月刊JASTPRO PDF 2014年9月号

432
2014- 09
今月号の内容
記事1.◇連載◇ 貿易の実務と理論
(1)…………………………………………………… 1
早稲田大学名誉教授 椿 弘次
記事2.国連CEFACTからのお知らせ ……………………………………………………… 11
記事3.
『ばいざういんどせいらー』
日本列島船の旅
〔クルーズ船への登竜門、 名古屋∼仙台∼苫小牧 豪華カ―フェリー1,330kmの旅〕… 12
=JASTPRO広報誌電子版のご案内=
裏表紙にJASTPRO広報誌電子版のご案内を掲載しておりますので、ご参照下さい。
J AS T P RO
◇連載◇
記事1. 貿易の実務と理論
(1)
当協会は平成 25 年度の調査研究事業として、
「海上運送書類に関する手続き簡素化に向けた調査委員会」
を開催し、いわゆるsurrendered B/L(船荷証券の元地回収)の利用に伴う問題の実態を調べ、海上運送状
(Sea Waybill)の使用へ切り替えることが望ましいとの提言を関係機関等に対して行いました。
この海上運送書類に関する調査を進める中で、貿易取引に関する売買(狭義の貿易、あるいは国際売買)
、
物流(運送関連の保険を含む一連のサービス)
、金融(決済と信用)
、ならびに貿易管理(通関、貿易に関する
規制など)の4 分野から構成される相互の関連性等につきまして、国際取引を巡る技術革新、企業組織の進化、
貿易取引の形態などを念頭に置きつつ、これを分かり易く解説していくことが必要では、との認識に至りました。
この調査委員会の委員長を務められました早稲田大学名誉教授 椿 弘次様は、貿易取引に関するご造詣
も深く、かつ当協会の各種委員会の委員長として長年ご協力頂いております。この度、椿 弘次様に上記の
内容につきましてご協力をお願いしましたところ、快くお引き受け頂きましたので、今後数回にわたりまして執筆し
て頂く事と致しました。
皆様方の日々の業務においてご参考になれば幸いに存じます(事務局)。
「貿易実務は、実務
(practices)
のみか?」
早稲田大学名誉教授 椿 弘次
《はじめに》
貿易取引は、分野が多岐にわたり、実務経験を重ねないと理解が難しいことが少なくない。
長年、大学でこのテーマを講じてきて、現在では、4 分野に整理できるのではなかろうかと考えている。すな
わち、売買(狭義の貿易、あるいは国際売買)
、物流(運送関連の保険を含む一連のサービス)
、金融(決済
と信用)
、ならびに貿易管理(通関、貿易に関する規制など)の4 分野から構成されるのが貿易取引である。そ
して、物流以下は、契約の履行に主として関わるものである。
このため、講学上、あるいは業務研修上、一般に、契約の交渉に関するトピックに時間が割かれ、インコター
ムズと輸出入契約から説き始められる。これ一つとっても、国際売買の国際面を強調すれば、Incotermsの説
明から始まり、国際売買契約の交渉、契約締結、契約の管理まで、幅広いトピックが取り上げられている。そ
して、典型的には、古典的なCIF契約を念頭において、国際売買契約の基本的な課題が説明され、原価要
素と費用の当事者間における分担、物流危険の負担者の決定、それに対応する海上貨物保険の手配、国
際荷為替決済の仕組みと基本原則などが説明されている。業務経験を現場で積み重ねながら、
「理論」と「実
務」を並行して理解する努力が求められる。大学で学習したことが、一般契約法(民法)であり、損害保険法、
商行為法(荷為替)などであっても、実務経験がないと理解が容易でないことが多い。商学・経営系の学部な
どでは、国際売買を「貿易実務」として、CIF契約を基に信用状付荷為替決済を中心に講じられている。相互
連関的に学習し、理解しようとしても、業務に就いて初めて具体的に意味や意義が分かったという経験をされた
方が多い。実際上、職場の先輩などの指導、助言(今はやりの言葉でいえば、mentorの存在)なしでは、
̶1̶
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貿易取引の詳細を理解するのは容易でなかったし、今も、分かりにくい点が少なくない。
昨年、JASTPROの調査研究事業として、いわゆるsurrendered B/L(船荷証券の元地回収)の利用に
伴う問題の実態を調べ、海上運送状(Sea Waybill。以下、SWBと言う)の使用へ切り替えることが望ましい
との提言に加わった(UN/CEFACT 勧告第 12 号に準拠する)。その際、今後ともその問題だけではなく、貿
易取引の具体的な課題を調査研究し、問題を整理する必要性を強く感じた。そこで、本誌の紙面をお借りして、
課題を説明し、貿易取引における「理論」と「実務」の相互作用を基に、望ましい問題解決のための考え方を
試みに示してみたいと思うようになった。上述の4 分野の相互関連と国際取引を巡る技術革新、企業組織の進
化、貿易取引の形態などを常に念頭に置いて、個々のトピックを具体的に考えて説明したい。そのために、判
例、事例を十分参考にしたい。また、海外の文献も参照して、課題の「国際的」背景も検討したいと思う。
《理論と実務という二分法の考え方》
この分野の先学のお一人の新堀 聰博士の座右の戒めを最初に取り上げたい。
「実践なき理論は空虚であるが、理論なき実践は危険である」
これは、同博士のご著書の冒頭に常に掲げられているものである1。また、イギリスで出版される図書には、
「Theory and Practice of ――」と表記されていることもある2。この新堀先生の命題は、かなり難しいもので、
学校教育で実現しようとしても相当な困難が伴うと思う。企業内で、この命題を実現しようとすれば、独立の部
門を設けてスタッフを十分配し組織的な学習をすれば可能だろうが、現場とその部門の間の協力が円滑で、相
互理解がないと命題の実現には時間がかかるだろう。特に、企業内に特定の課題を調査研究し、組織内に
十分な情報と知見の蓄積を図る企ては、
「外注化を良しとする傾向」、専門家に任せるほうが効率的とする「分
業の理論」から、広く承認を得られないかもしれない。最近、アメリカでは職業教育プログラムを開発して生涯
学習に組み立てる試みがなされているそうである3。
貿易取引のような課題は、般若心経に言う
「色即是空、空即是色」のような相互交通的な面があり、輪郭の
はっきりしない曖昧な問題のように見える。すなわち、
「色」を実践とし、
「空」を理論とし、実践の普遍性・論理
性を追求すると直ちに「空」につながるわけでもなさそうである。
「空」そのままでは、実態や実践を指導できない
ときは、後者が優勢になり、
「机上の空論」と断じられることもある。私的取引の世界では、
「これが決定版」と言
えるのは、おそらく
「当事者の意思や合意」と「公序」
(public policy or order)
くらいだろう。商法典を持つこ
とに、昔ほどの意義はないだろうと思う、とある著名な商法学者が最近語られたことがある。場合によっては、
思考の枠組みを変え、新たな条約を結ぶか法律を制定することになろう。商行為(組織としての会社に対応す
る行為と言う意味で)の分野において、それを促すのは、技術変化に伴う取引形態の進化である。この点は、
コンテナ運送の普及に伴って改定された統一規則やいわゆる船荷証券統一条約(ヘーグ・ルールズ)の修正を
顧みれば良く理解できる。そして、
「当事者の合意」は様々な点で一貫して合理的に説明できるものでないと、
