S h o r t R e v i e w 鉄の多様な作用 と毒性 見落 とされて きた生体 に必須 な微 量金属 Various function and toxicity of iron 坂 田 真 一 ・岩 井 一 宏 鉄 はすべ ての細胞 に必 須な微 量金 属 である と同 時 に,過 剰 の鉄 はフ リー ラジカル の産生 源 とな り毒性 を もつため, その代 謝 は厳 密 に制 御され ている.ま た,鉄 は微 生物 に対 する生体 防御機 構 に関与す るのみな らず,そ の代謝 異常 が神 経変 性疾患 の病態 形成 や,C型 肝 炎 ウイル スによる発癌 に も関与 して お り,臨 床 的 にも注 目を集 め ている.近 年,細 胞 レベルのみ な らず個 体 レベルの鉄 代謝調 節機構 が明 らかにな りつ つあ り,種 々の疾 患 における鉄 の役 割 を 論 じる分子基 盤 が整 って きた.本 稿 では,鉄 代 謝研 究の現状 を概説 し,今 後 の展望 について も述 べてみ たい. Database Center for Life Science Online Service Key words ●鉄 代謝 ●酸 化 ス トレス ●ヘプシ ジン ●IRP は じめ に:生 体 に お け る 鉄 の 役 割 と そ の 重 要 性 生 命科 学 ・医 学 の 分 野 の研 究者 の多 くは,鉄 を栄養 素 と して認 識 して い る ので は ない だ ろ うか?実 酸 素 は 生 命 体 に とっ て非 常 に効 率 の よい エ ネ ルギ ー 源 で あ る一 方 で,鉄 との反 応 性 に富 ん でお り毒 性 を もつ.過 剰 量 の鉄 存 在 下 で は酸 素 か らフ リー ラ ジカル の産 生 が亢 進 し, 際 に,わ が 国 核 酸 や蛋 白 質 な どの生 体 に と って 重 要 な細 胞 構 成 成 分 を傷 は先 進 諸 国 の な か で も っ と も若 年 女 性 の鉄 欠 乏性 貧血 が多 害 す る.す なわ ち,過 剰 の 鉄 は酸 化 ス トレス をひ き起 こす. い.し か し,鉄 はヘ モ グ ロ ビ ンに よ る酸 素 運 搬 ばか りで な そ れ ゆ え,鉄 は"両 刃 の剣"と 表 現 され る こ とが 多 々 あ り, く,数 多 くの機 能 を担 っ て お り,生 体 に と って必 要 不 可 欠 生 物 は鉄 代 謝 を厳 密 に制 御 す る システ ム を も ってい る. な微 量 金 属 で あ る. 生 物 は酸 化 的 リ ン酸 化 に よ って 効 率 よ くエ ネ ル ギー を産 生体の鉄代謝制御機構 I 生 して お り,鉄 は ミ トコ ン ドリ アに お い て酸 化 還 元 反 応 を 行 な うシ トク ロ ム に含 まれ,酸 素 との反 応 中心 と して エ ネ ル ギ ー 産 生 の 中核 的 な役 割 を担 って い る.そ れ 以 外 に も, 1.個 体 レベ ル で の 鉄 代 謝 健 常 な成 人 は通 常3∼4gの 鉄 を体 内 に もってお り,そ の 鉄 は さま ざ ま な生体 分 子 の 生 合 成 に必 須 な多 くの酵 素 群 の 約2/3が 活 性 中 心 と して の役 割 を担 っ て い る.な か で も特 筆 すべ き てお り,30%程 は,リ ボ ヌ ク レオチ ド還 元 酵 素 で あ る.こ の酵 素 はデ オ キ お もに肝 臓 に存 在 す る.そ の ほ か,少 量 が ミオ グ ロ ビ ン鉄 シ リボ核 酸 の合 成 に必 須 な酵 素 で あ る.す な わ ち,ヒ や含 鉄 酵 素 として(組 織 鉄),ま どの細 胞 も,鉄 な しで はDNAを 合 成 で きない ので あ る.こ の よ うな多 彩 な鉄 の機 能 は,鉄 が 中性pH環 Fe2+とFe3+を トの 境 下 で容 易 に 遷 移 して電 子 を受 け渡 す,す なわ ち,酸 化 還 ヘ モ グ ロ ビ ン鉄 と して 赤 血 球 ・造 血 系 で利 用 され 度 が フ ェ リチ ン(後述)内 部 に貯 蔵 鉄 と して, た,搬 送担 鉄 蛋 白 質 で あ る トラ ンス フ ェ リ ン(transferrin)に 鉄),存 在 して い る(図1a).骨 結 合 し血 清 中 に(血 清 髄 で 日々 行 な わ れ る新 た な 造 血 や含 鉄 酵 素 な どの産 生 には1日 あ た り約20∼25mgの 元 反 応 を促 進 す る酵 素 の活 性 中 心 と して最 適 の性 質 を も っ 鉄 が必 要 とな る が,そ の大 半 は 古 くな っ た赤 血 球 をマ ク ロ て い る こ とに よ る1). フ ァー ジが 破 壊 す る こ とで 生 じた 鉄 を再 利 用 して い る.