ひともっこ山

H26 全校朝会の話 №33
ひともっこ山
2015.3.16
校長
西谷
秀幸
群馬県に榛名富士と呼ばれている山があります。そのすぐ隣に「ひともっこ山」という
小さな山があります。
この山がどうしてできたかというと、こんな言い伝えがあ
ります。
昔々、群馬県と静岡県に2人の大男がいました。どちらも
自分が日本一の大男で日本一の力持ちと思っていたので、力
比べをして、どちらが高い山を作るか競争をしました。その
ときに、土を運ぶ道具として「もっこ」というものを使いま
した。4年生以上の人は、社会で学習しましたね。玉川上水
を作るときに使った道具です。
さて、榛名の大男は自分のほうが勝っていると油断をしてしまい、最後の土一杯、ひと
もっこを山にのせずに休んでしまいました。するとどうでしょう。結果は静岡の大男が勝
ち、榛名の大男は負けてしまったのです。
そのときの山が榛名富士で、このときに「ひともっこ残った土」が
この小さな山「ひともっこ山」になったと言われています。
この話は、あともう一息というところで、最後に気を緩めてはいけ
ないということを教えています。
さて、いよいよ3学期もあと1週間と2日になりました。
みなさんの中に「あと1週間か、時間がないからもうがんばらなくてもいいや」とか、
「今の学年ではよくがんばったから、あと1週間はゆっくりしよう」と思ってる人はいま
せんか。
そういう人は、榛名の「ひともっこ山」のようになってしまいます。
あと少しですが、気を緩めることなく最後までしっかりと勉強し、生活していきましょ
う。今、がんばったことが新しい学年の良いスタートダッシュになりますよ。
これで朝会の話を終わります。
(裏面に「先生方へ」があります)
〈先生方へ〉
専科の先生方、先日は成績提出をありがとうございました。今年度もあと1週間と
2 日 、 残 り 授 業 日 数 は 7 日 間 (4 ~ 6 年 生 は 8 日 間 ) で す 。 通 知 表 作 成 は 最 後 の ひ と
ふんばりですね。所見については「子供が最もキラリと光った瞬間」を切り取ってい
た だ け れ ば と 思 い ま す 。 提 出 日 は 1 7 日 (火 )で す が 、 突 発 的 な 事 情 等 で 1 7 日 が 無 理
なときにはご相談ください。いい方法を考えましょう。
なお、通知表は提出前に低中高のブロックで必ず読み合わせをしてください。所見
の誤字脱字、評定の未記入、欠席日数の未記入などの確認はもちろんのこと、ぜひ、
お互いの記述について学び合っていただければと思います。
3 月 は い そ が し い 日 々 が 続 き ま す 。「 な に か 手 伝 う こ と は あ り ま せ ん か 」 な ど と 声
をかけて、お互いに助け合っていけるといいですね。よろしくお願いします。
さて、今回の「ひともっこ山」の話は、全国各地に様々なバリエーションがありま
す。巨人ダイダラボッチ伝説に絡んだもの、富士山との山作り競争のもの、カラス天
狗に関わるものなどです。
3月のこの時期の子供たちは、あきらめモードになっていたり、余裕モードになっ
て い た り と 、 人 そ れ ぞ れ で す 。「 最 後 だ か ら が ん ば ろ う 」 と い う 気 持 ち で あ と 数 日 間
を過ごさせたいと考え、今日のような話をしました。特に、この時期の頑張りが「次
の 学 年 の 良 い ス タ ー ト に な る 」 こ と を 話 し て く だ さ い 。「 次 の 学 年 に な っ た ら が ん ば
る」という子がいるかも知れませんが、今、頑張ることが、次の学年の最高のスター
トダッシュになります。そのことを強調しておいてください。各学級での実態に合わ
せて、補足などお願いします。
〈資料1〉 3月14日は何の日?
