「経済解析 2」 第6講 2012/5/25 貨幣市場と LM 曲線 1. 貨幣とは 現金,流動性の高い預貯金 (普通預金,当座預金など) 2. 貨幣の機能 (1) 交換手段 (2) 富の蓄積手段 3. 貨幣需要 (1) 取引需要 (← 交換手段) 経済規模が大きいほど,取引のための貨幣が必要になるだろう. 貨幣の取引需要L1 は国民所得Y の増加関数 L1 (Y ) = mY (m > 0 は定数) (2) 資産需要 (投機的需要)1 (← 富の蓄積手段) 一般に,利子率が高いほど株価は下がる.(補足参照) 投機家の思惑 「現在の利子率は低い.しかし将来上昇しそうだ」 「だとすると,少し待てば株価は下がるはず」 「今株を買うのをやめよう」 「流動性の高い貨幣を手もとに置いておこう」 貨幣の資産需要L2 は利子率r の減少関数 L2 (r) = p − qr (p, q > 0 は定数) 4. 貨幣供給 M 中央銀行 (日本銀行) の政策変数 5. 貨幣市場均衡式 M = mY + p − qr (1) 貨幣供給 M ,国民所得 Y が与えられたとき,(1) 式を満たすように利子率 が決まる.均衡利子率という. 問題 1 貨幣需要がそれぞれ, L1 = 0.1Y L2 = 100 − 20r であるとする.M = 90, Y = 500 のとき,均衡利子率 r∗ を求めよ. 1 貨幣の資産需要とは,資産の 1 つの選択肢として貨幣を需要するという意味. 1 6. 部分均衡分析 (仮定)国民所得 Y を一定とする. 貨幣市場のグラフ (タテ軸)利子率 r, (ヨコ軸)貨幣需要,貨幣供給 貨幣供給曲線 M M 貨幣需要曲線 LL 垂直な直線 右下がりの直線 → 貨幣の需給が一致するように利子率 r ∗ が決まる. (存在,一意性)グラフより,存在すれば1つだけ. (安定性)価格調整メカニズムを仮定すると,均衡は安定. (i) r > r∗ のとき, (需要)<(供給)→ r ↓ (ii) r < r∗ のとき, (需要)>(供給)→ r ↑ 7. 比較静学(金融政策の効果) 貨幣供給 M ↑→ M M 曲線が右にシフト → 均衡利子率 r∗ が低下. 金融政策の意味 問題 2 利子率を変化させることで実物経済に影響を与える. 問題 1 で,貨幣供給を M = 100 に増やすとする.国民所得 Y が変 わらないとすると,均衡利子率 r ∗ はどのくらい低下するか. 8. LM 曲線 貨幣市場を均衡させる国民所得Y と利子率r の組合せ(Y, r) の軌跡を LM 曲線という.LM 曲線の式は (1) 式そのもの.LM 曲線を (Y, r) 平面上にか くと,右上がりであることが分かる. 問題 3 上の問題で,M = 90 のときの LM 曲線の式を求め,(Y, r) 平面上 に図示せよ. (次回の予定) 利子率に影響されるマクロ変数とは? 投資関数 I = I(r) IS 曲線 財市場を均衡させる国民所得 Y と利子率 r の組合せ (Y, r) の軌跡 2 (補足)株価はどのように決まる? 考え方 (1) 株を買うと毎年配当が得られる → 配当が高いほど株価は高いだろう. (2) 利子率(金利)が高ければ,預貯金でもいい → 利子率が高いほど株価は 低いだろう. P0 現在の株価 dt t 年後の配当 rt t 年後の利子率 1年後の配当 d1 の割引現在価値 d1 1 + r1 2年後の配当 d2 の割引現在価値 d2 (1 + r1 )(1 + r2 ) 配当の割引現在価値の総和を D0 とすると, D0 = d1 d2 d3 + + + ··· 1 + r1 (1 + r1 )(1 + r2 ) (1 + r1 )(1 + r2 )(1 + r3 ) 特に,すべての t について dt = d, rt = r と仮定する. d d d + + ··· + 2 1 + r (1 + r) (1 + r)3 ∙ ¸ d 1 d d+ = + ··· + 1+r 1 + r (1 + r)2 1 = (d + D0 ) 1+r D0 = これを解いて, d r 今株を買うことによる収益は,D0 − P0 である. D0 = (1) (1) P0 < D0 ならば皆株を買うだろう(株式需要は無限大) (2) P0 > D0 ならば誰も買わないだろう(株式需要はゼロ) (3) 有限の需要と整合的なのは P0 = D0 のときに限られる.(1) 式より現 在の株価は, d P0 = (2) r となる.株価は配当 d の増加関数,利子率 r の減少関数である. ¡ ¢ (おまけ)株価収益率 (Price Earings ratio; P E or P ER) とは, Pd0 = 1r の こと.P ER = 20 ⇔ r = 5% 買い頃?
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