第三者(仲裁人、判事などの紛議裁断者)の目から見て正当に評価されないだろう。
1 例、
『 貿易取引入門』
日本経済新聞社、1992 年、
「はしがき」参照。
2 例えば、貿易取引の体系書として1948 年以来、版を重ねて12 版(2012)になるSchmitthoff's Export Trade は、かなり前から
Schmitthoff The Law and Practice of International Trade であり、今はCarole Murray 他が編集、改訂を担当している。
3 Schumpeter/Got Skills, The Economist , August 23, 2014, p.62。実践的学習
(Learning by doing)
が、経営・商学系の実学
には有効であることは明らかだろう。
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一例として、荷為替信用状付決済条件(例、L/C at sight, subject to UCP 600、すなわち信用状付一
覧払とし、信用状統一規則に準拠するとの条件)を含む輸入契約を結び、他方で輸入貨物の早期引き取りを
希望して、B/Lのcopyや原本のうち1通を、輸入者宛てに直送する文言をL/C 開設通知に記載して、信用
状条件とする実際例が見られた。信用状を開設する銀行からすれば、信用供与に対する担保に瑕疵が生じ、
理論上、到底認められない申し入れであるが、輸入者の物流の円滑化、すなわち、輸入地到着後、コンテナ
貨物の速やかな引き取りを行いたいとの要請に、輸入者の信用が十全であることを確かめ、それを許容する政
策的判断で対応すると解される。前述の理論と実務に関する命題からすれば、理論は原理原則的判断であり、
実務は政策的判断と見ることもできる。それならば、
「決定版」は、連帯保証状による荷渡し(L/G渡し)
となるよ
うに思われる。併せて、輸入担保貨物保管証(Trust Receipt:T/R)の輸入者による差し入れを求める実務
がある。銀行にとって満足できる信用状の与信の理論面では、このような実務により課題(輸入コンテナ貨物の
早期引き取り)は解決できたように見える。しかし、現実に輸入貨物の引き取りに際して、輸入者と連帯した保
証状(Double Guarantee)の発行の段階で銀行に政策的判断が求められるから、与信に対する担保の確保
の面では、先のT/R 付としても課題は残る。そして、国によっては、B/Lの受戻性を損なうL/G 渡しの実務に
消極的な場合が見られる4。
surrendered B/Lの背景には、以上のような事情があり、本支店や緊密な取引関係にある当事者間で合意
し、仕向地におけるB/Lの受戻を省き、迅速な荷渡しを行ない、経費を節減する目的がある。要は、輸出入
当事者間に信用不安がほとんどないことが前提になる。したがって、信用不安が残っている場合、代金決済
の保証がなければ、輸出者は容易にこのB/Lの元地回収に同意できない 5。
このように、理論と実務に関する前記の命題を解決できる方法は容易には見つからない。取引実践の現場を
担当する者が、業務の中で理論的に、全体の業務の仕組みを考えてゆくしかないように思える。また、理論を
調査研究する学術関係者や企業の調査・研究員が、実務の現場に身を置いて、業務を取り巻く諸条件を具
体的に理解することも必要である。俗な言い方ではあるが、
「産学共同」、
「法務と商務の連携が常に求められ
ていると、前期の命題を理解したい 6。そのためには、同好の士が所見を自由に交換し合う
「フォーラム」や「公
益 的な団 体 」が 多く生まれ、 発 展することが 商 事 慣 習の発 展のためにも望ましいと思う。イギリスで、
mercantile custom and usageと言うときは、商品取引の世界で通用する慣習や慣行を指しているように、取
引所の規約や約款の果たす機能は大きい。公益的業界団体やフォーラムの活動が一層盛んになるよう企業な
どが支援することが健全な企業自治にもつながり重要であろう。すなわち、商事紛争の予防・軽減につながり
有益である。
とりわけ、貿易取引の世界では、私的自治が広く認められ、かつ、国際性を強く帯びているので、このような
4 これに関しては、張 秀娟「仮渡し・保証渡しに関する中国法の新展開」
『 海事法研究会誌』No.204(2009 年 8月号)
、pp.43-51
参照。L/G 渡しは、中国法ではB/Lの受戻性を損なうものとして、2009 年に最高人民法院(最高裁判所)
の新規定が示されるまで、
消極的に扱われてきた。
5 この点に関して、B/Lの有価証券性(流通証券性)
を重視して、証券理論が前面に出るが、株式や金融証券などと異なり、B/Lの
流通経路が、当初からほぼ決定していて、個々の国際荷為替決済の予想される経路の外において流通することは少ないことを念頭
に置いておくべきである。そのため、想定の個々の当事者の取引上の信用が確立しているときは、有価証券理論が背後に回される
実務(practice)
が盛んになるのだろう。また、B/Lの発行に拘るのは、運送人に対する請求の法的証拠を確保しておきたいのかもし
れないが、定期運送契約の内容の性質と関連して、後で説明したい。
6 第 5 回(2005 年度)貿易研究会『報告書』財団法人貿易奨励会、2006 年、pp.2-9に収載の拙稿「貿易取引における法学と商学」
および国際商取引学会の活動を参照されたい。
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組織、団体の活動から生まれる「統一規則」、
「標準約款」、
「モデル法」などのいわゆる「ソフト・ロー」の果た
す役割が大きい。東京大学の研究プロジェクト「ソフト・ロー研究」の成果である有斐閣からの出版物、中山信
弘代表編『ソフトロー研究叢書』の第 1 巻、藤田友敬編『ソフトローの基礎理論』
2008年は、実務にとり参考
価値がとても高いものである7。
《Incoterms 2010とSurrendered B/L》
Incotermsは、周知のように、国際商業会議所(ICC)が第一次世界大戦後に各国の貿易取引の実情を
調査して、1936 年に取りまとめて発表したものが最初のものである。その後、第二次世界大戦を経て、1953
年版として発表されたものが貿易取引に広く援用されるようになった。その後、航空機による貨物運送の普及、
海上コンテナ運送の急速な進展、企業の多国籍化などの事情を踏まえて、1980 年、1990 年、2000 年と10
年毎に相次いで改定され、現在の最新版が Incoterms 2010 であり、実際の用に供されて4 年ほど経過した。
前述のソフト・ローの観点でいえば、Incotermsは「国際統一規則」であり、法律や条約のようなハード・ロー
ではない。したがって、法的な拘束力の源は、当事者の合意、あるいは確立した実務慣行(事実行為に法的
§1-103も同趣旨であり、
確信=legal recognitionを与えるもの)に求められる8。アメリカの統一商法典(UCC)
次のように定める。
Construction of [Uniform Commercial Code] to promote Its Purposes and Policies;
Applicability of Supplemental Principles of Law.