ヒ トに は積 極 的 な鉄 排 泄 機 構 は存 在 せ ず,消 化 管 や 皮 膚 の上 Shin-ichi Sakata,Kazuhiro 皮 細 胞 の脱 落 に よ り失 われ る鉄(1日 に約1mg)を Iwai 大 阪 市 立 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 分 子 制 御 分 野 E-mail:[email protected] 食 物 中 に含 まれ る鉄 は,十 二 指 腸 お よび小 腸 上 部 の上 皮 URL:http://www.med.osaka-cu.ac.jp/mcb/ に存 在 す る鉄 還 元 酵 素 で あ るDcytbに 982 蛋白質 核酸 酵素 Vol.52 食餌 か ら 補 充 して い る1). No.9 (2007) よってFe3+か らFe2+ S h r t o R e i v e へ 還 元 さ れ た の ち,divalent metal transporter 1(DMT-1/ Nramp2)と よ ば れ る2価 通 して 吸 収 さ れ る.吸 金 属 に特 異 的 な イ オ ン チ ャ ネ ル を 収 さ れ た 鉄 は 基 底 膜 側 に存 在 す る 鉄 放 出 蛋 白 質ferroportinl(FPN1/IREG1/MTP1)を 血 漿 中 に 放 出 さ れ,ヘ 通 して フ ァス チ ン(hephaestin)の キ シ ダ ー ゼ 活 性 に よ りFe2+か らFe3+に フ ェ ロオ 変 換 さ れ て,ト ス フ ェ リ ン と結 合 し て 各 組 織 に 運 搬 さ れ る(図1b).前 よ う に,ヒ ラン 述 の トに は 積 極 的 な 鉄 排 泄 機 構 が 存 在 し な い た め, 体 内 の 鉄 貯 蔵 ・需 要 に 応 じ て 腸 管 か らの 鉄 吸 収 を調 節 す る こ と で,個 体 レベ ル の 鉄 代 謝 は 制 御 さ れ て い る.個 ル で の 鉄 代 謝 制 御 メ カ ニ ズ ム は,貯 体 レベ 蔵 鉄 を感 知 し て 肝 臓 か ら分 泌 され 腸 か らの 鉄 吸 収 を抑 制 す るヘ プ シジ ン(hepcidin) と よ ば れ る ホ ル モ ン の 同 定 に よ り,大 Database Center for Life Science Online Service る23).ヘ プ シ ジ ン は 十 二 指 腸 上 皮 か ら の 鉄 の 吸 収 を抑 制 す る だ け で は な く,老 FPN1に きな進 展 をみせ て い 廃 赤 血 球 を貧 食 した マ ク ロ フ ァー ジの も作 用 して 鉄 の 再 利 用 を 抑 制 し,血 減 少 させ る 作 用 が あ る.さ ら に,ヘ 中の 鉄 濃 度 を プ シ ジ ンは全 身 の鉄 蓄 積 を 主 症 状 と す る 原 発 性 ヘ モ ク ロ マ トー シ ス と の 病 態 と も 深 く関 連 し て い る(後 述).さ ら に 驚 くべ き こ と に,ヘ ジ ン は 鉄 放 出 蛋 白 質 で あ るFPN1と 結 合 し,FPN1の プシ 内在 化 と 分 解 を 導 く こ と で そ の 作 用 を 発 揮 す る こ とが 示 さ れ, 従 来 の ホ ル モ ン と は ま っ た く作 用 発 現 機 構 が 異 な る こ とが 明 らか に な っ て い る3)(図2). 2.細 胞 レベ ル で の 鉄 代 謝 2分 子 のFe3+と 結 合 した トラ ンス フ ェ リ ン は,そ で あ る ト ラ ンス フ ェ リ ン 受 容 体1(transferrin TfR1)を 介 し て細 胞 内 に取 り込 まれ る.鉄 の受 容 体 receptor 1; は エ ン ドソ ー ム 中 で トラ ン ス フ ェ リ ンか ら遊 離 して 細 胞 内 に供 給 さ れ,ミ トコ ン ド リア で ヘ ム な どの 鉄 補 欠 分 子 族 に 組 み 込 ま れ る.過 剰な 図1 生体 における鉄利用(a)と 十 二指腸上 皮細胞 での鉄吸収 に かかわる分子群(b) (a)体 内の 鉄 の 大 半 はヘ モ グ ロ ビン鉄 で,造 血 系 に存 在 す る.ま た,鉄 の 場 で ある 肝臓 にも 多 くの鉄 が 存 在 す る.1日 鉄 は,貯 蔵 蛋 白 質 で あ る フ ェ リ チ ン(ferritin)に 態 で 細 胞 質 に 貯 蔵 さ れ る(図3a).フ 結合 した状 ェ リチ ンには重 鎖 と軽 鎖 の2種 類 の サ ブユ ニ ッ トが 存 在 し,24個 の サ ブ ユ ニ ッ トか あ た り20∼25mgの 貯蔵 鉄 が新 た な造 血 や 含鉄 蛋 白質 の 産 生 に必 要 とな る が,そ の 大部 分 は寿 命 が きた 赤 血 球 をマ クロ フ ァージ が貧 食 し再 利 用 した鉄 によ って まかな わ れて いる.腸 て食 物 か ら吸収 す る鉄 は微 量 で,1日 に おい に喪 失 する鉄 とほ ぼ同 量 であ る.吸 収 ・ 再 利 用 さ れた 鉄 は トラ ン ス フェ リ ン(Tf)と 結合 して 血 液 中 に存 在 し,体 内 を らな る殻 を 形 成 して,内 て貯 蔵 で きる.哺 リ ン受 容 体1や 部 に は4500個 乳 類 細 胞 は,鉄 し 濃 度 に 応 じ て トラ ンス フ ェ フ ェ リチ ン の 発 現 レ ベ ル を調 節 す る こ と に よ り鉄 代 謝 を 制 御 して い る.