第15号 - 栃木県立がんセンター

平成22年1月15日発行
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栃木県立がんセンター(Tochigi Cancer Center)
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基本理念
学問に裏づけられた 最高
の技術を 愛の心で 県民
の皆様に提供します。
基本方針
1.患者さんの権利を尊重し、
相互の理解のもとに診療
をすすめます。
2.病院スタッフのチームワ
ークにより、県民のため
の最良のがん医療を実践
します。
3.がん診療の拠点病院とし
て、病診連携を重視し、
新しい医療の開発に努め
ます。
1986
※当センターは(財)日本医療機能評価機構による病院機能評価の認定を取得しています
第15号
栃木県のがん登録と栃木県立がんセンターの役割
研究所長
固
武
健二郎
がんは栃木県における死亡原因の約30%を占めていますが、平成20年のがん死亡
は前年よりもわずかながら減少しています。私たちはがん死亡を減少させることを究
極的な使命として日常診療を行っているところですが、大局的な見地からがん制圧の
ための対策を立て、その有効性を検証してゆくためには、がんの実態を把握してゆく
ことがきわめて重要と考え、その目的達成のために「がん登録」を推進しています。
がんの実態把握の基本的な指標には、死亡率(数)、罹患率(数)、生存率があり、死
亡動向は国の人口動態統計から推計されています。がん登録の主な役割は、がんの発
生状況を知るための罹患率(数)とがん医療の効果を評価するための生存率の動向の把握です。わが国の地
域がん登録は昭和30年代に始まり、現在35道府県市で実施されていますが、人口動態統計に匹敵するよう
な日本全体をカバーする仕組みは整備されていません。栃木県のがん登録は平成5年から県の委託を受け
た栃木県医師会が実施してきましたが、平成20年からは県が直接に担当し、がんセンター内に設置された
栃木県地域がん登録室においてセンター研究所の疫学研究室の指導・管理のもとに登録業務が行われてお
り、すでに平成18年までの届出情報が集計され報告書として公開されています。しかし、栃木県に限りま
せんが、わが国の地域がん登録は届出漏れが多いという問題があります。登録の信頼性を表す指標のひと
つにDCO(Death Certificate Only:死亡情報のみで登録されたがん)があり、DCOが低いほど登録の信
頼性が高いと評価され、国際的には10%以下であることが求められています。現在、栃木県のがん登録の
参加医療機関数は約50〜60、届出票は年間7000〜8000枚ほどですが、残念ながらDCOは約40%と高率
です。このように、わが国のがん登録は欧米のがん登録の先進国に立ち遅れていると言わざるをえない状
況にありますが、がん対策基本法に基づいて策定されたがん対策推進基本計画において重点的に取組むべ
き課題のひとつにがん登録が取り上げられ、具体的な目標として、地域がん登録の基盤となる院内がん登
録を実施する施設の増加、がん診療連携拠点病院以外の医療機関からの登録の推進、登録実務者の育成、
がん登録に関する国民の認知度調査などが示されました。私たちはこれを機にがん登録が質・量ともにさ
らに改善することを期待しつつ、今後とも栃木県のがん登録の牽引役としての役割を果たしてゆきたいと
考えています。
以上、地域がん登録を中心に述べましたが、わが国のがん登録システムには地域がん登録のほかに、院
内がん登録と臓器別がん登録があります。それぞれに目的と役割を異にする登録システムですが、情報を
有機的に連携することで網羅的で高精度な登録システムを構築することが可能になると考え、多施設共同
研究として新しいシステムを検討中です。
がん制圧の基調となるがん登録の推進に一層のご理解、ご協力をお願いいたします。
目
◆栃木県のがん登録と栃木県立がんセンターの役割 …1