(a)[The Uniform Commercial Code] must be liberally construed and applied to promote its
underlying purposes and policies, which are:
(1)to simplify, clarify, and modernize the law governing commercial transactions;
(2)to permit the continued expansion of commercial practices through custom, usage,
and agreement of the parties; and
(3)to make uniform the law among the various jurisdictions.
(以下、省略)9
そのため、多くの貿易取引の基本約定書では、Incotermsをそれに援用する(incorporating clause)こと
を定め、 契 約の一 部に摂 取するのが 基 本となっている10。これを欠くと、
「 確 立した実 務 慣 行 」により、
Incotermsの適用が取引慣行(usage of trade)になっており、当事者も当然それを了知していたとの明確な
事実の証明をしなければならない。
7 ソフト・ローは最近の用語法だが、伝統的には慣習
(custom), 取引慣行(usage of trade)
などの黙示の内容(terms)
および援用
統一規則に相当する。Roy Goode, Commercial Law 、3rd. ed. LexisNexis UK, 2004, at pp.13‐14、87−88 参照。
8 国連動産売買条約(CISG)第 9 条は、当該実務慣行の要件を、有名であること、常に( 行動規範として) 遵守されること、援用の合
意の3 点としている
(同条 1 項に、any usage to which they have agreed, any practices which they have established between
themselves, 第 2 項に a usage of which the parties knew or ought to have known and which in international trade is
widely known to, and regularly observed by , parties to contractsの文言がそれぞれ見られる)。
9 大意は、本法典の諸目的と政策の解釈の基準は、商事取引に関する法の簡素、明確化、現代化、慣習、慣行、並びに当事者
間の合意を介して取引実務の継続的発展を促し、各法管轄区域間を超えた統一性をもたらすことである、ということである。
10 例えば、援用約 款として、This agreement shall be governed and construed by the provisions of Incoterms 2010, as
amended, with regard to the trade terms, such as CIF, CFR,FOB, CIP, CPT, herein used ,unless otherwise provided
for herein. と規定する。
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これとは逆に、Incotermsの援用をしない旨、明言している国際標準取引約款も存在する11。既に、その標
準約款により確立した取引慣行があり、また、それらの約款を巡り長年にわたって十分に判例法が形成されて
いるから、敢えてIncotermsに依らずとも、円滑な取引を規律できるとの同業者団体の自信の表れかもしれない。
周知のように、Incoterms 2010は、国際売買契約の履行の前提となる運送サービスを二分し、国際定期
運送サービスを前提にする定型取引条件(trade terms)7 規則、国際不定期海上(内水を含む)運送を前提
にするもの4 規則にグループ化している。そして、それぞれの条件を「規則」
(rules)と呼んでいる。後者は、
本船船側ないし本船積込を基準にとって、費用負担、物理的危険の売主から買主への移転を定めているので、
コンテナを使用した国際一貫運送を利用する売買契約とは十分整合しない。Incoterms 2010を売買契約に援
用(incorporate)
しながら、コンテナ運送を利用する定期運送貨物を対象とする売買契約において、FOB,
CIF, CFR, FASのいずれかの規則を取引条件にすることは慎まなければならない(これらの規則の冒頭の助言
メモ(Guidance Note)参照)。
また、それらの規則に準拠する売買では、主として無包装の大量貨物の傭船契約を想定しているから、運
送書類としてB/Lを使用するかどうかは、決済条件並びに受取証としてB/Lの証拠力により決まってくる。荷
為替決済条件ならば、銀行による与信の実務上、FAS 条件であっても、提供書類としてshipped B/L(船積
船荷証券)が要求されることがある。コンテナ運送を利用する海上貨物の売買契約は、FCA, CIP, CPTの規
則のいずれかに準拠すべきことが、同じ助言メモで指摘されている。この規則に準拠する売買契約において、
荷為替決済条件に合意すると、surrendered B/LやL/G 渡しなどの実務が必要になろう。船脚の早いコンテ
ナ運送が、運送品を有価証券化して金融手段とする荷為替決済との間で「不協和音」
(いわゆるB/L crisis,
荷為替の危機とも呼ぶ)を生むので、運送書類の電子化と銀行を利用した電子決済が円滑に実現するならば、
この不協和音は取り除かれ、これらの実務は廃れる筈である。
他方、コンテナ運送は海上区間のみに留まる例はあるとしても、概ねは陸上運送区間を含む複数の運送手段
(mode of transport)による複合一貫運送(through or intermodal carriage)に特異的に経済効率を発揮
する。したがって、B/Lの再定義が必要になる。これに対し、ロッテルダム・ルールズ(2009、未発効)は、そ
の第 1 条第 14 項において、B/Lそのものを定義せず、
「運送書類」
(transport document)の要件を、運送
人により運送契約に基づいて発行され、運送人による運送品の受け取りを証明し、運送契約の証拠または運
送契約内容を記載しているものとし、包括的な定めにしている。同条第 18 項では、電子運送書類について同
様の定めをしている。
再定義問題ではないが、早くから、現在の国際商取引の事情の下でB/Lを敢えて使用することはなく、
SWBに切り替えられるべきことが唱えられた---Anthony Lloydイギリス控訴院判事は、The bill of lading: do
we really need it? , [1989] LMCLQ 47 以下でその旨を論じている。同じように、複合一貫運送をカバーする
運送書類を、海上運送状=Sea Waybill)
と称することにも違和感が残る。日本海運集会所では、2008 年に、
JSE-CTWAYBILL2008を制定し公表しているが、CT Wayb
