35 河口付近における河川改修工事の仮締め切りと 護岸ブロック積の裏込方法について 長崎県土木施工管理技工会 藤 本 千佐美 1 .は じ め に 今回長崎県大瀬戸土木事 務所発注の『大明寺川河川 改修工事』の施工にあたり、 仮設鋼矢板による仮締切及 び練積ブロック護岸の裏込 方法について、その問題点 と解決策を紹介します。 2 .工 事 概 要 図− 1 断 当工事は、長崎県西彼杵 郡西彼町に位置する二級河 川大明寺川の河口付近の自 然護岸に鋼矢板基礎の練積 ブロック護岸を鋼矢板締切 を行い、築造するものであ りました。 3 .工事事前検討 №1 当現場は雲母変岩の 風化土層による軟弱地盤 の為、施工中仮締切矢板 が河川側へ大きく変位 し、施工途中に構造物が 締切矢板内に治まりきら 図− 2 ないケースが過去に発生 −107− 面 図 ※ している。 №2 練積ブロック護 岸の裏埋戻し土の水 中部分が、完成後仮 設矢板の引き抜きに 伴う空隙や干満によ る水位の変化の為沈 下し、ブロック積が 背面方向に倒れ込む 問題が発生してい 図− 3 る。 完成は不可能であり、効率が悪く、工事原価の大幅 4 .発注者との協議(図−2参照) な増大につながる。 上記№ 1 について、発注者、及び設計業者との 6 .原 因 調 査 三社協議において、当社として河川側の矢板の外側 に仮設の押え盛土の施工を提案したが、使用土砂の 締切矢板が河川側に変位した最大の原因として、 運搬・盛土,撤去,運搬・捨土によるコストアップの 当現場の土質が雲母変岩の風化土層であり、軟弱か 為変更できない。又、設計業者によると、ヒービン つすべりやすい土質である。河川側に押え盛土を施 グについても河川側への変位についても、計算上問 工していない為、管理道路上で作業を行うダンプト 題ないとのことで当初設計のとおり施工するよう指 ラック・建設機械等の輸荷重で集中的な土圧がくさ 示を受けた。 び形に作用する事により変位したものと判断され 上記№ 2 について、同じく三社で協議したが丁 る。 寧な埋戻し転圧を行ってくださいと言うことで、変 7 .対策(工法の決定) 更の意志はないとのことでした。しかしながら、当 社としては過去の他工区の状況を見る限り、このま 部分的な集中荷重が原因であるので、その荷重を までは沈下は防げないと判断し、当社独自で工法を 分散させる方法として、次の二種類の方法を検討し 検討する事にした。11)参照 てみた。 鉄板を管理道路全面に設置する。 5 .問題発生(工事事前検討№1) 地盤改良により路床を固化し、一体化する。 については 1 枚当たり4 . 5平方メートル程度で 当初設計どおり、仮設締切矢板施工後、締切内の 床堀を行った。仮設矢板の変位が予想されたので、 あるので、不等沈下の可能性があり、傾きによって 仮設矢板の天端に 5 はダンプトラック、建設機械が滑動し、転倒、落下 ピッチで測点を設定し、変 位の観測を行いながら、床堀していたところ、約 のおそれがあるので安全面、施工性を考慮して 10 地盤改良による方法を採用した。 程度進んだころから動きだし、15 進んだ時 点で最大18㎝の変位が確認された。 8 .対 の 策(計画) これ以上の変位は構造物の施工と安全に支障をき たすので、発注者と協議した結果、10 ずつ完成 しながら施工するよう指示があった。 しかしながら、10 地盤改良の資材として、セメント系固化材を使用 することとし、土砂のサンプリングを行い、撹拌試 ずつの施工では、工期内の 験の結果、撹拌深さ0 . 5 −108− 巾6 . 0 とした場合、固 化材の含有量を50㎏/ と決定し た。その結果単位面積当たりの土 圧は約 1/10〜 1/20となる。 又、セメント固化材を使用した 場合含有量によっては六価クロム 発生等の環境に対する弊害も考慮 しなければならないので、有害物 質の抽出試験を行い、結果がOK であったので、通常の材料を使用 した(NGの場合、六価クロム対 図− 4 応品を使用する)。 ることが出来、厳しい工期ではあったが工期内に無 9 .対策(施工) 事故無災害で竣工する事ができた。 図− 3 の断面で床堀施工前に全延長L=120 管理道路をW=6 . 0 、H=0 . 5 の 12.効果の確認(№2) で撹拌・転圧施工 した、又。施工時の注意点として、河川側へのダン プトラック、建設機械の滑動及び偏荷重を防止する 現在施行後、三年経過しているが、護岸ブロック の変位も管理道路の沈下も発生していない。 為水田側へ 2 %の片勾配とし、滑り止めとして路 13.お わ り に 面に 5 ㎝程度の砕石を散布した。 当現場における問題点に対する対策は、設計変更 10.効果の確認(№1) の対照にはしてもらえなかったが、工事の安全性・ 地盤改良施工後、本工事の床堀を仮設矢板の変位 観測を行いながら施工した。床堀直後に多少の変位 効率面・施工性・構造物の品質等において、効果が 確認できました。 (1 . 5㎝〜2 . 0㎝)があったが収束が早く、全延長連 又、この方法は近年意識が高まっている環境面に 続施工後も最大で3 . 0㎝程度だった。又、護岸工事 おいても、下記のようなメリットがあると考えられ 完了後も、管理道路の堅固な路床として使用できる ます。 メリットもある。 1 .盛土・埋戻し等には土質が多少悪くても、添加 剤を使用することにより、現場内の発生土を流用 11.工事事前検討№ 2 に対する対策 する事が出来る(資源の無駄使いの防止)。 裏埋戻し部分の当現場の工夫として、埋戻し流用 2 .現場内の土砂を流用することで、置換え等で発 土が施工後、水中になるとしても圧蜜を促進しなけ 生する資源の無駄、積込・運搬による油脂類の無 ればよいと考え、№ 1 と同様セメント系固化材を 駄、騒音・振動公害、残土処理場の確保等、すそ 流用土と撹拌し、改良土として使用する方法をとっ 野の広い環境に関するデメリットを回避する効果 た。 がある。 又、仮設鋼矢板の引抜時において、摩擦と振動が 以上、土木工事においても、安全で経済的でかつ 構造物に与える影響を軽減する為に、鋼矢板と埋戻 効率的な環境に優しい工事の企画・施工を行うこと し土との境目にそって、パラフォーム(ダンボール が本当の意味で建設業のイメージアップにつながる 製捨型枠)を挟み込み、埋戻し転圧を行った。結果、 のではではないでしょうか。 構造物に影響を与える事なく鋼矢板の引抜きを終え −109− ※ 株式会社 西海興業
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