鉄 は,mRNAレ の 鉄 原 子 をFe3+と に よ る こ れ らの 分 子 の 発 現 調 節 ベ ル で 制 御 さ れ る も っ と も よ く研 究 され た 転 写 後 調 節 系 で あ り,"Molecular (b)食 物 中 の 鉄 はほ と ん どがFe3+と 管 腔 側 に存 在 す るDcytbに 内 に取 り込 まれ る.体 してFe2+と して 存 在 してお り,十 二 指 腸 上 皮 粘 膜 の よ りFe2+に 還 元 され たの ち,DMT-1を 介 して 細 胞 内 に取 り込 まれ る鉄 は基 底 膜 側 に存 在 す るFPN1を して 放 出 され,ヘ 介 フ ァス チ ン によ って 酸化 され てFe3+と な り トラ ンス フ ェ リン(Tf)と 結 合 す る. Biology of the Cell"な ど の 世 界 的 な 教 科 書 に も記 載 され て い る シ ス テ ム で あ る.ト ス フ ェ リ ン受 容 体1や 循 環 す る. フ ェ リ チ ン な ど のmRNA上 る ス テ ム ル ー プ 構 造 を も っ た 特 異 的 なRNA配 ラン に存 在 す 列 で あ るIRE (iron responsive IRP(iron element)に,鉄 regulatory protein)と が 結 合 す る こ と に よっ て,制 濃 度 が低 い 場 合 にの み よ ば れ るIRE結 合 蛋 白質 御 下 にある 因子 の発 現 量 を調 節 蛋白質 核酸 酵素 Vol.52 No.9 (2007) 983 w して い る4,5)(図3b).ト は,3'非 翻 訳 領 域 に存 在 す る5つ のIREにIRPが と でmRNAの IRE結 ラ ン ス フ ェ リ ン 受 容 体1のmRNA 結合 す る こ エ ン ドヌ ク レ ア ー ゼ に よ る 分 解 が 抑 制 さ れ mRNAが 安 定 化 す る た め,そ フ ェ リチ ン のmRNAの5'非 の 発 現 量 が 亢 進 す る.ま た, 翻 訳 領 域 に1つ 存 在 す るIREに IRPが 結 合 す る と,mRNAの リボ ソー ムへ の 結合 が 阻害 さ れ,フ ェ リチ ン の発 現 量 が 減 少 す る.上 述 の よ う に,IRPは 細 胞 内 の 鉄 濃 度 が 低 い 場 合 に の みIREと らい て い るの に対 し6),IRP2は 高 い鉄 濃 度 下 にお い て選 択 的 に分 解 され る こ とで活 性 が 制 御 されて い る7,8).筆 者 らは, IRP2の 鉄 依 存 性 分 解 機 構 の解 析 を進 め,IRP2が ヘ ム濃 度 の 変 化 と して 鉄 濃 度 の 変化 を感 知 し,ヘ ム と酸 素 に よっ て 酸 化 され たIRP2が 選 択 的 にHOIL-1ユ ビキ チ ン リガー ゼ に よ り識 別 され て プロ テア ソー ムで分解 され る こ とを明 らか に 結 合 す る こ とに よ し,細 胞 に はヘ ム を介 して鉄 濃 度 の 変化 を感 知 す る系 が存 り,ト ラ ンス フ ェ リ ン受 容 体1に よ る 鉄 の 取 り込 み を 亢 進 さ 在 す る こ とを明 らか に した9,10).ヘ ムが ミ トコ ン ドリアで産 せ,フ ェ リ チ ン に よ る 鉄 の 貯 蔵 を抑 制 して 細 胞 内 の鉄 イ オ ン 生 され る こ と を考 えあ わせ る と,細 胞 外 か ら取 り込 まれ た 鉄 が ミ トコ ン ドリア でヘ ム に組 み 込 まれ たの ち,IRP2に 濃 度 を 高 め る よ う に 作 用 す る. IRPに は 高 い 相 同 性 を も つIRPlとIRP2の2種 が 存 在 し,い ず れ も 鉄 欠 乏 時 に の みIREと の 制 御 メ カ ニ ズ ム は 異 な っ て い る.IRPIは Database Center for Life Science Online Service 合 活 性 を消 失 して細 胞 質 ア コニ ター ゼ*2と して は た あ り,高 類 の分 子 結 合 す る が,そ 感 知 さ れ る と い う,こ れ まで 想 定 され て い な か っ た代 謝 経 路 の存 在 が 明 確 にな っ た10). 安 定 な蛋 白 質 で い 鉄 濃 度 下 に お い て 鉄-硫 黄 ク ラ ス タ ー*1を も ち, II 感染防御 と鉄 鉄 は病 原 性 バ クテ リア に とっ て も必須 の微 量 金 属 であ り, バ ク テ リ ア は効 率 的 な鉄 取 り込 み 様 式 を もっ て い る.十 二 指 腸 か らの鉄 取 り込 み,マ ク ロ フ ァー ジか らの鉄 再 利用 を 抑 制 す る ホ ル モ ンで あ るヘ プ シ ジ ンは,抗 菌 ペ プチ ドと し て発 見 され た.ヘ プ シ ジ ン は感 染 に よる炎 症 時 に も発 現 が 亢 進 し,体 液 中 の鉄 を減 少 させ る こ とで 病 原 微 生 物 に よ る 鉄 吸 収 を抑 制 しそ の増 殖 を阻 害 す る感 染 防 御 機構 の 一 翼 を 担 っ て い る と考 え られ て い る2,3).