i
l
lの名称がより正確であろう。ただ、本稿で
は複合一貫運送のものであってもとりあえず SWBとしておいた。むしろ、ロッテルダム・ルールズに倣って統一す
るのが望ましいと思う。
11 ロンドンに本拠を多く穀物・飼料用穀物取引の同業者団体であるGAFTAの約款 No.100(CIF 条件)
および No.119(FOB 条件)
は
バラものまたは袋詰め飼料穀物の売買を対象とし、その第 28 条ないし第 27 条でCISGと並んでIncotermsの適用除外を定めて
いる。
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冒頭で触れた「貿易取引」の商流、物流、金融(金流)の間の相互関連の理解の難しさが、このようにして
潜んでいる。まず、Incoterms 2010を正確に理解して、それに含まれる規則の適正な選択が望まれる。この
点が、意外と時間のかかる問題で、かつてコンテナ運送にふさわしい条件としてFCA, CIP, CPT が定められ
公表されているにもかかわらず、依然としてCIF,CFR,FOBを売買条件として選択することが広く見られ、
「誤用
問題」
として議論された 12。さらに,吉田友之教授の論考「トレード・タームズの使用動向に関する時系列的考察」
『日本貿易学会誌』No.51, 2014, p.3にも、同様の現実が示されている。また、国際不定期海運を主たる前提
にした売買でありながら、定期海運主体の実務を念頭に置いて、不定期海運を規律する傭船契約固有の課
題に注意が十分及んでいないような点にも言えよう。すなわち、運送経費の売買当事者間における分担をめぐり、
FOB, FIOST(FOBは売買条件用語であるが、FIOSTは傭船契約における確立した慣行で「荷役費用船主
無関係」と呼ばれる)が正確に理解されず争う事例がその典型である13。
前者の「誤用問題」は、取引当事者の理解と関係者の広報努力とあいまって、日本ではかなり解決されてい
るように思われる(ただし、吉田教授の報告される事例においては、実務者間に、CIF, FOBを税関に対する
通関上の申告価格と混同としていると思われる例が見られる)。後者の商流と物流の整合の取れた売買条件の
当事者間における調整問題は、傭船契約による不定期貨物の売買はIncotermsもさることながら、個別業界
の売買契約および傭船契約の標準約款の規定も加わって、コンテナ貨物の国際売買に比して、やや狭い専門
的な理解を必要とする。
ここで、問題背景の基本が surrendered B/L 問題に似通っているshipped B/Lの船積み前発行の有効
性に関する議論に触れておきたい。
航空郵便が十分発達していなかった第二次世界大戦後の1950 年代頃までは、荷為替決済が主流であり、
荷為替書類の迅速な仕向地到着が課題の一つであった。そのため、B/L 未着でも運送品の引き取りを可能に
する実務、すなわち保証渡し(L/G 渡し)は商取引上必要な慣行(usage of trade)であった。日本でも、これ
が相当戦前の大審院により法的に承認されたから、運送品の迅速な引渡しは法的にも実行可能になった。他
方、荷為替書類の銀行経由での名宛人に対する迅速な提供のためには、B/Lの速やかな発行と関係の船積
書類の整備が必要で、そうでないと運送品の仕向地到着にかなり遅れて、荷為替書類が荷受人に提示される
ことになる。それでは、L/G 渡しの保証料も高くなり、金利負担も嵩むことになる。
そこで、船積港の埠頭に運送品を持ちこむと同時に、現実には船積みされていなくても、荷為替や売買条件
充足の必要性から、船積船荷証券(shipped B/L)を発行してもらうことがあった。そうした場合、要因証券と
してのB/Lの有効性に瑕疵が生じる。いわゆる「空券」になるのではないかと消極説を唱える者と有価証券の
外観重視の考え方から限定的に有効を唱える積極論者があった 14。近隣諸国との取引では、L/G 渡しで対応
され、対米取引のような遠洋貿易では、shipped B/Lの船積前発行で対処されたようである。その頃の旧東
京銀行の横浜支店には、快速のボートが用意され、本船の出港までに間に合わなかった船積書類を本船に託
送するため、ボートで本船に追い付くべく懸命の努力がなされたと恩師の浜谷源蔵博士から伺ったことがある。
12 新堀 聰『現代貿易売買』同文舘、第 4 版、2005、第 2 章第 6 節コンテナ取引条件、p.145 以下参照。
13 田 中 庸 介「F.I.O.S.T. 条 項 の 効 力 」
『 海 事 法 研 究 会 誌 』No.178(2004.2)、pp.16-25および Barney Reynolds, Stowing, trimming and their effects on delivery, risk and property in sales“f.o.b.s.”,“f.o.b.t.”and“f.o.b.s.t.”, [1994] LMCLQ
119。FOBは、Incotermsを含む売買の統一規則により定義され、F.I.O.S.T.は傭船契約の標準約款であるから、同じレベルのい
わゆるソフト・ローであるが、傭船契約に固有の責任区間 ( 運送人の責任の始期と終期の一般的な特約 ) が、傭船運送貨物の取
引に固有の特別な慣行として、一般的なIncotermsのFOB 規則 A4に優先すると解される。
14 田中誠二『海商法詳論』勁草書房、1985 年、pp.368-375。
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航空郵便の発達・普及とヘーグ・ルールズに準拠する国際海上物品運送法が制定され受取式 B/Lの発行
を認め、後日、船積確認(on board endorsement)する実務対応により、船積船荷証券の船積前発行を巡
る問題は概ね解決された。その後、快速なコンテナ船の出現と荷役の機械化により、本船の仕向港到着時点
における荷為替書類の未着問題の方がより注目されるようになった 15。コンテナ船の大型化は、この問題を一層
深刻にした。そこで、国際荷為替決済の電子化、わけてもB/Lの電子化が 1980 年代の半ばころから検討さ
れたことは周知のところである。CIF条件の売買ならば、海上貨物保険証券の電子化も必要になる。これら証
券性のある書類の電子化は、容易ではない。電子情報は、ビット単位で料金体系がつくられるが、契約品の
価額は数百万円、数千万円などの額に上ることも稀でないから、電子システム上の瑕疵による、あるいはその
安全性に関わる事故・事件が生じると、システム運営者は賠償問題に経済効率的に責任を負担できないだろう。
極めて厳重な安全性が保障されないと、そのような電子化の導入に商取引当事者は、躊躇するだろう。
そこで、有価証券を基本に据えた取引情報の交換による契約履行から、
「価値ベース(value base)」から
データ交換(electronic data interchange; EDI)に留めた契約履行を設計することで貿易の円滑化の課題に
対処することが考案され、提案されてきた。その一つが、B/Lの使用からSWB への切り替えであった。そして、
B/L 制度のような国際統一性を確立する必要から、万国海法会(CMI)が統一規則の形でSWBに関する統
