HEC 経営大学院派遣 経済学部 4 年 柳沢佳典 留学生リポート 2014 年 9 月~2015 年 5 月の約 9 ヶ月間、フランスの HEC Paris に交換留学をした。 HEC Paris はフランス独自の高等職業教育機関である Grandes Ecoles の 1 つであり、欧州トッ プクラスのビジネススクールである。私は MiM(Master in Management)の M1(日本の修 士 1 年目に相当)にて学んだ。 本稿では留学生活を①授業②人③生活の 3 つの面で振り返り、 交換留学の成果を報告する。 1.授業について 私は金融、マーケティング、戦略論など、経営に必要な分野を幅広く受講した。また、 フランス語やフランス文化、ワインマーケティングといったフランスでしか受けられない 授業も取った。2 学期で合計 56ECTS(日本の 38 単位に相当)を取得した。まず、現地の 授業の難易度についてだが、内容自体はさほど難しくなかった。やはり経営学の主流はア メリカであり、扱ったケースもハーバード・ビジネス・スクールのものが多かった。一部 は現地でしか受けられないようなものもあったが(ラグジュアリー戦略や意思決定の心理 学など) 、正直、大部分は日本でも同水準の内容は学ぶことが可能である。とはいえ、ビジ ネススクールというだけあり、クラス内でのグループワークやディスカッションが非常に 多く、戸惑うことも多かった。教授が学生から意見を引き出し、また別の学生の意見を聞 いて徐々に統合していく、という感じであった。日本では経験したことがほぼ無かったの で最初は苦手意識があったが、徐々に慣れて発言することができるようになった。課題も そこまで多くなかったため、学習面で苦労したことはあまり無かった。睡眠時間を削って 勉強するわけでもなく、かといって勉強しなかったわけでもなく、自分のペースで自分の 知識の幅を広げることができたので有意義であった。 2.人について MiM は MBA と違ってキャリアを必要としない上に、MBA よりも格段に安いので、世界 中(公式サイトによると 41 カ国)から留学生が来ていた。学士課程を終えた人と仕事をやめ てきた人が大半であった。従って周りはほぼみんな年上なので自分は下から数えて 3 本の 指に入るくらいの年少者であった。バックグラウンドも多様で、学士課程で経済や金融を 学んでいた人もいれば、エンジニアや仏文学等、全く異なる分野出身の人もいた。授業内 容がそれほど高度でなかったのは多様なバックグラウンドの人を受け入れるためなのであ ろう。 これだけ多くの人が集まると、各国の色が出て非常に興味深かった。例えばグループワ ークの時、フランス人は時間に遅れるし全く準備してこない、ドイツ人は細部にうるさす ぎて煙たがられる、イタリア人はちゃんと取り組みつつも常にユーモア全開でジョークば かり言っている等、明確な差があった。アジア人は概してグループワーク中は控えめだが、 テストの点数や成績だけは良かった。多様な人種が集まっていたので、やはり人種差別主 義者気味の人は一定数いたらしい(特に西欧人)。自分は差別的な経験をしたことがほぼ無か ったが、ワインマーケティングの授業で自分を含めて日本人が 4 人単位を落とし、中国人 や台湾人も最低評価の成績を付けられていたことから、アジア人の間ではそのフランス人 教授が人種差別主義者なのではないかという噂があった(真偽は不明)。 最後に西欧人とアジア人の違いで感じたことを紹介する。まず、思考のスピードの差を 感じた。授業中に突然質問をされた時、概して西欧人は適当に取り繕ってそれなりの答え を言うことができるが、アジア人は答えに詰まる。西欧人は思考の瞬発力があると感じた。 しかし、時間をかけて考えた場合、いつもアジア人の方が質の高い答えを出す。次に、活 力の差である。西欧人は前日の夜中 3 時過ぎまで飲んでいても、次の日の朝 8 時の授業に きちっと出てくる。それに対しアジア人は 0 時をまわった辺りで「疲れたし次の日朝早い から」と言って寝てしまう人が多かった。 3.生活について HEC はちょうど東京における国立のようにパリの外れの方にあったため、中心に出るに は電車で 30 分~1 時間程度かかった。とはいえパリ生活に憧れて来た人も多かったため、 友達と遊ぶとなればパリに出ていた。そんな学生の気持ちを汲んで、終電を逃しても大丈 夫なようにと、HEC が金土日は夜中 3 時までパリから HEC までのシャトルバスを用意し てくれた。