◆乳がんの診断と治療のトピックス ……………………2
次
◆平成20年度手術状況 ……………………………………3
◆外来診療のご案内・交通のご案内 ……………………4
1
乳がんの診断と治療のトピックス
乳がんの画像診断
画像診断部
黒
木
嘉
典
乳がんの画像診断は最近とくに進歩しました。今回は一般に広く行われているマンモグラフィ(乳房撮
影)と超音波検査とやや特殊なMRI(磁気共鳴画像診断装置)について説明します。
マンモグラフィはレントゲンが発見した「X線」を使う検査です。この検査は乳がん診断の中心とされ
ています。がんの中には石灰化と呼ばれる「カルシウム」が貯まることがありますが、マンモグラフィで
はこの石灰化を鋭敏にとらえることができます。検査時間は約10分程度ですが乳房を引っ張り、薄く押し
つぶして撮影するので人によっては痛みを感じることがあります。欧米では早くからマンモグラフィによ
る検診が行われ、その有用性は明らかとなっています。最近、米国では乳がんで亡くなる人が減少してき
ていますが、これはマンモグラフィの効果が大きいのだろうと考えられています。本邦でも2005年度から
検診の基本的な検査となりました。当センターはマンモグラフィの認定施設で、検査は最新式のデジタル
マンモグラフィ撮影装置で認定された女性の診療放射線技師が担当し、読影認定医が診断しています(図
1)。当院ではコンピューターによる画像診断支援システムの研究など国内でも最先端の研究も進められて
います。
超音波検査の原理は漁船で利用されている魚群探知機と一緒です。検査時間は約10分程度です。乳房に
潤滑用のゼリーを塗り、その上を撫でるようにして検査をします。全く痛みはありません。超音波検査で
は乳がんの表面のデコボコや内部の状態、血流の多少を観察することが可能です(図2)。マンモグラフィ
と組み合わせて検査をすることが多く、お互いを補完しあっています。
図1 マンモグラフィ
図2 超音波検査
図3 MRI
MRIはX線を使わずとても強力な磁石と電磁波で体の中を調べます。非常に強力な磁場を発生するので
部屋の中には磁気を帯びるものは絶対に持ち込めません。刺青(タトゥー)や化粧品の一部には色を出す
ために金属の粉が含まれている場合がありますが、これも禁止です。検査は腹ばいの姿勢で約25分かかり
ますが、検査そのものに痛みはありません。MRIはがんの性状や広がりなどを詳しく評価するうえではな
くてはならない検査です。欧米では乳がんの診療において必須と考えられています。また乳がんになりや
すいとされている人の検診も推奨されています。当センターでは最新式のMRIを導入し非常に高度な検査
を行っています(図3)。また研究面でも国内外で成果が発表されており診断の進歩に寄与しています。
乳がんの画像診断は進歩の非常に早い分野でもあります。今後も研究面からのフィードバックを生かし
て多くの患者さんの利益となるように地域がんセンターの責務を果たしていく所存であります。
乳がん手術療法について
乳腺外科
安
藤
二
郎
乳がんの治療は日々進歩を遂げているがん治療のひとつです。乳がん治療の中心は手術療法ですが、放
射線療法や薬物療法(ホルモン療法、化学療法、ハーセプチンなど)を併用することによって治療成績を
低下させることなく患者さんの肉体的、精神的負担を軽減する方向に手術方法の縮小化が進んでいます。
とくに乳房温存療法は放射線治療を組み合わせることで乳房切除術と同等の生存成績を示すことが証明さ
れて以来徐々に増加し、現在では表に示しますように乳房温存手術が手術症例の66%に行われるまでにな
りました。乳房温存手術の適応となる腫瘍径は基本的には3cm以下と考えられ、それ以上の腫瘍径の患者
さんには術前化学療法を行い腫瘍縮小がみられた場合には可能なら温存手術を行うことができることを説
明し、対応しています。2008年は手術症例の19%、35例は術前化学療法を受けられ、そのうちの60%、
21例は乳房温存手術で対応することができました。また2002年より開始したセンチネルリンパ節生検も