3月14日といえばホワイトデー。 バレンタインデーに女性からプレゼントをも
らった男性がお返しをする日です。日本で制定され、今では、韓国・台湾・中国など
東アジアにも広がっていますが、欧米ではこういった習慣は見られません。
そのホワイトデーは、実は「円周率の日」であり、「数学の日」でもあるのです。
円周率(π)は、3.1415926535‥‥と永遠に続く数字ですが、その最初
の3文字「3.14」から、3月14日は「円周率の日」と言われるようになりまし
た。また、日本数学検定協会が1997年に3月14日を「数学の日」にしました。
ちなみに、3月14日は、相対性理論で有名な理論物理学者、アルバート・アイン
シュタイン(1879~1955)の誕生日でもあります。
では、ホワイトデーは、何故「ホワイト(白)」なのでしょうか。実は、ホワイト
デーは、バレンタインデーでチョコレートの売り上げが飛躍的に伸びたのを見て、全
国飴菓子工業協同組合という組合が考え付き、1980年から始めたものなのです。
キャンディーの原料は砂糖。砂糖は白。だから「ホワイトデー」となったのです。
「円
周率π(ぱい)」にちなんで、この日にパイを食べてお祝いをしたり、ホワイトデー
でお返しに「パイ」をプレゼントするという試みもされたりしています。
なお、「2015年3月14日」は、数字で表記すると「3/14/15」となり、
この数字の並びが円周率(π)の最初の5つの数字「3.1415」に一致します。
なんと、この日は1世紀に一度、100年に一度しかない特別な日なのでそうです。
〈資料2〉 榛名の大男
むかし、むかし、あったとさ。
榛名に、大男がすんでいました。どんな大男かというと、ふさ、ふさと毛の生えた
胸のあたりに、いつも白い雲が浮かんでいるほどの大男でした。
いつも赤城の山に腰かけて、緑の野原のなかをゆるく流れる利根川で足をあらって
い ま し た 。そ の こ ろ 、駿 河 の 国 に も 、ひ と り の 大 男 が す ん で い ま し た 。駿 河 の 大 男 は 、
いつも箱根の山に腰かけて、ひろびろとひろがった前の海に、ダラリと足を投げ出し
て水を蹴っては大波をたてていました。
二人は、どっちがどっちともいえないほど大男でしたから、歩きだすと、ズシン、
ズスンと地震のような音がひびきわたり、その足あとは深くめりこんで、そこに水が
溜まると、大きな池ができるほどでした。
「 お れ は 日 本 一 の 大 男 だ 。 そ し て 、 日 本 一 の 力 も ち だ 。」
二人は、お互いに自慢していました。
ある日のことです。二人の大男が、原っぱで、バッタリ出会いました。
「き、貴様は、だれだ!」
榛名の大男が、相手にむかって、こういうと、
「おれは駿河の大男だ。そして日本一の大男、日本一の力もちだ。そういうお前こそ
何ものだ!」
と駿河の大男が、さけびました。
「 そ う か 。 お れ は 上 州 の 榛 名 の も の さ 。 そ し て 日 本 一 の 大 男 で 、 力 も ち だ 。」
ふたりの力自慢の大男は、たがいに自分こそ日本一の大男で、力もちだといいあい
ました。日はだんだんかたむいて、西の山に、赤々とした太陽がかたむきはじめまし
た。いつまでいい争っていても勝負はきまりません。そこでもどかしそうに、榛名の
大男がいいました。
「おれは今まで、日本一の大男で、力もちだと思っていた。だが、なるほど、おまえ
も、おれに負けないくらいの大男だし、力もありそうだ。ひとつ、ふたりで力くら
べ を や ら な い か 。 そ う し て 、 ど っ ち が 強 い か 、 き め よ う で は な い か 。」
「そいつは、おもしろい。さっそく、やってみよう。お前はからだが大きくて、うす
のろみたいに見えるが、あんがい利口者だな。ではどうだい‥‥山の作りっこは‥
‥ お も し ろ い ぞ 。」
「山の作りっこ‥‥どうするんだ?」
