2007 年春学期 有澤研究会 JRE チーム Term Paper 「空港アクセス

2007 年春学期 有澤研究会 JRE チーム Term Paper
「空港アクセス鉄道のサービス向上についての研究」
環境情報学部一年
目黒大介
学籍番号:70748039 ログイン名:t07803dm
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この研究の目的
市街地から空港へのアクセス手段の一つとして、空港アクセス鉄道がある。これまで空
港アクセス鉄道と航空は完全に独立した存在として扱われてきた。この研究では空港アク
セス鉄道の歴史、形態、現状を調べた上でシームレスな交通を構築するためのサービスを
考える。
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日本の空港アクセス鉄道概観
1964 年に開業した東京モノレールは、日本で最初に空港アクセスのために建設された鉄
道路線である。東京モノレールは海上に軌道を建設することにより、用地買収の手間を省
いた。次に開業したのは上野と成田空港を結ぶ京成電鉄である。1971 年に開業した旧成田
空港駅(現東成田駅)は、成田新幹線の用地のために駅と旅客ターミナルが離れており、
空港利用者は成田空港駅でバスに乗り換える必要があった。しかし、成田新幹線は実現さ
れなかったことから 1991 年の成田空港第二旅客ターミナルビルの利用開始時に京成線は
JR 成田線とともに成田新幹線用のトンネルを利用してターミナルに乗り入れるようになっ
た。鉄道の建設には莫大な費用がかかることから、第三セクターの成田空港高速鉄道株式
会社は鉄道を建設し、京成電鉄と JR 東日本は使用料を払うというシステムをとっている。
同じシステムは関西国際空港や中部国際空港のアクセス鉄道にも取り入れられている。現
在では国内 10 か所の空港において空港アクセス鉄道が運行されている。
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海外の空港アクセス鉄道概観
空港ターミナルに鉄道が直結するようになったのはイギリスのヒースロー空港が最初
である。1977 年に開業したヒースロー空港へのアクセス鉄道には、地下鉄用の車両が用い
られた。航空旅客用の設備がなかったこの鉄道は、主に空港の従業員用の鉄道であった。
1998 年に開業したヒースロー・エクスプレスは、ロンドンのターミナル駅の一つであるパ
ディントン駅においてチェックインをすることができ、ヒースロー空港駅では乗車口まで
カートを利用できるといった航空旅客用の設備が整えられている。運賃は前者よりも高く
なっており、旅客用と従業員用の住み分けが行われている。
1970 年代に開業したフランクフルト空港とジュネーブ空港のアクセス鉄道では、空港駅
に長距離列車が乗り入れるようになった。フランクフルト空港では、ルフトハンザ・エク
スプレスと呼ばれる航空会社がチャーターした列車が運行されていた。
近年では高速列車と航空便がコードシェアするようになり、ドイツでは ICE とルフトハ
ンザ航空によるエアレールや、フランスでは TGV とエールフランス航空による TGV エア
ーと呼ばれるサービスがある。
2004 年に開業した上海浦東国際空港と上海中心部にある龍陽路を結ぶ空港アクセス鉄道
には、ドイツが開発したリニアモーターカーであるトランスラピッドが採用されており、
最大時速 430 キロで結ぶ。運賃はバスよりは高めであるが、タクシーより安く、航空便利
用者には運賃が割引される。この鉄道を北京に伸ばす計画もある。
図 1 運賃や設備による住み分け
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仁川国際空港アクセス鉄道のケーススタディ
2007 年 3 月に韓国のソウル特別市から仁川国際空港までを結ぶ
「空港鉄道」
が開業した。
空港鉄道は韓国発の民営鉄道であるが、赤字になった場合にはインフラの維持のために税
金が投入されることになっている。
4-1 路線と運行形態
空港鉄道には建設される順番に仁川国際空港~金浦国際空港間の第一期区間と金浦国際
空港~ソウル駅間の第二期区間があるが、2007 年に開業したのは第一期区間である。第一
期区間には 4 つの中間駅があり、桂陽駅と金浦国際空港駅において広域電鉄と呼ばれるソ
ウルや仁川の都市鉄道ネットワークと接続している。列車は二種類ある。一時間に一本運
行される「直行」はノンストップで仁川国際空港~金浦国際空港間を 28 分で結ぶ列車であ
る。日中一時間に 5 本運行される「一般」は各駅に停車して 33 分で結ぶ列車である。直行
に使われる車両は、一両あたり出入り口が二か所あるクロスシートの車両で、全席指定席
である。一般に使われる車両は、一両あたり出入り口が四か所あるロングシートの地下鉄
型車両で、全車自由席である。直行の列車は一般を追い抜くことはない。
図2 空港鉄道第一期区間路線図
4-2 運賃と乗車券
開業当時、仁川国際空港~金浦国際空港間の通勤の運賃は 3100 ウォンと、ソウル市内へ
結ぶバスよりも安かった。しかし、直行は 7900 ウォンと通勤の二倍以上の運賃であり、そ
れが庶民には受け入れられる価格ではなかったため、利用者が少なかった。そのため、空
港鉄道では 2007 年 6 月から年末まで通勤と同額にすることにした。
空港鉄道の乗車券は IC 化されており、乗車券購入時に IC カードを受け取り、入場時に
は改札機の読み取り部に接触することで通り、出場時には改札機にカードを投入し、返却
する仕組みとなっている。IC カードは回収後再利用される。
空港鉄道でもソウル周辺で交通機関や商業施設で利用できる電子マネーである T マネー
を使うことができる。ただし、座席指定の関係から一般のみの利用となっている。また、
地下鉄やバス利用時にある高齢者や学生に対する割引は利用することはできない。
