留学生リポート フランス/HEC 経営大学院 鷲尾 有美子(商学部 4 年) フランスと聞くと、「花の都・パリ」というような華やかなイメージをお持ちの方が多いのではない でしょうか。しかし、このリポートでは、そんな華やかさとはかけ離れたフランスの田舎 Jouy en Josas での 1 学年間の留学生活についてお伝えしたいと思います。 学校 L’ecole HEC 経営大学院は、グランゼコールというフランス独自の高等教育機関の一つで、フィナンシャ ルタイムズのヨーロッパビジネススクールランキングでほぼ毎回 1 位を獲得するなど、非常に優れ た教育を提供している学校です。「HEC Paris」という名前に反して、実はパリにはなく、パリから 電車で 1~2 時間ほどかかるヴェルサイユの近くの田舎町、Jouy en Josas という町に位置してい ます。 私がキャンパスに到着したのは、昨年 2010 年の 9 月。南仏・ニースで 2 週間語学学校に通っ ていた私は、パリ郊外 Jouy の秋のような涼しさにびっくりしました。キャンパスは丘の上にあり、湖 や森など自然にあふれているかわりに、駅から山道を含め 20 分ほど登らなければ辿り着きませ ん。また駅周辺にはスーパーが 1 軒あるだけの田舎町で、山道の登り降りを考えると、普段の日 はキャンパスにこもっていることが多かったです。 授業は英語で行われるものと、フランス語で行われるものがありますが、私は英語で行われる 授業をとりました。HEC の授業は、1 クラスが 30~40 人程度の少人数で行われ、経営系の授業 ではケーススタディとグループワークで進めていくものが中心です。特に印象に残っている授業は、 Globalization & Human Resources で、先生は日本にも長く在住されていたフィンランドの方で した。ユーモアのある話し方がとても魅力的で、私はいつも先生の話に聞き入っていました。この 授業では、国際的な企業が直面した様々な課題をケースにして、グローバルな人的資源管理の 方法を学んでいきました。印象的だったのは、フォーシーズンズホテルがパリに進出した際の事例 です。高級ホテルと言えば、その内装の美しさや豪華さだけでなく、ホテルマンの一流のホスピタ リティー、日本語で言う「おもてなしの心」が非常に重要です。しかしフランス人はどうやら「おもて なし」という言葉を知らないようなのです。私もフランスに行ったばかりの頃、スーパーなどで接す る店員さんの無愛想で不親切な接客態度にとても驚きました。そのため、フォーシーズンズホテル はこの面での人材育成に非常に力を入れたということでした。私はこの授業を含め、HEC で履修 した多くの授業を通して、海外ビジネスが直面する様々な問題についての考察を深めました。国・ 自然・文化・生活習慣等が異なれば、ビジネスを行う上で当然としていた前提さえも覆されてしま います。自分自身が海外ビジネスに携わる際は、このことを常に心に留めて意思決定を行うべき であり、現地の人々や海外ビジネスのエキスパートの意見を真摯に聞き、受け止めるという謙虚 な姿勢が非常に大切であると感じました。 フランス La France フランス生活の中で不満に思うことは、正直、たくさんありました。頻繁に起こるストライキで電 車が止まったり、大雪のせいで列車だけでなくバスやタクシーなど全ての交通機関がストップし、 たった 2 駅しか離れていない場所からキャンパスに帰れなくなったこともありました。また前述のよ うに、無愛想で不親切な店員さんややる気のない店員さんが多く、例えばスーパーのレジに長い 列ができていたとしても、同僚と喋りながらゆっくりレジを打つ店員さんの姿はフランスではよく見 かける光景です。また真冬のキャンパスは雪と氷に閉ざされて暗く、授業が忙しいためなかなか キャンパスを出ることができなかったため、非常に暗澹とした気持になりました。 また、フランス人は英語を話さないと言いますが、それは事実でした。HEC に来ている学生はと ても流暢な英語を話すことができますが、町に出ると英語を話さない人ばかりです。私は当初はフ ランス語がほとんど喋れず、町の中で苦労することも多くありました。またフランス語が話せないた めに、フランス人を冷たい人たちだと感じてしまうこともしばしばありました。しかし毎日の生活の 中で自然に学んでいったり、大学でフランス語の授業を取ることで、私のフランス語も次第に上達 していきました。その中で発見したことがあります。フランス人は知らない人同士でも小さなコミュ ニケーションを日々行っています。道端で目の合った近所のおじさんに「Bonjour!(こんにちは)」と あいさつしたり、道を譲る際に「Allez-y.(お先にどうぞ)」と言ったり。言うだけではなく、にっこりし てくれるので、私もとても温かい気持ちになることができました。特に素敵だなと思った言葉は、春 先のよく晴れてい る日にスーパーのレジ のお姉さんがお客さんに言っていた「 Profitez le soleil!(太陽を目いっぱい楽しんで!)」という言葉です。日光をこよなく愛するフランス人らしいと思 った瞬間でした。 このようなことをきっかけとして、厳しい冬が終わりやっと春が来た辺りで、あまり好きではなかっ たフランスのことを少しずつ愛せるようになりました。おしゃべりをしながらレジ打ちをする店員さん に対しても、私と同じように長く待っているフランス人たちが怒る様子もみせず気長に待っている のを見て、せっかちになっている自分が考え方を変えるべきなのだと思えるようになりました。「郷 に入っては郷に従え」、これは本当に的を射ている言葉だと実感しました。 さらに、留学生活の後半では日帰りで近くの観光地に行くなど、フランス国内を多く見て回る機 会に恵まれました。するとフランスが非常に多面的な魅力をもった国であることを実感しました。 延々とブドウ畑が続くボルドーでワインを楽しんだり、ヨーロッパの最高峰・モンブランを頂くシャモ ニーで標高 3842m の展望台から手に届くようなモンブランを眺めたり、起伏の多いコートダジュ ールに点在する小さいけどもそれぞれの魅力をたたえた村々を訪ねたり…。それだけではありま せん。フランスはやはり美食の国。ワインやチーズはもちろんのこと、生ハムやソーセージ、新鮮 な野菜や果物がスーパーで簡単に、そしてとても安く買えたのは驚きでした。 終わりに A la fin... 今回の留学は私にとっての初めての海外生活というだけでなく、初めて親元を離れた生活でも あり、初めての田舎生活でもありました。フランスやフランス人に対して、様々な思いがありました が、私が今こうしてフランスの素敵なところをこんなにも語れるようになるとは、留学生活前半には 全く想像できませんでした。今は非常にすばらしい 9 か月間を過ごすことができたと心から満足し ています。 最後になりましたが、今回の留学をご支援いただいた社団法人如水会の皆様、明治産業株式 会社及び明産株式会社の皆様に心より御礼申し上げます。 また、国際課の皆様、松井剛准教授 には留学中だけでなく、留学前後にも大変お世話になり、感謝の気持ちでいっぱいです。本当に ありがとうございました。 Merci beaucoup! J’aime bien la France! (2011/07/01)
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