バ ク テ リア は シデ ロ フ ォ ア とよば れ るFe3+と 特 異 的 に結 合 す る小 分 子 を分 泌 し,シ デ ロ フ ォア-Fe3+複 合体 を取 り込 む こ とによ り鉄 を吸収 す る. 肝臓 か ら分 泌 され る リポ カ リン2(lipocalin 2/NGal)は,シ デ ロ フ ォア-Fe3+複 合 体 と選択 的 に結 合 し,バ クテ リア に よ る 鉄 取 り込 み を阻 害 しそ の増 殖 を抑 制 す る11).す なわ ち, 鉄 取 り込 み の 阻害 は"兵 糧 攻 め"に よる生 体 防 御 系 で あ る と い え る.さ らに,後 述 のヘ モ ク ロマ トー シス の 原 因 遺 伝 子 の産 物 で あ るHFE(HLA-H)は 主要 組 織 適 合性 抗 原(MHC) ク ラスI様 遺 伝 子 産物 で あ り,β2-ミ ク ロ グロ ブ リン と結 合 して細 胞 表 面 に発 現 す る.β2-ミ クロ グ ロブ リ ンの ノ ック ア ウ トマ ウ ス が鉄 代 謝 異 常 を呈 す る こ と も知 られ て お り12), 図2 鉄代謝 を制御 するホル モン,ヘ プシジン (a)鉄 欠 乏 時 には,十 つ 細胞 に存 在 す る鉄 放 出蛋 白質FPN1よ (b)鉄 過 剰 時 には,肝 モ ジュベ リン,ト ラ ど が関 与 して いる と考 え られて い る),ヘ プ シジ ン はFPN1に 定 され て い る よ りも深 く関 連 して い る のか も しれ ない. り血 中 に鉄 が 供 給 され る. 臓 は貯 蔵 鉄 の量 を感 知 し(HFE,ヘ ンス フ ェ リン受 容 体2な 分 泌 す る.ヘ 鉄 代 謝 と免 疫 系 とは,現 在,想 二 指 腸 上 皮 細 胞 や マ クロ フ ァー ジ な どの 鉄 放 出 能 を も プ シジ ン を III 鉄代謝調節機構の破綻と疾患 結 合 しそ の 内 在 化 と分 解 を導 く.従 来 の ホ ル モ ンは レセ プ ター に結 合 してそ の下 流 にシ グナ ル を伝達 する が,レ セ プタ ー で あ るFPN1を 直 接分 解 に導 くヘ プ シ ジンは,そ れ らとは ま った く異 なる 作 用 蛋 白質 核酸 酵素 欠 乏 の いず れ もが疾 患 に 関与 して い る こ とが 知 られ て い る. 機 序 を も つホ ル モン であ る. 984 鉄 過 剰,鉄 Vol.52 No.9 (2007) S h 図3 t R r o e i e v 細 胞 の 鉄 代 謝 機 構(a)とIRE/IRP シ ス テ ム(b) (a)ト ラ ンス フ ェ リン(Tf)と 結 合 した鉄(●)は, トラン スフ ェ リン受 容 体1を 介 して 細胞 内 に取 り 込 まれ,エ ン ドソー ム に移 行 す る.エ ン ドソー ム 内 の酸 性 環 境 下 で トラ ンス フ ェリン よ り遊離 した 鉄 は,DMT-1を 介 して 細 胞 質 に放 出 され る.細 胞 質 内で の鉄 の 挙 動 は まだ明 らか にな って いな い が,す ぐに利 用 さ れな い余 分 の 鉄 はフ ェ リチ ン内 に貯 蔵 さ れ る. (b)ト ラ ンス フ ェ リン 受容 体1や フ ェ リチ ンの 発 現量 は転 写後 調 節 によ り制 御 さ れて いる.そ の 制 御 因子 で あ るIRPに はIRP1とIRP2の2種 類が あ り,ど ち らも鉄 濃 度 が低 い 場 合 には トラ ンス フ ェ リ ン受 容 体1や フ ェ リチ ン な どのmRNA上 存 在 す る配 列IREに 受 容 体1のmRNAは,3'非 にIRPが 翻 訳 領 域 に あ るIRE 結 合 す る ことで エ ン ドヌ ク レア ー ゼ によ る分 解 が抑 制 さ れ て安 定 化 し,発 Database Center for Life Science Online Service る.フ に 結 合 す る.ト ラ ンス フェ リン ェ リチンmRNAの5'非 るIREにIRPが 現 量 が亢 進 す 翻 訳 領 域 に存 在 す 結 合 する と,リ ボ ソーム への 結合 が阻 害 され 発現 量 が 減少 す る.そ の結 果,ト ラン スフ ェ リン受 容 体1に よ る鉄 の 取 り込 み を亢 進 さ せ,フ ェ リチ ンに よる鉄 の 貯蔵 を抑 制 して,細 胞 内の 鉄 イオ ン濃 度 は上 昇 す る.逆 高 い 場 合 に は,IRP1は こ とでIRE結 に,鉄 濃 度 が 鉄-硫 黄 クラ スタ ー をも つ 合 活 性 を消 失 し,IRP2は ユ ビキ チ ン化 を受 けて分 解 され る.す る と,ト ラン スフ ェ リン受 容 体1mRNAは 不 安 定 とな り発現 量 が 減少 し,フ ェ リチ ンmRNAは リボ ソー ム と 結 合 して 発 現 量 が亢 進 す る.そ の 結 果,鉄 抑 制,貯 蔵 は 亢 進 さ れ,細 の 取 り込 み は 胞 内 の 鉄 イ オ ン濃 度 は低 下 す る. 1.