一規則を定め、1990 年以来、関係者が積極的に採択を促してきた 16。航空便の発達・普及、クーリエ便の
採用など、通信技術の発展とコンテナ運送による荷役の機械化・迅速化で船積船荷証券の船積前発行の問
題が解決されたように、
「B/Lの危機」
(荷為替の危機でもある)
も、取引情報の電子的交換という技術で解決
するか、それと組み合わせつつ、企業間取引信用を「保証」
(guarantee, bond)ないし企業間提携(alliance)
というソフトなシステムの組み替えで解決することになるのだろう。
Incotermsは、既に1990 年版以来、輸出者の提供書類を、紙の船荷証券に限定せず、B/Lの電子的等
価物、海上運送状などを提供書類の中に含めてきた。Incoterms 2010 では、通常の運送書類(the usual
transport document for the agreed port of destination, 合意された仕向港までの運送のための通常の
運送書類)の提供を輸出者の義務とし、B/Lに限定せず特定の書類にも言及していない。それは、前述の
Rotterdam Rulesの規定とも合致する。また、信用状統一規則(UCP)
も、1993 年版(UCP 500)ではSWB
も提供可能な運送書類に含めて定義し(Art.24)
、UCP 600に継承されている(Art.21)。
しかしながら、依然として伝統的な国際荷為替ベース、それも信用状付きの荷為替ベースの貿易取引実務
が根強く残っている。国際荷為替ベースの貿易実務は、伝統的なCIF条件,CFR条件をモデルとするものであ
る。この点で、Incoterms 2010の各規則を良く理解する必要がある。伝統的なCIF,CFRベースの貿易取引
は、決済リスクに対応し、かつ輸出荷為替金融 17 の便を売買当事者が享受する仕組みである。このため、提
供される運送書類は、銀行から見て担保価値の高いものに限られ、B/L がそれに最も適しているのである。す
なわち、運送品引渡し請求権を譲渡可能にする指図式 B/L, 受取証拠書類(receipt)
として無故障 B/L であ
るべきで、運送契約内容の確定・確認の面で船荷証券統一条約に準拠する標準 B/L でなければならず、売
15 船荷証券の船積日の前倒し
(back-dated B/L)問題も、積み揚げ同時に24 時間程度という荷役の迅速化により国際定期海上物
品運送では目立たなくなった。
16 日本船主協会加盟の大手船会社は、1980 年頃からと再度 1990 年頃から、小冊子を作成してSWBの利用案内をした。CMIの
SWB 統一規則に関しては、山下友信「海上運送状に関するCMI統一規則」
『海法会誌復刊』34 号、p.29 以下参照。
17 荷為替の取り組みにより入手する金銭は、代金ではなく手形代わり金、言い換えれば、輸入者が代金を支払うまでは銀行からの融
資金である。荷為替の取り組みにより代金を回収すると記述する書物が少なくないが、厳密には、
「手形代わり金」であり、手形が振
り出されないときは運送貨物を担保に融資された資金である。
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買条件が積込渡しの場合には船積み式 B/L で、原本を複数発行の場合は全通数の提供であって、融資の
担保要件を充足するのである。さらに、信用状付き荷為替となると、信用状条件充足が審査されるので、荷
為替決済は相当に時間と経費を要するのである。
企業間取引(B-to-B transactions)が、諸リスク逓減を目指して大量、反復、継続、長期化の傾向を常に
示し、さらに、企業の国際展開と国際連携が広がっているときに、伝統的国際荷為替に固執することは、効
率的に得策ではない。もちろん、企業の対応はまちまちであり、取引環境が伝統的な国際荷為替決済で十分
な場合もあろう。しかし、それは現代の取引環境の技術的な与件、企業形態などからすれば、かなりな少数派
に留まる。コンテナ運送の利点を享受し、ICTの発達という技術革新を積極的に受け入れて、取り引きの合理
的な管理体系である組織と情報によるSCMモデル(供給連鎖の一貫管理モデル)
と自社の取引システムの距
離を測り、具体的な状況感覚(situation sense)を磨き、取り引きの進取性を高めるべきである。
そのような観点に立って、surrendered B/Lという実務(practices)を見直すにあたり、SWBについての理
解を深める必要がある。そこで、平成 25 年度『海上運送書類に関する手続き簡素化に向けた調査研究委員
会報告書』
JASTPRO、2014 年 3月刊(以下、
「JASTPRO 報告書」と略す)を参考に、SWBを巡る課題を
確認しておきたい。
SWBは、B/L から権利証券性が抜け落ちたものであると説明される。すなわち、商法第 573 条(処分証券
性)
、商法第 574 条(指図証券性)
、商法第 575 条(物権的効力)
、および商法第 584 条(受戻証券性)が、
SWBにはないか必要がないのである。これらの性質が付与される必要があったのは、航海に長期間を要し、
その間の取引金融を図る必要から設計された証券制度が船荷証券制度である(注、19 世紀の冒頭から、船
荷証券法の制定が模索されたようで、1855 年イギリス船荷証券法がまとまった最初の制定法である)。したがっ
て、短距離または短期航海による商品売買には不都合なことは、近海貿易においては既に明らかであった。そ
れが加速されたのは、コンテナ運送による運送革新であることは一般に十分了解できるところである。
それでも、取引相手方の信用リスクに対処するためには、運送書類による担保付売買が依然として有効であ
ると思われた(注、洋上転売=sales of cargo afloat が行われる国際商品の場合には、依然として、B/Lによ
る転売が行われているようである。Incoterms 2010 序文に含まれるインコタームズの特徴 9(string sales)及
び FOB, CFR, CIFのそれぞれの助言メモおよび A4(De
l
i
ve
ry)参照)。
しかし、コンテナ運送による革新の利益を享受したい企業は、運送品を担保に取る荷為替より、信用保証に
よる非荷為替型の取引きを創案した(注、新堀、
『 現代貿易売買』
(同文舘)
、第 4 版、
2005 年、第 3 章第 1 節(6)
「船荷証券の危機」212 頁以下参照)。すなわち、前払い送金決済、契約品の仕向地到着後送金払いの決
済条件であれば、契約品の引渡しと代金決済が同時的な交換条件ではないので、運送書類の権利証券性の
意義は薄れる。したがって、船荷証券の危機は生じないし、SWBの使用で、売買当事者、運送契約当事者
間の問題は十分解決できよう。
その一つが、Standby L/Cや契約保証(Contract Guarantee、Demand Bondなど)に支援された取り引
きであり、第二がSWBの使用である。本支店間、関係企業間取引では、SWBの使用単独で対応できるが、
そうでないときは、両者を併用することになろう。その場合、Standby L/Cなどを発行する機関の取引当事者
に対する経営の健全性に対する査定能力が要になる。第三の方法として、B/Lの仕向地での発行が考えられ
