Bulletin 11月号PDFファイル

COLONNADE
特集
「JIA 建築家大会 2014 岡山」報告
・シンポジウム「良質な建築・まちづくりのアドバイス機構をつくるためには?」で浮き彫りになったこと
2
連健夫建築研究室 連 健夫
3
・住宅部会の全国ネットワーク『全国住宅部会連絡会議』を開催しました。
ダンス建築研究所 鈴木利美
4
・参加報告 JIA 環境会議「公開委員会&公開討論会」風土に根ざした魅力的な環境デザイン
寺尾三上建築事務所 寺尾信子
梶浦暁建築設計事務所 梶浦 暁
・新入会員の大会報告
/ アール・アイ・エー 原口尚也
Pacific Architects & Engineers 中村秀美
5
/ 白江建築研究所 白江龍三
FORUM
6
建築教育の今「明治大学 理工学部建築学科」
7
建築教育の今「日本工学院専門学校・日本工学院八王子専門学校」
アフリカの今
日本設計 安部貞司
8
広報委員 10
小泉 誠氏に聞く「これからのデザイナーの役割」
広島県における CABE 的取組
暁建築設計事務所 山田 曉
12
建物リノベーションの様々な手法
ナガト建築事務所 長戸 厚
13
OSA ジャパン 坂田 泉
14
廣田裕一建築設計事務所 廣田裕一
15
日新工業 白石健次
16
カサイ アーキテクチュラル デザイン 笠井三義
17
「グリーントイレワークショップ 2014」リポート
建築家との接点
Bグループ 軽井沢サロン会議開催
横濱 生糸を守った建築家「遠藤於菟」
相田土居設計 土居志朗
18
野生司環境設計 野生司義光
19
環境・建築デザインセミナー「建築のコモナリティ」
文京建築会の活動について
職能問題 認知されていないこの国で 「 建築家マインド 」 を誰が、どう 「 社会化 」 できるのか?
大倉富美雄デザイン事務所 大倉冨美雄
小池建築設計事務所 小池正人
20
/ ASCO.partners 安達治雄
/ イデア建築研究所 近藤弘文 / アーキポスト 観音克平
BACKYARD
23
2014
公益社団法人日本建築家協会 関東甲信越支部
Vol.
11
252
特集:「JIA 建築家大会 2014 岡山」報告
特集:「JIA 建築家大会 2014 岡山」報告
「良質な建築・まちづくりのアドバイス機構を
つくるためには?」で浮き彫りになったこと
建築・まちづくり委員会 委員長
住宅部会の全国ネットワーク
住宅部会
『全国住宅部会連絡会議』を開催しました。
40 周年記念事業担当
鈴木 利美
連 健夫
COLONNADE
「JIA 建築家大会 2014 岡山」大会にて 9 月 25 日、シン
点を掘り下げることにより情報公開すること、を明確にした。
主に住宅の設計・監理業務を行い、大半はアトリエ系と
ポジウム「良質な建築・まちづくりのアドバイス機構をつ
コメンテーターの三井所清典氏(日本建築士会連合会会
呼ばれる事務所を主宰する建築家で、“活動の枠を拡げたい”
くるためには?」が行われた。この企画は建築・まちづく
長)は、行政の信頼を得る上で、普段の地道な活動の大切
“より良い住宅・建物を創りたい” “研鑚を積みたい” “知識
り委員会主催で、一昨年の 2012 横浜大会、昨年の 2013
さと共に、専門家の質という意味で教育の大切さを指摘し
を得たい” “業務に必要な情報を集めたい” “人との交流を
北海道大会の「日本版 CABE を考える」に続くもので、良
た。三栖邦博氏(日事連名誉会長)は、目指す目標につい
図りたい” “社会の住宅環境を良くしたい” “レベル UP して
質な建築・美しい街づくりをするための仕組「建築・アド
ての国民的合意が前提となる、目標達成に向けたさらに幅
いこうよ” etc. の思いを抱いている JIA 会員が参加してい
バイス機構」についてディスカッションするのが目的であ
広の戦略的アプローチが必要になる、国民負担の増大とど
る住宅部会。関東甲信越支部だけでなく、北海道支部、東
る。今回は、第一線で活躍する都市計画家、建築三会の会
うバランスさせるかが課題となる、と指摘した。会場から
海支部(愛知)、近畿支部、四国支部(高知)、中国支部に
長、前会長を招き、40 人を超える参加者を得て深みのあ
長島孝一氏が、当面は日本版 CABE を推進する方向で良い
あり、東北支部、北陸支部では現在設立中です。それら部
る内容となった。
と思うが最終的には許可制に移行すべきだ、とコメントし
会からは代表する方達、そして残る九州支部、沖縄支部か
良質な建築、街づくりの制度、それはすなわち専門家の
た。ディスカッションの中で浮き彫りになったのは行政と
らは同様の活動をされている方達が出席し、『全国住宅部
価値が評価され、登場の機会をつくる制度でもあり、大き
の関係である。上浪氏は都の財務局とのデザインビルドに
会連絡会議』が建築家大会 2 日目の午前中に開催された。
意見があれば連絡下さいとお願い。
く3つの方法がある。①建築まちづくり基本法は今の法制
関する意見交換の中で信頼関係が醸成されたことを紹介し
総勢 25 名に加えて、飛入り参加者数名。出席メンバー
最後に、幹事を務められた近畿支部住宅部会代表の井上
度に加えるやり方で、2003 年に神田順氏を中心とする「建
た。会場からは、地方の方が行政との関係を作り易いので
の顔を見て最初に感じたのは、若い!平均年齢が 40 代で
久美氏より、「今後も互いに交流を図り、情報・意見交換
築基本法制定準備会」が設けられ活動している。JIA にお
はないか(森岡氏)など、行政との望ましい関係について
はないだろうか。そして、とても意欲的な表情だ。
する場や ML を設けていきませんか?」との提案があり、皆、
いても「建築基本法特別委員会」が設置され活動中である
話が及んだ。まとめとして芦原会長は、具体的事例を作っ
先ずは自己紹介、次いで各住宅部会の活動報告と意見交
賛同。次年度の建築家大会 2015 金沢前にもう 1 度くらい
ことを森暢郎委員長から報告がなされた。②として、建築
ていくことが大切である、併せて萌芽事例を収集すべく3
換をした。活動紹介と同時に抱えている問題、課題も話さ
集まりたいですねとの意見、また “JIA 全国会議” として位
基準法の集団規定を許可申請にする方法があり、これは今
会が協力して情報交換をする、オリンピックを契機にアド
れ、それに対して他の人が意見を述べたり、アドバイスを
置付けてはどうかとの提案もあり、今後の検討とすること
の法制度を変えるやり方である。五十嵐敬喜氏等の「都市
バイス機構を具現化していく、建築まちづくり基本法の実
したりと活発な意見交換がされていきます。
にした。
改革立法チーム」が活動中で、その中心メンバーである野
現に3会の協力で推進していく、とまとめた。建築アドバ
各住宅部会の活動は、支部により違いはあるが、大方下
住宅部会の活性化は、住宅を取り巻く環境の向上と同時
口和雄氏(都市プランナー)から「建築確認から建築許可
イス機構は地域の実情において様々な形がありうる。全国
記に分類。
に、部会員、建築家のレベル UP、そして業務環境改善に
へ」のプレゼンがなされた。人口減少社会、都市縮小社会
から会員が集まる大会のシンポジウムであるがゆえに、今
・部会員(専門家)向け勉強会、見学会の開催
も繋がると期待される。
に対応した都市法として、基本理念を明確にした上で集団
回の参加者が感じたものを地域において相応しい形で活動
・市民向けセミナー、相談会の開催
次年度、設立 40 周年を迎える関東甲信越支部住宅部会
規定を協議調整が可能な許可申請にすべきである、との論
し、推進することが大切であることを、改めて共有するこ
・作品展~市民向け啓発活動と同時に互いの勉強の場
は、このような全国ネットワークも大きな力としながら、
である。次に③の方法として日本版 CABE の推進があり、
とができた。
・住宅賞を設けて運営
住宅部会としての展望を持ち、更なる先に向かって進んで
これは現法制度を変えずに挿入可能な方法である。「英国
・建築家カタログの発刊
参ります。ご興味ある方は、お気軽にご連絡を下さい!