鉄 た,鉄 欠 乏 を呈 す る遺伝 性 疾 患 も存 在 す る.先 天性 無 トラ 欠 乏 に よ る病 態 ンス フェ リ ン血 症 で は,吸 収 され た鉄 を体 内 の諸 臓 器 に運 鉄 欠 乏 に よっ て生 じる もっ と も代 表 的 な疾 患 は,鉄 欠 乏 性 貧 血 で あ る.鉄 の摂 取 不足,吸 搬 す る はた ら きを もつ トラ ンス フ ェ リ ンが 存 在 しない た め, 収 不 良,成 長 期 や 妊 娠 ・ 骨 髄 に存在 す る赤 芽 球 が 鉄 を取 り込 め ず に極 度 の鉄 欠 乏 性 授 乳 な ど に よる鉄 需 要 の 増 大,慢 性 出 血 や 血 管 内 溶 血 な ど 貧 血 を呈 す る.こ の よ うに,鉄 の 欠 乏 は生 体 にお け る鉄 利 に よ る過 剰 な鉄 喪 失 に よ り,生 体 にお け る鉄 の 需 要 と供 給 用 の2/3を 占 め るヘ モ グ ロ ビ ン合 成,赤 のバ ラ ンス が崩 れ る と,ま ず貯 蔵 鉄 が 減 少 す る,さ らに欠 影 響 す る.そ れ 以外 に も,寄 生 虫 感 染 な どで鉄 欠 乏 を呈 す 乏 が 進 行 す る と,ヘ モ グ ロ ビ ン合 成 に必 要 な 鉄 が 不 足 し, る こ と も知 られ てい る.さ ら に,膠 原 病 な どの慢 性 炎 症 性 鉄 欠 乏 性 貧 血 をひ き起 こす.さ らに鉄 欠 乏 が 進 行 した場 合 疾 患 の鉄 不 応 性 貧 血 は造 血 系 が鉄 を利 用 で きない こ とに よ に は組 織 鉄 の 減 少 もひ き起 こ され,種 々 の 代 謝 に障 害 を き る と考 え られ て い るが,前 述 の よ うに,炎 症 に よっ て肝 臓 た し,爪 の 変 形 や 粘膜 の萎 縮 な どの組 織 障 害 が 生 じる.ま か らのヘ プ シジ ンの産 生 が亢 進 す る こ とに よる こ とも明 らか *1 鉄-硫 黄 クラ ス ター:ミ トコ ン ドリアで 合 成 され る鉄 原 子 と硫 黄 原 子 か ら構 成 される構 造 モ チ ー フであ り,鉄 が 蛋 白質 に 結 合 す る際 の主 要 な結 合 様 式(補 欠 分 子 族)の ひ とつで,鉄-硫 を もつ. *2 ア コニ ター ゼ:ミ 血 球 合 成 に大 き く 黄酵 素 の 活 性 中 心 と して作 用 す る.鉄 原 子 と硫 黄 原 子 の個 数 に よ り4Fe-4S,2Fe-2Sな どの 型 に 分類 され,IRP1は4Fe-4S型 トコ ン ドリア型 と細 胞 質 型 が存 在 し,い ず れ も クエ ン酸 か らcis-ア コニ ッ ト酸 を経 て イソ クエ ン酸 へ の変 換 反 応 を触 媒 す る酵 素 で あ る.ミ トコ ン ドリア型 は クエ ン酸 回路 を形 成 す る酵 素 の ひ とつ で あ る.細 胞 質型 は鉄-硫 黄 クラ ス ター を配位 した フ ォー ムのIRP1で と ア コニ ター ゼ の2つ の 機 能 を もつ 蛋 白質 で あ る. 蛋白質 核酸 酵素 Vol.52 あ り,IRP1はIRE結 No.9 (2007) 合活性 985 w 常 の重 要 性 は広 く認 知 され るに至 って い る.し か しなが ら, に さ れ て い る13). 2.鉄 瀉 血 は ウイ ル ス感 染 血 を扱 う こ とに な るた め,C型 過 剰 に よ る病 態 炎 の鉄 蓄積 メ カ ニ ズ ムの 解 明 と鉄 代 謝 を制 御 す る こ とに よ 過 剰 な鉄 は フ リー ラ ジ カル の 産 生 源 とな るた め種 々 の疾 患 に関 与 してい る.本 稿 で は,遺 伝 性 疾 患 で あ るヘ モ クロ マ トー シス とC型 慢 性 肝 炎,神 経 変性 疾 患 につ い て論 じる. A.ヘ モ ク ロ マ トー シ ス 原 発 性 ヘ モ ク ロマ トー シス は,十 二 指 腸 か らの 鉄 の 吸 収 量 が増 加 す る と全 身 に通 常 の10倍 変,糖 尿 病,心 もの 鉄 が 蓄 積 し,肝 硬 不 全 な どの各 種 臓 器 障 害 に陥 る,常 染 色 体 るC型 肝 炎 治 療 薬 の 開発 が 望 まれ て い る. C.神 経 変性 疾 患 脳 は 鉄 を 多 く必 要 とす る 組 織 で あ る.鉄 は脳 の 活 発 な エ ネ ル ギ ー 産 生 に 必 要 で あ る の み な ら ず,ド ーパ ミンや セ ロ トニ ン な ど 神 経 伝 達 物 質 の 生 合 成 に 必 要 な チ ロ シ ン水 酸 化 酵 素 や ト リ プ トフ ァ ン 水 酸 化 酵 素 な ど の 活 性 中 心 と して 機 能 し て い る か ら で あ る.中 枢 神 経 系 に お け る 鉄 の 取 り込 み 劣 性 遺 伝 疾 患 で あ る.