るが、仕向地の決済関与銀行をB/L 上の荷受人とし、担保権を確保することができるようなB/Lの発行を、輸
出者である荷送人が運送人の仕向地にある運送人の支店または代理店に請求し、輸出者に信用を供与するこ
とは、取引上、現実的ではない。
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いずれの場合であっても、SWBの使用に伴う不安が全くなくなることはない。日本法では(イギリス法も同じだ
が)
、国際海上物品運送契約であれば、SWBにもヘーグ・ヴィスビー・ルールズの適用があるが、外国法が
準拠法の場合、自動的にSWBにそのルールズが適用されるわけではない。日本法やイギリス法の方が、立法
の立てつけが取引の現実に適している。しかし、これは、SWBにヘーグ・ヴィスビー・ルールズの適用を明記し
ておけば解決できるだろう。また、JIFFA B/LのようにCMIルールズに準拠する旨の規定でも、同様の効果が
ある。なぜならば、同規則第4条1項が、ヘーグ・ルールズまたはヘーグ・ヴィスビー・ルールズ批准国または加
盟国の国内法などの適用を定めているからである。また、運送契約当事者として、荷送人(主に輸出者)は運
送人に対する運送品処分権を行使でき、荷受人を変更する権利を有しているが、CMI ルールズ第 6 条 2 項に
より、事前に処分権を放棄するか荷受人に権利譲渡する旨を券面に記載してあれば、荷受人の立場は守られ
る。さらに、CMIルールズ第 3 条は、
(輸出者である)荷送人は、荷受人の代理人として運送契約をしたものとし、
運送人対する荷受人の訴権を認めている。これにより、運送人の過失により運送品が仕向地に到着しなかった
ときでも、輸入者である荷受人が運送人に損害賠償請求をすることが可能になる。
これにより、FOB, FCA, CIF, CIPなどの積地渡し型の売買では、出荷後に運送品の物理的滅失、損傷
の負担リスクは輸入者である荷受人に移転するとされるが、全損となり仕向地に運送品が到着しなくとも、荷受
人は運送人に対する訴権を行使できるので、B/Lの使用の場合と同様になるだろう。ただし、運送品の滅失・
損傷が運送人免責とされているときは、荷受人は貨物保険で求償することになろう。
《結び》
海上運送書類は、国際商取引及び海上運送を取り巻く環境変化に対応する形で、前述のように、受取式
B/Lの承認、SWBの使用などを促してきた。そして、CMI規則を援用してSWBの使用に切り替えることが「正
統な」船荷証券の危機に対応する方法であり、貿易取引の電子化に適した対応でもある。それが、UN/
CEFACTの勧告第12号の趣旨である(JASTPRO 報告書、p. 142 以下参照)。したがって、国際商取引及
び海上運送を取り巻く環境変化を良く認識し、常に、取引の具体的な状況感覚を磨き、合理的な対応を創案
する姿勢と学習態度が求められる。CMI規則は条約ではないが、SWBの使用に関する取引の慣行(usage
of trade)
として採択し、海上運送書類を紙のB/Lに限定しない日本法などに倣い、国際海上貨物運送条約
の体系に統合する(incorporate)することが望ましい。とりわけ、親子会社間取引、関係会社間取引の場合
には、荷為替決済に依存する必要はないのでなおさらである。そうした取引関係にないときは、保証の仕組み
を取引条件に導入し、SWBの使用を採択すべきだろう。
なお、併せて、国際定期物品運送契約が B/Lの約款に基づく附合契約性を帯びた性質のものであることも
銘記すべきである。B/L が発行されなくとも、あるいは裏面約款のない略式のB/L であっても、さらにはSWBで
あっても、使用する運送人のB/L 約款に基づく運送契約であることを忘れてはならない。その約款は、初回の
取引のときに入手して、主要約款を点検しておくべきもので、相手方と何回も運送取引の経験がありながら、裏
面が白紙のB/L では運送条件が不明であり、運送人のB/L 約款に拘束されないと突如主張することは企業
取引においては許されないだろう。他方、運送人側は、常に、B/LやSWBなどの運送書類の取り扱いおよび
内容(terms and conditions)を分かり易く広報すべきである。
(
次回は、国際複合運送とSCMに関連する判例を参考に、取引の具体的状況を商流と物流を中心に
検討したい。
̶9̶
)
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椿 弘次氏 略歴
1966 年 早稲田大学商学部卒業。
1970 年 同上、博士後期課程満期退学。
1973 年 同上専任講師に就任後、助教授、教授を経て、2014 年名誉教授となる(国際商取引専攻)。
この間、Stanford Law School 留学。財務省税関研修所、日本貿易学会、国際商取引学会
の役員を歴任する。
現在、早稲田大学海法研究所顧問。
以上
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記事2. 国連CEFACTからのお知らせ
2-1 1 September 2014: Registration for the 24th UN/CEFACT Forum in New Delhi, India
(October 27 to 31, 2014)is now open.
2014 年 9月1日
2014 年 10月27日∼ 31日にインドのニューデリーで開催される、第 24 回国連 CEFACTフォーラムの参加
登録受付を開始しました。
2-2 16 September 2014: UN/CEFACT Travel & Tourism Domain is pleased to request the
public review for the BRS of Destination Travel Information (DTI) Process Project, the
purpose of which is to provide businesses or consumers with destination travel information
of such tourist facilities as designated World Heritage properties, public facilities (PublicToilets, Emergency Ward, Police Office, etc.) and to share regional GPS coordinates with
them.
2014 年 9月16日
国連 CEFACT 旅行・観光領域は訪問地旅行情報プロセスプロジェクトのビジネス要求仕様のパブリックレ
ビューを通知します。この目的は、観光等ビジネス業界及び観光客に対して特定の世界遺産施設、公共施
設(公共トイレ、緊急医療施設、交番等)
といった訪問地に於けるツーリスト用の施設の旅行関連情報を提
供し、地域ごとのGPS 情報を共有することにあります。
The review period is 60 days from the public review start date of the document (until
November 16).
Any comments should be sent to project chair Mr. Gil-Jun Ko.