2
徐々に適応を拡大し、2008年は手術症例の70%、129例の患者さんに施行しました。そしてセンチネルリ
ンパ節生検を受けた129例のうち107例は非郭清、2例が低腋窩郭清で対応でき、非浸潤がんで腋窩非処置
例14例を含めた123例(手術症例の67%)が低または無侵襲の腋窩処置で対処することができました。乳
腺外科治療は術後のQOLの維持と高い局所コントロール率の維持を両立させながら行わなければならない
ので極めて繊細な術前診断、術後病理診断、そして適切な薬物療法、放射線治療が必要とされます。その
ような観点から、多職種(外科、画像診断、放射線治療科医師、乳腺専門看護師、放射線技師、超音波検
査技師、細胞診スクリーナー、薬剤師、外部医師)による乳腺カンファレンス(手術症例、術後病理診断
の検討)を行い、医療の質のみならず総合力としての乳癌治療の向上を図っています(毎週火曜日朝7:
30より行っていますので、乳がん診断/病理/診療の勉強をされたい方は外科の安藤までご連絡ください)。
今後もがんセンターとしての役割、1)先端的医療を安全にそして適切に診療に取り入れること、2)先
進的研究、臨床試験に参加すること、3)県内、病院内での教育、研修を行い乳がん診療レベルの向上を
図ることを大きな目標として、業務を遂行していきたいと考えております。
2008年乳がん手術療法実績
・手術症例数 ……………………184例
・乳房温存手術 …………………66%(122例)
・センチネルリンパ節生検 ……70%(129例)
・腋窩リンパ節郭清の省略 ……67%(123例)
平成20年度手術状況
1)月別件数
(単位:件)
月 別
20.4
5
6
7
8
9
10
11
12
21.4
2
3
計
件 数
144
136
137
160
136
137
166
150
128
123
135
151
1,703
2)麻酔別件数
(単位:件)
麻 酔 別 全身麻酔 硬膜外麻酔 腰椎麻酔
件 数
1,136
15
105
局所麻酔
NLA
伝達麻酔
静脈麻酔
その他
計
1
2
1
1,703
443
3)科別件数
(単位:件)
科
胸 部 外 科
名
肺
他
そ
件
が
の
が
の
小
乳 腺 外 科
消 化 器 外 科
頭 頚 科
婦 人 科
乳
他
そ
計
が
の
ん
ん
他
が
の
小
計
食 道 が
胃
が
肝 胆 膵 が
大 腸 が
他 の が
そ
の
小
計
舌
が
上 顎 が
咽 頭 が
喉 頭 が
甲 状 腺 が
他 の が
そ
の
小
計
子 宮 が
ん
ん
他
ん
ん
ん
ん
ん
他
ん
ん
ん
ん
ん
ん
他
ん
数
83
9
5
97
186
2
188
25
140
75
116
13
77
446
4
19
30
5
34
28
24
144
114
科
名
卵
他
そ
婦 人 科
泌 尿 器 科
膀
前
腎
他
そ
脳 外 科
脳
そ
骨軟部腫瘍科
悪
そ
件
巣
の
が
が
の
小
計
胱 が
立 腺 が
が
の が
の
小
計
腫
の
小
計
形 成 外 科
外
来
麻 酔 科
合
ん
ん
ん
ん
他
数
59
1
47
221
59
184
9
11
193
456
瘍
他
性
他
の
小
ん
ん
他
計
−
小
計
乳 腺 外 科
そ の 他 の 科
小
計
神経ブロック
小
計
計
31
34
65
22
22
21
43
64
1,703
3
外来診療のご案内
交通のご案内
※【午後】の表示以外はすべて午前の診察になります。
変更になる場合がありますので事前にご確認ください。 (平成22年1月15日現在)
診療科
血液内科
内
JR宇都宮線
月
火
水
木
金
加納康彦
角田三郎
田中 勝
阿久津美百生
和泉 透
山本千鶴
●JR宇都宮駅西口から関東バス「江曽島行」
で「がんセンター前」下車。
徒歩1分(計約25分)
富永慶晤
科
(肺・循環器他)
消化器内科
平原美孝
関口隆三
小林
(胃・腸・肝)
(胃・腸)
(胃・腸)
望
平原美孝
山本孝信
(胃・腸・肝)
(肝・胆・膵)