浸 透 率 が低 い疾 患 で はあ るが,欧 米 は 血 液 や 脳 脊 髄 液 を介 し て 行 な わ れ る が,毛 白 人 の約1/300に 胞 の タ イ トジ ャ ン ク シ ョ ンや,脈 発 症 リス クが あ る こ とか ら精 力 的 に研 究 が 進 め られ,そ の 原 因がMHCク Database Center for Life Science Online Service 慢性 肝 ラスI様 分 子 を コー ドす るHFE遺 伝 子 の変 異 であ る こ とが 明 らか に な った.そ のの ち,HFE遺 伝 子 以 外 に も,ヘ モ ジュベ リ ン(hemojuvelin) 細血 管内皮細 絡叢 上 皮 細胞 に存 在 す る脳 血 管 と脳 と の あ い だ の 機 能 的 関 門 で あ る血 液 脳 関 門(blood brain barrier ; BBB),血 れ て い る.血 液 脳 脊 髄 液 関 門 に よっ て制 限 さ 管 内 皮 細 胞 や 脈 絡 叢 の 細 胞 に は トラ ン ス フ ェ コー ド リ ン 受 容 体1が 発 現 し て お り,脳 内 へ の 鉄 の 取 り込 み を 担 す る遺 伝 子 も原 因 遺 伝 子 と して 同 定 され て い る.こ れ らの 当 し て い る.脳 内 の 部 位 で は,皮 質,線 原 因 遺 伝 子 群 は鉄 の貯 蔵 臓 器 で あ る肝 臓 に 選 択 的 に発 現, ニ ュ ー ロ ン に トラ ン ス フ ェ リ ン受 容 体1の あ る い は,強 る.一 や ヘ プ シ ジ ン,ト ラ ンス フ ェ リ ン受 容 体2(TfR2)を く発 現 して い る.現 在 で は,原 発 性 ヘ モ ク ロ マ トー シス は体 内 の鉄 貯 蔵 量 に応 じて ヘ プ シ ジ ンを発 現 で きな い こ とに よ り生 じる病 態 で あ る と考 え られ て お り,ホ 方,フ イ ト,ニ 条 体,海 馬 な どの 発 現 が 多 くみ られ ェ リ チ ン は ミ ク ロ グ リ ア や オ リ ゴ デ ン ドロ サ ュ ー ロ ン に もそ の 発 現 が 認 め ら れ る. 中 枢 神 経 系 にお け る鉄代 謝 の異 常 が直 接 的 に疾 患 の原 因 ル モ ン産 生 異 常 症 の ひ とつ と位 置 づ けで きる14)(図2).ヘ と な っ て い る 例 が 存 在 す る.フ モ クロ マ トー シス の 原 因 遺伝 子 群 は体 内 の 鉄 貯 蔵 量 を感 知 つ 銅 結 合 蛋 白 質 で あ る セ ル ロ プ ラス ミ ンの機 能 欠 損 に よ る して 肝 細 胞 か らのヘ プ シ ジ ン分 泌 の制 御 にか か わ る と考 え 無 セ ル ロ プ ラ ス ミ ン血 症(aceruloplasminemia)で られて お り,ヘ プ シ ジ ンの発 見 とヘ モ クロマ トー シスの研 究 か らFe3+へ の 進 展 は,肝 臓 が鉄 貯 蔵 臓 器 で あ るの み な らず,個 体 レベ 積,変 ル で の鉄 代 謝 調 節 に お いて 中 心 的 な役 割 を は た して い る こ 障 害,嚥 と を明 確 に した.ヘ モ ク ロマ トー シス 原 因 遺 伝 子 産物 の機 ン-シ ュ パ ッ ツ病(Hallervorden-Spatz 能 解 析 が 進 め ば,個 体 レベ ルの鉄 代 謝 調 節 機 構 の み な らず, 蓄 積 を 特 徴 とす る.そ 後 述 のC型 肝 炎 ウイ ルス 感 染 に よ る鉄 蓄積 機構 の解 明 に も 酵 素 で あ る パ ン トテ ン酸 キ ナ ー ゼ を コ ー ドす る 遺 伝 子 が 同 つ なが る もの と期 待 されて い る. 定 さ れ て い る が,明 B.C型 フ リ ー ドラ イ ヒ 運 動 失 調 症(Friedreich 慢性 肝 炎 C型 慢 性 肝 炎 患 者 の 肝臓 で は,肝 細 胞 や ク ッパ ー 細 胞, ェ ロオ キ シ ダ ーゼ 活 性 を も の 変 換 不 全 の 結 果,網 性 が 生 じる16).ま た,筋 膜,基 は,Fe2+ 底 核 へ の 鉄 の蓄 緊 張 異 常 や 異 常 運 動,歩 下 障 害 な ど の 神 経 症 状 を 呈 す るハ ー ラ ー フ ォ ル デ disease)は の 原 因 遺 伝 子 と してCoA生 著 明 な鉄 合 成系 の 確 な 鉄 蓄 積 機 構 は 明 ら か で は な い16). ataxia)で は,フ り返 し変 異 に よ り,フ 活 動 性 お よび肝 細 胞癌 の発 症 に関 連 す る と考 え られ てい る ホ モ ロ グ の 解 析 か ら,フ が,そ る 鉄 シ ャ ペ ロ ンで あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て お り,ミ シ ス で は鉄 蓄 積 量 と肝 障 害 が 相 関 す る の に対 し,C型 慢性 肝 炎 で は鉄 蓄 積 量 と肝 障 害 とは相 関 しない と考 え られ てい る.1994年,林 らは,瀉 血 に よっ て体 内 の鉄 蓄積 量 を減 ら ド リ ア 鉄 の 増 加,機 ラ タ キ シ ン の 発 現 が 減 弱 す る.