CABE と建築デザイン・都市景観」(鹿島出版会)の坂井
課題として挙げられたのは、部会員が増えず活性化し
住宅部会: http://www.jia-kanto.org/jutaku/
文氏との共著者である小出和郎氏(都市環境研究所)か
ない、イベントの集客数、賞の応募者が少ない、カタロ
ら「日本版 CABE の役割と可能性」のプレゼンがなされた。
グの売上が少ないなどである。これらに対し、広報面で
景観行政において実務家が前面に出る必要性やアドバイス
は利用できそうな様々な媒体の提案、或いは自治体に協
機構における事務機能の大切さを、担い手支援事業などの
力いただく、カタログであれば雑誌よりも背表紙のある
活動経験から指摘された。上浪寛副会長からは「オリンピッ
小型読み物体裁の方が良いようだ、などとアドバイス、
ク施設計画における建築アドバイス機構」について JIA の活
意見交換があった。
動が紹介された。JIA の立場として、オリンピック施設計画
その後、小規模建築物用の四会連合協定建築設計・監理
に反対するのではない、他会と共に専門家として課題や問題
2 Bulletin 2014 年 11 月号
岡山大会シンポジウムの様子
業務委託契約書(案)について、私から簡単に報告し、ご
全国住宅部会連絡会議 岡山大会、2014/09/26
模型展 UIA 大会 2011 にて
Bulletin 2014 年 11 月号 3
COLONNADE
シンポジウム
特集:「JIA 建築家大会 2014 岡山」報告
特集:「JIA 建築家大会 2014 岡山」報告
新入会員の大会報告
JIA 環境会議「公開委員会&公開討論会」
風土に根ざした魅力的な環境デザイン
環境委員会
委員長
寺尾 信子
日時:2014 年 9 月 27 日(土)13:00 ~ 17:00
梶浦 暁
■ 会社勤めが歳の半分を超えた頃、ふっと再
界を越えて」-総合化に挑む建築家の使命-
スタートだなと感じた。夢がかない建築を生
でした。瀬戸内海には様々な境界が発生して
業とすることの喜びを感じた時のように(会
いますが、エクスカーションでは境界を越え
費は受験の娘をもつ親父の懐には軽くないの
て連携し合い、その他のプログラムも哲学的
原口 尚也
にこのテーマに向き合うものでした。
会場:岡山コンベンションセンター 407 号室
新規発足の「JIA 環境会議」に支部選出委員として参加、
支部環境委員会の活動について発表、当支部がネットワー
ク形成にどのように貢献し、具体的に地域活動にどのよう
■ JIA 建築家大会 2014 岡山のテーマは、
「境
JIA 環境会議メンバーとゲスト登壇者
JIA 環境会議・公開委員会&討論会 会場風景
に臨もうとしているか計画中の活動の紹介を行った。
究部長、三浦尚志主任研究官の登壇および地域の建築家の
■プログラム主旨;
作品発表を踏まえての公開討論会。
だけれど)自分を社会に開き、改めて建築に
触れなおしたいとの思いから昨年 JIA に入会
COLONNADE
「建築の再コスモス化は可能か」というテーマを掲げた、オ
した。岡山大会はその再スタートにふさわしいものとなった。
ギュスタン・ベルク氏の基調講演では、建築は「風土」を考
美しさに胸が高鳴った
慮に入れることで地上から特異なものとして立ち上がるもの
早朝の後楽園。偉大な
であることと、その必要性を説かれました。最後に、
「建築は
建築家の継承者の貴重
生の存在の体現だと思う」とも語られました。
な体験談、出江先生の
私達はベルク氏から、これから
変わらぬ建築愛と元気。
の設計活動のヒントとなる概念を
外国人の日本文化論と
頂きました。その概念を抱き体現
して若いころ感銘を受
化していくのは私達、建築家とな
けた(
「日本の空間文化」の著者)オギュスタンベルク氏の講
「2020 年省エネ基準適合義務化」という建築界全体に
(1)主旨説明 ( 篠 ) (2)省エネ施策の全体像から見た環
関係する重要な動きを見据え、地域と風土に即した建築を
境デザイン(澤地)(3)一次エネルギー消費量算定プロ
全国の関係者で考えようという公開シンポを昨年から開
グラムなど省エネ評価の手法について(三浦)(4)省エ
催。第 2 回シンポは早期に計画されていたが「JIA 環境会議」
ネと風土に根ざした環境デザイン(井口)
(5)設計事例(新
支部を超えた方々と岡山城界隈の
が発足し、全国ネットワークの強化を相互に確認した上で
居)
(6)設計事例(大角)
(7)会場討論 (8)挨拶(野沢)
小料理屋へと足を運び、美味しい酒の肴に哲学的な話も加わ
改めて自社の業績にも触れ、社会における個人、個人の中の
シンポに臨むため 2 部構成のプログラムが実現した。
■本プログラムに参加して;
るという愉快で知的な宴となりました。おそらく、全国から
会社、外に広がる境界といみじくも内なる境界を改めて感じ
■第 1 部「JIA 環境会議」第 1 回委員会
第 1 部「JIA 環境会議」は 10 支部全部の出席による開催。
集まった大勢の会員の皆様も哲学的な会話に満ちた刺激的な
た大会であった。機会を頂き「JIA と岡山」関係の皆様の心遣
・「JIA 環境会議」(HP 参照;http://www.jia-eal.org/);今
第 2 部のシンポでは、建築家として地域の気候・風土
岡山の 3 日間になったことかと思います。
いに心から感謝を申し上げたい。
年度、新委員会として発足。1999 年の環境行動指針以
や歴史を踏まえ毅然とした態度で法や制度に臨んで行こう
来 15 年あまり環境活動に携わってきた「環境行動ラボ
とする決意の窺える発表があり感銘を受けた。
(前身;環境行動委員会)」は当会議をサポートするワー
ります。講演後の岡山の夜、私は
・<徳島・新居氏>湿気、白アリ被害との闘い。木材資
キンググループ(WG)として活動を継続。組織再編の
源を有効に使おうという時、断熱の方法に工夫が必要。
ねらいの 1 つは「全国ネットワークの強化」。
建設は物質循環の一部。湿度の高い蒸暑地域では生き
後楽園
演、倉敷。変わるものと変わらないものの対比が素晴らしかっ
基調講演
(講師:オギュスタン・ベルク氏)
た。会場となったコンベンションセンターや県民ホールなど、
■ 三日間の大会で得られたもの、それは(特
■ 私の今大会での主な目的は、27 日に開催
に印象に残っている)倉敷の街並み、まち歩
された JIA 環境会議に参加することだった。
きでした。倉敷美観地区は、年間数百万人の
JIA 環境会議は JIA の公益法人化に伴って
観光客が訪れる県内随一の観光名所。白壁に
組織変えした全国会議の一つで、今回は支部
(1)野沢議長主旨説明。(2)活動紹介、研究テーマ別グルー
物が元気、木材を食べる。単純に殺すという発想では
プ、リサーチユニット(RU)から HP を映写しながらの紹介;
なく水が入っても抜ける乾燥し易い構造にしたい。構
①エコハウスフォローアップ RU(井口)②環境データ評
造材を全て表す方式は全て包む方式より安全。多様で
在しています。多くの町屋に見られる構造としては、海鼠目
した魅力的な環境デザイン」と題した公開討論会が行われた。
価 RU(寺尾)③伝統的工法の住まい RU(篠)④環境建
豊かな空間を創りたい。住まい手は季節の変化を楽し
地瓦張(なまこめじぁわらばり)※1、
奉行窓 (ぶぎょうまど)
夜には懇親会に参加し、翌日は会員が企画したツアーに参加
築ガイドブック RU(白江)(3)支部の活動紹介;①四国・
み、エネルギーもあまり使っていない。工学的検証は
※2、虫籠窓(むしこまど)※3 などがありました。岡山には
した。
中国支部合同企画、環境建築連続セミナー 2013・2014(新
今後実行したい。
二十年前訪れましたが、以前より岡山の文化や歴史について
短い滞在であったが、会員からの情報をもとに中身の濃い
・<岡山・大角氏>縁側、バッファーゾーンの活用。開け
良く理解できました。初めての方々との多くの出会いもあり
体験ができた。特に国宝の閑谷学校見学の際に、「絶対に見
越支部、環境委員会発足記念セミナー・見学会(寺尾)(4)
閉めすることによる空間の使い分け。風雨が少なく気
ました。JIA 建築家大会のおかげです。ありがとうございま
るべき」との強い勧めで見た椿山のランドスケープは秀逸
全国ネットワーク強化に向けて;①これまでの活動を踏ま
候風土が穏やかな地域。木材資源を豊富に使った美し
した。
で、こちらも国宝にすべきと感じるほどだった。こう言う
えて(井口)②客観的立場からのメッセージ(澤地)(5)
い魅力的な建物を創りたい。今後は工学的評価にも取
意見発表(その他の支部)(6)まとめ(大野)
り組みたい。
居・大角)②近畿支部、見学会等の行事(所)③関東甲信
■第 2 部「公開討論会」風土に根ざした魅力的な環境デ
・<まとめ・野沢議長>建築家も一市民であり市民までも
ザイン
巻込んで地域と風土に即した建築について考えていく
昨年のシンポ「省エネ基準適合義務化と JIA 建築家」の
ことを大切にしたい。―WEB 会議とは異なる直に思い
続編。国交省国土技術政策総合研究所から澤地孝男住宅研
の伝わる討論会であった。
4 Bulletin 2014 年 11 月号
中村 秀美
川辺の柳並木が映える一帯には、大原美術館、
白江 龍三
日本郷土玩具館など数々の文化スポットが点
委員の決定後初めての会議であった。最初に
活動報告が行われ、引き続いて「風土に根ざ
隠れた文化財との出会
※1:建築特徴の一つで倉敷窓扉
付き、片開きの漆喰仕上げの土戸
いは、地元会員の情報
を付けたもの。
※2:土蔵造の蔵の窓形式として
があってこその体験で
使われている。
あった。ご尽力いただ
※3:明治維新前後から京阪地方
いた皆様方に感謝申し
の町屋の影響を受けて倉敷の町屋
に現れたと考えられる窓の形。
環境会議会場 活動報告の様子
上げたい。
Bulletin 2014 年 11 月号 5
COLONNADE
参加報告
建築の未来へ向けて
建築教育の今
建築教育の今
明治大学 理工学部建築学科
日本工学院専門学校・日本工学院八王子専門学校
明治大学理工学部建築学科は、堀口捨己の思想をもとに開設
くためのコミュニケーション能力やコーディネート能力
1947 年の創立以来、「理想的教育は理想的環境にあり」の考
することなどが認可の要件となっております。
され、60 余年の歴史と伝統を有し、優れた建築技術者を多数
を持ち合わせた人材の育成
えのもと、最先端の学習環境と各分野でプロの講師陣を用意。
■人材育成へ向けての特色
学生たちの夢を現実にするために、実践的で質の高い専門教
1)産学連携:住宅メーカー「(株)ヤマダ・エスバイエル
育を行い、即戦力を養成しています。
ホーム」との産学連携により、八王子キャンパス内に「ス
輩出してきました。伝統を重視しながらも、常に新しい取り
組みに挑戦するその原動力に迫ります。
・ グローバルな視点とローカルな視点を合わせ持ち、国際
的に通用する人材の育成
■そのような人材育成へ向けての特色
「若者の持つ夢を、技術という生きる力に育み、豊かな未来の
マートハウス実習棟」を建設し、今注目のエコ・スマート
明治大学理工学部建築学科は、計画・設計・意匠分野、構造・
創造に寄与する」というミッションのもと、21 万人を超える
技術や構造体、配管・電気設備の実習等で活用しています。
材料・施工分野、環境・設備分野の 3 分野を核として構成
卒業生を輩出し広く社会に貢献してきました、日本工学院に
また、「森がみえるプロジェクト」と題して、設計条件の提
されており、それぞれの分野に精通した 20 名の専任教員
ついてご紹介します。
示、作品講評、そして、詳細図の作成、建方実習、構造実験、
と 3 名の特任教員を擁し、幅広い知識と多様な能力を有す
温熱計算など、産学連携のプロジェクトが進行中です。
る建築や都市のプロフェッショナルの育成に努めています。
さらには、オートデスク(株)との教育機関としては国
教育の質をさらに高めるため、JABEE 取得も目指しており、
内初となる産学連携により、業界で求められている設計手
2015 年度の受審に向けて、学科をあげて教育プログラム
法 「BIM(Building Information Modeling)」 の教育に注力。
の点検・改善に取り組んでいます。
建物の設計から施工、維持管理まで BIM を活用できる人材
また、最近の注目すべき取り組みとしては、大学院理工
の育成、輩出をめざします。
学研究科建築学専攻内に、日本初の完全英語教育を行う「国
2)資格取得:在学中に3つ以上の資格取得をめざし、授
■建築設計・建設業の未来へ向けての展望と今後必要な人
際プロフェッショナルコース」(略称:I-AUD)を開設した
業や放課後ゼミを開催。二級建築士、木造建築士、商業施
材とは?
