哺乳類大脳皮質の拡大をもたらした分子機構の解明

京府医大誌
123
(9),607~616,2014. Ev
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総
説
哺乳類大脳皮質の拡大をもたらした分子機構の解明
―進化発生学,幹細胞生物学を基盤とした研究戦略の試み
野
村
真*
京都府立医科大学大学院医学研究科神経発生生物学
独立行政法人科学技術振興機構・さきがけ
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抄
録
哺乳類の大脳皮質は表面積が著しく拡大し,かつ6層の特徴的な層構造を形成している.このような
顕著な形態学的特徴を持つ大脳皮質が,進化の過程でどのように構築されてきたのかは大きな謎であっ
た.本稿では,この問題を解き明かそうとしてきた先行研究,ならびに我々の最近の研究成果を紹介
し,大脳皮質の起源とその進化過程という医学・生物学においてチャレンジングな研究領域について議
論する.大脳皮質の進化過程の解明は,ヒト脳に特有の疾患の起源に関する新たな視点を提供すること
が期待される.
キーワード:大脳皮質,発生,神経幹細胞,進化.
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平成26年 7月28日受付
*連絡先
野村 真 〒606
‐0823京都市左京区下鴨半木町1
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607
野
608
は
じ
め
村
に
脊椎動物の脳は,動物の系統ごとに大きく異
なる形態を示す.特に,哺乳類大脳皮質の場
合,表面が風船状に拡大し,かつ内部に 6層の
層構造を発達させている1).こうした表現型は
霊長類,特にヒト脳では著しく,大脳皮質領域
が他の脳領域を覆い隠すことでヒト脳独特の形
態を造り上げている.このような肥大化した大
脳皮質がヒト脳独特の高次機能や創造性の細胞
生物学的基盤であることは疑いようが無い2).
こうした大脳皮質の形態学的特徴は,胎児期に
神経幹細胞が増殖することによる皮質表面積の
拡大,さらに多種類の神経細胞の発生時期特異
的な産生によって構築されることが明らかと
なっている.しかしながら,こうした哺乳類特
異的な大脳皮質が進化の過程でどのようにして
獲得されたのかは長年の謎であった.大脳皮質
の進化は,世紀を超えて多くの神経形態学者が
強い興味を抱く問題であったにも関わらず,
様々な仮説を実験的に証明する手段が確立され
てこなかったのである.
化石から明らかになる哺乳類の進化
20世紀後半から様々な化石標本の発見が蓄
積し,古生物学的な知見から哺乳類系統の起源
と進化の過程が少しずつ明らかになってき
た 3)4).哺乳類の起源は約 3億 5000万年前の古
生代石炭期に現れた原始的羊膜類(胚が羊膜と
呼ばれる膜で覆われている動物)に由来する5)6).
この動物群から,単弓目と双弓目と呼ばれる動
物群が分岐し,前者からは後の哺乳類が,後者
からは爬虫類,そして恐竜,さらには鳥類が進
化した(図 1参照:分類学的には鳥類は爬虫類
に含まれるが,本稿ではトカゲ,カメ,ワニ類
を含めた動物群を爬虫類としている)
.
哺乳類と爬虫類はどちらも羊膜類に属するに
も関わらず,その形態的特徴は多くの点で異
なっている.下顎骨の変化にともなう中耳骨の
発生,軟口蓋の形成,胸椎の区画化と横隔膜の
形成,皮膚線や体毛の形成といった様々な特徴
が哺乳類進化の過程で特異的に創出されたと考
真
3)
4)
えられる
(図 1)
.またこれらの動物群では脳
の形態も大きく異なっており,前述した終脳背
側領域が拡大し 6層構造を形成するという哺乳
類大脳皮質の特徴は爬虫類終脳には観察されな
い1)7)8).爬虫類の大脳皮質相同領域は,組織学
的に 3層に区別されており,特に第 2層に神経
細胞が密集している.さらに鳥類では Wul
s
tと
呼ばれる大脳皮質相同領域に哺乳類型層構造は
形成されない.哺乳類大脳皮質を構築する興奮
性の錐体細胞に相当する細胞は爬虫類皮質や鳥
類 Wul
s
tにも存在するが,その形態はかなり異
なっており,爬虫類「錐体」細胞には明確な頂
上突起(尖端樹上突起)が観察されない8)9).