酵 能 障 害 の 結 果,脊 そ の ほ か,孤 disease)で 986 蛋白質 核酸 酵素 Vol.52 No.9 (2007) 髄 ニ ュー ロ ンを傷 害 発 性 の 神 経 変 性 疾 患 に お い て も鉄 代 謝 の 異 性 が低 下 す る こ と を報 告 した15).2006年4月 慢 性 肝 炎 に お け る鉄 代 謝 異 トコ ン し て い る と 考 え られ て い る21). 常 を と も な う疾 患 は 数 多 い.ア 法 は保 険 収 載 さ れて お り,C型 母 ラ タ キ シ ン は ミ トコ ン ド リ ア に お け し肝 臓 で の鉄 蓄積 を抑 制 す る こ と に よ り,慢 性 肝 炎 の活 動 よ り,こ の療 ラ タ キ シ ン遺 伝 子 中 の イ ン トロ ン で の トリ プ レ ッ トの 異 常 く 血 管 内皮 細 胞 に鉄 陽性 顆 粒 の蓄 積 が認 め られ,慢 性 肝 炎 の の 鉄 蓄 積 の 原 因 は明 らか で は な い.ヘ モ ク ロマ トー 行 は,病 ル ツハ イ マ ー 病(Alzheimer's 巣 で の 鉄 の 異 常 蓄 積 や,そ れ に と もな う 酸 化 ス ト レ ス に よ る ダ メ ー ジ が 確 認 さ れ て い る17,18).ま た, S h o r t R e v i e IRP2の 蓄 積 も 認 め ら れ て い る19).パ (Parkinson's disease)で は,病 ー キ ン ソ ン病 本 稿 で はC型 慢 性 肝 炎 と神 経 変 性 疾 患 を取 り上 げ た が, 態 形 成 の環 境 要 因 と して酸 鉄 代 謝 異 常 は フ リー ラ ジカ ルの過 剰 産生 を介 して多 くの臓 化 ス ト レス の 関 与 が 知 ら れ て い る の み な らず,黒 小 体 で 鉄 の 蓄 積 が み られ,そ 質 や レ ビー 器 障 害 に関 与 して い る可 能 性 が想 定 され る.筆 者 らの神 経 の 酸 化 ス ト レス が 神 経 細 胞 の 退 変性 疾 患 にお け る鉄 代 謝 異 常 の役 割 の解 析 の 結 果 は,鉄 の 縮 に 関 与 し て い る と考 え ら れ る20).そ 症(multiple system atrophy),遅 dive dyskinesia),多 の ほ か,多 系 統萎縮 発 性 ジ ス キ ネ ジ ー(tar- 発 性 硬 化 症(multiple sclerosis)な ど で も脳 内 に 鉄 の 沈 着 が 認 め られ て い る. 現 在 ま で の と こ ろ,神 IRP2ト 者 ら は, ロ モ ー タ ー を 用 い て ニ ュ ー ロ ンにIRP2を させ る と,脳 内 のIRP2蛋 め ら れ な い が,ト Database Center for Life Science Online Service 近,筆 ラ ンス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス の 解 析 か ら興 味 深 い 知 見 を 得 た.NSEプ むFe2+の 発現 白質 や鉄 の総 量 に大 きな変 化 は認 後 の鉄 代 謝 異 常 の疾 患 へ の 関与 を考 える うえ で新 た な視 点 して い え ば,鉄 代 謝 異 常 は従 来 考 え られ て い た よ りも重 要 な役 割 を はた して い る可 能性 を考 えてお り,IRP2ト ラ ンス ジ ェ ニ ックマ ウス と遺 伝 的疾 患 モ デ ルマ ウス との交 配 な ど を進 め,神 経 変 性 疾 患 に お け る鉄 の役 割 を追 求 して い きた い と考 え て い る. ラ ンス ジ ェニ ッ クマ ウ ス で は反 応 性 に富 蓄 積 を生 じ,酸 化 ス ト レス の 増 大 か ら神 経 細 胞 死 を ひ き 起 こ す こ と が 明 らか に な っ た の で あ る.こ 蓄 積 を生 じ,そ す 可 能 性 を示 唆 し,さ の ス トレ ス で も神 経 障 害 を 起 こ ら に,こ の ト ラ ンス ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス は 実 験 的 パ ー キ ン ソ ニ ズ ム 誘 導 に 用 い ら れ るMPTPに 感 受 性 を 示 す こ と か ら,鉄 文 献 の 結 果 は, 鉄 の 取 り込 み と貯 蔵 の 微 妙 な ア ンバ ラ ン ス に よ り反 応 性 に 富 むFe2+の 積 が種 々の疾 患 に重 要 で あ る可 能性 を示 す もので あ り,今 を提 供 した ので はな い か と考 えて い る.神 経 変 性 疾 患 に 関 経 変 性 疾 患 の 病 態 形 成 と鉄 蓄 積 と の 因 果 関 係 に は 不 明 確 な も の が 多 い.最 蓄積 そ の ものが 重 要 なの で は な く,反 応 性 に富 ん だ鉄 の蓄 高 が 神 経 変 性 疾 患 の増 悪 因 子 と し て 作 用 す る 可 能 性 を 示 唆 し て い る. 1) Hentze, M. W. et al: Cell, 117, 285-297 (2004) 2) Ganz, T.: Blood, 102, 783-788 (2003) 3) Nemeth, E. et al.: Science, 306, 2090-2093(2004) 4) Hentze, M. W. