アンパンマンのこころ

朝会の話
アンパンマンのこころ
250528
村松
これから、私が好きなある詩を読みます。何の詩か考えながら聞いてくださいね。
なにが君のしあわせ
なにをしてよろこぶ?
わからないまま終わる・・
そんなのは
いやだ!
忘れないで夢を
こぼさないで涙
だから君はとぶんだ
そうだ
愛と
どこまでも
おそれないで
勇気だけが
みんなのために
ともだちさ
(ここまで読んで、何の詩かわかった人いるでしょう。次を読むとわかりますよ。次は)
ああ
アンパンマン
やさしい君は
いけ!みんなの夢
まもるため
テレビで歌になって聞いているときにはあまり感じませんが、こうやって詩として読む
といい詩、素晴らしい詩だと思いませんか。
ところで、アンパンマンは正義の味方なのに、自分の頭を食べさせます。こんなヒーロ
ー、正義の味方はいませんよね。どうしてなのでしょうか。
この詩を書いたアンパンマンの作者「やなせたかし」さんの文を読んで、私はその理由
がわかりました。その理由をやなせたかしさんは「正義の味方、ウルトラマンなどが怪獣
をやっつけるために大暴れして戦うシーンで、家などをめちゃくちゃに踏みつぶしたり壊
したりするのに、その家の人に謝りに行くことはない、こんな正義の味方はおかしくはな
いか」というのです。そして、誰にでも優しい正義の味方として「アンパンマン」を考え
たのだそうです。
ですから、アンパンマンのマーチの中に「そうだ、おそれないでみんなのために」とい
う言葉があるのです。
皆さんも、アンパンマンのように、だれにでもやさしく、みんなのためにを考えられる
心をもってくださいね。それが本当の正義の味方、ヒーローです、ヒロインです。
きょうはアンパンマンのこころについて話しました。これで朝会の話を終わります。
(時間があれば、アンパンマンのマーチの音楽を流す)
<裏面に「先生方へ」があります>
<先生方へ>
25日の学校公開日、お疲れ様でした。子どもたちの活躍をみてもらうことができたの
で、保護者の皆様も良かったことと思います。
さて、きょうはアンパンマンのこころということで話しました。アンパンマンの歌から
「みんなのため」ということを、子どもたちに知ってもらいたいという思いから話しまし
た。学年の実態に合わせて、「みんなのため」ということを再度話しておいてください。
よろしくお願いいたします。
なお、天気が心配ですが30日は全校遠足です。準備と指導など新しい取組で少し大変
ですが、協力して子どもたちにとって有意義な全校遠足にしていきましょう。
<参
考>【アンパンマン雑記帳】「詩とメルヘン'76 年6月号」(サンリオ)より
本当の正義とは?そしてぼくがまだ子供のときのこと
やなせたかし
アンパンマンは、ある日アンパンを見ていておもいつきました。ぼくはだいたい子供番組のスーパーマンものを見るのが大好きで
あったのですが、見ていて納得できないのは、スーパーマンと怪獣がやたらに大あばれするあたりじゅうメチャメチャに踏み荒して
も、被害者に謝りにいったりしない。正義の味方というけれど、本当の正義とはいったい何だろう?
そして、我々が本当にスーパーマンに助けてもらいたいのは、たとえば、失恋して死にそうな時、おなかがすいてたおれそうな時、
あるいは旅先でお金がなくなった時、その他いろいろあるわけで、そういう細かいところに気がつく優しいスーパーマンがいてほし
いのです。鉄橋をもちあげたり、全くいそうにもないビニール製の怪獣をなぐりつけてもらっても、あんまり心からよろこべない。
ぼくがまだちいさい子供の時、遠くの町へ遊びにいって財布を落してしまった。ぼくは何も食べることもできず、第一、電車のキ
ップを買うお金がない。日暮れは追ってくるし、まわりは知らない人ばかり、いったいどうしたらいいのか、死ぬほど心細かったの
です。しかたなしに、ぼくは線路を歩いて12キロばかり離れた自分の家まで帰ることにした。ぼくは駅へいった。そしてぼうぜん
としばらくそこにたっていた。日暮れの駅ほどあわただしくさびしいものはありません。
誰もかれも、急ぎ足で正確に自分の家を目指して帰巣本能の命ずるままにせかせか歩いていて、ひとりのパッとしない少年がお金
がなくて死ぬほど困っていることに気がつくひとなどはいません。無限とみえるほど大勢の人がいても、それは全く自分とは無関係
で、言葉さえ通じない異国の人、いや、むしろ、人間以外の何かのようにさえみえます。ぼくはノロノロと移動して、線路への道を
さがそうとした時、「やなせ君!」と呼ぶ声がする-。
見れば、ぼくの友人のK君がお母さんと一緒にいるではありませんか。地獄に仏!真実の神!ぼくはK君とそのお母さんのところ
にライトがあたってそこだけバラ色に輝いているようにみえました。
その夜、オレンジ色の光の窓を行列させながら走っていった帰りの電車の中で食べたアンパンほどおいしい食べものをぼくは知り
ません。アンパンはぼくの食道にしみ、胃の粘膜(ねんまく)にしみ、心にしみた。ぼくは甘美な恍惚感(こうこつかん)にひたっ
た。幸福は、時として不幸の時に実感する。
ぼくはその時に思った。本当のスーパーマンは、ほんのささやかな親切を惜しまないひとだと。そして、そういう話をいつかかき
たいと子供心に考えたのです。