ことが挙げられます。I-AUD は、建築デザイン・都市デザ
設士、二級建築施工管理技士、福祉住環境コーディネーター
近年のグローバリゼーションの進展の中で、世界経済や
インに特化したスタジオ型教育を実践していることも大き
などを目標資格として、学生をバックアップしています。
国内経済の構造は大きく転換しており、建設産業も例外で
な特徴ですが、国内の大学を卒業した学生はもちろんのこ
3)担任制と段階型教育:各クラスには担任がつき、授業の
はありません。国内の建築業界は長期間にわたる停滞傾向
と、留学生も多数在籍し、多国籍の学生が、グローバルな
ことや生活のことなど、あらゆる相談に対応しています。授
にさらされていますが、一方で、海外にまで目を向けると、
社会における新たな建築と都市の問題に、デザインを通じ
業は分かるまで、できるまでサポートし、基本、基礎から、
建築業界が大きな発展を遂げつつある国や地域も少なくあ
て実践的に取り組んでいます。
上:蒲田キャンパス/下:八王子キャンパス全景
応用へ段階的にステップアップできるよう指導しております。
りません。これからの建築界が必要としているのは、この
また明治大学は、文部科学省によるスーパーグローバル
■建築設計・建設業の未来へ向けての展望と今後必要な人
■建築教育の現場からのメッセージをいただけますか。
ような世界的状況に柔軟に対応できる人材であることに間
大学等事業「スーパーグローバル大学創成支援」への採択
材育成とは?
「衣食住」は欠かすことができません。「住」は、生活を
違いはなく、大学をはじめとした建築教育機関にも、海外
が 2014 年 9 月に決定し、建築学科でも、国内の諸問題の
1)教育コンセプト:本校には、建築学科(4年制)、建築
支える根本でもあります。安全に、安心して暮らせる建築
進出を視野に入れた建築設計者・技術者の養成が求められ
みならず、国際的な課題に取り組める人材の育成を、ます
設計科(2年制)があり、創造力、技術力、資格を教育コ
物、街並みの設計など活躍の場は多岐にあります。本校の
ています。
ます精力的に進めていきます。
ンセプトとして「教育設計図」に基づいた教育を行ってい
建築学科(4 年制)では、一級建築士受験資格を大学卒業
明治大学理工学部建築学科では、グローバルからローカ
■明治大学 理工学部建築学科の描く「建築の未来」とは?
ます。指導にあたる教員は実務経験者で、講義、実習・演
と同等の期間で取得可能。また、二級建築士の受験資格取
ルにまたがるさまざまなスケールにおいて、「優れたデザイ
建築学を学んだ人材が、国境にとらわれずに幅広く活躍
習による「専門力」教育だけでなく、コミュニケーション
得には、大学では 4 年間必要ですが、建築設計科(2 年制)
ン性と信頼性の高い技術を兼ね備え、かつ自然環境と調和
し、人類社会の進展と地球環境の向上に本質的な貢献を果
能力をはじめとする「人間力」の育成にも注力し、学生一
では、卒業後すぐに取得できます。さらに建築学科(4 年制)
する、安全・安心で快適な建築および諸環境を構築すること」
たす――これが、私たちが描く「建築の未来」です。明治
人ひとりへ、ものづくりの技術や心を伝えています。
の 3 年次に編入すれば、在学中に二級建築士取得も可能で、
をミッションとして、以下の視点に立った建築教育を進め
大学理工学部建築学科は、この未来像を確実に実現すべく、
2)文部科学省より「職業実践専門課程」に認定:文部科
学生の目標にあわせて多彩な進路を選択できます。
ています。
一歩一歩努力を積み重ねているところです。
学省が認可を行う「職業実践専門課程」が創設され本校で
国際プロフェッショナルコース(I-AUD)のスタジオ風景
FORUM
も 2014 年度から新課程がスタートしました。「職業実践専
・ 建築単体だけではなく、街づくりや建築をとりまく諸環
境に対する広い視野をもった人材の育成
・ 優れた建築空間のプランニング能力とデザイン能力を持
ち、多くの人々と関わりながら建築空間を作り上げてい
6 Bulletin 2014 年 11 月号
明治大学 理工学部建築学科
生田キャンパス:川崎市多摩区東三田 1-1-1
TEL:044-934-7171 URL:http://www.meiji.ac.jp/sst/
門課程」とは、「職業に必要な実践的かつ専門的な能力を育
成する」ことを目的としており、カリキュラムの編成や授
業内容、教員研修などにおいて、企業と連携しながら実施
日本工学院専門学校 ( 建築学科・建築設計科)
大田区西蒲田 5-23-22 TEL:03-3732-1111
日本工学院八王子専門学校 ( 建築学科・建築設計科)
八王子市片倉町 1404-1 TEL:042-637-3112
URL:http://www.neec.ac.jp/
学科ブログ:http://blog3.neec.ac.jp/
Bulletin 2014 年 11 月号 7
FORUM
建築の未来へ向けて
海外レポート
海外レポート
アフリカの今
の違いで今の都市骨格が形成されている。しかし、建物が都
市の歴史を語り都市の歴史を示しているとするなら、東南ア
―ギニア湾のほとりで思う
ジアのいわゆる日本や欧米の植民地建築の先進性や企業開発
安部 貞司
住宅地、「後藤新平」が尽力した台湾の街に代表されるような
支配実態を示す都市計画や建築、それを支えた建築家・建築
組織もあまり見えてこない。かつてアフリカの新時代に向け
昨年から西アフリカ・ギニア湾岸国に度々出掛ける機会が
(ゴールドコ―スト)、奴隷海岸(スレイブコースト)と呼ば
て計画された都市構想も実現に向かっていないようだ。一方、
あった。20 年以上前に産油国リビア計画省のインハウス建築
れていた。その後、産業革命によって原料と製品の供給地と
国づくりが遅れている現実のなかで将来に取り組む指導者も
家として5年位係わったのが初めてのアフリカで、この間に
なりフランスやイギリスの植民地経営の戦略地となっていく。
現れている。海外で学んだ次世代の都市計画家や建築家も帰
日本で報道されるアフリカのニュースは殆どが不幸な事柄を
私の住んでいたリビアも地中海の南岸にあって古代ギリシャ、
国して活躍しているとも聞いた。中央アフリカの小国ルワン
伝えるものだった。そして今、フロンティアがここまできた
ローマの植民地として金や象牙と奴隷が運ばれた。その南に
ダの首都マスタープラン策定や都市計画は国際的な評価を得
という感じで都市の風景や生活が大変貌している街を歩きな
広がるサハラ砂漠といわれる南縁のサヘル地域(半乾燥地帯
ているし、ナイロビのマスタープランは日本の支援で策定さ
人らしい知恵と役割が求められているようだ。
がらアフリカの今を考えてみた。
の砂漠の海岸、セネガル、モーリタニア、ブルキナファソ、
れている。これからは、混沌とした都市の活力と魅力、文化
素晴らしい事例もある。ニジェール共和国の各地で 30 年
マリ、ニジェール、ナイジェリア、チャド)は、かつてサハ
と伝統的生活の空間的特性を建築や都市デザインの思想に取
以上にわたって自力で医療活動を続けている谷垣雄三医師は
ラ交易の拠点として大陸諸文明との窓口となっていた先進地
り入れる手法が課題となってくる、それは機能主義とは違う
あまりにも有名で 「 密林の聖者」といわれている。かつてガ
域の時代もあった。
価値による反地球フラット化ともいえる。
ボン国(旧・仏領赤道アフリカ)で医療活動を行ったシュバ
アフリカ各地に残る産物輸送の鉄路跡
イツァー博士の言葉「わずかな資本で比較にならない多くの
ことを成しうる」はわが国も旨としたい。エチオピアの政策
アドバイザリーの大野健一教授(政策研究大学院大学)の名
著書「途上国ニッポンの歩み 江戸から平成までの経済発展
」 は農業国が先進工業国になる過程を成功も失敗も含めて紹
介する内容で、英、中、ベトナム、アラビア語に翻訳されて
伝統的な移動販売人
いる。暮らし改善を先進国の援助ではなく政府に代わって住
■ギニア湾のほとりで ―複雑な民族対立構造と負の遺産
民自らが公共サービスを行う支援団体や、「緊急自転車」で病
かつて、アフリカを「暗黒大陸」と呼ばれた時代があった
型無水トイレの普及」「充電式 LED ソーラーランタン」など
FORUM
強大な王国が栄えたアフリカだが、15 世紀から 19 世紀にか
■アフリカの都市の今 ―次世代の都市の価値を
奴隷海岸の今
けては歴史的負の遺産を背負わされた地域で、ヨーロッパ列
丹下健三氏によるナイジェリアやアルジェリア、黒川紀章
■アフリカの開発 -資源から市民に
この原稿執筆中に西アフリカでエボラ出血熱の感染拡大が
国の進出以来惨めな歴史をたどってきた。アフリカ諸国は、
氏のタンザニアやリビアなどは日本の建築家が計画にかか
アフリカの巨大な消費市場や資源開発への世界の関心は高
続いており、「シューッ シューッ」とスチュワーデスが機内
列強による支配から脱却し独立を達成したものの旧宗主国と
わった国として知られている。いずれもアフリカが新時代に
く、欧米や中国、韓国をはじめ各国が進出を競っており、援
に殺虫剤を撒き飛行機は飛び立った。アフリカは援助からビ
の特殊な関係に今なお苦しみ当時のつめ跡をいまだに色濃く
向かって国づくりをはじめた時だった。しかし、私達にとっ
助と言う名で世界から押し寄せる草刈場の様相である。新年
