コラム① ヒグマのウンコは大輪のバラの花 「バラが咲いた ( マイク真木 )」でフォークソングと出合い、「バラの恋人 ( ワイルド ワンズ )」の GS から「ローズガーデン ( リン・アンダーソン )」などのバラの曲は青春 の思い出。 学生時代に尾瀬と出合い、 そして今、 雨竜沼湿原で。 陸域でも水域でもない「湿っ 地」、2 つの山岳湿原の標高を足すと約 2350m、大雪山旭岳より高い。どうやらこの男、 高い所が好きなようだ。雨竜沼湿原まで往復 7 時間、 約 2 万歩はけっこう辛いが「天 上の花園」は惹きつけて離さない魅力に今日も登る。 6 月、遅い春を迎え、チシマザクラのお花見だ。7 月、オオタカネバラが清々しい。 チングルマ、ホロムイイチゴ、クロバナロウゲやマルバシモツケを探そう。ナガボノ シロワレモコウが揺れ、南暑寒岳の道すがらウラジロナナカマドの白い花。そして花 後の楽しみは果実、北欧では「クラウドベリー」のホロムイイチゴが真っ赤に熟して いる。頬張るとイチゴ類の味とは違う、ねっとりと濃厚な食感が口腔に広がる。オオ タカネバラ、ウラジロナナカマドも赤い実に熟している。 初秋の風が流れる 2013 年 9 月。まだ緑が残る湿原の草の上に突然と橙赤色の巨大な 塊、直径 30 - 40cm、じっくり観察。表面は粒々、押しても堅い。推理は「ウラジロナ ナカマドの果実だけを食べたヒグマの糞」。それは南暑寒岳をねぐらとするオスのヒグ マ「寒太」の「置き土産」だった。果実を腹一杯まで食べる寒太も寒太だけど、一カ 所に野積みで脱糞される果実も本来の種子分散の役目を果たせず、これも迷惑なこと だ。ましてや湿原の中にウラジロナナカマドが芽生えられても困るのだが。 ヒグマの糞の形や色は、太さ 7- 8cm ほどの俵型からべったりとした軟便など、新鮮 な深緑色から時間の経過でこげ茶色から黒色と色調変化する。食物により糞の色も異 なり、 「ウラジロナナカマドの糞は赤っぽい」と読んだ事がある。ドーム型のベリーケ ーキのような橙赤色の糞。今まで見た「糞」の中で、それは「糞」のイメージを超越 した最も美しい「ウンコ」だった。臭くはなく、さりとて甘い香りも無かったが、そ れは湿原に咲く美しい大輪のバラの花だった。( ヒグマの糞の写真は p18 に掲載 ) (佐々木 純一) − 22 −
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