4-3 空港鉄道の問題点
空港鉄道は直通を一般の倍以上に運賃を設定した。直通が一般よりも優れていることは、
車両の設備、所要時間(5 分の差)であるが、直通は先行する一般を追い抜くことはないた
め、早く空港へ向かいたい・帰りたい旅客は一般直行関係なく早く来た列車に乗ればよい。
つまり、急ぎたい人にとってノンストップの優等列車に付加価値はないに等しい。現在は
一般と同じ運賃で運行されているが、来年再び運賃が戻った際には、何らかの対策が必要
である。直行の車両の追加導入と増発一番望ましいが、現状を考えれば、大きな手荷物の
持ち運びを代行するポーターサービスといったサービスによる付加価値の向上が現状とし
ては最善である。
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航空券や搭乗半券の活用
5-1 航空券・搭乗半券について
現代の航空券の主流は ATB 券と呼ばれるもので、航空券と搭乗券が一体になり、裏面に
は磁気テープが巻かれている、オーソドックスな磁気券である。IATA(国際航空運送協会)
は ATB 券のサイズに規格を設けている。
よって国際線では航空券のサイズは皆同じである。
しかし、搭乗半券(客が到着まで控えておく券)には各社で独自規格を設けているところ
が多い。国内線では ANA 系列と JAL 系列では航空券のサイズ(横の長さ)が若干違い、
また ANA 系列の国内線の搭乗半券(客が到着まで控えておく券)は定期券サイズ、JAL 系列
の国内線の搭乗券は定期券より大きめのサイズと、会社ごとに異なっている。搭乗半券は
その人が搭乗したことを示す証明書として、旅費を清算する際には搭乗半券の提示が必要
とされるところが多い。
近年は日本の国内線において Felica 搭載のマイレージカードや携帯電話でそのまま航空
機に搭乗できるサービスがある。
(サービス名称 ANA:SKiP サービス、JAL:IC チェッ
クインサービス)このサービスはインターネット上で予約や決済をすれば改札機にそのま
まカードをかざすだけで搭乗することができる。このサービスは基本的にペーパーレスで
あるが、手荷物検査場において Felica をかざし、予約の確認を行うと搭乗ゲート番号や座
席番号が印字された紙を貰うことになっている。
5-2 航空と鉄道のコードシェア区間における航空券の扱い―TGV エアーの事例―
エールフランスは、フランス国鉄の TGV と、一部の赤字区間においてコードシェアを行
っている。鉄道はハブ空港であるシャルル・ド・ゴール空港に直結しているため、ターミ
ナル内で乗り換えをすることができる。TGV から航空機へ乗り継ぐ旅客は、TGV の乗車駅
にある専用カウンターでシャルル・ド・ゴール空港乗り継ぎの航空券を提示することによ
って TGV の乗車券を受け取ることができる。航空機から TGV へ乗り継ぐ旅客は、シャル
ル・ド・ゴール空港内の専用カウンターで TGV の乗車券を受け取って乗車する。
5-3 航空と鉄道のコードシェア区間における航空券の扱い―ICE エアレールの事例―
ルフトハンザ航空は、フランクフルト空港発の ICE とコードシェアを行っている。TGV
エアー同様、コードシェアが行われているのは、航空の赤字区間である。このサービス開
始に当たりエアレールに使われる車両の車内には手荷物用のスペースを設け、駅にはチェ
ックイン設備を設けた。ICE から航空機へ乗り継ぐ旅客は、駅にある航空会社のチェック
インカウンターにおいて ICE の乗車券と乗り継ぎの航空券を受け取る。航空機のファース
トクラス利用客は ICE でもファーストクラスを利用でき、ファーストクラス利用者とルフ
トハンザ航空のステイタス所有者は駅構内にある ICE ファーストクラス専用ラウンジを使
うことができる。
5-4 搭乗半券の鉄道乗車券への活用可能性と課題
搭乗半券は、搭乗証明と座席や搭乗ゲートの案内しか機能がない。これに空港アクセス
鉄道の乗車券としての機能を持たせることに関して、以下の案を出した。
A そのまま表面に文字による情報を持たせるだけで使う
B 搭乗半券に磁気を持たせて使う
A の場合、搭乗半券に一部の文字情報を入れるだけで済むため、機械的には何の負担もな
いため導入しやすい。しかし、切符の確認は職員によって行わなければならないので、無
人駅の場合に乗車券の扱いが難しくなる。
B の場合、利用者側は自動改札機に通すだけで利用できるので A より利便性が高い。磁
気を持たせるためには搭乗半券に磁気テープを巻く必要がある。しかし、搭乗半券の裏面
には既に搭乗券の磁気テープが巻かれており、それはちょうど定期券サイズの乗車券の磁
気の配置と直交してしまう。そのため、表面に磁気テープを新たに巻くことになるが、搭
乗半券のレイアウトを大きく変える必要がある上に鉄道乗車券の磁気にデータを持たせる
作業が必要となる。
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今後の予定
今後も空港アクセス鉄道や鉄道の乗車券についての情報を収集し、搭乗半券の鉄道乗車
券への活用をはじめとしたシームレスな交通体系を構築するサービスを研究していきたい。
参考文献
空港と鉄道 -アクセスの向上をめざして(佐藤芳彦著、発行:交通研究教会、発売元:成山堂書店、2004 年)
航空輸送サービスの向上をめざして -総務庁の航空行政監察結果から(総務庁行政監察局編集、発行元:大蔵省印刷局 1994 年)
参考 URL
ANA http://www.ana.co.jp/
JAL http://www.jal.co.jp/
エールフランス航空 http://www.airfrance.co.jp/
ルフトハンザ航空 http://www.lufthansa.co.jp/
A’REX http://www.arex.or.kr/
인터넷 e 조은뉴스 http://www.e-goodnews.co.kr/sub_read.html?uid=71935