レビューの期間は当該ドキュメントに対するパブリックレビュー開始日から60日間です。
(2014 年 11月16日期
限)。コメントはGil Jun Ko 氏に送付ください。
2-3 以下のフォーラム、総会の開催が発表されています。
○第 24 回国連 CEFACTフォーラム
期間 2014 年 10月27日∼ 31日
場所 ニューデリー・インド
○第 21 回国連 CEFACT 総会
期間 2015 年 2月16日∼ 17日
場所 国連欧州本部 ジュネーブ・スイス
○第 25 回国連 CEFACTフォーラム
期間 2015 年 4月20日∼ 24日
場所 国連欧州本部 ジュネーブ・スイス
以上
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記事3.『ばいざういんどせいらー』
日本列島船の旅
〔クルーズ船への登竜門、名古屋∼仙台∼苫小牧 豪華カ―フェリー 1,330km の旅〕
○歴史の古い長距離航路
名古屋∼仙台∼苫小牧の航路の歴史は古く1973 年に遡る。尤も当時は大分∼名古屋航路を「太平洋沿海
フェリー」が 1972 年に「あるかす」
(9,696トン)により運航を開始した。つまり当初は大分∼名古屋∼仙台∼苫
小牧の海上 2,000kmを3 泊 4日で結ぶ画期的な航路として誕生したのである。その後、諸事情があり名古屋
∼大分航路は廃止され、社名を「太平洋フェリー」に改め現在に至っている。
「きそ」
(15,795トン)
「いしかり」
(15,762トン)により名古屋∼仙台は隔日1 便、バイパス効果のある仙台∼苫小牧間はこれに「きたかみ」
(13,937
トン)を加えデイリーサービスを行っている。運航ダイヤは名古屋発では19 時に出港し翌日16 時 40 分に仙台に
入港、3 時間の停泊中に車両の積卸し、乗客の下船後に陸上スタッフによる船内の掃除がなされるが、その後
に本船女性乗組員の手で入念なチェック及び掃除がされる。聞いてみたところ浴槽の水あか、髪の毛、備品
の数や床のゴミ、埃などのチェックらしい。まさに「おもてなし」の精神で脱帽である。全ての乗船客への対応
が出来次第、乗船となり、最終地苫小牧向け仙台を出港し約 15 時間の航海の後本船は翌々日11 時に入港
するという40 時間の船旅である、前号で紹介した日本海航路の豪華船の20 時間で物足りなく感じた諸氏には
お薦めかも知れない。一方、苫小牧発も19 時の出港で翌日10 時には仙台に入港し12 時 50 分に出港、翌々
日10 時 30 分には名古屋に入港するという39 時間 30 分の旅である。バイパス効果のある仙台∼苫小牧は特に
乗船客が多い様である。因みに名古屋∼仙台∼苫小牧の所要時間は30 年前と殆ど変っていない。また、名
古屋∼苫小牧利用者に対して震災前は仙台停泊時の一時上陸が出来たが、今は一時上陸は出来ずに船内
で過ごすことになる。万が一震災が起こったことを考えての安全措置である。
「いしかり」から見た姉妹船「きそ」
名古屋∼仙台航海中の14 時 30 分頃に2 隻の船は
汽笛を鳴らしすれ違う。
名古屋を出港した船は翌朝、房総半島沖を航過する。
○豪華船「きそ」
「いしかり」
「きそ」は2005 年、
「いしかり」は2011 年の就航である。クルーズ専門誌である「クルーズ」が毎年行うクルー
ズシップ・オブ・ザ・イヤ―というアンケートがある。そのフェリー部門で1992 年以降、人気投票 1 位にランクさ
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れているのが先代「いしかり」であり、その後 2005 年に「きそ」に首位の座を譲り、2011 年は「いしかり」と同社
の所有船は22 年もの長い間、首位の座を守り続けている。果たしてどのような船か?
?
?。まずは船室から見てみ
よう。
「いしかり」を例にとれば、1 室しかない52㎡のロイヤルスイートルーム、スイートルーム、それに2 室あるセミ
スイートルームで4 室 12 名。さらにバストイレが備わった和室及び洋室の特等室が 63 室で193 名。シャワー、ト
イレのついた1 等室が洋室、和洋折衷、和室、バリアフリー洋室計 80 室で220 名、船客定員 777 名の55%が
バスまたはシャワー、トイレ付きで外航クルーズ船並の船室である。その他は完全セパレートタイプのベットルーム
と大部屋の2 等和室とからなるが大部屋の2 等和室の定員は僅か 68 名である。大部屋と言っても景色の良い
最上階に設けられ一人一人のスペースも広くマットレス、柔らかい枕、キルケットが備えられている。人とのふれ
あいを求め寧ろこの様な船室を選ぶ方も珍しくないようである。
その他船内は、220 名程度収容可能なバイキングレストラン、軽食コーナーが併設された長い展望通路、展
望浴室(「きそ」は「サウナ」も設備されている)
、OAスペース、キッズルーム、カラオケスタジオ、ペットルームの
他に同船自慢の140 名程度収容可能な「劇場」が設備されている。エントランスも3 層吹き抜けでピアノ及びソ
ファーやマッサージチェアーが置かれ、ゆったりとした作りとなっており、これら5 階∼ 7 階を複数の「展望エレベー
ター」が行き来する。まさに海に浮かぶ豪華リゾートホテルである。筆者も以前外国船による8 泊 9日の本格的な
クルーズを楽しんだが、日本船社が企画する日本船による1 ∼ 2 泊程度のクルーズならいざ知らず、外国の大
型客船によるクルーズは昨年、今年と行われた日本発着のクルーズでも最低 1 週間程度であり、現地に飛んで
行って船に乗るならば最低 10日は要するであろうし旅費も馬鹿にならない。言わばこのフェリーは手軽なクルー
ズ船と思えば良いのである。演出するのは旅人次第、バイキングスタイルのレストランに少しおしゃれして行くのも
良い。早朝のデッキでの散歩も良し、ロイヤルスイートルーム、スイートルーム、セミスイートルームで我が家の様
な気楽な40 時間を過ごしても良い。但しこのロイヤルスイートは1 室しかなく入手が困難なので売り出しと同時に
押さえるという言わばフェリーの「プラチナチケット」である。加えて、スイート系 4 室(ロイヤルスイートルーム、スイー
トルーム、セミスイートルーム)
は全て前方に「展望浴室」があり船内のバイキングでの食事が無料となっている(セ
ミスイートルームは前方のみ窓を有する為に夜間はカーテンを開けられない)。ロイヤルスイートルームはある外航
クルーズ船の2 番目に上級の部屋と比べ設備、広さ等に遜色はない。無論クルーズ船だと1 泊 10 万円は下らな
いであろう。
ちなみに「きそ」の船内のコンセプトは「南太平洋のしらべ」で船内は暖色系であり「いしかり」は同「エーゲ
海の輝き」でありモダンですっきりとした涼しさを感じる。筆者は夏の北海道旅行には涼しさを求め「いしかり」に
乗り冬には「きそ」に乗る。少しこだわりすぎてはいるが・・・・・・。
ロイヤルスイートルーム居室「いしかり」
ベッドルーム
(更に前方に展望バスルーム、トイレ、
パウダールームがつく)。
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○食事
40 時間も「手弁当」で乗られる読者は少ないと思われるので食事について今回は少し触れておこう。朝昼夕
ともにバイキング形式であり、朝昼は1,000 円、夕食は2,000 円である。朝昼は1 時間半の営業で夜は2 時間の
