アジア経済史 第5講 インド・南アジア・朝鮮 摂南大学経済学部 担当者:八木 1 古代社会からの継承 ヒンズー的均衡 • 血縁的・職能的閉鎖集団jatiによる社会編成 =カースト制度:ヴァイシャ(商人)、シュードラ (農・牧・手工業) • 村落内分業(手工業・サービスカーストの村 がかえ維持) • 大家族制 自給自足的な家計 • 分権的で分散傾向のある国家 • 宗教ないし道徳学説の成立 2 インドの諸宗教(ヒンズー教・仏教・ ジャイナ教・イスラム教) • バラモン正統の思想(ヒンズー教):富の追求 を奨励。輪廻と因果応報の思想⇒循環・反復 を正常とみる⇒停滞 • カースト制度⇒複合倫理の世界 • 仏教:脱世俗の出家者を支持 • ジャイナ教:不殺生戒⇒商業とくに金融業 • イスラム教:商業的都市文明を基礎 3 東南アジアの「インド化」 • 大陸部(ビルマ、タイ、ラオス、ベトナム、カン ボジア)と島嶼部(インドネシア、マレーシア、 フィリピン) • インド、中国、東南アジア諸地域間の交易を 軸として政治勢力が形成 • 4-5世紀:ヒンズー教および大乗仏教、イン ド的な王権の概念、インドの神話・伝説・宗教 法典、サンスクリット語。11世紀 スリランカ 伝来の上座仏教とパーリ語。 • しかし、カースト制度は存在せず女性の地位 4 もインドより高い。 通商と東南アジアの諸国家 *7-9世紀:海上交易帝国シュリーヴィジャヤ *11世紀:ビルマ、タイ、ラオスの上座仏教国 家⇒デルタ地帯における米作・畑作 *13世紀末から島嶼部にイスラム教が伝播 ムラユ語(商業の共通語⇒インドネシア語) *宋・元の時代の海上交易 *明朝の海禁令(民間貿易を禁止、朝貢貿易)。 明とマラッカの関係は親密 *ベトナム(越南)は清朝の冊封体制に組み込 5 まれ、儒教や科挙も取り入れる。 植民地化以前の東南アジア諸国の盛衰 マラッカ(マラヤ):通商の要地。海上交易帝国の中心。イスラム 化が進む。中国との関係も深い。 タイ(シャム):仏教王朝。スコータイ朝、アユタヤ朝:サクディ・ナ ー制度(全国土は王の所有。その用益権を位階により下賜 する身分秩序)、現チャクリ朝の開明的改革により廃止 カンボジア(クメール):古代クメール帝国の衰退。アユタヤ朝 (タイ)の圧迫で首都アンコール・トムを放棄しプノンペンへ ビルマ:仏教王朝 ペグ―朝(1287-1539)、タウング朝(15311752)。アヴァ朝(1752-1885) ベトナム:荘園と奴婢にもとづく社会から封建制へ。明の支配を 受ける。15世紀、黎朝は禄田を給した官人によって支配。1 8世紀、大農民反乱(西山蜂起)がおきるが阮朝が平定。 ジャワ:8世紀シャイレンドラ王国(ボロブドゥール寺院建設)、1 3世紀末マジャパイト王国(ヒンドゥー国家)、16世紀末マタ ラム王国(イスラム)。 6 フィリピン:パランガイ(親族集団)からなる社会がイスラム化。 インドにおけるイスラム化とムガール帝国 13世紀以降イスラム教ののデリー諸王朝。ムガ ール帝国(1526-1858)が勢力を拡大し北 インド全域を支配。アクバル皇帝(タージ・マハ ルー建設) 知行制度(役人に徴税権を与える) ヒンズーの従属王侯・豪族の地域支配を承認 (ザミンダール) 農民の富農と土地なし農民への階層分化、綿織物など の手工業が盛んになったが、カーストを有する自給村 落、余剰所得の金銀退蔵、イスラム教の影響により、 資本主義的な経済発展は起きなかった 7 古代朝鮮 • 古朝鮮コチョソン(檀君タングンの建国神話がある が、信憑性のある記録が残るのは前7世紀)。箕子 キジャ朝鮮。衛満ウィマン朝鮮。が楽浪郡を置く。 • 半島南部の小国(馬韓マハン、辰韓ジンハン、弁韓 ビョンハン)と北部 • 新羅シルラ(文化盛国)・高句麗コグリョ(軍事 大国)・百済ペクチェ(経済富国)・伽耶カヤ( 交易の国)の4国並立 • 7世紀後半:新羅は唐と同盟して百済・高句 麗を滅ぼし半島統一(676)。⇒日本への多数 の移住者 8 統一新羅(676-935)と渤海(698-926) • 新羅:真骨(王族)と頭品層が支配者:等級別 に納税。禄邑(官僚に収租権を分配):首都、 金城(慶州) • 高句麗をうけついだ渤海が北部に興る(高句 麗貴族が靺鞨人を支配) • 唐を範として文化・制度を取り入れる。仏教文 化。 • 日本の奈良時代と類似 9 高麗(936-1392) • • • • 貴族官僚中心の集権的王権国家 科挙制度の導入 1170-1270年武人政権とその挫折 国際的交易(アラブ・スペイン人の地図に Cory⇒Coreaとして登場) • 中国との使行貿易と民間貿易、金州・対馬を つうじた日本との貿易(麻綿・銀・人参を輸出 )、高麗末期に倭寇侵入により途絶 • 仏教・印刷術・火薬・綿布 10 李氏朝鮮(1392-1897) • 朱子学を官学とする • 両班をこえて儒学が浸透、族譜(チョクポ)も 普及 • 高麗末期:勲旧派と士林派(郷村にこもって 学問と教育に専心)に分かれる • 人間の心性と修身の関係をテーマとする: 李滉(退渓):気は理があらわれたもの 李珥(栗谷):理の絶対性を否定 *実学経世思想の出現 11 官僚制国家の経済 • 王建(高麗の太祖)『十訓要』:風水の思想 • 国家貿易(中人の職務)・工匠は官庁の支配下 • 両班の増加・没落両班の出現 • 李氏朝鮮期は農本主義が基調で商工業の発 展を圧迫 • 農学の盛行、渡来作物(サツマイモ、トウガラ シ) • 鉱業を厳格に統制。 12 商業の未発達 • 李朝初期に楮貨(紙幣)と銅銭が発行された が普及せず、麻布・綿布・米などの現物貨幣 が流通手段になっていた。 • 期日を定めて「場市」が開かれる。常設店は 少なく行商人や露店市が主。常設店は少なく 店頭販売もしなかった。 • 国家専売制(1791年まで存続)・国営商業と 特権商人(貢人)への物品調達の委託 • 明・清との朝貢貿易/使臣たちの私貿易 • 日本:倭館・対馬の宗氏を通じた貿易 13
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