エレキギターの研究 ジ ∼ピックアップって何∼ 熊本県立熊本西高等学校物理部 1 1年 澤田 髙野 宮田 2年 岡松 他2名 はじめに エレキギターには共鳴箱やマイクがないのに大きな音が出る。ではどうやって音が鳴るのか不 思議に思って調べてみると、エレキギターとは……弦の振動をピックアップで拾い、アンプで増 幅して音を出すギター 2 原 と説明があり、ピックアップって何?と思って研究しました。 理 ピックアップの構造 エレキギターの構造は大きく分けてヘッド、ネック、ボディー の三つに分けられる。さらにボディーの中にピックアップ、 振動する ボリューム・トーン、ジャックなどがある。マイクは、音に 弦 よって振動板を振動させ、コイルに電流を発生させるが、ピッ 鉄芯 クアップは金属の弦が磁石の上で振動することにより、磁界 磁石 が変化してコイルに電流を発生させる。 3 実 験 実験1 コイル ピックアップから電気が流れることを確認するため に次の実験をおこなった。 ⑴ ボルトにエナメル線を巻き、検流計とつなぎ、磁石の上に置く。鉄の棒をボルト上で振る。 ⑵ ピックアップと増幅器と発光ダイオードをつなぎ、ピップアップの上で弦を振動させる。 ◇実験1の結果 ・検流計の針が左右に振れたので、電気が流れることがわかった。 ・発光ダイオードが光ったので、ピックアップから電気が流れたことがわかった。 実験2 ピックアップから流れる電気が、次の条件でどのように変化するのか、調べる。 ⑴ 磁力を変える。 磁石の数:(1個 ⑵ コイルの巻数を変える。 ⑶ 芯を変える。 2個 3個) コイルの巻数:(100回巻 芯の種類:(大きい鉄 小さい鉄 銅 200回巻 300回巻) アルミ 芯なし) ◇実験2の結果 ・磁石の個数を変えても、電流は増加しているものの顕著な変化は見られなかった。 ・コイルの巻数を変えたら、電流は比例して大きくなった。 ・芯は、磁化されやすい鉄の方が、電流が大きくなり、芯が大きい方が電流が大きくなった。 150 1 5 7 .4 15 0 1 3 2 .8 4 150 137.86 137.86 1 3 7 .8 6 100 1個 2個 3個 10 0 50 50 86.38 48.38 100回 200回 300回 0 0 磁 力を変 える 100 94.06 63.92 64.94 62.38 50 鉄大 鉄小 銅 アルミ 芯無 0 コイ ルの 巻数を 変え る 芯 を変 える 実験3 磁石、コイル、芯を変えることで、ピックアップから発生する電流が変化することが分かった が、磁石もコイルも動いていないのになぜ電気が流れるのか、わたしたちは弦が振動することで 磁束が変化しているのでは、と考え、磁石の上に弦がある場合とない場合の磁束密度を測定した。 Wb/m2とは・・・・・・ 1m2あたりの磁気量(ウェーバー) ◇実験3の結果 磁石の数 1個 2個 3個 4個 5個 6個 7個 8個 磁石の上に弦なし…A 0.130 0.175 0.190 0.200 0.200 0.205 0.210 0.210 磁石の上に弦あり…B 0.150 0.200 0.215 0.230 0.230 0.235 0.240 0.240 0.020 0.025 0.025 0.030 0.030 0.030 0.030 0.030 変化量(A−B) 表のとおり、磁石の上に弦があると磁束密度が 磁束の変化 変化した。 磁石の上に弦なし の磁束密度と、 変 0.035 化量(A−B)をグラフにすると比例関係にある。 な違いが見られなかったのは、磁石そのものの磁 束密度が数に比例してないことによる。 4 弦がある場合の変化量 磁石の数を増やしても2個目以降の変化量に大き 0.03 0.025 0.02 0.015 0.01 0.005 実験の考察 0 実験結果から、スチール弦が磁石の上に有るか 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 磁石の磁束密度 無いかで磁束が変化することが分かった。スチー ル弦は磁石の上にあるためにほんの少し磁化さている。そのためコイル内の磁束の変化が生じて コイルに電流が発生したものと思われる。ファラデーの電磁誘導の法則によると、誘導起電力は コイルの巻数と、単位時間あたりの磁束密度の変化量に比例する。 △ φ ファラデーの電磁誘導の法則 V = − N ───── △ t 発生した電流はコイルの巻数にほぼ比例している。しかし、磁石の個数が増えても、あまり顕 著な変化は見られない。弦の振動による磁束密度の変化量は磁石の磁束密度に比例する。しかし 磁石の磁束密度は磁石の数が増えても大きくなっていない。よって磁石の個数の影響はあまり大 きくないものと考えられる。 5 エレキギターを作ってみる 弦の本数が4本で作りやすいのでベースギターを作ることにした。 ⑴ 木材でネックとボディーを作り、指で押さえて音程をきめる金属棒を取り付ける。 ⑵ ピックアップを準備する。 ①300回巻のコイルを作る。 ②アクリル板に穴を4カ所あけ、磁石を埋め込む。 ③磁石の周りに300回巻のコイルを取り付ける。 6 ④磁石の上に鉄芯をおく。 ⑶ ネックからボディーまで弦を張りピックアップを取り付ける。 ⑷ 弦の張力を調整して、ピックアップのコードをラジカセにつないで完成。 まとめと今後の課題 ピックアップからより大きい誘導電流を発生させるためには、磁石の数よりもコイルの巻数を 増やす方が有効なことが分かりました。また、弦を弾くという簡単な動作で電気が流れることが 分かりました。わずかな振動でも電気が流れます。この仕組みを発展させることができれば、軽 い金属の弦に息を吹きかけたり、少しさわったりする、という簡単な動作でパソコンへの入力等 が簡単にでき、障害者の方や寝たきりの方とのコミュニケーションがとりやすくなるなど、今後 の介護や福祉に応用できると思います。これからは今回調べたことを応用して、介護や福祉に応 用できる機器をより具体化させていきたいと考えています。 参考文献 NHK出版「やってみよう なんでも実験」 HK総合テレビ「科学大好き土よう塾」
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