営業となる。名古屋及び苫小牧発は18 時からの営業となる、夕食を例に取るとメニューはグランドメニューであ
る焼き立ての「牛ロースステーキ、ガーリックチップ・クレソン添え」
「3 種類の海鮮握り寿司」の他に季節に合わ
せた惣菜が 10 種類程度、麺類、中華の蒸し物が 1 ∼ 2 品、サラダバー、フルーツ、スイ―ツ、ドリンクバー等
であり値段からも納得がいくメニューとなっている。朝は和食中心のメニューであるがパンやヨーグルトもある。名
古屋発の便では進行方向右舷にあるレストランで大きな窓に差し込む朝日を浴びながら取る朝食は格別である。
昼はパスタ、麺類、カレー等であるが、食事時間に食べはぐれた場合や軽食で軽く済ませたい場合には軽食
コーナーに行けば麺類、カレー等 10 種類程度の軽食メニューや飲み物、アイスクリーム、アルコール類もある。
また、この軽食コーナーでは名古屋∼仙台間では午後 2 時頃にシェフがパンやシュークリームを焼いて販売する
という一寸嬉しくなるサービスもある。
軽食コーナーも併設した左舷の広く長い展望通路「きそ」
バイキングレストラン
「サントリーニ」
「いしかり」
○イベント
先に述べた「劇場」であるが毎晩 1 時間のショ―が開催される。無論、入場料は無料である。内容は主に
音楽であるが団塊世代向けに1960 年半ばから後半にかけて人気を表した所謂「GS(グループサウンズ)」を催
すこともあり、その他はピアノ、フルート、揚琴と呼ばれる中国琴、バイオリン、民謡、三味線等多種に渡る。
出演者は皆プロのアーティストであり時には乗客も巻き込み楽しませ方を良く考えているようである。アーティストの
皆さんは4日かけて名古屋∼苫小牧を往復するので大体 1カ月で8 組が入れ換わり乗船するようであり、中には
日本が世界に誇る豪華クルーズ船に乗って演奏を披露したアーティストもいる。また「いしかり」のピアノラウンジ
に置いてあるピアノは先代「いしかり」より受け継ぐ非常に珍しい「クリスタルピアノ」である。
更に、なんでもない2 隻のすれ違いを同社は「イベント」として捉えており興味深い。仙台∼名古屋の航海で
は2 隻の「きそ」
「いしかり」の船上交歓が行われる。12 時 50 分に仙台を出港した船と16 時 40 分に仙台に入
港する船であり大体 14 時 30 分頃に福島県相馬市沖で左舷同士ですれ違う。距離は900m程度であろう。お
互い39km/hの速力で航海しているので相対速力では毎秒 22m 進むのであり、199.9mの船がすれ違うのは
僅かに18 秒程度であるがデッキには乗客が鈴なりになり見知らぬ旅人に手を振りあいメッセージを送る。船同士
が汽笛の長音の挨拶をするのも心憎い演出か。また、この汽笛を鳴らす順番は通常だと後輩の船長が乗り組む
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船の方から先輩船長の乗り組む船に、敬意を表し汽笛を鳴らし、先輩船長はそれに応えるというもので、法的な
ものはなく
「海の慣習」に基づいて行われているのであろう。因みに船尾に掲揚してある国旗については、
「国旗
の敬礼」なるものがあり、最初に国旗を半揚にして相手船が半揚にしてまた全揚にするのを待って全揚にする儀
式があるがこれは「船のプライオリティー」が関係する。低いのは一般商船で次が官公庁船で最後に艦船となる。
船内ラウンジショ― この日はピアノ及び昔のグループサウンズ
「きそ」劇場にて
苫小牧入港前の「お別れコンサート」
「きそ」
ピアノラウンジにて
○浮かぶ宮殿?
「きたかみ」
仙台∼苫小牧を航海する(毎年 1月、2月の「きそ」
「いしかり」のドック時には名古屋迄延航する)
「きたかみ」
について触れておこう。同船は昭和の終年の1989 年に就航した25 年の大ベテランである。昭和の臭いのする
「名船」である。船内は木目調でクラシックな趣があり「きそ」
「いしかり」が「リゾートホテル」ならば言わばこちらは
「宮殿」であろう。最前方には昔のカーフェリーには必ず設備されている船の進行方向が眺められる落ち着いた
「展望ラウンジ」がある。基本コンセプトは「スターダストの詩」であり船内全体が温もりを感じる落ち着いたムード
である。さらに同船は「きそ」の就航に合わせ 2005 年に船内の大改装を行っている。ロイヤルスイートルームはな
く、スイートルームが最上級の船室となるが「きそ」
「いしかり」のロイヤルスイート同等かそれ以上に広い部屋であ
り昔のバブルの名残りを乗せてかプライベートバーカウンターまである。またこのスイートルームは2 室とセミスイート
ルームが 4 室と計 6 室あるのでこれらのチケットは比較的取り易いようである。因みに船が古いのが理由か本船
の旅客運賃は「きそ」
「いしかり」と比較して1 割程度安価に設定されている。また、スイートルーム、セミスイート
ルームの浴室は展望タイプではない。
1989 年就航の「きたかみ」
(13,937トン)
豪華なカウンターバー付きのスイートルーム
「きたかみ」
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○最後に
筆者がよくやる船旅は1 泊 2日の名古屋∼仙台 海上 21 時間余の船旅である。名古屋から週末に乗船する
際には高速バスか新幹線で土曜日の夕方に名古屋に入り、翌夜には帰京できる。仙台から乗船する際には朝
の新幹線で仙台に向かい、これも帰途は高速バス、及び新幹線の2 者択一が出来る。フェリーの早期割引チ
ケットと高速バスを利用すれば 1 泊 2日の「クルージング」が土日で安価に体験できる。
以上
̶ 16 ̶
̶ 協会ホームページのリンク集のご案内 ̶
http://www.jastpro.org/link/index.html
当協会のホームページのリンク集には、当協会の活動にご興味を持たれる方や日本輸出入者コードの
利用者の方々のご参考として関係諸組織・団体ホームページへのリンクを下記の分類で掲載しております
のでご活用下さい。
▲
当協会に関係する我国の官公庁・公的機関(独立行政法人を含む)
▲
輸出入関係手続きに関係する業界団体等
▲
輸出入関係手続きに〔国内物流〕関係する情報源と用語集
▲
国際空港の公式ページ
▲
国際貿易港の公式ページ
▲
貿易簡易化や電子商取引の標準化組織・団体(国内)
▲
貿易簡易化や電子商取引の標準化組織・団体(海外)
▲
貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化に関係する国際機関
▲
その他の組織・機関
JASTPRO 第40巻 第6号 通巻第432号
・禁無断転載
平成26年9月25日発行 JASTPRO刊14-06
発 行 所 (一財)
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電 話 03- 3555- 6031
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編 集 人
山 内 大 二 郎
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電子版は、当協会ウェブページのお知らせ欄にてご覧いただけます。
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