モデル動物としての爬虫類の確立
化石標本は古代生物の骨格や外部形態に関す
る重要な知見を与えてくれるが,体内器官構造
の情報を得ることはできない.従って,大脳皮
質の起源とその進化機構を明らかにするために
は,哺乳類以外の動物との比較解析が必要であ
る.哺乳類と同じ羊膜類に属する爬虫類は,哺
乳類大脳皮質の起源と進化過程に重要な情報を
もたらすことが期待される.
一般的に爬虫類はライフサイエンスの分野で
のモデル動物としてほとんど使用されてこな
かった.理由として,限定された食物嗜好や生
活環境など,彼らが持つ独特の習性より飼育や
繁殖が困難な場合が多いこと,次世代を得るの
に年単位の時間がかかり遺伝学的解析が容易で
ないこと,繁殖期が限られており発生学的な解
析を行うのが困難であることに起因している.
こうした問題を克服するため,我々は爬虫類の
中でも飼育が非常に容易で, 1年中交配と産卵
が可能なマダガスカル産の地上性小型ヤモリ
(ソメワケササクレヤモリ)を研究材料として用
8)
.ソメワケササクレヤ
いることにした(図 2)
モリのメスは交配すると,約 1週間おきに 2個
ずつ卵を産卵し,これが長ければ半年以上持続
する.卵殻は硬質で,ニワトリ卵と同様にピン
セットで小窓を開けることで胚発生の様子が観
察できる.産卵後,胚は約 60日で孵化し,数日
後から親と同じように自力での採餌を行う10).
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609
図 1 羊膜類の系統と大脳の構造 A,現生羊膜類の系統図.哺乳類以外の羊膜類は,鱗竜類(ヘビ,トカゲ類)
と主竜類(カメ,ワニ,トリ)
)に分類される.B,絶滅哺乳類系統の骨格.上段は古生代に生息していた哺乳
類型爬虫類の 1 種.爬虫類的特徴(肋骨の延長等)を有しているが,骨盤の形態が既に爬虫類とは異なって
いる.下段はジュラ紀に生息していた古代型哺乳類.既に現生哺乳類と非常に類似した骨格が確立されてい
る.図は REPTI
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m)を元に描画.CE,羊膜類発生期の大脳の形態.Cは胎生 13日目のマウス,Dは孵卵後 30日目のヤモリ,Eは孵卵後 7日目
のニワトリの大脳の切片.NCx
:新皮質,STR:線条体,DCx
:背側皮質,DVR:背側脳室隆起,Wul
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スト.
野
610
村
真
図 2 モデル動物としての爬虫類.A,ソメワケササクレヤモリ(Pa
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)の孵化直後の個体.B,ヤモリの
胚操作.殻に小孔を開け,顕微鏡下で DNA溶液を脳室内に注入した後,電気穿孔法にて神経幹・前駆細胞に遺伝
子を導入した個体.小孔はカバーガラスにより封入されている.
栄養状態が良ければ約半年で性的に成熟する.
我々はさらに,このヤモリ胚に対して微小針電
極を用いた電気穿孔法による外来遺伝子の脳組
織への導入系を確立した11).また最近,パント
ロピックなレンチウイルスベクターを用いた神
経幹細胞への遺伝子導入にも成功している.こ
の技術の開発により,爬虫類脳の発生過程にお
ける様々な遺伝子の機能を解析することが可能
になった.