ジネスへの対象に変わってきたようだが遠い大陸と日本を見
のこし、その後も原油や希少金属といった資源需要による経
て建築や都市の視点でアフリカを想像できる情報はあまりな
早々に、安倍首相もアフリカ諸国(コートジボアール、モザ
つめ直す機会となった。
済成長にのる国もその恩恵が一部にしか行き渡らない不平や
く 、 地中海沿岸の北アフリカはイメージできてもサハラ以南
ンビーク、エチオピア)を訪問した。また昨年(6 月)には
貧富の格差等が紛争になっている。アフリカの民族対立構造、
のサブサハラは限定された資料からはなかなか理解できない。
横浜で 5 年に一度の第 5 回アフリカ開発会議(TICAG5)が
宗教問題、政治変動は複雑な歴史的・政治的背景によるもので、
Amazing House としての民家は様々に紹介されているが、多
開催され、その数ヶ月間はアフリカにおけるビジネスチャン
権力者の腐敗、不安定な政情・政権が続き内戦や戦闘状態の
くの研究は文化人類学や歴史・地域問題がほとんどで建築や
スがメデイアで多く取り上げられたが「とりあえずアフリカで
国もありなかなか民生は向上してこなかった。
都市、居住空間といった分野の調査が少ないことが挙げられ
あれば」と言ったところが実感ではないだろうか。それほど
アフリカを語る上で避けられない歴史はなんといっても奴
る。東大・原研究室の都市や住まいについての継続的集落調
にアフリカの成長には目を見張るが、豊かな資源や巨大な市
隷貿易で、アフリカ大陸沿岸の特に西アフリカの港湾都市は
査の成果「住居集合論―⑤西アフリカ地域集落の構造的考察」
場に打算ではかつての欧州列強の搾取の記憶と重なってくる。
白人優位社会の弱者としての犠牲を強いられ、ギニア沿岸の
(SD 別冊 12・1979)は貴重だった。近年は、日本人が取り
旧宗主国との特殊な利権構造から距離を置き、力ずくで進出
国々は内陸部からの産物積み出し港として西から胡椒海岸(グ
組んでいる特長的な研究やプロジェクトも紹介されている。
する中国や韓国とも違い、外交力の強化により公正に市民社
レイコースト)、象牙海岸(アイボリーコースト)、黄金海岸
アフリカの都市は基本的には旧宗主国の考え方や植民地経営
会の発展を支えること、価値観の異なる現地の視点での日本
8 Bulletin 2014 年 11 月号
NGO・NPO を支援している日本企業も多いと聞く。
中国企業によるビル建築現場
Bulletin 2014 年 11 月号 9
FORUM
ことを知る人は今やどれほどいるだろうか。人類発祥の地で
人を搬送するソーシャルビジネスなども広がっている「循環
フランス資本のスーパーマーケット
覗いてみました他人の流儀
覗いてみました他人の流儀
小泉 誠 氏に聞く
んだと思います。そういう意味で、形へのこだわりや美しさ
です。大工さんが自分が建てた家の家具をつくることによっ
についてはケース・バイ・ケースなんです。だから、人と会
て、家具と家が繋がって、さらにクライアントは大工さんが
う前に絶対に形は考えないようにしているし、工場に行って
つくったんだから大事に使おうと言う気持ちも沸くし、同時
実際に素材に触るまではイメージも絶対しないようにしてい
に家に対する思いも持ってほしいというのがこのプロジェク
ます。
トなんです。
■ものづくりで、いろんな地域にかかわるようになったきっ
■住宅デザインのお話を伺えますか。
■最後に、小泉さんにとっていいデザインとは、どのような
かけをお聞かせください。
最近、住宅設計っていいなと思うのは、我々が関わる様々
ものでしょうか。
過去をさかのぼれば、柳宗理さんたちが産業や生産者のた
な産業ではユーザーの顔が見えないんですが、ふと思うと唯
使い続けたいというより、つくり続けたいと思えるデザイ
めに、丁寧に地域のことを啓蒙しながらデザイン活動をされ
一住宅産業だけがユーザーの顔が見えて物ができているとい
ンが、いいデザインなのではないかと思います。ただ下手を
ていた時代がありました。1980 年代くらいになると、つく
う感じがするんです。つくり手と話をしながらできるし、そ
すると商業的にたくさん売れるからつくり続けたいという人
れば売れる時代になってきてデザインが不要とされたんです。
こで絶対的な決断が下せるんです。緊張もするし、責任も感
もいるかもしれないから、誇りを持ってつくり続けたいとい
そのあとデザイナーが何をするかと言うときに、産業とはあ
じます。工事が始まって監理になれば、もちろんですが現場
うほうが正しいかもしれないですね。
まり関係ないメディアとしてのデザインみたいなものがあっ
にもたくさん通います。我々プロダクトをやっているとディ
たわけです。そのような変遷があったにもかかわらず、戦後
テールはせいぜい 100 くらいなんですが、建築の場合、ディ
小泉さんはとても誠実な
テールはその 100 倍くらいありますよね。描く線の本数なん
方。その誠実さは、他人や作
「これからのデザイナーの役割」
菜の花研修所 撮影:Nacasa & Partners Inc.
助成制度事業が存続していて、地域にデザイナーが入っても
て次の声がかかるようになり、最近それが増えてきていると
かもすごく多くて、その線の1本1本の線を責任を持って描
品に対してだけでなく、ご自
成果が出にくい時代が現在でも続いているんですね。
いう状況です。
くというのが我々の慎重なところでもあるのですが、線をき
身にも向けられています。仕
ちんと見つけ出して丁寧に描くということをやろうとしてま
事でスケジュールを組むとき
すし、監理ではそれをきちんと現場に伝える役目があります。
は、打合せや出張から埋めら
そんな中、1997 年頃、宮崎県都城のあるプロジェクトに
FORUM
関わったのですが、我々も初めてのことだったので、先輩方
■デザインする上で大切にしていること、流儀などをお聞か
がやっているメディア的なデザインづくりを少しやったとこ
せください。
ろ、失敗と言うか、成果がでなかったんです。我々は有名に
実はモノをきれいにつくるとか、便利に機能的につくると
■今後の抱負についてお聞かせください。
分の「デザインする日」を優
するのが目的じゃなくて、使われる生活用具をつくりたいと
か、面白い形にするっていうのは、訓練すれば誰にでもでき
これまで地域にかかわってきて、全国の地域でいくつか点
先して決めるそうです。デザ
思ってやったのですが、売れることよりもコンセプトがある
ると思っているんです。むしろ、デザインをしていく環境を
を打ってきたつもりなのですが、今はそれらをつなぎ始めて
イナーにとってデザインは一
ほうが地域に伝わりやすいからと、そのようなものをつくっ
どうつくっていくのかが重要だと思っています。
います。例えばこの器に岐阜の桧の蓋をつけようという具合
番重要な時間なので、スケ
た結果、そのメーカーは(それだけが理由ではなんでしょうが)
僕らがつくっていきたいのはきちんと持続していくような
で、産業同士をつなげてそれが線として結ばれ始めています。
ジュール上の「空いた時間」
廃業してしまったんです。結果、その産地も次第に衰退して
道具づくりで、それは形になっていくものと同時に、生産し
また、ある縁で住宅産業にかかわるようになって、その中で「大
ではないと。
しまい、僕らは何の役にも立てなかった。その時、これはま
ていく環境も持続していくということが一番なんです。そこ
工の手」という活動を始めています。きっかけは、近年、大
プロダクトから住宅まで、これまで多くの洗練された作品をつ
ずいと思って、そこで考え方ががらっと変わったんです。
を最もやっていきたい。そのためにも、システムだけじゃな
工さんが誇りをもてなくなってるということと、手をかけな
くられた小泉さん。今その視線は、ものづくりを通じて産業振興や
その後、似たような事業をまた別のところでもやらないか
く、精神的な「つくっていきたい」とか、「つくり続けたい」
いでくれっていわれちゃうんですよ。お金がかかるからこん
地域貢献へ向けられているという印象を受けました。
といくつか声がかかるようになったのですが、その経験を教
という気持ちをどのようにつくり持続していくのかが大事だ
なの削らないでくれって言
訓にしてやっていって次第に成果が出始めると成功事例とし
と思っていて、その結果、
われる。技術を使わないか
作り手(生産者)が「こ
ら技術が継承されなくなっ
れはいい道具だね」「こ
てくる。今、我々と同世代
れはつくってみたいね」
以降の職人が少ないんです
と言ってもらえる道具を
ね。大工さんも同じことに
スタジオ設立。箸置きから建築まで生活に
考えることが我々の役目
なっていると聞いて、それ
にはデザインを伝える場として東京の国立
で、性能が良く、タフな
じゃ大工さんの仕事をもう
ことに加え、作り手が誇
少し目の見えるところに
りを持ってつくることが
もっていこうと。単純に言
結果的に長く使い続けら
うと大工さんが家具をつく
kaico 撮影:村角創一
10 Bulletin 2014 年 11 月号
れる道具になっていく
れていくのではなく、まず自
宮崎椅子製作でのワークショップ
土気の家 撮影:Nacasa & Partners Inc.
るというプロジェクトなん
こいずみ道具店
撮影:Nacasa & Partners Inc.