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 8175-8182 (1996) 5) Klausner, R. D. et al: Cell, 72, 19-28 (1993) 6) Rouault, T. A. et al.: Cell, 64, 881-883 (1991) 7) Iwai, K. et al: EMBO J., 14, 5350-5357 (1995) 8) Iwai, K. et al: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 4924-4928 (1998) お わ りに 9) Yamanaka, K. et al: Nature Cell Biol.,5, 336-340 (2003) 近 年,十 二 指 腸 上 皮 細 胞 か らの鉄 吸 収 機 構 の解 明 や,鉄 10) Ishikawa, H. et al.: Mol Cell, 19, 171-181 (2005) 体 レベ ル で の鉄 代 謝 制 御 機 構 は大 きな進 展 を とげ た.ヘ プ 11) Flo, T. H. et al.: Nature, 432, 917-921 (2004) 12) Rothenberg, B. E. et al.: Proc. Natl Acad. Sci. USA, 93, 15291534 (1996) シ ジ ンは体 内 の貯 蔵 鉄 に応 じて 肝 臓 か ら分泌 され て強 い鉄 13) Andrews, N. C. et al.:J. Clin. Invest., 113, 1251-1253 (2004) 代 謝 調 節 活 性 を示 す が,失 血 な どに よ る造 血 に よ り鉄 需 要 14) Beutler, E. et al.: Annu. Rev. Med., 57, 331-347 (2005) が 増 大 す る 際 に もヘ プ シ ジ ンが重 要 な役 割 をは た してい る 15) Hayashi, H. et al.: Am. J. Gastroenterol., 89, 986-988 (1994) 16) Miyajima, H. et al: Neurology, 51, 1188-1190(1998) か ど うか は不 明 で あ る.そ れ ゆ え,ヘ プ シ ジ ン制 御 機構 の 17) Zhou, B. et al: Nature Genet., 28, 345-349 (2001) み な らず,造 18) Rotig, A. et al: Nature Genet., 17, 215-217 (1997) 貯 蔵 に応 じて 分 泌 され る ヘ プ シ ジ ンの発 見 な どに よ り,個 血 を反 映 す る液 性 因 子 が 存 在 す る の か な ど, 今 後 の解 析 が待 た れ る. 細 胞 レベ ル で の鉄 代 謝 制 御 に関 して も,鉄 代 謝 制御 因子 で あ るIRP1が 鉄-硫 黄 ク ラス ター を介 して,IRP2が ヘムを 介 して,鉄 濃 度 の変 化 を感 知 す る.鉄-硫 黄 ク ラス ター とヘ 19) Connor, J. R. et al: J. Neurosci. Res., 31, 75-83 (1992) 20) Smith, M. A. et al: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 9866-9868 (1997) 21) Smith, M. A. et al: Brain Res., 788, 232-236 (1998) 22) Castelliani, R. J. et al: Acta Neuropathol, 100, 111-114 (2000) ム は鉄 の蛋 白質 へ の お もな結 合 様 式(補 欠 分 子 族)で あ り, いず れ もミ トコ ン ドリアで生成 され る.細 胞 内 の鉄 キ ャリア のみ な らず,鉄 補 欠 分 子 族 の細 胞 内 動 態,た とえ ば,ヘ ム を ミ トコ ン ドリアか ら輸 送 す る トラ ンス ポー ター,ヘ ムキ ャ リア蛋 白質 な どは ほ とん ど解 明 され て い ない な ど,鉄 代 謝 には 未解 明 な 問題 が まだ まだ 山積 してい るの が現 状 であ る. 坂 田真 一 略歴:2003年 京都 大学 大 学院理 学研 究 科 修 了,同 年 大阪 市立 大学 大学 院 医学研 究 科 博 士研 究 員. 研 究 テ ーマ:モ デルマ ウス を用 いて鉄代 謝異 常 と神経 変性 疾患 の 病 態 との 因果 関係 を解析 してい る. 蛋白質 核酸 酵素 Vol.52 No.9 (2007) 987 w
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