爬虫類脳神経幹・
前駆細胞の特異的な動態
我々はまず,ヤモリ胚大脳皮質相同領域にお
ける神経幹・前駆細胞の動態を観察した.その
結果,ヤモリ神経幹・前駆細胞は哺乳類や鳥類
の神経幹・前駆細胞と比較して細胞分裂頻度や
神経分化率が著しく低いことが明らかとなっ
た11).さらに興味深いのは,大脳皮質の神経細
胞が産生される期間を比較した結果である.マ
ウスやニワトリ胚の場合,大脳皮質とその相同
領域における神経細胞の産生期間は約 1週間で
ある.ヤモリの場合,大脳皮質相同領域におけ
る神経細胞産生期間は約 10日前後で,他の羊膜
類の神経細胞産生期間とそれほど違わないこと
が明らかとなった.一方,胎生期間は動物に
よって大きく異なっており,特にヤモリのよう
な爬虫類の場合,産卵されてから孵化まで概ね
60日以上かかる11).すなわち,爬虫類では胎生
期間と比較して大脳皮質を構築する神経細胞の
産生期間が短く,かつ細胞の増殖・分化率も低
いので,結果的に少数の神経細胞しか産生され
なくなっていることが推測された(図 3)
.
このような,神経幹細胞の増殖・分化率と神
経細胞産生期間との関係は,羊膜類の脳の巨大
化をもたらした機構の考察に大変重要である12).
以前の研究により,サルの胎生期における大脳
皮質神経幹細胞の増殖率はマウスと比較すると
非常に低いことが明らかになっている.しかし
ながらサルの場合胎生期の神経細胞産生期間が
非常に長いので,結果的に非常に多くの神経細
胞が大脳皮質で産生される仕組みになってい
る13).このような発生期間の延長,いわゆる発
生過程のヘテロクロニックな変化は器官の大き
さを左右する重要な要素としてとらえられてい
る14).マウスと比較して,特に霊長類の場合大
脳皮質の発生過程の後期が延長しており,この
延長に伴い大脳皮質の上層部の神経細胞の数が
著しく増大している.祖先種のゲノムにどのよ
うな構造的変化が起こり,ヘテロクロニーが生
じたのかは残念ながらほとんど明らかにされて
いない.
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図 3 羊膜類皮質相同領域の発生過程の類似点と相違点.哺乳類の場合,大脳皮質の神経幹細胞は
早いペースで増殖を繰り返し,中間増殖細胞を産生する ( A)
.一方爬虫類の場合,神経幹細
胞の増殖スピードと神経細胞産生率は哺乳類と比較して低い.この特性の一部は No
t
c
hシグナ
ルの活性化レベルの差異によるものと推測される( B)
.C,胎生期間と皮質の神経細胞産生期
間を羊膜類間で比較したもの.爬虫類の場合,胎生期間は長いが皮質の神経細胞産生期間は他
の動物と変わらない.
611
野
612
村
遺伝学的細胞標識による
神経幹細胞の動態の比較
我々は神経幹・前駆細胞の増殖と分化の過程
を単一細胞レベルで解析したいと考え,蛍光タ
ンパク質を用いた細胞系譜追跡実験(クローン
解析)を行った.発生過程におけるクローン解
析には様々な方法がある.古典的にはトレー
サーを細胞に注入する方法や,識別可能な異種
の細胞を移植する方法,また最近ではレトロウ
イルスを用いて少数の細胞集団を標識する方法
が一般的である.近年は GFPなどの蛍光タン
パク質を発現するプラスミドを電気穿孔法に
よって胚に導入することで,より簡便に細胞の
標識を行うことが可能となっている.しかしな
がら電気穿孔法の場合,一度に多量の細胞に外
来遺伝子が導入されるため,この方法だけでは
少数の細胞集団(あるいはクローン)を追跡す
ることができない.そこで我々は,先行研究に
よって確立された Cr
e
Lo
x
Pによる組換えを利
用した細胞標識法を採用することにした.この
方法では,Cr
eリコンビナーゼを発現するプラ
スミドと,組換えにより蛍光タンパク質を発現
するプラスミドを共導入するが,Cr
e発現プラ
スミドの濃度を希釈することにより(0.
1ng
/
μL)
,
1細胞レベルでの標識とその系譜追跡が可能と
なる15).我々はさらに,蛍光タンパク質発現プ
ラスミドとして Br
a
i
b
o
w1.