小泉 誠(こいずみ まこと)氏プロフィール
家具デザイナー
1960 年生東京生まれ。デザイナーの原兆英・
原成光両氏に師事した後、1990 年コイズミ
関わる全てのデザインを手掛ける。2003 年
市に「こいずみ道具店」を開きリアルなデ
ザイン活動を展開している。2003 年「デザ
インの素」
(ラトルズ)出版。2005 年ギャ
ラリー間展覧会、同時に「と /to」
(TOTO 出版)出版。2007 年小
泉誠展「匣 & 函」富山県大山地区「木と出会えるまちづくり」委員。
2012 毎日デザイン賞受賞。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科
教授。
Bulletin 2014 年 11 月号 11
FORUM
からずっと地域の産業とデザイナーをマッチングするような
< 聞き手:広報委員 八田雅章・杉山英知 >
日本版CABEを考える
委員会活動報告
アーバントリップ実行委員会
第 75 回アーバントリップ見学記
建物リノベーションの様々な手法
JIA 中国支部
前支部長
山田 曉
■広島県では、多様な人材が集まる魅力ある地域環境の創
出を目的に、持続可能なまちづくり『魅力ある建築物創造
事業』を平成 25 年度から推し進めてきている。
ねらいは、魅力ある公共建築物を創造する仕組みの構築
長戸 厚
2. 魅力ある県内の公共建築物の創造に向けた設計者選定に
関すること
3. 県内の若手設計者及び建築に関係する学生の人材育成に
関すること
やクリエイティブな人材の誘引や育成などを通して、広島
4. 広島県内の魅力ある建築物等の情報発信に関すること
発の魅力ある建築物が持続的に創造されることで、広島県
この協定により、建築分野で活躍される専門家の皆様の
のブランドイメージの向上を図ることである。
英知を結集した連携協力体制を構築し、「魅力ある建築物の
それらの考えにもとづき、具体的な動きとして、平成
創造」に向け,広島発の新たな取組を進めていくことになる。
25 年 7 月 2 日、県庁において、一般社団法人日本建築学
会中国支部、公益社団法人日本建築家協会中国支部、公益
社団法人広島県建築士会との間で、『魅力ある建築物の創
造に向けた連携協力に関する協定』の締結を行った。協定
の概要としては下記の通りである。
【協定に基づく具体的な取組】
・建築プロポーザル方式の制度充実や実施(選定委員の推
薦等)に係る支援。
・人材育成に向けた学生コンペの実施(審査委員の推薦等)
や表彰制度創設に係る支援。
【25 年度実施済事業】
① 建築プロポーザル(4 案件)
② ひろしま建築学生チャレンジコンペ 2013
③ 魅力ある建築発信プロジェクト「ひろしまたてものがたり」
以上箇条書き的に示した
が、この協定は現在進行状
況にある。例えば、プロポー
FORUM
ザルの審査員として「建築
設計実務者」の立場で建築
広島県 - 協定書
家を推薦しており、実際の
締結時の様子
要旨
審査に携わるだけではな
魅力ある建築物の創造を推進するため、重点施策として
く、審査手順、審査方法等々にわたって意見を求められて
「魅力ある建築物の創造事業」に取り組む。事業の実施にあ
いる状況にある。加えて市町への普及促進を進める県を介
たり、建築に関する豊富な知見を有する団体との間で連携
して、市町にも協力支援を実施している。
協力に関する協定を締結することで、公共建築物の設計者
さらに、魅力ある建築物の創造する為の他の事業に関し
選定などにおいて、技術的な支援を継続的に受ける体制を
ても県の担当部局と意見交換を行ってもいる。これらの活
整備する。
動に対する評価は、今後この結果うまれた建築が示してく
協定内容
れると考えている。
広島県と協定締結団体は,次の事項に関して連携協力する。
1. 魅力ある建築物及び地域環境の創出に向けた取組に関す
ること
12 Bulletin 2014 年 11 月号
■第 75 回アーバントリップ見学会では、建物が完成時か
特筆に価します。
ら時間の経過と共に社会の変化に合わせてどの様に改修さ
■東京音楽大学 100 周年記念本館-新築して次の百年に
れ、建て直されたか。また、地域の中で文化をどの様に捉
バトンタッチ
えて建築にとけ込ませるかをテーマに、様々な手法で示さ
老朽化し時代にマッチしなくなった建物群を取り壊し新
れた三つの建物を訪れました。
規に建て直されたケースです。雑司が谷の駅から歩いてく
ると、周囲の低層建築群から特徴ある多面体のガラス屋根
■東京芸術劇場-イベントの多様化に対応
を突き出していてすぐにわかりました。敷地は殆どが狭小
改修前はエントランス正面中央に一直線で 5 階広場迄
な道路に囲まれていて、その中の建物は、周囲の校舎をつ
上がるエスカレーターがありました。改修ではエスカレー
なぐ人と人の流れを結びつけるバイパスとしての役割を持
ターは向かって右手にワンステージのぼってから西壁面に
ち、その上階に、発表会、研鑽研修用の大小の音楽ホール
沿って折れ曲がり、新しく 2 階に回遊できる動線が出来、
を、さらにその上に練習室と、二つ分かれたヴォリューム
人の流れが機能的に整理されていました。さらにエスカ
の真中に屋根がかかり、出来上がったガレリアにオープン
レーターからはアトリウム全体を見おろすように 5 階広
階段が螺旋状に配置されていました。道路からの後退空地
場へ導かれ、ドラマチックなコンサートへの期待感は改修
をつくって、所定の規模を確保する、さらに、演奏ホール
前と同じように演出されていました。最上階大ホールでは、
を逆方向に重ねて高さの規制をクリアする等、随所に創意
演奏形態に合わせたステージ上の可動天井を改修。下階の
工夫の見られるダイナミックな建物でした。そのユニーク
中ホールのプレイハウスは、コンサート主体ではなく、舞
な空間構成以上に細部にわたって音響の最適化や、遮音の
踊、芝居と幅広く開催される時代となり各々のニーズに合
配慮があり、時代の流れと共に、
「昔はオーケストラを育て
わせて改修。地下小ホールのシアターウエスト、イースト
たが今はソリストを育てる時代」とか、
「教官と音大生のレッ
は多目的ホールとして改修され、四つ全てのホールに手が
スン室の間には待合空間が必要」とか、
「床暖房の上には楽
加わりました。竣工してから二十年余り、インテリア構成
器は置かない」など興味深い話の紹介もありました。市民
もフロアごとにテーマを持ち親しみやすくなって、建物の
文化を地域の中に如何にとけ込ませるかというというチャ
成熟を感じさせるリノベーションでした。
レンジですが、無料の貸しホール(興行は出来ない)とし
■立教大学1号館(本館)-引き継がれる伝統の精神
てしか利用できないのは、法規上の理由とはいえ少し残念
建物はチュダー様式、レンガ積み二階建ての歴史的建造
な気がしました。
物です。外観は当時のままとし、耐震改修や利用状況に応
じたプラン変更等、一気に全てを改修してしまうというも
のでした。内部では光取りの窓を避けるよう、長辺方向は
屈曲ブレースを配置し開放的な要素を残して壁で囲ってお
り、短辺方向は端部にブレースを含む耐震補強を壁仕上げ
の中に納めているので、実際、補強スペースの分だけ室内
空間は狭くなっていますが、違和感なくすんなり受け入れ
ることが出来ました。屋根裏に上がると小屋組みの補強の
様子がよくわかり、最下部は床を外して基礎を造り直す等、
窓も含めてかなり大掛かりな改修でしたが、外壁の蔦を損
傷させないで、昔からの姿を残したまま修復できたことは
東京音楽大学 100 周年記念本館
Bulletin 2014 年 11 月号 13
FORUM
広島県における CABE 的取組
委員会活動報告
委員会活動報告
国際事業委員会
建築相談委員会
「グリーントイレ
ワークショップ 2014」リポート
国際事業委員会
建築家との接点
建築相談委員会
委員
坂田 泉
廣田 裕一
■はじめに
■ JIA に入会してから 2 年近くが過ぎた。その間、社会との
た活動を通して交流を深めることは、将来の JIA にとって
地球に暮らす 70 億人のうち、25 億人の人々がまだ満
接点を増やしていこうと神奈川地域会のいくつかの活動に参
も大きな意味があると思う。今後は、子供たち自身が将来
足なトイレを使えていない。もしその人々が私たちと同じ
加した。その際感じたことや今後の課題について記したい。
を選択する年代に建築家との交流を深める活動が行えれば
ような「水洗トイレ」を使い始めたら、地球上の水はい
■建築相談室
よいと思っている。
くらあっても足りない。水洗トイレは地球にとって持続可
昨年度から相談員として活動している。そのほとんどが
■横濱建築祭
事後相談であり、設計と施工が同一組織の場合に起こるこ
JIA 神奈川建築 WEEK の 25 周年記念事業で建築祭とし
との相談が多い。また、施主とのコミュニケーション不足
ては 3 回目の開催である。市民との交流 (CROSS×CROSS)
能な技術ではないのだ。だとすれば、水洗トイレに替わる
原田先生による講評
方法を見つけるのは、未来の地球に対する私たちの使命
といっても過言ではないだろう。「グリーントイレワーク
A 班:【広告塔としての公衆トイレ】
による小さな行き違いがクレームにつながることが多く、
を強く意識し、また大学卒業設計コンクールも同時に開催
ショップ 2014」はそういう使命感に基づいて企画され、
・インフラの整わぬ途上国で、水を使わぬきれいな公衆ト
調整する建築家の役割が重要である。今後は、建築家が設
される。馬車道駅コンコースをメイン会場とし、様々な展
開催に至った。以下、当日の流れに沿って、ワークショッ
イレを目指すためには、トイレブースに広告機能を設け
計だけでなく監理においても重要な役割を持つことを知ら
示、ワークショップ等の他、シンポジウムや街歩きなどで
プの成果をご紹介する。
たり、キオスク(売店)を併設するなど、管理費を捻出
せ、設計と施工が対等な立場で建築を造ることが前提とな
構成される。今回は、近代建築展・復興橋梁展の資料・展
■ワークショップ概要
する仕組みが必要
るよう働きかけていきたい。
示物作成で参加し、今までとは違う視点で横浜を見ること
・健康や衛生の向上、水や環境への配慮をアピールするなど、
セーフティーネットとしての建築相談室の役割は重要で
ができた。
場所:JIA 本館建築家クラブ
社会に対する意見を提示する「広告塔としての公衆トイ
あるが、事前相談の割合が増え、個々の建築家が相談室と
神奈川の大学の卒業設計展示・公開審査では、力作が多
主催:JIA 関東甲信越支部・国際事業委員会
レ」というあり方でスポンサーを獲得できると考える
しての役割を持ち建築相談室への事後相談が少なくなって
く身近なテーマを深く掘り下げた作品が多かったように思
日時:2014 年 7 月 19 日(土曜日)10:00 ~ 18:30
B 班:【コミュニティの核としての循環型トイレ】
初めて建築家の役割が社会に認められたことになるのでは
う。最近は建築業界、特に設計を目指す学生が少なくなっ
アドバイザー:原田英典氏(京都大学大学院地球環境学堂)、
・清潔に管理された循環型トイレをコミュニティで共有す
ないだろうか。
てきているが、このような活動を通してより多くの学生が
■空間ワークショップ
建築家を目指すことを望んでいる。
・屎尿からたい肥や燃料等を産み出したり、公共トイレを
小学生の授業として、また地域イベントとしての「空間
JIA の会員数も減少傾向にあると聞くが、どの業界でも
人 5 名、一般社会人 11 名、合計 20 名
憩いの場としたり、トイレをコミュニティの創造につな
ワークショップ」に参加した。最初は不安そうだった子供
その裾野を広げることが発展につながる。建築家と社会の
■ワークショップの流れ
げ、生活の質の向上に寄与する装置とする
たちが、作業が進むにつれ活動的になり自ら進んで行動し
接点を増やし、建築業界に進もうとする人材を増やすこと
で今後の JIA の発展につなげていきたい。
山上遊氏(LIXIL 総合研究所)
参加人数:建築系学生 3 名、一般学生 1 名、建築系社会
ることで生まれる新たな価値を探った
FORUM
午前中は、アドバイザーの原田先生から途上国のトイレ
C 班:【スラムのカプセルトイレ】
逞しくなっていく。小学生と建築家との接点は、通常では
事情について、山上氏からケニアにおける「循環型無水ト
・スラム街など、トイレが足りていない地区での公衆トイ
自宅の設計を建築家が行う時ぐらいしかないが、こういっ
イレプロジェクト」についてガイダンスを受けた。その後、
レの仕組みを考える
三つのグループに分かれ、アドバイザーらも加わり、議論
・人力で回収可能なサイズ、重量のカプセル型のタンクで
を深めていった。中間発表をはさみ、終盤に各班ごとの成
屎尿を収集し、バイオガスやたい肥にして売却すること