おかげ様で週末はよくパリに出かけて、美術館やカフェ、公園などを満喫する ことができた。HEC はシカやウサギが出るような森の中にあるキャンパスだったので、田 舎とシティの両方を楽しめる環境にあった。 日本でいう部活やサークルといったものも充実していて、やりたいことはなんでも出来 た。自分はボルダリング、サルサダンス、料理に参加していたが、結局どれも長く続かな かった。代わりに留学生が自主的に集まって開催していた週 2 回のサッカーに参加し、自 由に使えるジムにも週 2,3 回通っていた。 毎週木曜日には POW(Party of the Week)というものがあり、キャンパスでパーティイベ ントが開催された。みんな勝手に PrePOW を開催し、ある程度出来上がってから POW に 行って、また飲んで踊るというのが毎週繰り返された。パーティーピーポーばかりで金曜 日の朝のキャンパスは大荒れだったが、新しい友だち作るには良い場であり、最高の思い 出の一つである。 また、フランスという立地を活かして積極的に旅行にも行った。バス・電車・格安航空 機を利用してフランス国内も国外も割と安く訪れることができた。国内はワインで有名な ブルゴーニュ地方の Dijon や、古都 Lyon 等を訪れた。国外はロンドンやモロッコなど、フ ランスとはまた違う文化を持つ国へ行った。多様な文化・人に触れ、それに感動すること で、色々なことに考えを巡らせることに繋がり、自分という人間や日本についても時間を かけて考えたことが多々あった。学生で時間があり、かつ異国の地に身を置いていないと このように考えたりしなかったと思うので、今考えてもたくさんの人々に会い、たくさん の文化に触れる機会があったのは幸運であった。 もう一つ、留学中に忘れられない思い出となったのはキャンパス内外で開催された各種 イベントである。キャンパス内では、毎日 1 つの地域の国々が自国の食事を振る舞う International Week や、将来起業したい人が集まって情報交換をする HEC SEED などが あった。International Week では寿司と味噌汁を作り、多くの人に美味しいと言ってもら えた。HEC SEED では色んなベンチャー企業の CEO のお話を聞くことで、本気で世界を 変えようとしている人たちの熱意に刺激を受けた。また、キャンパス外では、稲盛和夫さ んの講演会や、東大一橋早慶、HEC、ESSEC(パリにあるもう一つのビジネススクール)出 身の人たちが集まる会に参加した。稲森さんとは直接お話しをする機会があり、私が将来 の日本を担いますと言っておいた。トップ校の先輩方が集まった会では、学生は自分だけ だったが、実際に世界に出て活躍している諸先輩方のお話を伺うことができて非常に刺激 的であった。この会で、パリ政治学院出身でベンチャー起業の CEO をやっているフランス 人と出会い、留学最後の 2 ヶ月はアルバイトとして雇ってもらった。 4.今後の展望について まず、一流のビジネスマンになること。結局生きていくためには働かなければならない し、ただ働くだけでなく目的を持って仕事をしていればそれが社会貢献や自己実現にも繋 がる。ビジネスができなければ何もできない。欧州トップクラスのビジネスエリート達に 接して、自分が負けていないと思う部分もあればまだまだ届かないと思う部分もたくさん あった。これから世界で戦っていく上で、ある程度の世界の水準がわかったので、それを 越すために努力をする。最終的には、真に社会のためになることに尽力する。 そして、人格者になること。HEC に来ている人たちは明らかに富裕層が多かった。確か に、彼らは能力があるし、気さくだし、将来も国や産業を引っ張っていく人材になるのだ ろう。しかし、ゴミを片付けない、飯を大量に残すなど、地方出身で質素に暮らしてきた 私には信じられない光景があったのも事実である。どんなに社会的な地位が上になろうと も、人間として一番大切なことを絶対に忘れず生きていきたいと固く決心した。 最後に 今回の留学の機会を与えてくださった如水会、明治産業株式会社、明産株式会社の皆様、 そして留学を全面的にサポートしていただいた国際課の皆様に感謝申し上げます。一橋出 身の一流の人材になるべく日々精進致します。有難う御座いました。
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