0Lベクターを用い
た.このベクターには,異なる種類の Lo
x
P配
列に挟まれた 3色の蛍光タンパク質(mChe
r
r
y
,
YFP,CFP)の遺伝子がタンデムに挿入されてお
り,Cr
eによる組換えが起こした細胞を異なる
蛍光色で標識することができる16).この方法を
用いてヤモリ大脳皮質相同領域のクローン解析
を実行した結果,幾つか興味深い事実を見いだ
すことができた.まず, 1)
ヤモリの神経幹・前
駆細胞は,他の羊膜類と比較して単位時間あた
りの分裂頻度が非常に低いこと, 2)
また多く
の場合分裂後の娘細胞はどちらも未分化な細胞
である,いわゆる対称分裂であること, 3)
標
識後数日が経過しても分裂した形跡の無い細
胞が多数存在すること,等である. 1)
の結果は
真
細胞周期の解析結果と一致するものであり,さ
らに 2)
から,ヤモリの神経分化率が低い理由
が明らかとなった.すなわち,このステージの
ヤモリ外套では.多くの神経幹・前駆細胞が神
経細胞を積極的に産み出す体制に入っていない
ことが推測される.また 3)
の結果は幹細胞の
特性を考える上で大変興味深い.標識後 4日間
経過しても, 1つの神経幹・前駆細胞のみが標
識されているクローンが多数存在することは,
このクローンが全く分裂しなかったことを示唆
している(もちろん,娘細胞が分裂後消失した
可能性は否定できないが,クローン集団全体か
ら見積もられる細胞分裂頻度と細胞周期の結果
が一致するため,細胞分裂を停止した前駆細胞
集団が多く存在する可能性の方が大きい)
.こ
うした神経幹・前駆細胞の「休眠性」は,哺乳
類側脳室下帯に存在する成体神経幹細胞の特性
と類似している.実際,発生後期あるいは孵化
後の爬虫類外套領域の脳室表面には
Epe
nd
y
mo
g
l
i
aと呼ばれる放射状突起を持った
細胞が存在する.この Epe
nd
y
mo
g
l
i
aは,外傷
などにより活性化され,神経新生を行う成体神
経幹細胞としての特性を持っていることが知ら
れている8).
種間における Not
c
hシグナルの
活性化レベルの比較
上記に示した爬虫類に特徴的な神経幹・前駆
細胞の特性にはどのような分子機構が関わって
いるのであろうか.爬虫類は哺乳類や鳥類と比
較して発生速度が約 3倍遅く,このスピードと
細胞分裂周期の長さには相関がある.また正常
な胚発生に必要な温度は哺乳類や鳥類が 37°
C
であるのに対し,爬虫類は 30°
C前後である.
従って,発生速度の違いは胚の外部温度に依存
している可能性も考えられる.しかしながら,
ヤモリ神経幹細胞を単離し 37°
Cで培養しても
増殖速度は亢進されないことから(野村ら,未
発表)
,神経幹細胞の増殖・分化率を制御する種
に固有の機構が備わっている可能性が示唆され
た.