果を発表。原田先生の講評後、交流会を経て、ワークショッ
で管理費を捻出する
プを閉じた。以下が各班のポイントである。
FORUM
協賛:株式会社 LIXIL
■むすび
原田先生の講評では、広告費から自ら管理費を生み出す
広告塔としての公衆トイレのアイディアや、循環型トイレ
をコミュニティ形成の核にする発想に対して、高い評価を
頂いた。今回は建築関係に限らず、様々なバックグラウン
ドの参加者が集まり、短い時間ながらも、多様な視点から
の成果が得られた。次回以降もより広い方面への呼びかけ
により、多様な参加者によるワークショップとしたい。
空間ワークショップ
横濱建築祭展示風景
ワークショップ風景
14 Bulletin 2014 年 11 月号
Bulletin 2014 年 11 月号 15
委員会活動報告
委員会活動報告
交流委員会
保存問題委員会
Bグループ 軽井沢サロン会議開催
B グループ代表幹事
日新工業
横濱
生糸を守った建築家「遠藤於菟」
保存問題委員会
相談役 白石 健次
笠井 三義
■さる 8 月1日、2日の二日間、場所を軽井沢に移し、
また懇親ゴルフ組は先日 LPGA 女子プロゴルフトーナメ
■横浜を横浜たらしめる最重要ポイントがまた一つ、開発
物産不動産株式会社が所
軽井沢サロン会議を好天の下行いました。この会には正会
ント「NEC 軽井沢 72 ゴルフトーナメント」が開催された
の波にさらわれようとしています。
有していた 1982 年にも再
員5名、協力会員 11 名と多数の参加がありました。
軽井沢 72 カントリークラブでゴルフプレーを楽しみまし
旧三井物産横浜ビル・横浜支店倉庫です。
開発計画が持ち上がり現在
会場はBグループ協力会員である化研マテリアル(株)
た。好プレー続出の楽しいゴルフを満喫しました。
2014 年7月末に、旧三井物産横浜支店倉庫部分の解体
の歴史を生かした街づくり
が計画されているとの情報が入り、8 月 5 日には横浜市資
条例の基礎を作るきっかけ
様の軽井沢保養所をお借りし、灼熱の東京を離れ、清涼の
地軽井沢で昨年に続き行いました。
二日間にわたる盛り沢山のスケジュールで大いに軽井沢
産調査会・建築学会の緊急シンポジウムが行われ、各文化
となりました。その時点か
先ず第一日目の第1プログラムでは、講演会として東京
を堪能していただきました。
財保護審議会のメンバーによる取り壊しに至る経緯確認と
ら、所有者側は自社での保
価値について緊急アピールがありました。
存活用についての姿勢は終
大学大学院建築専攻松村秀一教授をお招きし「ストック活
用時代の到来とまち再生手法としてのリノベーション」を
B グループ恒例となりつつある軽井沢サロン会議ですが、
建築家協会としても、現在関東甲信越支部保存問題委員
始一貫変わらず、横浜市の
テーマとして講演をいただきました。2時間の予定をかな
来年も多くの参加を募り、続けていきたいと考えています。
会相談役であり、JIA 神奈川まちづくり保存研究会の主査
歴史的建造物の認定につい
りオーバーし、建築の長寿命化を考える上での問題点など
でもある立場から、情報の整理と解体の保留・保存活用に
ては頑なに拒み続けてきた
大変興味深いお話を頂きました。
向けての要望書を所有者・文化財保護行政の窓口でもある
経緯があります。
第2プログラムでは参加協力会員から各社新製品情報の
横浜市へ提出すべく各内部調整を図りました。結果 8 月
説明があり第一部は終了。その後、松村先生も交えて中庭
22 日に所有者の(株)ケンコーポレーション・横浜市長・
遠藤於菟は、表題にあるように生糸を守った建築家にふ
にてバーベキューパーティで大いに飲食、歓談し、第一日
教育長に支部、当委員会、神奈川地域会連名で要望書を提
さわしい業績を持っています。この旧三井物産横浜支店
目は無事終了しました。
出し、各プレス発表も行いました。
倉庫は明治 43 年竣工。関東大震災にも被害を受けず当時
遠藤於菟シンポジウムチラシ
保管していた生糸 [ 当時の価格約 600 万(現在の価格約
松村先生を囲んで
横浜では歴史を生かした街づくりが進められています
600 億)] を救う事で横浜の生糸貿易を 1 ヶ月後には再開
が、民間所有の建物には未だ為すべき特効薬を見つけられ
させ、横浜の生糸貿易の発展に大いに貢献したものでした。
ずにいます。
その様な遠藤於菟の建築作品も昨年解体報道された帝蚕倉
FORUM
この旧三井物産横浜ビル・倉庫は、物産不動産株式会社
この様な状況の中、どの様な活動が有効か活動しながら
が昨年 11 月まで所有していましたが、現在不動産会社の
探って行くことにしました。
(株)ケンコーポレーションが所有しています。
松村教授 講義中写真
まず一般市民の方にこの建物の価値と建築家『遠藤於菟』
を認識していただく為に、遠藤於菟の調査研究で造詣の深
二日目は建物視察組と懇親ゴルフ組に分かれ、建物視察
い堀勇良氏、もうひと方として遠藤於菟についてのエッセ
組は浅間山ふもとの鬼押し出し園、白糸の滝など軽井沢観
イを数多く書かれておりますエッセイストの鈴木智恵子さ
光をし、その足で、今年世界文化遺産に登録された富岡製
んにお話しを伺うシンポジウムを企画しました。約 60 名
糸場、内井昭蔵氏の設計になる群馬県立自然史博物館、白
の参加者があり 2 時間の枠一杯でのシンポジウムとなり
井晟一氏設計の旧松井田町役場、柳澤孝彦氏設計の富岡市
ました。
立美術館と群馬県下の著名建築を視察しました。
また、市民活動で生糸倉庫を壊して欲しく無い人々の会
富岡製糸場にて
の活動の中で、市民向けの遠藤於菟と横浜についての街歩
き・日本各地の倉庫についての写真展の開催等、地道な活
動のお手伝いも続けております。
シンポジウム 9/18 の会場写真「写真提供:金山眞人(再生部会)」
16 Bulletin 2014 年 11 月号
Bulletin 2014 年 11 月号 17
FORUM
庫を含めてもわずか 4 棟のみになりました。
地域会だより
地域会だより
新宿地域会
文京地域会
環境・建築デザインセミナー
文京建築会の活動について
「建築のコモナリティ」
文京地域会
代表 講師:アトリエ・ワン
土居 志朗
野生司 義光
■新宿地域会では、新宿に縁のある建築家をお呼びして「環
■ JIA 文京地域会は、建築士会文京支部と共に活動し、建
境・建築デザインセミナー」を開催している。去る 7 月
築士事務所協会文京支部とも、イベント毎に活動を共催し
15 日は JIA 館建築家倶楽部にて、アトリエ・ワンの塚本
ている。今回は三会で活動している内容を紹介する。会の
由晴氏、貝島桃代氏を講師に招き「建築のコモナリティ」
名称を文京建築会といっている。
をテーマに講演していただいた。当日は、学生や若手の参
「文京・見どころ絵はがき大賞」
加が目立ち、59 名の聴衆が集まった。ワインや軽食を片
今回で第 4 回目となる
「コモナリティ」とは、彼らが
「文京・見どころ絵はがき
近著「コモナリティーズ ふる
大賞」。このイベントは文
まいの生産(LIXIL 出版)」でま
京区に興味を持っている方
セミナー風景
ご近所のぜいたく空間“銭湯♨”in 文京
ならだれでも参加でき、下
とめたパブリックスペースのデ
FORUM
ザインに関するキーワードであ
に、さらには「個」の表現よりも「共」の表現に重きを置
は幼稚園児から、上はお年
させたおとめ湯の実測図面や実物大の唐破風の再現など、
る。詳細は著書を一読すること
くことへ自然とシフトする。そこに近代の産業化によって
寄りまで参加できる。絵を
銭湯空間のすばらしさを伝える展示を中心に、文京区に現
をおすすめするが、日本語だと
取りこぼされた「共=コモナリティ」を取り戻そうとする
描いたり、写真を撮ったり、
存する銭湯 11 軒、全ての魅力を披露し、また、明治時代
共有性、共同性ということで、
彼らの戦略がある。
パッチワークだったりどの
の銭湯事件簿の新聞も披露した。
従来のコモンとか公共性といった計画的で外側から与えよ
パブリックスペースは本来そうした「ふるまい」が
ような形でも良いので、は
うとするものではなく、むしろもっと細やかに物事へ向け
実 践 さ れ る 場 で あ る べ き で、 紹 介 さ れ た 彼 ら の 活
られた眼差しや愛情によって内側から拾い上げるものと
動(KANAZAWA MACHIYA METABOLISM、WINDOW
いったイメージが感じられる。
SCAPE、コモナリティーズでの「都市空間における人々の
応募していただいた作品を、文京区長、教育委員長、観
る。最初に発行した本は「都市のみどりはブランドになる」
彼らの関心がコモナリティへと向かうのは、「今日、私
ふるまい」等)での地域や都市での建築タイポロジーの事
光協会会長、写真家、小学校の図工の先生、著述業の方、
との思いから、大名庭園(小石川後楽園、六義園、小石川
たちは豊かにはなったけれども果たして幸福といえるの
例は、物と事が分離した今日において、総合化された物事
文京建築会のメンバー等で投票して、大賞、区長賞等、賞
植物園東京大学)、湯島天満宮、根津神社、護国寺等まとまっ
か」という漠然とした不安や歯がゆさへの問題意識から発
として表現されており大変興味深かった。
状と記念品を出している。今回の「第 4 回文京・見どこ
た緑が多く存在することをテーマに「文京グリーンマップ」
している。近代の産業化に伴って固められた「個」と「公」
ま た、 最 近 の 活 動 で あ る 独 ダ ル ム シ ュ タ ッ ト で の
ろ絵はがき大賞」は 600 を超える作品が集まった。
を発行した。
からなるシステムが、それまで人々を取り結んでいた「共
OSTHANG PROJECT の紹介を通じ、ヨーロッパの若い建
文京シビックセンターの展示室をお借りして、展示を行
次に「文京ブルーマップ」は、目に見える川や池だけで
=コモナリティ」を取りこぼして来たことを問題視してい
築家も同じような問題意識をもって小さくもさまざまな試
い、最上階の「シビックホール」にて表彰式・シンポジュー
なく地下に流れる水脈等にも焦点をあて、文京区内の水を
る。近代の街づくりが具体的な「個」の見えない「公」に
みを実践していることを知ることができた。
ムを行っている。
テーマに発行した。
よって主導され、人々が自分達の住む街に自主的に関われ
質疑応答では、学生を中心に積極的に質問が投げかけら
ていないことで、自分の街に誇りを持てないという疎外感
れた。ある学生が質問で使った「市民」という言葉に対す
「文京建築会ユース」という組織がある。学生から社会
が多い町です。そこに焦点をあて、土にまつわるテーマで
は多くの人が感じているのではないだろうか。
る「市民ではなく『人々』だ」という応答は、先に述べた
人までの方を対象に、まだ建築家協会、建築士会に入って
発行するつもりです。
この問題に対して彼らは、人々の身体に内蔵され共有さ
近代への問題意識の現われであろう。
いない人が中心になって活動している。
れている「ふるまい」とそれに対応した「建築タイポロジー」
セミナーの後は近くのお店へ移動。参加した学生達も誘
「絵はがき大賞」の展示にも大いに活躍をして頂いた。
文京区立明化小学校において、2 年前より文京建築会が
を空間デザインの鍵としている。それらは「それ自体ひと
い、講師を囲んで懇親を深めた。今回は、学生や若手が参
そのときに、同時に別なイベントを行っている。それは「ご
講師として校舎の秘密を探る授業を開始、さらには学校を
りで独占することができないもの」だから共有資源なのだ
加し各々有意義な時間を過ごせた様子で、今後もこういっ
近所のぜいたく空間 “銭湯♨” in 文京」を開催し、中庭の
中心とした災害に強い街について学習を行っている。
という考え方がユニークで面白い。そして、「共」に目を
た活動がジュニア会員や学生会員など JIA の裾野を広げて
ある銭湯 “おとめ湯” を会場では、丹念な取材により完成
以上のようなことを、最近の活動として行っている。
向けると、「公」の主体性よりも「個(=人々)」の主体性
いく取り組みの一助となることを期待している。
18 Bulletin 2014 年 11 月号
文京・見どころ絵はがき大賞
「文京グリーンマップ・ブルーマップそして今年は文京レッ
がき大の大きさに表現して
ドマップ」
作品を応募をしていただく。
文京建築会は定期的に文京区に因んだ本を発行してい
「文京建築会ユース」
現在は、「文京レッドマップ」を編集中。文京区は山坂
「防災の街を考える~震災復興校舎とともに~」
Bulletin 2014 年 11 月号 19
FORUM
手に寛いだ雰囲気ながらも、皆、熱心に話に耳を傾けていた。
特別コラム
特別コラム
中野地域会
認知されていないこの国で
「 建築家マインド 」 を誰が、どう 「 社会化 」 できるのか?
