi,E.:Curr.Opin.Cell
Biol.,9,240-246(1997)
20)Gaits,F.,Degols,G.,Shiozaki,K.,Russell,P.:
っ て調 節 さ れ る た め に は,核 外 輸 送 に よ る 負 の 調 節 は
核 内 輸 送 に よ る活 性 化 と 同 時 に 重 要 で あ り,今 後 さ ら
に そ の 重 要 性 が 示 さ れ て い く と思 わ れ る。
Genes Dev.,12,1464-1473(1998)
21)Ferrigno,P.,Posas,F.,Koepp,D.,Saito,H.,
Silver,P.A.:EMBO J,17,5606-5614(1998)
22)Kuge,S.,Jones,N.,Nomoto,A.:EMBO 本研究 は東京大学 医科学研究所 ウイルス研究部の野本 明男博 士
をは じめ研究室 の方 々の ご協 力 をいただ き遂行 され ました。 ここ
に感謝 申し上 げます。 また本稿執筆 にあた り助言 を与 えて くださ
った東京大学医科学研究所の伊庭英夫博士,白 木和子博士 に深謝
いた します。
J.,16,
1710-1720(1997)
23)Kuge,S.,Toda,T.,Iizuka,N.,Nomoto,A.:
Genes to Cells,3,521-532(1998)
24)Moye-Rowley,W.S.,Harshman,K.D.,Parker,C.
S.:Genes Dev.,3,283-292(1989)
25)Jones,R.H.,Moreno,S.,Nurse,P.,Jones,N.:
Cell,53,659-667(1988)
文
1)大
26)Kuge,S.,Jones,N.:EMBO 献
野 睦 人:蛋
白 質
核 酸
酵 素,43,1255-1264(1998)
Database Center for Life Science Online Service
2)Ohno,M.,Fornerod,M.,Mattaj,I.W.:Cell,92,
327-336(1998)
chem.,67,265-306(1998)
4)Stutz,F.,Rosbash,M.:GenesDev.,12,3303-3319
W.:Mol.Micyobiol.,19,651-658(1996)
29)Wu,A.L.,Moye-Rowley,W.S.:Mol.Cell.Biol.,
14,5832-5839(1994)
30)Wemmie,J.A.,Szczypka,M.S.,Thiele,D.J.,
(1998)
5)Ghosh,S.,May,M.J.,Kopp,E.B.:Annu.Rev.
Immunol.,16,225-260(1998)
園 和 彦:蛋
Genet.,242,250-256(1994)
28)Moradas-Ferreira,P.,Costa,V.,Piper,P.,Mager,
3)Mattaj,1.W.,Englmeier,L.:Annu.Rev.Bio-
6)梅
白 質 核 酸 酵 素,41,1265-1272(1996)
7)Sogawa,K.,Fujii-Kuriyama,Y.:J.Biochem.,
122,1075-1079(1997)
8)Lindeman,G.J.,Gaubatz,S.,Livingston,D.M.,
Moye-Rowley,W.S.:J.Biol.Chem.,269,3259232597(1994)
31)Morgan,B.A.,Banks,G.R.,Toone,W.M.,Raitt,
D.,Kuge,S.,Johnston,L.H.:EMBO 32)Toda,T.,Shimanuki,M.,Saka,Y.,Yamano,H.,
Adachi,Y.,Shirakawa,M.,Kyogoku,Y.,
5095-5100(1997)
Yanagida,M.:Mol.Cell.Biol.,12,5474-5484
9)Brown,M.S.,Goldstein,J.L.:Cell,89,331-340
(1997)
10)Stark,G.R.,Kerr,I.M.,Williams,B.R.G.,Silverman,R.H.,Schreiber,R.D.:Annu.Rev.Biochem.,67,227-264(1998)
11)Chida,K,,vogt,P.K.:Proc.Natl.Acad.Sci.
USA,89,4290-4294(1992)
12)Zhu,J.,Shibasaki,F.,PriceR.,Guillemot,J.C.,
Yano,T.,Dotsch,V.,Wagner,G.,Ferrara,P.,
McKeon,F.:Cell,93,851-861(1998)
(1992)
33)Toone,W.M.,Kuge,S.,Samuels,M.,Morgan,B.
A.,Toda,T.,Jones,N.:GenesDev.,12,1453-1463
(1998)
34)Shibasaki,F.,Price,E.R.,Milan,D.,McKeon,
F.:Nature,382,370-373(1996)
35)Wen,W.,Meinkoth,J.L.,Tsien,R.Y.,Taylor,S.
S.:Cell,82,463-473(1995)
36)Fukuda,M.,Asano,S.,Nakamura,T.,Adachi,
M.,Yoshida,M.,Yanagida,M.,Nishida,E.:
13)Beals,C.R.,Clipstone,N.A.,Ho,S.N.,Crabtree,
Nature,390,308-311(1997)
G.R.:GenesDev.,11,824-834(1997)
37)Fukuda,M.,Gotoh,Y.,Nishida,E.:EMBO 14)Yoneyama,M.,Suhara,W.,Fukuhara,Y.,Fukuda,M.,Nishida,E.,Fujita,T.:EMBO J:,17,10871095(1998)
15)Nasmyth,K.,Adolf,G.,Lydall,D.,Seddon,A.:
Cell,62,631-647(1990)
16)O'Neill,E.M.,Kaffman,A.,Jolly,E.R.,O'Shea,E.
K.:Science,271,209-212(1996)
17)Kaffman,A.,Rank,N.M.,O'Shea,E.K.:Genes
Dev.,12,2673-2683(1998)
18)Karin,M.,Hunter,T.:Curr.Biol.,5,747-757
J.,16,1035-
1044(1997)
Ginsberg,D.:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94,
(1995)
J.,13,655-664(1994)
27)Hirata,D.,Yano,K.,Miyakawa,T.:ルlol.Gen.
J.,16,
1901-1908(1997)
38)Jaaro,H.,Rubinfeld,H.,Hanoch,T.,Seger,R.:
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94,3742-3747(1997)
39)Ben-Levy,R.,Hooper,S.,Wilson,R.,Paterson,H.
F.,Marshall,C.J.:Curr.Biol.,8,1049-1057
(1998)
40)Engel,K.,Kotlyarov,A.,Gaestel,M.:EMBO J.,
17,3363-3371(1998)
41)Arenzana-Seisdedos,F.,Turpin,P.,Rodriguez,
M.,Thomas,D.,Hay,R.T.,Virelizier,J.L.,Dargemont,C.:J.Cell.Sci.,110,369-378(1997)
675