東武宇都宮線
山邉裕一郎
●江曽島駅東口から関東バス「JR宇都宮駅
行」で「がんセンター前」下車。
徒歩1分(計約5分)
(胃・腸)
がん予防・遺伝カ
ウンセリング外来
菅野康吉
【午後】
児玉哲郎
森 清志
呼吸器内科
中原理恵
松隈治久
呼吸器外科
禁煙サポート
(緑の外来)
外
(
科
消化器外科
乳 腺 外 科
笠井
神山由香里
)
尚
東北自動車道
中原理恵
松隈治久
大畑賀央
●鹿沼インターチェンジから宇都宮方面へ向
かい、滝谷町交差点を右折南進し、JR陸
橋を越え3つ目の信号を左折(約20分)
神山由香里
【午後】
清水秀昭
松井孝至
富川盛啓
北村東介
小山靖夫
(食道・他)
(大腸・他)
(胆・膵他)
(乳腺・胃・他)
(大腸・他)
原尾美智子
固武健二郎
松井孝至
固武健二郎
稲田高男
(乳腺・他)
(大腸・他)
(大腸・他)
(大腸・他)
(胃・他)
安藤二郎
尾形佳郎
稲田高男
安藤二郎
菱沼正一
(乳腺・他)
(肝・胆・膵他)
石橋雄次
尾澤
(胃・食道他)
至日光
(胃・他)
(乳腺・他)
(膵・胆他)
菅家大介
松下尚之
白川博文
【午後】
(乳腺)
(食道・他)
(肝・胆・膵他)
巌
(肝・胆他)
●鹿沼インターチェンジから宇都宮方面へ向
かい、宮環鶴田陸橋を右折。下砥上アンダ
ーに入ってすぐ江曽島方面へ左折し7つ目
の信号を左折(約20分)
国
道
119
号
吉澤浩次
【午後】
(乳腺)
安藤二郎
泌尿器科
婦
人
科
川島清隆
新保正貴
尾澤 巌
川島清隆
石井 元
鎌田裕之
関口 勲
鎌田裕之
関口 勲
三宅
智
【午後】
三宅
三宅
智
【午後】
智
【午後】
粕田晴之
科
骨軟部腫瘍科
ストーマ相談
腫瘍内科
放射線治療科
山中康弘
浜本康夫
片野 進
滝谷町
交差点
市役所
不動前
南宇都宮駅
4号
国道
セが
ンん
タ
ー
湯沢いり子
バス停
江曽島駅
割田悦子
浜本康夫
井上浩一
山中康弘
東武
宇都宮線
井上浩一
JR
宇
都
宮
駅
文化会館
ア下
ン砥
ダ上
ー
竹内克仁
中山ロバート
山中康弘
割田悦子
井上浩一
田
川
JR日光線
【午後】
竹内克仁
中山ロバート
固武健二郎
湯沢いり子
山中康弘
浜本康夫
片野 進
博
物
館
線
粕田晴之
至那須塩原
宇東
都武
宮
駅
横山純吉
中谷宏章
中谷宏章
頸
鶴宮
田環
至 陸
東 橋
北
自
動
車
道
・
宇
鹿
都
沼
宮
I
環
C
状
(偶数週)
麻酔科ペインクリニック
頭
川島清隆
飯田勝之
新保正貴
鎌田裕之
関口 勲
植木敬介
脳神経外科
緩和ケア科
飯田勝之
庁
ホテル・ザ・セントレ宇都宮
至
大
谷
【午後】
(乳腺・他)
肝がん予防外来
県
至栃木
川
田
入
口
J
R
東
北
新
幹
線
J
R
宇
都
宮
線
至小山
※セカンドオピニオン外来(午後のみ)
月
消
化
器
水
木
清水秀昭
火
菱沼正一
固武健二郎
尾澤
金
(主に食道)
(主に胆・膵)
(主に大腸)
(主に肝)
巌
初診・再診ともに予約制です。予約センターに
お電話のうえ、受診日をご予約下さい。
浜本康夫
血
加納康彦
阿久津美百生
和泉透
角田三郎
液
◇予約センター
TEL 028(658)5012 (直通)
平日 AM 8:30〜PM 4:30
(担当医は週替わり)
呼
吸
器
児玉哲郎
森 清志
がんに関するご相談・医療機関からの病診連携
に関するお問い合わせ
(担当医は週替わり)
婦
人
科
尿
腺
器
鎌田裕之
関口 勲
(担当医は週替わり)
乳
泌
総
合
安藤二郎
川島清隆
小山靖夫
(第2火曜日を除く)
がんセンターだより 第15号
平成22年1月15日
発行 栃木県立がんセンター
4
◇がん情報・相談支援センター
TEL 028(658)6484 (直通)
平日 AM 8:30〜PM 5:15
〒320−0834
栃木県宇都宮市陽南4−9−13
電 話 028(658)5151(代)
FAX 028(658)5669
ホームページ http://www.tcc.pref.tochigi.jp/