幹細胞の未分化性維持を制御するシグナルと
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して最も有名なものが No
t
c
hシグナルであ
t
c
hシグナルは,細胞膜貫通タンパク
る17).No
質である No
t
c
h受容体がリガンドである De
l
t
a
と結合することにより活性化される.リガンド
の結合により,No
t
c
h受容体はプロテアーゼに
より切断を受ける.切断された細胞内ドメイン
は核に移行し,他のタンパク質と複合体を形成
することにより様々な下流遺伝子の発現を直接
制御する.No
t
c
hシグナルの活性化状態は,
No
t
c
hシ グ ナ ル の 伝 達 に 重 要 な タ ン パ ク 質
CBF(RBPJ
k
) の結合配列を持つリポーター
コンストラクションにより定量化が可能であ
る.我々は,様々な羊膜類(マウス,ヤモリ,
ニワトリ)の外套領域の神経幹・前駆細胞に
No
t
c
hリポーターベクターを i
nv
i
v
o電気穿孔法
により導入し,ルシフェレースアッセイにより
No
t
c
h活性化レベルの定量化を試みた.興味深
いことに,ヤモリの神経幹・前駆細胞では,マ
ウス,ニワトリと比較すると No
t
c
hの活性化状
態が非常に高いことが明らかとなった.一般的
に,幹細胞において恒常的に No
t
c
hシグナルが
活性化されると,幹細胞の分化率が低下し細胞
の休眠性が誘導されることが知られている.発
生期の後脳分節の境界領域では,No
t
c
hシグナ
ルの下流分子である He
sの発現が高く,この領
域の細胞はほとんど神経分化しない.我々はヤ
モリの神経幹・前駆細胞において,No
t
c
hシグナ
ルを阻害するコンストラクション(d
o
mi
na
nt
ne
g
a
t
i
v
eRb
pj
k
)
を強制発現することにより,ヤ
モリの神経分化率を亢進させることに成功し
た11).こうした知見から,ヤモリの神経幹・前駆
細胞の低い神経分化率(あるいは休眠性)は,
No
t
c
hシグナルにより制御されている可能性が
考えられた.
大脳皮質 6層構造の起源
哺乳類大脳皮質の特徴の 1つである 6層構造
はどのようにして進化したのだろうか?大脳皮
質を構築する神経細胞のうち,興奮性の投射神
経細胞は外套領域の神経幹・前駆細胞から産生
される.胎生期において,外套の神経幹・前駆
細胞は異なるタイミングで様々な種類の神経細
613
胞を産み出すことが明らかとなっている18).産
生された神経細胞は皮質表層へと移動するが,
後に産まれた神経細胞が先に産まれた神経細胞
を追い越すという,いわゆる i
ns
i
d
e
o
utの様式
で大脳皮質が構築される.
一方,爬虫類の皮質は 3層構造であり,特に
第 2層に神経細胞が凝集している.爬虫類で
は,神経細胞は皮質の表層から内側に配置され
ていく,いわゆる o
ut
s
i
d
e
i
nの方式で皮質の発
生が進行する19).ゴルジ染色による形態的な違
いから爬虫類皮質の神経細胞は幾つかのタイプ
に分類されていたが,分子マーカーによる識別
はされてこなかった.そこで我々は,哺乳類大
脳皮質の興奮性神経細胞のマーカーである転写
因子に着目し,その相同遺伝子の発現を爬虫類
皮質で検討した.その結果,哺乳類大脳皮質の
第 5層の神経細胞に発現する CTI
P2
,また 6層
および 4~2層の神経細胞に発現する SATB2
が,ヤモリとスッポンの皮質にも発現している
ことを見いだした11).興味深いことに,爬虫類
皮質ではこれらの転写因子を発現する神経細胞
は層を形成しておらず,皮質第 2層の内側から
外側にかけて空間的に配置されていた.従っ
て,異なるマーカーを発現する神経細胞を産み
出す空間的制御機構が神経上皮層に備わってい
る可能性が考えられるが,未だその実態は未知
である.哺乳類大脳皮質の発生では局所的なシ
グナリングセンターに由来する Wntや FGFと
いった分泌分子が大脳皮質神経幹・前駆細胞の
増殖と神経細胞の運命決定を行っている20).爬
虫類において,こうした分子がどのような役割
を担っているかを検討する実験は,興味深い結
果をもたらすだろう.
最近,羊膜類外套領域の遺伝子発現様式が相
次いで報告されている21-24).哺乳類大脳皮質の
神経細胞に発現する様々な遺伝子と相同な遺伝
子が,爬虫類や鳥類の外套領域にも発現してい
る.こうした結果から,多種類の神経細胞が外
套領域で産み出されるシステムは羊膜類の祖先
系統で既に獲得されていた可能性がある.一
方,個々の細胞レベルで比較すると,哺乳類の
第 5層の神経細胞と全く同じ神経細胞を爬虫類
614
野
村
や鳥類で同定するのは困難であると思われる.
