河口付近における河川改修工事の仮締め切りと 護岸ブロック積の裏込

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河口付近における河川改修工事の仮締め切りと
護岸ブロック積の裏込方法について
長崎県土木施工管理技工会
藤
本
千佐美
1 .は じ め に
今回長崎県大瀬戸土木事
務所発注の『大明寺川河川
改修工事』の施工にあたり、
仮設鋼矢板による仮締切及
び練積ブロック護岸の裏込
方法について、その問題点
と解決策を紹介します。
2 .工 事 概 要
図− 1
断
当工事は、長崎県西彼杵
郡西彼町に位置する二級河
川大明寺川の河口付近の自
然護岸に鋼矢板基礎の練積
ブロック護岸を鋼矢板締切
を行い、築造するものであ
りました。
3 .工事事前検討
№1
当現場は雲母変岩の
風化土層による軟弱地盤
の為、施工中仮締切矢板
が河川側へ大きく変位
し、施工途中に構造物が
締切矢板内に治まりきら
図− 2
ないケースが過去に発生
−107−
面
図
※
している。
№2
練積ブロック護
岸の裏埋戻し土の水
中部分が、完成後仮
設矢板の引き抜きに
伴う空隙や干満によ
る水位の変化の為沈
下し、ブロック積が
背面方向に倒れ込む
問題が発生してい
図− 3
る。
完成は不可能であり、効率が悪く、工事原価の大幅
4 .発注者との協議(図−2参照)
な増大につながる。
上記№ 1 について、発注者、及び設計業者との
6 .原 因 調 査
三社協議において、当社として河川側の矢板の外側
に仮設の押え盛土の施工を提案したが、使用土砂の
締切矢板が河川側に変位した最大の原因として、
運搬・盛土,撤去,運搬・捨土によるコストアップの
当現場の土質が雲母変岩の風化土層であり、軟弱か
為変更できない。又、設計業者によると、ヒービン
つすべりやすい土質である。河川側に押え盛土を施
グについても河川側への変位についても、計算上問
工していない為、管理道路上で作業を行うダンプト
題ないとのことで当初設計のとおり施工するよう指
ラック・建設機械等の輸荷重で集中的な土圧がくさ
示を受けた。
び形に作用する事により変位したものと判断され
上記№ 2 について、同じく三社で協議したが丁
る。
寧な埋戻し転圧を行ってくださいと言うことで、変
7 .対策(工法の決定)
更の意志はないとのことでした。しかしながら、当
社としては過去の他工区の状況を見る限り、このま
部分的な集中荷重が原因であるので、その荷重を
までは沈下は防げないと判断し、当社独自で工法を
分散させる方法として、次の二種類の方法を検討し
検討する事にした。11)参照
てみた。
鉄板を管理道路全面に設置する。
5 .問題発生(工事事前検討№1)
地盤改良により路床を固化し、一体化する。
については 1 枚当たり4 . 5平方メートル程度で
当初設計どおり、仮設締切矢板施工後、締切内の
床堀を行った。仮設矢板の変位が予想されたので、
あるので、不等沈下の可能性があり、傾きによって
仮設矢板の天端に 5
はダンプトラック、建設機械が滑動し、転倒、落下
ピッチで測点を設定し、変
位の観測を行いながら、床堀していたところ、約
のおそれがあるので安全面、施工性を考慮して
10
地盤改良による方法を採用した。
程度進んだころから動きだし、15
進んだ時
点で最大18㎝の変位が確認された。
8 .対
の
策(計画)
これ以上の変位は構造物の施工と安全に支障をき
たすので、発注者と協議した結果、10
ずつ完成
しながら施工するよう指示があった。
しかしながら、10
地盤改良の資材として、セメント系固化材を使用
することとし、土砂のサンプリングを行い、撹拌試
ずつの施工では、工期内の
験の結果、撹拌深さ0 . 5
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巾6 . 0
とした場合、固
化材の含有量を50㎏/
と決定し
た。その結果単位面積当たりの土
圧は約 1/10〜 1/20となる。
又、セメント固化材を使用した
場合含有量によっては六価クロム
発生等の環境に対する弊害も考慮
しなければならないので、有害物
質の抽出試験を行い、結果がOK
であったので、通常の材料を使用
した(NGの場合、六価クロム対
図− 4
応品を使用する)。
ることが出来、厳しい工期ではあったが工期内に無
9 .対策(施工)
事故無災害で竣工する事ができた。
図− 3 の断面で床堀施工前に全延長L=120
管理道路をW=6 . 0
、H=0 . 5
の
12.効果の確認(№2)
で撹拌・転圧施工
した、又。施工時の注意点として、河川側へのダン
プトラック、建設機械の滑動及び偏荷重を防止する
現在施行後、三年経過しているが、護岸ブロック
の変位も管理道路の沈下も発生していない。
為水田側へ 2 %の片勾配とし、滑り止めとして路
13.お わ り に
面に 5 ㎝程度の砕石を散布した。
当現場における問題点に対する対策は、設計変更
10.効果の確認(№1)
の対照にはしてもらえなかったが、工事の安全性・
地盤改良施工後、本工事の床堀を仮設矢板の変位
観測を行いながら施工した。床堀直後に多少の変位
効率面・施工性・構造物の品質等において、効果が
確認できました。
(1 . 5㎝〜2 . 0㎝)があったが収束が早く、全延長連
又、この方法は近年意識が高まっている環境面に
続施工後も最大で3 . 0㎝程度だった。又、護岸工事
おいても、下記のようなメリットがあると考えられ
完了後も、管理道路の堅固な路床として使用できる
ます。
メリットもある。
1 .盛土・埋戻し等には土質が多少悪くても、添加
剤を使用することにより、現場内の発生土を流用
11.工事事前検討№ 2 に対する対策
する事が出来る(資源の無駄使いの防止)。
裏埋戻し部分の当現場の工夫として、埋戻し流用
2 .現場内の土砂を流用することで、置換え等で発
土が施工後、水中になるとしても圧蜜を促進しなけ
生する資源の無駄、積込・運搬による油脂類の無
ればよいと考え、№ 1 と同様セメント系固化材を
駄、騒音・振動公害、残土処理場の確保等、すそ
流用土と撹拌し、改良土として使用する方法をとっ
野の広い環境に関するデメリットを回避する効果
た。
がある。
又、仮設鋼矢板の引抜時において、摩擦と振動が
以上、土木工事においても、安全で経済的でかつ
構造物に与える影響を軽減する為に、鋼矢板と埋戻
効率的な環境に優しい工事の企画・施工を行うこと
し土との境目にそって、パラフォーム(ダンボール
が本当の意味で建設業のイメージアップにつながる
製捨型枠)を挟み込み、埋戻し転圧を行った。結果、
のではではないでしょうか。
構造物に影響を与える事なく鋼矢板の引抜きを終え
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※
株式会社
西海興業