(オリジナリティ)なのだから、建設業のような業務連
として機能するためにこそ「認知と受注」を重要視す
携は難しいのでは? 前川國男は死後に自分の名前を勝
べきなのに、そうでないのはなぜか?
手に使われることを嫌っていたが、それほどまでにプ
●本部は地域会のツールが見えていない。 本当に地域会
にツールがあるなら、もっと発信しないと。
■ 中野地域会 21 周年記念トークバトル 要録
域会が位置づけられるのか? 地域会同志の情報交換な
・メインイベンター
業務推進のためには、本部・支部・地域会が、互いに
・ 中野地域会 バトラー 小池 正人
個人にもしものことあった場合のサポートは JIA の課
●全国の活動情報が膨大だから。 コンパクトに処理し、
題。(後記:現役中の設計ミス等の不安には建築家賠償
使える戦略情報にまでなっていない。
観音 克平
「 日本という組織依存型社会の中で、個人建築家の
才能と実務能力を活かし生活できるために、我々は
責任保険がある。)
●官庁を経て大手事務所に勤めたが、組織の一員という
● JIA に「アトリエ系」のメンタリティが入っていない
意識はあまりなかった。 個人の創意が生かせる環境
その活動を正しく把握して、強化する方が早いのでは
のではなく、所属が大組織だろうがアトリエだろうが、
だった。 すばらしい仕事をした逓信省の山田守も吉田
ないか。
仲間として建築家の自覚を共有している前提で活動し
鉄郎も結局、個人だった。 組織に呑まれたことはない。
ている。 アトリエ系が仕事から疎外されているとすれ
官庁営繕は国民のためにあり、予算はあるが利益を出
時代になった。 本部を中心としてやっていることの中
ば、JIA の問題と言うより、設計界が(「建築家マインド」
す必要がなかった。 粛々と建築の本道に邁進できた。
に、個人の建築家を救済するような、事業的に結びつ
をないがしろにして)組織信仰社会に迎合してしまっ
だから、我々こそが本当の建築家だと思ってきた。 JIA
くものが少ないように思う。 地域会が連携すれば何か
た結果に過ぎない。
に来て、建築家なのに営利を追求している世界を知っ
◆一般論として小事務所では仕事にならない、稼げない
近藤 弘文
いう個人に依頼する意識が発注者にあればなお、その
◆どうして(いいアイデアの)発信が伝わらないのか?
どは支部に既にシステムがある。
港地域会 大倉 冨美雄
安達 治雄
うしたら、組織信仰社会を乗り越えるツールとして地
ロフェッションが個人に帰属するのが建築家で、そう
出来るというのではなく、個々の思いを地域会でやっ
◆ある点でその通りだが、JIA の問題でもあり、「過ぎな
ていき、「この指とまれ」で出来るところは連携すると
い」では済まされない。 マーケティングなどの情報操
◆個人の「作風」が活きることを建築家としている人も
いうことだ。
作が問題意識になっていないからか。 自分たちの社会
いるし、組織で仕事をしていることを意識しないこと
て驚いた。
●公益法人を選択したことにより報告義務に追われ、役
どうするべきか? 」(問題提起者:大倉)
的位置づけを、組織にいると気にしなくなってはいな
自体が問題(作風どころではない)とする考えもある。
員会で重要事項を決済してしまうなど組織作りばかり
いか。また、大手と小は同じとおっしゃるが、全く違う。
●日本にそれほど強い組織依存があるのか?(統制のと
vs
やっているなら、自分たちでということか、と。 ただ
「JIA の本義は、個人に帰属するプロフェッション(職
営業と顧客が情報を握り、仕事が複雑になり、設計図
れない)街並みを見ても、日本人が組織を大切にして
大倉氏の指摘した建築家の社会的認知、そのための登
能)の水準向上 と 社会認知の推進、そして建築家
を描けば済むようなことはなくなっている。 分業化し、
いるとは思えないが・・。 向三軒両隣というか、単な
録建築家制度、CABE など、業務改善関連の多くは、本
の社会貢献であり、これらは会員の業務組織の規模
何人か抱えて責任を振り分けないと仕事にならない。
る付和雷同では?
部マターであることが多い。 業務改善委員会は建築家
●組織信仰だけが支配的にならないための方法論として
◆いや、日本人の組織依存度は凄いものだ。イタリアで
には関わらない。」(中野地域会)
の地位向上のための対社会的・対市民的活動を全般に
は、信頼の指標を組織でなく個人の水準に置き、これ
言えば、自分の言いたいことを言って、周囲はそれを
扱っている。 これらの組織を活かし改良したほうが省
を周知する、つまりは資格制度に行きつく。
認めた上で反論なりをする姿勢が思い出されるが、様
以下 ◆は大倉氏発言、●は中野地域会バトラー発言、
エネで現実的ではないか。
FORUM
① - ③は来場者発言
◆それで仕事になるのか。(経営は? 後記:資格制度そ
のものに問題はないのか?)
この協会は「事務屋」組織になったのか―――――
地域会の連携模索をめぐって―――――
◆本部の活動は(行政の認識度に合わせて)やることは
子を見て周りが納得しそうもなければ何も言わないの
が日本人。 クリエイティヴ・プロの社会化のためには、
これを改善しないと、新しい建築家のポジションが出
作風や組織依存型社会への思いの違い―――――
てこない。
◆ JIA マガジン 2013 年 6 月号に書いた「活きろ!隣組
やっていると思う。 ただどんな人たちでやっているの
地域会」は、一般社会における産業動態を捉えるとい
かは気になる。 非常に気にしているのは、建築家自身
継続性が違うと受け止められているのでは? 設計依頼
ネット社会で認知されてもいい時代に―――――
う観点のからの問題提起で、我々が組織化社会の力を
が皆、創造性を失って少々事務屋になってしまってい
を受けたあとでの建築家の事故や病気、アフターフォ
●広報委員会も JIA 内の情報交換だけでなく、外に対して、
軽視しているのでは、という内容だった。 JIA につい
るように思えることだ。 建築家の本義への意識が欠け
ローなど、クライアントの不安を拭うために、設計契
JIA がどういう組織でどういう行動をしているかをもっ
ては個人的には、細部や全体には関わっておらず、知
てきたからではないか。
約の中で業務の代替後継者を予め指名するなど、JIA と
と発信するべき。
●組織事務所とアトリエ系事務所とでは、社会からは、
らないことも多いので、話の中から皆の経験を出し合っ
● 新しい定款では JIA の目的を「公益を保護」「公益に寄
て活かせれば(それを “隣組地域会” と呼称した)と思っ
与」と二段構えに定義。 以前は建築家側からの職能理
◆そのことを本部に言ってないのでは。「良い指摘があり
ている。
念のみで、独善があったが、4月からは、公益を前面
ました」だけで、なぜ契約書式にしないのかが問題。
● JIA に地域会が存在するのは、組織信仰社会への対抗の
に社会が求める建築家、というスタンスを謳っている。
●建設業は完成保証での連携もあり、瑕疵担保保険加入
ためというよりは、それぞれのローカルな問題意識か
そこの意識の違いが浸透していないので、不満という
ら市民や行政に向き合う活動のためであるはずだ。ど
形になっているのでは?
20 Bulletin 2014 年 11 月号
して保証する方法もあるのでは?
の法的義務もあるが、建築家にも必要では?