それぞれの動物の外套領域に存在する神経細胞
は形態や機能が異なっており,同様に遺伝子発
現も多様化しているため,完全に相同な神経細
胞は恐らく存在しない.それぞれの遺伝子の発
現制御機構に相同性はあるのか,また相同遺伝
子の機能は脳の形態が異なる場合にどの程度保
存されているか,といった問題の検証が必要で
ある.
脳の進化研究が医学にもたらすもの
さて,こうした脳の進化研究は医学にどのよ
うな知見をもたらすだろうか?一般的な基礎医
学研究は,人体の構築原理と生理的機能を解明
することによってどのようにして疾患が発症す
るのか,といういわゆる “HOW”に研究の重
点が置かれている.一方,
「何故その病気が存
在するのか?」という病気の起源に関する問題,
いわゆる “WHY”の解明には,進化学的視点
からのアプローチが重要である.我々のゲノム
DNAにはこれまで受けてきた自然選択や淘汰
の痕跡が残っており,それは現生人類の身体
的・生理的特徴に少なからず影響を与えている.
ヨーロッパ数千年の牧畜文化で選択を受けた乳
糖分解酵素の多型25),アジア人集団で約 3万年
年前に起こった変異による毛髪や乳腺の構造的
変化26),言語障害の原因遺伝子である FOXP2遺
伝子における人類特異的な多型と下流制御遺伝
子群の変化 27)など,進化生物学的なアプローチ
はライフサイエンスに次々と新しい知見をもた
らしている.近年は化石試料から DNAを採取
する技術も格段に進歩し,数万年前のネアンデ
ルタール人のゲノム DNAのドラフトシーケン
スも公開されている28).我々現生人類のゲノム
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彼らとヨーロッパ大陸で交雑した可能性が示唆
されている.興味深いことに,ネアンデルター
ル人由来の遺伝子の幾つかは現生人類が持つ
様々な疾患リスクと関連していることも示唆さ
れている29).
哺乳類大脳皮質は他の動物には見られない特
徴的な構造を持っており,こうした構造の獲得
には神経幹細胞の増殖や分化・移動様式に大き
な変化が起こったことが予測される.実際に,
爬虫類や鳥類の介在神経細胞を哺乳類脳に移植
しても,移植された細胞は大脳皮質の皮質板の
中に侵入することができない30).哺乳類で爆発
的に増大した神経細胞の産生・分化機構を探る
ことは,ヒト特異的な脳の発生異常や機能疾患
の起源を探る上で重要な知見を提供することが
期待される.
ノーベル化学賞を受賞した下村博士は受賞講
演で,
「私は純粋に発光現象を探求していたの
で,GFPがこれほどまで生命科学の分野で応用
されるとは全く予想しなかった.何故それが可
能になったのか.それは偶然にも,GFPの発色
団が ORF(o
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ていたので,遺伝子組換え技術を導入すること
ができたからだ」と述べている.医学の進展に
は,目標達成型の研究と同時に,幅広い裾野を
持つ基礎研究の推進が不可欠であることを最後
に付記しておきたい.
謝
辞
本稿の内容に助言頂いた京都府立医科大学神経発生
生物学教室のスタッフに感謝したい.
開示すべき潜在的利益相反状態はない.
献
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著者プロフィール
野村
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所属・職:京都府立医科大学大学院医学研究科神経発生生物学・准教授
略
歴:1995年 山形大学理学部生物学科卒業
2000年 名古屋大学大学院理学研究科修了.博士(理学)取得
2000年 東北大学医学部器官構築学分野助手
2007年 東北大学大学院医学系研究科・創生応用医学研究センター・助教
2007年 スウェーデン・カロリンスカ研究所・細胞分子生物学部門博士研究員
2010年 スウェーデン・カロリンスカ研究所・細胞分子生物学部門上級研究員
2011年 京都府立医科大学大学院医学研究科神経発生生物学・准教授
2012年 科学技術振興機構・さきがけ研究者(兼任)
専門分野:神経発生学,幹細胞生物学,進化発生学
主な業績: 1.No
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