なるほど経済ゼミナール

ご挨拶
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トップインタビュー
第10回:人民元の行方をどう考えるか
平成27年を振り返ると、
ギリシャ問題や米国の金融政策など、
国際金融市場の関心を
集めたテーマは数多くありました。
その一つである8月の中国人民元切り下げについて、
特集
決定の背景や中国政策当局の意図、
そして今後の行方について考えます。
※このレポートは、
平成27年10月30日時点で利用可能な情報に基づいて作成されています。
三井住友トラスト・
グループの総合力
のではないかという懸念が高まったことから、新興国
「人民元ショック」
の発生
通貨が大きく売られ、株式相場や商品市況が急落す
なるほど
経済ゼミナール
店頭
クローズアップ
中国の為替市場では「管理変動為替相場制」が
る、いわゆる
「人民元ショック」が発生しました。
この
採用されています。中央銀行である人民銀行が毎朝
事態に直面して、人民銀行は一転して人民元の下落
中心レート
(基準値)を発表し、その日の為替は中心
を防ぐ措置を取って相場の安定化を図りましたが、
レートから 2% 以内の変動を許容する制度になって
自ら引き下げた直後に引き上げるという一貫性のな
おり、
中心レートは米国ドル連動に近い形での運営が
い対応がかえって金融市場の不安を高め、国際金融
なされていました。
この中心レートが 8月11日に突然
市場の不安定な状態は9月以降も続きました。
2%近く引き下げられ、その後も13日まで3日連続で、
中国当局の意図は?
合計約5%の引き下げが行われました。
事業を通じた
活動
これによって、
中国発の通貨切り下げ競争が始まる
中 国 政 府 は 今 回の 切り下 げを、国 際 通 貨 基 金
C
S
R
世界株価
(MSCIグローバル、
目盛左)
国際商品市況(CRB指数、
目盛右)
世界株価と国際商品市況
(ポイント)
(平成26年平均=100)
120
440
240
115
420
230
110
400
220
105
380
210
100
360
200
95
340
190
90
320
180
85
12
三井住友トラスト・ホールディングス 第5期中間期 とらすと通信
業績ハイライト
250
会社概要/
株式情報
トピックス
(ポイント)
主要通貨実効レート
460
人民元切り下げ
日本
中国
米国
ユーロ圏
↑通貨高
↓通貨安
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
平成25
平成27年
(資料)Bloomberg
平成26
平成27
(年)
(資料)国際決済銀行
(注)実効レートとは、各国の貿易相手国全体に対する平均的な為替レートのこと。
なるほど経済ゼミナール
ご挨拶
では向こう5 ∼ 10 年という長い目で見ればどうで
ケットへの新規採用に向けた為替制度改革の一環だ
しょうか。
中国政府が進めている為替市場の自由化が
と主張しています。
進めば、為替相場に対する政府の介入も弱まってい
きます。
そういうなかで人民元レートがどう動くかは、
相場安定を維持するための国際準備資産です。現在
相反する二つの要因が混在しており、見方が分かれる
は米ドル、ユーロ、ポンド、円の 4 通貨で構成されて
ところです。
ます。今年がその見直しを行う年に当たるので、人民
る中国の地位向上に伴い、貿易決済通貨や外貨準備
元の国際化と世界経済における地位向上を狙って、
資産として、需要が増加し、元高となる可能性はあり
SDR への人民元採用を目指していた中国が行動を
ます。
起こしたというわけです。
その一方、経済ファンダメンタルズから見ると、少子
高齢化に伴う経済成長率の鈍化や、かねてより必要
する意図も見え隠れします。中国の景気は近年減速
と言われながら構造改革がなかなか進まないのでは
が顕著になっており、輸出の減少も要因の一つです。
ないかといった懸念が残ることは、中国国内からの
為替レートを実質的に米ドルに連動させている人民
資金流出などにより長期的に元安が進む要因となり
元は、米ドル高に引っ張られてかなり高い水準まで
得ます。
数年にわたって元レートが上昇してきたことで、その
推進する一方で、ある程度輸出を支えて景気が失速
水準は現在「概ね適正( IMF 見解)」あるいは、
「 実勢
しないようにする必要もあり、
さらには為替の乱高下
より高い(国際決済銀行見解)」
という見方が増えて
も避けなければならない、
といったさまざまな要因を
きています。
このような背景もあって、人民元を切り下
考慮する必要があります。その判断は、かなり複雑な
げることによって輸出を押し上げようとした可能性も
ものにならざるを得ないでしょう。
これに対して中国政
指摘できるでしょう。
府がいつどのような行動に出るのか、
そして金融市場
長い目で見た人民元の行方
突然の相場変更が国際金融市場に混乱をもたら
という地位にあるだけに、
引き続き市場の関心を集め
続けるでしょう。
業績ハイライト
はどのような反応を示すのか。世界第2位の経済規模
C
S
R
トピックス
人民元改革の推進においては、人民元の国際化を
事業を通じた
活動
上昇し、輸出には不利な状況になっていました。過去
店頭
クローズアップ
一方、通貨の切り下げで輸出の振興を目指そうと
なるほど
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人民元に対する需要から見れば、世界経済におけ
三井住友トラスト・
グループの総合力
おり、
この構成は5年ごとに見直されることになってい
特集
SDRはIMFが創設したもので、各国が自国通貨の
トップインタビュー
( IMF )の特別引出権( SDR )を構成する、通貨バス
したという今回の経験から、
この先しばらくの間は、
会社概要/
株式情報
人民元レートが急激に変更されることはないと思われ
ます。
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