「明日の朝、一番鷄が鳴くまでに、お前と俺と、べつべつにひとつずつの山を作るん
だ 。 そ う し て 、 そ の 高 さ を く ら べ て み て 、 高 か っ た ほ う が 日 本 一 に な る の だ 。」
「よし、承知した。今からはじめよう。今晩じゅうかかって、すごい山を作ってやる
ぞ 。 一 番 鷄 が 鳴 く ま で だ な 。 約 束 を 忘 れ る な 。」
ふたりの大男は、お互いに明日の朝は、おれが日本一だと思いながら、約束して別
れました。
やがて駿河の大男は、じぶんの国へ帰ると、このへんが一番いいだろうと思う場所
をえらんで、ウンウンと、モッコで土を運んで、山を作りはじめました。
榛名の大男もまた、国へ帰ると、一生懸命山を作りはじめました。ふたりとも、モ
ッコに土を山ほどいれては、ドドドドッと原っぱにぶちまけて、
「 そ れ み ろ 。 大 き な 山 が 出 来 る ぞ 。 あ ん な 奴 に 負 け て た ま る も の か 。」
「 な に く そ ! 明 日 の 一 番 鷄 の 鳴 く こ ろ に は 、 あ い つ の 鼻 を 明 か し て や る ぞ 。」
ウンコラ、ドッコイ、ウンコラ、ドッコイと、ふたりの大男たちは、むちゅうにな
って働きました。やがて、日が暮れて夜になり、空には星がキラキラ輝きはじめまし
た。もうすべての生き物がすっかり寝こんでしまった夜の空気をみだして、ふたりの
大男ばかりは汗を流しながら、ドドドドと、‥‥ウンコラ、ドッコイと、土を運んで
はあけているうちに、東の空がようやく白んで、朝が近づいてきました。
「それっ、夜が明けるぞ。もうひと息だ、ガンバレ、負けるものか!」
ふたりの大男は、さいごのガンバリだと、ありったけの力を出して働きました。な
にしろ、大男たちが、一晩じゅう、むちゅうになって作った山ですから、すごいもの
です。大地から、すっかり浮きあがって、その頂上に立てば、世界中が見渡せるほど
です。
榛名の大男は、自分の作っている山がずいぶん高くなったので、ふと気がゆるみ、
さいごにモッコに入れた土を、そのままそばに置いて、
「おいおい、駿河の大男!もう、このへんで降参しろ!もう勝負は、こっちのものに
決 ま っ た ぞ 。」
とはるか遠くつき立った山の頂に見える駿河の大男にむかって怒鳴りました。そのと
き 、駿 河 の 大 男 は 、ド サ ッ と も う ひ と モ ッ コ 、山 の よ う な 土 を 、山 の 上 に あ け ま し た 。
「バカをいえ!勝ったのはこっちだぞ。そく目玉をむいて、高さをはかってみろ!」
駿河の大男は、怒鳴り返しました。
「なにくそ!」
榛名の大男が、それならばと、山のそばに置いてあるモッコに手をかけた、ちょう
どその時でした。コケコッコーと、一番鷄が山のふもとで鳴きました。
やがて、夜がすっかり明けてみると、くやしいことには駿河の大男のほうが、榛名
の大男の山よりも、ひとモッコほど高いのです。榛名の大男はちょっとの油断で、と
うとう駿河の大男に負けてしまいました。
「ああ残念だ。くやしい!」
「アハハハハ‥‥しかたがないさ。やっぱりおれが日本一の大男で、力もちっていう
わ け さ 。」
駿河の大男は、カラカラ笑って、太い胸毛を気持ちよさそうに朝風にそよがせてい
ました。
榛名の大男は、よほど口惜しかったのでしょう、ボロボロと大きな涙をこぼして、
オイオイと泣きました。それが滝のように流れてひとつの湖ができました。
そのとき、駿河の大男の作った山が富士山で、榛名の大男の作った山が榛名山で、
泣いた涙でできた湖は榛名湖です。それから榛名山のそばに、もうひとつ小さな山が
あります。それはひとモッコ山といわれて、榛名の大男が、さいごにひとモッコの土
を置いてできた山だそうです。
『榛名町誌 民俗編』より
http://www.hunterslog.net/dragonology/S/10202b_org.html