●建築家の場合、多くの発注者が求めるのは個々の作風
◆建築家の役割について、主要メディアに対して専門家
を入れて、解りにくいものを解りやすく説明すること
が重要だ。
●ネット社会は必ずしもアトリエ派にとって逆風ではな
い。 アトリエ派の中にも初期案の無料設計をネットで
謳うなど、職能を自己否定するような現象もあり足元
Bulletin 2014 年 11 月号 21
FORUM
職能問題
◆定款とか社会正義の内容はもういい。 それより、職能
特別コラム
広報からのお知らせ
る。 こういう組織、こういう状況を作ってくれという
がマーケット化されていく構
前に、自分の足場を固める努力が先だ。
図を逆利用し、マーケット化・
■ Bulletin は読みやすい誌面になりました。
■ 新コーナー「建築の未来へ向けて 建築教育の今」
いつも Bulletin をご購読いただきありがとうございます。広報委
本号より「建築の未来へ向けて 建築教育の今」の掲載が始まり
員会・Bulletin 編集ワーキングでは、会員読者の皆様から Bulletin
ました。少子高齢化が進む中、建築系の教育現場ではどのような
類型化され得ないニーズにも
●日本には建築家が認められにくい風土、文化があるの
の文字が小さく読みにくいといったご意見を賜り、広報委員会に
人材を社会に送り出そうとしているのか等々、各学校(大学、短
対応できるのがネットの特徴
は確かだ。 社会の人たちに建築の大切さを認知しても
て協議した結果、早速本号より改善を行いました。文字の大きさ、
期大学、専門学校等)を紹介していきます。また、本コーナーは
らうこと、特に建築を楽しめる小中学校での義務教育
行間を調整し、以前より読みやすい誌面となりました。
支部ホームページ「建築家 ONLINE」との連動企画です。ホームペー
今後も引き続き Bulletin について、皆様からのご意見、ご感想を
ジではやや視点を変え、「一般市民向け情報」として紹介します。
である。
◆ネット社会を悪いとは言って
が大切だ。 地域会で良いと思ったのは「こども空間ワー
いないが、ネット社会自体に
クショップ」。 これを三多摩地域会と中野地域会が連
対する戦略を身につけていない。
トークバトルちらし
携して行ったのは非常に良かった。 建築に対する一般
の理解を深めるのには、子供のときから建築(家、町)
会員間の現実認識の落差を超えて
を学ぶこと。 ワークショップに限らず、家庭教育、学
①「アトリエ派」という言い方はちょっと不愉快。 建築
校教育が大切だ。
家は組織にあっても建築家だ。 これまでも大組織で
◆まったく反対ない。教育が原点だから。 でもこれを大
リーダーシップを取ったチーフは皆アーキテクトだっ
人にやらないと。子供が育つまで私は生きてはいられ
た。 一番足りないのは「建築家は認知されていない」
ない。(笑)
ことに対する JIA の行動。「組織信仰」については、日
● JIA の若い建築家が社会の中で希望を持って活躍できる
本が村社会の伝統を引きずっているからで、異端の行
ように活動すべきと考えている。 一般の例だが、
「1,000
為をすると押しつぶされる。 これを克服しないと民主
円カット」の床屋はそれなりの仕上がりと社会が認め
主義が根付かない。
ているが、設計者の場合はどう違うのか理解されてい
◆同感。 なぜアーキテクトを「建築家ってこういうもの
なのだ」と、社会にうまく説明出来ないのか。
ないと感じる。 なぜプロフェッショナルとしての建築
家がやらないと駄目かを JIA が社会に丁寧に説得する
①建築家が自分たちの世界に閉じこもってしまい、オピ
必要がある。 建築家は、国の富であり文化である都市
ニオンを発信せず、オピニオン・リーダーとして認知
の質を決定する職能である。 これを解ってもらえない
されていないから。 JIA も発信しなければならない。
と、この国は豊かになれないだろう。
お寄せください。
■「ホームページワーキング」・「Bulletin 編集ワーキング」の活動に参加しませんか!
広報委員会では、ホームページの企画・運営や広報誌 Bulletin の
是非一度、お気軽に足を運んでみてください。以下に二つのワー
編集に携わってくださる方(会員)を募集しています。
キングを紹介します。
「JIA に入会したばかりでまだ組織のことがよくわからない」「活
動に参加してみたいがきっかけがつかめない」などお考えの方々
にとっては、広報委員会の二つのワーキングは JIA の活動参加へ
の足がかりになるはずです。
ホームページワーキング
FORUM
える。 組織事務所であれ、個人事務所であれ、建築家
な面でアトリエが大手から疎外されている、というの
の生き方で出来ないことは無い。 仲間たちと組織を
は違う。 そうした技術集積は、初めは時間が掛かって
■ 七五三をどんな風に過ごしたかあまり覚えていないが、いつもペコちゃ
作って、自分はそのアンテナで大きな仕事を個人事務
も、アトリエでも達成できるからだ。 逆に技術は最終
ん千歳飴を買ってもらっていたような気がする。少し前に銀座のそのレ
所の中で出来ると思っている。 JIA がどうだこうだと
的には個人に収斂する。 たとえば私でも職人が出来る
言うより、自分がどんな戦略で臨むかだ。 JIA をどう
ことは究極的には自分で出来る自信がある。 オールマ
イティの建築家は現実の社会が求めていると確信して
の JIA と思う。 建築家団体としては、知恵を出し合っ
いていない。 丹下さんは 15,000 人以上集めて力で説
て職能推進のための情報をコンパクトに共有し、有効
き伏せようとしたが、今や力を蓄えるどころでない窮
に活用して行けば、その力は大きい。
状。一方で芸術家みたいな顔をしながら、他方で建築
家資格を国家制度にして担保を取ろうとして、相手に
見透かされた。まず個人が建築家として頑張らないと。
◆結局は同じ願いを言っていると思うのだが、現実認識
の落差はなかなか埋められない ・・。 でもこれが「隣組」
連携の第一歩なのかも。
誰かに仕組んでもらいたいというのは駄目。 コルビュ
ジェも、最初は外国籍の異端建築家だった。 食えない
■この議論につき「解題」という論考3稿を加えて、支部
時は著作に励み、頑張ったからこそ世界中に認められ、
ホームページ Bulletin(HTML 版)に全文掲載しています。
フランス国葬にもなった。 勉強を積んでアンテナを張
それらの論考もぜひ、ご一読ください。
れば必ずチャンスが来る。 その時に力を発揮すれば良
http://www.jia-kanto.org/members/bulletin/2014/11/20.html
い。 日本の街並みの惨状を見れば、仕事はいっぱいあ
22 Bulletin 2014 年 11 月号
Bulletin ワーキングでは、会員自らが企画・取材・編集・校正
を行い、手作りで誌面づくりを行っています。毎月1回のミー
ティングへの参加と、隔月発刊する Bulletin の誌面の企画・編集
作業を行います。また、JIA 内外への取材の機会もあり、中でも
Bulletin の人気コーナー「覗いてみました他人の流儀」では、建
築・デザイン分野はもとより様々な分野で活躍中の方へインタ
ビュー取材を行います。過去に取材・掲載させていただいた方は、
ホームページでご覧いただけます。
「覗いてみました他人の流儀」(http://www.jia-kanto.org/online/
tanin/)
編集後記
●日本の組織信仰を憂いても始まらない。 そして技術的
③丹下初代会長の時に比べ JIA が変わったことに皆、気付
JIA 関東甲信越支部事務局 / 大西 [email protected]
TEL:03-3408-8291 FAX:03-3408-8294
Bulletin 編集ワーキング
支部 HP には会員向けのサイトの他に市民向け独立サイト「建築
家 ONLINE」(http://www.jia-kanto.org/)があり、これは建築に
興味のある子供から今後建築関連の職業に就きたいと希望する
学生、そして自宅の新築や建築計画を検討中の方を対象に、タ
イムリーな情報発信を目指すサイトです。特に、昨年は特設ペー
ジ「建築家になろう」(http://www.jia-kanto.org/online/kids/) を
加え、今春は「建築家 ONLINE」全体のデザインリニューアルに
着手するなど、ホームページワーキングが主体となって出し合
うアイデアをもとにして、より市民のみなさまに親しみやすい
サイトづくりがかたちになりつつあるところです。
②言葉の持っている力は、相手の意識を変え、行動も変
するかはその先の問題だ。 全ての申込み・お問合わせ
「七五三といえば」
ストランに入ってみたが、ファミレス以下でがっかりした。
■ 娘と息子、合わせて3回。衣装代、写真代、予想以上でした・・・・。
[ 長坂 ]
[ 倉島 ]
■ 生まれ育った山陰地方では、七五三のことを「ひも落とし」と呼んで
■ 寝返りができた!と喜んでいた息子は数日でコロコロと転がるように
います。数年前に次女のひも落としを終え、次のひも落としは孫のとき
なりました。5 年後、どこまで成長しているのか。僕も負けずに成長して
までお預けです。
いきたいと思います。
[ 杉山 ]
■ 七五三は本人妻娘息子孫は卒業、今はひ孫ができたらと待ちの姿勢で
■ 七五三……節目々々に成長を祝った子供達も今年成人式を迎える、写
す。今年も神社仏閣できらびやかなお姿が拝見出来ると思いカメラを担
真館のアルバムを SCAN. しながら自然と顔がほころぶ。
いで出掛けましょう。くれぐれも必ず断ってから撮影致しましょう。
感慨も一入に車で走るはいつもの 246 !
編集
委員長
[ 八田 ]
[ 高橋 ]
[ 立石 ]
:公益社団法人 日本建築家協会
発行人
:浅尾 悦子
関東甲信越支部 広報委員会
発行所
:公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部
:高橋 隆博
〒 150-0001 東京都渋谷区神宮前 2-3-18 JIA 館
副委員長 :植木 健一・八田 雅章
委員
:岡本 寛・倉島 和弥・杉山 英知・萩尾 昌則
編集長
:八田 雅章
中村 晃・Florian Busch・長坂 典和
副編集長 :倉島 和弥
編集ワーキングメンバー:市村 宏文・大川 宗治・杉山 英知・立石 博巳
土居 志朗・萩尾 昌則・長坂 典和
表紙 / 本文デザイン :株式会社 スタジオネオ 伊波 サチヨ 菅原 真希
■ 定価 300 円 + 税/会員の購読料は会費に含まれています。
Tel: 03-3408-8291( 代 ) Fax: 03-3408-8294
発行日
:平成 26 年 11 月 10 日
印刷
:株式会社 協進印刷
■ JIA 関東甲信越支部関連サイト一覧
・( 公社 ) 日本建築家協会 (JIA) http://www.jia.or.jp/
・建築家 online ( 一般向け )
http://www.jia-kanto.org/
・JIA 関東甲信越支部 ( 会員向け ) http://www.jia-kanto.org/members/
© 公益社団法人 日本建築家協会 関東甲信越支部 2014
Bulletin 2014 年 11 月号 23
B A C K YA R D
がおぼつかないが、設計業務
Bulletin 252| 2014 年 11 月号
24 Bulletin 2014 年 11 月号